説明

パワーデバイスの駆動回路

【目的】 パワーデバイスの駆動回路において、制御電源電圧がパワーデバイスのスイッチングにより変動しても誤動作しないようにする。
【構成】 パワーデバイスの駆動回路において、パワーデバイス2のしきい値電圧(Vth)より十分大きな電圧が必要なドライブ回路11には制御電源4を直接接続し、制御回路12,保護回路13には、制御電源4から降圧型のレギュレータ回路15により制御電源4より低く安定化した電圧を供給するように構成する。さらに、レギュレータ回路15による安定化した電圧をホトカプラ5による絶縁回路の電源として構成した。従って、パワーデバイス2のスイッチングによる制御電源電圧の変動や,パワーデバイス2のスイッチング時に発生するdV/dt,dI/dtによって、誤動作しないパワーデバイスの駆動回路が得られる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はパワーデバイスの駆動回路に関し、特にMOS系デバイスの駆動回路における誤動作防止回路に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来のパワーデバイスの駆動回路の一例を図4に示して説明する。この従来の駆動回路10は、図4に示すように、パワーデバイス2のゲートを駆動するドライブ回路11と、このパワーデバイス2の電流,電圧,温度などのセンサー14より過電流,過電圧,過熱を検出しパワーデバイスを保護するための信号を出力する保護回路13と、外部からの信号入力IN1と保護回路13よりの信号よりパワーデバイス2をオン・オフさせる信号をドライブ回路11に出力する制御回路12から構成されている。この時、外部の制御電源4はドライブ回路11,制御回路12,保護回路13に接続されて電源電圧を供給しており、この制御電源4の電源電圧は、パワーデバイス2を十分にオンさせるためのパワーデバイスのしきい値電圧Vthより十分大きく設定されている。
【0003】ところで、パワーデバイスの駆動回路はモノリシックICやハイブリッドICによって構成される場合が多く、さらに、パワーデバイス2,駆動回路10,制御電源4は、入力信号を発生する回路部分とは電気的に絶縁されている。図5は、入力信号INに対しホトカプラを用いて絶縁を行った従来の回路である。図5において、ホトカプラ5のカソード端子5K,エミッタ端子5Eはそれぞれ制御電源4の正極,負極に、そしてコレクタ端子5Cは駆動回路10の信号入力端子101に接続され、ホトカプラ5のカソード端子5Kとエミッタ端子5E間には負荷抵抗6が接続されている。なお、図中2はパワーデバイス1の負荷、16はそのゲート抵抗である。また5a,5bはホトカプラ5の1次側入力端子であり、51はホトカプラ5を構成する発光素子、52および53は同じくその受光用ダイオード,トランジスタである。但しVDは主電源を表わす。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来のパワーデバイスの駆動回路は以上のように構成されているので、パワーデバイスをオン・オフするときに発生するゲート容量の充放電電流による制御電源電圧の配線による電圧降下による変動と、パワーデバイスのスイッチング時に発生する大きなdV/dt,dI/dtの影響により制御電源電圧の変動が発生する。そのため、この制御電源電圧の変動により駆動回路の中の制御回路,保護回路が誤動作するという問題があった。
【0005】また、ホトカプラによる絶縁回路において、その電源を駆動回路の制御電源と共用しているためホトカプラの電源としては電源電圧が高く、そのために負荷抵抗6の抵抗値を大きくしなければならず、ホトカプラの絶縁回路の出力インピーダンスが大きくなり、パワーデバイスのスイッチング時に発生する大きなdV/dt,dI/dtの影響により絶縁回路が誤動作するという問題があった。
【0006】本発明は上記のような問題点を解消するためになされたもので、制御電源電圧が、パワーデバイスのスイッチングにより変動しても、誤動作しないパワーデバイスの駆動回路を得ることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明に係るパワーデバイスの駆動回路は、パワーデバイスのゲートを駆動するドライブ回路と、そのパワーデバイスを保護する保護回路と、制御回路と、降圧型のレギュレータ回路からなり、パワーデバイスのしきい値電圧Vthより十分大きな電圧が必要なドライブ回路には外部の制御電源を直接接続し、その他の制御回路および保護回路部には、外部の制御電源から降圧型レギュレータ回路によりその制御電源より低く安定化した電圧を供給するようにしたものである。また、本発明の別の発明に係る駆動回路は、上記のものにおいて、レギュレータ回路による安定化した電圧をホトカプラによる絶縁回路の電源として用いるようにしたものである。
【0008】
【作用】本発明におけるパワーデバイスの駆動回路は、降圧型のレギュレータ回路により制御電源より低く安定化した電圧を制御回路,保護回路に供給するようにしたので、制御電源電圧がパワーデバイスのスイッチングにより変動した場合、降圧型のレギュレータ回路により安定化された電圧が制御回路,保護回路に供給される。そのため、制御電源電圧が変動しても、パワーデバイスの駆動回路は誤動作しない。
【0009】また、本発明の別の発明においては、ホトカプラによる絶縁回路の電源として降圧型のレギュレータ回路により制御電源より低く安定化した電圧を用いることにより、絶縁回路の出力インピーダンスを小さくすることができ、絶縁回路の誤動作を防止できる。
【0010】
【実施例】以下、本発明の実施例を図について説明する。図1は本発明の一実施例を示すブロック図である。この実施例の駆動回路1は、図1に示すように、パワーデバイス2のゲートを駆動するドライブ回路11と、このパワーデバイス2の電流,電圧,温度などのセンサー14より過電流,過電圧,過熱などを検出しパワーデバイス2を保護するための信号を出力する保護回路13と、外部からの信号入力IN1 と保護回路13よりの信号よりパワーデバイス2をオン・オフさせる信号をドライブ回路11に出力する制御回路12と、外部の制御電源4よりその第1の電圧より低い第2の電圧を発生させる降圧型のレギュレータ回路15から構成されている。
【0011】そして外部の制御電源4は、ドライブ回路11には直接接続されている。制御回路12および保護回路13には、外部の制御電源4から降圧型のレギュレータ回路15を通して電源を供給している。この場合、制御電源4の電源電圧は、ドライブ回路11を通してパワーデバイス2を十分にオンさせるためパワーデバイスのしきい値電圧Vthより十分大きく設定されている。降圧型のレギュレータ回路15の出力電圧は、制御電源4より低く安定化した電圧で、制御回路12,保護回路13に供給するものとなっている。
【0012】このように上記実施例構成の駆動回路によると、パワーデバイス2をオン・オフするときに発生するゲート容量の充放電電流による制御電源電圧の配線による電圧降下による変動と、パワーデバイス2のスイッチング時に発生する大きなdV/dt,dI/dtの影響により制御電源電圧の変動が発生するが、制御電源4の変動は降圧型のレギュレータ回路15により吸収され、このレギュレータ回路15の出力電圧は制御電源4より低く安定化した電圧となり、制御回路12,保護回路13に供給されている。従って、この制御電源電圧が変動しても、パワーデバイスの駆動回路は誤動作しない。
【0013】図2は、降圧型のレギュレータ回路15の制御電源4より低く安定化した出力電圧をホトカプラ5による絶縁回路の電源として用いた例である。図2において、ホトカプラ5の2次側カソード端子5K は降圧型のレギュレータ回路15の出力が印加される出力電圧端子12に、そのエミッタ端子5Eは制御電源4の負極側に、コレクタ端子5Cは駆動回路1の信号入力端子11に接続され、ホトカプラ5のカソード端子5K,エミッタ端子5E間には負荷抵抗6が接続されている。なお、図中同一符号は同一または相当部分を示している。
【0014】このように図2の実施例によると、パワーデバイス2のスイッチング時に発生する大きなdV/dt,dI/dtの影響は、ホトカプラ5のカソード端子5Kを降圧型のレギュレータ回路15の出力に接続したことにより、絶縁回路の電源が制御電源4を用いた場合に比べて電圧が低くなる。そのため、負荷抵抗6の抵抗値を小さい値に設定できるので、絶縁回路の出力インピーダンスを小さくすることが可能になり、絶縁回路の誤動作を防止できる。
【0015】一方、上記実施例のパワーデバイスの駆動回路部分は、モノリシックICやハイブリッドICによって構成される場合が多く、降圧型のレギュレータ回路15は、容易に追加することが可能である。しかし、ホトカプラによる絶縁回路の電源として降圧型のレギュレータ回路15の出力電圧を用いた場合、モノリシックICやハイブリッドICの端子数の増加が必要となる。
【0016】図3は、ホトカプラによる絶縁回路の電源として降圧型のレギュレータ回路の出力電圧を用いた場合において、モノリシックICやハイブリッドICの端子数の増加を伴わない場合の実施例である。図3において、ホトカプラ5の2次側カソード端子5K,エミッタ端子5Eはそれぞれ制御電源4の正極,負極側に、さらにコレクタ端子5C は駆動回路1の信号入力端子11 に接続されている。そして負荷抵抗6は駆動回路1内で、その信号入力端子11 とレギュレータ回路15の出力間に接続されている。このように負荷抵抗6を、駆動回路1内で、その信号入力端子11 とレギュレータ回路15の出力間に接続した場合においても、上記実施例と同様の効果を奏する。
【0017】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、パワーデバイスの駆動回路において、パワーデバイスのしきい値電圧Vthより十分大きな電圧が必要なドライブ回路には制御電源を直接接続し、制御回路,保護回路には、制御電源から降圧型のレギュレータ回路により制御電源より低く安定化した電圧を供給するように構成し、さらに、レギュレータ回路による安定化した電圧をホトカプラによる絶縁回路の電源として構成したので、パワーデバイスのスイッチングによる制御電源電圧の変動や、パワーデバイスのスイッチング時に発生するdV/dt,dI/dtによって、誤動作しないパワーデバイスの駆動回路が得られる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例によるパワーデバイスの駆動回路のブロック図である。
【図2】本発明の一実施例によるホトカプラ絶縁回路のブロック図である。
【図3】本発明の他の実施例によるホトカプラ絶縁回路のブロック図である。
【図4】従来のパワーデバイスの駆動回路のブロック図である。
【図5】従来のホトカプラ絶縁回路のブロック図である。
【符号の説明】
2 パワーデバイス
3 負荷
4 制御電源
5 ホトカプラ
6 負荷抵抗
11 ドライブ回路
12 制御回路
13 保護回路
15 降圧型レギュレータ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】 パワーデバイスのゲートに接続されたドライブ回路と、前記パワーデバイスの異常状態を検出しそのパワーデバイスの保護を行う保護回路と、入力信号と前記保護回路の出力より前記パワーデバイスの制御を行う制御回路と、外部の第1電源よりその第1の電圧より低い第2の電圧を発生させる降圧型のレギュレータ回路とを備え、前記ドライブ回路は、前記第1電源より第1の電圧を印加して動作させ、前記制御回路及び保護回路は、前記レギュレータ回路を介して前記第1電源の第1の電圧より低い第2の電圧を印加して動作させるようにしたことを特徴とするパワーデバイスの駆動回路。
【請求項2】 請求項1記載のパワーデバイスの駆動回路において、パワーデバイスのゲート駆動における入力信号の電気的絶縁回路はホトカプラからなり、このホトカプラの2次側カソード端子はレギュレータ回路より第2の電圧を印加し、そのエミッタ端子は第1電源の負極側に、さらにコレクタ端子は前記パワーデバイスの駆動回路の信号入力端子にそれぞれ接続し、前記ホトカプラのカソード端子,エミッタ端子間に抵抗を接続したことを特徴とするパワーデバイスの駆動回路。
【請求項3】 請求項1記載のパワーデバイスの駆動回路において、パワーデバイスのゲート駆動における入力信号の電気的絶縁回路はホトカプラからなり、このホトカプラの2次側カソード端子は第1電源の正極に、そのエミッタ端子は第1電源の負極に、さらにコレクタ端子は前記パワーデバイスの駆動回路の信号入力端子にそれぞれ接続し、該パワーデバイスの駆動回路の信号入力端子に、抵抗を通してレギュレータ回路より第2の電圧を印加したことを特徴とするパワーデバイスの駆動回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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