説明

パレット交換機能を有する工作機械及びパレット交換方法

【課題】 ワークをハンドリングするロボットを利用して、パレットをも搬送するようにして、低コストのパレット交換機能を有する工作機械を及びパレット交換方法を得る。
【解決手段】 図1の(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。パレット3には回転自在にローラ3aが配置されている。パレットチェンジャ架台1及び工作機械のテーブル2に設けられたレール1a,1bでローラ3aは支持され転がるようになっている。パレット3は取っ手3cを有する。ロボット4はハンドを取っ手3cに係合させて、パレット3を引く又は押すことにより、架台1とテーブル2との間を移動させる。又、ロボット4は架台1上で、パレット3に対してワークWの着脱作業を行う。パレット3の移動に大きな力を必要としないので、ワークWをハンドリングするロボット4でパレット3の搬送ができ、低コストでパレット交換ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを固定したパレットを工作機械内に取り込み、パレットに固定されたワークに対して加工を行い、その後、パレットと共にワークを工作機械から取り出すようにした、パレット交換機能を有する工作機械及びパレット交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械のワーク交換時の段取り時間を短くする手法としてパレットチェンジャが知られている。このパレットチェンジャは、ワークを固定するパレットと、該パレットを工作機械内外に搬送する駆動系を持ち、パレットに固定されたワークに対する工作機械による加工が終了すると、このパレットを工作機械外に搬送し、未加工ワークを固定したパレットを工作機械内に搬入して、パレットを交換することによって、ワーク着脱のために工作機械を停止させる時間のロスを短くするものである。
【0003】
パレットを工作機械内外に搬送する駆動系は、サーボモータや空圧、油圧が使用されているが、構造が複雑で高価なものとなっている。
例えば、図8(a)に示すように、回転するパレット100にワークを固定し、パレット回転領域における所定領域を、該パレット100に固定されたワークへの加工領域とし、他の所定領域をパレット100にワークを着脱する領域としたものである。このパレット100の回転をサーボモータ101により減速器102を介して駆動するように構成したパレットチェンジャが知られている。
【0004】
図8(b)に示すパレットチェンジャは、サーボモータ101でパレット100を搬送するパレットチェンジャの従来例である。サーボモータ101の回転運動をボールねじ103とナット104による機構によって直線運動に変換し、ナット104に固定されたパレット100を搬送し、パレットを交換するものである。
【0005】
図8(c)に示すパレットチェンジャは、パレット100をエアシリンダ105で搬送するものである。
これら公知のパレットチェンジャは、パレット100を搬送するための手段として、モータ101やエアシリンダ105を必要とし、構造が複雑で高価なものとなっている。
【0006】
一方、稼働率向上、経費節減のため、ワークに対する加工の自動化、無人化を行う場合が増えてきている。工作機械へのワークの着脱をロボットを用いて自動化するものも増加しており、パレットに対するワークの着脱もロボットで行うものも知られている。
【0007】
又、一般的な部品供給システムにおいては、ロボットによりパレットの搬送及びそのパレットへのワークの載置、ワークが載置されたパレットの搬送を、1台のロボットで行うようにしたシステムも公知である(特許文献1参照)。
【0008】
【特許文献1】特許第3362656号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
パレット交換機能を有する工作機械においては、上述したように、図8に示したようなパレットチェンジャが用いられているが、このようなパレットチェンジャは高価なものである。一方、パレット交換機能を有する工作機械においては、パレットにワークを取り込み装着し、又、パレットからワークを取り出す必要があるが、このパレットへのワーク着脱作業にロボットが使用される。このロボットは、ワークを把持し、パレットから、及びパレットへ搬送するものであるから、大きな力を必要とせず大型のロボットは使用されていない。
【0010】
一般的な部品供給システムにおいて、特許文献1に記載された発明のように、ロボットによって、パレットへのワークの載置とパレットの搬送を行うものが公知であるが、この特許文献1に記載された発明は、ロボットがワーク用のハンドとパレット用のハンドを持ち、ハンドを切り換えて、ワーク又はパレットを把持し持ち上げるものである。パレットを持ち上げて交換及び段積みすることを前提としているため、大型なロボット(大きな力を発生できるロボット)が必要である。
【0011】
そこで、本発明の目的は、ワークを取り扱うロボットを利用して、新たな駆動系を必要とせず、パレットをも搬送可能としたパレット交換機能を有する工作機械及びパレット交換方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願請求項1に係わる発明は、ワークが固定されるパレットと、該パレットにワークを着脱するロボットとを備えた工作機械において、前記パレットを移動可能に支持する支持手段を設け、該支持手段によって前記パレットが支持された状態で、前記ロボットにより前記パレットを移動させて、工作機械内のパレットを交換することを特徴とする工作機械である。又、請求項2に係わる発明は、前記支持手段を、前記パレットに設けられたローラ、若しくはパレットを載置するパレット架台及び工作機械のテーブルに設けられたローラで構成し、該ローラを介して前記パレットをパレット架台と工作機械のテーブルとの間を移動させるようにしたものである。又、請求項3に係わる発明は、前記支持手段を、パレットを載置するパレット架台及び工作機械のテーブルに設けられた球状体で構成し、該球状体を介して前記パレットをパレット架台と工作機械のテーブルとの間を移動させるようにした。請求項4に係わる発明は、前記パレットに、前記ロボットがパレットを移動させる際に引っ掛ける取っ手を設けたものにした。又、請求項5に係る発明は、把持するワークの位置、姿勢等を求め、ワーク交換を行うために視覚センサを備えたものである。
【0013】
請求項6に係わる発明は、ワークが固定されるパレットと、該パレットにワークを着脱するロボットとを備えた工作機械のパレット交換方法において、前記パレットを移動可能に支持する支持手段によってパレットが支持された状態で、該パレットを前記ロボットにより移動させることによって、工作機械内のパレットを交換するようにした工作機械のパレット交換方法である。又、請求項7に係わる発明は、ロボットに設けた視覚センサによりパレットに取り付けるワークの位置を検出し、該検出した位置に基づいて前記ワークをロボットが把持し、ワークの交換を行うようにしたものである。
【発明の効果】
【0014】
ワークをパレットに搬送し又はパレットから取り出し搬送するワークハンドリングロボットを、ワークが装着されたパレットの搬送手段として使用することから、パレットチェンジャとしての特別な駆動手段を必要とせず、安価に構成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下本発明の一実施形態を図面と共に説明する。
図1は、本実施形態における工作機械のテーブルとパレットチェンジャ架台の説明図であり、図1(a)は平面図、図1(b)は正面図、図1(c)は側面図である。この図1では、工作機械のテーブル2にパレット3が取り付けられた状態を示している。
パレットチェンジャ架台1の両側端部には工作機械側(テーブル2側)に向かってレール1a,1bが設けられている。又、テーブル2にも両側端部にレール2a,2bが設けられている。パレット3の下面には回転自在の円筒状のローラ3aが複数両側端部に設けられ、上記レール1a,1b,2a,2b上に載置され、パレット3は該ローラ3aの回転によって抵抗少なくスムーズに移動可能になっている。このレール1a,1b,2a,2b及びローラ3aで、パレット3を移動可能に支持した支持手段を構成している。
【0016】
又、パレット3の下面及び工作機械のテーブル2には、テーブル2にパレット3と固定するクランプ機構5が設けられている。パレット3の上面には、ワークWを保持するクランプ手段3bが設けられると共に、一端には、該パレット3を移動させるためにロボットのハンドを引っ掛け係合させるための取っ手3cが設けられている。
【0017】
符号4はロボットで、パレット3にワークWを運び入れ、又は、該パレット3からワークWを取り出す作業を行うロボットである。本実施形態では、さらに、このロボット4により、工作機械のテーブル2に、又は該テーブル2からパレット3を運び入れ、運び出す作業をも行わせるものである。従来、ロボット4でワークWを把持してパレット3にワークWを着脱するようにしたものは一般的に使用されていた。そして、従来は、このロボット4以外にパレット3を搬送するために、図8に示したパレットチェンジャが付加され工作機械システムが構成されていた。
【0018】
本発明は、このワークハンドリング用のロボット4をパレット3の搬送手段として用い、新たなパレットチェンジャを備えないでよいものとした。
図2に示すように、ロボット4は、パレット3に設けられた取っ手3cに、ワークWを把持するハンド4aの一端を係合させて、パレット3を引っ張る又は押し出すことにより、パレット3をテーブル2とパレットチェンジャ架台1との間を移動させるようにした。
パレット3の下面に設けられたローラ3aはレール1a,1b,2a,2b上を転がって移動するものであるから、ロボット4は、大きな力を発生させる必要がなく、ワークWをハンドリングする従来の小型のハンドリングロボット4でパレット3も搬送できるものである。
【0019】
図3は、本実施形態における工作機械本体10とパレットチェンジャ架台1,ロボット4、ワーク置き台11の配置関係を示す一例の平面図である。
図3中、一点破線で囲んだ領域4bがロボット4の作業可能領域を示すもので、ロボット4は、ワーク置き台11に載置された未加工のワークWを把持して、パレットチェンジャ架台1上のパレット3に運び入れる。その後ワークWはクランプ手段3bでパレット3に固定される。又、パレットチェンジャ架台1上の加工済のワークWを搭載したパレット3からワークを把持し取り出し、ワーク置き台11に載置する作業を行う。さらに、ロボット4は、工作機械本体10のテーブル2に載置されているパレット3を、パレットチェンジャ架台1上に引き出す作業、及び、パレットチェンジャ架台1上のパレット3をテーブル2上に搬入する作業も行う。
また、ロボット4に、視覚センサ取り付けてワークの交換作業を行わせてもよい。図4は、ロボット4のアーム先端に視覚センサの撮像部7を取り付けた例を示す図である。この視覚センサの撮像部7により、ワーク置き台11上のワークWを撮像し、その位置さらには姿勢を視覚センサによって求め、ロボット4を該位置に駆動して該ワークWを把持するようにする。ワーク置き台11にワークWが所定位置に載置されないような場合、この視覚センサを用いると便利である。
【0020】
図5は、このパレット3のテーブル2への搬入搬出作業の説明図である。
パレット3上に固定されたワークWに対する工作機械本体10による加工が終了すると(図5ではAのパレット3上のワークWの加工が終了したものとしている)、テーブル2をAパレット3の取り出し位置に位置決めし、クランプ機構5をアンクランプとして、ロボット4のハンド4aの一端をパレット3の取っ手3cに、図2に示すように係合させて、パレットチェンジャ架台1方向に引き出すようにロボット4を駆動し、Aパレット3を図5(b)に示すように、パレットチェンジャ架台1上に取り込む。
【0021】
次に、テーブル2を移動させてBパレット3が載置されているパレットチェンジャ架台1の位置に位置決めし、ロボット4のハンド4aをBパレット3の取っ手3cに係合させて、ロボット4を駆動してパレットチェンジャ架台1上のBパレット3を移動させ、テーブル2上に搬入する(図5(c)参照)。そして、クランプ機構5でBパレット3をクランプして、該Bパレット3に固定されているワークWに対して工作機械本体10によって加工がなされる。
【0022】
このBパレット3上のワークWに対して加工がなされている間、Aパレット3上の加工済ワークWのクランプを解き、ロボット4は、該ワークWをハンド4aで把持して運び出しワーク置き台11に載置する。その後、ロボット4は、ワーク置き台11に載置されている未加工のワークWをAパレット3上に運び入れ装着する。以下、AパレットとBパレットを交互にテーブル2に搬送し、工作機械本体10でワークWを加工すると共に、パレット3に対して加工済ワークと未加工のワークの入れ替えを交互に行うものである。
【0023】
上述した実施形態では、ローラ3aをパレット3側に設けたが、ローラをパレットチェンジャ架台1及びテーブル2側に設け、パレット3側に設けないようにしてもよい。又、この実施形態では、パレットチェンジャ架台1及びテーブル2にレール1a,1b,2a,2bを設けたが、このレールは必ずしも設けなくてもよい。又、ローラに代えて球状体を用いてもよい。
【0024】
図6は、ローラに代えて球状体を用いた別の実施形態の説明図で、図6(a)はパレットチェンジャ架台及びパレットの平面図、図6(b)はその正面図である。なお、図1に示した実施形態と同等の要素には同一符号を付している。
パレットチェンジャ架台1の上面には、複数の球状体6が回転自在に配置され、パレット3はこの球状体6によって支持されている。図示していないが、工作機械本体のテーブル2の上面も同様に複数の球状体6が配置され、パレット3を支持するようになっている(なお、テーブル2には必ずしも球状体6を配置しなくてもよく、パレットを出し入れする方向に回転するようにローラを配置しておいてもよいものである)。球状体6は、回転方向が規制されていないので、パレット3は、パレットチェンジャ架台1を上下、左右に移動することができる。これによって、ロボット4の作業領域が狭いときは、パレット3自体をロボット側に引き寄せてワークWのパレットへの着脱を行うようにすることができる。
【0025】
図7は、この別の実施形態におけるパレット3の工作機械本体10への出し入れ動作の説明図である。
図7(a)は、Bパレット3上のワークWに対して加工が終了し、該Bパレット3をテーブル2からパレットチェンジャ架台1に搬送しようとする状態を示す図である。テーブル2をパレットチェンジャ架台1のパレット3の取り出し位置に位置決めし、ロボット4のハンド4aをBパレット3の取っ手3cに係合させ、Bパレット3をパレットチェンジャ架台1に引き出すようにロボットを駆動し、Bパレット3をパレットチェンジャ架台1に取り出す。次に、テーブル2をパレット取り入れ位置に位置決めし、未加工のワークWが装着されているAパレット3をパレットチェンジャ架台1からテーブル2へロボット4で搬送する(図7(b)参照)。
【0026】
その後、図7(c)に示すように、テーブル2は加工位置に移動させ、ロボット4はBパレットをワーク着脱位置(パレット取り入れ位置に対応した位置)に移動させる。この場合、パレットチェンジャ架台1の上面には複数の回転自在の球状体6が配置されているから、Bパレット3は、テーブル2からの搬送方向とは、直角の向き方向にも移動可能であり、ロボット4は大きな力を必要としない。
この図7(c)状態で、ロボット4によって、Bパレット上の加工済ワークWはワーク置き台11に取り出され、ワーク置き台11上の未加工のワークWがBパレットに装着されることになる。このように、パレット3をロボット側に引き寄せて、パレット3へのワークWの着脱を行うものであるから、作業領域が狭いロボット2でも対応できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態における工作機械のテーブルとパレットチェンジャ架台の説明図である。
【図2】同実施形態におけるロボットによるパレットの搬送動作を説明する説明図である。
【図3】同実施形態における工作機械本体、パレットチェンジャ架台、ワーク置き台の配置の一例を示す図である。
【図4】ロボットに視覚センサを取り付けたときの説明図である。
【図5】同実施形態におけるパレットの工作機械本体への搬入搬出の説明図である。
【図6】本発明の別の実施形態におけるパレットチェンジャ架台の説明図である。
【図7】同別の実施形態におけるロボットによるパレットの搬送動作を説明する説明図である。
【図8】従来のパレットチェンジャの説明図である。
【符号の説明】
【0028】
1 パレットチェンジャ架台
1a,1b レール
2 テーブル
3 パレット
3a ローラ
3b クランプ手段
3c 取っ手
4 ロボット
4a ハンド
5 クランプ機構
6 球状体
7 視覚センサの撮像部
10 工作機械本体
11 ワーク置き台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークが固定されるパレットと、該パレットにワークを着脱するロボットとを備えた工作機械において、前記パレットを移動可能に支持する支持手段を設け、該支持手段によって前記パレットが支持された状態で、前記ロボットにより前記パレットを移動させて、工作機械内のパレットを交換することを特徴とする工作機械。
【請求項2】
前記支持手段は、前記パレットに設けられたローラ、若しくはパレットを載置するパレット架台及び工作機械のテーブルに設けられたローラで構成され、該ローラを介して前記パレットはパレット架台と工作機械のテーブルとの間を移動する請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記支持手段は、パレットを載置するパレット架台及び工作機械のテーブルに設けられた球状体で構成され、該球状体を介して前記パレットはパレット架台と工作機械のテーブルとの間を移動する請求項1に記載の工作機械。
【請求項4】
前記パレットは、前記ロボットがパレットを移動させる際に引っ掛ける取っ手が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3の内いずれか1項に記載の工作機械。
【請求項5】
前記ロボットは視覚センサの撮像部を搭載していることを特徴とする請求項1乃至4の内いずれか1項に記載の工作機械。
【請求項6】
ワークが固定されるパレットと、該パレットにワークを着脱するロボットとを備えた工作機械のパレット交換方法において、前記パレットを移動可能に支持する支持手段によってパレットが支持された状態で、該パレットを前記ロボットにより移動させることによって、工作機械内のパレットを交換するようにした工作機械のパレット交換方法。
【請求項7】
前記ロボットは前記視覚センサによりパレットに取付けるワークの位置を検出し、該検出した位置に基づいて前記ワークを把持することを特徴とする請求項6に記載の工作機械のパレット交換方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−43866(P2006−43866A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−303038(P2004−303038)
【出願日】平成16年10月18日(2004.10.18)
【出願人】(390008235)ファナック株式会社 (1,110)
【Fターム(参考)】