説明

パンツ型使い捨ておむつ

【課題】前身頃及び後身頃の左右両側の縁部に設けられる溶着部の溶断又は強度不足を防止しつつ、おむつに用いられる不織布の目付を下げて通気性の向上、材料コストの削減等が図れるパンツ型使い捨ておむつを提供する。
【解決手段】このパンツ型使い捨ておむつでは、不織布からなる補強シート6が、左右のサイド溶着部5及びそのサイド溶着部5の近傍を含む領域のみに、左右2枚ずつ付与され、前身頃3及び後身頃4を構成する不織布製のシートと溶着され、サイド溶着部5を補強する。補強シート6は、前身頃3における左右のサイド溶着部5及びその近傍を含む領域において、外装材13の外側シート21と内側シート22との間に位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンツ型使い捨ておむつに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のパンツ型使い捨ておむつとして、前身頃及び後身頃の左右両側の縁部において、前身頃及び後身頃の左右両側の縁部同士が加熱溶着又は超音波溶着によって溶着されたものがある。一方、使い捨ておむつの構成に関し、通気性を向上させるため、又は材料コスト削減ため、おつむに用いられる不織布シート(例えば、おむつの外側に用いられる不織布シート)の目付を下げる必要がある場合がある。しかし、従来のパンツ型使い捨ておむつでは、不織布シートの目付を下げると、前身頃及び後身頃の左右両側の縁部に設けられる溶着部が溶着時に切れてしまう、又は薄くなりすぎて強度が確保できない等の問題が生じる。
【0003】
特許文献1には、左右両側の縁部に溶着部に被覆シートを付与するパンツ型使い捨ておむつが開示されている。しかし、この使い捨ておむつに用いられる被覆シートは、溶着時に溶着部の表面がホーンに溶着し、表面の状態が劣化するのを防止することを主眼したものであり、本願発明に係る補強シートは課題、効果等が異なるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−327713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の解決すべき課題は、前身頃及び後身頃の左右両側の縁部に設けられる溶着部の溶断又は強度不足を防止しつつ、おむつに用いられる不織布の目付を下げて通気性の向上、材料コストの削減等が図れるパンツ型使い捨ておむつを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、請求項1の発明では、パンツ型使い捨ておむつであって、股下部で繋がった前身頃及び後身頃と、前記前身頃及び前記後身頃の左右両側の縁部において、前記前身頃及び前記後身頃の前記左右両側の縁部同士を溶着する左右の溶着部と、不織布からなり、前記左右の溶着部のみ、又は前記左右の溶着部及びその溶着部の近傍を含む領域のみに、それぞれ少なくとも左右1枚ずつ付与され、前記前身頃及び前記後身頃を構成する不織布製のシートと溶着され、前記溶着部を補強する補強シートと、を備え、前記前身頃及び前記後身頃は、接着剤により貼り合わされた不織布製の外側シート及び内側シートを有し、前記前身頃及び前記後身頃の外面に配置される外装材と、着用者が排泄した体液を吸収する吸収コアを有し、前記外装材の肌面側に配置される内装材と、を備え、前記補強シートは、前記左右の溶着部が形成される前記前身頃及び前記後身頃のいずれか一方又は両方の部分において、前記外装材の前記外側シートと前記内側シートとの間に位置している。
【0007】
また、請求項2の発明では、請求項1の発明に係るパンツ型使い捨ておむつにおいて、前記補強シートは、前記左右の溶着部のみ、又は前記左右の溶着部及びその溶着部の近傍を含む領域のみに、それぞれ左右1枚ずつ付与される。
【0008】
また、請求項3の発明では、請求項1の発明に係るパンツ型使い捨ておむつにおいて、前記補強シートは、前記左右の溶着部のみ、又は前記左右の溶着部及びその溶着部の近傍を含む領域のみに、それぞれ左右2枚ずつ付与される。
【0009】
また、請求項4の発明では、請求項1ないし請求項3のいずれかの発明に係るパンツ型使い捨ておむつにおいて、前記補強シートと、前記補強シートが重ね合わされて接合される前記不織布製のシートとは、同じ種類の樹脂によって形成されている。
【0010】
また、請求項5の発明では、請求項1ないし請求項4のいずれかの発明に係るパンツ型使い捨ておむつにおいて、前記左右の溶着部に前記補強シートが1枚ずつ付与された場合は、前記補強シートの前側を向いた面の色と後側を向いた面の色とが異なり、前記左右の溶着部に前記補強シートが複数枚ずつ付与された場合は、前記左右の溶着部において最も前側に位置する前記補強シートの前側を向いた面の色と、最も後側に位置する前記補強シートの後側を向いた面の色とが異なる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、不織布からなる補強シートが、左右の溶着部のみ、又は左右の溶着部及びその溶着部の近傍を含む領域のみに、それぞれ少なくとも左右1枚ずつ付与され、前身頃及び後身頃を構成する不織布製のシートと溶着され、溶着部を補強する。このため、前身頃及び後身頃の左右両側の縁部に設けられる溶着部の溶断又は強度不足を防止しつつ、おむつに用いられる不織布の目付を下げて通気性の向上、材料コストの削減等が図れる。
【0012】
また、補強シートも、その補強シートが溶着される前身頃及び後身頃を構成するシートも共に不織布によって形成されているため、補強シートによっておむつの質感を損なうことがないとともに、補強シートとそれが溶着される前身頃及び後身頃を構成するシートとを容易に溶着させることができ、溶着部の強度も向上する。
【0013】
また、補強シートが、左右の溶着部が形成される前身頃及び後身頃のいずれか一方又は両方の部分において、外装材の外側シートと内側シートとの間に位置している。それ故、外側シートと内側シートと接合するための接着剤を利用して、補強シートを外側シート又は内側シートに仮止めすることができる。これによって、補強シートの仮止めのための接着剤の塗布工程を省略でき、製造工程の簡略化が図れるとともに、左右の溶着部の溶着強度を低下させる接着剤の使用量を抑制でき、溶着部の溶着強度が向上する。
【0014】
また、補強シートが使い捨ておむつの最外面に配置されるシート(ここでは、外装材の外側シート)よりも内側に配置されているため、着用時に衣服等と擦れ合うこと等により、補強シートに外力が作用し、補強シートが剥がれ落ちるのを回避できる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、補強シートを左右の溶着部に1枚ずつ付与して溶着部を補強することにより、補強シートの材料コスト、及び補強シートを付与するために要する工数等を抑制できる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、補強シートを左右の溶着部に2枚ずつ付与することにより溶着部を補強するため、溶着部をより確実に補強できる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、補強シートと、その補強シートが重ね合わされて接合される前身頃及び後身頃を構成する不織布製のシートとは、同じ種類の樹脂によって形成されている。それ故、補強シートと不織布製のシートとを容易かつ確実に溶着することができる。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、補強シートがおむつの外面に露出している場合は、露出している補強シートの前側及び後側から視認される各面の色の違いにより、使い捨ておむつの前側、後側を容易に判別できる。また、補強シートがおむつの最外面に配置されるシートよりも内側に配置されている場合にも、補強シートよりも外面側に配置されたシートを通して補強シートの色が透けて見えるため、補強シートの前側及び後側から視認される各面の色の違いにより、使い捨ておむつの前側、後側を容易に判別できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に関連する関連技術に係るパンツ型使い捨ておむつを、左右のサイド溶着部を切り離して略平面状に展開したときの平面図である。
【図2】図1のパンツ型使い捨ておむつの展開される前の状態を示す斜視図である。
【図3】図1のA1−A1線に沿った断面の構成を模式的に示す断面図である。
【図4】図1のB1−B1線に沿った断面の構成を模式的に示す断面図である。
【図5】図1のパンツ型使い捨ておむつの右側のサイド溶着部の外観図である。
【図6】図1のB2−B2線に沿った断面の構成を模式的に示す断面図である。
【図7】図1のB3−B3線に沿った断面の構成を模式的に示す断面図である。
【図8】図5のA2−A2線に沿った断面の構成を模式的に示す断面図である。
【図9】本発明の一実施形態に係るパンツ型使い捨ておむつにおける図1のB2−B2線に対応する部分の断面の構成を模式的に示す断面図である。
【図10】本発明の一実施形態に係るパンツ型使い捨ておむつにおける図1のB3−B3線に対応する部分の断面の構成を模式的に示す断面図である。
【図11】本発明の一実施形態に係るパンツ型使い捨ておむつにおける図5のA2−A2線に対応する部分の断面の構成を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[関連技術]
図1は本発明の実施形態に関連する関連技術に係るパンツ型使い捨ておむつ(以下、単に「おむつ」という)を、左右のサイド溶着部を切り離して略平面状に展開したときの平面図であり、図2は図1のおむつの展開される前の状態を示す斜視図であり、図3は図1のA1−A1線に沿った断面の構成を模式的に示す断面図であり、図4は図1のB1−B1線に沿った断面の構成を模式的に示す断面図である。なお、図1から図4及び後述する他の図において、縦方向Yは着用者の前後又は上下方向に対応しており、横方向Xは着用者の左右方向に対応している。
【0021】
本関連技術に係るおむつ1は、パンツ型の使い捨ておむつであって、図1から図4に示すように、股下部2で繋がった前身頃3及び後身頃4と、左右の溶着部としての左右のサイド溶着部5と、左右2枚ずつ付与された補強シート6,7とを備えている。左右のサイド溶着部5は、前身頃3及び後身頃4における着用者の腰周りに位置する部分の左右両側の縁部3a,4aにおいて、前身頃3及び後身頃4の左右両側の縁部3a,4a同士を溶着する。これによって、おむつ1にウエスト孔11、及び左右の脚孔12が形成され、おむつ1がパンツ型の構成を有することとなる。補強シート6,7は、不織布からなり、前身頃3及び後身頃4における左右のサイド溶着部5及びそのサイド溶着部5の近傍を含む領域のみに付与されて、前身頃3及び後身頃4を構成する不織布製のシートと溶着され、サイド溶着部5を補強する。なお、変形例として、補強シート6,7を、前身頃3及び後身頃4における左右のサイド溶着部5のみに付与してもよい。
【0022】
また、前身頃3及び後身頃4は、外装材13と、内装材14と、前後の押さえシート15,16とを備えている。外装材13は、前身頃3及び後身頃4の外面に配置される。内装材14は、着用者が排泄した体液を吸収する吸収コア17を有し、外装材13の肌面側における着用者の股部にあてがわれる領域に配置され、接着剤(例えば、ホットメルト接着剤)により外装材13に接合される。
【0023】
また、外装材2は、重ね合わされて貼り合わされた外側シート21及び内側シート22を備えている。外側シート21は外装材2及びおむつ1の最外面に配置され、内側シート22は外側シート21の肌面側に配置される。外側シート21と内側シート22とは、それらの間に後述する弾性部材31〜36を挟み込んだ状態で接着剤(例えば、ホットメルト接着剤)によって互いに接合される。
【0024】
外側シート21及び内側シート22は、不織布によって形成される。その不織布の樹脂材料としては、例えば、強度、柔軟性及び材料コスト等の点で優れたポリプロピレンが用いられる。外側シート21及び内側シート22の他の素材例として、例えばポリエチレンとポリプロピレンとの混合樹脂によって形成された不織布、又は、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンとの混合樹脂によって形成された不織布が挙げられる。また、外側シート21及び内側シート22を形成する不織布の構成又は製法については、例えば、スパンボンド、SMS、SMMS、又はポイントボンドが挙げられる。また、外側シート21及び内側シート22の目付は、例えばシート21,22の目付の合計が約35g/m2以下になるように設定される。
【0025】
内装材14は、前記した吸収コア17、バックシート23、トップシート24、及び左右のサイドシート25等を備えている。吸収コア17は、着用者が排泄した尿等の体液を吸収するためのものであり、外面側のバックシート23と、肌面側のトップシート24及びサイドシート25との間に挟み込まれるようにして配置される。バックシート23は、液不透過性の素材が好ましく、撥水性を有する合成繊維製不織布、ポリエチレン等の合成樹脂製フィルム(液不透過性でかつ通気性を有するフィルムが好ましい)が好ましい。
【0026】
トップシート24は、吸収コア17の肌面側における横方向Xの中央部に、縦方向Yに沿って配置されている。左右のサイドシート25は、トップシート24の左右の縁部に肌面側から重なるように、縦方向Yに沿って配置されている。このサイドシート25の横方向Xの内方側の端部には糸状の弾性部材26が伸張された状態で付与されている。この弾性部材26の収縮によってサイドシート25の一部が肌面側に向かって立ち上がり、立体ギャザーとして機能する。この立体ギャザーにより排泄物の横漏れが防止される。
【0027】
吸収コア17は、集合された繊維を少なくとも有する集合体によって構成されている。この吸収コア17は、液透過性の不織布等からなる図示しないシートによって覆われている場合がある(本関連技術では、吸収コア17は液透過性のシートによって覆われている)。吸収コア17を構成する集合体は、主に集合された繊維により形成されている。その繊維としては主に解繊パルプ繊維又はセルロース繊維が用いられ、必要に応じて熱融着性繊維等を混合してもよい。また、集合体には、高吸水性樹脂粉末が含まれていることが好ましい。吸収コア17である集合体の平面形状としては、砂時計型、略長方形型、略楕円型等の種々の形状が採用可能である。本関連技術では、吸収コア17(集合体)の平面形状が砂時計型とされている。
【0028】
トップシート24は、液透過性の合成繊維製不織布又は織布で形成される。その不織布又は織布としては、絹、レーヨン、パルプ等の親水性繊維、又は、前述の外装材13のシート21,22と同様な素材からなる不織布が挙げられる。また、液透過性を高めるためにトップシート24を形成する不織布又は織布に親水化処理を施してもよい。サイドシート25は、撥水性不織布等により形成される。
【0029】
外装材13には、外装材13を含むおむつ1の各部を引き締めて着用者の身体にフィットさせるために、前側ウエスト弾性部材31、後側ウエスト弾性部材32、前側ボディ弾性部材33、後側ボディ弾性部材34、前側脚周り弾性部材35、及び後側脚周り弾性部材36が付与されている。
【0030】
前側ウエスト弾性部材31及び後側ウエスト弾性部材32は、外装材13の前後の腰回りに位置する部分の上縁部に沿って伸張された状態で付与されている。前側ボディ弾性部材33及び後側ボディ弾性部材34は、外装材13における前後の腰周りに位置する部分の縦方向Yの中間部に、横方向Xに沿って伸張された状態で付与されている。前側脚周り弾性部材35は、外装材13の左右の脚周り部2aの一方の前側の部分から股下部2を横断して他方の前側の部分に至る経路に沿って伸張された状態で付与されている。後側脚周り弾性部材36は、外装材13の左右の脚周り部2aの一方の後側の部分から股下部2を横断して他方の後側の部分に至る経路に沿って伸張された状態で付与されている。
【0031】
弾性部材31〜36を構成する弾性材(例えば、弾性糸)には、例えば使い捨て吸収性物品に多用される弾性伸縮材料(ポリウレタン糸、天然ゴム等)が用いられる。弾性材の他の例として、帯状のポリウレタンフィルムを用いてもよい。
【0032】
前後の押さえシート15,16は、外装材13の前後の腰回りに位置する部分において、内装材14の前側縁部及び後側縁部を肌面側から覆うように配置され、外装材13(あるいは、外装材13及び内装材14)と接着剤(例えば、ホットメルト接着剤)により接合される。本関連技術では、押さえシート15,16の横方向Xの長さは、外装材13の前後の腰回りに位置する部分の横方向Xの長さと等しい。この押さえシート15,16によって、内装材14の前側及び後側縁部の外装材13からの剥がれ防止、内装材14の前側及び後側縁部の着用者の肌への肌当たりを和らげる、及び、内装材14の吸収コア17に吸収された体液の前側及び後側縁部からの漏れ防止等が図られる。押さえシート15,16は、前述の外装材13の外側シート21及び内側シート22と同様な不織布によって構成される。
【0033】
また、本関連技術では、図4に示すように、外装材13の外側シート21の縦方向Yの長さが、内側シート22の縦方向Yの長さより大きい。そして、外側シート21の前後の縁部21a,21bが、前後の押さえシート15,16の前側及び後側の縁部を肌面側から覆うように、内側に折り返されている。
【0034】
次に、左右のサイド溶着部5及び補強シート6について、図5から図8を参照してさらに詳細に説明する。図5は図1のおむつの右側のサイド溶着部の外観図であり、図6は図1のB2−B2線に沿った断面の構成を模式的に示す断面図であり、図7は図1のB3−B3線に沿った断面の構成を模式的に示す断面図であり、図8は図5のA2−A2線に沿った断面の構成を模式的に示す断面図である。なお、図5から図8では、代表例として右側のサイド溶着部5について図示しているが、左右のサイド溶着部5は左右対称な構成であるため、便宜上、図示を省略している。
【0035】
左右のサイド溶着部5は、図1、図2及び図5に示すように、外装材13の前後の腰回りに位置する部分及び前後の押さえシート15,16の左右両側の縁部(3a,4a)において、左右両側の縁部(3a,4a)同士を加熱溶着により接合している。サイド溶着部5には、横方向X(あるいは、横方向Xに対して傾斜する方向)に細長い複数のシール部5aが縦方向Yに間隔をあけて形成されている。この複数のシール部5aにて、その部分に位置するシート材が加圧されつつ加熱溶着されている。なお、本関連技術では、図5に示すように、加熱溶着によりサイド溶着部5の溶着を行っているが、加熱溶着の代わりに超音波溶着を用いてもよい。
【0036】
左右のサイド溶着部5には、図6から図8に示すように、補強のための補強シート6,7が2枚ずつ付与されている。より詳細には、補強シート6は、前身頃3における左右のサイド溶着部5及びその近傍を含む領域において、押さえシート15と外装材13の内側シート22との間に位置している。また、補強シート7は、後身頃4における左右のサイド溶着部5及びその近傍を含む領域において、押さえシート16と外装材13の内側シート22との間に位置している。補強シート6,7の縦方向Yの寸法は、外装材13の内側シート22の前側及び後側における左右のサイド溶着部5に位置する部分の縦方向Yの寸法とほぼ等しい。補強シート6,7の横方向Xの寸法は、補強シート6,7が付与されるサイド溶着部5を覆うようにサイド溶着部5の横方向Xの寸法よりも若干大きい。
【0037】
また、補強シート6,7は、押さえシート15,16と外装材13の内側シート22とを接合するための接着剤を利用して押さえシート15,16又は内側シート22に仮止めされ、その仮止めされたた状態で、サイド溶着部5に対する溶着処理に供される。その溶着処理によって、補強シート6,7は部分的に溶融又は軟化し、外装材13の内側シート22及び押さえシート15,16と接合(溶着)される。その結果、補強シート6,7によって左右のサイド溶着部5が補強される。
【0038】
なお、補強シート6,7が付与された部分では、内側シート22と押さえシート15,16との接着剤による接合が行われない。しかし、内側シート22と押さえシート15,16とは他の十分に広い面積で接着剤により接合されているため、補強シート6,7の存在による内側シート22と押さえシート15,16との接合強度への影響が問題になることはない。
【0039】
また、本関連技術では、左右の溶着部5における前身頃3側に配置される補強シート6の前側を向いた面の色と、後身頃4側に配置される補強シート7の後側を向いた面の色とが互いに異なっている。より具体的には、補強シート6,7は表裏の色が異なっており、前身頃3側に配置される補強シート6の前側を向いた面の色と、後身頃4側に配置される補強シート7の後側を向いた面の色とが異なるように、左右のサイド溶着部5に補強シート6,7が付与される。なお、左右の溶着部5における前身頃3側に配置される補強シート6の前側を向いた面の色、後身頃4側に配置される補強シート7の後側を向いた面の色は、おむつ1に用いられる他のシート材の色(例えば、白色)と異なっている。
【0040】
これによって、補強シート6,7よりも外面側に配置されたシート21,22を通して補強シート6,7の色が透けて見えるため、補強シート6,7の前側及び後側から視認される各面の色の違いにより、おむつ1の前側、後側を容易に判別できる。なお、後述する図12に示す構成のように、補強シート6,7がおむつ1の外面に露出している場合は、補強シート6,7の前側及び後側から視認される各面の色をより容易に視認できる。また、後述する変形例のように、左右の溶着部5に補強シート6を1枚ずつ付与する構成では、補強シート6の表裏の色を異ならせることにより、上記の構成と同様な効果が得られる。
【0041】
以上のように、本関連技術によれば、不織布からなる補強シート6,7が、左右のサイド溶着部5及びそのサイド溶着部5の近傍を含む領域のみに、左右2枚ずつ付与され、前身頃3及び後身頃4を構成する不織布製のシート(本関連技術では、シート15,16,22)と溶着され、サイド溶着部5を補強する。このため、前身頃3及び後身頃4の左右両側の縁部3a,4aに設けられるサイド溶着部5の溶断又は強度不足を防止しつつ、おむつ1に用いられる不織布の目付を下げて通気性の向上、材料コストの削減等が図れる。この点に関し、サイド溶着部5の強度及び材料コスト等の観点から、外装材13の外側シート21の目付値、内側シート22の目付値、及び補強シート6又は7の目付値の総和を、例えば約40g/m2以上に設定するのが好ましい。
【0042】
また、補強シート6,7も、その補強シート6,7がサイド溶着部5において溶着される外装材13のシート21,22及び押さえシート15,16も共に不織布によって形成されているため、補強シート6,7によっておむつ1の質感を損なうことがないとともに、補強シート6,7とそれが溶着される前身頃3及び後身頃4を構成するシート15,16,22とを容易に溶着させることができ、サイド溶着部5の強度も向上する。
【0043】
また、左右のサイド溶着部5について2枚ずつの補強シート6,7を付与しているため、サイド溶着部5をより確実に補強できる。
【0044】
また、補強シート6,7が、左右のサイド溶着部5が形成される前身頃3及び後身頃4の両方の部分において、押さえシート15,16と外装材13の内側シート22との間に位置している。それ故、内側シート22と押さえシート15,16とを接合するための接着剤を利用して、補強シート6,7を押さえシート15,16又は内側シート22に仮止めすることができる。これによって、補強シート6,7の仮止めのための接着剤の塗布工程を省略でき、製造工程の簡略化が図れるとともに、左右のサイド溶着部5の溶着強度を低下させる接着剤の使用量を抑制でき、サイド溶着部5の溶着強度が向上する。
【0045】
また、補強シート6,7がおむつ1の最外面に配置されるシート(ここでは、外装材13の外側シート21)よりも内側に配置されているため、着用時に衣服等と擦れ合うこと等により、補強シート6,7に外力が作用し、補強シート6,7が剥がれ落ちるのを回避できる。
【0046】
また、補強シート6,7と、その補強シート6,7が重ね合わされて接合される前身頃3及び後身頃4を構成する不織布製のシート(本関連技術では、外装材13の内側シート22及び押さえシート15,16)とは、同じ種類の樹脂(例えば、ポリエチレンとポリプロピレンとの混合樹脂)によって形成されている。それ故、補強シート6,7と不織布製のシート(内側シート22及び押さえシート15,16)とを容易かつ確実に溶着することができる。
【0047】
また、本関連技術にかかるおむつ1では、前述の如く、補強シート6,7の前側及び後側から視認される各面の色の違いにより、おむつ1の前側、後側を容易に判別できるという利点もある。
【0048】
[実施形態]
図9から図11は、本発明の一実施形態に係るおむつにおける、図1のB2−B2線、図1のB3−B3線、及び図5のA2−A2線にそれぞれ対応する部分の断面の構成を模式的に示す断面図である。本実施形態に係るおむつ1が前述の関連技術にかかるおむつ1と実質的に異なる点は、補強シート6,7の配置位置のみであり、互いに対応する部分には同一の参照符号を付し、重複説明を回避する。
【0049】
本実施形態に係るおむつ1では、図9から図11に示すように、補強シート6は、前身頃3における左右のサイド溶着部5及びその近傍を含む領域において、外装材13の外側シート21と内側シート22との間に位置している。また、補強シート7は、後身頃4における左右のサイド溶着部5及びその近傍を含む領域において、外装材13の外側シート21と内側シート22との間に位置している。
【0050】
また、補強シート6,7は、外装材13の外側シート21と内側シート22とを接合するための接着剤を利用して外側シート21又は内側シート22に仮止めされ、その仮止めされたた状態で、サイド溶着部5に対する溶着処理に供される。その溶着処理によって、補強シート6,7は部分的に溶融又は軟化し、外装材13の外側シート21及び内側シート22と接合(溶着)される。その結果、補強シート6,7によって左右のサイド溶着部5が補強される。
【0051】
なお、補強シート6,7が付与された部分では、外側シート21と内側シート22との接着剤による接合が行われない。しかし、外側シート21と内側シート22とは他の十分に広い面積で接着剤により接合されているため、補強シート6,7の存在による外側シート21と内側シート22との接合強度への影響が問題になることはない。
【0052】
本実施形態によれば、前述の関連技術に係る構成と共通する部分については関連技術とほぼ同様な効果が得られるとともに、本実施形態に係る特有の構成によって次のような効果が得られる。すなわち、補強シート6,7が、左右のサイド溶着部5が形成される前身頃3及び後身頃4の両方の部分において、外装材13の外側シート21と内側シート22との間に位置している。それ故、外側シート21と内側シート22とを接合するための接着剤を利用して、補強シート6,7を外側シート21又は内側シート22に仮止めすることができる。これによって、補強シート6,7の仮止めのための接着剤の塗布工程を省略でき、製造工程の簡略化が図れるとともに、左右のサイド溶着部5の溶着強度を低下させる接着剤の使用量を抑制でき、サイド溶着部5の溶着強度が向上する。
【0053】
また、補強シート6,7と、その補強シート6,7が重ね合わされて接合される前身頃3及び後身頃4を構成する不織布製のシート(本実施形態では、外装材13の外側シート21及び内側シート22)とは、同じ種類の樹脂(例えば、ポリエチレンとポリプロピレンとの混合樹脂)によって形成されている。それ故、補強シート6,7と不織布製のシート(外側シート21及び内側シート22)とを容易かつ確実に溶着することができる。
【0054】
なお、この実施形態に係るおむつ1においては、押さえシート15,16を省略してもよい。
【0055】
[変形例]
前述の関連技術及び実施形態に係るおむつ1の構成に関する変形例として、以下の構成が挙げられる。
【0056】
また、前述の関連技術及び実施形態に係るおむつ1では、補強シート6,7を左右のサイド溶着部5における前身頃3側及び後身頃4側に1枚ずつ付与したが、前身頃3側のみに1枚だけ付与する、あるいは、後身頃4側にのみ1枚だけ付与するようにしてもよい。このように(前記の図13の構成も含む)、補強シート6又は7を左右のサイド溶着部5に1枚ずつ付与してサイド溶着部5を補強することにより、補強シート6又は7の材料コスト、及び補強シート6又は7を付与するために要する工数等を抑制できる。
【0057】
また、前述の関連技術及び実施形態に係るおむつ1では、補強シート6,7を左右のサイド溶着部5における前身頃3側及び後身頃4側に1枚ずつ付与したが、補強シート6,7の枚数を2枚以上に増やしてもよい。
【0058】
また、上述の関連技術及び実施形態に係るおむつ1では、前身頃3側を構成する部分と後身頃4側を構成する部分とが股下部を介して連続的に繋がったシート部材によって形成されている。この点に関する変形例として、おむつ1における前側の腰周り位置する部分と、後側の腰周りに位置する部分と、股部とがそれぞれ独立したシート部材によって形成されていてもよい。この場合、股部は前側及び後側の腰周り位置する部分に前後方向に跨るようにして接着剤(例えば、ホットメルト接着剤)によって接着される。
【符号の説明】
【0059】
1 パンツ型使い捨ておむつ、2 股下部、3 前身頃、3a 縁部、4 後身頃、4a 縁部、5 サイド溶着部、5a シール部、6,7 補強シート、11 ウエスト孔、12 脚孔、13 外装材、14 内装材、15,16 押さえシート、17 吸収コア、21 外側シート、22 内側シート、23 バックシート、24 トップシート、25 サイドシート、26,31〜36 弾性部材、X 横方向、Y 縦方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パンツ型使い捨ておむつであって、
股下部で繋がった前身頃及び後身頃と、
前記前身頃及び前記後身頃の左右両側の縁部において、前記前身頃及び前記後身頃の前記左右両側の縁部同士を溶着する左右の溶着部と、
不織布からなり、前記左右の溶着部のみ、又は前記左右の溶着部及びその溶着部の近傍を含む領域のみに、それぞれ少なくとも左右1枚ずつ付与され、前記前身頃及び前記後身頃を構成する不織布製のシートと溶着され、前記溶着部を補強する補強シートと、
を備え、
前記前身頃及び前記後身頃は、
接着剤により貼り合わされた不織布製の外側シート及び内側シートを有し、前記前身頃及び前記後身頃の外面に配置される外装材と、
着用者が排泄した体液を吸収する吸収コアを有し、前記外装材の肌面側に配置される内装材と、
を備え、
前記補強シートは、前記左右の溶着部が形成される前記前身頃及び前記後身頃のいずれか一方又は両方の部分において、前記外装材の前記外側シートと前記内側シートとの間に位置していることを特徴とするパンツ型使い捨ておむつ。
【請求項2】
請求項1に記載のパンツ型使い捨ておむつにおいて、
前記補強シートは、前記左右の溶着部のみ、又は前記左右の溶着部及びその溶着部の近傍を含む領域のみに、それぞれ左右1枚ずつ付与されることを特徴とするパンツ型使い捨ておむつ。
【請求項3】
請求項1に記載のパンツ型使い捨ておむつにおいて、
前記補強シートは、前記左右の溶着部のみ、又は前記左右の溶着部及びその溶着部の近傍を含む領域のみに、それぞれ左右2枚ずつ付与されることを特徴とするパンツ型使い捨ておむつ。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のパンツ型使い捨ておむつにおいて、
前記補強シートと、前記補強シートが重ね合わされて接合される前記不織布製のシートとは、同じ種類の樹脂によって形成されていることを特徴とするパンツ型使い捨ておむつ。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のパンツ型使い捨ておむつにおいて、
前記左右の溶着部に前記補強シートが1枚ずつ付与された場合は、前記補強シートの前側を向いた面の色と後側を向いた面の色とが異なり、
前記左右の溶着部に前記補強シートが複数枚ずつ付与された場合は、前記左右の溶着部において最も前側に位置する前記補強シートの前側を向いた面の色と、最も後側に位置する前記補強シートの後側を向いた面の色とが異なることを特徴とするパンツ型使い捨ておむつ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−31762(P2013−31762A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−253274(P2012−253274)
【出願日】平成24年11月19日(2012.11.19)
【分割の表示】特願2008−155835(P2008−155835)の分割
【原出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【出願人】(000110044)株式会社リブドゥコーポレーション (390)
【Fターム(参考)】