説明

パンツ型吸収性物品

【課題】肌に対するフィット性に優れている上に、内面及び外面の何れもが柔軟で肌触りが良く、しかも履き上げ時に吸収性物品の構造破壊が生じにくいパンツ型吸収性物品を提供する。
【解決手段】腹側部Aにおける外装体11は、外層シート12、内層シート13及び補助シート15が重なっている胴回り領域A2を縦方向Yに4等分して上端領域D、中央2領域の中領域E及び下端領域Fに区分したときに、少なくとも中領域Eにおける内層シート13と補助シート15との間に内側弾性部材71が配され、上端及び下端領域D,Fは、補助シート15と内層シート13又は吸収性本体1との接合面積率が、中央域Eよりも高く、内外層シート13,12間に非接合領域R2を有し、補助シート15は、下端が吸収性本体10の縦方向端部から股部方向に5〜80mmの範囲内に位置し、かつ縦方向における5〜50mmの長さに亘って吸収性本体10と接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンツ型吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パンツ型の使い捨ておむつにおいて、胴回り部に配する胴回り部弾性部材を、おむつの外表面を形成する最外層シート以外の部材に固定し、その胴回り弾性部材と最外層シートとの間に非接合領域を設けることによって、最外層シートの内方にギャザーを形成する一方、胴回り部の外表面にはギャザーが形成されないようにする技術が知られている(特許文献1)。
特許文献2,3にも、最外層シートとその肌側に配された内層シートとの間に両シートが接合されていない非接合領域を有する吸収性物品が記載されている。
特許文献4には、パンツ型使い捨ておむつのウエスト部にウエスト周り伸縮性弾性部材を配すると共に、吸収体と重なる部分に腰部伸縮性弾性部材を配した使い捨ておむつが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−4853号公報
【特許文献2】特開2004−305772号公報
【特許文献3】特開2007−151597号公報
【特許文献4】特開2008−525104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のおむつは、胴回り部の外表面にギャザーが形成されていないため、すっきりとした外観を呈する。
しかし、最外層シートの内方にギャザーを形成する弾性部材が固定されているシートが、ウエスト開口部の開口縁付近まで達していることや、そのシートと更にそのシートの内面側に配したシートとの間を略全面において接合し、それらのシート間に、前記の弾性部材を固定しているため、おむつの柔軟性の観点から改良の余地があった。
【0005】
特許文献2,3には、弾性部材とシートとを接着剤で固定する一方、弾性部材どうし間には、該弾性部材を挟むシートどうしが接合されていない領域を形成する技術が記載されている。しかし、特許文献2の技術においては、シート間が、弾性部材に塗工したホットメルト型接着剤のみで固定されているため、例えば、パンツ型おむつを引っ張り上げて着用する際に、それらのシート間が剥離して構造破壊が生じる恐れがある。また、特許文献2の物品は、吸収体ないし吸収性本体からウエスト開口部の開口縁に向かって延出する部分が狭く、胴回り部等の柔軟性に劣る。
【0006】
また、特許文献4には、最外層シートとその内側に配されたシートとの間に、点状のホットメルト型接着剤で接合した部分と、全面塗工したホットメルト型接着剤で接合した部分とを設け、点状のホットメルト型接着剤で接合した部分にギャザー形成用の弾性部材を固定した吸収性物品が開示されている。
しかし、最外層シートとその内側に配されたシートとの間に、該最外層シートに浮き部を生じさせるような未接合部を有しないため、おむつ外面の柔軟性に劣る。
【0007】
従って、本発明の課題は、着用者の肌に対するフィット性に優れている上に、パンツ型吸収性物品の内面及び外面の何れもが柔軟で肌触りが良く、しかも履き上げ時に吸収性物品の構造破壊が生じにくいパンツ型吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、外装体と、該外装体の肌面側に固定された吸収性本体とを備え、腹側部から股部を介して背側部に亘る縦方向とこれに交差する幅方向を有するパンツ型吸収性物品であって、腹側部における前記外装体は、外層シート、該外層シートの肌面側に位置する内層シート、及び該内層シートの肌面側に位置し前記吸収性本体の縦方向の端部の上下に亘って延在する補助シートを有しており、前記外層シート、前記内層シート及び前記補助シートが重なっている胴回り領域を、前記縦方向に4等分して、上端1領域からなる上端領域、中央2領域からなる中領域及び下端1領域からなる下端領域に区分したときに、少なくとも前記中領域における前記内層シートと前記補助シートとの間に内側弾性部材が前記幅方向に沿って配されており、前記上端領域及び下端領域それぞれにおける前記補助シートと、前記内層シート又は前記吸収性本体との間の接合面積率が、前記中央域における同接合面積率よりも高く、前記外層シートと前記内層シートとの間は、前記中領域における前記内側弾性部材の配設領域と重なる領域に非接合領域を有しており、前記内側弾性部材の配設領域より上方の領域における前記外層シートの肌面に、ウエスト弾性部材が固定され、該ウエスト弾性部材の本数又は前記縦方向の長さの半分以上が、前記内層シートと重なっておらず、前記補助シートは、その下端が、前記吸収性本体の縦方向端部から股部方向に5mm以上、80mm以下の範囲内に位置し、かつ、前記縦方向における5mm以上、50mm以下の長さに亘って前記吸収性本体と接合されている、パンツ型吸収性物品を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のパンツ型吸収性物品は、着用者の肌に対するフィット性に優れている上に、パンツ型吸収性物品の内面及び外面の何れもが柔軟で肌触りが良く、しかも履き上げ時に吸収性物品の構造破壊が生じにくい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明のパンツ型吸収性物品の一実施形態であるパンツ型使い捨ておむつを示す斜視図である。
【図2】図2は、図1に示すおむつの展開且つ伸長状態における内面側を示す展開平面図である。展開且つ伸長状態とは、パンツ型吸収性物品を展開状態とし、その展開状態の吸収性物品を、各部の弾性部材を伸長させて、設計寸法(弾性部材の影響を一切排除した状態で平面状に広げたときの寸法と同じ)となるまで拡げた状態をいう。
【図3】図3は、図2のI−I線断面図である。
【図4】図4は、図2のII−II線断面図である。
【図5】図5は、接合面積率を低く抑えるための弾性部材のシート間固定態様の一例を示す断面図である。
【図6】図6は、本発明の変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明をその好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
本発明の一実施形態であるパンツ型使い捨ておむつ1(以下、おむつ1ともいう)は、図2に示すように、外装体11と、該外装体11の肌面側に固定された吸収性本体10とを備えている。
おむつ1は、着用時に着用者の腹側に配される腹側部A、着用時に着用者の背側に配される背側部B、及び腹側部Aと背側部Bとの間に位置して、着用時に着用者の股間部に配される股部Cを有している。
おむつ(パンツ型吸収性物品)の縦方向とは、腹側部Aから股部Cを経て背側部Bに亘る方向であり、図2中のY方向である。また、おむつ(パンツ型吸収性物品)の幅方向は、前記縦方向と交差する方向であり、図2中のX方向である。展開且つ伸長状態のおむつ1において、おむつ1における幅方向Xは、前記縦方向Yと直交している。吸収性本体の縦方向及び幅方向は、それぞれ、パンツ型吸収性物品の縦方向、幅方向と対応する方向である。また、腹側部A及び背側部Bのそれぞれにおいて、パンツ型吸収性物品の縦方向は、着用時の上下方向であるため、腹側部A及び背側部Bの縦方向において、ウエスト開口縁W側を上側、股部C側を下側ともいう。
【0012】
外装体11は、図2〜図4に示すように、外層シート12、内層シート13及び補助シート15を有している。更に、外層シート12を構成するシート材がウエスト開口縁Wにおいて肌面側に折り返されて形成された、外層シート12の折り返し部12a,12bを有している。外層シート12及び内層シート13は、それぞれ、腹側部A、股部C及び背側部Bに亘って連続しており、補助シート15は、背側部B及び腹側部Aにそれぞれ一枚配されている。
外層シート12は、おむつ1の外表面を形成しており、内層シート13は、外層シート12に隣接させて該外層シート12の肌面側に配されている。補助シート15は、内層シート13の肌面側に位置し、吸収性本体10の縦方向の端部の上下に亘って延在している。肌面は、各シートの両面のうち、パンツ型吸収性物品の着用時に着用者の肌側に向けられる面である。
【0013】
図1に示すように、外装体11は、腹側部Aにおける両側縁部と、背側部Bにおける両側縁部とが互いに接合されており、その接合によって、おむつ1に、一対のサイドシール部S,S、ウエスト開口部5及び一対のレッグ開口部6,6が形成されている。ウエスト開口縁Wは、ウエスト開口部5の周縁である。外装体11は、展開且つ伸長状態のおむつ1においては、図2に示すように、縦方向中央部が括れた砂時計状の形状をしている。
【0014】
図2〜図4に示すように、おむつ1における腹側部A及び背側部Bは、それぞれ、外層シート12、内層シート13及び補助シート15が重なっている胴回り領域A2,B2を有している。腹側部A及び背側部Bそれぞれにおける胴回り領域A2,B2の上下には、ウエスト開口縁Wに沿うウエスト領域A1,B1、及び股部寄り領域A3,B3B3を有している。
以下、おむつ1の外装体11におけるシートの積層状態について更に説明する。なお、図3及び図4には、おむつの腹側部A側が示されているが、本実施形態のおむつ1は、背側部B側も同様の構造を有している。そのため、以下、図3及び図4を参照しつつ、腹側部A及び背側部Bの構成について説明する。
【0015】
本実施形態のおむつ1において、腹側部A及び背側部Bそれぞれの胴回り領域A2,B2は、図2に示すように、腹側部A又は背側部Bの縦方向において、内層シート13の上端13uの位置と、補助シート15の下端15dの位置との間の領域である。補助シート15は、その下端15dが、吸収性本体10の縦方向端部10aから股部方向に、5mm以上、80mm以下の範囲内、好ましくは5mm以上、50mm以下の範囲内に位置しており、例えば、5〜80mm、好ましくは5〜50mmの範囲内に位置している。即ち、補助シート15は、吸収性本体10と重なっている部分の縦方向Yの長さL3(図3参照)が、この数値範囲内である。補助シート15の下端15dの位置と、補助シート15と吸収性本体10が接合されている領域のうち最も股部側の位置との離間距離が、好ましくは0mm以上であり、また、好ましくは30mm以下、より好ましくは20mm以下であり、例えば、0〜30mmであることが好ましく、より好ましくは0〜20mmであることが、補助シート15の非接合領域が着脱時に捲り上がり着用感を阻害することを防止する観点から好ましい。なお、本実施形態においては、補助シート15の股部C側端縁は吸収性本体10と非接着となされている。
そして、腹側部A又は背側部Bにおける胴回り領域A2,B2を、図3及び図4に示すように、縦方向に4等分して、上端1領域からなる上端領域D、中央2領域からなる中領域E及び下端1領域からなる下端領域Fに区分したときに、本実施形態のおむつ1における腹側部A及び背側部Bは、以下の構成を有している。
【0016】
即ち、少なくとも中領域Eにおける内層シート13と補助シート15との間に内側弾性部材71が、幅方向Xに沿って配されている。言い換えれば、内層シート13と補助シート15との間に内側弾性部材71が幅方向Xに沿って配されており、内側弾性部材71は少なくとも中領域Eに配されていることが好ましい。中領域Eには、図3及び図4に示すように、Y方向に間隔を設けて内側弾性部材71が複数本配されていることが好ましい。
【0017】
図3及び図4に示す例においては、中領域Eに3本の内側弾性部材71が配されており、上端領域Dと中領域Eとの境目にも1本の内側弾性部材71が配されている。また、おむつ1における内側弾性部材71は、腹側部AにおけるX方向の全長に亘って配されており、伸長状態で内層シート13と補助シート15との間に配設固定されている。また、胴回り領域A2,B2に配する内側弾性部材71の本数は、好ましくは2本以上、より好ましくは3本以上であり、また、好ましくは12本以下、より好ましくは9本以下であり、例えば、2〜12本が好ましく、より好ましくは3〜9本である。また、胴回り領域A2,B2の中領域Eに配する内側弾性部材71の本数は、好ましくは1本以上、より好ましくは2本以上であり、また、好ましくは6本以下、より好ましくは4本以下であり、例えば、1〜6本が好ましく、より好ましくは2〜4本である。
【0018】
また、胴回り領域A2,B2は、上端領域D及び下端領域Fそれぞれにおける補助シート15と、内層シート13又は吸収性本体10との間の接合面積率が、中央域Eにおける同接合面積率よりも高くなっている。その接合面積率の差は、40パーセントポイント以上であることが好ましく、より好ましくは60パーセントポイント以上である。
より具体的には、上端領域Dには、補助シート15と内層シート13との間が、接着剤を介して接合された所定幅の接合部21が、X方向に延びるように形成されている。下端領域Fにも、補助シート15と内層シート13又は吸収性本体10との間が、接着剤を介して接合された所定幅の接合部23が、X方向に延びるように形成されている。これに対して、中央域Eの大部分においては、図5に示すように、内側弾性部材7に塗布された接着剤16のみを介して、補助シート15と内層シート13とが接合されている。隣接する内側弾性部材71どうし間には、補助シート15と内層シート13の間が接合されていない非接合領域Mが形成されている。
【0019】
上端領域D、中領域E及び下端領域Fのそれぞれにおける接合面積率(補助シートと、内層シート又は吸収性本体との間の接合面積率)は、以下のようにして測定される。
<接合面積率の測定方法>
上端領域D、中領域E及び下端領域Fそれぞれの全面積(展開且つ伸長状態の平面視面積)を領域面積S1とし、その領域面積S1のうち、補助シート15と内層シート13又は吸収性本体10とが接合されている部分の面積を接合面積S2とする。そして、接合面積率(%)を、次式(1)により求める。
接合面積率(%)=(接合面積S2/領域面積S1)×100・・・(1)
接合面積S2は、補助シート15と内層シート13とが接合されている部分の面積と、補助シート15と吸収性本体10とが接合されている部分の面積の合計面積である。
なお、補助シート15と内層シート13又は吸収性本体10の一方若しくは両方に、接着剤が、スパイラル、ストライプ、ドット(散点状)、ウェーブ(波線状)等のパターンで塗工されており、その接着剤によって、エンドフラップ部における補助シート15と内層シート13又は吸収性本体10との間が接合されている場合、接着剤塗布部の面積を接合面積とする。但し、ストライプ、ドット(散点状)、ウェーブ(波線状)等のパターンで複数本塗工された接着剤のうち、互いの間隔が5mm以内の部分はそのパターン間も接合されているものとみなす。また、スパイラルパターン等の、接着剤塗布部で囲まれた接着剤非塗布部を有する塗工の場合は、接着剤非塗布部も接合されているものとみなす。
市販されている製品から各面積を測定する場合には、以下の方法によって測定することができる。
まず、市販されている製品を展開且つ伸長状態にし、トナーを降りかける。次に、送風によって、トナーを除去する。すると、トナーによって着色された接着剤塗布部が観察される。
その後、当該製品の上にOHP用フィルムを置き、接着剤塗布部の輪郭を書き込む。それを、面積を測定できる専用ソフト(Image−ProPlus:(株)日本ローパー社製)を用い、OHPフィルムに書き込まれた画像をスキャナーでパソコンに取り込んで、各面積を求める。
【0020】
また、胴回り領域A2,B2における外層シート12と内層シート13との間は、中領域Eにおける内側弾性部材71の配設領域R1と重なる領域に非接合領域R2を有している。
より具体的には、図3、図4に示すように、内側弾性部材71を、外層シート12に接合せずに、内層シート13と補助シート15との間に固定することによって、胴回り領域A2,B2に、外層シート12と内層シート13との間が、Y方向に連続して接合されていない非接合領域R2が形成されている。本実施形態における非接合領域R2は、Y方向の上側においては、中領域Eから上端領域Dに亘っている。Y方向の下側においては、非接合領域R2の端が、中領域Eと上端領域Dとの境界部の位置に略一致している。また、X方向においては、X方向の両端がサイドシール部S又はその近傍に位置しており、腹側部Aの略全幅に亘っている。
【0021】
また、図3及び図4に示すように、外層シート12における、内側弾性部材71の配設領域R1より上方の領域R3における内面(肌面)に、ウエスト弾性部材51が固定されている。そして、ウエスト弾性部材51の本数又は縦方向Yの長さの半分以上が内層シート13と重なっていない。より具体的には、本実施形態のおむつ1においては、前記領域R3に、複数本(図示例は5本)のウエスト弾性部材51が、腹側部Aの幅方向の全幅に亘って伸長状態で配されている。そのウエスト弾性部材51の収縮により、ウエスト開口部5の周縁部に、ウエストギャザーが形成され、ウエスト開口部におけるフィット性が向上するようになしてある。しかし、内層シート13の上端13uは、Y方向において、最も下側のウエスト弾性部材51よりも下方に位置し、内層シート13が、何れのウエスト弾性部材51とも重なっていない。従って、本実施形態においては、内層シート13と重なっているウエスト弾性部材51の本数はゼロ本であり、ウエスト弾性部材51の100%が内層シート13と重なっていない。また、ウエスト弾性部材の縦方向の長さとは、複数本のウエスト弾性部材が配されている場合は、最も上側のものの上端と最も下側のものの下端との間の距離を縦方向の長さとする。一枚のシート状のウエスト弾性部材が配されている場合は、その上端と下側との間の距離を縦方向の長さを、ウエスト弾性部材の縦方向の長さとする。本実施形態においては、ウエスト弾性部材51の縦方向Yの長さの100%が内層シート13と重なっていない。内層シート13は、ウエスト弾性部材51の本数又は縦方向Yの長さの半分(=50%)以上と重なっていないことが好ましく、ウエスト弾性部材51と全く重なっていないことが、内層シート13の上端13uの近傍に不規則な収縮が発生することを防止し、浮き部Gの外観を悪化させないようにする観点から、より好ましい。
【0022】
なお、本実施形態のおむつ1におけるウエスト弾性部材51は、前述した内側弾性部材71と同様に、弾性部材51に塗工した接着剤のみを介して、外層シート12と内層シート13との間に接合されている。隣接するウエスト弾性部材51どうし間には、外層シート12と内層シート13との間が接合されていない非接合領域が形成されている。また、ウエスト弾性部材51は、Y方向に間隔を開けて複数本配されていることが好ましい。腹側部A及び背側部Bに配するウエスト弾性部材51の本数は、それぞれ、好ましくは3本以上、より好ましくは4本以上であり、また、好ましくは15本以下、より好ましくは12本以下であり、例えば、3〜15本が好ましく、より好ましくは4〜12本である。
【0023】
また、補助シート15の下端領域F側が、縦方向Yにおける5mm以上、50mm以下の長さに亘って、吸収性本体10と接合されている。より具体的には、本実施形態のおむつ1においては、図3及び図4に示すように、下端領域Fに、前述した接合部23が形成されている。該接合部23を形成している接着剤によって、下端領域Fにおける補助シート15が、吸収性本体10の肌面側に重ねて接合されている。大人用おむつの場合は、補助シート15が吸収性本体10と接合されている部分のY方向の長さL10を5mm以上とすることにより、履き上げ時の構造破壊を確実に防止できる。また、50mm以下とすることにより、吸収性本体と重なる長さが長くなって吸収領域が減少したり前後から漏れやすくなったりすることを防止することできる。前記長さL10は、好ましくは10mm以上、より好ましくは15mm以上であり、また、好ましくは45mm以下、より好ましくは30mm以下であり、例えば、10〜45mmとすることが好ましく、より好ましくは15〜30mmである。幼児用おむつの場合は、好ましくは10mm以上、より好ましくは15mm以上であり、また、好ましくは30mm以下、より好ましくは25mm以下であり、例えば、10〜30mmとすることが好ましく、より好ましくは15〜25である。
【0024】
本実施形態のおむつ1の腹側部Aの股下寄り領域A3には、X方向に延びる下部弾性部材91が、Y方向に間隔を開けて複数本配されている。
下部弾性部材91は、図4に示すように、外層シート12の内面(肌面)に接合されている。より具体的には、下部弾性部材91は、そのそれぞれを挟む外層シート12と内層シート13との間に接着剤を介して接合されている。
下部弾性部材91は、股下寄り領域A3,B3のX方向中央部で左右に分割された状態で配されていることが好ましい。すなわち、股下寄り領域A3,B3は、吸収性本体10の両側縁の外方においては伸縮力を発現することが好ましい。一方、吸収性本体10と重なるX方向中央部に、下部弾性部材91が伸縮力を発現しない非伸縮領域を有していることが好ましい。股下寄り領域A3,B3の非伸縮性領域は、下部弾性部材91が配されていなくても良いし、下部弾性部材91が伸縮性を発現しない状態とされて配されていても良い。例えば、非伸縮性領域は、下部弾性部材91が、伸長状態が解除された複数の断片が生じるように切断された箇所であっても良い。
【0025】
股下寄り領域A3に配する下部弾性部材91の本数は、好ましくは3本以上、より好ましくは5本以上であり、また、好ましくは15本以下、より好ましくは10本以下であり、例えば、3〜15本であることが好ましく、より好ましくは5〜10本である。ここで、下部弾性部材91の本数は、本実施形態のように、下部弾性部材91がX方向に分割されている場合、左右の2本を纏めて1本と数える。
外装体11には、更に、レッグ部弾性部材61が配されている。レッグ部弾性部材61は、X方向の両端部が腹側部A又は背側部Bに位置し、X方向の中央側が股部Cに位置するように湾曲させて配されている。レッグ部弾性部材61は、外層シート12と内層シート13との間に、伸長状態で配されており、おむつ1のレッグ開口部6,6に、脚回りに沿って収縮するレッグギャザーを形成する。
下部弾性部材91及びレッグ部弾性部材61は、それぞれ隣接する2枚のシート間に、一方又は双方のシートに塗工した接着剤を介して接合されており、弾性部材と弾性部材との間の中央位置においてもシートどうしが接合されている。
【0026】
図2及び図3に示すように、吸収性本体10は、おむつの縦方向(Y方向)と同方向に長い長方形状であり、液透過性の表面シート2、液不透過性又は液難透過性(撥水性等)の裏面シート3及び両シート2,3間に介在配置された液保持性の吸収体4を有する。吸収体4は、パルプ繊維等の繊維の集合体(不織布であっても良い)からなる吸収性コア又はこれに吸水性ポリマーの粒子を保持させてなる吸収性コア40と、該吸収性コア40を被覆するコアラップシート46からなる。吸収体4も、Y方向に長い長方形状に形成されている。吸収性コア40は、フラッフパルプの積繊物又はフラッフパルプと吸水性ポリマーの混合積繊物であることが好ましい。また、コアラップシート46としては、各種公知のものを用いることができ、例えばティッシュペーパのような薄紙や透水性の不織布等が好ましく用いられる。コアラップシート46は、吸収性コア40の肌面側と非肌面側とを別々のシートで被覆していても、一枚のシートで、吸収性コア40の肌面側と非肌面側とを被覆していても良い。
【0027】
また、本おむつ1においては、図2に示すように、吸収性本体10の長手方向の左右両側に、液抵抗性ないし撥水性で且つ通気性の素材から構成された側方カフス8,8が形成されている。各側方カフス8の自由端部の近傍には、複数の側方カフス弾性部材81が伸張状態で配されている。側方カフス8は、おむつ着用時に起立して液の側方への流出を阻止する。
【0028】
本実施形態のおむつ1は、従来のパンツ型使い捨ておむつと同様に、レッグ開口部6,6に脚を通した後、ウエスト領域付近を持って引き上げることにより容易に装着することができる。
【0029】
本実施形態のおむつ1によれば、前述のように、少なくとも中領域Eにおける内層シート13と補助シート15との間に内側弾性部材71が配されている。さらに、その中領域Eにおける内層シート13と補助シート15との間の接合面積率が低い。そのため、補助シート15及び内層シート13が硬くならず、おむつ1の内面側の感触が柔らかくなる上に、着用者の肌に対するフィット性にも優れる。
しかも、外層シート12と内層シート13との間に非接合領域R2を有する。それにより、外層シート12が、おむつの外方に向かって膨らみ、内層シート13から浮いて浮き部Gを形成しやすい。そして、おむつの外面の肌触りが柔らかく、見た目も柔らかい印象を与えやすいものとなる。
浮き部Gは外力緩衝領域としての役割を果たす。即ち、着用者の動作時に外衣により加わる外力等により、外層シート12に引き攣れや歪みが生じても、浮き部Gの存在によって、外層シート12に引き攣れや歪みを生じさせた外力が、内層シート13に伝達されにくい。そのため、外力により、おむつにズレ等の移動や変形が生じることが抑制されて、優れた着用感等が得られる。また、浮き部Gが生じることによって、おむつ1の外観は柔らかな印象を与えるものとなり、おむつ1の美観性が向上する。
【0030】
しかも、本実施形態のおむつ1においては、浮き部Gの上下に、胴回り方向に収縮するウエスト弾性部材51と下部弾性部材91が存在している。そのため、浮き部Gの立体形成性に優れている。しかも、浮き部Gの肌面側に位置するシート等が、内側弾性部材71により肌に密着して固定されるため、浮き部Gが、前後左右に不均一によれにくく、浮き部Gの立体成形性が損なわれにくい。そのため、歩行時や立ったり座ったりする動作時等にも、浮き部Gによる外力緩衝効果が確実に奏されて、着用感の低下等が防止される。
【0031】
また、胴回り領域A2,B2における内層シート13と補助シート15との接合面積率を全体的に低くした場合には、ウエスト領域A1,B1付近を持って引き上げる際に、シート間に剥離が生じて、おむつの構造破壊が生じやすい。しかし、本実施形態のおむつ1においては、下端領域Fの接合面積率が中領域Eに相対的に高く、しかも、下端領域Fにおいて、補助シート15が、吸収性本体10に重ねて接合されている。そのため、ウエスト領域A1,B1付近を持って引き上げる際に、補助シート15が内層シート13から剥離することや、それによるおむつの構造破壊が、効果的に防止される。
【0032】
また、内層シート13とウエスト弾性部材51の半分以上と重なっていないこと、及び上端領域Dの接合面積率が中領域Eに比して相対的に高いことによって、ウエスト弾性部材51の収縮力を緩衝することができる。そして、ウエスト弾性部材51の収縮による不均一な力が中領域Eに伝達されることを防止できる。それにより、上端領域Dにおける内層シート13が不規則に収縮して不規則な皺が発生したり、内層シート13が内外に折れ曲がったりすることが防止でき、柔軟性を一層確実に向上させることができる。
【0033】
前述の1又は2以上の効果をより確実に得る観点から、上端領域Dの接合面積率と中領域Eの接合面積率との比(前者/後者)は、好ましくは1.5以上、より好ましくは2以上であり、また、好ましくは20以下、より好ましくは15以下であり、例えば、1.5〜20であることが好ましく、より好ましくは2〜15である。下端領域Fの接合面積率と中領域Eの接合面積率との比(前者/後者)は、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.5以上であり、また、好ましくは15以下、より好ましくは12以下であり、例えば、1.2〜15であることが好ましく、より好ましくは2〜15である。
同様の観点から、ウエスト領域A1,B1のY方向の長さL1は、パンツ型吸収性物品の全長Lの、好ましくは2%以上、より好ましくは4%以上であり、また、好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下であり、例えば、2〜20%であることが好ましく、より好ましくは4〜15%である。同様の観点から、胴回り領域A2,B2のY方向の長さL2は、パンツ型吸収性物品の全長Lの、好ましくは5%以上、より好ましくは7%以上であり、また、好ましくは17%以下、より好ましくは15%以下であり、例えば5〜17%であることが好ましく、より好ましくは7〜15%である。
また、前記配設領域R1のY方向の長さは、胴回り領域A2,B2の同方向の長さL2の、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上であり、また、好ましくは80%以下、より好ましくは60%以下であり、例えば、5〜80%であることが好ましく、より好ましくは10〜60%である。前記非接合領域R2のY方向の長さは、胴回り領域A2,B2の同方向の長さL2の、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上であり、また、好ましくは85%以下、より好ましくは75%以下であり、例えば40〜85%であることが好ましく、より好ましくは50〜75%である。
【0034】
また、上端領域Dの接合面積率と下端領域Fの接合面積率は、ウエスト弾性部材及び下部弾性部材の収縮力を緩衝し、不均一な力が中領域に伝達されることを防ぐ観点、及び、履き上げ時の耐久性を向上させる観点から、それぞれ、好ましくは15%以上、より好ましくは30%以上であり、また、好ましくは90%以下、より好ましくは70%以下であり、例えば、15〜90%であることが好ましく、より好ましくは30〜70%である。同様の観点から、上端領域Dにおける前記接合部21は、Y方向の長さ(上端領域Dに存する部分のみの長さ)が、上端領域DのY方向の長さの、好ましくは25%以上、より好ましくは40%以上であり、また、好ましくは100%以下、より好ましくは80%以下であり、例えば、25〜100%であることが好ましく、より好ましくは40〜80%である。X方向の長さは、腹側部A又は背側部Bのサイドシール部間の幅W1の、好ましくは60%以上、より好ましくは80%以上であり、また、好ましくは100%以下であり、例えば、60〜100%であることが好ましく、より好ましくは80〜100%である。
【0035】
また、中領域Eの接合面積率は、柔軟性、伸縮性及び浮き部Gの形成性の観点から、好ましくは1%以上、より好ましくは3%以上、また、好ましくは20%以下であり、例えば、1〜20%であることが好ましく、より好ましくは3〜20%である。同様の観点から、下端領域Fにおける前記接合部23は、Y方向の長さ(下端領域Fに存する部分のみの長さ)が、下端領域FのY方向の長さの、好ましくは20%以上、より好ましくは40%以上であり、また、好ましくは100%以下、より好ましくは80%以下であり、例えば、20〜100%であることが好ましく、より好ましくは40〜80%である。下端領域FのX方向の長さは、腹側部A又は背側部Bのサイドシール部間の幅W1の、好ましくは60%以上、より好ましくは80%以上であり、また、好ましくは100%以下であり、例えば、60〜100%であることが好ましく、より好ましくは80〜100%である。
【0036】
また、上端領域Dにおける接合面積率が、下端領域Fにおける接合面積率よりも高いことが、柔軟性と高い耐久性との両立の観点から好ましい。この場合、下端領域Fにおける前記接合部23は、Y方向の長さ(下端領域Fに存する部分のみの長さ)が、下端領域FのY方向の長さの、好ましくは20%以上、より好ましくは35%以上であり、好ましくは95%以下、更に好ましくは75%以下である。同様の観点から、上端領域Dの接合面積率と下端領域Fの接合面積率との比(前者/後者)は、好ましくは1.1以上、より好ましくは1.3以上であり、また、好ましくは5.0以下、より好ましくは2.5以下、更により好ましくは2.3以下であり、例えば、1.1〜5.0であることが好ましく、より好ましくは1.1〜2.5、更により好ましくは1.3〜2.3である。
【0037】
また、本実施形態のおむつ1においては、図4に示すように、下端領域Fにおける、吸収性本体10が配されていない部分において、外層シート12、内層シート13及び補助シート15が、各シート間に介在する接着剤によって厚み方向に一体化されている。これにより、履き上げ時の耐久性が一層向上する。
外層シート12、内層シート13及び補助シート15が厚み方向に一体化されている領域R3のY方向の長さは、下端領域FのY方向の長さの、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上であり、また、好ましくは100%以下であり、例えば、30〜100%であることが好ましく、より好ましくは50〜100%である。
【0038】
また、前記領域R3には、図4に示すように、弾性部材が配されていないことが好ましい。該領域R3に弾性部材が配されていないことによって、各シートの平滑性が保持され、接着強度が高まるため、履き上げ時の耐久性が一層向上する。
【0039】
また、本実施形態のおむつ1においては、図3に示すように、上端領域Dにおいて内層シート13と補助シート15とを接合している接着剤21aが、内層シート13の上端13uより上方に延在している。該延在している接着剤21aを介して、該内層シート13の上端13u近傍における、外層シート12、内層シート13及び補助シート15が厚み方向に一体化されている。これら3枚のシートが一体化されることにより、履き上げ時の耐久性が一層向上する。
【0040】
なお、本実施形態のおむつ1においては、吸収性本体10は、吸収性コア40の表裏両面及び両側面をコアラップシート46で被覆した吸収体4と、該吸収体4の表裏両面を被覆する表面シート2及び裏面シート3とを備えている。コアラップシート46は、吸収性コア40の表裏両面とパターン塗工された接着剤によって接合されている。それと共に吸収性コア40の長手方向の両端から延出した部分においては、コアラップシート46どうしが接着剤によって接合されている。吸収性本体10の長手方向の両端部において、表面シート2及び裏面シート3は、前述したコアラップシート46に接着剤その他の接合手段で接合されているか、コアラップシートよりも更に延出した部分において接着剤その他の接合手段によって互いに接合されている。
【0041】
また、吸収性コア40は、Y方向の両端部にV字又はU字状の切り欠き部44を有している。この切り欠き部44は、吸収性コア40の端部の変形性を向上させ、着用者に対するフィット性を向上させるものである。前記の下端領域Fにおける補助シート15は、おむつ1のX方向の中央部において、吸収性本体10における内部に切り欠き部44が存在する部分(切り欠き部と重なる領域)と接合した部分15cを有している。その接合した部分15cの両側それぞれに、該吸収性本体10における内部に吸収性コア40が存在する部分(吸収性コアと重なる領域)と接合した部分15s,15sを有している。
これにより、履き上げ動作により補助シート15が上方に引張された際に、補助シート15にかかる引張力が切り欠き部44の周辺部に分散し、吸収コア40および吸収コア40の周辺部の構造破壊を生じにくくさせる。
【0042】
なお、吸収性本体10における吸収性コア40が存在する部分と接合した部分15s,15sは、吸収性コア40の端部において、切り欠き部44の両側に位置する部分45,45と重なっている。また、前記部分15c及び前記部分15s,15sは、それぞれ、切り欠き部44又はその両側に位置する部分45,45に存在する吸収性本体10の構成部材、例えば表面シート2やコアラップシート46等と接合されていることが履き上げ時に吸収性物品の構造破壊を生じにくくさせる観点から好ましい。
また、図2に示す吸収性コア40は、幅方向中央に位置する中央吸収コア41と、その両側に位置する側部吸収コア42とを有する。しかし、吸収性コア40は、側部吸収コア42を有しない中央吸収コア41のみからなるものであっても良いし、その場合の中央吸収コア41は、Y方向の中央部が細幅に括れているものであっても良いし、括れていないものであっても良い。
【0043】
上述したおむつ1の各部の形成材料について説明する。
表面シート2、裏面シート3、吸収体4、及び側方カフス8形成用シート等としては、使い捨ておむつ等の吸収性物品に従来用いられている各種のもの等を特に制限なく用いることができる。例えば、表面シート2としては、単層又は多層構造の不織布や、開孔フィルム等を用いることができる。裏面シート3としては、樹脂フィルムや樹脂フィルムと不織布の積層体等を用いることができる。裏面シート3は、透湿性を有するものでも有しないものでも良い。
【0044】
また、外層シート12,内層シート13,補助シート15としても、使い捨ておむつ等の吸収性物品に従来用いられている各種のシート材を特に制限なく用いることができるが、不織布を用いることが好ましい。不織布としては、エアースルー不織布、ヒートロール不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布の単層の不織布又はこれらが2層以上に積層された積層不織布等が好ましい。また、外層シート12,内層シート13,補助シート15として、不織布とフィルムとを一体化したシート等を用いることもできる。
【0045】
外層シート12,内層シート13及び補助シート15は、それぞれ、スパンボンド不織布、特に目付が20g/m2以下のスパンボンド不織布であることが好ましい。
引っ張り強度に優れるスパンボンド不織布を使用することにより、各シートの目付の低減が可能である。シートの剛性低下により、浮き部Gの形成性や、浮き部Gによる外力緩衝効果が維持されるようにするための形状安定性が向上する。また、目付が20g/m2以下のスパンボンド不織布は、平滑性にも優れるため、シートや弾性部材等からなる各部材間の接着性が向上する。そして、接着剤の使用量を低減可能であるため、浮き部Gやおむつ1の柔軟性の向上も実現できる。外層シート12は、その目付が、内層シート13及び補助シート15の目付と、同等であるか又はそれより大きいことが、おむつ1の引張強度向上の観点から好ましい。本実施形態のおむつ1によれば、外層シート12として、一般的に硬い不織布とされるスパンボンド不織布を使用した場合であっても、浮き部Gの立体成形性がよく、柔らかい印象の外観を与えることができる。
スパンボンド不織布は、柔軟加工を施されたものが好ましい。柔軟加工としては、不織布への柔軟剤塗工、製造時のエンボス加工のほか、原料樹脂への柔軟剤練り込み等が挙げられる。
【0046】
また、外層シート12,内層シート13及び補助シート15、特に外層シート12には、非伸長性のシートを用いることが好ましい。「非伸長性のシート」は、少なくともおむつ(パンツ型吸収性物品)の幅方向(X方向)の最大伸度が10%以下である(長さが1.1倍までしか伸びない)ことが好ましい。
<最大伸度の測定方法>
長さ50mm、幅25mmのサンプル片を用意し、テンシロン装置を用いて、チャック間にサンプル片を固定する。300mm/minの速度で伸長させ、破断した時点の伸度を最大伸度とする。破断した時点とは、伸長率と荷重の関係曲線において引張荷重が最大値を示す点である。
【0047】
弾性部材51,61,71,81,91の形成素材としては、例えば、スチレン−ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、ネオプレン等の合成ゴム、天然ゴム、EVA、伸縮性ポリオレフィン、ポリウレタン等を挙げることができる。弾性部材の形態としては、断面が矩形、正方形、円形、楕円形又は多角形状等の糸状(糸ゴム等)、若しくは紐状(平ゴム等)のもの、又はマルチフィラメントタイプの糸状のもの等を好ましく用いることができる。
【0048】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は上述した実施形態に制限されず適宜変更可能である。
例えば、外層シート12、内層シート13及び補助シート15は、それぞれが、別体である必要はなく、1枚のシートを折り返して形成されていてもよい。
【0049】
例えば、腹側部A及び/又は背側部Bにおける、外装体のシートの積層状態は、例えば、図6に示すように変更することもできる。図6には、腹側部Aにおける積層状態を示すが、背側部Bも腹側部Aと同様の構成とすることができる。
【0050】
図6(a)に示す外装体11Aにおいては、外層シート12及び内層シート13とは別体の補助シート15は存在しない。外層シート12の折り返し部12a,12bが、吸収性本体の縦方向の端部の上下に亘って延在する補助シートを構成している。
図6(b)に示す外装体11Bは、外層シートの折り返し部12a,12bを有していない。補助シート15が、外層シート12の外面側から内層シート13の内面側に亘るように配されている。
【0051】
図6(c)に示す外装体11Cにおいては、補助シート15が、外層シート12の折り返し部12aの肌面側に積層されている。ウエスト弾性部材51は、外層シート12とその折り返し部12a,12bとの間、及び外層シート12と補助シート15との間に接合固定されている。
【0052】
また、上記の実施形態のおむつ1においては、背側部B及び腹側部Aの両方に、外層シート、内層シート及び補助シートが重なっている胴回り領域A2,B2を有するものであった。また、図3及び図4に示すような構成の上端領域D、中領域E及び下端領域Fを有するものであった。しかし、腹側部Aのみに、胴回り領域A2や、図3及び図4に示すような構成の上端領域D、中領域E及び下端領域Fを有するものであっても良い。その場合、背側部Bは、図3及び図4を参照して説明した腹側部Aの構成のうちの任意の一部のみの構成を有していても良い。
【0053】
また、外装体は、外層シート12及び内層シート13が、それぞれ、腹側部A、股部C及び背側部Bに亘って連続しているものに代えて、腹側部A及び背側部Bに、互いに別体のシートが配されているものであっても良い。別体のシートとは、外層シート12及び内層シート13から選ばれる1又は2のシートである。
また、パンツ型吸収性物品は、幼児又は成人用のパンツ型使い捨ておむつの他、パンツ型の生理用ナプキン等であっても良い。
上述した一の実施形態における説明省略部分及び一の実施形態のみが有する要件は、それぞれ他の実施形態に適宜適用することができる。また、各実施形態における要件は、適宜、実施形態間で相互に置換可能である。
【0054】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の形態を開示する。
<1>
外装体と、該外装体の肌面側に固定された吸収性本体とを備え、腹側部から股部を介して背側部に亘る縦方向とこれに交差する幅方向を有するパンツ型吸収性物品であって、
腹側部における前記外装体は、外層シート、該外層シートの肌面側に位置する内層シート、及び該内層シートの肌面側に位置し前記吸収性本体の縦方向の端部の上下に亘って延在する補助シートを有しており、
前記外層シート、前記内層シート及び前記補助シートが重なっている胴回り領域を、前記縦方向に4等分して、上端1領域からなる上端領域、中央2領域からなる中領域及び下端1領域からなる下端領域に区分したときに、
少なくとも前記中領域における前記内層シートと前記補助シートとの間に内側弾性部材が前記幅方向に沿って配されており、
前記上端領域及び下端領域それぞれにおける前記補助シートと、前記内層シート又は前記吸収性本体との間の接合面積率が、前記中央域における同接合面積率よりも高く、
前記外層シートと前記内層シートとの間は、前記中領域における前記内側弾性部材の配設領域と重なる領域に非接合領域を有しており、
前記補助シートは、その下端が、前記吸収性本体の縦方向端部から股部方向に5mm以上、80mm以下の範囲内に位置し、かつ、前記縦方向における5mm以上、50mm以下の長さに亘って前記吸収性本体と接合されている、パンツ型吸収性物品。
【0055】
<2>
前記内側弾性部材の配設領域より上方の領域における前記外層シートの肌面に、ウエスト弾性部材が固定され、該ウエスト弾性部材の本数又は前記縦方向の長さの半分以上が、前記内層シートと重なっていない、前記<1>に記載のパンツ型吸収性物品。
<3>
前記ウエスト弾性部材と前記内層シートとが全く重なっていない、前記<2>に記載のパンツ型吸収性物品。
<4>
前記外装体は、前記腹側部における両側縁部と、前記背側部における両側縁部とが互いに接合されており、その接合によって、一対のサイドシール部形成されているパンツ型吸収性物品であって、
前記上端領域における前記補助シートと前記内層シートとの間が、接着剤を介して接合された所定幅の接合部が、前記幅方向(X方向)に亘って形成されている、前記<1>〜<3>のいずれか1に記載のパンツ型吸収性物品。
【0056】
<5>
前記上端領域における接合部の前記幅方向(X方向)の長さは、前記一対のサイドシール部間の幅の、60%以上、好ましくは80%以上であり、100%以下である、前記<4>に記載のパンツ型吸収性物品。
<6>
前記上端領域における接合部の前記縦方向(Y方向)の長さは、前記上端領域の前記縦方向(Y方向)長さの、25%以上、好ましくは40%以上であり、100%以下、好ましくは80%以下である、前記<1>〜<5>のいずれか1に記載のパンツ型吸収性物品。
<7>
前記下端領域における前記補助シートと前記内層シート又は前記吸収性本体との間が、接着剤を介して接合された所定幅の接合部が、前記幅方向(X方向)全体に亘って形成されている、前記<1>〜<6>のいずれか1に記載のパンツ型吸収性物品。
<8>
前記下端領域における接合部の前記幅方向(X方向)の長さは、前記一対のサイドシール部間の幅の、60%以上、好ましくは80%以上であり、100%以下である、前記<7>に記載のパンツ型吸収性物品。
<9>
前記下端領域における接合部の前記縦方向(Y方向)の長さは、前記下端領域の前記縦方向(Y方向)長さの、20%以上、好ましくは35%以上、より好ましくは40%以上であり、100%以下、好ましくは95%以下、より好ましくは80%以下、更により好ましくは75%以下である、前記<1>〜<8>のいずれか1に記載のパンツ型吸収性物品。
【0057】
<10>
前記上端領域の接合面積率と前記下端領域の接合面積率は、それぞれ、15%以上、好ましくは30%以上であり、90%以下、好ましくは70%以下である、前記<1>〜<9>のいずれか1に記載のパンツ型吸収性物品。
<11>
前記中領域の接合面積率は、1%以上、好ましくは3%以上であり、20%以下である、前記<1>〜<10>のいずれか1に記載のパンツ型吸収性物品。
<12>
前記上端領域及び下端領域それぞれにおける前記補助シートと、前記内層シート又は前記吸収性本体との間の接合面積率が、前記中央域における同接合面積率よりも、40パーセントポイント以上高く、好ましくは60パーセントポイント以上高い、前記<1>〜<11>のいずれか1に記載のパンツ型吸収性物品。
<13>
前記上端領域の接合面積率と前記中領域の接合面積率との比は、1.5以上、好ましくは2以上であり、20以下、好ましくは15以下である、前記<1>〜<12>のいずれか1に記載のパンツ型吸収性物品。
<14>
前記下端領域の接合面積率と前記中領域の接合面積率との比は、1.2以上、好ましくは1.5以上であり、15以下、好ましくは12以下である、前記<1>〜<13>のいずれか1に記載のパンツ型吸収性物品。
【0058】
<15>
前記上端領域における前記接合面積率が、前記下端領域における前記接合面積率よりも高い、前記<1>〜<14>のいずれか1に記載のパンツ型吸収性物品。
<16>
前記上端領域の接合面積率と前記下端領域の接合面積率との比は、1.1以上、好ましくは1.3以上であり、5.0以下、好ましくは2.5以下、より好ましくは2.3以下である、前記<1>〜<15>のいずれか1に記載のパンツ型吸収性物品。
<17>
前記補助シートの前記下端が、前記吸収性本体の縦方向端部から股部方向に5mm以上であり、50mm以下に位置している、前記<1>〜<16>のいずれか1に記載のパンツ型吸収性物品。
<18>
前記補助シートの前記下端と、前記補助シートと前記吸収性本体が接合されている領域のうち最も股部側の位置との離間距離が、0mm以上であり、30mm以下、好ましくは20mm以下である、前記<1>〜<17>のいずれか1に記載のパンツ型吸収性物品。
<19>
前記補助シートと前記吸収性本体とが接合されている縦方向の長さが、10mm以上、好ましくは15mm以上であり、45mm以下、好ましくは30mm以下の長さに亘っている、前記<1>〜<18>のいずれか1に記載のパンツ型吸収性物品。
【0059】
<20>
前記下端領域における、前記吸収性本体が配されていない部分において、前記外層シート、前記内層シート及び前記補助シートが、厚み方向に一体化されている、前記<1>〜<19>のいずれか1に記載のパンツ型吸収性物品。
<21>
前記一体化されている領域の前記縦方向(Y方向)の長さは、前記下端領域の前記縦方向(Y方向)長さの、30%以上、好ましくは50%以上であり、100%以下である、前記<20>に記載のパンツ型吸収性物品。
<22>
前記外層シート、前記内層シート及び前記補助シートが厚み方向に一体化されている領域には、弾性部材が配されていない、前記<20>又は<21>に記載のパンツ型吸収性物品。
<23>
前記上端領域において前記内層シートと前記補助シートとを接合している接着剤が、該内層シートの上端より上方に延在しており、該接着剤を介して、該内層シートの上端近傍における、前記外層シート、該内層シート及び前記補助シートが厚み方向に一体化されている、前記<20>〜<22>のいずれか1に記載のパンツ型吸収性物品。
<24>
前記腹側部の股下寄り領域には、前記幅方向(X方向)に延びる下部弾性部材が、前記縦方向(Y方向)に間隔を開けて複数本配されている、前記<1>〜<23>のいずれか1に記載のパンツ型吸収性物品。
【0060】
<25>
前記パンツ型吸収性物品は、前記腹側部及び前記背側部それぞれにおける前記胴回り領域の上下に、ウエスト開口縁に沿うウエスト領域、及び前記股部寄り領域を有しており、
前記ウエスト領域の前記縦方向(Y方向)の長さは、前記パンツ型吸収性物品の全長の、2%以上、好ましくは4%以上であり、20%以下、好ましくは15%以下である、前記<1>〜<24>のいずれか1に記載のパンツ型吸収性物品。
<26>
前記胴回り領域の前記縦方向(Y方向)の長さは、前記パンツ型吸収性物品の全長の、5%以上、好ましくは7%以上であり、17%以下、好ましくは15%以下である、前記<1>〜<25>のいずれか1に記載のパンツ型吸収性物品。
<27>
前記中領域における内側弾性部材の配設領域の前記縦方向(Y方向)の長さは、前記胴回り領域の前記縦方向(Y方向)長さの、5%以上、好ましくは10%以上であり、80%以下、好ましくは60%以下である、前記<26>に記載のパンツ型吸収性物品。
<28>
前記非接合領域の前記縦方向(Y方向)の長さは、前記胴回り領域の前記縦方向(Y方向)長さの、40%以上、好ましくは50%以上であり、85%以下、好ましくは75%以下である、前記<26>又は<27>に記載のパンツ型吸収性物品。
<29>
前記吸収性本体は、腹側部側の端部にV字又はU字状の切り欠き部を有する吸収性コアを含んでおり、前記下端領域における前記補助シートは、物品幅方向中央部に、前記吸収性本体における該切り欠き部と重なる領域に接合した部分を有し、その両側にそれぞれに、前記吸収性本体における前記吸収性コアと重なる領域に接合した部分を有している、前記<1>〜<28>のいずれか1に記載のパンツ型吸収性物品。
【0061】
<30>
前記外層シート、前記内層シート及び前記補助シートが、何れもスパンボンド不織布からなる、前記<1>〜<29>のいずれか1に記載のパンツ型吸収性物品。
<31>
前記パンツ型吸収性物品は、幼児用パンツ型使い捨ておむつ、成人用パンツ型使い捨ておむつ、又は、パンツ型生理用ナプキンである、前記<1>〜<30>のいずれか1に記載のパンツ型吸収性物品。
【符号の説明】
【0062】
1 使い捨ておむつ(パンツ型吸収性物品)
2 表面シート
3 裏面シート
4 吸収体
5 ウエスト開口部
6 レッグ開口部
10 吸収性本体
11,11A〜11C 外装体
12 外層シート
12a,12b 外層シートの折り返し部
13 内層シート
15 補助シート
51 ウエスト弾性部材
71 内側弾性部材
91 下部弾性部材
A 腹側部
A1 ウエスト領域
A2 胴回り領域
A3 股下寄り領域
B 背側部
B1 ウエスト領域
B2 胴回り領域
B3 股下寄り領域
C 股部
D 上端領域
E 中領域
F 下端領域
G 浮き部
W ウエスト開口縁
R1 内側弾性部材の配設領域
R2 非接合領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装体と、該外装体の肌面側に固定された吸収性本体とを備え、腹側部から股部を介して背側部に亘る縦方向とこれに交差する幅方向を有するパンツ型吸収性物品であって、
腹側部における前記外装体は、外層シート、該外層シートの肌面側に位置する内層シート、及び該内層シートの肌面側に位置し前記吸収性本体の縦方向の端部の上下に亘って延在する補助シートを有しており、
前記外層シート、前記内層シート及び前記補助シートが重なっている胴回り領域を、前記縦方向に4等分して、上端1領域からなる上端領域、中央2領域からなる中領域及び下端1領域からなる下端領域に区分したときに、
少なくとも前記中領域における前記内層シートと前記補助シートとの間に内側弾性部材が前記幅方向に沿って配されており、
前記上端領域及び下端領域それぞれにおける前記補助シートと、前記内層シート又は前記吸収性本体との間の接合面積率が、前記中央域における同接合面積率よりも高く、
前記外層シートと前記内層シートとの間は、前記中領域における前記内側弾性部材の配設領域と重なる領域に非接合領域を有しており、
前記補助シートは、その下端が、前記吸収性本体の縦方向端部から股部方向に5mm以上、80mm以下の範囲内に位置し、かつ、前記縦方向における5mm以上、50mm以下の長さに亘って前記吸収性本体と接合されている、パンツ型吸収性物品。
【請求項2】
前記内側弾性部材の配設領域より上方の領域における前記外層シートの肌面に、ウエスト弾性部材が固定され、該ウエスト弾性部材の本数又は前記縦方向の長さの半分以上が、前記内層シートと重なっていない、請求項1記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項3】
前記上端領域における前記接合面積率が、前記下端領域における前記接合面積率よりも高い、請求項1又は2記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項4】
前記下端領域における、前記吸収性本体が配されていない部分において、前記外層シート、前記内層シート及び前記補助シートが、厚み方向に一体化されている、請求項1〜3の何れか1項記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項5】
前記外層シート、前記内層シート及び前記補助シートが厚み方向に一体化されている領域には、弾性部材が配されていない、請求項1〜4の何れか1項記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項6】
前記上端領域において前記内層シートと前記補助シートとを接合している接着剤が、該内層シートの上端より上方に延在しており、該接着剤を介して、該内層シートの上端近傍における、前記外層シート、該内層シート及び前記補助シートが厚み方向に一体化されている、請求項1〜5の何れか1項記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項7】
前記吸収性本体は、腹側部側の端部にV字又はU字状の切り欠き部を有する吸収性コアを含んでおり、前記下端領域における前記補助シートは、物品幅方向中央部に、前記吸収性本体における該切り欠き部と重なる領域に接合した部分を有し、その両側にそれぞれに、前記吸収性本体における前記吸収性コアと重なる領域に接合した部分を有している、請求項1〜6の何れか1項記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項8】
前記外層シート、前記内層シート及び前記補助シートが、何れもスパンボンド不織布からなる、請求項1〜7の何れか1項記載のパンツ型吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−52228(P2013−52228A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−167638(P2012−167638)
【出願日】平成24年7月27日(2012.7.27)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】