説明

パレット

【課題】 軽量で且つ製品に接合のばらつきが少なく、製造効率が高いパレットを提供する。
【解決手段】 本発明に係るパレット1において、桁3は、上部の長手方向に位置決め具5が係止する係止部11を有し、位置決め具5は、上部にデッキ材7が係合する係合部15を、下部に桁3の係止部11に係止する被係止部13を有し、デッキ材7は、下部に位置決め具5との被係合部23と、桁3との接着面24とを有し、位置決め具5が桁3に係止して、デッキ材7と桁3とが接着剤22で接着してあると共に位置決め具5にデッキ材7が係合している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を載置したままフォークリフト等で移動可能なパレットに関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、桁とデッキ材を組み立てて製造したパレットが開示されている。
この非特許文献1には直接の記載はないが、従来係るパレットを製造するときには、デッキ材と桁とを溶接により接合していた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】「三協マテリアル アルミパレット」カタログ 三協マテリアル株式会社 SG.10.04−005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、桁とデッキ材とを溶接する場合には、桁及びデッキ材に所定の肉厚を必要とする為、パレットの重量が重くなるという問題があった。
また、溶接による固定では、溶接技術に熟練を必要とする為、溶接者により接合にばらつきが生じ易いという問題があった。
更に、溶接は時間や人手がかかる為、製造効率が低いという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、軽量で且つ製品に接合のばらつきが少なく、製造効率が高いパレットの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、桁と、位置決め具と、デッキ材とを備え、桁は、上部の長手方向に位置決め具が係止する係止部を有し、位置決め具は、上部にデッキ材が係合する係合部を、下部に桁の係止部に係止する被係止部を有し、デッキ材は、下部に位置決め具との被係合部と、桁との接着面とを有し、位置決め具が桁に係止して、デッキ材と桁とが接着剤で接着してあると共に位置決め具にデッキ材が係合していることを特徴とするパレットである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、桁とデッキ材とは接着剤で接着すると共に桁に係止した位置決め具にデッキ材を係合することにより固定しており、従来技術のように桁とデッキ材とを溶接していないので、桁及びデッキ材の肉厚を要求されず、溶接のように接合にばらつきがなく、且つ溶接のように時間や人がかからないから製造効率が良い。
位置決め具は桁上部の長手方向において所定位置に係止し、位置決め具の係合部にデッキ材の被係合部の位置を合わせてデッキ材を配置すれば良いので、デッキ材の位置決めが容易にできる。
桁とデッキ材とを接着剤により固定してあると共に位置決め具の係合部とデッキ材の被係合部を互いに係合しているので、接着剤が仮に剥がれた場合でもデッキ材の脱落を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1実施の形態に係るパレットの図であり、(a)は組み立て中のパレットの斜視図であり、(b)は桁に位置決め具を装着する工程を説明する斜視図である。
【図2】第1実施の形態に係るパレットの構成部品の図であり、(a)はデッキ材の正面図であり、(b)は桁の側面図であり、(c)は位置決め具の斜視図である。
【図3】第1実施の形態に係るパレットの図であり、(a)は平面図であり、(b)は正面図であり、(c)は側面図であり、(d)は底面図である。
【図4】第2実施の形態に係るパレットの構成部品の図であり、(a)はデッキ材の正面図であり、(b)は桁の側面図であり、(c)は位置決め具の斜視図である。
【図5】図4(c)に示す位置決め具の図であり、(a)は平面図であり、(b)は側面図であり、(c)は正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、添付図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明するが、まず、図1〜図3を参照して本発明の第1実施の形態について説明する。
本実施の形態に係るパレット1は、上面に物品を載置してそのままフォークリフト等で移動するものであり、このパレット1は、図1及び図3に示すように、桁3と、位置決め具5と、デッキ材7とを備えている。
桁3は、左右に間隔をあけて配置してあり、本実施の形態では、合計3本の桁3が略平行に設けてある。各桁3はアルミニウム形材である。
各桁3は、図1(b)及び図2(b)に示すように、前側から見た形状がH型で前後に長くしてあり、垂直壁9と、垂直壁9の上部と下部とに各々左右に突出して位置決め具5を係止可能な係止部11が形成してある。また、図1(a)に示すように、各桁3において、位置決め具5の前後には位置決め具5から所定間隔をあけた位置に接着剤22が塗布されている。接着剤22は、アクリル系接着剤であり、例えば、LORD(登録商標)400(ロード・ファー・イースト・インコーポレテッド製)である。
【0010】
位置決め具5は、図1(a)及び図2(c)に示すように、桁3の係止部11に係止する被係止部13と、デッキ材7に係合する係合部15とを備えている。被係止部13は左右から桁3の係止部11を挟むと共に桁3の係止部11が挿入される溝17が形成してある。係合部15は、桁3の係止部11との間に空間Sを形成するように上方に突設してある。位置決め具5は本実施の形態では、アルミニウム形材製であり、桁3の係止部11に被係止部13を挿通して所定位置で、被係止部13をかしめ固定してある。
図3(b)に拡大して示すように、位置決め具5の上面5aと対向するデッキ材7の下面7aとの間には隙間T1が形成されている。
【0011】
デッキ材7は、図1(a)及び図2(a)に示すように、上面部19が平坦であり、上面部19の下には前後に間隔をあけて設けた中空部21が形成されている。前後の中空部21、21間には、位置決め具5の係合部15に係合する被係合部23が設けてある。被係合部23は、互いに対向してあり且つ上面部19から下方に突設する一対の突出部25を有し、各突出部25の対向側面には互いに対向する側に向けて突出する突起部27が形成されている。尚、デッキ材7はアルミニウム形材である。
図1(a)及び図3(b)に示すように、デッキ材7はその中空部21、21の下面(接着面)24を桁3に塗布した接着剤22上に配置して桁3に接着されていると共に被係合部23が位置決め具5の係合部15に係合して固定してある。
図1及び図2に示すように、デッキ材7は、桁3の上部側に7枚が等間隔で固定されて物品の載置面としてあり、桁3の下部側には3枚が固定されて底面としてある。
【0012】
次に、本実施の形態に係るパレット1の組み立て、作用効果について、説明する。
パレットの組み立ては、まず底面を形成する。3つの桁3を、間隔をあけて略平行に配置し、各桁3に位置決め具5を取り付ける。位置決め具5の取付けは、図1(b)に示すように、桁3の係止部11にその長手方向の端から位置決め具5の被係止部13の溝17を挿入して、位置決め具5を所定位置にスライドする。
各位置決め具5を所定位置に取付けた後、位置決め具5の被係止部13をかしめて桁3の係止部11に固定する。そして、各桁3の係止部11の所定位置に全ての位置決め具5を固定したところで、各位置決め具5の前後の所定寸法離れた位置に接着剤22を塗布する。
次に、デッキ材7の中空部21を下に向けて、デッキ材7の被係合部23が各位置決め具5の係合部15に対応する位置に配置して、デッキ材7を下に向けて押し付ける。これにより、被係合部23に設けてある突出部25、25の突起部27、27が位置決め具5の係合部15に押されて広がり、突起部27、27を乗り越えたところで、突出部27、27が復帰して、図3(b)に示すように、位置決め具5の係合部15にデッキ材7の被係合部が係合する。同時に中空部21の下面24が接着剤22により桁3に接着される。
このようにして、桁3の上部に3つのデッキ材7を取付けて底面を形成した後、3つのデッキ7を取付けた底面を下にするように上下をひっくり返して、上述した方法と同様にして桁3の上部にある係止部11に位置決め具5を取付け、接着剤22を塗布した後、デッキ材7を桁3の上部に押し付けて、被係合部23を位置決め具5の係合部15に係合すると共に中空部21の下面24を接着剤22に接着する。その後、所定時間養生して接着剤22を硬化させることで、桁3に設けた各デッキ材7を固定する。
【0013】
この第1実施の形態によれば、各桁3とデッキ材7とは接着剤22で接着すると共に桁3に係止した位置決め具5にデッキ材7を係合することにより固定しており、従来技術のように桁3とデッキ材7とを溶接していないので、桁3及びデッキ材7の肉厚を要求されないから、重量を軽くできる。例えば、従来14〜15Kgあった大きさのパレットを本実施の形態によれば、8Kg以下にできた。
また、桁3とデッキ材7を溶接しないから、溶接設備が不要であると共に、溶接のように接合にばらつきがなく、且つ溶接のように時間や人がかからないから製造効率が良い。例えば、従来2人で5分程の組み立て時間がかかっていたものについて、本実施の形態では、1人で2.5分程の組立時間であった。尚、接着剤22の硬化時間は、その接着剤の種類によっても異なるが、45分程で硬化するものでも良いし、1日程度で硬化するものでも良い。
桁3に取付けた位置決め具5により、デッキ材7を配置する位置を決めているので、デッキ材7の取付けが容易にできる。
桁3とデッキ材7とを接着剤22により固定してあると共に位置決め具5の係合部15とデッキ材7の被係合部を互いに係合しているので、接着剤22による固定部が仮に剥がれた場合でもデッキ材7の脱落を防止できる。
【0014】
更に、桁3とデッキ材7を溶接しないので、桁3とデッキ材7とに被膜処理したアルミニウム形材を用いることができ、被膜処理したアルミニウム形材を用いた場合にはパレット1が傷つき難く且つ酸化を防止できる。
デッキ材7は、位置決め具5の係合部15に係合する被係合部23を前後の中央部に設けており、デッキ材7の前後方向中央となるところに位置決め具5を配置すれば良いので、位置決めが容易にできる。
位置決め具5は被係止部13に溝17を形成してあり、溝17に桁3の係止部11を端から挿通して、所定位置にスライドできるようにしているので、位置決め具5の取付けが容易にできる。
図3(b)に示すように、位置決め具5の係合部15とデッキ材7の被係合部23との間には、隙間T1が形成されているから、パレット1の上に物品を載置しているときに、デッキ材7の荷重は桁3のみが受け、位置決め具5に負荷がかからないので、位置決め具5の変形や損傷を防止できる。
【0015】
以下に本発明の他の実施の形態を説明するが、以下に説明する実施の形態において、上述した第1実施の形態と同一の作用効果を奏する部分には同一の符号を付することによりその部分の詳細な説明を省略し、以下の説明では第1実施の形態と主に異なる点を説明する。
図4及び図5を参照して本発明の第2実施の形態を説明する。第2実施の形態にかかるパレット1は、主に桁3の形状及び位置決め具5の形状を変えたものである。
桁3は、図4(b)に示すように、係止部11の左右の各端に突起31を形成してあり、各突起31の上下方向の寸法W1は例えば2mmにしている。
図4(c)及び図5(b)に示すように、位置決め具5は、被係止部13の端部33を湾曲して本体部35側に近接してあり、図5(b)に示すように、本端部35との間の寸法W2を狭めており、W2は例えば0.8mmとしてある。位置決め具5の被係止部13の溝17内の上下寸法W3は桁3の係止部11の突起31の寸法W1よりも大きく、例えば3mmである。
図4(c)に示すように、位置決め具5において、係合部15は本体部35の前後に立上がり部37を設けてデッキ材7の被係合23に対向してある。尚、位置決め具5は、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂)又はPP(ポリプロピレン)製である。
また、図4(a)に示すように、デッキ材7の被係合部23の突起部27の上面を略水平形状にすると共に突起部27の突設寸法を第1実施の形態よりも大きくして、位置決め具5の係合部15に面で噛み合うようにしている。更に、位置決め具5の係合部15とデッキ材の被係合23との間に隙間T1が生じるように、立上がり部37の上下寸法を設定してある。
【0016】
この第2実施の形態によれば、上述した第1実施の形態と同様の作用効果を奏すると共に、図4(b)に示すように、桁3の係止部11には突起31を形成してその上下寸法W1としてあり、図5(b)に示すように、位置決め具5は、被係止部13の端部33と本体部35と間の寸法W2を桁3の突起31の寸法W1よりも狭くしているので、位置決め具5を弾力によって桁3に保持することができ、第1実施の形態のように位置決め具5を桁3に保持する為のかしめ等が不要である。
図4(a)に示すように、デッキ材7の被係合部23の突起部27を略水平面にすると共に突起部の突設寸法を第1実施の形態よりも大きくして、デッキ材7の被係合部23と位置決め具5の係合部15とが面で噛み合うようにしているので、接着剤が剥がれた場合に、位置決め具5がデッキ材7を強固に保持してその脱落を防止できると共に接着剤が硬化する前にパレット1をフォークリフト等で移動した場合でもデッキ材7の脱落を防止できる。
【0017】
本発明は、上述した実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
例えば、第1及び第2実施の形態では、パレット1の上面にのみ物品を載置するデッキ材7を設けたが、これに限らず底面においても、上面と同様にデッキ材7を配置してパレット1の両面を物品の載置面として使用可能にしても良い。また、パレット1の上面のみにデッキ材7を設け、下面にはデッキ材7を設けなくても良い。
第1及び第2実施の形態において、桁3は左右に間隔をあけて合計3本設けることに限らず、2本や4本設けるものであっても良く、桁の数は制限されない。
桁3は、側面形状がH型に限らず、コ字型や角パイプであっても良くその形状は限定されない。
接着剤22は、位置決め具5の前後位置で桁3に塗布することに限らず、桁の全面に塗布しても良いし、デッキ材7の中空部21の下面24にのみ塗布しても良い。
第1実施の形態において、位置決め具5はその被係止部13を桁3の係止部11にねじで固定しても良いし、樹脂材で形成すると共に被係止部13の溝17の上下寸法を桁3の係合部15の厚みよりも小さくして、被係止部13が桁3の係止部11を弾性により圧接して桁3の任意の位置で係止するようにしても良い。
【符号の説明】
【0018】
1 パレット
3 桁
5 位置決め具
7 デッキ材
11 係止部
13 被係止部
15 係合部
22 接着剤
23 被係合部
24 デッキ材の下面(接着面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
桁と、位置決め具と、デッキ材とを備え、桁は、上部の長手方向に位置決め具が係止する係止部を有し、位置決め具は、上部にデッキ材が係合する係合部を、下部に桁の係止部に係止する被係止部を有し、デッキ材は、下部に位置決め具との被係合部と、桁との接着面とを有し、位置決め具が桁に係止して、デッキ材と桁とが接着剤で接着してあると共に位置決め具にデッキ材が係合していることを特徴とするパレット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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