説明

ヒトパピローマウイルス(HPV)により発症された腫瘍性又は癌性病変に対するワクチン、処置、用途及び方法

【課題】 ヒトパピローマウイルス(HPV)により発症された腫瘍性又は癌性病変に対する新規なワクチンを提供する。
【解決手段】 本発明のワクチンはE7ペプチド球状粒子と、所望により、アジュバントとからなり、球状粒子はオリゴマーである。このオリゴマー球状粒子は直径が約50nmであり、分子量が約700kDaである。本発明のワクチンはヒトパピローマウイルス(HPV)関連病変の予防又は治療若しくは同時に予防と治療を行うのに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトパピローマウイルス(HPV)により発症された腫瘍性又は癌性病変に対するワクチンに関する。特に、本発明は、前記ウイルスのE7−ペプチド球状粒子と場合によりアジュバントとからなるワクチンに関する。ここで、前記球状粒子はオリゴマーである。オリゴマー球状粒子の直径は約50nmであり、分子量は約700kDaである。本発明によるワクチンはヒトパピローマウイルス(HPV)関連病変の予防又は治療に有用である。
【背景技術】
【0002】
HPVは子宮頸癌の病原体であり、世界中の癌罹患女性の死亡原因の第2位である。概算値であるが、子宮頸癌の罹患患者の約50万人は発展途上国の人々である。その理由は、これら発展途上国の人々についてルーチン検査するための例えば、パパニコロー塗抹標本(Pap)が欠如しているためである。
【0003】
現在までに発見されている100個を越えるHPV遺伝子型のうち、40%が粘膜領域に感染する。高リスクHPVによる持続性感染は子宮頸癌発生のための重要なファクター(ケースのうち>95%)である。しかし、この癌は、膣(65〜90%)、外陰(40%)、ペニス(40%)及び肛門管(90%)などのようなその他の肛門性器腫瘍にも関連し、極僅かではあるが、口腔腫瘍(ケースのうち<30%)にも関連する(非特許文献1参照)。子宮頸癌の半数超がHPV第16遺伝子型により発生される。この第16遺伝子型は、高リスクタイプのHPV第18,31及び45遺伝子型と共に、全てのケースのうちのほぼ80%を示す(非特許文献2参照)。HPV第6及び11のような低リスク遺伝子型は、良性生殖器疣贅(ゆうぜい)を発生する。これは恐らく、最も一般的な性感染症である。
【0004】
現存の予防ワクチンは、HPV第16及び18のような最も高リスクな優勢遺伝子型による感染に対して体液免疫保護効果を創成するのに極めて有効であることが証明されている。しかし、HPV感染を予防するのに〜100%有効であるにも拘わらず、これらのワクチンは既に存在する腫瘍形成過程に関して治療効果を有しない。従って、これらのワクチンは子宮頸癌発病率に対して直ちに影響を与えることはない(非特許文献3参照)。
【0005】
子宮頸癌は、組織学的に極めて明確に認められる子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)の前駆病変スペクトルから生じる。このタイプの病変は、細胞学的探査プログラムの過程で極普通に検出され、通常、レーザ治療又は冷凍療法により外科的に除去されるか又は破壊される。多くの感染女性は依然として生殖可能年齢であり、これらの進行は或る程度の関連病的状態を必然的に伴い、また、不妊症の原因となることもあり得るので、別の治療法の開発が絶対的に必要である。
【0006】
持続性感染は高度CINの発生の先行必要条件であり、また、この感染は屡々臨床症状が現れる数年以上も前に先行することが追試研究により明らかにされた。従って、たとえ曝露後の状態であっても、子宮頸癌治療には貴重な長い時間窓が存在するものと思われる(非特許文献4参照)。
【0007】
発症したHPV感染を処置するために治療ワクチンを使用できる。従って、これらのワクチンはHPV関連悪性腫瘍の罹患率に即時的効果を有するであろう。治療ワクチン戦略は、感染細胞に対する細胞性免疫の発生により先在病変及び悪性腫瘍も消去しようとする。従って、現存の病変を消去するために、治療ワクチンは感染した悪性変換細胞内に構成要素的に発現されるHPV抗原を狙い打ちしなければならない。多くの理由により、HPV初期タンパク質E6及びE7はこの目的のための理想的な目標となる。その第1の理由は、これらタンパク質はHPV腫瘍内に構成要素的に発現されるからである。また第2の理由は、E6及びE7はHPV感染細胞への細胞形質転換の誘発及び維持のために決定的なので、腫瘍細胞が抗原の消失により免疫攻撃を逃れることができるということはあり得ないからである。更に第3の理由は、E6及びE7は両方とも外来タンパク質なので、免疫寛容などのような癌ワクチンに付随する一般的問題の幾つかを避けることが出来るからである(非特許文献5参照)。これら2個の腫瘍ウイルスタンパク質のうち、最も関連性のあるのはE7ペプチドである。
【0008】
最近、幾つかの報告は、前臨床及び臨床研究におけるHPV16系ワクチン由来のE7の治療有効性を示している。これらのHPVワクチン候補は、E7情報を帯有する組み換え生ベクター、精製E7タンパク質、E7-HLAペプチドエピトープ及びE7発現プラスミドなどである。これらの多くのケースにおいて、戦略はE7タンパク質、ペプチド又は遺伝子と、炎症又は免疫を高める別の公知の分子との融合も含む(非特許文献5参照)。DNA系ワクチン技術に関してこの10年間に起こった桁外れの進歩及び実験モデルで達成された見込みのある結果にもかかわらず、優れた生物における乏しい免疫原性及び倫理的問題の両方が依然としてこれらの主要な欠点として存在する。これに関して、タンパク質系ワクチンは、安全性を提供し、比較的低コストであり、更に高免疫原性により、依然として第1の選択肢を構成する。この他、前代のアジュバントの使用は、宿主又はT細胞介在治療の体液保護を助力する必要性に応じて、候補タンパク質免疫原性特性を一層変性する。これらアジュバントの使用により、融合免疫賦活性遺伝子に対する長たらしくて飽き飽きする技術的ステップ及び過剰な望ましからざる生理学的反応を避けることができる。
【0009】
E7は、そのc末端ドメインを介して亜鉛に結合された小さな酸性ペプチドである。一般的に、HPVワクチン候補の治療有効性は子宮頸癌-Tc1マウス腫瘍について試験される。これはHPV16-腫瘍表現型に似ている。Tcl細胞系は、HPV16由来のE6及びE7で不死化され、かつ、c-Ha-ras発癌遺伝子で形質転換されたC57BL/6-マウスの主要上皮細胞から得られる(非特許文献6参照)。この同時形質転換は腫瘍原性細胞系を産生した。この腫瘍原性細胞系は、E6及びE7腫瘍性タンパク質を発現し、固有配列を子宮頸癌進行に似せる。これらの腫瘍性タンパク質は細胞を不死化し、そして、その後の細胞前癌遺伝子への突然変異はこれらを転移可能性を有する腫瘍細胞に形質転換する。得られたTc1細胞系は高い分裂速度を有し、急速に成長する。腫瘍成長に関する試験によれば、5x10個の細胞の皮下接種は注射後20日以内にマウス内で100%腫瘍を発生させるのに十分であることが示された(非特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Parkin, D.M. and Bray, F.(2006)Capter 2:The burden of HPV-related cancers. Vaccine, 24 Suppl 3, S11-25
【非特許文献2】Clifford, G. et al.,(2006)Capter 3: HPV type distribution in women with and without cervical neoplastic diseases. Vaccine, 24 Suppl 3, S26-34
【非特許文献3】Kols, A. et al.,(2006). PATH, Seattle, WA. USA and Leggatt, G.R. and Frazer, I.H.(2007) Curr Opin Immunol, 19, 232-238
【非特許文献4】Michel, N., et al.,(2002)Intervirology, 45, 290-299
【非特許文献5】Hung, C.F., et al., (2008)Expert Opin. Biol. Ther., 8, 421-439
【非特許文献6】Lin, K.Y., et al.,(1996)Cancer Re.s, 56, 21-26
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、HPVにより発症された癌性病変に対する新規なワクチンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、HPVにより発症された癌性病変に対する新規なワクチンとして、パピローマウイルスのE7ペプチド球状粒子と、所望によりアジュバントとからなり、前記球状粒子はオリゴマーであるワクチンを提供する。オリゴマー球状粒子の直径は約50nmであり、分子量は約700kDaである。本発明によるワクチンはHPV関連病変を予防又は治療することができる。
【0013】
また、上記の課題を解決するために、本発明は、前記球状粒子の安定化方法を提供する。この球状粒子安定化方法は、前記球状粒子を酸化することからなる。好ましい実施態様では、この酸化は、球状粒子を硫酸銅と接触させることにより行われる。球状粒子を硫酸銅と接触させたら、続いて、培養し、そして、その後、残留銅を除去する。
【0014】
更に、本発明は、HPVにより発症された病変部の治療用薬剤を製造するための前記球状粒子の用途を提供する。
【0015】
また、上記の課題を解決するために、本発明は、HPV病変抗体陽性者の治療方法を提供する。この治療方法は、HPVE7ペプチドの球状粒子からなるワクチンを十分な量、各個体に投与することからなる。
【0016】
更に、上記の課題を解決するために、本発明は、HPVに対する免疫付与方法を提供する。この免疫付与方法は、パピローマウイルスE7ペプチドの球状粒子からなるワクチンを十分な量、各個体に投与することからなる。
【発明の効果】
【0017】
以上述べたように、本発明により、HPVにより発症された癌性病変に対する新規なワクチンが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例1に従ってE7-MPL及びE7SO-MPLで予防的ワクチン接種を行った結果を示す特性図であり、図1Aは、横軸に示された各日時におけるMPL、E7-MPL、E7SO-MPL及びE7SOがワクチン接種された各マウスの腫瘍体積を示す。図1Aにおいて*記号が付されたマウスは不健康な全身状態と腫瘍の異常位置を示す。図1Bは各治療における無腫瘍期間の特性曲線を示す。図中、−○−はE7-MPL、−□−はE7SO-MPL、−△−はMPL、−×−はE7SOをそれぞれ示す。図1Aの縦軸:腫瘍体積(cm3)、横軸:時間(日数)を表す。図1Bの縦軸:無腫瘍マウス(%)、横軸:Tc1による接種後日数を表す。
【図2】実施例2に従ってTcl腫瘍保有マウスの治療結果を示す特性図である。図中、−○−はE7-MPL粒子からなる組成物、−□−はE7SO-MPL球状粒子からなる組成物、及び−△−は対照としてのMPLからなる組成物をそれぞれ示す。腫瘍体積成長は治療後の経過日数の関数として示すことが出来る。図2の縦軸:腫瘍体積(cm),横軸:Tc1による接種後日数を表す。
【図3】実施例2に従ってTcl腫瘍保有マウスの治療結果を示す特性図である。図中、−○−はE7-MPL二量体粒子からなる組成物、−□−はE7SO-MPL球状粒子からなる組成物、及び−△−は対照としてのMPLからなる組成物をそれぞれ示す。治療効果は腫瘍保有マウスの生存率の関数として示される。図3の縦軸:生存率(%),横軸:腫瘍の接種後日数を表す。
【図4】ODN2006アジュバントと併用されるE7(E7SO)オリゴマー粒子からなるワクチンの治療能力を示す。この能力は腫瘍サイズを測定することにより評価した。図4の縦軸:腫瘍体積(cm),横軸:腫瘍の接種後日数を表す。 (図中の「Desafio」は「攻撃感染」の意である
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら詳述する。
【0020】
本明細書において、「ワクチン」という用語は、HPV病変に対して保護又は治療活性の一方又は両方を同時に有する組成物を意味する。
【0021】
本明細書において、「E7」という頭辞語は、E7二量体粒子からなるワクチンに対応することを意味する。「E7-MPL」は、E7二量体粒子とMPLアジュバントからなるワクチンに対応する。「E7-SO」は、E7オリゴマー球状粒子とMPLアジュバントからなるワクチンに対応する。驚くべきことに、オリゴマー球状粒子は非常に高い抗腫瘍活性を示した。
【0022】
E7オリゴマー球状粒子(E7SO)と所望によりアジュバントとからなる本発明によるワクチンの予防抗腫瘍効果を評価した。HPV16E7を発現するTcl腫瘍細胞系に対する粒子の保護能力を評価した。これに基づき、ワクチン投与量の最後の投与から7日目(28日目)に、免疫化した全てのマウスに、致死量のTcl細胞を攻撃感染させた。図1はクチン接種されたマウスの様々な群に関する腫瘍成長曲線を示す。
【0023】
これらのデータによれば、MPLアジュバントで免疫化されたマウスの100%が、攻撃感染後7〜15日以内に大きな侵略的腫瘍を発生し、全てのマウスが35日目に死亡した(図1A及びB参照)。これに対して、オリゴマー球状粒子とアジュバントからなる本発明によるワクチン(E7SO-MPL、例えば、MPL)を投与すると、80%のマウスで腫瘍の発生が阻止され、更に90日間経過後も無腫瘍のままであった。この他、腫瘍が発生された2匹のマウスにおいて、前記腫瘍の出現は、MPLだけを予防接種された対照マウスに対して、10〜20日間も遅かった。
【0024】
興味深いことに、全てのE7SO免疫化マウスが腫瘍を発生したが、MPLだけの対照群により示された腫瘍発生に対して、腫瘍発生が遅かった。この事実は、E7SOはたとえアジュバントが無くても、或る程度の抗腫瘍効果を有することを意味する。
【0025】
Tc1腫瘍を有する被攻撃感染動物を保護するための、球状粒子とアジュバントとからなる本発明のワクチン(E7SO-MPL)の能力を示したが、HPV16E7発癌遺伝子を発現する腫瘍保有マウスの治療のための前記ワクチンの能力を評価した。この場合、メスのマウスに5x10個のTcl細胞を皮下注射により接種させ、腫瘍が触知できたら(7日目)、マウスをE7-MPL又はE7SO-MPLからなるワクチンで処置した。第2回目の投与は2週間後(21日目)に行った。図2に示されるように、本発明によるワクチンの予防接種は腫瘍成長を顕著に遅延させた。32日目に、MPL免疫化マウス(対照群)の殆どは腫瘍の拡大により死亡した。E7SO-MPLワクチン接種マウスにおける腫瘍の平均体積は対照群よりも4倍も小さかった(〜2.3cm(対照群)vs〜0.6cm(本発明))。更に、E7-MPLでワクチン接種されたマウスも32日目に対照群の腫瘍サイズと同様な腫瘍サイズ増大を示し、E7SO-MPLワクチン処置マウスにおける腫瘍サイズよりもほぼ4倍大きかった。
【0026】
治療効果の差も、様々なマウス群の生存率により示される。E7SO-MPLで処置された群の35日目の生存率は100%であったが、MPL処置群(対照群)の生存率は0%であった(図3参照)。腫瘍に対する保護に関する実験において、E7二量体粒子からなるワクチンは治療効果がさほど高くないことも示された(図2及び図3参照)。この事実は、腫瘍保有メスマウスでは、E7オリゴマー状態は、細胞毒性T細胞により仲介される効果的な抗腫瘍反応の誘発に必須要件であることを意味する。
【0027】
本発明によるワクチン(例えば、E7SO-MPLワクチン)を低投与量でメスのマウスに予防接種すると、完全な体液及び細胞免疫反応を誘発した。即ち、抗E7血清特異性IgG力価とTcl腫瘍細胞発現E7に対する保護免疫性を誘発した。更に、腫瘍保有メスマウスへのE7SO-MPLワクチンのワクチン接種は、過大な腫瘍成長の進行を遅らせ、そして、生存期間を延長させた。従って、免疫治療薬としてのワクチン潜在能力が示された。
【0028】
図4から明らかなように、E7SOオリゴマー球状粒子は、例えば、二量体E7に比較して、高い治療効果を有する。ヒト細胞におけるアジュバントとして有効性が証明されているオリゴデオキシヌクレオチド(ODN2006)と併用されるE7オリゴマー球状粒子からなるワクチンの治療能力を評価した(Hartmann, G. et al., (2000) J. Immunol., 164, 1617-1624参照)。
【0029】
本発明のワクチンは、3−脱アシル化モノホスホリルリピドA(MPL)アジュバント又はODNアジュバントのようなアジュバントと併用することができる。MPLアジュバントは、グラム陰性バクテリア壁内のリポ多糖類(LPS)の非毒性誘導体である。ワクチン製造分野における専門家は、任意のアジュバントが使用可能であることを知っている。従って、全てのアジュバントが本発明のワクチンとともに使用できる。好ましい実施態様では、アジュバントはMPL又はODNである。
【0030】
本発明によるワクチンの抗原特性をワクチン接種マウス血清抗体の力価のELISA適用量により評価した。本発明のE7SO-MPLワクチンによる免疫化はE7高リスクペプチドに対するIgG抗体の特異的力価(〜1/6000)を生じる。
【0031】
本発明の実施態様において、大腸菌(Escherichia coli)内で組み換え的に発現された化学的に純粋なE7タンパク質を大量に得ることを可能にする精製方法が示され、かつ、主な種は分子量が22kDaの二量体であることが実証された。本発明の別の実施態様では、平均分子量が790kDaで直径が50nmの均質な球状粒子に集合させることができるタンパク質を得る方法が示される。この集合は非常に緩慢なプロセスであり、タンパク質は、その三次構造の同時連結を伴う実質的な立体配座転移を被る。得られた粒子(E7SO)は非常に安定であり、協同して襞を形成し、かつ、これらの粒子は可溶性又は不溶性アミロイド中に発見されるβシート構造に似ている。
【実施例1】
【0032】
生体内予防に関する実験
マウス群(n=5)を様々なグループにランダムに分配させ、21日間隔で2回腹腔内注射によりワクチン接種した、接種したワクチンは、E7二量体50μg又は高精製E7可溶性オリゴマー50μgと、MPLアジュバント25μg(すなわち、E7-MPL接種群とE7SO-MPL接種群)、アジュバント無しのE7可溶性オリゴマー50μg(E7SO接種群)又はMPLのみ25μg(MPL接種群)であった。最後の免疫強化から7日経過後(28日目)、マウスに診査出血を受けさせ、次いでマウスの左側に5x10個のTcl細胞を皮下注射で接種した。全ての実験において、マウス内に埋め込まれた腫瘍細胞の生存能力は>90%であった。腫瘍成長は1週間当たり2回、電子的測径器を用いて測定し、また、腫瘍体積は(長さx幅2)/2の式に基づいて計算した。腫瘍のサイズが約3cmになった時点でマウスを殺した。
【実施例2】
【0033】
治療実験
治療実験のために、先ず、マウスの左側に5x10個のTcl細胞を皮下注射で攻撃感染させた(0日目)。全てのマウスに触知可能な腫瘍が生じた時点(7日目)で、マウスを自由裁量的に各群(1群5匹)に割り当て、E7-MPL、E7SO-MPL又はMPL単独を腹腔内にワクチン接種した。ワクチン投与量は実施例1で使用された投与量と同じであった。21日目に2回目の免疫強化を行った。腫瘍のサイズが約2.5cmに達した時点でマウスを殺した。
【実施例3】
【0034】
ワクチンで使用するE7二量体及びE7SOオリゴマーの製造
HPV16由来のE7を、Alonso, L.G., et al., (2002). Biochemistry, 41, 10510-10518に記載された方法に従って精製した。E7SOは、Alonso, L.G., et al., (2004). Biochemistry, 43, 3310-3317に記載された方法に従って培養された高純度E7二量体粒子から製造した。その後、E7SO40μMのリン酸ナトリウム10mM溶液(pH7.0)に、最終濃度が20μMになるまで硫酸銅を添加した。そして、28℃で24時間培養した。酸化後、サンプルをリン酸ナトリウム10mM緩衝液(pH7.0)に対して透析させ、過剰量のCuを除去した。オリゴマー酸化状態を還元剤無しにSDS-PAGE15%中で評価した。
【実施例4】
【0035】
ワクチンの製造
MPLアジュバントの水溶液をBaldrige, J.R. and Crane, R.T.,(1999). Method, 19, 103-107に記載された方法に従って製造した。その後、この水溶液を4℃で維持した。所望の最終濃度(0.25μg/μL)までPBS緩衝液で希釈されたE7HPV16の二量体粒子及びオリゴマー粒子を、投与する直前に、実施例1に述べた割合でMPLアジュバントと混合させた。各マウスに投与された最終容量は200μLであった。
【実施例5】
【0036】
アジュバントODNを含有するワクチンの製造
ODN2006アジュバントの水溶液をHartmann, G. et al., (2000) J. Immunol., 164, 1617-1624に記載された方法に従って製造した。その後、この水溶液を−20℃で維持した。E7SO粒子(投与量60μg)をPBS緩衝液中で希釈し、投与直前にODN2006アジュバント(投与量30μg)と混合させた。各マウスに投与された最終容量は200μLであった。
【実施例6】
【0037】
ODNによる治療実験
先ず、メスのマウスの左側に5x10個のTcl細胞を皮下注射で接種させることにより治療実験を行った(0日目)。4日間経過後(4日目)、マウスを自由裁量的に各群に割り当て、マウスの尻尾の付け根にワクチンを皮下注射により接種した。接種したワクチンは、高精製E7可溶性オリゴマー60μg+ODN2006アジュバント30μg(E7SO-ODN接種群;1群当たりマウス8匹)又はODN2006アジュバントのみ(ODN接種群;1群当たりマウス4匹)であった。11日目に2回目の免疫強化接種を行った。腫瘍のサイズが約2.5cmに達した時点でマウスを殺した。
【0038】
以上の説明は、本発明の一実施例に関するもので、この技術分野の当業者であれば、本発明の種々の変形例を考え得るが、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。特許請求の範囲の構成要素の後に記載した括弧内の番号は、図面の部品番号に対応し、発明の容易なる理解の為に付したものであり、発明を限定的に解釈するために用いてはならない。また、同一番号でも明細書と特許請求の範囲の部品名は必ずしも同一ではない。これは上記した理由による。用語「又は」に関して、例えば「A又はB」は、「Aのみ」、「Bのみ」ならず、「AとBの両方」を選択することも含む。特に記載のない限り、装置又は手段の数は、単数か複数かを問わない。
【図1A】

【図1B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトパピローマウイルス(HPV)により発症された腫瘍性又は癌性病変に対するワクチン。
【請求項2】
アジュバントを更に有することを特徴とする請求項1に記載のワクチン。
【請求項3】
球状粒子がオリゴマーであることを特徴とする請求項1に記載のワクチン。
【請求項4】
球状粒子の直径が15nm以上であることを特徴とする請求項3に記載のワクチン。
【請求項5】
球状粒子の分子量が50kDa以上であることを特徴とする請求項1に記載のワクチン。
【請求項6】
アジュバントは3-脱アシル化モノホスホリルリピドA(MPL)であることを特徴とする請求項2に記載のワクチン。
【請求項7】
アジュバントはODN2006であることを特徴とする請求項2に記載のワクチン。
【請求項8】
球状粒子は反復性アミロイド様βシート構造を有することを特徴とする請求項1に記載のワクチン。
【請求項9】
球状粒子は2〜100個のE7ペプチドモノマーからなることを特徴とする請求項1に記載のワクチン。
【請求項10】
HPV関連病変の予防に使用されることを特徴とする請求項1に記載のワクチン。
【請求項11】
HPV関連病変の治療に使用されることを特徴とする請求項1に記載のワクチン。
【請求項12】
球状粒子の酸化を制御することからなることを特徴とする球状粒子の安定化方法。
【請求項13】
(1)球状粒子を硫酸銅と接触させ、その後、培養するステップと、
(2)残留銅を除去するステップと、
からなることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
HPV関連病変の治療に使用される薬剤を製造するための請求項1に記載のワクチンの用途。
【請求項15】
パピローマウイルスE7ペプチドの球状粒子からなるワクチンを十分な量、各個人に投与することからなるパピローマウイルス関連病変保有者の治療方法。
【請求項16】
パピローマウイルスE7ペプチドの球状粒子からなるワクチンを十分な量、各個人に投与することからなることを特徴とするHPV関連病変の免疫化方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−512914(P2013−512914A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542176(P2012−542176)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/058657
【国際公開番号】WO2011/068934
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(512144690)コンセヨ ナショナル デ インベスティガシオン シエンティフィカ イ テクニカ (1)
【出願人】(512144704)
【出願人】(511051236)イニス バイオテック エル エル シー (2)
【Fターム(参考)】