説明

パーマネントウェーブキット

【課題】パーマネントウェーブ用剤の量を調節することなく、パーマネントウェーブ用剤の量を過不足なくコントロールできるパーマネントウェーブキットの提供。
【解決手段】パーマネントウェーブキットは、以下の(1)ないし(3)を含む。(1)毛髪保持具1。(2)粘度が0.90〜3,000mPa・sであるパーマネントウェーブ用剤。(3)上部に開口部を有する袋状をなし、該開口部81に隣接し、かつ毛髪束をウェーブ状に変形させた状態で保持した毛髪保持具1を収納可能な収納部82と;底部に隣接し、かつパーマネントウェーブ用剤を貯溜可能な液溜まり部83と;収納部82及び液留まり部83に隣接し、パーマネントウェーブ用剤の通過が可能な液絡構造84a及び毛髪束の液溜まり部への侵入の阻止が可能な遮蔽構造84bを含む隔離部84と;を有する収納袋。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪にパーマネントウェーブ形状を付与するためのパーマネントウェーブキットに関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪へパーマネントウェーブ形状を付与するために一般に行われる技術では、毛髪保持具(カーリングロッド等)を用い、毛髪を所望のウェーブ形状に予め変形させた後に、パーマネントウェーブ用剤で処理を行う。この際、毛髪保持具に巻かれた状態の毛髪へのパーマネントウェーブ用剤の馴染み等の観点から、通常は低粘度のパーマネントウェーブ用剤をロッドに直接塗布する。このため、パーマネントウェーブ用剤が頭皮等に付着したり、毛髪に馴染まない余剰の剤が液だれしたり、周りに飛び散ったり、あるいは衣服や周囲の物品等に付着したりするという問題があった。また、液だれや飛び散りによるパーマネントウェーブ用剤のロスのために、数回にわたり同様の塗布作業を行い、かつ塗布後に起こる余剰のパーマネントウェーブ用剤の毛髪からの排液を行わなければ、パーマネントウェーブ形状を付与するために適切な量のパーマネントウェーブ用剤を、毛髪に塗布できないという問題があった。
【0003】
これらの問題を解決する技術として、特許文献1に示された海綿様吸液物質からなる浸液部を内包した筒状体によって、毛髪保持具に巻き上げられた毛髪束を被う技術が過去に提案されている(特許文献1参照)。また、吸水性を有する網目構造又は海綿状構造を有する含浸部を内包する袋を用いて、毛髪保持具に巻き上げられた毛髪束を被う技術も提案されている(特許文献2参照)。これらの技術によれば、パーマネントウェーブ用剤の液だれや、身体・その他の物品への付着については改善される。しかし、例えば前記の含浸部に供給するパーマネントウェーブ用剤の量が少ない場合には、パーマネントウェーブのかかりが弱くなり、一方パーマネントウェーブ用剤の量が多い場合には、パーマネントウェーブのかかりが強くなりすぎたり、ヘアダメージが強くなったりする欠点があった。このため、(a)パーマネントウェーブ用剤塗布の際に液だれがなく、(b)パーマネントウェーブ処理による毛髪へのダメージがなく、更に、(c)適切な強さのパーマネントウェーブを毛髪に付与することが求められている。そのためには、パーマネントウェーブ用剤の塗布の度に、毛髪束を処理するために適切なパーマネントウェーブ用剤の量を判断し調節しなければならないという新たな技術課題が明らかになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公昭30−10656号公報
【特許文献2】特開2005−152370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、パーマネントウェーブ用剤の量を調節することなく、毛髪への過剰なダメージとパーマネントウェーブのかかり過ぎを抑制できるパーマネントウェーブキットの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の(1)ないし(3)を含むパーマネントウェーブキットを提供するものである。
(1)毛髪束をウェーブ状に変形可能であり、かつ該毛髪束を変形させた状態に保持可能である毛髪保持具。
(2)単一円筒形回転粘度計で与えられる粘度が、測定条件が温度30℃、回転速度6rpmで0.90〜3,000mPa・sであるパーマネントウェーブ用剤。
(3)上部に開口部を有する袋状をなし、次の(3−1)ないし(3−3)を有する収納袋。
(3−1)該開口部に隣接し、かつ毛髪束をウェーブ状に変形させた状態で保持した毛髪保持具を収納可能な収納部。
(3−2)底部に隣接し、かつパーマネントウェーブ用剤を貯溜可能な液溜まり部。
(3−3)(3−1)収納部と(3−2)液留まり部に隣接し、該パーマネントウェーブ用剤の通過が可能な液絡構造及び毛髪束を保持した該毛髪保持具が該液溜まり部への侵入の阻止が可能な遮蔽構造を含む隔離部。
【0007】
また本発明は、前記のパーマネントウェーブキットを用い、工程(A)に次いで工程(B)が含まれるパーマネントウェーブ処理方法を提供するものである。
(工程A)(A1)又は(A2)のいずれか一方の操作に次いで、残る一方の操作が含まれる工程。
(A1)毛髪束をウェーブ状に変形させて保持した状態の毛髪保持具を、収納袋の収納部内に収納する操作。
(A2)該収納袋にパーマネントウェーブ用剤を供給して、該パーマネントウェーブ用剤を該収納袋の液溜まり部に貯溜させる操作。
(工程B)該毛髪束に該パーマネントウェーブ用剤を馴染ませる工程。
【0008】
更に本発明は、上部に開口部を有する袋状をなし、次の(3−1)ないし(3−3)を有するパーマネントウェーブ処理用袋を提供するものである。
(3−1)該開口部に隣接し、かつ毛髪束をウェーブ状に変形させた状態で保持した毛髪保持具を収納可能な収納部。
(3−2)底部に隣接し、かつパーマネントウェーブ用剤を貯溜可能な液溜まり部。
(3−3)(3−1)収納部と(3−2)液留まり部に隣接し、該パーマネントウェーブ用剤の通過が可能な液絡構造及び毛髪束を保持した該毛髪保持具が該液溜まり部への侵入の阻止可能な遮蔽構造を含む隔離部。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、パーマネントウェーブ用剤の量を調節することなく、毛髪への過剰なダメージの抑制、及び適正なパーマネントウェーブの付与の観点から、パーマネントウェーブ用剤の量を過不足なくコントロールできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明のパーマネントウェーブキットにおける毛髪保持具の一実施形態を示す正面図である。
【図2】図2(a)は毛髪保持具に毛髪束を挿入した状態を示す図であり、図2(b)は巻き上げ用糸を引っ張り、毛髪束とともに筒状体を巻き上げる途中の状態を示す斜視図である。
【図3】図3(a)は、本発明のパーマネントウェーブキットにおける収納袋の一実施形態を示す斜視図であり、図3(b)は、本発明のパーマネントウェーブキットにおける収納袋の別の実施形態を示す斜視図である。
【図4】図4(a)ないし(c)は、本発明のパーマネントウェーブキットにおける収納袋の他の実施形態を示す模式図である。
【図5】図5(a)ないし(c)は、図1に示す毛髪保持具に毛髪束を挿通する際に好ましく用いられる毛髪挿入具の例を示す図である。
【図6】図6は、本発明のパーマネントウェーブキットの使用状態を示す模式図である。
【図7】図7(a)及び(b)は、実施例及び比較例で用いた収納袋の寸法を示す正面図である。
【図8】図8は、実施例及び比較例で用いた毛髪保持具の寸法を示す正面図である。
【図9】図9は、実施例及び比較例で用いた収納袋の寸法を示す正面図である。
【図10】図10(a)及び(b)は、実施例及び比較例で行ったパーマネントウェーブ処理方法の操作を順次示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のパーマネントウェーブキットをその好ましい実施形態に基づき説明する。本発明のパーマネントウェーブキットは、(1)毛髪保持具及び(2)パーマネントウェーブ用剤及び(3)収納袋を含むものである。以下、それぞれについて説明する。
〔毛髪保持具〕
図1には、毛髪保持具の一実施形態が示されている。同図に示す毛髪保持具1は、一端の開口部21から他端の開口部22に向けて毛髪束を挿通可能な扁平な筒状体2と、該筒状体2に形成された複数の挿通孔部6A,6Bに順次挿通された巻き上げ用糸7とを有している。毛髪保持具1は、その内部に毛髪束が収納可能であり、収納された該毛髪束をウェーブ状に変形させることが可能であり、かつ該毛髪束を変形させた状態に保持することが可能なものである。毛髪保持具1は、図2(a)に示すように、筒状体2に、毛髪束Hを、一端の開口部21側から他端の開口部22側に向かって挿入した状態で、巻き上げ用糸7を引っ張ることにより、図2(b)に示すように、毛髪束Hを、毛の根元側から見て時計回りの螺旋状に変形させ得るものである。
【0012】
毛髪保持具1について更に詳述すると、図1に示すように、毛髪保持具1は、縦長であり、筒状体2を主体として構成されている。筒状体2は、シート23により形成されており、より具体的には、扁平な筒状体2の一方の面を形成するシート23A及び他方の面を形成するシート23Bからなる。シート23A及びシート23Bは、いずれも帯状をなしており、長手方向に沿う両側端部24A,24Bにおいて、両シート23A,23B間が接合されることにより、一端の開口部21及び他端の開口部22を有する筒状体2が形成されている。シート23A及び他方の面を形成するシート23Bは、同一のものでもよく、あるいは異なるものでもよい。筒状体2は、内寸長が好ましくは100〜350mmで、内寸幅が好ましくは20〜60mmである。
【0013】
シート23A及びシート23Bには、図1に示すように、筒状体2の巻き上げ用の巻き上げ用糸7を挿通案内する複数個の挿通孔部6A,6Bが設けられている。巻き上げ用糸7は、その一端71が筒状体2の他端の開口部22近傍に係止されており、巻き上げ用糸7は、その一端71側から他端72側に向かって、挿通孔部6A,6Bに順次挿通案内されて筒状体2の外周面にスパイラル状に巻き付けられている。巻き上げ用糸7は、これを引っ張って毛髪の巻き上げ操作を行うことができるものであれば良く、糸状のものの他、細長い帯状のもの等であっても良い。
【0014】
巻き上げ用糸7は、図1に示すように、シート23A及びシート23Bにおける両側部に互い違いに形成された挿通孔部6A,6Bに、ジグザグの軌跡を描くように挿通されて、筒状体2に取り付けられている。詳細には、筒状体2は、その両側部に第1の挿通孔部6Aからなる第1の挿通孔部列と、第2の挿通孔部6Bからなる第2の挿通孔部列とを有している。第1の挿通孔部列における隣接する挿通孔部6A,6Aの間隔は一定になっている。第2の挿通孔部列においても同様であり、その間隔は第1の挿通孔部列と同じになっている。そして、各挿通孔部列における挿通孔部6A,6Bは、互いに半ピッチずれるように互い違いに配置されている。
【0015】
毛髪保持具1においては、巻き上げ用糸7は、他端部の開口部22に最も近接した第1の挿通孔部6Aに、シート23Aからシート23Bに向けて挿通され、その位置から斜め右上方に位置する第2の挿通孔部6Bに向けて、シート23Bの外面に沿って配されている(図1参照)。そして、第2の挿通孔部6Bにおいて、シート23Bからシート23Aに向けて挿通されている。第2の挿通孔部6Bに挿通された巻き上げ用糸7は、その位置から斜め左上方に位置する第1の挿通孔部6Aに向けて、シート23Aの外面に沿って配されている。以後、この挿通が繰り返され、巻き上げ用糸7はシート23A又は23B側から見てジグザグの軌跡を描いている。また、このように挿通された巻き上げ用糸7は、筒状体2の周囲に、一端の開口部21側から他端の開口部22方向に向かって反時計回りの螺旋状に巻き付いており、巻き上げ用糸7を引っ張って毛髪の巻き上げ操作を行うときには、筒状体2が、一端の開口部21側から見て時計回りの螺旋状に変形し、それにより、筒状体2内の毛髪束Hも、毛の根元側から見て時計回りの螺旋状に変形する。
【0016】
毛髪保持具1は、巻き上げ用糸7を引っ張り、毛髪を巻き上げた後に、その巻き上げ用糸7を引き出した状態に保持可能なストッパー部3、毛髪を一端開口部21から筒状体2内に挿通させる際に、指を挿通して開口部21の開口を容易とする一対の指掛け部4,4、巻き上げ用糸7の一端71側を筒状体の端部26又はその近傍に係止させる係止片73、巻き上げ用糸7の他端72側に設けられた係止片74を有している。ストッパー部3は、弾性を有するシート片31から形成されており、筒状体2の一端部25に設けられている。シート片31には、貫通孔部32が形成されており、また該貫通孔部32を中心として放射状に延びる一対の切れ目33,33が形成されている。巻き上げ用糸7は、貫通孔部32に挿通されている。巻き上げ用糸7は、図2(b)に示すように、巻き上げ用糸7を引っ張り、筒状体2の巻き上げている途中においては、貫通孔部32内を切れ目33に拘束されずに移動可能であるが、巻き上げ後には、切れ目33に挟まれ拘束されて、巻き上げ用糸7が元の状態に戻ることが阻止される。これにより、筒状体2の巻き上げ状態及び毛髪束Hの巻き上げ状態が安定に維持される。係止片74は、引き出した巻き上げ用糸7をループ状に折り曲げた状態で、筒状体2の指掛け部4等に脱着自在に止着可能になされている。
【0017】
本実施形態のパーマネントウェーブキットにおいては、毛髪保持具1内に毛髪束を保持した状態、つまり図2(b)に示す巻き上げ作業が完了した状態で、該毛髪保持具1の表面(筒状体2の側面)から、毛髪束に対して、パーマネントウェーブ用剤を施し、該剤を毛髪束に馴染ませる。したがって筒状体2は、流体であるパーマネントウェーブ用剤に対して透過性を示す必要がある。また、毛髪保持具1の巻き上げ作業を円滑に行うために、筒状体2は可撓性であることが好ましい。これらの観点から、筒状体2を形成するシート23としては、メッシュシート、不織布、織布、多孔性の樹脂フィルム、紙又はこれらの二種以上からなる複合体等が挙げられる。
【0018】
〔パーマネントウェーブ用剤〕
本実施形態で用いられるパーマネントウェーブ用剤は、その粘度が、測定条件が温度30℃、回転速度6rpmで0.90〜3,000mPa・sであり、好ましくは1〜2,000mPa・sである。この粘度は単一円筒形回転粘度計で測定されたものである。粘度がこの範囲内であることによって、パーマネントウェーブ用剤は、後述する収納袋8の注入口からその内部に該パーマネントウェーブ用剤を注入したときに、収納袋8に設けられた隔離部84を首尾良く通過し、液溜まり部83に貯留されるのに十分な流動性を有するものとなる。また、パーマネントウェーブ用剤が毛髪束と一度接触した後、該毛髪束に吸収されなかった余剰のパーマネントウェーブ用剤が速やかに自然落下によって毛髪束から排液されて、収納袋8に設けられた隔離部84を通過し、液溜まり部83へ貯溜されるのに十分な流動性も有するものとなる。その結果、パーマネントウェーブ用剤を毛髪束に塗布したときに、適正な浴比が自動的に保たれ、パーマネントウェーブのかかり過ぎの発生や、局所的な過剰なヘアダメージの発生が抑制される。
【0019】
パーマネントウェーブ用剤の粘度は、上述のとおり単一円筒形回転粘度計によって測定される。具体的には、65gのパーマネントウェーブ用剤を、70mLのガラスビンに充填し封入した状態で、30℃の温浴中で1時間保持したのち、B型粘度計を用いて粘度を測定する。測定条件は、ローターM2、回転速度6rpm、測定時間1分とする。ローターの回転数を6rpmとした理由は、この回転数が、(a)パーマネントウェーブ用剤を毛髪束に馴染ませるときの液の状態、(b)馴染ませた後に静置することで、余分なパーマネントウェーブ用剤を毛髪束から排液させるときの状態に相当するからである。
【0020】
パーマネントウェーブ用剤の粘度をコントロールする方法としては、例えば水溶性高分子や両親媒性高分子の増粘効果を利用する方法、脂肪族アルコール、脂肪酸、界面活性剤、油剤及び水を混合することで得られるゲル構造や乳化粒子の形成に伴う増粘効果を利用する方法が挙げられる。
【0021】
前記の水溶性高分子や両親媒性高分子としては、次の化合物が挙げられる。例えば、非イオン性水溶性高分子である、高重合度ポリエチレングリコール(ザ・ダウ・ケミカル・カンパニー:ポリオックスWSR N−60)、ヒドロキシエチルセルロース(ダイセル化学工業株式会社:HECダイセル SE850)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(佐々木化学株式会社)、ヒドロキシエチルセルロースヒドロキシプロピルステアリルエーテルヒドロキシプロピルスルホン酸ナトリウム(花王株式会社:SPS−S)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学工業株式会社 :メトローズ65SH−4000、同60SH−10000)、グァーガム(佐々木化学株式会社 )、プルラン(株式会社林原商事)、ヒドロキシプロピルキトサン(一丸ファルコス株式会社:キトフィルマー HV−10)、ポリビニルピロリドン(BASFジャパン株式会社 :ルビスコールK−30、同K−90)、ポリビニルアルコール(日本合成化学工業株式会社 :ゴーセノールEG−40)、等が、また、アニオン性水溶性高分子としては、ポリアクリル酸(日本ルーブリゾール株式会社:カーボポール941、981)、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体(日本ルーブリゾール株式会社:カーボポールETD2020)、カラギーナン(MRCポリサッカライド株式会社 :ソアギーナ LX−22、同ML−210)、キサンタンガム(大日本住友製薬株式会社:エコーガムT)、ヒドロキシプロピルキサンタンガム(大日本住友製薬株式会社:ラボールガムEX)等が、カチオン性水溶性高分子としては、ヒドロキシエチルセルロース/ジメチルジアリルアンモニウムクロリドコポリマー(日本エヌエスシー株式会社 :セルコートL−200)、ヒドロキシエチルセルロース/2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド(ザ・ダウ・ケミカル・カンパニー :ポリマーJR400)等が、両親媒性高分子としては、(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸アルキル共重合体(日本ルーブリゾール株式会社:PEMULEN TR−1等)、ヒドロキシエチルセルロース/塩化ヒドロキシプロピルラウリルジメチルアンモニウムエーテル(ザ・ダウ・ケミカル・カンパニー:クォータリーソフトLM−200)、アクリル酸/メタクリル酸/アクリル酸アルキル/メタクリル酸アルキルのポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテルエステル共重合体(ローム・アンド・ハース・カンパニー:アキュリン22)、アクリル酸アルキル共重合体エマルジョン(ローム・アンド・ハース・カンパニー:アキュリン33)等が挙げられる。
【0022】
前記の化合物のうち、パーマネントウェーブ用剤に含まれる成分に起因する塩析での減粘の影響を受け難い点で、水溶性高分子の方が一層好ましい。特に、高重合度ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロースヒドロキシプロピルステアリルエーテルヒドロキシプロピルスルホン酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、グァーガム、ポリアクリル酸、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、カラギーナン、ヒドロキシプロピルキサンタンガム、ヒドロキシエチルセルロース/ジメチルジアリルアンモニウムクロリドコポリマー、ヒドロキシエチルセルロース/2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドが好ましい。
【0023】
パーマネントウェーブ用剤中での水溶性高分子や両親媒性高分子の濃度は、粘度をコントロールするパーマネントウェーブ用剤の組成に依存するが、毛髪束への馴染み易さと排液性の観点から、0.1〜20質量%、特に0.2〜10質量%であることが好ましい。
【0024】
一方、ゲル構造や乳化粒子を利用してパーマネントウェーブ用剤の粘度のコントロールする場合には、乳化剤を用いることができる。乳化剤としては、脂肪族アルコール、脂肪酸、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0025】
不均一なパーマネントウェーブの形成や、パーマネントウェーブのかかり過ぎの発生や、局所的なヘアダメージ発生等の原因は、毛髪を還元処理する過程での浴比に大きく依存することが知られている。そこで、本実施形態のパーマネントウェーブ用剤は、特に、毛髪ケラチン還元性物質を含有するパーマネントウェーブ第1剤であることが好ましい。尤も、本実施形態のパーマネントウェーブ用剤を、毛髪ケラチン酸化性物質を含有するパーマネントウェーブ第2剤として用いても差し支えない。
【0026】
前記の毛髪ケラチン還元性物質は、毛髪の構造タンパク質であるケラチンに対し還元能を有する化合物であればいずれでもよい。例えば、チオグリコール酸並びにそのアンモニウム塩及びモノエタノールアミン塩;L−システイン、D−システイン、DL−システイン等のシステイン類及びその塩酸塩;N−アセチルシステイン、グルタチオン等のシステイン誘導体;システアミン及びその塩酸塩;チオ乳酸並びにそのアンモニウム塩及びモノエタノールアミン塩;チオグリセロール;エトキシヒドロキシプロパンチオール、エトキシエトキシヒドロキシプロパンチオール、メトキシエトキシヒドロキシプロパンチオール、イソプロポキシエトキシヒドロキシプロパンチオール等のチオグリセリルアルキルエーテル;亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等の亜硫酸塩などが挙げられる。ケラチン還元性物質は単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
毛髪ケラチン還元性物質はパーマネントウェーブ用剤中に好ましくは0.1〜20質量%、更に好ましくは0.5〜15質量%、一層好ましくは1〜10質量%配合される。毛髪ケラチン還元性物質の配合量をこの範囲内とすることによって、パーマネントウェーブを付与するために必要な還元作用を毛髪束に与えることができ、しかもパーマネントウェーブ用剤の粘度を、上述した範囲内に安定的に維持できる。
【0028】
本実施形態のパーマネントウェーブ用剤は、水を媒体とし、ローション状、ジェル状、ミルク状のいずれかの剤型とすることができり。パーマネントウェーブ用剤がローション状の剤型である場合には、これ霧状にして毛髪束へ吹きつけても良い。
【0029】
本実施形態のパーマネントウェーブ用剤には、上述した成分以外に、通常のパーマ液に用いられている成分や、化粧品分野で用いられる成分を、目的に応じて加えることができる。このような任意の成分としては、例えば可溶化剤、浸透促進剤、希釈剤、有機溶剤、感触向上剤、毛髪補修剤、キレート剤、防腐剤、酸化防止剤、保湿剤、紫外線吸収剤、pH調整剤、香料などが挙げられる。
【0030】
〔収納袋〕
図3(a)には、収納袋の一実施形態が示されている。同図に示す収納袋8は、上部に開口部81を有する袋状をなしている。毛髪保持具1に保持された毛髪束(図示せず)は、開口部81を通じて収納袋8内に収納される。また開口部81は、パーマネントウェーブ用剤の注入口も兼ねている。開口部81の開口端はスリーブになっている。スリーブは開口端に沿って環状になっている。このスリーブ内に、開口部81の開閉機構としての締め付け紐81aが挿通されている。紐81aを引っ張ると、開口部81が絞られて閉鎖される。開口部81が開閉可能になっていることには次の利点がある。すなわち、収納袋8の開口部81が開口した状態でパーマネントウェーブ処理を行う場合、注入するパーマネントウェーブ用剤の重みや使用者が体の姿勢を変えたときの勢いで、収納袋8が落下するおそれがある。また、パーマネントウェーブ用剤の注入中や注入後に収納袋8の中でパーマネントウェーブ用剤を毛髪束に馴染ませる際に剤が漏れ出すおそれがある。紐81aによって開口部81を閉鎖することで、これらの不都合が起こることを効果的に防止できる。なお、紐81aに代えて帯を用いることもでき、あるいは紐81aで開口部81を絞ることに代えて、開口部81の開口端に粘着テープを取り付けてもよい。
【0031】
開口部81は、パーマネントウェーブ用剤の注入口を兼ねていてもよいが、収納部82の他の部分、例えば図3(b)に示すように、収納袋8の側面に貫通孔82aを設け、これをパーマネントウェーブ用剤の注入口として用いてもよい。貫通孔82aを設ける場合には、パーマネントウェーブ用剤を注入するためのアプリケーターの先端ノズルを差し込みやすくするために、収納袋8に用いるシートよりも剛性のある(硬い)シート82bを貫通孔82aの周囲に取り付けることが好ましい。パーマネントウェーブ用剤と収納部82内に収納されている毛髪束との接触性、及び注入後のパーマネントウェーブ用剤漏れ出しを考慮すると、貫通孔82aは、収納部82の高さ方向の中央部よりも上側(開口部側)に設けられることが好ましい。
【0032】
収納袋8は、毛髪束をウェーブ状に変形させた状態で保持した毛髪保持具(図示せず)を収納可能な収納部82を有している。収納部82は、開口部81に隣接して位置している。
【0033】
更に収納袋8は、収納袋8の底部に隣接して液溜まり部83を有している。液溜まり部83は、パーマネントウェーブ用剤を貯溜可能な部位である。液溜まり部83は、収納部82に収納された毛髪束と、収納部82内に注入され、かつ毛髪束に吸収されず自然落下してきた余剰のパーマネントウェーブ用剤とが接触しないように、該パーマネントウェーブ用剤を貯溜する機能をもつ。自然落下によるパーマネントウェーブ用剤の移動を利用する機構上、液溜まり部83は収納部82よりも下側に位置している必要がある。液溜まり部83は複数あってもよい。液溜まり部83は複数ある場合、液溜まり部83へのパーマネントウェーブ用剤の移動のしやすさ及び毛髪束とパーマネントウェーブ用剤との分離のしやすさの観点から、各々の液溜まり部83の容積は5mL以上であることが好ましい。また、すべての液溜まり部の容積の合計は5〜50mL、特に10〜40mLであることが好ましい。
【0034】
液溜まり部83の容積は、収納部82と液溜まり部83との容積和に対して5〜50%、特に15〜40%であることが好ましい。一方、収納部82の容積は、収納部82と液溜まり部83との容積和に対して50〜95%、特に60〜85%であることが好ましい。このようにすることで、パーマネントウェーブ用剤が収納部82と液溜まり部83との間を移動しやすくなり、また毛髪束へパーマネントウェーブ用剤を馴染ませやすくできる。
【0035】
収納部82と液溜まり部83との間には、これらの部位に隣接して隔離部84が設けられている。隔離部84は、液絡構造84a及び遮蔽構造84bを含む構造になっている。液絡構造84aは、パーマネントウェーブ用剤の通過が可能な部位である。一方、遮蔽構図84bは、毛髪束を保持した毛髪保持具(図示せず)の液溜まり部83への侵入の阻止が可能な部位である。本実施形態においては、液絡構造84a及び遮蔽構造84bが複数設けられており、これらは収納袋8の幅方向に沿って交互に位置している。遮蔽構造84bは、収納袋8を構成する前パネル8aと後パネル8bとを、収納袋8の幅方向に沿って断続的に接合して形成された短い直線状の接合部から構成されている。そして隣り合う遮蔽構造84b間に位置する非接合部が、液絡構造84aとなっている。その結果、液絡構造84aと遮蔽構造84bとが、収納袋8の幅方向に沿って交互に配置されて、収納袋8の幅方向に1列になって延びている。なお、前パネル8aと後パネル8bとは同形であり、それらの左右の側縁及び下縁が連接することで、収納袋8は袋状の形態となっている。
【0036】
隔離部84は、収納部82と液溜まり部83との間におけるパーマネントウェーブ用剤の移動を部分的に阻止することで、収納部82に収納された毛髪束が液溜まり部へ落下することを防止する機能を有する。これとともに、余剰のパーマネントウェーブ用剤を毛髪束と接触させずに液溜まり部83へ貯留し、また必要に応じて、液溜まり部83から収納部82へパーマネントウェーブ用剤を移動させることで、再度、毛髪束へパーマネントウェーブ用剤を馴染ませる機能を有する。この観点から、隔離部84における液絡構造84aの幅は、5〜20mmであることが好ましい。同様の観点から、液絡構造84aの数は、2〜5であることが好ましい。
【0037】
図4(a)ないし(c)には、隔離部84の別の形態が示されている。図4(a)に示す隔離部84は、収納袋の縦中心線Lに対して対称に形成された一対の遮蔽構造84bを有している。各遮蔽構造84bは、短い直線状の形状をしている。各遮蔽構造84bは、縦中心線L寄りの位置に一方の端部を有し、側縁寄りの位置に他方の端部を有している。そして縦中心線L寄りに位置する端部の方が、側縁寄りに位置する端部よりも開口部81側に位置している。このような構造の隔離部84を採用すると、液絡構造84aが小さいことから、小型の収納袋8が設計できるという利点がある。
【0038】
図4(b)に示す隔離部84は、液絡構造84aと遮蔽構造84bとが、収納袋8の幅方向に沿って交互に配置されて、収納袋8の幅方向に1列になって延び、この列が収納袋8の高さ方向に2列配置されている。収納袋8の高さ方向に沿って見た場合、2つの列は、一方の列の液絡構造84の位置に、他方の列の遮蔽構造84の一部又は全部が位置するような関係になっている。つまり、液絡部84aが段構造になっている。このような構造の隔離部84を採用すると、段構造の液絡部84aの特性によって、収納部82から液溜まり部83へのパーマネントウェーブ用剤が移動速度の制御性に優れるため、パーマネントウェーブ用剤と毛髪束の接触時間が調節しやすいという利点がある。
【0039】
図4(c)に示す隔離部84では、各遮蔽構造84bが、収納袋8の高さ方向へ延びる短い直線から構成されている。このような構造の隔離部84を採用すると、液絡構造84aでのパーマネントウェーブ用剤の流れが直線的になり、液溜まり部83と収納部82と間で、パーマネントウェーブ用剤の移動性が優れたものになる。その結果、毛髪束へのパーマネントウェーブ用剤の馴染ませやすさ及び毛髪束からのパーマネントウェーブ用材の排液性に優れるという利点がある。
【0040】
収納袋8に用いる素材は、その用途上の理由から、パーマネントウェーブ用剤が含有する組成物に対して化学的に安定であることが好ましい。また、収納袋8の製造上の理由から、ヒートシールを用いて成形が可能な熱融着性を有することが好ましい。更に、素材のコストや入手容易性も考慮すると、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、並びにそれらの混合物又は共重合体から得られる樹脂シートを用いることが好ましい。
【0041】
樹脂シートは、収納袋8の外部からパーマネントウェーブ用剤の注入状態の視認を可能とするために、その一部又はすべてが、収納袋8の内部を視認できる程度に透明であることが好ましい。また樹脂シートはその厚みが1〜300μm、特に5〜250μm、とりわけ10〜200μmであることが好ましい。この範囲の厚さとすることで、外部から液溜まり部83を容易に圧迫することができ、液溜まり部83に貯溜されたパーマネントウェーブ用剤を再び収納部82に移動させ、毛髪束にパーマネントウェーブ用剤を馴染ませる作業が容易になる。また、収納袋8を圧迫しても、該収納袋8の破損が防止される。更に、収納部82へ毛髪束を収納した後に収納袋8の開口部81を巾着のように開閉する場合の密閉性や開けやすさが良好なものとなる。
【0042】
収納袋8は、予め筒状に成型された樹脂製フィルムを折り曲げてカットし、ヒートシールによる接合で製造することができる。あるいは、同形の2枚のシートを重ねてヒートシールで接合することで製造することができる。
【0043】
本実施形態のパーマネントウェーブキットを用いたパーマネントウェーブ処理方法には、パーマネントウェーブ第1剤のみを使用する一浴式と、パーマネントウェーブ第1剤及び第2剤を使用する二浴式がある。具体的な処理方法を以下に説明する。
【0044】
〔一浴式のパーマネントウェーブ処理方法〕
(1)頭髪をブロッキング(区分け)して取り分けたそれぞれの毛髪束を、毛髪保持具1内に挿入する。具体的には毛髪挿入具を用いて、毛髪束を一端の開口部21から筒状体2の内部へ挿入することが好ましい。毛髪挿入具は、一方の端部に毛髪束を係止するための係止部を有し、他方の端部に把持部を有しており、毛髪保持具1内に、筒状体2の一端の開口部21から前記係止部が突出し、他端の開口部22から前記把持部が突出した状態とされて使用し得るものが好ましい。このような毛髪挿入具としては、例えば、図5(a)ないし(c)に示すようなもの等を用いることができる。また、本出願人の先の出願に係る特開2003−111612号公報に記載のもの等を用いることもできる。図5(a)ないし(c)に示す各毛髪挿入具5A〜5Cにおいては、符号51が係止部を示し、符号52が把持部を示している。毛髪挿入具5Aにおいては、可撓性を有する扁平帯状の合成樹脂製本体の端部が2本に分割されており、その分割部分同士がループ状に連結されて係止部51を形成している。毛髪挿入具5Bは、可撓性を有する扁平帯状の合成樹脂製本体の端部に矩形状の貫通孔51aが設けられ、該貫通孔51aに一端を有するスリット51bが設けられている。貫通孔51a及びスリット51bが係止部51を構成している。毛髪挿入具5Cは、紐ないし糸状体をループ状にした係止部51及び紐ないし糸状体からなる把持部52を有している。毛髪挿入具は、前記のものに制限されず、筒状体2内に毛髪束を挿通し得る各種公知のもの等を特に制限なく用いることができる。あるいは、毛髪保持具1を用いることに代えて、パーマネントウェーブの分野で用いられているカーリングロッドを用い、これに毛髪束を巻き付けてウェーブ形状に変形し、その状態で保持してもよい。
(2)毛髪保持具1に装着した毛髪束を収納袋8の開口部81から収納部82内に収納した後、収納袋8の開口部81を閉じ、毛髪束から収納袋8がずれ落ちないように固定する。この状態を図6に模式的に示す。
(3)閉じた開口部81の隙間又は注入口から、パーマネントウェーブ第1剤としての本実施形態のパーマネントウェーブ用剤(毛髪ケラチン還元性物質を含有)を収納袋8内へ注入する。パーマネントウェーブ用剤は、隔離部84の液絡構造84aを経由して液溜まり部83へ移動し、該液溜まり部83に貯留する。
(4)液溜まり部83を外部から圧迫するか、又は液溜まり部83が収納部82及び隔離部84よりも上方に位置するように収納袋8の底を持ち上げて、パーマネントウェーブ用剤を、液絡構造84aを経由して収納部82に移動させ、パーマネントウェーブ用剤を毛髪束に接触させて馴染ませる。
(5)所定の時間、毛髪束をパーマネントウェーブ用剤で処理する。
(6)開口部81を開き、収納袋8を取り外し、水でパーマネントウェーブ用剤をすすぎ流す。
(7)すすぎ水が滴らない程度まで水気を除くか、そのままの状態で所定の時間を静置する。
(8)毛髪束から毛髪保持具1を外した後に水ですすぎ流すか、又は毛髪保持具1を装着した状態ですすぎ流した後に毛髪保持具を外す。
【0045】
本処理方法の変形例として、収納袋8にパーマネントウェーブ用剤を供給して、該パーマネントウェーブ用剤を収納袋8の液溜まり部82に貯溜させる操作を行った後に、毛髪束をウェーブ状に変形させて保持した状態の毛髪保持具1を、収納袋8の収納部82内に収納する操作を行ってもよい。
【0046】
〔二浴式のパーマネントウェーブ処理方法1〕
(1)一浴式のパーマネントウェーブ処理方法の(1)ないし(6)と同様の操作を行う。
(2)すすぎ水が滴らない程度まで水気を除き、毛髪束を新たな収納袋8に収納した後、収納袋8の開口部81を閉じ、毛髪束から収納袋8がずれ落ちないように固定する。
(3)パーマネントウェーブ第2剤としての本実施形態のパーマネントウェーブ用剤(毛髪ケラチン酸化性物質を含有)を用い、一浴式のパーマネントウェーブ処理方法の(1)ないし(6)と同様の操作を行い、パーマネントウェーブ第2剤を毛髪束に馴染ませる。
(4)その状態で所定の時間を静置する。
(5)開口部81を開き、収納袋8を取り外す。
(6)毛髪束から毛髪保持具1を外したのちに髪に付着したパーマネントウェーブ第2剤を水ですすぎ流すか、又は毛髪保持具1を装着した状態でパーマネントウェーブ第2剤をすすぎ流した後に毛髪保持具1を外す。
【0047】
本処理方法においては、収納袋8にパーマネントウェーブ第1剤を供給して、該パーマネントウェーブ第1剤を収納袋8の液溜まり部82に貯溜させる操作を行った後に、毛髪束をウェーブ状に変形させて保持した状態の毛髪保持具1を、収納袋8の収納部82内に収納する操作を行ってもよい。これに加えて、又はこれに代えて、収納袋8にパーマネントウェーブ第2剤を供給して、該パーマネントウェーブ第2剤を収納袋8の液溜まり部82に貯溜させる操作を行った後に、毛髪束をウェーブ状に変形させて保持した状態の毛髪保持具1を、収納袋8の収納部82内に収納する操作を行ってもよい。
【0048】
〔二浴式のパーマネントウェーブ処理方法2〕
(1)一浴式のパーマネントウェーブ処理方法の(1)ないし(6)と同様の操作を行う。
(2)すすぎ水が滴らない程度まで水気を除く。
(3)通常用いられるパーマネントウェーブ第2剤(毛髪ケラチン酸化性物質を含有)を毛髪保持具1の外面から塗布する。
(4)その状態で所定の時間を静置する。
(5)毛髪束から毛髪保持具1を外した後に髪に付着したパーマネントウェーブ第2剤を水ですすぎ流すか、又は毛髪保持具1を装着した状態でパーマネントウェーブ第2剤をすすぎ流した後に毛髪保持具1を外す。
【0049】
本処理方法の変形例として、収納袋8にパーマネントウェーブ第1剤を供給して、該パーマネントウェーブ第1剤を収納袋8の液溜まり部82に貯溜させる操作を行った後に、毛髪束をウェーブ状に変形させて保持した状態の毛髪保持具1を、収納袋8の収納部82内に収納する操作を行ってもよい。
【0050】
〔二浴式のパーマネントウェーブ処理方法3〕
(1)一浴式のパーマネントウェーブ処理方法の(1)と同様の操作を行う。
(2)通常用いられるパーマネントウェーブ第1剤(毛髪ケラチン還元性物質を含有)を毛髪保持具1の外面から塗布する。
(3) 所定の時間、毛髪束をパーマネントウェーブ第1剤で処理する。
(4)水でパーマネントウェーブ第1剤をすすぎ流す。
(5)すすぎ水が滴らない程度まで水気を除いた後、毛髪束を収納袋8に収納した後、収納袋8の開口部81を閉じ、毛髪束から収納袋8がずれ落ちないように固定する。
(6)閉じた開口部81の隙間又は注入口から、パーマネントウェーブ第2剤としての本実施形態のパーマネントウェーブ用剤(毛髪ケラチン酸化性物質を含有)を収納袋8内へ注入する。
(7)液溜まり部83を外部から圧迫するか、又は液溜まり部83が収納部82及び隔離部84よりも上方に位置するように収納袋8の底を持ち上げて、パーマネントウェーブ用剤を、液絡構造84aを経由して収納部82に移動させ、パーマネントウェーブ用剤を毛髪束に接触させて馴染ませる。
(8)その状態で所定の時間を静置する。
(9)開口部81を開き、収納袋8を取り外す。
(10)毛髪束から毛髪保持具1を外した後に髪に付着した該パーマネントウェーブ用剤を水ですすぎ流すか、又は毛髪保持具1を装着した状態で該パーマネントウェーブ用剤をすすぎ流したのち、毛髪保持具1を外す。
【0051】
本処理方法の変形例として、収納袋8にパーマネントウェーブ第2剤を供給して、該パーマネントウェーブ第2剤を収納袋8の液溜まり部82に貯溜させる操作を行った後に、毛髪束をウェーブ状に変形させて保持した状態の毛髪保持具1を、収納袋8の収納部82内に収納する操作を行ってもよい。
【0052】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば前記実施形態においては、毛髪束をウェーブ状に変形可能であり、かつ該毛髪束を変形させた状態に保持可能である毛髪保持具として、図1に示すものを中心に説明したが、この毛髪保持具に代えて、従来用いられているカーリングロッドによって毛髪束をウェーブ状に変形させてもよい。
【実施例】
【0053】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」及び「部」はそれぞれ「質量%」及び「質量部」を意味する。
【0054】
本発明のパーマネントウェーブキットを用いることで、パーマネントウェーブ用剤の注入量を調整することなく、一定範囲の浴比でパーマネントウェーブ用剤を毛髪束に塗布できることを、以下の表3に記載した実施例1及び表4に記載した比較例1によって示す。浴比は、毛髪束が吸収したパーマネントウェーブ用剤の量の毛髪束の質量に対する質量比であり、毛髪束が吸収したパーマネントウェーブ用剤の質量を毛髪束の質量で除して求める。
【0055】
〔パーマネントウェーブ第1剤の浴比の評価〕
注入するパーマネントウェーブ第1剤の量が10、12、15、20mLの条件で、下記の(イ)〜(へ)の手順の操作を行い、それぞれの注入条件での浴比を決定する。この結果から線形近似によって求めたパーマネントウェーブ第1剤の注入量に対する浴比の増加率を、下記の基準に従い評価した。浴比を決定する際に必要である、毛髪束が吸収したパーマネントウェーブ第1剤の量は、注入したパーマネントウェーブ第1剤の量から処理後に収納袋に残留したパーマネントウェーブ第1剤の量を減じて求めた。この評価は、表3及び表4の記載に従い、表1及び図7(a)及び(b)に記載の収納袋、表2に記載のパーマネントウェーブ第1剤、並びに図8に記載の毛髪保持具を組み合わせて行った。
【0056】
〔浴比の評価基準〕
合格:浴比の変動率が0.02以下
不合格:浴比の変動率が0.02超
【0057】
〔評価手順〕
(イ)毛髪挿入具を用いて毛髪束を毛髪挿入具に挿入する。次に、巻き上げ用糸で毛髪束をウェーブ形状に変形し、その状態で保持する。毛髪束は、長さ25cm、13.5gの毛髪をゴム製の基板上に7.0cm×6.0cmの範囲に植え込み作製したヘアートレスを使用した。
(ロ)毛髪保持具に装着した毛髪束を、収納袋の開口部から収納部に収納した後、開口部を閉じ固定する。
(ハ)注入口からパーマネントウェーブ用剤を収納袋内へ注入し、該パーマネントウェーブ用剤を隔離部の液絡構造を経由し液溜まり部へ移動させ貯溜させる。
(ニ)液溜まり部を連続して3回握ることで外部から圧迫し、パーマネントウェーブ用剤を、液絡構造を経由して収納部に移動させ、該パーマネントウェーブ用剤を毛髪束に馴染ませる。
(ホ)パーマネントウェーブ用剤で毛髪束を化学処理するため、10分間静置する。
(へ)収納袋の開口部を開き、収納袋を外して該収納袋の質量を測定する。次に注入したパーマネントウェーブ用剤の量から収納袋の風袋からの質量増加分を減じ、毛髪束が吸収したパーマネントウェーブ用剤の量を求める。更に、毛髪束が吸収したパーマネントウェーブ用剤の量を、注入したパーマネントウェーブ用剤の量で除し、浴比を決定する。ただし、(ホ)の手順で毛髪束がパーマネントウェーブ用剤によって浸漬状態にある場合には、浴比は、1以上とする。
【0058】
〔評価に使用したパーマネントウェーブキット〕
表3及び表4に示す収納袋は、ヒートシール可能な厚さ30μmのLDPE製樹脂シートを用い、図7(a)及び(b)に示す寸法に従って作製した。開閉用の紐として、幅10mm、長さ200mmのスパンボンド不織布エルベス(PET/PP芯鞘構造、坪量70g/m2)を用いた、図7(a)及び(b)において、この紐を、中実線(外部に露出)及び点線状(内部に内包)で示した。ヒートシール幅はすべて5mmとした。表1に、収納部及び液溜まり部の容積と容積率を示す。
【0059】
【表1】

【0060】
以下の表2に、表3及び表4に記載したパーマネントウェーブ用剤の処方を示す。
【0061】
【表2】

【0062】
表3及び表4に記載した毛髪保持具は、図8の寸法に従い、次の材料を用いて作製し使用した。各部位には次の材料を用いた。筒状体2はティーロード4817(山中産業社製)として入手できる熱融着性ポリエステル繊維のメッシュ素材(オープニング180μm、オープニングエリア68%、繊径50μm)、巻き上げ用糸7は材質がポリエチレンテレフタレート製で線径1.0mm、巻き上げ用糸7の両端の係止片73,74及び毛髪束挿入時に開口部21を広げるための指掛け部4は材質がPET/PP芯鞘構造のスパンボンド不織布エルベス(坪量70g/m2)を用いた。
【0063】
【表3】

【0064】
【表4】

【0065】
次に、収納袋へのパーマネントウェーブ用剤の注入量を12gに固定し、パーマネントウェーブキットとして用いるパーマネントウェーブ用剤の粘度と浴比コントロール効果の関係について説明する。以下の表5の記載に従い、表1及び図7(a)に記載の収納袋、表2に記載のパーマネントウェーブ第1剤、図8に記載の毛髪保持具を組み合わせた実施例2〜6及びに比較例2を、下記の基準に従い評価した。評価手順は前述の(イ)〜(へ)と同じ手順である。
【0066】
〔評価基準〕
合格:浴比が0.4〜0.8
不合格:浴比が0.4未満又は0.8超
【0067】
【表5】

【0068】
次に、パーマネントウェーブキットとして用いる収納袋の収納部と液溜まり部の容積比、及び液溜まり部の容積と浴比コントロール効果の関係について説明する。以下の表6の記載に従い、図9に記載の収納袋、表2に記載のパーマネントウェーブ第1剤、図8に記載の毛髪保持具を組み合わせた実施例7〜9及び比較例3を、下記の基準に従い評価した。評価手順は前述の(イ)〜(へ)と同じ手順である。
【0069】
〔評価基準〕
合格:浴比が0.4〜0.8
不合格:浴比が0.4未満又は0.8超
【0070】
【表6】

【0071】
次に、表7に示した実施例10のパーマネントウェーブキットを用いて、下記の(イ)〜(ホ)の工程に従って二浴式パーマネントウェーブ処理を行った結果を示す。浴比の評価は、パーマネントウェーブ用剤として第1剤を用い、表5と同様の評価基準で行った。液だれの評価は、パーマネントウェーブ用剤として第1剤及び第2剤を用い、下記の評価基準に従い、行った。ただし、浴比は頭髪に装着した8ヶ所の収納袋の結果の平均値を示した。
【0072】
〔処理工程〕
(イ)頭髪を毛量で約8等分にブロッキングして、それぞれの毛髪束を図8記載の毛髪保持具により巻き上げて図10(a)に示す状態とした。
(ロ)図7(a)に記載の収納袋を用い、毛髪保持具によって保持されたそれぞれの毛髪束を覆った。次いで、先細ノズルのアプリケーターに10mLずつ小分けしたパーマネントウェーブ用剤(第1剤)の全量を収納袋の注入口から注入し、図10(b)に示す状態とした。パーマネントウェーブ用剤は、隔離部の液絡構造を経由し、液溜まり部へ移動してそこに貯溜した。
(ハ)液溜まり部を外部から圧迫し、パーマネントウェーブ用剤を、液絡構造を経由して収納部に移動させ、該パーマネントウェーブ用剤を毛髪束に馴染ませる。
(ニ)パーマネントウェーブ用剤で毛髪束を化学処理するため、10分間静置する。
(ホ)収納袋を外し、収納袋の質量を測定する。次に、注入したパーマネントウェーブ第1剤の量から、収納袋の風袋からの質量増加分を減じ、毛髪束が吸収したパーマネントウェーブ用剤の量を求めた。更に、毛髪束が吸収したパーマネントウェーブ用剤の量を、注入したパーマネントウェーブ第1剤の量で除し、浴比を決定した。
【0073】
【表7】

【符号の説明】
【0074】
1 毛髪保持具
2 筒状体
21 一端部の開口部
22 他端部の開口部
23,23A,23B シート
24A,24B 側端部
25 一端部
26 他端部
3 ストッパー部
31 シート片
32 貫通孔部
33 切れ目
4 指掛け部
5A〜5C 毛髪挿入具
6A,6B 挿通孔部
7 巻き上げ用糸
71 一端
72 他端
73,74 係止片
8 収納袋
81 開口部
82 収納部
83 液溜まり部
84 隔離部
84a 液絡構造
84b 遮蔽構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(1)ないし(3)を含むパーマネントウェーブキット。
(1)毛髪束をウェーブ状に変形させた状態に保持可能である毛髪保持具。
(2)単一円筒形回転粘度計で与えられる粘度が、測定条件が温度30℃、回転速度6rpmで0.90〜3,000mPa・sであるパーマネントウェーブ用剤。
(3)上部に開口部を有する袋状をなし、次の(3−1)ないし(3−3)を有する収納袋。
(3−1)該開口部に隣接し、かつ毛髪束をウェーブ状に変形させた状態で保持した毛髪保持具を収納可能な収納部。
(3−2)底部に隣接し、かつ該パーマネントウェーブ用剤を貯溜可能な液溜まり部。
(3−3)(3−1)収納部と(3−2)液留まり部に隣接し、該パーマネントウェーブ用剤の通過が可能な液絡構造及び毛髪束を保持した該毛髪保持具の該液溜まり部への侵入の阻止が可能な遮蔽構造を含む隔離部。
【請求項2】
収納袋の収納部と液溜まり部の容積和に対する収納部の容積率が50〜95%で、かつ液溜まり部の容積率が5〜50%であり、液溜まり部の容積が5〜50mLである請求項1記載のパーマネントウェーブキット。
【請求項3】
収納袋が、厚さ1〜300μmの樹脂シートで構成される請求項1又は2記載のパーマネントウェーブキット。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のパーマネントウェーブキットを用い、工程(A)に次いで工程(B)が含まれるパーマネントウェーブ処理方法。
(工程A)(A1)又は(A2)のいずれか一方の操作に次いで、残る一方の操作が含まれる工程。
(A1)毛髪束をウェーブ状に変形させて保持した状態の毛髪保持具を、収納袋の収納部内に収納する操作。
(A2)該収納袋にパーマネントウェーブ用剤を供給して、該パーマネントウェーブ用剤を該収納袋の液溜まり部に貯溜させる操作。
(工程B)該毛髪束に該パーマネントウェーブ用剤を馴染ませる工程。
【請求項5】
(工程B)が、以下の(B1)又は(B2)の操作である請求項4記載のパーマネントウェーブ処理方法。
(B1)液溜まり部を外部から圧迫する操作。
(B2)該収納袋の液溜まり部が収納部及び隔離部よりも上方に位置するように該収納袋の底部を持ち上げる操作。
【請求項6】
上部に開口部を有する袋状をなし、次の(3−1)ないし(3−3)を有するパーマネントウェーブ処理用袋。
(3−1)該開口部に隣接し、かつ毛髪束をウェーブ状に変形させた状態で保持した毛髪保持具を収納可能な収納部。
(3−2)底部に隣接し、かつパーマネントウェーブ用剤を貯溜可能な液溜まり部。
(3−3)(3−1)収納部と(3−2)液留まり部に隣接し、該パーマネントウェーブ用剤の通過が可能な液絡構造及び毛髪束を保持した該毛髪保持具の該液溜まり部への侵入の阻止が可能な遮蔽構造を含む隔離部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−245026(P2011−245026A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121025(P2010−121025)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】