説明

パンクシーリング剤の製造方法

【課題】ラテックスの不安定化(凝集等)を抑制して製造時のゲル化を防止しながら、生産性が効果的に向上されたパンクシーリング剤の製造方法を提供する。
【解決手段】不凍液、粘着剤エマルジョン及び水を含み、前記不凍液及び前記粘着剤エマルジョンの少なくとも一方が水で希釈された状態で混合された混合液と、ラテックスとを混合する混合工程を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンク箇所を補修するパンクシーリング剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パンクが発生した際にその発生箇所をシールするための補修剤であるパンクシーリング剤は、(1)パンクシーリング剤の本来の機能であるパンクしたタイヤの孔をシールするパンクシール性、(2)パンクシーリング剤の粘度を低くし、バルブ等からパンクシーリング剤を注入し易くする観点から、注入容易性、(3)低温環境下でも使用可能な、ある程度の不凍性、(4)長期間保存可能な保存安定性、等が要求される。
【0003】
パンクシーリング剤は、パンクシーリング剤を構成する成分を攪拌混合して製造するのが一般的であるが、ラテックス中のゴム等の粒子が凝集して溶液がクリーム化・ゲル化等、不安定化する問題がある。例えば、不凍液として用いられるプロピレングリコールは水との混和力が強い粘性の液体であり、ゴムラテックスと接触した際に水分を急激に吸収し易いため、ラテックス中の粒子濃度が高くなって融合し、凝集塊が生成されやすくなる。
【0004】
このような問題に対し、従来から種々の提案がなされており、例えば、混合する各成分の混合順序に着目した製造方法がある。例えば、ゴムラテックス凝集塊に起因するシーリング剤のゲル化を効果的に防止することを目的として、不凍液と水とを混合する第1の混合工程と、前記第1の混合工程を経た混合液とゴムラテックスとを混合する第2の混合工程と、前記第2の混合工程を経た混合液と粘着剤とを混合する第3の混合工程と、を含むパンクシーリング剤の製造方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、ゴムラテックスと水とを混合する第1の混合工程と、凍結防止剤と粘着剤とを混合する第2の混合工程と、前記第1の混合工程を経た混合液と前記第2の混合工程を経た混合液とを混合する第3の混合工程と、前記第3の混合工程後に濾過を行う濾過工程とを含むパンクシーリング剤の製造方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、各成分の混合操作に着目したパンクシーリング剤の製造方法も開示されている。
このようなものとして、例えば、ゴム凝集塊の生成を大幅に抑制することを目的として、不凍液を5〜20リッター/分の注入速度で、粘着剤を含有するゴムラテックスに注入するとともに、30〜400rpmの回転速度で攪拌するタイヤのパンクシーリング剤の製造方法が提案されている(例えば、特許文献3〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2008/032765号パンフレット
【特許文献2】特開2008−069253号公報
【特許文献3】特開2003−193029号公報
【特許文献4】特開2003−193030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、不凍液を直接ラテックスに滴下した際のラテックスの不安定化を防止するため、予め不凍液を水で薄めてラテックス中に滴下することで、ラテックスの凝集(例えばゲル化)に対する抑制効果が期待できるが、その抑制効果は必ずしも充分ではなく、依然としてラテックスへの滴下速度をある一定の速度以下に保つことが必要とされている。そのため、生産性向上の観点では、ラテックスへの滴下に要する時間の更なる短縮も望まれている。また、上記のようにゴムラテックス及び水を混合する工程と凍結防止剤及び粘着剤を混合する工程を設けた方法では、製造ラインの上流部で第1及び第2の混合用の2つの撹拌槽を設ける必要がある上、凍結防止剤と粘着剤との混合に時間を要するため、生産性の点も改善の余地が大きい。
【0008】
また、粘着剤を含有する場合、粘着剤として用いる粘着剤エマルジョンは保管中に固形分が沈降しやすい傾向にある。そのため、パンクシーリング剤の製造前に予め撹拌処理(事前撹拌)を施しておく必要があり、生産性向上の観点からは、この事前撹拌に要する時間の短縮化も望まれる。
【0009】
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、ラテックスの不安定化(凝集等)を抑制して製造時のゲル化を防止しつつ、生産性が効果的に向上されたパンクシーリング剤の製造方法を提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、不凍液等を水で希釈することに加え、不凍液にさらに粘着剤を付加して不凍液濃度をより低くすることが、ラテックスと混合した際のラテックスの不安定化低減に効果的であり、工程上の効率化も図れるとの知見を得、かかる知見に基づいて達成されたものである。
【0011】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 不凍液、粘着剤エマルジョン及び水を含み、前記不凍液及び前記粘着剤エマルジョンの少なくとも一方が水で希釈された状態で混合された混合液と、ラテックスと、を混合する混合工程を有するパンクシーリング剤の製造方法である。
【0012】
前記<1>に記載の発明によれば、ラテックスを混合する前に予め、不凍液と粘着剤と水とが混合された混合液の状態としておくことで、ラテックスと混合される混合液中の不凍液の濃度を、ラテックスとの混合時にゲル化が生じない程度に低く抑えられるので、ラテックスの凝集等の不安定化、それに伴うゲル化が抑制され、ラテックスとの混合速度(例えば、不凍液、粘着剤及び水の混合液をラテックスに滴下する際の滴下速度)の上限を上げることができる。その結果として、パンクシーリング剤の生産工程全体に要する時間が短縮され、シール性の良好なパンクシーリング剤の生産性が効果的に向上される。
【0013】
<2> 前記混合液は、前記不凍液が水で希釈された水溶液と前記粘着剤エマルジョンとを混合して調製する前記<1>に記載のパンクシーリング剤の製造方法である。
【0014】
前記<2>に記載の発明によれば、混合液の調製に際し、不凍液が水で希釈された水溶液と粘着剤エマルジョンとの混合形態に構成することで、不凍液を水で希釈する過程と並行して、粘着剤エマルジョンの事前撹拌を行なえる。これにより、前記混合時のゲル化抑制に加え、更にパンクシーリング剤の生産工程に要する時間が短縮され、生産性がより効果的に向上される。
【0015】
<3> 前記混合液は、前記粘着剤エマルジョンが水で希釈された水溶液に前記不凍液を混合して調製する前記<1>に記載のパンクシーリング剤の製造方法である。
【0016】
前記<3>に記載の発明によれば、混合液の調製に際し、粘着剤エマルジョンが水で希釈された溶液と不凍液との混合形態に構成することで、粘着剤エマルジョンを予め水で希釈して準備しておいた水溶液を使用でき、この希釈された粘着剤エマルジョンは保管時の固形分沈降量が少ないために事前撹拌時間の短縮化が図れる。また、粘着剤エマルジョンを水で希釈する過程を待たずに不凍液の混合が可能になる。これにより、前記混合時のゲル化抑制に加え、更にパンクシーリング剤の生産工程に要する時間が短縮され、生産性がより効果的に向上される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ラテックスの不安定化(凝集等)を抑制して製造時のゲル化を防止しつつ、生産性が効果的に向上されたパンクシーリング剤の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】パンクシーリング剤をタイヤに充填するために用いられるシーリング・ポンプアップ装置の一例を示す概略図である。
【図2】パンクシーリング剤をタイヤに充填するために用いられるシーリング・ポンプアップ装置の他の例を示す概略図であり、(A)はパンクシーリング剤の収納容器であるボトルの使用例を示す概略図であり、(B)はエアコンプレッサの使用例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明のパンクシーリング剤の製造方法について詳細に説明する。
本発明のパンクシーリング剤の製造方法は、不凍液、粘着剤エマルジョン及び水を含み、不凍液及び粘着剤エマルジョンの少なくとも一方が水で希釈された状態で混合された混合液と、ラテックスとを混合する混合工程を設けて構成されたものである。また、本発明のパンクシーリング剤の製造方法は、必要に応じて、さらに濾過工程や凝集塊成長工程などの他の工程を設けて構成することができる。
【0020】
一般に不凍液をラテックス中に滴下するとラテックスの不安定化を招きやすい。そのため、本発明においては、ラテックスを混合する前に予め、不凍液と粘着剤エマルジョンと水とが混合された混合液の状態にしておくことで、ラテックスと混合される混合液中の不凍液の濃度が、ラテックスとの混合時にゲル化が生じない程度に低く抑えられる。すなわち、ラテックスの不安定化に影響する不凍液を、水と粘着剤エマルジョンとで従来(不凍液及び水の混合)よりも更に薄めた状態とする。これより、不凍液が濃度の高い状態でラテックスと混ざり合うことがなく、ラテックスの凝集等の不安定化、それに伴う混合液のゲル化に対する抑制効果が高まり、ラテックス凝集塊の発生をより効果的に防止できる。
【0021】
また、ラテックスの凝集等の前記抑制効果の向上により、ラテックスと混合された際の混合速度、例えば不凍液、粘着剤及び水の混合液をラテックスに滴下する際の滴下速度を上げることが可能になる。
その結果として、ラテックスの不安定化を抑えつつも、パンクシーリング剤の製造工程全体に要する時間をより短縮し、生産性を効率的に向上できる。
【0022】
本発明における混合工程に用いる混合液は、少なくとも、不凍液、粘着剤エマルジョン、及び水を含み、ラテックスと混合された際にラテックスの凝集等や混合後の液のゲル化を生じない程度に不凍液濃度が低く調整されている。この混合液は、ラテックスとの混合に合わせて、不凍液と粘着剤エマルジョンと水とを混合して調製してもよいし、混合前に予め、不凍液と粘着剤エマルジョンと水とを混合して調製しておいたものを使用してもよい。
【0023】
また、不凍液と粘着剤エマルジョンと水との混合は、これら全てを一括して混合してもよいが、工程時間の短縮の点で、(1)不凍液が水で希釈された水溶液と粘着剤エマルジョン(及び必要に応じて水)とを混合するか、あるいは(2)粘着剤エマルジョンが水で希釈された水溶液と不凍液(及び必要に応じて水)とを混合する形態が好ましい。
【0024】
(1)不凍液が水で希釈された水溶液と粘着剤エマルジョン(及び必要に応じて水)とを混合する場合、不凍液が水で希釈された水溶液に対して粘着剤エマルジョンを混合するようにしてもよい。好ましくは、不凍液の濃度が75〜85質量%である不凍液含有水溶液に粘着剤エマルジョンを混合する。この場合、不凍液が水で希釈された水溶液に粘着剤エマルジョンを0.1〜10kg/minの滴下速度で滴下することができる。
(2)粘着剤エマルジョンが水で希釈された溶液と不凍液(及び必要に応じて水)とを混合する場合、粘着剤エマルジョンが水で希釈された溶液に不凍液を混合してもよい。好ましくは、粘着剤エマルジョンが水で希釈されて粘着剤の固形分濃度が10〜30質量%の粘着剤エマルジョンに不凍液を混合する。この場合、粘着剤エマルジョンが水で希釈された溶液に不凍液を0.1〜5kg/minの滴下速度で滴下することができる。
【0025】
本発明における混合液としては、混合液全質量に対して35〜50質量%の不凍液と、混合液全質量に対する固形分量が1.5〜6質量%の粘着剤と、水とを含む混合液である場合が好ましい。
【0026】
混合液の攪拌は、公知の撹拌装置を目的や場合に応じて適宜選択することができる。
混合液の攪拌速度の変化量は一定であることが好ましく、例えば、混合液の攪拌速度の変化量を1rpm/mlと定める場合、混合液の体積が1mlであるときは攪拌速度を1rpmとし、混合液の体積が3mlであるときは攪拌速度を3rpmとすることができる。混合液の攪拌速度は、混合液の液量が増加すると共に随時増加してもよいし、一定体積で増加するごとに増加してもよい。
【0027】
本発明における不凍液は、パンクシーリング剤を寒冷地で用いたときに、パンクシーリング剤の凍結を防止するものであり、凍結防止機能を有するものであれば特に制限はない。不凍液としては、例えば、1価のアルコールや2価のアルコールを用いることができる。不凍液の具体例には、エタノール、1−プロパノール、エチレングリコール(EG)、及びプロピレングリコール(PG)等を挙げることができる。アルコールは、直鎖でも分岐でも環状でもよく、中でも、安全性の観点からはプロピレングリコール(PG)を用いることが好ましく、パンクシーリング剤の低粘度化の観点からは、炭素数1〜5の1価のアルコールを用いることが好ましい。
【0028】
ラテックスと混合する混合液中における不凍液の混合濃度は、ラテックスとの混合によるゲル化防止の点から、粘着剤エマルジョン及び水の合計量に対して、200〜250質量%の範囲が好ましく、220〜240質量%の範囲がより好ましい。不凍液の含有比は、200質量%以上であると凍結防止に効果的であり、250質量%以下であるとラテックスの不安定化を来たすことがない。
【0029】
また、不凍液のパンクシーリング剤中における含有量としては、特に制限はないが、低温時の凍結防止性の観点から、パンクシーリング剤の全質量に対して5質量%〜90質量%であることが好ましい。より好ましくは、10質量%〜50質量%である。
不凍液は、1種単独で用いるほか、2種以上を混合して用いてもよい。
【0030】
本発明における粘着剤エマルジョンは、粘着剤の乳化分散物であり、粘着剤は主としてラテックスの固形分である合成ゴムや合成樹脂のタイヤへの接着力を向上させるものである。粘着剤は、本発明の効果を損なうものでなければ特に制限はなく、例えば、樹脂系粘着剤を好適に用いることができる。
【0031】
前記樹脂系粘着剤としては、例えば、天然樹脂、変性ロジン及び変性ロジンの誘導体、テルペン系樹脂及びテルペン変性体、脂肪族系炭化水素樹脂、シクロペンタジエン樹脂;芳香族系石油樹脂、フェノール系樹脂、アルキルフェノールアセチレン系樹脂、スチレン系樹脂、キシレン系樹脂、クマロン・インデン樹脂、及びビニルトルエン−αメチルスチレン共重合体を挙げることができる。
【0032】
前記天然樹脂としては、ロジン、ダンマル等が挙げられる。
前記変性ロジン及び変性ロジンの誘導体としては、重合ロジン(例えば、ロジン酸エステル樹脂等)、部分水添ロジン等が挙げられる。
前記テルペン系樹脂及びテルペン変性体としては、ピネン、α−ピネンフェノール樹脂、ジペンテンフェノール樹脂、テルペンビスフェノール樹脂等のテルペンフェノール樹脂、又はこれらを水素添化したものなどが挙げられる。
前記脂肪族系炭化水素樹脂としては、オレフィン、オレフィン重合体等が挙げられる。
【0033】
また、アクリル系粘着剤、水溶性粘着剤等を用いることもできる。
【0034】
中でも、ラテックスを凝固しにくく、ラテックス固形分とタイヤとの接着性に優れるとの観点から、テルペンフェノール樹脂又はロジン酸エステル樹脂を用いることが好ましい。
【0035】
粘着剤は、ラテックスとの混和性やパンクシール性の向上を考慮して、粘着剤エマルジョンとして用い、ラテックスに適合するものを使用することが好ましい。ここで、粘着剤エマルジョンがラテックスに「適合」するとは、粘着剤エマルジョンがラテックスを少しも凝固させるものではないことを意味し、粘着剤エマルジョンがラテックスのタイヤへの接着力を向上するものとして用いられることを示す。例えば樹脂が、ゴム皮膜の粘着性付与剤としてのエラストマーに加えられて用いられ得る。
【0036】
粘着剤エマルジョンは、乳化剤として公知の界面活性剤(好ましくは、非イオン系界面活性剤)を使用し、粘着剤成分として、ロジン酸エステル樹脂、テルペンフェノール樹脂等のテルペン樹脂などの樹脂成分、又はポリイソブチレン等のブチルゴム系材料を使用して得られる。
【0037】
ラテックスと混合する混合液中における粘着剤エマルジョンの混合濃度は、ラテックスとの混合によるゲル化防止の点から、粘着剤エマルジョン及び水の合計量で不凍液に対して40〜50質量%となる量が好適であり、42〜45質量%となる量がより好ましい。粘着剤エマルジョンの含有濃度が水との合計量で前記範囲内であると、ラテックスの安定に保つのに効果的である。
【0038】
粘着剤エマルジョンは、1種単独で用いるほか、2種以上を混合して用いてもよい。
粘着剤を粘着剤エマルジョンとして用いる場合、パンクシーリング剤中における粘着剤エマルジョンの混合量は、パンクシーリング剤の全質量に対して、1質量%〜15質量%であることが好ましく、2質量%〜12質量%であることがより好ましく、3質量%〜9質量%であることがさらに好ましい。粘着剤エマルジョンの含有量が1質量%〜15質量%の範囲内であると、実用的で良好なシール性を発揮させることができる。
【0039】
本発明におけるラテックスとしては、種類は特に制限されず、例えば、天然ゴム(NR)ラテックス、合成ゴムラテックス等のゴムラテックス、及び合成樹脂ラテックス等の樹脂ラテックスの中から適宜選択して用いることができる。
【0040】
前記合成ゴムラテックスとしては、例えば、SBR(スチレンブタジエンゴム)ラテックス、NBR(ニトリルゴム)ラテックス、MBR(アクリルゴム)ラテックス、BR(ポリブタジエンゴム)ラテックス、IIR(ブチルゴム)ラテックス、CRラテックス、IRラテックス、及び多硫化ゴムラテックス等が挙げられる。
【0041】
前記合成樹脂ラテックスとしては、例えば、カルボキシ変性NBRラテックス、カルボキシ変性SBRラテックス、アクリルエステル系ラテックス、スチレン・ブタジエン・レジンラテックス、酢酸ビニルラテックス、ポリ酢酸ビニルラテックス、塩化ビニルラテックス、ポリ塩化ビニルラテックス、塩化ビニリデンラテックス、ポリ塩化ビニリデンラテックス、及びポリスチレンラテックス等が挙げられる。
【0042】
上記の中でも、タイヤなどへの腐食性を考慮すると、合成ゴムラテックス又は合成樹脂ラテックスを用いることがより好ましく、SBRラテックス、NBRラテックス、MBRラテックス、BRラテックス、カルボキシル変性NBRラテックス、及びカルボキシル変性SBRラテックスからなる群より選択される1種又は2種以上を用いることがより好ましい。
【0043】
ラテックスは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
ラテックスのパンクシーリング剤中における混合量は、その全体質量がパンクシーリング剤の全質量に対して、10質量%〜90質量%とすることが好ましく、20質量%〜70質量%とすることがより好ましく、25質量%〜50質量%とすることがさらに好ましい。
【0044】
本発明における混合液は、上記成分に加えて、さらに水を含有する。
水は、前記粘着剤を粘着剤エマルジョンとして用いる場合や粘着剤エマルジョンを希釈する場合、あるいは不凍液を希釈する場合などの分散媒として用いることができるが、パンクシーリング剤の希薄化のために用いることもできる。
【0045】
パンクシーリング剤中の全固形分量としては、パンクシーリング剤の全質量に対して、5質量%〜70質量%であることが好ましく、5質量%〜60質量%であることがより好ましく、8質量%〜40質量%とすることがさらに好ましい。
【0046】
前記「全固形分量」は、以下のようにして求めることができる。
まず、パンクシーリング剤10gを4時間、140℃の状態で放置する。放置後の残留分の質量を測定し、当該残留分の質量をパンクシーリング剤の質量で除する(残留分の質量/放置前のパンクシーリング剤の質量)ことで求めることができる。
【0047】
全固形分量がパンクシーリング剤の全質量に対して、5質量%以上あると、優れたシール性を確保することが可能であり、70質量%以下であると、シール性以外の特性を良好に確保することができる。
【0048】
本発明では、上記の混合工程の後に、必要に応じて濾過工程や凝集塊成長工程を設けてもよい。以下、各工程について説明する。
【0049】
(濾過工程)
濾過工程は、混合工程で得られた混合液を、必要に応じて濾過する工程である。濾過方法としては、公知の方法を採用することができる。製造条件によっては、前記混合工程を経た後に、ゴムラテックスの凝集によるゲル化が進行して、微粒子状の凝集物が生成する場合がある。そして、該凝集物を放置しておくと、これを核としてゲル化がより進行する場合がある。そこで、濾過工程により核となる微粒子状の凝集物を除去し、最終的にゴムラテックス凝集塊に起因するシーリング剤のゲル化を効果的に防止することが好ましい。その結果、パンクシーリング剤の貯蔵安定性をも向上させることができる。
【0050】
濾過に使用する濾過器のフィルタ部材としては、金網状に形成された金属製のメッシュフィルタを用いることが好ましい。この場合、そのメッシュ数は50メッシュ(網目の開口径が約300μm)〜400メッシュ(網目の開口径が約30μm)のものを用いることが好ましい。メッシュフィルタの材質としては、ステンレス、アルミ合金等の耐腐食性が高い金属材料を好適に用いることができる。
【0051】
また、フィルタ部材としては、50メッシュ〜400メッシュのメッシュフィルタの網目と略同等の開口径の微小開口が多数、穿設された多孔質フィルタを用いてもよく、またメッシュフィルタや多孔質フィルタが積層された積層フィルタを用いてもよい。
【0052】
(凝集塊成長工程)
前記濾過工程に先立ち、凝集塊成長工程を設けることが好ましい。この凝集塊成長工程では、混合工程で調液されたシーリング剤原液を少なくとも24時間以上、好ましくは48時間以上の静置時間に亘って撹拌することなく容器内に保持(静置)する。静置時間の下限値は、濾過工程で用いられるメッシュフィルタのメッシュ数等に応じて24時間〜48時間の範囲で適宜、変更することができる。
【0053】
また、静置時間の上限値は特に制限されないが、パンクシーリング剤を製造する際の工程時間(タクト時間)の制約、製造されたパンクシーリング剤をストックするためのストック量の制限等を考慮すると共に、また保管環境に応じてパンクシーリング剤に含まれる水分量が蒸発又は吸湿により徐々に変化することから、保管時の水分量の変化を考慮すると、静置時間の上限値は480時間以下に設定することが好ましい。
【0054】
上記の各工程では、適宜以下の成分を添加してもよい。
(短繊維)
短繊維は、パンクによりタイヤに発生した穴や孔(欠陥部)に入り込んで目詰まりを生じさせて、これらの穴や孔を迅速、かつ確実に塞ぐ役割を果たす。
【0055】
短繊維の含有量は、パンクシーリング剤の全質量に対して、0.1質量%〜5質量%であることが好ましい。0.1質量%以上あれば、短繊維を添加したことによるシール性を十分に発揮することができ、5質量%以下であれば、短繊維の絡み合いを防ぐことができ、粘性が増加しにくく、パンクシーリング剤の注入容易性が向上すると共に、既述のパンクシーリング剤の役割を十分に発揮し易い。
短繊維の含有量は、パンクシーリング剤の全質量に対して、0.3質量%〜4質量%とすることが好ましく、0.5質量%〜3質量%とすることがより好ましい。
【0056】
パンクシーリング剤について既述のような役割を充分に発揮させるため、短繊維についても種々の設計をする必要がある。そこで、短繊維の比重(S)、長さ(L)、直径(D)、及び長さと直径との比(L/D)は、それぞれ、下記の範囲とすることが好ましい。
【0057】
(1)比重(S):0.8≦S≦1.4(より好ましくは、0.9≦S≦1.3、さらに好ましくは、1.0≦S≦1.2)。
比重が0.8以上では、短繊維が上に浮かず、長期の分離安定性が良好であり、1.4以下であると、短繊維が下に沈まず、長期の分離安定性が良好になる。
【0058】
(2)長さ(L):0.05≦L≦10mm(より好ましくは、0.08≦L≦8mm、さらに好ましくは、0.1≦L≦6mm)。
長さが0.05mm以上では、短繊維がパンクによる欠陥部に目詰まりを生じさせてシール性を向上させる効果を充分に発揮させることができ、10mm以下であると、短繊維の相対的な数が保たれ、シール性に優れる。
【0059】
(3)直径(D):1≦D≦100μm(より好ましくは、3≦D≦80μm、さらに好ましくは、5≦D≦50μm)。
直径(太さ)が1μm以上では、上記目詰まりを生じさせてシール性を向上させる短繊維の役割を充分に発揮することができ、100μm以下であると、短繊維の相対的な数が保たれ、シール性に優れる。
【0060】
(4)長さと直径との比(L/D):5≦L/D≦2000(より好ましくは、20≦L/D≦1600、さらに好ましくは、50≦L/D≦1200、特に好ましくは、100≦L/D≦300)。
L/Dが5以上では、上記目詰まりを生じさせてシール性を向上させる短繊維の役割を充分に発揮することができ、2000以下であると、短繊維の絡み合いによるダマの発生が少なく、シール性及び注入容易性に優れる。
【0061】
なお、短繊維は、一の材質からなるものを一定の形状で使用することができるが、既述の範囲で複数の材質からなるものを種々の形状で使用することもできる。
【0062】
短繊維は、その材質に特に制限はないが、ポリエステル、ポリエチレン、ナイロン、ポリプロピレン、及びこれら2以上の複合体のいずれかからなることが好ましく、ポリエチレン、ナイロン、ポリプロピレン、及びこれら2以上の複合体のいずれかからなることがより好ましい。かかる短繊維を使用することで、より良好な分離安定性が得られる。
【0063】
短繊維は、その全量若しくはその一部(好ましくは全量)を、高級アルコール系誘導体及び/又はベタイン系活性剤等の溶剤で処理しておくことが好ましい。かかる処理により、溶剤が活剤として作用し、短繊維の分散性を向上させることができる。
該処理は、パンクシーリング剤に含有させる前でも後でもよい。処理方法としては、短繊維を上記溶剤に含浸したり、上記溶剤を吹き付けたりして行うことができる。高級アルコール誘導体としては、ポリグリコール系ポリエステル等が好適である。
【0064】
溶剤の添加量(上記処理により短繊維に吸収される量)としては、短繊維質量の0.2質量%〜20質量%であることが好ましく、0.5質量%〜10質量%であることがより好ましく、1質量%〜6質量%であることがさらに好ましい。上記範囲であれば、短繊維の十分な分散効果が得られ、当該処理が良好で、効果の向上が期待できる。
【0065】
(フィラー)
パンクシーリング剤には、フィラーの1種又は2種以上を混合してもよい。フィラーを混合することで、迅速にシールしかつ大きな孔でも確実にシールすることができる。
安定したフィラーとしては、例えばケイ酸、チョーク、カーボンブラック、グラスファイバーで補強された合成樹脂、ポリスチレン粒子、タイヤ等の加硫成品の粉砕による粉末ゴム、おがくず、モスラバー粒子、カットフラワー用の発泡粒子等が採用できる。この中でも特に好ましいフィラーは、ケイ酸と結合したゴム粉末、及びグラスファイバーで補強された合成樹脂である。
【0066】
前記フィラーは、パンクシーリング剤に直接添加され得る。しかしながら、フィラーが、バルブサイズを変更することなくバルブをへてパンクシーリング剤を導くのを困難又は不可能にする大きさを有する限りにおいては、これらのフィラーは、一般的にタイヤをリム組みするときにタイヤの内部に導入され、タイヤにパンクが発生した際にパンクシーリング剤が注入されることによってシーリングを成し遂げる。
【0067】
前記フィラーは、パンクシーリング剤中に、好ましくは約20g/リットル〜200g/リットル、より好ましくは60g/リットル〜100g/リットル加えられ、あるいはタイヤのリム組においてタイヤ内部に配される。
【0068】
(他の添加剤)
更に、通常の分散剤、乳化剤、発泡安定剤、苛性ソーダ等のpH調整剤、を添加してもよく、必要により液状樹脂系エマルジョンを用いてもよい。
【0069】
〜パンクシーリング剤の粘度〜
パンクシーリング剤の粘度は、実際の使用条件として想定される条件(少なくとも、タイヤへの充填前であって60℃〜−60℃の範囲)において、3mPa・s〜20,000mPa・sであることが好ましく、5mPa・s〜4,500mPa・sであることがより好ましく、8mPa・s〜3,000mPa・sであることがさらに好ましく、10〜3,000mPa・sであることが特に好ましく、15〜1,500mPa・sであることが最も好ましい。
【0070】
パンクシーリング剤の粘度が3mPa・s以上であると、バルブへの注入時における液漏れを防止することができる。また、該粘度が20,000mPa・s以下であると、注入時の抵抗を抑えることができるため、注入容易性の低下を防止することができ、また、タイヤ内面への広がりを充分にすることができることから、高いシール性が得られる。
【0071】
また、パンクシーリング剤は、上記のように、不凍液を含有することによりさらに凝固点を下げることができ、不凍液に1価のアルコールを用いた場合には−40℃以下のような極寒地でも低粘度で好適に用いることができる。−40℃におけるパンクシーリング剤の粘度は、3mPa・s〜5,000mPa・sであることが好ましく、10mPa・s〜3,000mPa・sであることがより好ましく、10mPa・s〜2,000mPa・sであることが特に好ましい。
パンクシーリング剤の粘度は、B型粘度計等により測定することができる。
【0072】
〜パンクシーリング剤によるパンクの修理方法〜
パンクシーリング剤によるパンクの修理方法としては、公知の方法を適用することができる。すなわち、パンクシーリング剤が充填された容器をタイヤのバルブ口と接続し、適量を注入した後、パンクシーリング剤がタイヤ内面に広がってパンク孔をシールできるように、タイヤを回転させればよい。
【0073】
このようなパンクシーリング剤そのものは、種々のポンプアップ装置、例えば燃料ガスとしてプロパン・ブタン混合ガスを含むスプレー缶を用いてタイヤの内部に導入されてタイヤを再膨張させ得るが、図1に示すポンプアップ装置20によって、より好適に使用できる。
【0074】
図1に示すポンプアップ装置20では、前記圧力源として小型のエアコンプレッサ1を用いている。このエアコンプレッサ1は、ホース2を介して耐圧容器4のガス導入部3に接続されている。前記ガス導入部3は、栓バルブ5で閉止できかつ耐圧容器4に収納されたパンクシーリング剤6の液面上まで延びるライザーチューブとして形成されている。
【0075】
また、耐圧容器4は、パンクシーリング剤6を取出すための出口バルブ7を有し、この出口バルブ7にホース8の一端が接続されるとともに、該ホース8の他端には、タイヤバルブ10にねじ止めされるねじアダプタ9が取付けられている。
【0076】
耐圧容器4は、フィリングスタブ12を有し、かつ水が充填されたジャケット11を具えている。必要に応じて、加熱源としての塩化カルシウムが、前記フィリングスタブ12内に充填され得る。パンクシーリング剤6が低温で凍結すると、この加熱源の水和作用で解放される熱によって、利用できる温度にパンクシーリング剤6が加熱される。
前記エアコンプレッサ1には、電気ケーブル13が接続され、そのプラグ14は、例えば、シガレットライターに差込まれる。
【0077】
タイヤにパンクが発生すると、前記ねじアダプタ9がタイヤバルブ10にねじ止めされ、かつエアコンプレッサ1がシガレットライターに接続されるとともに、耐圧容器4のガス導入部3において前記栓バルブ5が開かれる。そしてエアコンプレッサ1から耐圧容器4内にガス導入部3をへて導入される圧縮空気が、出口バルブ7からパンクシーリング剤6を押出し、タイヤバルブ10をへてタイヤの内部に導入させる。然る後、空気がタイヤの内部に再充填され、タイヤを特定の内圧で膨張させる。これが終わると、ねじアダプタ9をタイヤバルブ10から取外し、エアコンプレッサ1を止める。この直後に、一定距離に亘って予備走行し、タイヤ内部にパンクシーリング剤6を散布しつつパンク孔をシールした後、ポンプアップ装置20が再び接続され、タイヤを要求される内圧まで再度ポンプアップする。
【0078】
また、本発明におけるパンクシーリング剤は、図2(A)、(B)に示すポンプアップ装置によってもより好ましく使用できる。なお、図2(A)、(B)に示すポンプアップ装置において、図1に示すポンプアップ装置20と共通の部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0079】
このポンプアップ装置は、図2(A)に示されるパンクシーリング剤6の収納容器である樹脂製のボトル22と、図2(B)に示される圧力源としてのエアコンプレッサ1とを備えている。ボトル22は、1回のパンク修理に必要なパンクシーリング剤6を収容している。ボトル22には、先端部にアダプタ26が配置されたホース24が接続されている。また、エアコンプレッサ1に接続されたホース2にも、その先端部にアダプタ9が配置されている。但し、ボトル22のホース24については、タイヤバルブ10に直接接続可能なものであるならばアダプタ26を省略してもよい。
【0080】
パンク発生時に、ボトル22のアダプタ26がタイヤバルブ10にねじ止めされる。これにより、ホース24及びアダプタ26を通してタイヤ内に連通する。この状態で、作業者は、図2(A)で2点鎖線(想像線)により示されるように、ボトル22を握り潰してパンクシーリング剤6をボトル22内から搾り出すことにより、ホース24を通してパンクシーリング剤6をタイヤ内へ注入する。
【0081】
ボトル22内からタイヤ内へのパンクシーリング剤6の注入が完了すると、作業者は、アダプタ26をタイヤバルブ10から取り外してボトル22をタイヤから切り離す。
【0082】
次いで、作業者は、エアコンプレッサ1のアダプタ9をタイヤバルブ10にねじ止めし、アダプタ9及びホース2を通してエアコンプレッサ1をタイヤ内に連通させる。この状態で、作業者は、エアコンプレッサ1を作動させて加圧空気をタイヤ内へ再充填し、タイヤを特定の内圧で膨張させる。これが終わると、作業者は、アダプタ9をタイヤバルブ10から取外し、エアコンプレッサ1を止める。この直後に、一定距離に亘って予備走行し、タイヤ内部にパンクシーリング剤6を散布しつつパンク孔をシールした後、作業者は、ポンプアップ装置のエアコンプレッサ1を再び接続してタイヤを要求される内圧まで再度、ポンプアップする。
【実施例】
【0083】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0084】
(実施例1)
初めに、不凍液としてプロピレングリコール40部に、撹拌しながら水10部を混合し、200rpmの撹拌速度で所定時間、撹拌を行なって不凍液水希釈液を調製した。
【0085】
また、前記不凍液水希釈液の調製での撹拌、混合と並行して、粘着剤エマルジョンの事前撹拌処理として、ロジン酸エステルエマルジョン(粘着剤)7部の撹拌処理を開始し、200rpmの撹拌速度で所定時間、撹拌を行なった。
【0086】
次に、撹拌している上記の不凍液水希釈液中に、事前処理を終えたロジン酸エステルエマルジョン7部を滴下し、さらに200rpmの撹拌速度で所定時間、撹拌を行ない、不凍液、粘着剤エマルジョン及び水を含む混合液を得た。
【0087】
また、前記混合液の調製と並行してあらかじめ撹拌して均一化しておいたSBRラテックス33部の中に、この混合液を撹拌しながら8kg/minの滴下速度で滴下し、さらに200rpmの撹拌速度で撹拌を行なって、所定時間が経過したところで製造完了とみなして撹拌を終了した。
以上のようにして、パンクシーリング剤を製造した。
【0088】
−評価−
製造したパンクシーリング剤及び上記の製造工程について、下記評価を行なった。評価結果は、下記表1に示す。
【0089】
1.発生ゲル量
製造したパンクシーリング剤を200メッシュにより濾過し、不凍液、粘着剤エマルジョン及び水を含む混合液をSBRラテックスに滴下、混合した後の発生ゲルを採取し、パンクシーリング剤中の発生ゲル量を算出した。評価基準は下記の通りである。
<評価基準>
◎:発生ゲル量がパンクシーリング剤全体の0.01質量%以下であった。
○:発生ゲル量がパンクシーリング剤全体の0.01質量%を超え0.05質量%以下であった。
△:発生ゲル量がパンクシーリング剤全体の0.05質量%を超え0.1質量%以下であった。
×:発生ゲル量がパンクシーリング剤全体の0.1質量%を超え1質量%以下であった。
××:発生ゲル量がパンクシーリング剤全体の1質量%超であった。
【0090】
2.製造時間
パンクシーリング剤1kgあたりの生産に要する時間を算出した。このとき、時間の算出は、不凍液水希釈液におけるプロピレングリコールと水の混合開始から、製造完了とみなす撹拌終了までにかかった時間を加算して1kgに換算して求めた。
【0091】
(実施例2)
初めに、粘着剤エマルジョンの事前撹拌処理として、ロジン酸エステルエマルジョン(粘着剤)7部の撹拌処理を開始し、200rpmの撹拌速度で所定時間、撹拌を行なった後、撹拌しているロジン酸エステルエマルジョンの中に水10部を混合し、粘着剤を所望濃度にまで希釈したロジン酸エステルエマルジョンの希釈液を調製した。
【0092】
続いて、撹拌しているロジン酸エステルエマルジョンの希釈液に、不凍液としてプロピレングリコール40部を滴下し、さらに200rpmの撹拌速度で所定時間、撹拌を行ない、不凍液、粘着剤エマルジョン及び水を含む混合液を得た。
【0093】
その後、前記混合液の調製時の撹拌処理と並行してあらかじめ撹拌して均一化しておいたSBRラテックス33部の中に、この混合液を撹拌しながら6kg/minの滴下速度で滴下し、さらに200rpmの撹拌速度で撹拌を行なって、所定時間が経過したところで製造完了とみなして撹拌を終了した。
以上のようにして、パンクシーリング剤を製造し、さらに実施例1と同様の方法で評価を行なった。評価結果は、下記表1に示す。
【0094】
(比較例1)
初めに、不凍液としてプロピレングリコール33部に、撹拌しながら水10部を混合し、200rpmの撹拌速度で所定時間、撹拌を行なって不凍液水希釈液を調製した。
【0095】
この不凍液水希釈液を、不凍液水希釈液の調製と並行して撹拌しておいたSBRラテックス33部の中に撹拌しながら、ゲル化しないように4kg/minの滴下速度で滴下した。
【0096】
次に、前記不凍液水希釈液の滴下終了に合わせて、粘着剤エマルジョンの事前撹拌処理を開始し、ロジン酸エステルエマルジョン(粘着剤)7部の撹拌処理を200rpmの撹拌速度で所定時間かけて行なった。そして、不凍液水希釈液の滴下終了後、事前処理を終えたロジン酸エステルエマルジョン7部を、撹拌を続けながら滴下した。
以上のようにして、パンクシーリング剤を製造し、さらに実施例1と同様の方法で評価を行なった。評価結果は、下記表1に示す。
【0097】
【表1】

【0098】
前記表1に示すように、実施例では、比較例1に比べて、ラテックスと混合する際の滴下速度を上げることができ、パンクシーリング剤の製造に要する時間を短縮することができた。また、特に実施例1では、不凍液と水との撹拌時に粘着剤エマルジョンの事前撹拌が行なえるので、パンクシーリング剤の製造時間をより顕著に短縮することができた。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明におけるパンクシーリング剤は、種々の空気入りタイヤのパンク修理に適用することができる。空気入りタイヤとしては、例えば、自動車用タイヤ、二輪車用タイヤ、一輪車用タイヤ、車いす用タイヤ、農地作業や庭園作業に使用する車両用タイヤ等が挙げられる。
【符号の説明】
【0100】
3・・・ガス導入部
4・・・耐圧容器
6・・・シーリング剤
7・・・出口バルブ
20・・・ポンプアップ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不凍液、粘着剤エマルジョン及び水を含み、前記不凍液及び前記粘着剤エマルジョンの少なくとも一方が水で希釈された状態で混合された混合液と、ラテックスとを混合する混合工程を有するパンクシーリング剤の製造方法。
【請求項2】
前記混合液は、前記不凍液が水で希釈された水溶液と前記粘着剤エマルジョンとを混合して調製する請求項1に記載のパンクシーリング剤の製造方法。
【請求項3】
前記混合液は、前記粘着剤エマルジョンが水で希釈された水溶液と前記不凍液とを混合して調製する請求項1に記載のパンクシーリング剤の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−153218(P2011−153218A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−15559(P2010−15559)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】