説明

ヒトインフルエンザウイルスH1亜型の免疫学的鑑別検出法

【課題】季節性ヒトインフルエンザウイルスH1N1亜型と新型ヒトインフルエンザウイルスH1N1亜型を迅速かつ簡便に鑑別検出できる方法および測定器具を提供する。
【解決手段】実質的に全てのヒトA型インフルエンザウイルス亜型に対して反応する第一の抗体、及び、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型及び新型インフルエンザウイルスH1亜型の両者に対して反応するが、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性よりも、新型インフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性が弱い第二の抗体を用い、第一の抗体との反応及び第二の抗体との反応が何れも陽性であるが、第二の抗体に対する反応性が第一の抗体に対する反応性よりも弱いことをもって新型インフルエンザウイルスH1亜型を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型及び新型インフルエンザウイルスH1亜型の両者に対して反応するが、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性よりも、新型インフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性が弱い抗体を用いた新型ヒトインフルエンザウイルスH1亜型の検出法、詳しくは、サンドイッチ式免疫測定法、特に、イムノクロマトグラフィー測定法およびイムノクロマトグラフィー測定装置に関するものであり、感染した新型ヒトインフルエンザウイルスH1亜型を迅速かつ簡便に診断するために有用な検出法に関する。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザウイルスはヒト上気道、下気道などに感染し、1〜2日の潜伏期をおいた後、発熱(38〜39℃)と共に頭痛、腰痛、筋肉痛、全身倦怠、消化器症状などを引き起こす。インフルエンザで最も問題となる合併症は高齢者の肺炎と小児の脳炎・脳症で、特に小児の脳炎・脳症は高熱、意識障害、痙攣を特徴とし、極めて予後が悪いうえに初発症状から中枢神経系症状の発現及び死に至る期間が極めて短いので、迅速な診断と処置が必要である。
【0003】
従来は、上記のような臨床症状のみでインフルエンザ様疾患として診断されることが多かったが、近年、インフルエンザウイルス抗原を迅速に検出するキットが開発され普及し始めたことから、インフルエンザウイルス感染症として早期に診断することが可能となってきた。このような迅速診断キットとしては、酵素免疫法(EIA)やイムノクロマトグラフィー測定法を原理として用いたものが挙げられ、A型インフルエンザウイルスのみを検出するもの、A型とB型をまとめて検出するもの、A型とB型をそれぞれ検出するものなどがある。
しかしながら現在行われているインフルエンザウイルス抗原検査はA型ウイルス全てに共通な核タンパク質(ヌクレオプロテイン)に対する抗体を使用している。そのため季節性インフルエンザのH1N1亜型及びH3N2亜型感染、並びに新型インフルエンザウイルスH1N1亜型間での鑑別診断はできない。
【0004】
2009年にブタを起源とするインフルエンザウイルスH1N1亜型のヒトへの感染が多数発生し、新型インフルエンザが発生した。同年、WHOにおいて継続的にヒトからヒトへの感染が見られる状態になったとして、インフルエンザのパンデミック警戒レベルが最高レベルのフェーズ6に引き上げられる宣言が行われた。現在、世界中に感染は拡大し、季節を問わず大流行が続いている。
【0005】
新型インフルエンザウイルスH1N1亜型は、遺伝子解析の結果から北米のブタの間で循環していたトリプルリアソータント(遺伝子再集合)と欧州のブタで循環していたウイルスのリアソータントであると考えられている。
【0006】
ブタを起源とする新型インフルエンザウイルスのため、季節性インフルエンザウイルスH1亜型との免疫交差反応性が無く、従来のインフルエンザワクチンでは対処できない。従って、大半の者が免疫を持たないため、新型インフルエンザウイルスに容易に感染し、基礎疾患を有する者や乳幼児において重篤化し、死亡する例が増加している。
【0007】
季節性インフルエンザ流行期においては、新型インフルエンザ感染を見分けることは治療上有益であり、新型インフルエンザの二次感染を防ぐ上でも有益である。
【0008】
現在、新型インフルエンザ(H1N1亜型)の診断においては、感染国からの帰国者や感染患者との接触者を対象として、発熱やせき等のインフルエンザ様症状を示す場合、従来のインフルエンザ抗原迅速診断試薬により検査が実施される。迅速検査によりA型インフルエンザ感染が確認された場合、遺伝子検査(RT−PCR法)によりH1N1亜型またはH3N2亜型の確認が実施されている。H1N1亜型であることが確認された場合、新型インフルエンザの疑いとして、更に詳細な遺伝子検査が行われる。上述のとおり、新型インフルエンザウイルスH1N1亜型の確定は遺伝子検査(RT−PCR法)により実施されているが、特別な機器及び技術を要するため簡便な方法ではない。
【0009】
またインフルエンザの治療においては、インフルエンザ抗原迅速診断試薬による診断の後、抗インフルエンザ薬投与による早期治療が行われている。抗インフルエンザ薬としてノイラミニダーゼ阻害薬であるオセルタミビルやザナミビルの投与が行われている。
【0010】
近年分離された季節性インフルエンザウイルスH1N1亜型において、抗インフルエンザ薬のオセルタミビルに対する耐性ウイルスが高頻度に報告されている。他方、新型インフルエンザウイルスH1N1亜型において耐性ウイルスは確認されていない。したがって、初期診断時に季節性インフルエンザウイルスH1N1亜型と新型インフルエンザウイルスH1N1亜型感染を鑑別診断することは、患者に対する抗インフルエンザ薬による治療方針を立てる上でも重要であり、投与薬剤の選択の上で重要である。
【0011】
A型インフルエンザウイルスの核タンパク質は、そのアミノ酸配列が亜型間でよく保存されていると考えられており、従来主としてB型インフルエンザウイルスとの鑑別診断に用いられている(特許文献1参照)。すなわち、A型インフルエンザウイルスの核タンパク質に対する抗体は通常実質的に全てのA型インフルエンザウイルス亜型に対して反応するものと考えられている。その中で、本出願人は、A型インフルエンザウイルス強毒株に対して特異的に反応しない抗核タンパク質抗体を見出し、それを用いたA型インフルエンザウイルス強毒株の免疫学的検出法を既に提案している(特許文献2参照)。しかしながら、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型の核タンパク質及び新型インフルエンザウイルスH1亜型の核タンパク質の両者に対して反応するが、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型の核タンパク質に対する反応性よりも、新型インフルエンザウイルスH1亜型の核タンパク質に対する反応性が弱い抗体の存在については未だ報告がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開WO2005/007697号パンフレット
【特許文献2】国際公開WO2007/074811号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1N1亜型と新型ヒトインフルエンザウイルスH1N1亜型の鑑別診断に有用な検出試薬、及びそれを用いた検出法、とりわけ、サンドイッチ式免疫測定法、特に、イムノクロマトグラフィー測定法およびイムノクロマトグラフィー測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者等は、A型インフルエンザウイルスを免疫原としてマウスを免疫して各種抗体を取得し、これらの抗体をイムノクロマトグラフィー測定装置において試験する過程で、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型及び新型インフルエンザウイルスH1亜型の両者に対して反応するが、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性よりも、新型インフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性が弱いモノクローナル抗体を取得することに成功し、当該抗体を免疫測定法、特にサンドイッチ式免疫測定法、とりわけイムノクロマトグラフィー測定法で使用することにより、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1N1亜型と新型インフルエンザウイルスH1N1亜型を鑑別検出し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明の一局面によれば、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型及び新型インフルエンザウイルスH1亜型の両者に対して反応するが、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性よりも、新型インフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性が弱いモノクローナル抗体が提供される。
好ましい実施形態によれば、上記本発明のモノクローナル抗体は、新型インフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性が、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性の4分の1以下である。
かかる性質を有するモノクローナル抗体を、実質的に全てのヒトA型インフルエンザウイルス亜型に対して反応する抗体(好ましくは、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1N1亜型と新型インフルエンザウイルスH1N1亜型とに対して同等の反応性を有する抗体)と併用することにより、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1N1亜型と新型インフルエンザウイルスH1N1亜型を鑑別検出することが可能となる。
本発明のモノクローナル抗体は、インフルエンザウイルスに対するモノクローナル抗体であればよいが、通常、インフルエンザウイルスの核タンパクに対するモノクローナル抗体として得られる。
【0016】
さらに、本発明の他の局面によれば、実質的に全てのヒトA型インフルエンザウイルス亜型に対して反応する第一の抗体、及び、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型及び新型インフルエンザウイルスH1亜型の両者に対して反応するが、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性よりも、新型インフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性が弱い第二の抗体を用いた免疫測定法からなり、第一の抗体との反応及び第二の抗体との反応が何れも陽性であるが、第二の抗体に対する反応性が第一の抗体に対する反応性よりも弱いことをもって新型インフルエンザウイルスH1亜型を検出できるようにした、新型インフルエンザウイルスの鑑別検出法が提供される。
【0017】
この検出法における免疫測定法としては、特に限定されるものではないが、サンドイッチ式免疫測定法、とりわけELISA(Enzyme−linked immunosorbent assay)法、イムノクロマトグラフィー測定法などが好ましい。
したがって、本発明の上記検出法の好ましい実施形態によれば、前記免疫測定法は、前記第一の抗体とこの第一の抗体が反応する抗原に対して反応する第三の抗体とを用いたサンドイッチ式免疫測定法、及び/又は、前記第二の抗体と該第二の抗体が反応する抗原に対して反応する第四の抗体とを用いたサンドイッチ式免疫測定法から構成される。これらのサンドイッチ式免疫測定法は、前記第一の抗体および第二または第四の抗体を担体に固定して実施すると好都合である。この場合、担体として膜担体を使用すると、イムノクロマトグラフィー測定法を実施することができる。
【0018】
したがって、本発明の更に他の局面によれば、実質的に全てのヒトA型インフルエンザウイルス亜型に対して反応する第一の抗体、及び、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型及び新型インフルエンザウイルスH1亜型の両者に対して反応するが、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性よりも、新型インフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性が弱い第二の抗体をそれぞれ予め所定位置に固定せしめて形成された第一及び第二の捕捉部位を備える膜担体を用意し、前記第一の抗体が反応する抗原に対して反応する第三の抗体と被験試料との第一の混合液、及び、前記第二の抗体が反応する抗原に対して反応する第四の抗体と前記被験試料との第二の混合液を、それぞれ第一及び第二の捕捉部位に向けて前記膜担体にてクロマト展開せしめるか、または、第一の混合液を前記捕捉部位の双方に向けて前記膜担体にてクロマト展開せしめ、前記第一の捕捉部位における第一の抗体との反応及び第二の捕捉部位における第二の抗体との反応が何れも陽性であるが、第二の抗体に対する反応性が第一の抗体に対する反応性よりも弱いことをもって新型インフルエンザウイルスH1亜型を検出できるようにしたことを特徴とするイムノクロマトグラフィー測定法が提供される。
【0019】
また、本発明の更に他の局面によれば、実質的に全てのヒトA型インフルエンザウイルス亜型に対して反応する第一の抗体と、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型及び新型インフルエンザウイルスH1亜型の両者に対して反応するが、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性よりも、新型インフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性が弱い第二の抗体と、前記第一の抗体が反応する抗原に対して反応する第三の抗体と、前記第二の抗体が反応する抗原に対して反応する第四の抗体と、膜担体とを少なくとも備え、前記第一及び第二の抗体はそれぞれ予め膜担体の所定位置に固定されて第一及び第二の捕捉部位を形成し、前記第三及び第四の抗体は適当な標識物質で標識され、かつ、前記第三及び第四の抗体は前記捕捉部位の双方から離隔した位置からそれぞれ第一及び第二の捕捉部位に向けて前記膜担体にてクロマト展開可能なように用意されてなり、前記第一の捕捉部位における第一の抗体との反応及び第二の捕捉部位における第二の抗体との反応が何れも陽性であるが、第二の抗体に対する反応性が第一の抗体に対する反応性よりも弱いことをもって新型インフルエンザウイルスH1亜型を検出できるようにしたことを特徴とするイムノクロマトグラフィー測定装置が提供される。
【0020】
前記膜担体は、第一の捕捉部位と第二の捕捉部位とを互いに離隔させて備えてなる単一の膜担体からなるものであってもよく、または、第一の抗体が固定された第一の膜担体と、第二の抗体が固定された第二の膜担体とからなるものであってもよいが、後者の方が反応特異性に優れているので好ましい。後者の場合、第三の抗体は第一の膜担体上に用意しておき、第四の抗体は第二の膜担体上に用意しておくと、それぞれの膜担体に被験試料を注入するだけで測定が行えるので好都合である。第三及び第四の抗体は、それぞれ、第一及び第二の膜担体上に配置された含浸部材に含浸させて用意しておくと好都合である。
上記第一の膜担体と第二の膜担体とを備える場合、第一の膜担体及び前記第二の膜担体は何れも細長形状すなわち帯状形状を備えるものとし、両膜担体の含浸部材を互いに所定の間隔をおいて離隔させ、両膜担体を相互に並行して配置させてなる、所謂イムノクトマト法テストストリップの形態にすることができる。別法として、第一の膜担体及び前記第二の膜担体は何れも細長形状すなわち帯状形状を備えるものとし、両膜担体の含浸部材を互いに所定の間隔をおいて離隔させ、両膜担体を放射方向に又は反対方向に配置させてなる、所謂イムノクトマト法テストストリップ又はイムノクトマト法テストキットの形態にすることがきる。
【0021】
上記した方法及び装置は、すべて、上記第二の抗体を担体に固定しておく方法である。しかしながら、本発明の好ましい実施形態によれば、上記第二の抗体を担体に固定しない方法を採用することもできる。
すなわち、本発明の他の局面によれば、実質的に全てのヒトA型インフルエンザウイルス亜型に対して反応する第一の抗体と、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型及び新型インフルエンザウイルスH1亜型の両者に対して反応するが、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性よりも、新型インフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性が弱い第二の抗体と、前記第一の抗体が反応する抗原に対して反応する第三の抗体とを用い、前記第一の抗体を予め所定位置に固定せしめて形成された第一の捕捉部位を備える膜担体を用意し、前記第二の抗体と被験試料とを含む第一の混合液、及び、前記第三の抗体と前記被験試料とを含む第二の混合液を、それぞれ第一の捕捉部位に向けて前記膜担体にてクロマト展開せしめ、前記第一の捕捉部位における前記第三の抗体及び前記第二の抗体の反応が何れも陽性であるが、前記第一の捕捉部位における第二の抗体に対する反応性が前記第一の捕捉部位における前記第三の抗体に対する反応性よりも弱いことをもって新型インフルエンザウイルスH1亜型を検出できるようにしたことを特徴とするイムノクロマトグラフィー測定法が提供される。
この測定法では、膜担体は第一の抗体が固定された一種類の膜担体を用意すればよいが、第一の混合液のクロマト展開と第二の混合液のクロマト展開の2回のクロマト展開を必要とし、各クロマト展開用に、膜担体を合計2枚必要とする。
【0022】
また、本発明の他の局面によれば、実質的に全てのヒトA型インフルエンザウイルス亜型に対して反応する第一の抗体と、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型及び新型インフルエンザウイルスH1亜型の両者に対して反応するが、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性よりも、新型インフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性が弱い第二の抗体と、前記第一の抗体が反応する抗原に対して反応する第三の抗体と、膜担体とを少なくとも備え、前記第一の抗体は予め膜担体の所定位置に固定されて第一の捕捉部位を形成し、前記第二及び第三の抗体は適当な標識物質で標識され、かつ、前記第二及び第三の抗体は前記捕捉部位から離隔した位置からそれぞれ第一の捕捉部位に向けて前記膜担体にてクロマト展開可能なように用意されてなり、前記第一の捕捉部位における前記第三の抗体及び前記第二の抗体の反応が何れも陽性であるが、前記第一の捕捉部位における第二の抗体に対する反応性が前記第一の捕捉部位における前記第三の抗体に対する反応性よりも弱いことをもって新型インフルエンザウイルスH1亜型を検出できるようにしたことを特徴とするイムノクロマトグラフィー測定装置が提供される。
上記測定装置において、膜担体は、第一の抗体が固定された第一の膜担体と、第一の抗体が固定された第二の膜担体とから少なくとも構成することが好ましい。そして、第二の抗体を第一の膜担体上に用意しておき、第三の抗体を第二の膜担体上に用意しておくと、両膜担体に被験試料を注入するだけで測定が行えるので好都合である。第二及び第三の抗体は、それぞれ、第一及び第二の膜担体上に配置された含浸部材に含浸させて用意しておくことが好ましい。
【0023】
本発明の検出法及び測定方法は、キャピリア(登録商標)FluA+B(株式会社タウンズ製)などの市販のA型及びB型インフルエンザ鑑別測定用のイムノクロマト法テストストリップまたはキットと、上記第一の抗体及び第二の抗体を用いたサンドイッチ式免疫測定装置とを組み合わせて実施できる。
したがって、かかる実施形態のために、本発明の他の局面によれば、実質的に全てのヒトA型インフルエンザウイルス亜型に対して反応する第一の抗体と、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型及び新型インフルエンザウイルスH1亜型の両者に対して反応するが、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性よりも、新型インフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性が弱い第二の抗体と、膜担体とを少なくとも備え、前記第二の抗体は予め膜担体の所定位置に固定されて第一の捕捉部位を形成し、前記第一の抗体は適当な標識物質で標識され、かつ、前記第一の捕捉部位から離隔した位置から該第一の捕捉部位に向けて前記膜担体にてクロマト展開可能なように用意されてなる新型ヒトインフルエンザウイルスH1亜型検出用イムノクロマトグラフィー測定装置が提供される。
【0024】
また、同様の実施形態のために、本発明の他の局面によれば、実質的に全てのヒトA型インフルエンザウイルス亜型に対して反応する第一の抗体と、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型及び新型インフルエンザウイルスH1亜型の両者に対して反応するが、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性よりも、新型インフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性が弱い第二の抗体と、膜担体とを少なくとも備え、前記第一の抗体は予め膜担体の所定位置に固定されて第一の捕捉部位を形成し、前記第二の抗体は適当な標識物質で標識され、かつ、前記第一の捕捉部位から離隔した位置から該第一の捕捉部位に向けて前記膜担体にてクロマト展開可能なように用意されてなるヒトインフルエンザウイルス新型ヒトインフルエンザウイルスH1亜型検出用イムノクロマトグラフィー測定装置が提供される。
【0025】
本発明で使用する上記第一及び第二の抗体は、それぞれ、インフルエンザウイルスに対する抗体であればよいが、通常、インフルエンザウイルスの核タンパクに対する抗体として得られる。上記第一及び第二の抗体は、それぞれ、ポリクローナル抗体であっても、モノクローナル抗体であってもよいが、反応特異性の観点から、モノクローナル抗体であることが好ましい。
上記第一の抗体としては、通常、A型インフルエンザウイルスの核タンパクに対する公知のモノクローナル抗体であって、実質的に全てのヒトA型インフルエンザウイルス亜型に対して反応するものを用いることができ、上記第二の抗体よりも新型インフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性が高いものが用いられる。
上記第二の抗体は、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型及び新型インフルエンザウイルスH1亜型の両者に対して反応するが、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性よりも、新型インフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性が弱いものであり、具体的には、新型インフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性は、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性の4分の1以下のものである。上記第二の抗体としては、本発明において今般見出された上記モノクローナル抗体を使用することが好ましい。
【0026】
上記ポリクローナル抗体は、第一の抗体の場合、例えば、配列番号6に記載されるアミノ酸配列をコードするDNA配列のうち、エピトープを構成するアミノ酸残基を含む部分に対応するDNA断片をクローニングし、当該クローン化遺伝子を大腸菌などの宿主で遺伝子工学的に発現させて発現蛋白を抽出および精製し、この精製蛋白を抗原として常法に従って動物を免疫し、その抗血清から取得することができる。第二の抗体の場合、例えば、配列番号6に記載されるアミノ酸配列をコードするDNA配列のうち、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型のエピトープのうち新型インフルエンザウイルスH1亜型で変異しているエピトープを構成するアミノ酸残基を含む部分に対応するDNA断片をクローニングし、当該クローン化遺伝子を大腸菌などの宿主で遺伝子工学的に発現させて発現蛋白を抽出および精製し、この精製蛋白を抗原として常法に従って動物を免疫し、その抗血清から取得することができる。
モノクローナル抗体は、第一及び第二の抗体の場合、例えば、上記と同様に得られた精製蛋白を抗原としてマウスのような動物を免疫したのち、この免疫された動物の脾臓細胞とミエローマ細胞とを細胞融合して得られた融合細胞をHAT含有培地でセレクトした後に増殖せしめ、増殖せしめた株を前記のようにして得られた精製蛋白を使用して、たとえば、酵素標識免疫法などにより選別することで、取得することができる。
【0027】
上記第二の抗体として使用されるモノクローナル抗体は、当初、ヒトインフルエンザウイルスH1亜型に対して反応するモノクローナル抗体としてスクリーニングされ、その後、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型及び新型インフルエンザウイルスH1亜型の両者に対して反応するが、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性よりも、新型インフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性が弱いものとして見いだされたものであり、とりわけ、新型インフルエンザウイルスH1亜型において変異して消失しているエピトープ、とりわけ、A型インフルエンザウイルスの核タンパクのエピトープを認識するものである。かかるA型インフルエンザウイルスのエピトープは新型インフルエンザウイルスH1亜型においては、アミノ酸配列が置換されているか、または、異なる糖鎖修飾が生じたことにより変異しているため、上記第二の抗体によって特異的に認識されにくくなっていると考えられる。このようなモノクローナル抗体は従来知られておらず、新規である。
また、第二の抗体として使用される上記モノクローナル抗体は、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型の核タンパク質及び新型インフルエンザウイルスH1亜型の核タンパク質の両者に対して反応するが、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型の核タンパク質に対する反応性よりも、新型インフルエンザウイルスH1亜型の核タンパク質に対する反応性が弱い性質を有しているものであり、具体的には、新型インフルエンザウイルスH1亜型の核タンパク質に対する反応性は、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型の核タンパク質に対する反応性の4分の1以下のものが挙げられる。
【0028】
本発明において、イムノクロマトグラフィー測定法などのサンドイッチ式免疫測定法で使用する第三の抗体は、第一の抗体が反応する抗原に対して反応する抗体であればよく、第一の抗体と同一の抗体あってもよく、第一の抗体以外の抗体であってもよい。例えば、該抗原が第一の抗体に対するエピトープを複数備える場合は、第三の抗体として第一の抗体と同一の抗体を使用できる。したがって、第三の抗体は、実質的に全てのヒトA型インフルエンザウイルス亜型に対して反応する抗体であってよい。また、第三の抗体は、モノクローナル抗体でもポリクローナル抗体でもよいが、反応特異性の点から、モノクローナル抗体、特にインフルエンザウイルスの核タンパクに対するモノクローナル抗体であることが好ましい。
【0029】
本発明において、イムノクロマトグラフィー測定法などのサンドイッチ式免疫測定法で使用する第四の抗体は、第二の抗体が反応する抗原に対して反応する抗体であればよく、第二の抗体と同一の抗体あってもよく、第二の抗体以外の抗体であってもよい。例えば、該抗原が第二の抗体に対するエピトープを複数備える場合は、第四の抗体として第二の抗体と同一の抗体を使用できる。したがって、第四の抗体は、実質的に全てのヒトA型インフルエンザウイルス亜型に対して反応する抗体であってよく、または、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型及び新型インフルエンザウイルスH1亜型の両者に対して反応するが、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性よりも、新型インフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性が弱い抗体であってよい。また、第四の抗体は、モノクローナル抗体でもポリクローナル抗体でもよいが、反応特異性の点から、モノクローナル抗体、特にインフルエンザウイルスの核タンパクに対するモノクローナル抗体であることが好ましい。第四の抗体が実質的に全てのヒトA型インフルエンザウイルス亜型に対して反応する抗体である場合、第四の抗体は第三の抗体と同じ抗体であってもよい。
【0030】
本明細書において、「ヒトインフルエンザウイルス」とは、ヒト・ヒト間感染が起こっているインフルエンザウイルス、豚や鳥などの動物由来のインフルエンザウイルスがヒトに感染し、ヒトから分離されたインフルエンザウイルスをいう。
【0031】
現在のところ、A型インフルエンザウイルス亜型としてH(ヘマグルチニン)蛋白については16種類、N(ノイラミダーゼ)蛋白については9種の亜型が知られており、理論上は16×9=144種の亜型が考えられる。このうち、ヒト・ヒト間及びヒト・動物間での感染が確認されているA型インフルエンザウイルス亜型、すなわち、A型の「ヒトインフルエンザウイルス亜型」は、H1亜型、H2亜型、H3亜型、H5亜型、H7亜型及びH9亜型である。なお、このうち、ヒトに感染するのは大部分H1亜型およびH3亜型の2種類である。
【0032】
したがって、本明細書において、「実質的に全てのヒトA型インフルエンザウイルス亜型に対して反応する抗体」とは、H1亜型、H2亜型、H3亜型、H5亜型、H7亜型及びH9亜型に対して反応する抗体である。しかしながら、「実質的に全てのヒトA型インフルエンザウイルス亜型に対して反応する抗体」は、ヒトインフルエンザウイルス亜型だけでなく、他の動物のA型インフルエンザウイルス亜型に対して反応してもよく、H1〜15亜型の代表例全てに対して反応することが好ましい。該代表例としては、A/Puerto Rico/8/34 (H1N1)、A/Hokkaido/11/02 (H1N1)、A/Singapore/1/57 (H2N2)、A/Aichi/2/68 (H3N2)、A/Hokkaido/1/03 (H3N2)、A/duck/Czech/56 (H4N6)、A/duck/Pennsylvania/1028/83 (H5N2)、A/Hong Kong/156/97 (H5N1)、A/Hong Kong/483/97 (H5N1)、A/turey/Massachusetts/3740/65 (H6N2)、A/seal/Massachusetts/1/80 (H7N7)、A/turey/Ontario/67 (H8N4)、A/turey/Wisconsin/66 (H9N2)、A/chicken/Germany/N/49 (H10N7)、A/duck/England/56 (H11N6)、A/duck/Alberta/60/76 (H12N5)、A/gull/Maryland/704/77 (H13N6)、A/mallard/Astrakhan/263/82 (H14N5)、A/duck/Australia/341/83 (H15N8)の19種類が挙げられる。
【0033】
また、A型インフルエンザウイルスの核タンパクに対する抗体は、B型及びC型インフルエンザウイルスの何れの核タンパクとも交差反応性を示さないものであり、同様に、本発明の第一及び第二の抗体も、B型及びC型インフルエンザウイルスの何れの核タンパクとも交差反応性を示さないものである。
【0034】
また、本明細書において、「抗体との反応が陽性」とは、抗原が抗体と抗原抗体反応することを意味し、「抗体との反応が陰性」とは、抗原が抗体と抗原抗体反応しないことを意味し、その使用状態、例えば、膜担体などに固定した時に抗原抗体反応を示さない場合も包含する。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型及び新型インフルエンザウイルスH1亜型の両者に対して反応するが、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性よりも、新型インフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性が弱い抗体を用いて免疫学的測定を行うことにより、新型インフルエンザウイルスH1亜型の感染を特定することができ、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型と新型インフルエンザウイルスH1亜型感染の鑑別診断を実質的に行うことができる。
【0036】
かくして、本発明によれば、実質的に全てのヒトA型インフルエンザウイルス亜型に対して反応する抗体を第一の抗体として用い、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型及び新型インフルエンザウイルスH1亜型の両者に対して反応するが、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性よりも、新型インフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性が弱い抗体を第二の抗体として用いることによって、第一の抗体との反応及び第二の抗体との反応が何れも陽性であるが、第二の抗体に対する反応性が第一の抗体に対する反応性よりも弱い抗原を免疫測定法によって検出すること可能となる。この検出法は、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型と新型インフルエンザウイルスH1亜型感染を簡便に鑑別検出するために使用できる。
【0037】
また、本発明のイムノクロマトグラフィー測定法およびイムノクロマトグラフィー測定装置によれば、特殊な機器及び熟練した技術を必要とすることなく、病院等において簡便かつ迅速に季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型と新型インフルエンザウイルスH1亜型感染を簡便に鑑別検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】aは1本のイムノクロマト法テストストリップから構成された本発明のイムノクロマトグラフィー測定装置の具体例を示す平面図、bはaで示された装置の縦断面図。
【図2】2本のイムノクロマト法テストストリップから構成された本発明のイムノクロマトグラフィー測定装置の具体例を示す平面図。
【図3】2本のイムノクロマト法テストストリップから構成された本発明のイムノクロマトグラフィー測定装置の他の具体例を示す平面図。
【図4】aは2本のイムノクロマト法テストストリップから構成された本発明のイムノクロマトグラフィー測定装置の更に別の具体例を示す平面図、bはaで示された装置の縦断面図。
【図5】実施例7で得られた第一の捕捉部位の測定値と第二の捕捉部位の測定値との相関図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明のイムノクロマトグラフィー測定法を実施するために使用できる測定装置は、公知のイムノクロマト法テストストリップの構成に準拠して容易に実施できる。以下、その具体例を図面に基づいて説明する。
【0040】
(1)単一のイムノクロマト法テストストリップを用いる実施形態
イムノクロマト法テストストリップの具体例としては、例えば図1に示されるテストストリップ10が挙げられる。図1において、数字1は粘着シート、2は含浸部材、3は膜担体、4は捕捉部位、5は吸収用部材、6は試料添加用部材を示している。
図示の例では、膜担体3は、幅5mm、長さ36mmの細長い帯状のニトロセルロース製メンブレンフィルターからなり、同幅の粘着シート1の中程に貼り付けられている。膜担体3には、そのクロマト展開始点側、すなわち図1の左側(以下「上流側」と記す。なお、その逆の側、すなわち図1におけるクロマト展開方向側すなわち右側は以下「下流側」と記す。)の末端から下流側に7.5mmの位置に第一の抗体が固定され、第三の抗体とA型インフルエンザウイルスの核タンパク等のウイルス抗原との複合体を捕捉するための第一の捕捉部位41aが形成されている。さらに、膜担体3の上流側の末端から下流側に10.5mmの位置に第二の抗体が固定され、第四の抗体(図1の装置では、後述のとおり、第三の抗体と同一であってもよい)とA型インフルエンザウイルスの核タンパク等のウイルス抗原との複合体を捕捉するための第二の捕捉部位41bが形成されている。さらに、膜担体3の上流側の末端から下流側に15.0mmの位置に所謂コントロールライン42が設けられている。このコントロールライン42は、分析対象物質の存否に係わらず反応が行われたことを確認するためのものであり、通常、前記第三及び/又は第四の抗体と免疫学的に特異的に結合する物質(分析対象物質を除く)を膜担体3に固定化することによって形成することができる。例えば、第三及び/又は第四の抗体としてマウス抗体を用いた場合は、該マウス抗体に対する抗体を用いることができる。
【0041】
図1の装置では、膜担体3は、ニトロセルロース製メンブレンフィルターを用いているが、被験試料に含まれる分析対象物質をクロマト展開可能で、かつ、捕捉部位4を形成する抗体を固定可能なものであれば、いかなるものであってもよく、他のセルロース類膜、ナイロン膜、ガラス繊維膜なども使用できる。
図1の装置において、第一の抗体としては、実質的に全てのヒトA型インフルエンザウイルス亜型の核タンパクに対して反応するモノクローナル抗体を用いることが好ましく、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型と新型インフルエンザウイルスH1亜型に対して同等の反応性を示すものがより好ましい。
【0042】
本発明において、第三の抗体は、第一の抗体が反応する抗原に反応する抗体であり、実質的に全てのヒトA型インフルエンザウイルス亜型の核タンパクに対して反応する抗体であることが好ましく、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型と新型インフルエンザウイルスH1亜型に対して同等の反応性を示すものがより好ましい。多くの場合、第一の抗体と同一の抗体を用いることができる。また、第四の抗体は、第二の抗体が反応する抗原に反応する抗体であり、例えば、実質的に全てのヒトA型インフルエンザウイルス亜型の核タンパクに対して反応するモノクローナル抗体、及び、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型及び新型インフルエンザウイルスH1亜型の両者に対して反応するが、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性よりも、新型インフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性が弱いモノクローナル抗体を用いることができる。すなわち、第四の抗体は、第一の抗体と同一の抗体であってもよく、また、第二の抗体と同一の抗体であってもよく、また、第三の抗体と同一の抗体であってもよい。図1の装置では、第三及び第四の抗体としては、実質的に全てのヒトA型インフルエンザウイルス亜型に対して反応する互いに同一または異なる抗体が用いられ、多くの場合、第三及び第四の抗体として第一の抗体と同一のモノクローナル抗体を使用することができる。
【0043】
第三及び第四の抗体は、イムノクロマト法テストストリップ10とは別体の適当な容器内で、被験試料及び展開溶媒と混合して混合液とした後、この混合液を図示のイムノクロマト法テストストリップ10の試料添加用部材6に注入して膜担体3をクロマト展開させてもよい。しかし、被験試料と展開溶媒とを混合して調製した混合液を試料添加用部材6に注入した時、第三及び第四の抗体が、該混合液と混合して膜担体3へクロマト展開されるように、イムノクロマト法テストストリップ10と一体化して配置しておくことが好ましい。このために、図1の装置では、第三及び第四の抗体は、適当な標識物質で予め標識された状態で、膜担体3の上流側の端部に連接した含浸部材2に含浸させてイムノクロマト法テストストリップ10の一部を構成している。なお、本明細書において、標識された状態の第三の抗体及び/又は第四の抗体を標識抗体と称することがある。
図示の例では、含浸部材2として、5mm×15mmの帯状のガラス繊維不織布を用いているが、これに限定されるものではなく、例えば、セルロース類布(濾紙、ニトロセルロース膜等)、ポリエチレン、ポリプロピレン等の多孔質プラスチック布類なども使用できる。
【0044】
第三及び第四の抗体の標識物質としては、使用可能なものであればいかなる物質であってもよく、呈色標識物質、酵素標識物質、放射線標識物質などが挙げられる。
このうち、捕捉部位4での色の変化を肉眼で観察することにより迅速かつ簡便に判定できる点から、呈色標識物質を用いることが好ましい。
呈色標識物質としては、金コロイド、白金コロイド等の金属コロイドの他、赤色および青色などのそれぞれの顔料で着色されたポリスチレンラテックスなどの合成ラテックスや、天然ゴムラテックスなどのラテックスが挙げられ、このうち、金コロイドなどの金属コロイドが特に好ましい。
含浸部材2は、標識抗体の懸濁液を前記ガラス繊維不織布等の部材に含浸せしめ、これを乾燥させることなどによって作製できる。
【0045】
イムノクロマト法テストストリップ10は、図1に示されるように、膜担体3を粘着シート1の中程に貼着し、該膜担体3の上流側の末端の上に、含浸部材2の下流側の末端を重ね合わせて連接するとともに、この含浸部材2の上流側部分を粘着シート1に貼着して作成できる。
さらに、図1の装置では、含浸部材2の上面に試料添加用部材6の下流側部分を載置するとともに、該試料添加用部材6の上流側部分を粘着シート1に貼着しており、また、膜担体3の下流側部分の上面に吸収用部材5の上流側部分を載置するとともに、該吸収用部材5の下流側部分を粘着シート1に貼着せしめてイムノクロマト法テストストリップ10を構成している。
【0046】
試料添加用部材6としては、例えば、多孔質ポリエチレンおよび多孔質ポリプロピレンなどのような多孔質合成樹脂のシートまたはフィルム、ならびに、濾紙および綿布などのようなセルロース製の紙または織布もしくは不織布を用いることができる。
吸収用部材5は、液体をすみやかに吸収、保持できる材質のものであればよく、綿布、濾紙、およびポリエチレン、ポリプロピレン等からなる多孔質プラスチック不織布等を挙げることができるが、特に濾紙が最適である。
【0047】
図1のイムノクロマト法テストストリップ10は、そのまま、ディップスティック形式の測定装置として用いることもでき、別法としては、適当なプラスチックシートで裏打ち又はサンドイッチしたディップスティック形式の測定装置として提供してもよい。好ましくは、図1のイムノクロマト法テストストリップ10は、試料添加用部材6と捕捉部位4の上方にそれぞれ被験試料注入部と判定部が開口された適当なプラスチック製ケース内に収容された測定装置として提供される。上述のとおり、本発明において、第三及び第四の抗体は、イムノクロマト法テストストリップ10とは別体の適当な容器内で、被験試料及び展開溶媒と混合して混合液とした後、この混合液をイムノクロマト法テストストリップ10の試料添加用部材6に注入して膜担体3をクロマト展開させてもよいので、イムノクロマト法テストストリップ10をケース内に収容させた場合、第三及び第四の抗体は、含浸部材2に含浸させてケース内に収容してもよいし、また、該ケースとは別体の適当な容器内に収容してケース外に収容しておいてもよい。
【0048】
かくして、A型インフルエンザウイルス感染が疑われる患者の生体試料などからなる被験試料を必要に応じて適当な展開溶媒と混合してクロマト展開可能な混合液を得た後、当該混合液を図1に示されるイムノクロマト法テストストリップ10の試料添加用部材6上に注入すると、該混合液は、該試料添加用部材6を通過して含浸部材2において、標識抗体と混合する。
その際、該混合液中に新型インフルエンザウイルスH1亜型が存在すれば、抗原抗体反応により該新型H1亜型ウイルスのウイルス抗原と標識抗体との複合体が形成される。
この複合体は、膜担体3中をクロマト展開されて捕捉部位4に到達し、第一の捕捉部位41aに固定された第一の抗体と抗原抗体反応して捕捉され陽性の結果を呈するが、第二の捕捉部位41bに固定された第二の抗体とは弱い反応性を示し、弱陽性の結果を呈する。これに対し、該混合液中に季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型が存在すれば、第一の捕捉部位41a及び第二の捕捉部位41bの両方において陽性の結果が示される。したがって、第一及び第二の捕捉部位の結果を総合することで、新型H1亜型ウイルスの感染か、季節性H1亜型ウイルスを含めたその他のA型インフルエンザウイルスの感染かを鑑別判定できる。
【0049】
陽性か陰性かの判定は、標識物質として金コロイドなどの呈色標識物質が使用されていれば、当該呈色標識物質の集積により第一及び第二の捕捉部位41a,41bが発色するので、直ちに、判定することができる。
本発明の装置では、第一の捕捉部位41aに固定される第一の抗体の量と第二の捕捉部位41bに固定される第二の抗体の量は、同じ濃度の季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型を試験に供した時、第一の捕捉部位41aと第二の捕捉部位41bとで同等の検出感度が得られるように設定することが好ましい。このように第一及び第二の抗体の量を設定することで、新型インフルエンザウイルスH1亜型が存在する場合に第二の捕捉部位41bでの弱陽性反応を容易に検出できるようになる。別法としては、第二の捕捉部位41bでの陽性反応と弱陽性反応とを示す色見本を添付して、使用者が色見本を参照して陽性反応と弱陽性反応の何れかを判定できるようにしてもよい。さらに別法としては、イムノクロマトリーダーで呈色度合を測定して、陽性反応と弱陽性反応の何れかを判定できるようにしてもよい。
図1の装置においては、第二の捕捉部位41bが第一の捕捉部位41aの下流側にあるので、第二の捕捉部位41bの検出感度が落ちる傾向があるので、第二の捕捉部位41bに固定する抗体の量を第一の捕捉部位41aに固定する抗体の量よりも多くするなどの方法で、感度調整することが好ましい。
【0050】
被験試料としては、特に制限はないが、例えば、鼻腔吸引液、鼻腔ぬぐい液、咽頭ぬぐい液、気管ぬぐい液、唾液、喀痰、血液(全血でも、血清でも、血漿でもよい)等が挙げられる。被験試料は、展開溶媒や生理食塩水などの適当な希釈液で希釈して膜担体に注入してもよい。
なお、全血を被験試料として用いるときで、特に標識抗体の標識物質として金コロイドなどの呈色標識物質が用いられる場合、前記試料添加用部材に血球捕捉膜部材を配置しておくことが好ましい。血球捕捉膜部材は、前記含浸部材と前記試料添加用部材との間に積層することが好ましい。これにより、赤血球が膜担体に展開されるのが阻止されるので、膜担体の捕捉部位における呈色標識の集積の確認が容易になる。血球捕捉膜部材としては、カルボキシメチルセルロース膜が用いられ、具体的には、アドバンテック東洋株式会社から販売されているイオン交換濾紙CM(商品名)や、ワットマンジャパン株式会社から販売されているイオン交換セルロースペーパーなどを用いることができる。
【0051】
(2)2つのイムノクロマト法テストストリップを用いる実施形態
図2の装置は、2本のイムノクロマト法テストストリップ10及び20からなるイムノクロマトグラフィー測定装置である。各イムノクロマト法テストストリップ10及び20は、捕捉部位4及び標識抗体の構成を除いて図1のイムノクロマト法テストストリップ10の構成と同様である。図2のイムノクロマト法テストストリップ10は、膜担体3の上流側の末端から7.5mmの位置に第一の抗体が固定され、第三の抗体と分析対象物質との複合体を捕捉するための第一の捕捉部位41aが形成されている点は図1と同様であるが、膜担体3の上流側の末端から10.5mmの位置に抗B型インフルエンザウイルス抗体が固定され、B型インフルエンザウイルスを検出する捕捉部位41bが設けられている点で図1と異なる。そして、イムノクロマト法テストストリップ10の含浸部材2には、標識された第三の抗体及び標識された抗B型インフルエンザウイルス抗体が、標識抗体として含浸されている。ここで、第三の抗体としては、多くの場合、第一の抗体と同様の抗体が使用できる。抗B型インフルエンザウイルス抗体としては、公知のイムノクロマトグラフィー測定装置に使用されている抗体が使用できる。
図2のイムノクロマト法テストストリップ20は、膜担体3の上流側の末端から9.0mmの位置に第二の抗体が固定され、第四の抗体と分析対象物質との複合体を捕捉するための第二の捕捉部位41cが形成されている点で図1のイムノクロマト法テストストリップ10と異なる。そして、イムノクロマト法テストストリップ20の含浸部材2には、標識された第四の抗体が、標識抗体として含浸されている。ここで、第四の抗体としては、第二の抗体と同様の抗体が使用されているが、第一の抗体と同様の抗体を使用してもよい。
【0052】
かくして、図1を参照して上記したと同様の方法で被験試料を含む混合液を得た後、当該混合液を図2に示されるイムノクロマト法テストストリップ10及び20のそれぞれの試料添加用部材6上に注入すると、該混合液は、該試料添加用部材6を通過して含浸部材2において、標識抗体と混合する。
その際、該混合液中に新型インフルエンザウイルスH1亜型が存在すれば、イムノクロマト法テストストリップ10においては、抗原抗体反応により該新型H1亜型ウイルス抗原と第三の抗体との複合体が形成される。この複合体は、膜担体3中をクロマト展開されて捕捉部位4に到達し、第一の捕捉部位41aに固定された第一の抗体と抗原抗体反応して捕捉され陽性の結果を呈するが、捕捉部位41bに固定された抗B型インフルエンザウイルス抗体には捕捉されず陰性の結果を呈する。イムノクロマト法テストストリップ20においては、該新型H1亜型ウイルス抗原と第四の抗体との複合体は弱く形成され、両者はそれぞれ単独に膜担体3中をクロマト展開されて第二の捕捉部位41cに到達し、そこに固定された第二の抗体と抗原抗体反応して捕捉され弱陽性の結果を呈する。
【0053】
これに対し、該混合液中に季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型が存在すれば、イムノクロマト法テストストリップ10においては、抗原抗体反応によりそのウイルス抗原と第三の抗体との複合体が形成される。この複合体は、膜担体3中をクロマト展開されて捕捉部位4に到達し、第一の捕捉部位41aに固定された第一の抗体と抗原抗体反応して捕捉され陽性の結果を呈するが、捕捉部位41bに固定された抗B型インフルエンザウイルス抗体には捕捉されず陰性の結果を呈する。イムノクロマト法テストストリップ20においても、該ウイルス抗原と第四の抗体との複合体が形成され、膜担体3中をクロマト展開されて第二の捕捉部位41cに到達し、そこに固定された第二の抗体と抗原抗体反応して捕捉され陽性の結果を呈する。
【0054】
また、該混合液中にB型インフルエンザウイルスが存在すれば、イムノクロマト法テストストリップ10においては、抗原抗体反応によりそのウイルス抗原と抗B型インフルエンザウイルス抗体との複合体が形成される。この複合体は、膜担体3中をクロマト展開されて捕捉部位4に到達し、捕捉部位41bに固定された抗B型インフルエンザウイルス抗体と抗原抗体反応して捕捉され陽性の結果を呈するが、第一の捕捉部位41aに固定された第一の抗体には捕捉されず陰性の結果を呈する。イムノクロマト法テストストリップ20においては、該ウイルス抗原と第四の抗体との複合体が形成されず、両者はそれぞれ単独に膜担体3中をクロマト展開されて第二の捕捉部位41cに到達するが、そこに固定された第二の抗体に捕捉されず陰性の結果を呈する。
したがって、第一の捕捉部位41a、第二の捕捉部位41c及び捕捉部位41bにおける結果をもって、新型H1亜型ウイルスの感染か、季節性H1亜型を含めその他のA型インフルエンザウイルスの感染か、B型インフルエンザウイルスの感染かを鑑別判定できる。
【0055】
図2の装置は、2つのイムノクロマト法テストストリップ10及び20を少なくとも備えていればよく、2つのストリップが1つのケースに収容されたものであっても、各ストリップが数本ずつ各ケースに収容され、使用時に1つずつ取り出して使用するような形態のものであってもよい。前者の場合、1つのケース中に、イムノクロマト法テストストリップ10及び20の両膜担体の含浸部材を互いに所定の間隔をおいて離隔させ、両膜担体を相互に並行して配置させた一体製品としてもよい。
なお、図2のイムノクロマト法テストストリップ10としては、キャピリア(登録商標)FluA+B(株式会社タウンズ製)などの市販のA型及びB型インフルエンザ鑑別測定用のイムノクロマト法テストストリップまたはキットをそのまま用いることもできる。したがって、かかる市販のテストストリップまたはキットと併用して本発明の検出法又は測定法を実施できるように、図2のイムノクロマト法テストストリップ20のみを単品で供給することもできる。
【0056】
図3の装置は、イムノクロマト法テストストリップ10及び20が共通する単一の含浸部材2及び試料添加用部材6を備える以外、図2の構成と同様の構成を備えている。すなわち、イムノクロマト法テストストリップ10及び20の両膜担体3は、互いに隣接してほぼ平行に配置され、上流側の末端に幅広の(幅約12mm)の単一の含浸部材2が両膜単体3にまたがって連接されている。この含浸部材2には、第三の抗体と第四の抗体と抗B型インフルエンザウイルス抗体とが上記と同様にクロマト展開可能なように配置されるが、この態様では、図1の装置と同様に、第三の抗体及び第四の抗体の何れも実質的に全てのヒトA型インフルエンザウイルス亜型に対して反応する抗体を使用することが好ましく、好都合には、何れも第一の抗体と同じ抗体とすることができる。
【0057】
かくして、図2を参照して上記したと同様の方法で被験試料を含む混合液を得た後、当該混合液を図3に示されるイムノクロマト法テストストリップ10及び20に共通の試料添加用部材6上に注入すると、該混合液は、該試料添加用部材6を通過して含浸部材2において、標識抗体と混合する。
その際、該混合液中に新型インフルエンザウイルスH1亜型が存在すれば、イムノクロマト法テストストリップ10においては、図2と同様に第一の捕捉部位41aにおいて陽性の結果を呈し、捕捉部位41bでは陰性の結果を呈する。イムノクロマト法テストストリップ20においては、該新型H1亜型ウイルス抗原と標識抗体との複合体形成が弱いため、第二の捕捉部位41cに固定された第二の抗体に捕捉されるが弱陽性の結果を呈する。
該混合液中に季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型が存在すれば、図2と同様に、イムノクロマト法テストストリップ10においては、第一の捕捉部位41で陽性の結果を呈するが、捕捉部位41bでは陰性の結果を呈する。イムノクロマト法テストストリップ20においては、該ウイルス抗原と標識抗体との複合体が形成され、膜担体3中をクロマト展開されて第二の捕捉部位41cに到達し、そこに固定された第二の抗体に捕捉され、陽性の結果を呈する。
【0058】
また、該混合液中にB型インフルエンザウイルスが存在すれば、図2と同様に、イムノクロマト法テストストリップ10においては、捕捉部位41bで陽性の結果を呈するが、第一の捕捉部位41aで陰性の結果を呈する。イムノクロマト法テストストリップ20においては、図2と同様に、第二の捕捉部位41cにおいて陰性の結果を呈する。
したがって、前記第一の捕捉部位41a、第二の捕捉部位41c及び捕捉部位41bにおける結果をもって、新型H1亜型ウイルスの感染か、季節性H1亜型ウイルスを含めたその他のA型インフルエンザウイルスの感染か、B型インフルエンザウイルスの感染かを鑑別判定できる。
図3の装置は、適当なケースに収容した形態のものであってもよい。
【0059】
図4の装置は、イムノクロマト法テストストリップ10及び20が共通する単一の粘着テープ1及び単一の試料添加用部材6を備える以外、図2の構成と同様の構成を備えている。すなわち、イムノクロマト法テストストリップ10及び20の両膜担体3は、相互に反対向きにほぼ一直線状に配置されている。具体的には、イムノクロマト法テストストリップ10及び20は、両者の含浸部材2の上流側端部が適当な間隔をおいて相互に対向するようにすなわち反対方向に一直線上に配置されており、単一の試料添加用部材6が両含浸部材2の間にまたがって連接するように配置されている。別法として、イムノクロマト法テストストリップ10及び20の両膜担体が互いに角度を為して延在するように、放射方向に配置してもよい。
【0060】
かくして、図2を参照して上記したと同様の方法で被験試料を含む混合液を得た後、当該混合液を図4に示されるイムノクロマト法テストストリップ10及び20に共通の試料添加用部材6上に注入すると、該混合液は、該試料添加用部材6を通過して両テストストリップ10及び20の含浸部材2において、標識抗体と混合する。そして、図2と同様に、前記第一の捕捉部位41a、第二の捕捉部位41c及び捕捉部位41bにおける結果をもって、新型H1亜型ウイルスの感染か、季節性H1亜型ウイルスを含めたその他のA型インフルエンザウイルスの感染か、B型インフルエンザウイルスの感染かを鑑別判定できる。
【0061】
図4の装置は、適当なケースに収容した形態のものであってもよい。
図4の装置の変形として、粘着シート1及び試料添加用部材6の他に、含浸部材2をテストストリップ10及び20に共通のものとしてもよい。この場合、図3の態様に準じて第三及び第四の抗体を構成して実施することができる。
図4の装置は、上記被験試料を含む混合液がテストストリップ10及び20に均等に浸透するので、図1の装置のように第一及び第二の捕捉部位41a,41bの感度調整をする必要がない点で好都合である。
【0062】
(3)第二の抗体を標識抗体として用いる実施形態
図2の装置は、第二の抗体を標識抗体として用いた本発明の態様を実施するための装置に改変することができる。かかる装置は、図2の装置において、イムノクロマト法テストストリップ20の第二の捕捉部位41cに第二の抗体の代わりに第一の抗体を固定し、該ストリップ20の含浸部材2に含浸させておく標識抗体として第四の抗体の代わりに第二の抗体を使用することによって構成できる。かかる装置において、イムノクロマト法テストストリップ10の構成は図2のものと全く同じである。
かくして、図2を参照して上記したと同様の方法で被験試料を含む混合液を得た後、当該混合液を上記改変した図2の装置のイムノクロマト法テストストリップ10及び20のそれぞれの試料添加用部材6上に注入すると、該混合液は、該試料添加用部材6を通過して含浸部材2において、標識抗体と混合する。
【0063】
その際、該混合液中に新型インフルエンザウイルスH1亜型が存在すれば、イムノクロマト法テストストリップ10においては、図2と同様に第一の捕捉部位41aにおいて陽性の結果を呈し、捕捉部位41bでは陰性の結果を呈する。イムノクロマト法テストストリップ20においては、該新型H1亜型ウイルス抗原と標識抗体との複合体形成が弱く、両者はそれぞれ単独に膜担体3中をクロマト展開されて第二の捕捉部位41cに到達し、新型H1亜型ウイルス抗原は第二の捕捉部位41cに固定された第一の抗体に捕捉されるが、標識抗体との反応性が弱いため、弱陽性の結果を呈する。
該混合液中に季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型が存在すれば、図2と同様に、イムノクロマト法テストストリップ10においては、第一の捕捉部位41で陽性の結果を呈するが、捕捉部位41bでは陰性の結果を呈する。イムノクロマト法テストストリップ20においては、該ウイルス抗原と標識抗体との複合体が形成され、膜担体3中をクロマト展開されて捕捉部位41に到達し、第二の捕捉部位41cにて第一の抗体に捕捉され、陽性の結果を呈する。
【0064】
また、該混合液中にB型インフルエンザウイルスが存在すれば、図2と同様に、イムノクロマト法テストストリップ10においては、捕捉部位41bで陽性の結果を呈するが、第一の捕捉部位41aでは陰性の結果を呈する。イムノクロマト法テストストリップ20においては、第二の捕捉部位41cにおいて陰性の結果を呈する。
したがって、前記第一の捕捉部位41a、第二の捕捉部位41c及び捕捉部位41bにおける結果をもって、新型H1亜型ウイルスの感染か、季節性H1亜型ウイルスを含めたその他のA型インフルエンザウイルスの感染か、B型インフルエンザウイルスの感染かを鑑別判定できる。
【0065】
図4の装置も、上記と同様の変更を行うことで、第二の抗体を標識抗体として用いた本発明の態様を実施するための装置に改変することができる。すなわち、図4の装置において、イムノクロマト法テストストリップ20の第二の捕捉部位41cに第二の抗体の代わりに第一の抗体を固定し、該ストリップ20の含浸部材2に含浸させておく標識抗体として第四の抗体の代わりに第二の抗体を使用することによって改変することができる。なお、イムノクロマト法テストストリップ10の構成は図4のものと全く同じである。
【0066】
かくして、図2を参照して上記したと同様の方法で被験試料を含む混合液を得た後、当該混合液を上記改変した図4のイムノクロマト法テストストリップ10及び20に共通の試料添加用部材6上に注入すると、該混合液は、該試料添加用部材6を通過して両テストストリップ10及び20の含浸部材2において、標識抗体と混合する。そして、上記改変した図2の装置と同様に、前記第一の捕捉部位41a、第二の捕捉部位41c及び捕捉部位41bにおける結果をもって、新型H1亜型ウイルスの感染か、季節性H1亜型ウイルスを含めたその他のA型インフルエンザウイルスの感染か、B型インフルエンザウイルスの感染かを鑑別判定できる。
【実施例】
【0067】
下記の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0068】
実施例1(A型およびB型インフルエンザウイルスの組換え核タンパク(NP)遺伝子のクローニング)
インフルエンザウイルスA型であるA/Puerto Rico/8/34(H1N1)およびインフルエンザウイルスB型であるB/Lee/40を発育鶏卵に接種し、培養した。数日後に漿尿液を採取しウイルスを得た。このウイルスにRNA抽出試薬(TRIzol Reagent, Invitrogen)を加え、それぞれのウイルスRNAを抽出した。抽出したRNAから逆転写反応を行いNP遺伝子のcDNAを作製した。逆転写反応に用いたプライマーとしてUni 12 Primer : 5’-AGCAAAAGCAGG-3’(配列番号1)を用いた。
【0069】
得られたA/Puerto Rico/8/34およびB/Lee/40のNP遺伝子cDNAよりポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を用いてNP遺伝子を増幅した。プライマーとしてA/Puerto Rico/8/34においては、sense primer: 5’-GGAATTCCATATGGCGTCCCAAGGCACC-3’(配列番号2)およびantisense primer: 5’-CCGCTCGAGTTAATTGTCGTACTCCTCTGC-3’(配列番号3)を用いた。またB/Lee/40においては、sense primer: 5’-CGGGATCCATATGTCCAACATGGATATTG-3’(配列番号4)およびantisense primer: 5’-CCGCTCGAGTTAATAATCGAGGTCATCATA-3’(配列番号5)を用いた。用いたプライマーはベクターpET15bに組み込むためにupper primerとlower primerにそれぞれNde IとXho Iサイトを付加した。
得られたPCR産物の一部をDNA電気泳動で増幅を確認した後、それぞれの増幅産物を制限酵素NdeIおよびXbaIにて切断し、同じ制限酵素で切断したベクターpET15bに挿入した。
【0070】
実施例2(組換え核タンパク(NP蛋白)の発現と精製)
目的遺伝子が挿入された実施例1のベクターpET15bでE.coli BL21CodonPlusを形質転換し、アンピシリン選択培地上で培養し、コロニーを得た。アンピシリン(100μg/ml)とクロラムフェニコール(25μg/ml)を含むL-Broth中にて一晩培養を行った後、アンピシリン(100μg/ml)を含むL-brothに培養液を加えた。37℃にて3時間の培養を行った後、1 M IPTGを最終濃度1 mMになるように添加し組換えNP蛋白の発現を誘導した。IPTGによるタンパク質の発現はSDS-PAGEにて確認した。
遠心分離により回収した菌体を可溶化バッファーに懸濁させた。さらにPMSFおよびリゾチーム処理を行い完全に溶菌させた。得られた溶液の遠心上清から組換えNP蛋白をNi-NTA樹脂を用いたカラムに通し精製した。この精製蛋白をPBSに対して透析し、目的の組換えNP蛋白とした。
【0071】
実施例3(モノクローナル抗体の作製)
実施例2で得られたA型インフルエンザウイルス組換えNP蛋白(FluA NP)およびB型インフルエンザウイルス組換えNP蛋白(FluB NP)を抗原として、FluA NPおよびFluB NPに対するモノクローナル抗体(抗FluA NP抗体および抗FluB NP抗体)を作出した。モノクローナル抗体の作出は常法に従って行った。それぞれ100μgの組換えNP蛋白と等量のAdjuvant Complete Freund(Difco)を混合して、マウス(BALB/c、5週齢、日本SLC)に3回免疫し、その脾臓細胞を細胞融合に用いた。
細胞融合には、マウスの骨髄腫細胞であるSp2/0-Ag14細胞(Shulmanら、1978)を用いた。細胞の培養には、Dulbecco’s Modified Eagle Medium(Gibco)にL-グルタミン0.3mg/ml、ペニシリンGカリウム100単位/ml、硫酸ストレプトマイシン100μg/ml、Gentacin 40μg/mlを添加し(DMEM)、これに牛胎児血清(JRH)を10%となるように加えた培養液を用いた。
【0072】
細胞融合は、免疫マウスの脾臓細胞とSp2/0-Ag14細胞を混合し、そこにPolyethylene glycol solution(Sigma)を添加することにより行った。細胞融合はHAT-DMEM(0.1mM Sodium Hypoxanthine、0.4μM Aminopeterinおよび0.016mM Tymidine(Gibco)を含む血清加DMEM)で培養し、抗FluA NP抗体のスクリーニングには、不活化したInfluenza Virus, Type A (H1N1) および(H3N2)を固相化したプレートを用いた酵素結合抗体法(ELISA)により培養上清中の抗体産生を確認した。また抗FluB NP抗体のスクリーニングには不活化したInfluenza B virusを固相化したプレートを用い、同様の方法にて培養上清中の抗体産生を確認した。
【0073】
抗体産生陽性の細胞をHT-DMEM[0.1mM Sodium Hypoxanthineおよび0.016mM Thymidine(Gibco)を含む血清加DMEM]で培養し、さらに血清加DMEMで培養を続けた。ELISA法により抗体産生能の高い細胞を選択しクローニングした。クローニングした細胞は、2,6,10,14-Tetramethylpentadecane(Sigma)を接種しておいたマウス(BALB/c、リタイア、日本SLC)に腹腔内接種し、腹水を採取した。さらに、常法によりプロテインG吸着体を用いたIgG精製を行い、モノクローナル抗体を得た。作出したモノクローナル抗体のアイソタイプは、Mouse Monoclonal Antibody Isotyping Reagents(Sigma)を用いてELISAで同定した。
【0074】
最終的にFluA NPに対するモノクローナル抗体産生細胞3クローンBLA/4105、BLA/3741及びBLA/NH1が得られた。このうち、抗体産生細胞BLA/NH1は、下記の実施例に示されるように、結果的に、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型の核タンパク質及び新型インフルエンザウイルスH1亜型の核タンパク質の両者に対して反応するが、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型の核タンパク質に対する反応性よりも、新型インフルエンザウイルスH1亜型の核タンパク質に対する反応性が弱い抗体(本発明の第二の抗体)を産生するクローンであった。FluB NPに対するモノクローナル抗体産生細胞が2クローン得られ、以下、BLB/171及びBLB/3105を用いた。
【0075】
実施例4(イムノクロマトグラフィー測定装置の作製)
(1)抗FluA NP抗体、抗FluB NP抗体およびH3N2亜型に対し反応性を示さない抗FluA NP抗体の調製
実施例1で得られた抗FluA NP抗体産生細胞BLA/4105およびBLA/3741のそれぞれを、マウス腹腔に接種し、抗FluA NP抗体を含んだ腹水を得た。また抗FluB NP抗体産生細胞BLB/171およびBLB/3105のそれぞれを、マウス腹腔に接種し、抗FluB NP抗体を含んだ腹水を得た。さらに、抗FluA NP抗体産生細胞BLA/NH1を、マウス腹腔に接種し、抗FluA NP抗体を含んだ腹水を得た。さらに、常法によりプロテインG吸着体を用いたIgG精製を行い、それぞれの抗体を得た。
【0076】
(2)金コロイド溶液の調製
加熱によって沸騰させた超純水99mlに、1%(v/w)塩化金酸水溶液1mlを加え、さらに、その1分後に1%(v/w)クエン酸ナトリウム水溶液1.5mlを加えて加熱し5分間沸騰させた後、室温に放置して冷却した。次いで、この溶液に200mM炭酸カリウム水溶液を加えてpH9.0に調製し、これに超純水を加えて全量を100mlとして金コロイド溶液を得た。
【0077】
(3)金コロイド標識抗体溶液の調製
上記(1)にて得られた抗体産生細胞BLA/4105由来の抗FluA NP抗体(以下、抗FluA NP抗体BLA/4105)、抗体産生細胞BLB/171由来の抗FluB NP抗体(以下、抗FluB NP抗体BLB/171)および抗体産生細胞BLA/NH1由来の抗FluA NP抗体(以下、抗FluA NP抗体BLA/NH1)を下記の手順でそれぞれ金コロイド標識した。
抗FluA NP抗体BLA/4105の蛋白換算重量3μgと上記(2)の金コロイド溶液1mlとを混合し、室温で2分間静置してこの抗体のことごとくを金コロイド粒子表面に結合させた後、金コロイド溶液における最終濃度が1%になるように10%BSA水溶液を加え、この金コロイド粒子の残余の表面をことごとくこのBSAでブロックして、金コロイド標識抗FluA NP抗体BLA/4105溶液を調製した。この溶液を遠心分離(5600XG、30分間)して金コロイド標識抗体を沈殿せしめ、上清液を除いて金コロイド標識抗体を得た。この金コロイド標識抗体を10%サッカロース・1%BSA・0.5%トリトン(Triton)-X100を含有する50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.4)に懸濁して金コロイド標識抗FluA NP抗体BLA/4105溶液を調製した。また抗FluB NP抗体BLB/171の蛋白換算重量1μgを上記方法にて金コロイド粒子表面に結合させ金コロイド標識抗FluB NP抗体BLB/171溶液を調製した。さらに抗FluA NP抗体BLA/NH1の蛋白換算重量1μgを上記方法にて金コロイド粒子表面に結合させ金コロイド標識抗FluA NP抗体BLA/NH1溶液を調製した。
【0078】
(4)イムノクロマトグラフィー測定装置の作製
図2に示されるイムノクロマトグラフィー測定装置を下記の手順で作製した。
(4-1)膜担体の第一の捕捉部位の形成
幅5mm、長さ36mmの細長い帯状のニトロセルロース膜を膜担体3として用意した。
抗FluA NP抗体BLA/3741 1.0mg/mlが含有されてなる溶液0.5μlを、この膜担体3の上流側の末端から5.0mmの位置にライン状に塗布して、これを室温で乾燥させ、A型インフルエンザウイルス抗原と標識抗体との複合体の捕捉部位41a(第一の捕捉部位)を形成した。また、抗FluB NP抗体BLB/3105 1.0mg/mlが含有されてなる溶液0.5μlを、この膜担体3の上流側の末端から8.0mmの位置にライン状に塗布して、これを室温で乾燥し、B型インフルエンザウイルス抗原と標識抗体との複合体の捕捉部位41bを形成した。
【0079】
(4-2)膜担体の第二の捕捉部位の形成
上記(4-1)で用いた膜担体と同様の膜担体3をもう一つ用意した。
抗FluA NP抗体BLA/3741 1.0mg/mlが含有されてなる溶液0.5μlを、この膜担体3の上流側の末端から5.0mmの位置にライン状に塗布して、これを室温で乾燥させ、インフルエンザウイルス抗原と標識抗体との複合体の捕捉部位41c(第二の捕捉部位)を形成した。
【0080】
(4-3)金コロイド標識抗体含浸部材の作製
5mmX15mmの帯状のガラス繊維不織布に、上記(3)で得られた金コロイド標識抗FluA NP抗体BLA/4105溶液および金コロイド標識抗FluB NP抗体BLB/171溶液を混合した溶液37.5μlを含浸せしめ、これを室温で乾燥させて標識抗体含浸部材とした。また別の5mmX15mmの帯状のガラス繊維不織布に、金コロイド標識抗FluA NP抗体BLA/NH1溶液37.5μlを含浸せしめ、これを室温で乾燥させて標識抗体含浸部材とした。前者の標識抗体含浸部材をテストストリップ10の含浸部材3として用い、後者の標識抗体含浸部材をテストストリップ20の含浸部材3として用い、上記(4−1)で得られた膜担体をテストストリップ10の膜担体3として用い、上記(4−2)で得られた膜担体をテストストリップ20の膜担体3として用い、その他、各テストストリップの試料添加用部材6として綿布を、吸収用部材5として濾紙を用いて、図2と同様の配置のイムノクロマトグラフィー測定装置を作製した。
【0081】
参考例(A型インフルエンザウイルス各種亜型との反応性試験)
テストストリップ20を備えない以外、実施例4と同様にして作製したイムノクロマトグラフィー測定装置を使用し、A型インフルエンザウイルスの15種類の亜型に対する反応性試験を実施した。被験試料として、A型インフルエンザウイルスの各種亜型を発育鶏卵にて増殖させて得た漿尿液を、検体希釈液で調製したものを用いた。そして、被験試料100μlを上記のようにして得られたテストストリップの試料添加用部材6にマイクロピペットで滴下してクロマト展開し、室温で15分放置後、第一の捕捉部位41aで捕捉されたウイルス抗原と金コロイド標識抗体との複合体の捕捉量を肉眼で観察した。捕捉量は、その量に比例して増減する赤紫色の呈色度合いを肉眼で、−(着色なし)、±(微弱な着色)、+(明確な着色)、++(より明確な着色)、+++(顕著な着色)の5段階に区分して判定した。
【0082】
なお、A型インフルエンザウイルス亜型として、A/Puerto Rico/8/34 (H1N1)、A/Hokkaido/11/02 (H1N1)、A/Singapore/1/57 (H2N2)、A/Aichi/2/68 (H3N2)、A/Hokkaido/1/03 (H3N2)、A/duck/Czech/56 (H4N6)、A/duck/Pennsylvania/1028/83 (H5N2)、A/Hong Kong/156/97 (H5N1)、A/Hong Kong/483/97 (H5N1)、A/turey/Massachusetts/3740/65 (H6N2)、A/seal/Massachusetts/1/80 (H7N7)、A/turey/Ontario/67 (H8N4)、A/turey/Wisconsin/66 (H9N2)、A/chicken/Germany/N/49 (H10N7)、A/duck/England/56 (H11N6)、A/duck/Alberta/60/76 (H12N5)、A/gull/Maryland/704/77 (H13N6)、A/mallard/Astrakhan/263/82 (H14N5)、A/duck/Australia/341/83 (H15N8)を試験に供した。結果を表1に示す。
【0083】
表1から明らかなように、テストストリップ10の第一の捕捉部位41aにおいては、試験に供したウイルス株全てにおいて明確な着色が確認された。従って、テストストリップ10で使用した抗FluA NP抗体BLA/3741及び抗FluA NP抗体BLA/4105は、全てのヒトA型インフルエンザウイルス亜型に対して反応性を示すだけでなく、H1〜15亜型の代表例全てに対して反応性を示すことがわかった。
【0084】
【表1】

【0085】
実施例5(新型インフルエンザウイルスH1N1亜型との反応性試験)
実施例4にて作製したイムノクロマトグラフィー測定装置を使用し、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1N1株(A/New Caledonia/20/99、New Caledonia株)および新型インフルエンザウイルスH1N1株(A/Osaka/56/09、Osaka-pdm株)に対する反応性試験を実施した。被験試料として、上記インフルエンザウイルス株をそれぞれMDCK細胞にて増殖させて得た培養上清を、検体希釈液で調製したものを用いた。そして、被験試料100μlを実施例4にて得られたテストストリップの試料添加用部材6にマイクロピペットでそれぞれ滴下してクロマト展開し、室温で15分放置後、第一の捕捉部位41aおよび第二の捕捉部位41cで捕捉されたウイルス抗原と金コロイド標識抗体との複合体の捕捉量を肉眼で観察した。捕捉量は、その量に比例して増減する赤紫色の呈色度合いを肉眼で、−(着色なし)、±(微弱な着色)、+(明確な着色)、++(より明確な着色)、+++(顕著な着色)の5段階に区分して判定した。またイムノクロマトリーダーDiaScan10−T(商品名;大塚電子製)を使用し呈色度合いを測定した。結果を表2に示した。
【0086】
【表2】

【0087】
表2の結果より、第二の捕捉部位41cでは、New Caledonia株(H1N1)と比較して、Osaka-pdm株に対する反応性が4分の1であることが確認された。このことから、テストストリップ20の標識抗体として用いた抗FluA NP抗体BLA/NH1は、季節性ヒトインフルエンザウイルスNew Caledonia株(H1N1)および同じH1亜型である新型インフルエンザウイルスOsaka-pdm株(H1N1)の両者に対して反応するとしても、Osaka-pdm株(H1N1)に対しては弱い反応性を有し、新型インフルエンザウイルスH1N1亜型に対し弱い反応性を有することが分かる。この抗FluA NP抗体BLA/NH1は、各種亜型間で高度に保存されたアミノ酸配列を備えると考えられているA型インフルエンザウイルスの核タンパク質に対するモノクローナル抗体であるが、新型インフルエンザウイルスでは変異が起こり、特異的に反応性が低下していることが推測される。これに対し、第一の捕捉部位41aではNew Caledonia株(H1N1)およびOsaka-pdm株(H1N1)に対し同等の反応性が得られた。
【0088】
実施例6(臨床分離株に対する反応性試験)
実施例4にて作製したイムノクロマトグラフィー測定装置を使用し、新型インフルエンザ感染患者より分離された臨床分離株に対する反応性試験を実施した。新型インフルエンザ感染患者より採取され、RT-PCR法により確定された臨床分離株59株を使用した。被験試料として、上記臨床分離株をそれぞれMDCK細胞にて増殖させて得た培養上清を、検体希釈液で調製したものを用いた。そして、被験試料100μlを実施例4にて得られたテストストリップの試料添加用部材6にマイクロピペットでそれぞれ滴下してクロマト展開し、室温で15分放置後、第一の捕捉部位41aおよび第二の捕捉部位41cで捕捉されたウイルス抗原と金コロイド標識抗体との複合体の捕捉量を肉眼で観察した。捕捉量は、その量に比例して増減する赤紫色の呈色度合いを肉眼で、−(着色なし)、±(微弱な着色)、+(明確な着色)、++(より明確な着色)、+++(顕著な着色)の5段階に区分して判定した。代表例に対する反応性結果を表3に示す。また第一の捕捉部位41aおよび第二の捕捉部位41cの呈色度合いをイムノクロマトリーダーDiaScan10−T(商品名;大塚電子製)により測定した。両捕捉部位における測定値の相関性を求めた。結果を図5に示す。
【0089】
【表3】

【0090】
図5の結果より両捕捉部位における測定値の相関を算出した。結果、傾き0.23 の近似式が得られた。第二の捕捉部位41cでは、第一の捕捉部位41aと比較して、新型インフルエンザウイルス(H1N1-pdm)に対する反応性が4分の1であることが確認された。このことから、テストストリップ20の標識抗体として用いた抗FluA NP抗体BLA/NH1は、同じH1亜型であるがOsaka-pdm株(H1N1)に対しては弱い反応性を有し、新型インフルエンザウイルスH1N1亜型に対し弱い反応性を有することが確認された。
【0091】
したがって、本発明に従い、第二の抗体として、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型の核タンパク質及び新型インフルエンザウイルスH1亜型の核タンパク質の両者に対して反応するが、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型の核タンパク質に対する反応性よりも、新型インフルエンザウイルスH1亜型の核タンパク質に対する反応性が弱い抗体を使用することにより、新型インフルエンザウイルスH1亜型感染および季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型感染を鑑別検出することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、実質的に全てのヒトA型インフルエンザウイルス亜型に対して反応する第一の抗体、及び、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型及び新型インフルエンザウイルスH1亜型の両者に対して反応するが、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性よりも、新型インフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性が弱い第二の抗体を用い、第一の抗体との反応及び第二の抗体との反応が何れも陽性であるが、第二の抗体に対する反応性が第一の抗体に対する反応性よりも弱い抗原を免疫測定法によって検出することからなる新型インフルエンザウイルスH1亜型の検出法、特に、サンドイッチ式免疫測定法、イムノクロマトグラフィー測定法および測定装置を提供するものであり、新型インフルエンザウイルスH1亜型に属するウイルスを特異的に簡単な方法で迅速に検出できるので、当該ウイルスに起因するヒトの疾病を迅速かつ簡便に診断し、適切な治療法の選択を可能とする点で有用である。
【符号の説明】
【0093】
1 粘着シート
2 含浸部材
3 膜担体
4 捕捉部位
5 吸収用部材
6 試料添加用部材
10 イムノクロマト法テストストリップ
20 イムノクロマト法テストストリップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型及び新型インフルエンザウイルスH1亜型の両者に対して反応するが、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性よりも、新型インフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性が弱いモノクローナル抗体。
【請求項2】
新型インフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性が、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性の4分の1以下である、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項3】
インフルエンザウイルスの核タンパク質に対して反応する請求項1又は2に記載のモノクローナル抗体。
【請求項4】
実質的に全てのヒトA型インフルエンザウイルス亜型に対して反応する第一の抗体、及び、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型及び新型インフルエンザウイルスH1亜型の両者に対して反応するが、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性よりも、新型インフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性が弱い第二の抗体を用いた免疫測定法からなり、第一の抗体との反応及び第二の抗体との反応が何れも陽性であるが、第二の抗体に対する反応性が第一の抗体に対する反応性よりも弱いことをもって新型インフルエンザウイルスH1亜型を検出できるようにした、新型インフルエンザウイルスの鑑別検出法。
【請求項5】
前記免疫測定法が、前記第一の抗体とこの第一の抗体が反応する抗原に対して反応する第三の抗体とを用いたサンドイッチ式免疫測定法、及び/又は、前記第二の抗体と該第二の抗体が反応する抗原に対して反応する第四の抗体とを用いたサンドイッチ式免疫測定法からなることを特徴とする請求項4に記載の検出法。
【請求項6】
前記第一の抗体および第二または第四の抗体を担体に固定しておく請求項5に記載の検出法。
【請求項7】
前記第三の抗体が実質的に全てのヒトA型インフルエンザウイルス亜型に対して反応する抗体であり、前記第四の抗体が季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型及び新型インフルエンザウイルスH1亜型の両者に対して反応するが、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性よりも、新型インフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性が弱い抗体である請求項6に記載の検出法。
【請求項8】
前記第三及び第四の抗体が実質的に全てのヒトA型インフルエンザウイルス亜型に対して反応する互いに同一または異なる抗体である請求項6に記載の検出法。
【請求項9】
前記第一、第二、第三及び第四の抗体がインフルエンザウイルスの核タンパクに対するモノクローナル抗体である請求項5乃至8の何れか1項に記載の検出法。
【請求項10】
実質的に全てのヒトA型インフルエンザウイルス亜型に対して反応する第一の抗体、及び、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型及び新型インフルエンザウイルスH1亜型の両者に対して反応するが、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性よりも、新型インフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性が弱い第二の抗体をそれぞれ予め所定位置に固定せしめて形成された第一及び第二の捕捉部位を備える膜担体を用意し、前記第一の抗体が反応する抗原に対して反応する第三の抗体と被験試料との第一の混合液、及び、前記第二の抗体が反応する抗原に対して反応する第四の抗体と前記被験試料との第二の混合液を、それぞれ第一及び第二の捕捉部位に向けて前記膜担体にてクロマト展開せしめるか、または、第一の混合液を前記捕捉部位の双方に向けて前記膜担体にてクロマト展開せしめ、前記第一の捕捉部位における第一の抗体との反応及び第二の捕捉部位における第二の抗体との反応が何れも陽性であるが、第二の抗体に対する反応性が第一の抗体に対する反応性よりも弱いことをもって新型インフルエンザウイルスH1亜型を検出できるようにしたことを特徴とするイムノクロマトグラフィー測定法。
【請求項11】
前記第三の抗体が実質的に全てのヒトA型インフルエンザウイルス亜型に対して反応する抗体であり、前記第四の抗体が季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型及び新型インフルエンザウイルスH1亜型の両者に対して反応するが、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性よりも、新型インフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性が弱い抗体である請求項10に記載の測定法。
【請求項12】
前記第三及び第四の抗体が実質的に全てのヒトA型インフルエンザウイルス亜型に対して反応する互いに同一または異なる抗体である請求項10に記載の測定法。
【請求項13】
前記第一、第二、第三及び第四の抗体がインフルエンザウイルスの核タンパクに対するモノクローナル抗体である請求項10〜12の何れか1項に記載の測定法。
【請求項14】
実質的に全てのヒトA型インフルエンザウイルス亜型に対して反応する第一の抗体と、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型及び新型インフルエンザウイルスH1亜型の両者に対して反応するが、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性よりも、新型インフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性が弱い第二の抗体と、前記第一の抗体が反応する抗原に対して反応する第三の抗体と、前記第二の抗体が反応する抗原に対して反応する第四の抗体と、膜担体とを少なくとも備え、前記第一及び第二の抗体はそれぞれ予め膜担体の所定位置に固定されて第一及び第二の捕捉部位を形成し、前記第三及び第四の抗体は適当な標識物質で標識され、かつ、前記第三及び第四の抗体は前記捕捉部位の双方から離隔した位置からそれぞれ第一及び第二の捕捉部位に向けて前記膜担体にてクロマト展開可能なように用意されてなり、前記第一の捕捉部位における第一の抗体との反応及び第二の捕捉部位における第二の抗体との反応が何れも陽性であるが、第二の抗体に対する反応性が第一の抗体に対する反応性よりも弱いことをもって新型インフルエンザウイルスH1亜型を検出できるようにしたことを特徴とするイムノクロマトグラフィー測定装置。
【請求項15】
前記第三の抗体が実質的に全てのヒトA型インフルエンザウイルス亜型に対して反応する抗体であり、前記第四の抗体が季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型及び新型インフルエンザウイルスH1亜型の両者に対して反応するが、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性よりも、新型インフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性が弱い抗体である請求項14に記載の測定装置。
【請求項16】
前記第三及び第四の抗体が実質的に全てのヒトA型インフルエンザウイルス亜型に対して反応する互いに同一または異なる抗体である請求項14に記載の測定装置。
【請求項17】
前記第一、第二、第三及び第四の抗体がインフルエンザウイルスの核タンパクに対するモノクローナル抗体である請求項14乃至16の何れか1項に記載の測定装置。
【請求項18】
前記膜担体は、第一の捕捉部位と第二の捕捉部位とを互いに離隔させて備えてなる単一の膜担体からなる請求項14に記載の測定装置。
【請求項19】
前記膜担体は、第一の抗体が固定された第一の膜担体と、第二の抗体が固定された第二の膜担体とからなる請求項14に記載の測定装置。
【請求項20】
前記第三の抗体は前記第一の膜担体上に用意されており、前記第四の抗体は前記第二の膜担体上に用意されている請求項19に記載の測定装置。
【請求項21】
前記第三及び第四の抗体は、それぞれ、前記第一及び第二の膜担体上に配置された含浸部材に含浸されて用意されている請求項20に記載の測定装置。
【請求項22】
前記膜担体はケース内に収容されてなる請求項13に記載の測定装置。
【請求項23】
前記第三の抗体及び/又は第四の抗体はケース外又はケース内に収容されている請求項22に記載の測定装置。
【請求項24】
実質的に全てのヒトA型インフルエンザウイルス亜型に対して反応する第一の抗体と、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型及び新型インフルエンザウイルスH1亜型の両者に対して反応するが、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性よりも、新型インフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性が弱い第二の抗体と、前記第一の抗体が反応する抗原に対して反応する第三の抗体とを用い、前記第一の抗体を予め所定位置に固定せしめて形成された第一の捕捉部位を備える膜担体を用意し、前記第二の抗体と被験試料とを含む第一の混合液、及び、前記第三の抗体と前記被験試料とを含む第二の混合液を、それぞれ第一の捕捉部位に向けて前記膜担体にてクロマト展開せしめ、前記第一の捕捉部位における前記第三の抗体及び前記第二の抗体の反応が何れも陽性であるが、前記第一の捕捉部位における第二の抗体に対する反応性が前記第一の捕捉部位における前記第三の抗体に対する反応性よりも弱いことをもって新型インフルエンザウイルスH1亜型を検出できるようにしたことを特徴とするイムノクロマトグラフィー測定法。
【請求項25】
前記第三の抗体が実質的に全てのヒトA型インフルエンザウイルス亜型に対して反応する抗体である請求項24に記載の測定法。
【請求項26】
前記第一、第二及び第三の抗体がインフルエンザウイルスの核タンパクに対するモノクローナル抗体である請求項24または25に記載の測定法。
【請求項27】
実質的に全てのヒトA型インフルエンザウイルス亜型に対して反応する第一の抗体と、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型及び新型インフルエンザウイルスH1亜型の両者に対して反応するが、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性よりも、新型インフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性が弱い第二の抗体と、前記第一の抗体が反応する抗原に対して反応する第三の抗体と、膜担体とを少なくとも備え、前記第一の抗体は予め膜担体の所定位置に固定されて第一の捕捉部位を形成し、前記第二及び第三の抗体は適当な標識物質で標識され、かつ、前記第二及び第三の抗体は前記捕捉部位から離隔した位置からそれぞれ第一の捕捉部位に向けて前記膜担体にてクロマト展開可能なように用意されてなり、前記第一の捕捉部位における前記第三の抗体及び前記第二の抗体の反応が何れも陽性であるが、前記第一の捕捉部位における第二の抗体に対する反応性が前記第一の捕捉部位における前記第三の抗体に対する反応性よりも弱いことをもって新型インフルエンザウイルスH1亜型を検出できるようにしたことを特徴とするイムノクロマトグラフィー測定装置。
【請求項28】
前記第三の抗体が実質的に全てのヒトA型インフルエンザウイルス亜型に対して反応する抗体である請求項27に記載の測定装置。
【請求項29】
前記第一、第二及び第三の抗体がインフルエンザウイルスの核タンパクに対するモノクローナル抗体である請求項27または28に記載の測定装置。
【請求項30】
前記膜担体は、第一の抗体が固定された第一の膜担体と、第一の抗体が固定された第二の膜担体とからなる請求項27に記載の測定装置。
【請求項31】
前記第二の抗体は前記第一の膜担体上に用意されており、前記第三の抗体は前記第二の膜担体上に用意されている請求項30に記載の測定装置。
【請求項32】
前記第二及び第三の抗体は、それぞれ、前記第一及び第二の膜担体上に配置された含浸部材に含浸されて用意されている請求項31に記載の測定装置。
【請求項33】
前記膜担体はケース内に収容されてなる請求項27に記載の測定装置。
【請求項34】
前記第二の抗体及び/又は第三の抗体はケース外又はケース内に収容されている請求項33記載の測定装置。
【請求項35】
実質的に全てのヒトA型インフルエンザウイルス亜型に対して反応する第一の抗体と、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型及び新型インフルエンザウイルスH1亜型の両者に対して反応するが、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性よりも、新型インフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性が弱い第二の抗体と、膜担体とを少なくとも備え、前記第二の抗体は予め膜担体の所定位置に固定されて第一の捕捉部位を形成し、前記第一の抗体は適当な標識物質で標識され、かつ、前記第一の捕捉部位から離隔した位置から該第一の捕捉部位に向けて前記膜担体にてクロマト展開可能なように用意されてなる新型ヒトインフルエンザウイルスH1亜型検出用イムノクロマトグラフィー測定装置。
【請求項36】
実質的に全てのヒトA型インフルエンザウイルス亜型に対して反応する第一の抗体と、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型及び新型インフルエンザウイルスH1亜型の両者に対して反応するが、季節性ヒトインフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性よりも、新型インフルエンザウイルスH1亜型に対する反応性が弱い第二の抗体と、膜担体とを少なくとも備え、前記第一の抗体は予め膜担体の所定位置に固定されて第一の捕捉部位を形成し、前記第二の抗体は適当な標識物質で標識され、かつ、前記第一の捕捉部位から離隔した位置から該第一の捕捉部位に向けて前記膜担体にてクロマト展開可能なように用意されてなるヒトインフルエンザウイルス新型ヒトインフルエンザウイルスH1亜型検出用イムノクロマトグラフィー測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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