説明

パレット搬送装置

【課題】サイクルタイムを短縮することで、生産性の向上を図るようにした。
【解決手段】パレットPを搬送するための搬送装置Tは、パレットPを搬送方向に送るための一対の送り機構1A、1Bが設けられ、送り機構1A、1Bのそれぞれは、パレットPの下方位置で搬送路に沿って設けられた支持架台部10A、10Bと、支持架台部10を搬送路に沿って往復移動させる搬送用駆動機構20A、20Bと、支持架台部10から上方に突出させた係合ピン3と、係合ピン3を上下動させるための上下方向駆動機構30A、30Bとを備えている。一対の送り機構1A、1Bの支持架台部10A、10Bは、それぞれ単独で往復移動可能とされ、パレットPには送り機構1A、1Bのそれぞれの係合ピン3に対応する係合孔が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を収納するパレットを搬送させるためのパレット搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パレット搬送機構として、フリーフロー搬送や固定ピッチ搬送などがある。フリーフロー搬送では、搬送路に沿って複数個のローラ、プーリー、ベルトなどが設けられており、駆動モータによってベルトを搬送方向に送る機構となっている(例えば、特許文献1、2参照)。
また、ピッチ搬送では、例えばワークの加工工程において、パレット上にワークを所定ピッチで配置させ、パレットを順次ピッチ搬送させながら、それぞれの位置において加工を行うものが知られている。
【0003】
そして、フリーフロー搬送装置では、所定位置に精度よく停止させるためにストッパ機構に加えて位置決め機構が設けられている。つまり、パレットをストッパに当接させ、その当接したパレットの下方から係止ピンなどを挿入することで位置決めする構成となっている。
また、ピッチ搬送の場合には、所定のピッチ間で往復移動可能な送り装置が設けられ、その送り機構により所定の送り量でパレットを搬送させたのち、送り機構を元の位置に戻す動作によりピッチ搬送される機構となっている。つまり、係止ピンでパレットを位置決めした状態のまま、パレットを持ち上げつつ所定ピッチだけ搬送方向に移動させる持ち上げ機構が設けられている。
【特許文献1】特開2006−273539号公報
【特許文献2】特開2005−350147号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の搬送装置では以下のような問題があった。
すなわち、従来のフリーフロー搬送装置における位置決め方法では、ストッパ機構でパレットを当接させ、その停止位置において位置決め機構で所定位置に位置決めする二段階の動作を行う必要があり、サイクルタイム、および生産性が低下するという問題があった。
また、ピッチ搬送の場合では、送り機構が往復移動する動作を繰り返すことでパレットを順次搬送させる機構であり、搬送時の送り動作と元の位置に戻るときの戻り動作との二つの動作が必要となる。つまり、送り機構の戻り動作中には、搬送動作が停止された状態となる欠点があり、その点で改良の余地があった。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、サイクルタイムを短縮することで、生産性の向上を図るようにしたパレット搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るパレット搬送装置では、物品を収納するパレットを搬送するためのパレット搬送装置であって、パレットを搬送方向に送るための一対の送り機構が設けられ、送り機構のそれぞれには、パレットの下方に搬送路に沿って設けられた支持架台と、支持架台を搬送路に沿って往復移動させる搬送用駆動手段と、支持架台から上方に突出させた凸状部材と、凸状部材を上下動させるための突出手段とが備えられ、一対の送り機構は、それぞれ単独で往復移動可能とされ、パレットには、送り機構のそれぞれの凸状部材に対応する係合孔が設けられ、一方の送り機構の凸状部材が一部の係合孔に係合挿入され、他方の送り機構の凸状部材が他の係合孔に係合されることを特徴としている。
【0007】
本発明では、いずれか一方の送り機構の凸状部材をパレットの一部の係合孔に挿入して係合し、その係合状態のまま、サーボモータやリニアモータなどの搬送用駆動手段によって、送り機構の支持架台を所定ピッチだけ搬送方向に移動させることで、パレットを所定位置に精度よく搬送させることができる。そして、一対の送り機構の支持架台のそれぞれが個別に搬送路に沿って往復移動する構成であるので、それぞれが交互にパレットを移動させることができる。つまり、一方の送り機構によって1パレット分の搬送動作を行った後に、凸状部材を係合孔から抜いてその一方の送り機構の支持架台を後退させて元の位置に戻る動作中に、他方の送り機構の凸状部材を前記搬送した位置にあるパレットの係合孔に挿入して係合し、その係合状態のまま、搬送用駆動手段によって、送り機構の支持架台を所定ピッチだけ搬送方向に移動させ、パレットをさらに次の位置に搬送させることができる。そのため、支持架台の後退動作にかかる時間を省略することができる。
また、凸状部材を係合孔に挿入したときに、パレットが送り機構の支持架台に対して所定の姿勢で位置決めされた状態となるので、搬送用駆動手段による移動を停止させた状態でパレットの位置決めが完了することになる。そのため、従来のようにパレットをストッパに当接させてから位置決め機構により位置決めするといった2つの動作を行う必要がなくなることから、サイクルタイムを短縮を図ることができるとともに、搬送機構を簡単な構成にすることができる。
【0008】
また、本発明に係るパレット搬送装置では、凸状部材を係合孔に係合したときに、凸状部材の上端がパレットに当接しない構成であることが好ましい。
【0009】
本発明では、凸状部材をパレットの係合孔に挿入させたときに、凸状部材の上端がパレットに当接しないので、パレットが凸状部材によって持ち上げられることがなく、パレットをスムーズに搬送方向に移動させることができる。
【0010】
また、本発明に係るパレット搬送装置では、パレットには、少なくとも二対の係合孔が設けられ、一方の送り機構の凸状部材が一対の係合孔に係合され、他方の送り機構の凸状部材が他の一対の係合孔に係合されることが好ましい。
【0011】
本発明では、一対の係合孔にいずれか一方の送り機構の凸状部材を係合させることで、送り機構でパレットを移動させる動作中においても、パレットがずれることなく確実に搬送させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のパレット搬送装置によれば、一対の送り機構のそれぞれがパレットを所定ピッチだけ搬送させることができるので、一方の送り機構の後退動作中に、他方の送り機構でパレットを搬送させる並行動作を行うことができる。したがって、搬送動作にかかるサイクルタイムを短縮することができ、生産性の向上が図れるといった効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明によるパレット搬送装置について、図1乃至図8に基づいて説明する。
図1は本発明の実施の形態による搬送装置の送り機構の概略構成を示す一部破断斜視図、図2は図1に示す送り機構の平面図、図3は搬送装置の概略構成を示す側面図、図5は送り機構の詳細構成を示す一部拡大した側面図、図4は搬送装置で搬送されるパレットを示す図であって、(a)はその平面図、(b)はその側面図、図6は図5に示すA−A線断面図、図7は送り機構の搬送用駆動機構を示す平面図、図8(a)〜(e)は送り機構の動作を説明するための図である。
【0014】
図1及び図2に示すように、本実施の形態によるパレット送り機構(以下、単に「送り機構1」という)は、例えばチップキャパシタ(二次電池)などの複数個の物品をなすワークW(図4(a)参照)を保持させて収納することが可能なパレットPを、各ワークWどうしが配置される所定ピッチに合わせてピッチ搬送させるとともに、各停止位置においてワークWへの加工等を施すためのパレット搬送装置(搬送装置T)に採用されている。つまり、本搬送装置Tは、加工ツール(図示省略)が1回加工動作を行うたびに送り機構1(符号1A、1B)によりパレットPを1ワーク分のピッチだけ間欠移動させることで、ワークWが順次搬送される構成となっている。
【0015】
そして、図3に示すように、本実施の形態の搬送装置Tでは、複数個(例えば、13個)のパレットP(P1、P2、…)を同時に搬送方向(矢印E方向、図中左側から右側)へ順次搬送できるようになっている。なお、以下の説明において、特に符号を付さないが、各部の作動状況において、「前側(前方)」、「前進」とはパレットPの搬送方向側であること、「後側(後方)」、「後退」とは搬送方向と反対方向側であることを、統一して用いる。
【0016】
図4(a)および(b)に示すように、パレットPは、平面視で略長方形状の箱体をなし、その上面に搬送路に沿う方向(パレットPの長手方向)に所定間隔(例えば8mmピッチの間隔)をもって複数(本実施の形態では10個)のワークWを載置可能とされている。そして、パレットPには、搬送路に沿った方向の中心軸線Oを挟んで左右両側のそれぞれにおいて、搬送方向の上流と下流の両端位置にパレットPの厚さ方向に貫通する一対の係合孔2a、2a(2b、2b)が形成されている。すなわち、本パレットPには、二対の係合孔2a、2a、2b、2bが設けられている。
【0017】
そして、図1に示すように、複数個のパレットP1、P2、…には、それぞれの一対の係合孔2a、2a(2b、2b)に、後述する係合ピン3(凸状部材)を挿入して係合させるとともに、その係合ピン3を搬送方向(矢印E方向)に所定ピッチだけスライドさせることで、パレットPが搬送されるように構成されている。
【0018】
図3、図5及び図6に示すように、搬送装置Tは、基台4と、搬送装置Tの外殻を形成する本体フレーム5(図6参照)と、その本体フレーム5の上部に設けられたパレットPの搬送路をなす搬送レール6と、基台4の長手方向(搬送路)に沿って平行に延設されるガイドレール7、7とを備えており、本体フレーム5の内側において、ガイドレール7、7に沿って往復移動可能な正面視で左右1組の送り機構1(第1送り機構1A、第2送り機構1B)が設けられた構成となっている。
なお、以下の説明では、必要に応じて、第1送り機構1Aの部品、部材には符号Aを、第2送り機構1Bの部品、部材には符号Bを付して区別する。
【0019】
次に、各送り機構1A、1Bの構成について説明するが、両送り機構1A、1Bはほぼ同じ構成となるため、説明の便宜上、一方の第1パレット送り機構1Aについてのみ詳細に説明し、他方の第2送り機構1Bに関しては、第1送り機構1Aと異なる構成のみ説明し、詳細な説明を省略する。
なお、図3及び図5の側面図では、一方の第1送り機構1Aが紙面手前側となり、他方の第2送り機構1Bが第1送り機構1Aより紙面裏側に位置しているので見えていない図となっている。
【0020】
図3及び図5に示すように、第1送り機構1Aは、パレットPの下方位置で搬送路に沿って設けられた支持架台部10(支持架台)と、支持架台部10を搬送路に沿って往復移動(進退移動)させる搬送用駆動機構20(搬送用駆動手段)と、支持架台部10に対して上下方向に突出可能に設けられた複数の係合ピン3、3、…(凸状部材)と、前記係合ピン3、3、…を上下動させるための上下方向駆動機構30(突出手段)とを備えている。
【0021】
支持架台部10は、ガイドレール7、7に沿って移動自在な複数(本実施の形態では2つ)の移動テーブル11(11A、11C)と、これら移動テーブル11A、11C上に固定されていて搬送路に沿って延びる第1支持ビーム12とからなる。
そして、一方(後述する駆動モータ21側)の移動テーブル11Aは、後述するボールねじ22のナット22bに固定されるとともに、その下面11aには一対のガイドレール7、7に移動可能に係合された走行ブロック13、13、…が固定されている。この走行ブロック13は、一対のガイドレール7、7のそれぞれに2個ずつ設けられている。
【0022】
そして、図1及び図2に示すように、第1送り機構1Aの各移動テーブル11A、11Cと、第2送り機構1Bの移動テーブル11B、11Dとは、搬送方向に同軸で、かつ交互に所定間隔をあけて配置されている。つまり、搬送路の後端側(図2に示す左右方向で最も左側)の移動テーブル11Aと、搬送方向(右方向)に向かって3つ目の移動テーブル11Cとが第1送り機構1Aの第1支持ビーム12Aに固定され、同じく2つ目と4つ目(最も右側)の移動テーブル11B、11Dが第2送り機構1Bの第1支持ビーム12Bに固定された構造となっている。これにより、第1支持ビーム12は、移動テーブル11A、11Cとともに搬送路に沿って進退移動可能な構成となっている。
【0023】
第1支持ビーム12は、搬送装置Tの幅方向(短手方向)で略中央位置で、搬送方向に沿って延設された板状部材をなしている。この第1支持ビーム12Aと第2送り機構1Bの第1支持ビーム12Bとは、それぞれの側面が平行となるように配置されている。第1支持ビーム12Aは、上述したように二つの移動テーブル11A、11Cに載置された状態で固定されている。そして、図5及び図6に示すように、第1支持ビーム12Aの側面12aには、後述する上下方向駆動機構30の第2支持ビーム31を上下方向に案内するための上下案内レール14が設けられている。
【0024】
図5及び図7に示すように、搬送用駆動機構20は、基台4における搬送装置Tの搬送路に沿う方向の一端側(図中左側)に固定された駆動モータ21と、この駆動モータ21の回転軸21aと同軸に設けられたボールねじ22とからなる。駆動モータ21には、サーボモータが採用されている。そして、駆動モータ21は、その回転軸21aを搬送路の中心軸線上に配置させている。
【0025】
ボールねじ22は、駆動モータ21の回転軸21aに同軸に固定されたねじ軸22aと、ねじ軸22aに螺合してなるナット22bとからなり、駆動モータ21の回転運動を搬送方向に沿った直線運動に変える周知の機構をなしている。つまり、ねじ軸22aの正逆回転によってナット22bがねじ軸22aの軸線方向に直線的な往復動作を行う機構になっている。そして、ナット22bには、一方(駆動モータ21側)の移動テーブル11Aが固定されている。本実施の形態では、駆動モータ21としてサーボモータを使用することで、ナット22bの移動位置、つまり移動テーブル11の移動位置を高精度で位置決めできる構成となっている。
【0026】
次に、支持架台部10に対して複数の係合ピン3、3、…を上下動させるための上下方向駆動機構30の構成について説明する。
図5及び図6に示すように、上下方向駆動機構30は、搬送路に沿って延びる第2支持ビーム31と、支持架台部10に対して搬送方向に移動可能に設けられたスライド基盤32と、このスライド基盤32を搬送路に沿う方向に往復移動させるための押出しシリンダ33(押出し駆動装置)と、スライド基盤32の所定位置に複数個(本実施の形態では3個)が固定された板カム34と、第2支持ビーム31の下端において板カム34の上面を搬送路に沿う方向に転動自在に載置される転動支持部材35とから概略構成されている。
【0027】
第2支持ビーム31は、第1支持ビーム12(12A)の外側で、それぞれの側面どうしが平行となるように配置され、その内側面31aには支持架台部10の上下案内レール14に案内されて上下方向に移動自在に係合された摺動ガイド36が設けられている。そして、第2支持ビーム31の上端には、受け部材38を介して複数の係合ピン3、3、…が取り付けられている。これら係合ピン3、3、…の位置は、第2支持ビーム31のが上昇したときに、搬送レール6、6上に所定間隔をもって配列されるパレットP1、P2、…に形成された係合孔2a、2a内に挿入される位置とされる。
【0028】
スライド基盤32は、第2支持ビーム31の下端部31bに沿うようにして配置され、第1支持ビーム12に対して搬送路に沿う方向に往復移動可能に支持されている。具体的には、第1支持ビーム12の側面12aに摺動支持部37(図5参照)が設けられており、この摺動支持部37にスライド基盤32が移動自在に支持されている。そして、スライド基盤32の一端32aには、押出しシリンダ33のロッド33aの先端部が固定され、そのロッド33aの伸縮によってスライド基盤32が所定距離の間で往復移動するように構成されている。ここで、スライド基盤32が往復移動する間隔の距離は、後述する板カム34によって第2支持ビーム31が所定高さだけ上昇可能とされる押出しシリンダ33のロッド33aのストロークに一致している。ここで、押出しシリンダ33には、エアシリンダなどを採用することができる。
【0029】
図5に示すように、板カム34は、搬送方向と反対方向(矢印F方向)に向けて高さ寸法が大きくなる形状をなし、スライド基盤32の上面の所定位置に固定されている。すなわち、板カム34の上面形状は、高さ寸法が小さい方(図中右側)から順に下盤面34a、傾斜面34b、上盤面34cを有している。下盤面34a及び上盤面34cは、それぞれ水平面をなしている。そして、上述したように、板カム34は、スライド基盤32に固定されているので、スライド基盤32の往復動とともに、図中二点鎖線(符号H1の位置)と実線(符号H2の位置)との間を往復移動する構成になっている。
【0030】
転動支持部材35は、搬送方向に直交する方向の回転軸を中心に回転自在な回転体35aを備え、その回転体35aが第2支持ビーム31の下端部31bより下方に突出するように設けられている。この回転体35aは、スライド基盤中32が搬送方向Eへの移動前の位置(すなわち、板カム34が二点鎖線で示す符号H1にある位置)で、板カム34の下盤面34aに載置された状態となり、スライド基盤32が搬送方向Eに移動すると回転体35aが板カム34の上面を転動しつつ、上盤面34cに載置されることになる。つまり、スライド基盤32が符号H1の位置のときに第2支持ビーム31が下降状態となり、符号H2の位置のときに第2支持ビーム31が上昇状態となる。
【0031】
このように、第2支持ビーム31が昇降することで、受け部材34に設けられているすべての係合ピン3、3、…が上下移動してパレットPの二対の係合孔2a、2a(2b、2b)のうち一対の係合孔2a、2aに挿入される構造となっている。
なお、係合ピン3が係合孔2aに挿入された状態で、係合ピン3の上端3aがパレットPに当接しないように構成されている。そのため、パレットPが係合ピン3によって持ち上げられることがなく、パレットPをスムーズに搬送方向に移動させることができる構成となっている。
【0032】
図1乃至図3に示すように、第2送り機構1Bは、搬送用駆動機構20Bの位置が第1送り機構1Aの搬送用駆動機構20Aに対して搬送路の軸線方向で反対側に設けられた構成となっており、その他の構成については上述した第1送り機構1Aと同様であるので、詳細の説明は省略する。
【0033】
次に、このように構成される送り機構1によるパレットPの搬送動作について図面を参照して説明する。
先ず、図5及び図8(a)に示すように、第1送り機構1Aにおいて、搬送装置T上のすべてのパレットP1、P2、…ごとに一対の係合孔2a、2aに係合ピン3、3が同時に挿入され、位置決めされる。
【0034】
具体的には、押出しシリンダ33のロッド33aが所定のストロークだけ伸長して、支持架台部10に対してスライド基盤32を搬送方向Eに移動させる。そうすると、スライド基盤32とともに板カム34も搬送方向Eに移動(図5に示す二点鎖線から実線に移動)するので、板カム34上に転動可能に載置されている転動支持部材35の回転体35aが板カム34の下盤面34aから傾斜面34bを通過して上盤面34cに移動することになる。つまり、転動支持部材35とともに第2支持ビーム31が所定高さ寸法(転動支持部材35が板カム34の上盤面34cに乗り上げた高さ寸法)をもって上昇し、第2支持ビーム31の上端に受け部材38を介して固定されているすべての係合ピン3、3、…がパレットP1、P2、…の一対の係合孔2a、2aに挿入されて係合されることになる。
【0035】
次いで、図5、図7及び図8(b)に示すように、パレットPをパレットP上の1ワークW分のピッチ、又は複数のワークW分のピッチ数で搬送レール4、4(図6参照)上を滑らせて搬送させる。
具体的には、駆動モータ21を駆動させ、前記所定のピッチ分だけナット22bがねじ軸22aに沿って直線移動するようにボールねじ22を回転させる。これにより、搬送方向Eに移動するナット22bに固定されている移動テーブル11Aがその4つの走行ブロック13、13、…を介してガイドレール7、7上を搬送方向Eに移動する。そのため、第1送り機構1Aによって、搬送装置Tにある全てのパレットP1、P2、…が所定のピッチ分だけ係合ピン3とともに搬送レール4、4上を滑って搬送されることになる。そして、移動した各パレットPのワークWに対して図示しない加工ツールによって作業が行われる。
【0036】
さらに、図8(c)に示すように、第1送り機構1Aによって、複数のパレットPを1ピッチ(例えば、1ピッチを8mmとする)、或いは複数ピッチで任意に移動させつつ、各ピッチごとにワークWへの加工を行い、1つのパレットP上のすべてのワークWに対する加工作業が完了したら、移動完了となる。このとき、パレット供給エリアS1には、新たに本搬送装置Tで作業を行うためのパレットP0が、図示しない供給装置により供給される。なお、図示しない加工ツールは、搬送装置TによってワークWを所定ピッチで停止位置において、加工順(搬送順)に配列されている。
このように、1ピッチずつの移動(スライド)を繰り返すことで、各パレットPに保持させているワークWへの加工が順次行われる。
【0037】
続いて、図8(d)に示すように、移動完了とともに、第1送り機構1Aは、押出しシリンダ33のロッド33aを縮減させ、スライド基盤32を搬送方向Eと反対方向(矢印F方向)に後退移動させて元の位置に戻すことで、板カム34も同方向(矢印F方向)に後退移動し、その板カム34の上面に沿って転動支持部材35の回転体35aが転動しつつ、板カム34の下盤面34aに移動する。これにより、第2支持ビーム31が下降し、すべての係合ピン3、3、…がパレットP1、P2、…の係合孔2a、2aから抜けて係合状態が解除される。
【0038】
さらに、図8(d)に示すように、上述した第1送り機構1Aによる係合ピン3の抜き出し動作とほぼ同時に、新たにパレット供給エリアS1に供給されたパレットP0を含むすべてのパレットP0、P1、P2、…の空いている(上述した第1送り機構1Aで挿入していない)他の一対の第2係合孔2b、2bに、第2送り機構1Bの係合ピン3、3、…を係合させた状態とする。
【0039】
具体的には、第2送り機構1Bの動作も上述した第1送り機構1Aの場合と同様の動作となり、すなわち第2送り機構1Bの押出しシリンダ33Bが所定のストロークだけ伸長して、支持架台部10に対してスライド基盤32を搬送方向Eに移動させる。そうすると、スライド基盤32とともに板カム34も搬送方向Eに移動(図5に示す二点鎖線から実線に移動)するので、板カム34上に転動可能に載置されている転動支持部材35の回転体35aが板カム34の下盤面34aから傾斜面34bを通過して上盤面34cに移動することになる。つまり、転動支持部材35とともに第2支持ビーム31が所定高さ寸法(転動支持部材35が板カム34の上盤面34cに乗り上げた高さ寸法)をもって上昇し、第2支持ビーム31の上端に受け部材38を介して固定されているすべての係合ピン3、3、…がパレットP0、P1、P2、…の一対の係合孔2b、2bに挿入されて係合されることになる。
【0040】
次に、図8(e)に示すように、第2送り機構1Bによって全てのパレットP0、P1、P2、…が搬送されるとともに、第1送り機構1Aでは、第2支持ビーム31が下降した状態で、元の位置に戻る動作(すなわち、搬送方向Eと反対方向Fに移動する動作)が行われる。
【0041】
このように、本搬送装置Tでは、第1送り機構1Aの係止ピン3、3、…をパレットPの一部の係合孔2a、2aに挿入して係合し、その係合状態のまま、サーボモータからなる駆動モータ21を備えた搬送用駆動機構20によって、第1送り機構1Aの支持架台部材10を所定ピッチだけ搬送方向に移動させることで、パレットPを所定位置に精度よく搬送させることができる。
【0042】
そして、一対の送り機構1A、1Bの支持架台部10A、10Bのそれぞれが単独で搬送路に沿って往復移動する構成であるので、それぞれが交互にパレットPを移動させることができる。つまり、一方の第1送り機構1Aによって1パレット分の搬送動作を行った後に、係合ピン3を係合孔2aから抜いてその第1送り機構1Aの支持架台部10Aを後退させて元の位置に戻る動作中に、他方の第2送り機構1Bの係合ピン3を前記搬送した位置にあるパレットPの係合孔2bに挿入して係合し、その係合状態のまま、搬送用駆動機構20によって、第2送り機構1Bの支持架台部材10Bを所定ピッチだけ搬送方向に移動させ、パレットPをさらに次の位置に搬送させることができる。そのため、支持架台の後退動作にかかる時間を省略することができる。
【0043】
また、係合ピン3を係合孔2aに挿入したときに、パレットPが送り機構1の支持架台部10に対して所定の姿勢で位置決めされた状態となるので、搬送用駆動機構20による移動を停止させた状態でパレットPの位置決めが完了することになる。そのため、従来のようにパレットPをストッパに当接させてから位置決め機構により位置決めするといった2つの動作を行う必要がなくなることから、サイクルタイムを短縮を図ることができるとともに、搬送機構を簡単な構成にすることができる。
【0044】
また、一対の係合孔2a、2a(2b、2b)にいずれか一方の送り機構1A、1Bの係合ピン3、3を係合させることで、送り機構1A、1BでパレットPを移動させる動作中において、パレットPがずれることなく確実に搬送させることができる。
【0045】
上述した本実施の形態によるパレット搬送装置では、一対の送り機構1A、1BのそれぞれがパレットPを所定ピッチだけ搬送させることができるので、一方の送り機構(第1送り機構1A)の後退動作中に、他方の送り機構(第2送り機構1B)でパレットPを搬送させる並行動作を行うことができる。したがって、搬送動作にかかるサイクルタイムを短縮することができ、生産性の向上が図れるといった効果を奏する。
【0046】
以上、本発明によるパレット搬送装置の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施の形態では板カム34とその板カム34上に転動可能に載置される転動支持部材35とによって第2支持ビーム31を上下動させて、パレットPの係合孔2に対して係合ピン3、3、…を挿入出する構造としているが、これに限定されることはなく、例えば、バネ部材の付勢作用によって第2支持ビーム31を上下動させるような構造としてもかまわない。
【0047】
そして、本実施の形態では搬送用駆動機構20としてサーボモータからなる駆動モータ21とボールねじ22によって移動テーブル11(支持架台部10)を高い精度で搬送路に沿って往復移動可能としているが、これに限定されることはなく、例えばリニアモータによる駆動機構を採用することができる。
また、パレットPの形状、配列間隔、数量、及びパレットP上のワークWの配置数、ピッチなどは、ワークWの部材や大きさ、加工条件などに対応して任意に設定することができる。
さらに、本実施の形態ではパレットPに二対の係合孔2a、2a、2b、2bを設けているが、係合孔の数量、位置、大きさなどは本実施の形態に制限されることはなく、任意に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施の形態による搬送装置の送り機構の概略構成を示す一部破断斜視図である。
【図2】図1に示す送り機構の平面図である。
【図3】搬送装置で搬送されるパレットを示す図であって、(a)はその平面図、(b)はその側面図である。
【図4】搬送装置の概略構成を示す側面図である。
【図5】送り機構の詳細構成を示す一部拡大した側面図である。
【図6】送り機構の搬送用駆動機構を示す平面図である。
【図7】図5に示すA−A線断面図である。
【図8】(a)〜(e)は送り機構の動作を説明するための図である。
【符号の説明】
【0049】
1、1A、1B 送り機構
2a、2b 係合孔
3 係合ピン(凸状部材)
10 支持架台部(支持架台)
11 移動テーブル
12 第1支持ビーム
13 走行ブロック
20 搬送用駆動機構(搬送用駆動手段)
21 駆動モータ
30 上下方向駆動機構(突出手段)
31 第2支持ビーム
32 スライド基盤
33 押出しシリンダ
34 板カム
34a 下盤面
34b 傾斜面
34c 上盤面
35a 回転体
T 搬送装置(パレット搬送装置)
P パレット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を収納するパレットを搬送するためのパレット搬送装置であって、
前記パレットを搬送方向に送るための一対の送り機構が設けられ、
前記送り機構のそれぞれは、前記パレットの下方位置で搬送路に沿って設けられた支持架台と、前記支持架台を前記搬送路に沿って往復移動させる搬送用駆動手段と、前記支持架台から上方に突出させた凸状部材と、前記凸状部材を上下動させるための突出手段とを備え、
一対の前記送り機構の支持架台は、それぞれ単独で往復移動可能とされ、
前記パレットには、前記送り機構のそれぞれの凸状部材に対応する係合孔が設けられ、
前記一方の送り機構の凸状部材が一部の前記係合孔に係合挿入され、前記他方の送り機構の凸状部材が他の係合孔に係合されることを特徴とするパレット搬送装置。
【請求項2】
前記凸状部材を前記係合孔に係合したときに、前記凸状部材の上端が前記パレットに当接しない構成であることを特徴とする請求項1に記載のパレット搬送装置。
【請求項3】
前記パレットには、少なくとも二対の前記係合孔が設けられ、
前記一方の送り機構の凸状部材が一対の前記係合孔に係合され、前記他方の送り機構の凸状部材が他の一対の係合孔に係合されることを特徴とする請求項1又は2に記載のパレット搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−203026(P2009−203026A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−47891(P2008−47891)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】