説明

パームアッシュカリ肥料

【課題】水酸化カリウムを主成分とするパームアッシュカリとリン酸を配合して、硫安、硝安やリン安などのアンモニウム塩からなるアンモニア性窒素を含む肥料と混合施肥してもアンモニアガスを発生せず、且つ潮解性のないパームアッシュカリ肥料を提供する。
【解決手段】本発明パームアッシュカリ肥料、粒子径10mmふるい目下のパームアッシュカリ100gに対してリン酸0.29〜0.62モルを配合したこと及びこれにバインダーを添加して造粒したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パームアッシュカリを混合したパームアッシュカリ肥料に関し、更に詳細には、パームアッシュカリにリン酸を配合した、アンモニア成分を含む窒素肥料と混合施肥ができるパームアッシュカリ肥料に関する。
【背景技術】
【0002】
施肥方法に関して、肥料3要素である窒素、リン酸、カリの各肥料は、各々の施肥回数を少なくして施肥効率を上げ、更に省力化を目的として複合肥料として各肥料を適量に配合した製品で施肥することが多く、例えば、硫酸カリや塩化カリなどカリ肥料は、硫酸アンモニウムいわゆる硫安やリン酸アンモニウムいわゆるリン安などアンモニア成分を含む窒素肥料と混合して施肥することが多い。
しかし混合施肥した場合に、以下のような不都合が起こる。
一つめに、該パームアッシュカリ肥料の主成分である水酸化カリウムは強塩基であるため、弱塩基の塩である窒素肥料たとえば硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウムなどと混合施肥すると、その硫酸根、リン酸根、塩素根、硝酸根などは硫酸カリウム、リン酸カリウム、塩化カリウム、硝酸カリウムなどを生成し、同時にアンモニア根はアンモニアガスとして飛散してしまう不都合がある。言い換えれば、カリ肥料と窒素肥料を混合施肥するということは、該窒素肥料の窒素成分がガス化してその肥料成分が低下することであり、該窒素成分のガス化は植物に対してアンモニアの生育障害をもたらす恐れがある。
二つめに、パームアッシュカリの主成分である強塩基の水酸化カリウムは、空気中の水分を吸収して、いわゆる潮解性を示すことになるが、この潮解性が更に進んで水分過多な状態に達すると水酸化カリウムは溶解し、その溶解した水酸化カリウムはそれ同士が付着して泥状になると共に、混合施肥した硫酸アンモニウムなど窒素肥料にも付着してしまう不都合がある。
【0003】
しかしながら、前記パームアッシュカリ肥料と窒素肥料の混合施肥によって引き起こされる異常状況に対処する従来技術は存在せず、関連技術として施肥時に飛散し易いという燃焼灰肥料の処理方法にその一例がある。即ち、パーム椰子の燃焼灰に水または助剤を10〜25%添加混合して粘着性、凝集性を高め、更に次の工程で骨粉、ナタネ油かす、魚かすなどの有機物含有肥料や、窒素、リン酸、カリ成分を含有する化学肥料を混合し、しかる後に造粒することにより密度を高め、飛散を防止した成形肥料の製造技術が提案されているが、それは肥料の飛散防止を目的としているに過ぎないものとなっている(特許文献1)。
【特許文献1】特開平5−194066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は前記実情に鑑みてなされたもので、水酸化カリウムを主成分とするパームアッシュカリとリン酸を配合して、硫安、硝安やリン安などのアンモニウム塩からなるアンモニア性窒素を含む肥料と混合施肥してもアンモニアガスを発生せず、且つ潮解性のないパームアッシュカリ肥料を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、請求項1記載のパームアッシュカリ肥料は、粒子径10mmふるい目下のパームアッシュカリ100gに対してリン酸0.29〜0.62モルを配合したことを特徴とする。
【0006】
請求項2記載のパームアッシュカリ肥料は、粒子径10mmふるい目下のパームアッシュカリ100gに対してリン酸0.29〜0.62モルを配合したものにバインダーを添加して造粒したことを特徴とする。
【0007】
請求項3記載のパームアッシュカリ肥料は、バインダーに、糖蜜発酵副産濃縮液、リグニンスルホン酸塩、コーンスチープリカー、CMCから成る群の少なくともいずれか一つを用いたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のパームアッシュカリ肥料は、パームアッシュカリに含有する強塩基である水酸化カリウムがリン酸と化学反応を起こしてリン酸カリウムになるので、硫安、硝安やリン安などのアンモニウム塩である窒素肥料と混合施肥しても化学反応は起こり難く、たとえ反応しても反応物がリン酸アンモニウムと推定されるのでアンモニアガスが発生することはない。
一方、パームアッシュカリは本来潮解性のある水酸化カリウムが含有されているが、前記リン酸を配合することによって潮解性のないリン酸カリウムを生成するので、パームアッシュカリ肥料は吸湿せず、該パームアッシュカリ肥料同士が付着して泥状になることはない。
このパームアッシュカリと液状のリン酸の配合の際に、両原料を混合すると、自己発熱反応を起こしてリン酸カリウムを生成するので、配合後に多くの熱を加える必要はなく、大量に且つ短時間で効率良くパームアッシュカリ肥料を生産することができる。
また、この肥料は必要に応じてバインダーと共に造粒すれば、粒子が自壊することのない強度を保持することができ、その結果、施肥作業時に粉体飛散や流亡の発生もなく、耕地に散布する際に、肥料粒子を分散させて支障なく施肥作業を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
そこで、本発明の実施の形態を、以下図および表に基づいて説明する。
本発明のパームアッシュカリ肥料は、その原料としてパームアッシュカリ及びリン酸を配合撹拌して粉状化し、必要に応じて添加剤として糖蜜発酵副産濃縮液などのバインダーを混合しながら粒状にしたものである。
以下に本発明に使用する原料の特徴について説明し、次いで、製造されるパームアッシュカリ肥料の特徴について説明する。

【0010】
先ず、原料としてのパームアッシュカリについて説明する。
パームアッシュカリはパーム椰子の実の部分を除いた房の部分(Empty Bunch)を燃焼させてできる草木灰の一種であり、その主成分である水酸化カリウムは、植物が成長にするために必要なカリ成分を他の草木灰より大変多く含有するので、主要なカリ肥料となっている。
そのパームアッシュカリの成分分析表を下記表1に示す。

【0011】
【表1】

【0012】
更に、カリ肥料に使用するパームアッシュカリの粒子径は10mmのふるい目下とする。
該パームアッシュカリは、そのままでは嵩比重も小さいので、施肥時に風に乗り飛散し易い材料であるが、そのような該パームアッシュカリにリン酸を配合すると重みを持った潮解性のない粒子となる。それ故に、他の肥料と混合するための原料として使用することが可能となり、且つ粒状に加工して耕地内の目的箇所に散布することも可能となる。
【0013】
次に、原料のリン酸について説明する。
前記パームアッシュカリの主成分である強塩基の水酸化カリウムは、空気中の水分を吸収して濡れた感じになり、更に水分を吸収するとその吸収した水分に溶けて、いわゆる潮解性を示す状態になり、遂には互いに溶けて粒子同士が付着してしまう。この溶解付着状態は水分過多な状態であり、この状態の時に硫酸アンモニウムなどのアンモニウム塩である窒素肥料が存在すると、アンモニアガスが発生してカリ肥料として使用し難い状態になってしまう。
そこで、この水酸化カリウムの潮解性を発現させず、且つ窒素肥料と化学反応を起こさせない方法として、本発明ではリン酸との化学反応によりリン酸カリウムを形成し、且つ水分の吸着を抑える組成に変化させることに着想した。
【0014】
ここで、前記水酸化カリウムがリン酸カリウムに化学変化して潮解性を防止するパームアッシュカリ肥料となるときの化学反応メカニズムの一例として、その反応式を下記化1に示す。
【0015】
【化1】

前記反応式はパームアッシュカリの主成分である水酸化カリウムとリン酸による化学反応の結果、自己発熱反応等によりパームアッシュカリ肥料の主成分であるリン酸カリウムが生成されることを示している。該リン酸カリウムの生成と同時に生成される水分は該自己発熱や加熱により蒸発することを示している。
【0016】
ところで、一般に市販されているリン酸は濃度75〜85%水溶液で、無色透明で無臭、揮発性のない粘性液体であり、この濃度でパームアッシュカリと配合混合することは可能であるが、好ましくは濃度70%以上〜75%未満の水溶液の方が混合し易く、この濃度範囲であれば、均一に混合することが可能である。同時に、現在所有の生産装置を使うことができ、且つ多くの加熱を要することなくリン酸カリウム、所謂パームアッシュカリ肥料の大量生産が可能となる。因みに本発明におけるリン酸濃度は71.8%とした。
リン酸の濃度を70%未満にするとパームアッシュカリと均一に且つ容易に混合することはできるが、混合後に余分な水分を除去するための加熱工程を必要とする。また、75%以上では、上述の如く粘性が高くなり、パームアッシュカリと配合混合することは困難である。

【0017】
最後に、添加剤のバインダーについて説明する。
以上の2種の原料のほかに、本発明では粒子が容易に崩れない程度の強度を持たせるためにバインダーを用いる。
バインダーとして使用する材料は、製糖産業の副産物ならびに廃糖蜜を発酵工業にて利用した後に産出される糖蜜発酵副産濃縮液、リグニンスルホン酸塩、コーンスチープリカー、CMCなどの水溶性結合剤である。
その使用量は、本発明で使用するパームアッシュカリとリン酸の化学反応を阻害することなく、且つ粒子径1〜10mmに造粒して自重で壊れない強度に保持できるように該水溶性結合剤を適量使用するものとし、具体的にはパームッシュカリ100gに対して4gとした。
【0018】
(試験)
次に、上記水酸化カリウムを主成分とするパームアッシュカリに対し、アンモニアガスの発生や潮解性を抑えるに有効なリン酸の適正な配合値を求めるために、前記実施の形態に基づき、下記の通りの試験を行った。このパームアッシュカリ肥料の前記実施の形態に基づいた製造工程については図1に示す通りである。
【0019】
(試験品の作製)
この発明の粉状および粒状試験品を、前記実施の形態に基づいて作製した。その実施状況を以下に説明する。
前記の形態に基づいてパームアッシュカリ肥料を製造するに当たり、10mmふるい目下のパームアッシュカリ100gと71.8%のリン酸10〜200gを試験番号毎に採取し、リボンミキサーで両原料を配合混合して粉状パームアッシュカリ肥料を製造した。
この配合工程において該パームアッシュカリと該リン酸の化学反応が起こってリン酸カリウムを生成し、この生成に伴う発熱によって更に化学反応を連鎖させて自己発熱を起こし、同時に生成される水分の放散は多少の加熱にて乾燥させた。
次いで粒状パームアッシュカリ肥料を製造するために該パームアッシュカリ肥料をロータリー式造粒機に移し、糖蜜発酵副産濃縮液とリグニンスルホン酸塩を使用したバインダー4gを添加しながら紛状のパームアッシュカリ肥料から1〜10mm程度の粒状のパームアッシュカリ肥料を製造した。
【0020】
(粉状試験品についての試験条件)
最初に、前記試験品の作製に基づいて製造した粉状パームアッシュカリ肥料の品質を確認するために潮解性に拘わる状態変化について観察した。その試験条件は温度28℃、湿度70%の雰囲気中にて72時間放置後、目視観察したものである。

【0021】
(粉状試験品についての試験内容)
上記試験条件に基づき、粉状全試験品の品質基準は潮解性の発現有無で表した。従って、潮解性が72時間以上現れない試験品は発現無として使用可能なパームアッシュカリ肥料であるとし、72時間未満で潮解性が現れる試験品は発現有として使用不可能なパームアッシュカリ肥料とした。その詳細については下表2にまとめ、同時に説明を行う。

【0022】
即ち、表2は、パームアッシュカリに対するリン酸の配合量を変化させたときの状態の変化を観察したものである。
表2の配合試験番号P−0はパームアッシュカリ原料そのものので、その状態変化については同表の状態変化観察欄に××の記号で表し、潮解性が強く現れることを示した。このパームアッシュカリ原料にリン酸の配合量を変化させた事例が配合試験番号P−1〜P−11で、いずれも10mmのふるい目下に粉砕したパームアッシュカリ100gに対してリン酸の配合量を10〜200gの範囲で変化させた。その内、潮解が起こらないで、パームアッシュカリ肥料として使用可能な試験番号はP−3〜P−7で、リン酸の配合量範囲は40〜85gであった。その状態は潮解性が現れないことを示し、このことを状態変化観察欄に○の記号で表した。このリン酸配合量の好ましくは、P−4〜P−6の55〜75gで、より潮解性が現れない事例として状態変化観察欄に◎の記号で表した。
一方、試験番号P−1〜P−2に示すようにリン酸配合量が10〜25gと少ない場合は、その状態変化として潮解性が現れてしまい、このことを状態変化観察欄に×の記号で表した。
また、リン酸配合量を大幅に増量させた事例が試験番号P−8〜P−11で、リン酸の配合量範囲は100〜200gであった。その状態変化は潮解性を表すものではなく、配合工程での作業が困難となってくることを示し、このことを状態変化観察欄に△の記号で表した。特に試験番号P−11においてはその困難さが顕著で、△△の記号で表した。

【0023】
【表2】









【0024】
更に、上表2には、リン酸配合量(g)にリン酸配合量(モル)を併記した。リン酸配合量のモル値は、リン酸の分子量を98g/モルとし、リン酸の濃度を71.8%としてリン酸配合量(g)より算出したものである。
このことより、前記リン酸の使用可能範囲のリン酸配合量40〜85gをリン酸配合量(モル)で表すと、0.29〜0.62モルとなり、更に好ましくは、リン酸配合量が55〜75gであるので、0.40〜0.55モルと表記した。この範囲は、潮解性等の不具合性質が無い範囲を示している。
ところが、リン酸配合量が0.29モル未満の場合は、リン酸配合量が過少となり、本発明の原料であるパームアッシュカリに含有する水酸化カリウムがリン酸と未反応の状態で残ることになって、パームアッシュカリの試験番号P−0であるリン酸配合量無しの場合と同様に、徐々に潮解し、粘性の高い水酸化カリウムの液状になってしまう範囲となる。
一方、リン酸配合量が0.62モルを超える場合は、配合剤であるリン酸量がパームアッシュカリ量に比べて過多なために配合工程での作業が困難になってくる。特にパームアッシュカリの試験番号P−11はリン酸配合量(モル)が1モルを大きく超えた試験品であるので、粉体状ではなく、泥状化した試験品となった。この泥状化状態をより明確に表すためにP−5を併記し、図2として両試験品の状態変化を比較した。
【0025】
(粉状試験品についての試験結果)
すなわち、図2はパームアッシュカリ100gに対し、リン酸を過多にその2倍量の200gを添加混合する試験番号P−11と、リン酸配合量の適量なパームアッシュカリ肥料である試験番号P−5の配合工程後の状態を比較したもので、図中に見える200及び65の数値はリン酸配合量を示し、それぞれ200gのリン酸および65gのリン酸をそれぞれ混合した試験品であることを示している。
リン酸配合量過多のP−11は、図3で示すP´−0、更には図4で示すP´−1と同じ程度に潮解を起こしているように見える。しかしながらこの現象は、添加剤であるリン酸が過剰であるためにリン酸の粘性が現れて黒く変色してしまい、配合工程での作業が困難となって原料のパームアッシュカリもその形状を保つことができなくなってしまったことを示している。

【0026】
以上で粉状試験品についての説明は終わり、以下に粒状試験品についての試験条件等の説明を行う。
【0027】
(粒状試験品についての試験条件)
前記試験品の作製に基づいて製造した粒状パームアッシュカリ肥料の品質を確認するために潮解性に拘わる状態変化について観察した。その試験条件は温度28℃、湿度70%の雰囲気中にて72時間放置後、目視観察したものである。
【0028】
(粒状試験品についての試験内容)
上記試験条件に基づき、粒状全試験品の品質基準は潮解性の発現有無で表した。従って、潮解性が72時間以上現れない試験品は発現無として使用可能なパームアッシュカリ肥料であるとし、72時間未満で潮解性が現れる試験品は発現有として使用不可能なパームアッシュカリ肥料とした。その詳細については下表3にまとめ、同時に説明を行う。

【0029】
上記に記載のパームアッシュカリ肥料の製造方法として、パームアッシュカリとリン酸を配合し、この配合工程中に両原料の化学反応を起こしつつ粉状のパームアッシュカリ肥料を生成する。更に必要に応じて粉状の該パームアッシュカリ肥料にバインダーを噴霧しながら造粒する方法により粒状のパームアッシュカリ肥料を生成することができる。
【0030】
そこで下表3に示すように、試験番号P´−0〜P´−11を配合し、造粒工程を経て粒状のパームアッシュカリ肥料を生成してその状態変化について観察する試験を行った。
試験番号P´−0は原料のパームアッシュカリを造粒工程において粒状化した粒状パームアッシュカリを示す。バインダーの添加有無に関係なく潮解性を示した。
次いで、試験番号P´−1〜P´−7はパームアッシュカリとリン酸を配合混合させ、造粒工程においてロータリー式造粒機にてバインダー、例えば糖蜜発酵副産濃縮液を配合した粒状パームアッシュカリ肥料を示している。原料のパームアッシュカリとリン酸および化学反応して生成したリン酸カリウムの各粒子が互いに密着するので、形成された粒状パームアッシュカリ肥料は自重では壊れない強度を備えるものとなる。その外径は1〜10mm程度に抑え、粒状パームアッシュカリ肥料の基本形状とした。状態変化観察に関して、P´−1及びP´−2は潮解性を示し、P´−3〜P´−7は潮解性を示すことがなかった。特にP´−4〜P´−6は全く潮解性を示さなかった。
更に、試験番号P´−8〜P´−11はパームアッシュカリとリン酸を配合混合させ、造粒工程において粒状化を試みたが、その作業が困難であり、特にP´−11においては全く粒状化せず、泥状状態のままであることを示す。
以上の粒状パームアッシュカリ肥料の状態変化観察の結果は、上表2の粉状パームアッシュカリ肥料と同じであった。
【0031】
【表3】

【0032】
(粒状試験品についての試験結果)
更に、前記粒状試験品についての前記状態変化観察結果の一例を図3、図4に写真で示す。
図3は原料のパームアッシュカリである試験番号P´−0とリン酸配合量の適量なパームアッシュカリ肥料である試験番号P´−5の状態変化観察結果を写真で比較する。この写真に表示している0及び65の数値はリン酸配合量を示し、それぞれ0gのリン酸および65gのリン酸をそれぞれ混合した試験品であることを示している。
この写真の左側に位置する原料のパームアッシュカリにはリン酸が混合されていない。従って、原料のパームアッシュカリは潮解試験開始直後から吸湿して黒く変色するかのように変化し、次第に粒状の変形と流動化が起こって潮解が発生したことを示す。一方、写真の右側に位置する本発明の粒状パームアッシュカリ肥料は変化がなく、潮解が起きていないことを示している。

【0033】
次の図4において、リン酸配合量が10gと少ない場合の試験番号P´−1とリン酸配合量の適量なパームアッシュカリ肥料の試験番号P´−5の状態変化観察結果を比較した。前記同様に、潮解試験試料の写真に表示している10及び65の数値はリン酸配合量を示し、それぞれ10gのリン酸および65gのリン酸をそれぞれ混合した試験品であることを示している。
その結果、リン酸配合量の少ないP´−1では、72時間を経過すると若干潮解を起こすことを示している。このことは、リン酸配合量が少ないと、原料であるパームアッシュカリに含有する水酸化カリウムが未反応の状態で残ることになり、その残分が徐々に潮解し、水酸化カリウムの液状になってしまうことを示している。
【0034】
以上のことより、本発明のパームアッシュカリ肥料に関わる作用効果について以下に説明する。
本発明のパームアッシュカリ肥料は、パームアッシュカリとリン酸の化学反応によってリン酸カリウムとして反応生成した粉状のもの、及びそれを粒状化したものであって、反応時に生成する水分は自己発熱あるいは多少の加熱によって放散される。
パームアッシュカリに含まれる水酸化カリウムがリン酸と反応してリン酸カリウムを反応生成して強塩基ではなくなったために、弱塩基の塩である硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウムなどのアンモニウム塩と混合しても、アンモニアガスを発生することはない。従って本発明の粒状パームアッシュカリ肥料とアンモニウム塩である窒素肥料を混合施肥することが可能となる。
又、本発明のパームアッシュカリ肥料は、リン酸カリウムに化学変化し、このリン酸カリウムには潮解性がないことより、潮解性のないパームアッシュカリ肥料が作られることとなる。多量のリン酸カリウムが含まれるパームアッシュカリ肥料となるので、吸湿することはない。いわゆる潮解性が起こらないので、容易に水酸化カリウムに戻ることはなく、またアンモニウム塩である窒素肥料と化学反応を起こしてアンモニアガスが発生することはない。
更に、本発明のパームアッシュカリ肥料がバインダーと共に造粒、固化されるので、粒状パームアッシュカリ肥料として単独で使用する場合は施肥作業時に飛散や流亡がない。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、カリ成分が豊富で且つ非潮解性を備えて飛散流亡のないパームアッシュカリ肥料であり、窒素肥料と混合施肥してもアンモニアガスは発生せず肥料として広く利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明のパームアッシュカリ肥料および粒状パームアッシュカリ肥料の製造工程図である。
【図2】リン酸200g及びリン酸65gを配合したときの状態写真である。
【図3】リン酸無し(0g)及びリン酸65gを配合造粒して72時間経過後の状態変化観察写真である。
【図4】リン酸10g及びリン酸65gを配合造粒して72時間経過後の状態変化観察写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子径10mmふるい目下のパームアッシュカリ100gに対してリン酸0.29〜0.62モルを配合したことを特徴とするパームアッシュカリ肥料。
【請求項2】
粒子径10mmふるい目下のパームアッシュカリ100gに対してリン酸0.29〜0.62モルを配合したものにバインダーを添加して造粒したことを特徴とするパームアッシュカリ肥料。
【請求項3】
バインダーに、糖蜜発酵副産濃縮液、リグニンスルホン酸塩、コーンスチープリカー、CMCから成る群の少なくともいずれか一つを用いた請求項2に記載のパームアッシュカリ肥料。


















【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−120814(P2010−120814A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−296298(P2008−296298)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(504133383)株式会社古田産業 (4)
【Fターム(参考)】