説明

パーライト濾過助剤の製造方法

【課題】濾過速度に優れ、特に食料品の濾過に適したパーライト濾過助剤の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のパーライト濾過助剤の製造方法は、粉砕したパーライトに、4〜20wt%のNaOH水溶液を付着させた後、400〜800℃で焼成することを特徴とする。前記焼成の時間は、30〜60分間にするのが好ましい。さらに、前記焼成温度が550〜650℃であれば、食料品や医薬品に好適なパーライト濾過助剤になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濾過速度に優れ、特に食料品、医薬品などの濾過に適したパーライト濾過助剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パーライトは、真珠岩、松脂岩などを発泡焼成し、これらを粉砕して製造することができ、軽量で気泡を多く有し、土壌改良剤、モルタル用資材、軽量骨材、無機保温材、濾過助剤などに用いられている。
【0003】
パーライトに関する従来技術としては、下記特許文献1には、軟質パーライト原石を粉砕し、かつ分級して得られるパーライト精石の粒子表面に、水酸化ナトリウムである軟化剤を付着させた後、加熱・発泡せしめることを特徴とする大粒径パーライト発泡体の製造方法が開示され、このパーライト発泡体は土壌改良材、モルタル用資材などに用いることが記載されている。
【0004】
また、下記特許文献2には、パーライト100重量部と水酸化ナトリウム3〜20重量部とを配合し、5〜50重量部の水の共存下で常温又は加温状態で撹拌混合し、この混合物を賦形した後、80〜200℃の乾燥機中で加熱硬化させることを特徴とする密度0.2〜0.6g/cmのパーライト硬化体の製造方法が開示され、このパーライト硬化体は建築内装材、天井材、保温・断熱材等に用いられることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−263460号公報
【特許文献2】特許第3398544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1及び2に記載の製法で製造されたパーライトは、主に建材用途であり、濾過性能に優れたものではなかった。また、濾過助剤として用いたとしても濾液のpH値が高くなり、食料品、医薬品などの人体に服用、塗布する物質の濾過などには不適なものであった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、濾過速度に優れ、特に食料品の濾過に適したパーライト濾過助剤の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のパーライト濾過助剤の製造方法は、粉砕したパーライトに、4〜20wt%のNaOH水溶液を付着させた後、400〜800℃で焼成することを特徴とする。
【0009】
本発明のパーライト濾過助剤の製造方法により製造されたパーライト濾過助剤は、濾過速度に優れている。また、濾液がアルカリ性になりにくいため、特に食料品や医薬品などの人体に接触する物質の濾過に適したものになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】PFR測定装置の一例を示した概略図である。
【図2】図1のPFR測定装置のベース部分を示した概略拡大図である。
【図3】図1のPFR測定装置での濾過時間の測定方法を示した概略拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を、パーライト濾過助剤の製造方法の一実施形態に基づいて説明する。ただし、本発明の範囲は、この実施形態に限定されるものではない。
【0012】
本発明の一実施形態のパーライト濾過助剤の製造方法は、粉砕したパーライトに、4〜20wt%のNaOH水溶液を付着させた後、400〜800℃で焼成することを特徴とする。NaOHに代えて、KOHやCa(OH)等の水酸化物などを用いることもできる。
【0013】
本発明で用いるパーライトは、従来からあるパーライトを用いることができ、例えば、真珠岩、松脂岩などの天然ガラスを粉砕し、加熱して発泡させたものを用いることができる。
本発明では、このパーライトを粉砕したものを用いる。この粉砕は、クラッシャーなどで行うことができ、粉砕したパーライトの平均粒径(D50)は10μm〜30μmが好ましく、最大粒径が100μm以下、最小粒径が1μm以上にするのが好ましい。なお、粒径は、ロータップ法で測定することができる。
粉砕したパーライトとしては、市販の三井金属鉱業(株)製のパーライトを用いることができる。
【0014】
本発明で用いるNaOH水溶液は、濃度が4〜20wt%である。本発明では、このNaOH水溶液を、粉砕したパーライトに付着させる。この付着は、噴霧器により噴霧することにより行うことができる。また、リボンミキサー、マラー混合機、ニーダー、パッグミル等の混合機にこれらを投入し、撹拌混合することにより行うこともできる。
この際の粉砕したパーライトとNaOH水溶液との配合割合は、特に限定するものではないが、パーライト100重量部に対してNaOH水溶液30〜50重量部、好ましくは35〜45重量部である。
また、本発明では、NaOH水溶液に代わり、同一のアルカリ金属当量の処理量でKOHやCa(OH)水溶液を用いることができる。
【0015】
本発明では、パーライトにNaOH水溶液を付着させた後、これを焼成する。この焼成は、400〜800℃、好ましくは500〜700℃、より好ましくは550〜650℃で行う。この焼成は、30分〜60分間行うのが好ましく、焼成炉などにより大気雰囲気で行うことができる。
【0016】
このようにして製造したパーライトは、濾過助剤として好適であり、濾過速度に優れている。また、濾液がアルカリ性になりにくいため、特に砂糖や食用油の精製、清涼飲料水、酒の醸造など食料品分野や、消毒液、点眼剤、錠剤、シロップ、サプリメントなどの医薬品分野での濾過に適しているものである。
また、本パーライトは、上記方法で得られた粉末形態で用いる他、粉末をセルロースやアクリル樹脂などの結着剤と混練成形し、ブロックやペレット形態で使用することなど、濾材と一体化して使用することもできる。
【実施例】
【0017】
以下、本発明の一実施例を説明する。但し、本発明の範囲は、この実施例に限定されるものではない。
【0018】
≪サンプル作製≫
サンプル1〜15のパーライト濾過助剤を、下記に示すように作製した。
サンプル1〜15は、粉砕したパーライトとして三井金属鉱業(株)製のパーライトを用いた。このパーライトの平均粒径(D50)は25μm、最小粒径は1μm、最大粒径は100μmであった。この粒径はロータップ法によるものである。
まず、サンプル1は、このパーライトをそのまま用いた。
サンプル2〜15は、上記パーライトにNaOH水溶液を噴霧し、焼成して作製した。
より詳しくは、上記パーライト50gに対してNaOH水溶液20gを、表面にできるだけ均一に付着するように撹拌しながら噴霧器で噴霧し、下記表1の温度に設定した焼成炉で30〜60分間焼成し、サンプル2〜15を作製した。なお、噴霧したNaOH水溶液の濃度は下記表1に示したとおりである。
【0019】
【表1】

【0020】
≪評価≫
サンプル1〜15を用いて、外観、濾過速度、pHの評価を行った。
【0021】
<外観>
サンプル1〜15の外観を目視で観察した。サンプル1〜14は砂状であり「○」と評価した。サンプル15は、焼成により凝集しており「×」と評価した。
【0022】
<濾過速度>
サンプル1〜14のPFR(Permebilty Flow Rate)を測定し、濾過速度を評価した。なお、サンプル15に関しては、上述したとおり、焼成により凝集したため濾過速度を測定をすることができなかった。
【0023】
PFRは、以下の(1)〜(10)の手順で測定した。
(1).図1に示したような装置を準備する。図1中の、符号1はパーミアビリティアッセンブリ、符号2は真空ポンプ、符号3は真空制御ユニット、符号4は2L濾過ビン、符号5は5L濾過ビン、符号6はパーミアビリティチューブ、符号7はストップコック、符号8はベース、符号9はロックリングである。
(2).パーミアビリティアッセンブリ1のストップコック7を閉じ、真空ポンプ2をスタートさせる。
(3).図2に示すように、ベース8にある20mesh金網10の上に濾紙11を置いた後、パーミアビリティチューブ6をベース8上にセットし、ロックリング9を締める。
(4).各サンプル1〜12を2.00gずつ秤量皿に量り取り、それをビーカー12に入れる。精製水50mlをメスシリンダーで量り、その内25mlを前記ビーカー12に入れる。
(5).メスシリンダーの精製水の少量を、チューブ6に注ぎ、濾紙11を湿らす。
(6).前記ビーカー12内を撹拌してスラリー状にし、これをチューブ6内に注ぐ。
(7).メスシリンダー内の精製水で、ビーカー12を濯ぎ、これをチューブ6内に注ぐ。この際、図3に示すように、チューブ6のトップマーク(24mlライン)(符号13)を超えるようにする。
(8).ストップコック7を開き、濾過を開始し、メニスカス14の下部がトップマークを通過するときにストップウオッチをスタートし、8ml濾過する時間、つまり16mlライン(符号15)を通過する時間T(s)を測定する。
(9).濾過が終了したら、濾紙11上のケーキ16を脱水し、ストップコック7を閉じる。そして、ケーキの容積V(ml)を0.1ml単位まで・・・で測定する。
(10).測定した時間T及び容積Vを以下の式1に当てはめ、PFRを算出する。
【0024】
PFR(%)=100×√((V/T)/0.288)…式1
【0025】
その結果は、上記表1に示した。
なお、PFRの基準サンプルとして平均粒径(D50)が20μmのものを用い、これと同じ濾過速度の場合を100とした。
【0026】
<pH>
上記PFR測定の際の5L濾過ビン5に貯めた濾液のpHをpH測定器で測定した。
その結果は、上記表1に示した。
【0027】
≪結果≫
濾過速度の結果は、PFRが300以上を良好と判定した。
サンプル4,5,7〜9,11〜14は良好な結果であった。これらは、NaOH水溶液濃度が4〜20wt%であり、焼成温度が400〜800℃であった。
pH測定の結果は、pHが9.0以下を良好と判定した。
サンプル1,5,8,9,12,13は良好な結果であった。このうち、サンプル5,8,12はPFRの結果も良好であった。
これらは、焼成温度が600℃であった。
【0028】
パーライト濾過助剤は、粉砕したパーライトに4〜20wt%のNaOH水溶液を付着させた後、400〜800℃で焼成すると濾過速度が良好になるものであった。
そのなかでも焼成温度が600℃前後の550〜650℃のものは、濾液のpHを9.0以下に抑えることができ、食料品や医薬品の濾過に好適になると予測される。
【符号の説明】
【0029】
1(パーミアビリティアッセンブリ)、2(真空ポンプ)、3(真空制御ユニット)、4(2L濾過ビン)、5(5L濾過ビン)、6(パーミアビリティチューブ)、7(ストップコック)、8(ベース)、9(ロックリング)、10(金網)、11(濾紙)、12(ビーカー)、13(トップマーク)、14(メニスカス)、15(16mlライン)、16(ケーキ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉砕したパーライトに、4〜20wt%のNaOH水溶液を付着させた後、400〜800℃で焼成するパーライト濾過助剤の製造方法。
【請求項2】
前記焼成の時間が30〜60分間である請求項1に記載のパーライト濾過助剤の製造方法。
【請求項3】
前記焼成温度が550〜650℃である請求項1又は2に記載のパーライト濾過助剤の製造方法。
【請求項4】
前記パーライト濾過助剤が食料品用又は/及び医薬品用である請求項1〜3のいずれかに記載のパーライト濾過助剤の製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−183461(P2012−183461A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47234(P2011−47234)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】