説明

パレット

【課題】作業性を低下させることなく、フォークリフトの爪で周囲の荷物等に損傷を与えてしまうことを防止することができるパレットを提供すること。
【解決手段】パレット1は、開口部2fから通路部2g内へフォークリフトの爪が挿入される方向には爪の通過を許容し、かつ、通路部2g内を挿通された爪が開口部2fから外部に突出される方向には爪の通過を禁止するので、爪の長さがパレット1の長さよりも長い場合でも、その爪が開口部2fから外部へ突出してしまうことを防止することができる。その結果、突出した爪が周囲の荷物等と干渉して、その荷物等に損傷を与えてしまうことを防止することができる。また、パレット1を搬送する際には従来のパレットと同様に、爪を挿入する方向が規制されることがないので、どちらの開口部2fからでも爪を挿入することを可能とし、作業性の向上を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パレットに関し、特に、作業性を低下させることなく、フォークリフトの爪で周囲の荷物等に損傷を与えてしまうことを防止することができるパレットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、フォークリフトを用いた搬送作業では、搬送しようとする荷物を予めパレット上に載置しておき、そのパレットごと(荷物とパレットとを一緒に)フォークリフトで持ち上げながら所定の場所まで移動することで荷物の搬送を行っている。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1では、互いに対向する側面にそれぞれ開口する開口部と、その開口部を互いに連通する通路部とを備えたパレットが開示されている。
【0004】
このパレットによれば、開口部から通路部内へフォークリフトの爪が挿通され持ち上げられることでパレットごと(荷物とパレットとを一緒に)荷物を搬送することができる。
【0005】
また、上述したパレットは、通路部により開口部が貫通されるように構成されているので、フォークリフトの爪を挿入する方向が規制されず、どちら側の開口部からでも爪を挿入することを可能として、作業性の向上を図っている。例えば、開口部が貫通されていない場合には、常に同じ方向側(開口部が設けられた側面側)からしか爪を挿入することができないので、その開口部に合わせてフォークリフトを移動させなければならなかった。これに対し、開口部が貫通していることで、フォークリフトを移動させるという手間(作業時間)を省くことができるので、その分、作業時間が短縮されて、作業性の向上を図ることができる。
【特許文献1】特開2001−130574号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のパレットでは、上述したように、開口部が貫通しているので、フォークリフトの爪の長さがパレットの長さよりも長い場合には、爪が開口部から外部へ突出してしまい、その突出した爪が搬送している荷物とは別の周囲の荷物等と干渉して、その荷物等に損傷を与えてしまうという問題点があった。
【0007】
ところで、一般に荷物を保管する倉庫等はスペースが限られているため、その倉庫等のスペースが最大限活用できるように、フォークリフトの運転者は前後及び左右のパレット同士の間隔が極力少なくなるようにパレットを配置して、デッドスペースの低減を図っている。また、高さの高い荷物を搬送する場合には、その荷物により視界が妨げられるため、運転者には突出した爪の位置を把握することが困難となってしまう。
【0008】
このような状況下においては、特に、爪が突出すれば、その分、荷物等に損傷を与えてしまう危険性が増すのである。
【0009】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、作業性を低下させることなく、フォークリフトの爪で周囲の荷物等に損傷を与えてしまうことを防止することができるパレットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を解決するために請求項1記載のパレットは、互いに対向する側面にそれぞれ開口する開口部と、前記開口部を互いに連通しフォークリフトの爪が挿通される通路部とを有するパレットにおいて、前記開口部に配設され、前記開口部から前記通路部内へ前記爪が挿入される方向には前記爪の通過を許容し、かつ、前記通路部内を挿通された前記爪が前記開口部から外部に突出される方向には前記爪の通過を禁止する規制装置を備えている。
【0011】
請求項2記載のパレットは、請求項1記載のパレットにおいて、前記規制装置は、前記通路部内に設けられ前記開口部の開放又は閉封を行う規制板と、前記規制板を揺動可能に懸架する蝶番部材とを備え、前記規制板が前記開口部から離間する方向へ揺動し前記開口部が開放されることで前記爪の通過が許容され、かつ、前記規制板が前記開口部に近接する方向へ揺動し前記規制板が前記開口部の周縁部の少なくとも一部に当接しつつ前記開口部を閉封することで前記爪の通過が禁止されるように構成されている。
【0012】
請求項3記載のパレットは、請求項1記載のパレットにおいて、互いに対向し荷物を載置可能な上面及び底面を備え、前記規制装置は、前記通路部内に設けられ前記開口部の開放又は閉封を行う規制板と、前記規制板を揺動可能に支持する蝶番部材とを備え、前記上面側が荷物の載置面とされる場合には、前記規制板が前記蝶番部材に懸架され前記規制板が前記開口部から離間する方向へ揺動し前記開口部が開放されることで前記爪の通過が許容され、かつ、前記規制板が前記開口部に近接する方向へ揺動し前記規制板が前記開口部の周縁部の少なくとも一部に当接しつつ前記開口部を閉封することで前記爪の通過が禁止される一方、前記底面側が荷物の載置面とされる場合には、前記規制板が自重により前記開口部から離間する方向へ揺動し前記開口部が開放されることで前記爪の通過が許容されるように構成されている。
【0013】
請求項4記載のパレットは、請求項3記載のパレットにおいて、規制板は、前記規制板の重心位置が前記蝶番部材の揺動軸よりも前記通路部内側へ偏心するように前記蝶番部材に支持され、前記底面側が荷物の載置面とされる場合には、前記規制板が自重により前記開口部から離間する方向へ揺動し前記開口部が開放されることで前記爪の通過が許容されるように構成されている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載のパレットによれば、規制装置は、開口部から通路部内へフォークリフトの爪が挿入される方向には爪の通過を許容し、かつ、通路部内を挿通された爪が開口部から外部に突出される方向には爪の通過を禁止するので、爪の長さがパレットの長さよりも長い場合でも、その爪が開口部から外部へ突出してしまうことを防止することができる。その結果、突出した爪が搬送している荷物とは別の周囲の荷物等と干渉して、その荷物等に損傷を与えてしまうことを防止することができるという効果がある。
【0015】
ところで、一般に荷物を保管する倉庫等はスペースが限られているため、その倉庫等のスペースが最大限活用できるように、フォークリフトの運転者は前後及び左右のパレット同士の間隔が極力少なくなるようにパレットを配置して、デッドスペースの低減を図っている。また、高さの高い荷物を搬送する場合には、その荷物により視界が妨げられるため、運転者には突出した爪の先端位置を把握することが困難となってしまう。このような状況下においては、特に、爪の突出を防止することが有効となる。
【0016】
また、通路部により開口部が貫通されるように構成されているが、通路部内を挿通されたフォークリフトの爪が開口部から外部に突出される方向のみ爪の通過を禁止する規制装置が開口部に配設されているので、爪が開口部から外部へ突出してしまうことを防止することができる一方、パレットを搬送する際には従来のパレットと同様に、爪を挿入する方向が規制されることがない。よって、どの開口部からでも爪を挿入することを可能とし、作業性の向上を図ることができるという効果がある。
【0017】
例えば、開口部が貫通されていない場合には爪が開口部から外部へ突出してしまうことを防止することは可能だが、常に同じ方向側(開口部が設けられた側面側)からしか爪を挿入することができないので、その開口部に合わせてフォークリフトを移動させなければならない。これに対し、開口部が貫通していることで、フォークリフトを移動させるという手間(作業時間)を省くことができるので、その分、作業時間が短縮されて、作業性の向上を図ることができる。
【0018】
請求項2記載のパレットによれば、請求項1記載のパレットの奏する効果に加え、規制装置は、規制板及び蝶番部材のみにより構成されているので、部品点数が少なくてすみ、フォークリフトの爪の通過を許可又は禁止することの構造を簡略化することができるという効果がある。その結果、パレットの部品コストや製造コストが不必要に増加してしまうことを防止することができる。
【0019】
また、規制板が蝶番部材により揺動可能に懸架され、規制板が開口部から離間する方向へ揺動し開口部が開放されることでフォークリフトの爪の通過を許容するように構成されているので、爪により規制板が押し込まれるだけで簡単に開口部を開放させることができると共に確実に開口部を開放させることができるという効果がある。
【0020】
これにより、例えば、フォークリフトの運転者が一度フォークリフトから降車して規制板を手で通路部側に押し込み開口部を開放させた後、再度フォークリフトに乗車して搬送作業を開始しなければならないといった手間(作業時間)を省くことができるので、その分、作業時間が短縮されて、作業性の向上を図ることができる。
【0021】
更に、規制板が開口部の周縁部の少なくとも一部に当接しつつ開口部を閉封することでフォークリフトの爪の通過を禁止するように構成されているので、爪が開口部から外部に突出しようとする力をパレット全体で吸収することができる。これにより、爪の力を規制板だけで受け止める場合に比べ、その力をパレットに分散させることができるので、規制装置の破損(例えば、蝶番部材が外れる)を抑制して、規制装置の耐久性を維持することができるという効果がある。
【0022】
請求項3記載のパレットによれば、請求項1記載のパレットの奏する効果に加え、規制装置は、規制板及び蝶番部材のみにより構成されているので、部品点数が少なくてすみ、フォークリフトの爪の通過を許可又は禁止することの構造を簡略化することができるという効果がある。その結果、パレットの部品コストや製造コストが不必要に増加してしまうことを防止することができる。
【0023】
また、上面側が荷物の載置面とされる場合には、規制板が蝶番部材に懸架され、規制板が開口部から離間する方向へ揺動し開口部が開放されることでフォークリフトの爪の通過を許容するように構成されているので、爪により規制板が押し込まれるだけで簡単に開口部を開放させることができると共に確実に開口部を開放させることができるという効果がある。
【0024】
これにより、例えば、フォークリフトの運転者が一度フォークリフトから降車して規制板を手で通路部側に押し込み開口部を開放させた後、再度フォークリフトに乗車して搬送作業を開始しなければならないといった手間(作業時間)を省くことができるので、その分、作業時間が短縮されて、作業性の向上を図ることができる。
【0025】
更に、上面側が荷物の載置面とされる場合には、規制板が開口部の周縁部の少なくとも一部に当接しつつ開口部を閉封することでフォークリフトの爪の通過を禁止するように構成されているので、爪が開口部から外部に突出しようとする力をパレット全体で吸収することができる。これにより、爪の力を規制板だけで受け止める場合に比べ、その力をパレットに分散させることができるので、規制装置の破損(例えば、蝶番部材が外れる)を抑制して、規制装置の耐久性を維持することができるという効果がある。
【0026】
また、底面側が荷物の載置面とされる場合には、規制板が自重により開口部から離間する方向へ揺動し開口部が開放されることでフォークリフトの爪の通過を許容するように構成されているので、従来のパレットと同様のパレットとして使用することができるという効果がある。つまり、爪の長さがパレットの長さよりも長い場合には、その爪を開口部から外部へ突出させて使用することができる。
【0027】
これにより、例えば、重量物を搬送する場合にはパレットをフォークリフトの爪の中央部に載置させたり、更に奧まで爪を挿入することにより爪の付け根部分でパレットを搬送することができるので、荷物の重心位置が爪の先端部側に偏ってしまうことを防止して、荷物の落下に対する安定性を向上させることができる。
【0028】
請求項4記載のパレットによれば、請求項3記載のパレットの奏する効果に加え、規制板の重心位置が蝶番部材の揺動軸よりも通路部内側へ偏心しているので、底面側が荷物の載置面とされる場合には、規制板が直立したままになったり開口部に近接する方向へ倒れて開口部が閉封されてしまうことなく、簡単に開口部を開放させることができると共に確実に開口部を開放させることができるという効果がある。
【0029】
これにより、例えば、フォークリフトの運転者が一度フォークリフトから降車して規制板を手で通路部側に押し込んで開口部を開放させた後、再度フォークリフトに乗車して搬送作業を開始しなければならないといった手間(作業時間)を省くことができると共に、開口部が開放されていないことに気づかないまま搬送作業を開始して荷物を落下させてしまうことを未然に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。図1(a)は、本発明の一実施の形態におけるパレット1の斜視図であり、図1(b)は、基体2の斜視図である。また、図2(a)は、規制板4の正面図であり、図2(b)は、蝶番部材5の斜視図であり、図2(c)は、図1(a)のIIc−IIc線におけるパレット1の断面図である。
【0031】
パレット1は、フォークリフトにより荷物(いずれも図示せず)を搬送するためのパレットであり、図1(a)に示すように、荷物が載置される基体2と、その基体2の開口部2fに配設される規制装置3とを主に備えている。このパレット1によれば、基体2の開口部2fにフォークリフトの爪が挿入されて持ち上げられることで、基体2に載置された荷物をパレットごと(荷物とパレット1とを一緒に)所定の場所まで搬送することができる。
【0032】
基体2は、荷物を載置する部材であり、図1(b)に示すように、正方形状に形成されたデッキ面2aと、そのデッキ面2aに対向して設けられた接着面2bと、それらデッキ面2a及び接着面2bの各辺に垂設された側面2c(2c1〜2c4)と、それら側面2cの互いに対向する側面の内の一対の側面(2c1及び2c3)にそれぞれ設けられた切欠部2d(2d1,2d2)と、それら切欠部2dを互いに連通する連通部2e(2e1,2e2)とを主に有し、ポリプロピレン(PP)を射出成形することにより形成されている。なお、本実施の形態におけるパレット1は、2個の基体2を用いて、それぞれの接着面2bが接着剤で互いに合着されることにより構成されている。
【0033】
デッキ面2aは、荷物を載置する載置面であり、載置された荷物が滑り落ちないように全面にゴムシート(図示せず)が貼付されている。なお、上述したように、パレット1は2個の基体2を合着することにより構成されているので、上面A及び底面Bの両面に荷物を載置することができる(図1(a)参照)。
【0034】
接着面2bは、上述したように、2個の基体2を互いに合着させる接着面であり、側面2c1及び2c3に設けられた切欠部2dと、連通部2eとの部分が凹状に凹設されている。
【0035】
切欠部2d(2d1,2d2)は、フォークリフトの爪を挿入するための挿入部であり、高さHd及び幅Wとなるように形成されている。ここで、上述したように、パレット1は2個の基体2を合着することにより構成されているので、2個の基体2を合着した場合には、切欠部2d1と切欠部2d1とが、切欠部2d2と切欠部2d2とが、それぞれ合成され高さH及び幅Wの開口部2f(2f1,2f2)が形成される(図1(a)参照)。なお、これら高さH及び幅Wは、フォークリフトの爪の高さ及び幅よりも大きいので、その爪を容易に挿入することができる。
【0036】
また、切欠部2d1及び2d2は、パレット1がフォークリフトにより持ち上げられる際にバランスを崩さないように側面2c1及び2c3の長手方向において左右対称となる位置に形成されていると共に、切欠部2d1と2d2との中心間の距離Lがフォークリフトの爪同士の間隔と略同一の距離となるように形成されている(図1(a)参照)。
【0037】
連通部2e(2e1,2e2)は、フォークリフトの爪を挿通させるための挿通部であり、切欠部2dの高さHdよりも高い高さHe(He>Hd)及び切欠部2dと同一の幅Wとなるように形成されている。ここで、上述したように、パレット1は2個の基体2を合着することにより構成されているので、2個の基体2を合着した場合には、連通部2e1と連通部2e1とが、連通部2e2と連通部2e2とが、それぞれ合成され通路部2g(2g1,2g2)が形成される(図2(c)参照)。
【0038】
規制装置3は、フォークリフトの爪が開口部2fを通過することを許可又は禁止するための装置であり、通路部2g内に設けられる規制板4と、その規制板を支持する蝶番部材5とを主に備えている(図2(c)参照)。
【0039】
規制板4は、開口部2fの開放又は閉封を行う鉄板であり、図2(a)に示すように、高さH4及び幅W4となるように形成されていると共に、2の貫通孔4a,4aを有している。ここで、高さH4は、開口部2fの高さHよりも高い高さ(H4>H)であり、幅W4は、開口部2fの幅Wよりも小さい幅(W4<W)である。
【0040】
蝶番部材5は、規制板4を揺動可能に懸架する部材であり、図2(b)に示すように、2の略L字状の鉄板5a,5aと、それら鉄板5a,5aを互いに連結する揺動軸5bとを主に備えていると共に、各鉄板5aは2の貫通孔5c,5cを有している。それぞれの鉄板5aが揺動軸5bを回転軸として矢印の方向に回転されることにより、互いの鉄板5aに対して揺動することができる。
【0041】
ここで、規制板4と蝶番部材5とは、上述した規制板4の貫通孔4a,4a及び蝶番部材5の一方の鉄板5aの貫通孔5c,5cにボルト6が蝶番部材5側から挿通されると共に、そのボルト6がナット7により規制板4側から螺合されることでボルト6とナット7とにより挟まれて互いに連結される(図2(c)参照)。
【0042】
また、規制板4と蝶番部材5とを連結することにより組み付けられた規制装置3は、蝶番部材5の他方の鉄板5aの貫通孔5c,5cにボルト8が挿通されると共に、そのボルト8が上面A側の基体2の連通部2eの高さHeと切欠部2dの高さHdとの高さの違いにより形成される段差部2hに規制板4が通路部2g内側となるように螺着されることで基体2に取着される(図2(c)参照)。
【0043】
なお、上述したように、パレット1は2個の基体2を合着することにより構成されているので、規制装置3を一方の基体2に取着した後、その規制装置3が取着された基体2を他方の基体2と合着することで簡単に規制装置3をパレット1へ取着することができる。
【0044】
このように規制装置3を基体2に取着することで、開口部2fから通路部2g内へフォークリフトの爪が挿入される場合には、図2(c)に示すように、規制板4が開口部2fから離間する方向、即ち、矢印O方向へ揺動し開口部2fが開放されるので、爪の通過が許容される。
【0045】
一方、通路部2g内を挿通されたフォークリフトの爪が開口部2fから外部に突出しようとする場合には、図2(c)に示すように、規制板4が開口部2fに近接する方向、即ち、矢印C方向へ揺動し開口部2fが閉封されるので、爪の通過が禁止される。つまり、上述したように、規制板4の高さH4が開口部2fの高さHよりも高いので(H4>H)、規制板4の下端部が開口部2fに当接して規制板4が矢印C方向へ揺動できなくなり、開口部2fが閉封される。
【0046】
上述したように、規制装置3は、規制板4及び蝶番部材5のみにより構成されているので、部品点数が少なくてすみ、フォークリフトの爪の通過を許可又は禁止することの構造を簡略化することができる。その結果、パレット1の部品コストや製造コストが不必要に増加してしまうことを防止することができる。
【0047】
また、上面A側が荷物の載置面とされる場合には、規制板4が蝶番部材5により揺動可能に懸架され、規制板4が開口部2fから離間する方向へ揺動し開口部2fが開放されることでフォークリフトの爪の通過を許容するように構成されているので、爪により規制板4が押し込まれるだけで簡単に開口部2fを開放させることができると共に確実に開口部2fを開放させることができる。
【0048】
これにより、例えば、フォークリフトの運転者が一度フォークリフトから降車して規制板4を手で通路部2g側に押し込み開口部2fを開放させた後、再度フォークリフトに乗車して搬送作業を開始しなければならないといった手間(作業時間)を省くことができるので、その分、作業時間が短縮されて、作業性の向上を図ることができる。
【0049】
更に、上面A側が荷物の載置面とされる場合には、規制板4の下端部が開口部2fに当接しつつ開口部2fを閉封することでフォークリフトの爪の通過を禁止するように構成されているので、爪が開口部2fから外部に突出しようとする力をパレット1全体で吸収することができる。これにより、爪の力を規制板4だけで受け止める場合に比べ、その力をパレット1に分散させることができるので、規制装置3の破損(例えば、蝶番部材5が外れる)を抑制して、規制装置3の耐久性を維持することができる。
【0050】
また、底面B側が荷物の載置面とされる場合には、図2(c)に示すように、規制板4が自重により開口部2fから離間する方向、即ち、矢印O方向へ揺動し開口部2fが開放されたままになるので、フォークリフトの爪が挿入される方向に限らず、爪が開口部2fから外部に突出する方向でもフォークリフトの爪の通過が許容される。よって、従来のパレットと同様のパレットとして使用することができる。つまり、爪の長さがパレット1の長さよりも長い場合には、その爪を開口部2fから外部へ突出させて使用することができる。
【0051】
これにより、例えば、重量物を搬送する場合にはパレット1をフォークリフトの爪の中央部に載置させたり、更に奧まで爪を挿入することにより爪の付け根部分でパレット1を搬送することができるので、荷物の重心位置が爪の先端部側に偏ってしまうことを防止して、荷物の落下に対する安定性を向上させることができる。
【0052】
更に、規制板4の貫通孔4a,4a及び蝶番部材5の鉄板5aの貫通孔5c,5cにボルト6を挿通してナット7で螺合すると共に、規制板4が通路部2g内側となるように規制装置3を基体2に取着するので、規制板4の重心位置を蝶番部材5の揺動軸5bよりも通路部2g内側へ偏心させることができる。よって、底面B側が荷物の載置面とされる場合には、規制板4が直立したままになったり開口部2fに近接する方向、即ち、図2(c)に示す矢印C方向へ倒れて開口部2fが閉封されてしまうことなく、簡単に開口部2fを開放させることができると共に確実に開口部2fを開放させることができる。
【0053】
これにより、例えば、フォークリフトの運転者が一度フォークリフトから降車して規制板4を手で通路部2g側に押し込んで開口部2fを開放させた後、再度フォークリフトに乗車して搬送作業を開始しなければならないといった手間(作業時間)を省くことができると共に、開口部2fが開放されていないことに気づかないまま搬送作業を開始して荷物を落下させてしまうことを未然に防止することができる。
【0054】
以上説明したように、パレット1は、開口部2fから通路部2g内へフォークリフトの爪が挿入される方向には爪の通過を許容し、かつ、通路部2g内を挿通された爪が開口部2fから外部に突出される方向には爪の通過を禁止するので、爪の長さがパレット1の長さよりも長い場合でも、その爪が開口部2fから外部へ突出してしまうことを防止することができる。その結果、突出した爪が搬送している荷物とは別の周囲の荷物等と干渉して、その荷物等に損傷を与えてしまうことを防止することができる。
【0055】
ところで、一般に荷物を保管する倉庫等はスペースが限られているため、その倉庫等のスペースが最大限活用できるように、フォークリフトの運転者は前後及び左右のパレット1同士の間隔が極力少なくなるようにパレット1を配置して、デッドスペースの低減を図っている。また、高さの高い荷物を搬送する場合には、その荷物により視界が妨げられるため、運転者には突出した爪の先端位置を把握することが困難となってしまう。このような状況下においては、特に、爪の突出を防止することが有効となる。
【0056】
また、通路部2gにより開口部2fが貫通されるように構成されているが、通路部2g内を挿通されたフォークリフトの爪が開口部2fから外部に突出される方向のみ爪の通過を禁止する規制装置3が開口部2fに配設されているので、爪が開口部2fから外部へ突出してしまうことを防止することができる一方、パレット1を搬送する際には従来のパレットと同様に、爪を挿入する方向が規制されることがない。よって、どちらの開口部2fからでも爪を挿入することを可能とし、作業性の向上を図ることができる。
【0057】
例えば、開口部2fが貫通されていない場合には爪が開口部2fから外部へ突出してしまうことを防止することは可能だが、常に同じ方向側(開口部2fが設けられた側面2c側)からしか爪を挿入することができないので、その開口部2fに合わせてフォークリフトを移動させなければならない。これに対し、開口部2fが貫通していることで、フォークリフトを移動させるという手間(作業時間)を省くことができるので、その分、作業時間が短縮されて、作業性の向上を図ることができる。
【0058】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定される物ではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0059】
例えば、本実施の形態では、パレット1がポリプロピレン(PP)により形成されていたが、木材やアルミニウム等の金属により形成してもよい。
【0060】
また、本実施の形態では、パレット1が側面2cの互いに対向する側面の内の一方の側面(2c1及び2c3)のみにそれぞれ開口部2fを有するように構成されていたが、互いに対向する側面にそれぞれ開口部2fを有するように構成してもよい。この場合には、4の全ての側面2cに開口部2fを有しているので、4の側面2cのいずれの方向からでもフォークリフトの爪を挿入することを可能とし、更なる作業性の向上を図ることができつつも、突出した爪が搬送している荷物とは別の周囲の荷物等と干渉して、その荷物等に損傷を与えてしまうことを防止することができる。
【0061】
更に、本実施の形態では、パレット1が上面A及び底面Bの両面に荷物を載置可能に構成されていたが、上面Aのみに荷物を載置可能に構成してもよい。この場合には、搬送作業を行う際に上面A及び底面Bを確認しなければならない手間(作業時間)を省くことができるので、その分、作業時間が短縮されて、作業性の向上を図ることができる。
【0062】
また、本実施の形態では、規制装置3が規制板4及び蝶番部材5により構成されていたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば、通路部2g内を移動可能な直方体状の規制部材を備え、フォークリフトの爪が一方の開口部2fから挿入され通路部2gを挿通された場合には、その規制部材が爪により通路部2gに沿って押し進められ他方の開口部2fが閉封されることで爪が開口部から外部へ突出してしまうことを防止するように構成してもよい。
【0063】
更に、本実施の形態では、底面B側が荷物の載置面とされる場合には、規制板4が自重により開口部2fから離間する方向へ揺動し開口部2fが開放されるように構成されていたが、規制板4を開口部2fに近接する方向に付勢する付勢部材を備え、底面B側が荷物の載置面とされる場合でも、開口部2fが閉封された状態に維持できるように構成してもよい。この場合には、底面B側が荷物の載置面とされる場合でも、上面A側が荷物の載置面とされる場合と同様の効果を奏することができる。なお、付勢部材には、ねじりバネが例示される。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】(a)は本発明の一実施の形態におけるパレットの斜視図であり、(b)は基体の斜視図である。
【図2】(a)は規制板の正面図であり、(b)は蝶番部材の斜視図であり、(c)は図1(a)のIIc−IIc線におけるパレットの断面図である。
【符号の説明】
【0065】
1 パレット
2c 側面
2f 開口部
2g 通路部
3 規制装置
4 規制板
5 蝶番部材
A 上面
B 底面
O 揺動の方向(規制板が開口部から離間する方向)
C 揺動の方向(規制板が開口部に近接する方

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する側面にそれぞれ開口する開口部と、前記開口部を互いに連通しフォークリフトの爪が挿通される通路部とを有するパレットにおいて、
前記開口部に配設され、前記開口部から前記通路部内へ前記爪が挿入される方向には前記爪の通過を許容し、かつ、前記通路部内を挿通された前記爪が前記開口部から外部に突出される方向には前記爪の通過を禁止する規制装置を備えていることを特徴とするパレット。
【請求項2】
前記規制装置は、前記通路部内に設けられ前記開口部の開放又は閉封を行う規制板と、前記規制板を揺動可能に懸架する蝶番部材とを備え、
前記規制板が前記開口部から離間する方向へ揺動し前記開口部が開放されることで前記爪の通過が許容され、かつ、前記規制板が前記開口部に近接する方向へ揺動し前記規制板が前記開口部の周縁部の少なくとも一部に当接しつつ前記開口部を閉封することで前記爪の通過が禁止されるように構成されていることを特徴とする請求項1記載のパレット。
【請求項3】
互いに対向し荷物を載置可能な上面及び底面を備え、
前記規制装置は、前記通路部内に設けられ前記開口部の開放又は閉封を行う規制板と、前記規制板を揺動可能に支持する蝶番部材とを備え、
前記上面側が荷物の載置面とされる場合には、前記規制板が前記蝶番部材に懸架され前記規制板が前記開口部から離間する方向へ揺動し前記開口部が開放されることで前記爪の通過が許容され、かつ、前記規制板が前記開口部に近接する方向へ揺動し前記規制板が前記開口部の周縁部の少なくとも一部に当接しつつ前記開口部を閉封することで前記爪の通過が禁止される一方、前記底面側が荷物の載置面とされる場合には、前記規制板が自重により前記開口部から離間する方向へ揺動し前記開口部が開放されることで前記爪の通過が許容されるように構成されていることを特徴とする請求項1記載のパレット。
【請求項4】
前記規制板は、前記規制板の重心位置が前記蝶番部材の揺動軸よりも前記通路部内側へ偏心するように前記蝶番部材に支持され、前記底面側が荷物の載置面とされる場合には、前記規制板が自重により前記開口部から離間する方向へ揺動し前記開口部が開放されることで前記爪の通過が許容されるように構成されていることを特徴とする請求項3記載のパレット。

【図1】
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【図2】
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