説明

ヒト免疫システムの動物モデルおよびそれを作出する方法

本発明は、非ヒト哺乳動物において機能的な適応ヒト免疫システムを樹立する方法に関する。本発明のシステムは、以下のステップ:a)造血能を持つヒト幹細胞を非ヒト哺乳動物に移植するステップ;およびb)ヒト細胞株、ヒト細胞および/またはヒト組織の培養物の細胞培養上清で、非ヒト哺乳動物をコンディショニングするステップ;および随意にc)それ自体は造血能を持たない支持細胞を投与するステップ、によって特徴付けられる。このようにして樹立された動物モデルは、造血システムのヒト免疫担当細胞を含有し、この細胞には特にTおよびB細胞、単球、樹状細胞、NK細胞、顆粒球、およびCD34幹細胞が含まれる。樹立された免疫システムの反応性は、特にヒトTおよびBリンパ球と樹状細胞との連携に基づく。本発明の動物モデルは長期間の安定性を有し、診断目的、研究、治療の開発および試験、製品開発、例えばヒト抗体の産生に適するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、適切な動物モデルにおいて機能的な適応ヒト免疫システムを樹立する方法ならびにその方法によって作出される動物モデルに関する。この動物モデルは、例えば前臨床薬理試験や、ヒト抗体の産生などに適している。好ましくは、移植細胞に関して免疫反応をほとんど発生させない免疫不全マウスを、この目的に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
医学療法の基本的な戦略および技術は、特に再生医学の分野においては、動物モデルで(例えば齧歯動物を使って)特徴づけられることが多い。このようにして導き出された原理を臨床応用においてヒトに適用する場合、ある治療製品または治療戦略がヒト標的にとって最適であるのかそうでないのかを明確にすることは、困難であることが多い。例えば、a)臨床応用においてヒト標的は妥当でない、またはb)その治療製品は同じ機能的性質を持たないという、二つの可能性がある。これは、腫瘍治療および移植治療(なかんずく幹細胞移植)にとってはとりわけ重要であり、種特異的なモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体調製物を利用する免疫療法では、特に注意が払われている。製薬会社は、臨床試験で調べられた活性成分のうち新たに薬物療法として承認されるのは10%しかないという難題に直面している。新しい技術または作業戦略を検証し、それを認容するには、ヒト細胞およびヒト組織をできるだけ複雑なシステム生物学的状況で調べることのできる前臨床モデルおよび前臨床ツールが必要である。免疫システムのヒト細胞が拒絶されることなく互いに反応する免疫不全マウスは、小動物モデルの利点と、臨床状態への改善された相関性とを合わせ持つので、これに関する答えになりうる。齧歯動物において対応する動物モデルを開発するために、今までに二つの戦略が実現されている。
【0003】
第1の戦略では、遺伝子改変を模倣するために、またはヒト抗原もしくはヒト標的を発現させるために、ヒト遺伝子の導入によって、または体細胞もしくは生殖細胞における特異的突然変異の導入もしくは相同ヒト遺伝子によるネズミ遺伝子の置換によって、遺伝子改変(トランスジェニック、ノックアウト、ノックイン)動物を作出する技術を利用する。この方法の限界は、多大な費用を要すること、および成功率がわずかであることに加えて、特に、作出されるヒト特性が通常は一つに限定されること、ゆえに通常は動物パートナー分子とのそれらの反応性、そして通常は遺伝子発現制御機構が同一でないことにある。したがってこの方法は、通常は、活性成分代謝に関する活性成分の潜在能力の特徴づけおよび毒性の決定、または個々の標的もしくは標的群の活性の検討に限って用いられる(1;2)
より複雑な第2の方針は、異種移植によるキメラの作製である(3)。これは、通常は免疫不全の動物における、ヒト細胞またはヒト組織の投与を包含する。ヒト免疫システムを作製するための優れた宿主動物は、適応免疫にいくつかの欠陥を持つマウス系統、例えばRag2−/−/γ−/−(4)、BNXまたはNOD/SCID B2mnullなどである(5)。さまざまな系統のNOD/SCID(非肥満糖尿病/重症複合型免疫不全症)マウスが、ヒト化のための標準モデルとして役立つ。それらは、基本的に、以下の免疫不全性によって特徴づけられる:Bリンパ球およびTリンパ球の完全な喪失、NK細胞数の減少、抗原提示細胞の分化および機能に関する欠陥、ならびに循環補体の不在。これらのマウスは、野生型よりも電離放射線の影響を受けやすく、DNA修復システムに欠陥を持っている。免疫不全動物では、ヒト造血幹細胞、分化した造血細胞ならびにリンパ器官の移植後に、ヒトの個々の造血系列またはいくつかの造血系列を形成させることが可能である。利用するマウス系統およびそのコンディショニングならびに造血幹細胞の数および供給源の関数として、動物の末梢血または脾臓および骨髄に0.1〜90%のヒトCD45細胞を発生させることが可能である。
【0004】
欠点は、造血の再構成の変動性が極めて高いことである。そのうえ、個々のヒト細胞型は、マウス系統および動物のコンディショニングに依存して、表現され方が異なる。B細胞が優先的に、そしてほとんど排他的に成長することは、NOD/SCIマウスの特徴である。ヒトBリンパ球は、典型的な免疫グロブリン遺伝子再編成パターンを示し(6)、ヒト胎児臍帯血または成人リンパ系前駆細胞の投与後に、多様な免疫グロブリンレパートリーを生成させる(7)。循環T細胞は存在しないか、極めて微量にしか形成されず、しかも遅れて形成される。Tリンパ球の迅速で強い発生は、動物を組換え腫瘍壊死因子で前処置し、多数の単核球を投与した場合にのみ検出できる(8)。しかし、ヒト生着には動物群内で極めて大きなばらつきがある。ヒトT細胞の表現型別は、その変動性にもかかわらず、使用した幹細胞供給源の関数として、1:1または1:2のCD4/CD8比を示す。細胞は多様なT細胞受容体レパートリーを持つ。これらのT細胞の予備的機能解析では、PHAまたはIL−2を使ったインビトロ増殖試験において、それらは活性化されうるものの、それは極めて低レベルでしかないことが示される。特許文献1では、手術患者の肋骨組織の切片を使って、それを腹膜腔中に皮下適用することにより、T細胞の再構成に成功している。それらの使用は、それらの入手可能性よび倫理上の問題によって制限される。この骨組織の単細胞懸濁液の静脈内注射後に生じるヒトキメラ状態は極めて低く、T細胞はほとんど検出することができなかった。特許文献2では、BNXマウスにおける再構成のために、G−CSF動員末梢血(PB)、胎児および成人骨髄(FBM、ABM)のヒト造血細胞が利用される。PBまたはABMの移植後6〜8週間でキメラ状態にあったのはマウスの17%または4.7%に過ぎず、その変動性は極めて高かった。FBMの投与後にキメラ状態は得られなかった。長期生着を示したのは、PBまたはABMまたはFBMの移植を受けた動物のうち、3%または15%未満だった。PBを投与された動物は30日後の平均生残率が25%だった。これは、自己反応性細胞が形成されたか、調節的に活性な細胞集団が発生しないという事実に結びつけられるだろう。移植片対宿主疾患の明確な徴候は、成人ドナーの末梢血を投与した場合にのみ、見出された(9)。これは、今のところ、動物モデルにおいてはヒト細胞の機能的効力が不十分であることを実証している。
【0005】
今のところ、マクロファージ樹状細胞型のヒト細胞は、臍帯血のヒト単核球の植付け後に、未熟CD34 HLA−DR CD4樹状細胞前駆体(DC)としてしか検出されていない。成熟DCはNOD/SCIDマウスのリンパ器官には検出することができなかった(10)。DCの成熟細胞への分化は動物モデルでは阻止されたものの、インビトロ条件下で成熟したDCは、混合白血球反応における効率的な刺激因子であることがわかった。Cravensら(11)は、サイトカインを追加しなくても、NOD/SCIDマウスにおいてヒト成熟反応性DCが発生することを実証した。これらの細胞はインビトロでLPS刺激に反応して、IL−8、TNF−α、IL−10およびIL−12p70の高レベルなサイトカイン分泌をもたらした。IL−1β、IL−6およびIFNγの放出は比較的低レベルである。しかしこれらのサイトカインは、ヒトシステムでは、急性または全身感染に特徴的なサイトカインである。したがって、ヒトシステムと同等なサイトカインプロファイルを目指して、さらなる開発を行う必要がある。
【0006】
上記を要約すると、既存の方法およびモデルが、動物におけるヒト造血細胞の発生および成熟ならびにそれらの反応性を部分的に再現していることは、明らかである。しかし、ヒト(特に適応)免疫システム全体を表現する標準化された再現可能なモデルを作製する確立された方法は、今のところない。しかしこれは、前臨床相における試験の効率を高め、治療の失敗を最小限に抑えるためには、絶対的要件である。ヒト特異的な治療剤または再生剤の製造および使用には、ヒト樹状細胞、T細胞およびB細胞、NK細胞、単球、ならびに顆粒球が、共通して機能的に存在する必要がある。
【特許文献1】米国特許第6,627,792号明細書
【特許文献2】米国特許第6,060,643号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、従来技術で知られている欠点を持たないヒト特異的キメラを永続的に作出するための新規方法を提供することである。特に、造血能を持つ細胞を含む移植物の動物における成長の信頼性を高めること、および再構成結果の個体間変動性を最小限に抑えることが、本発明の目的である。そうすることで、同等な反応パターンおよび反応強度を持つ均質な実験群の状態が得られる。
【0008】
さらにまた、動物において、造血システムの全ての細胞を、均衡のとれた形で永続的に生成させること、および細胞特有の反応パターンを発生させることも、それぞれ本発明の目的である。本発明は、動物においてヒト細胞がそれらに特有の形で協調することを可能にし、そうすることで、機能的なヒト(特に適応)免疫システムをもたらすべきである。これらのキメラは、宿主生物に対して移植が引き起こす反応の徴候を全く示さないか、またはごくわずかしか示さないべきである。そしてまた、この方法が原因となる、一部において非常に高い、動物の死亡率(15〜65%)も、最小限に抑えられるべきである。
【0009】
この目的に対する解決策として、本発明は、宿主動物の新規コンディショニング方法を利用することによって、公知の解決策が持つ従来技術の欠点を克服する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、この目的は、
a)造血能を持つヒト幹細胞を非ヒト哺乳動物に移植するステップ;および
b)ヒト細胞株、ヒト細胞および/またはヒト組織の培養物の細胞培養上清で、非ヒト哺乳動物をコンディショニングするステップ;および随意に
c)それ自体は造血能を持たない支持細胞を投与するステップ
を含む、非ヒト哺乳動物におけるヒト免疫システムの動物モデルを作出する方法によって、解決される。
【0011】
本発明は、メッセンジャー物質(特にヒト由来の物質)の組み合わせ(カクテル)を含有する「調整細胞培養上清(konditionierten Zellkulturueberstaenden)」の利用を特徴とする。ヒト幹細胞の投与に関連して、それらは、好ましくは免疫不全動物において本発明の動物モデル(免疫システムキメラ)を作出するために使用される。
【0012】
本発明の方法は、好都合なことに、Bリンパ球およびTリンパ球、NK細胞、単球、顆粒球、造血幹細胞および樹状細胞の形成、ならびにこれらの細胞の細胞型特異的な反応の発生を可能にする。したがってヒト(特に適応)免疫システムをその機能性の重要な特徴に関して再現するモデルが入手可能になる。本方法は、診断目的、研究目的、医学療法の開発および試験、または製品の開発にヒト細胞による免疫学的プロセスが要求されるような全てのインビボ応用または派生インビトロ応用に役立つ。モノクローナルヒト抗体の作出および使用、ワクチン接種戦略の開発、動物実験疾患モデル、薬理活性成分の試験、臓器移植後に(特にヒト抗体、ヒト化抗体またはネズミ抗体を使って)免疫寛容を誘導するための戦略の開発などが、その例である。
【0013】
請求項に記載する方法の、本発明による重要な特徴、ならびに他の請求項に記載する要件を、以下に一般化した形で説明する。
【0014】
「調整細胞培養上清」を単独でまたは支持細胞と組み合わせて使用することによるコンディショニングは、キメラを作製する上で、本発明にとって重要であると考えられる。
【0015】
「調整細胞培養上清」は、インキュベーション期間中にさまざまな分子が細胞培養上清中に分泌された後で、個別に存在する細胞または組織試料中の細胞から分離された、無細胞可溶相と定義される。さらにまた、無細胞体液、例えば血漿、血清、または腹水なども、この用語に包含される。分泌細胞は、好ましくは、キメラの作製に利用する幹細胞供給源と同じ種に属するべきである。好ましくは、細胞培養上清の調製には、サイトカインなどの可溶性因子を永続的にまたは適切な刺激もしくは分化後に産生するヒト細胞株を使用すべきである。細胞株358/8(NCI−H358由来、European Collection of Cell Cultures、英国ウィルトシャー州ソールズベリー、番号95111733)およびそこから派生したサブクローン(サブクローンSC25、ライプツィヒ大学動物学研究所(Institut fuer Zoologie, Universitaet Leipzig)から入手)、A−549(ヒトII型肺細胞、LGC Promochem、Cell Biology Collection ATCC(R)番号CCL−185(商標)、英国ロンドン)、およびVA−ES−BJ(ヒト類上皮肉腫細胞株、Deutsche Sammlung fuer Mikroorganismem und Zellkulturen GmbH、ドイツ・ブラウンシュワイク、ACC328)などが、その例である。
【0016】
細胞培養上清は、好ましくは、358/8、A−549、およびVA−ES−BJから選択される細胞株の細胞培養上清が含有する因子、または前記細胞株のうち二つもしくは三つの混合細胞培養上清が含有する因子を含有する。
【0017】
細胞培養上清中に因子IL−8、IL−6、VEGF、IP−10、MCP−1、ANGおよびt−PAが存在すると有利であることがわかった。
【0018】
IL−8、IL−6、VEGF、IP−10、MCP−1、ANGおよびt−PAは、上述の細胞培養上清に、好ましくはそれぞれ20pg/ml〜10mg/mlの濃度範囲で存在する。
【0019】
上述の培養上清に、以下に挙げる濃度範囲のサイトカインが含まれることは、とりわけ好ましい:IL−8(500pg/ml〜10ng/ml)、IL−6(50pg/ml〜1ng/ml)、VEGF(500pg/ml〜10ng/ml)、IP−10(20pg/ml〜1ng/ml)、MCP−1(500pg/ml〜10ng/ml)、ANG(20pg/ml〜1ng/ml)、およびtPA(500pg/ml〜15ng/ml)。
【0020】
対照的に、TNF−α、IL−10、MIG、RANTES、sVCAM−1、sCD40L、bFGF、sPセレクチンまたはIGFの存在は必要でないか、高濃度で存在する必要はない(≦20pg/ml)。
【0021】
細胞培養上清によるこのコンディショニングの時点は、移植日前ならびに移植日後の1日または数日以上であることができる。投与量は、試験動物の処置に関する指針に基づく一般的勧告に反してはならない。
【0022】
調整培養上清は、好ましくは、細胞移植の直後に投与され、その後、一日おきに、14日間にわたって投与される。
【0023】
投与箇所に関する制約はない。しかし静脈内投与または腹腔内投与が推奨される。マウスの場合は、1回の投与につき約200μl(好ましくは150〜250μl)の量で腹腔内投与することを目指す。選択した各「調整細胞培養上清」の適合性を移植前に動物モデルで試験しておくとよい。
【0024】
幹細胞含有供給源の投与に加えて、本発明の方法の特別な一変法では、それ自体は造血能を持たない、いわゆる「支持細胞」も、適用する。この場合は、例えば幹細胞供給源の幹細胞枯渇細胞集団(最大幹細胞含有量≦0.1%)または幹細胞陰性細胞集団(最大幹細胞含有量≦0.01%)ならびに間葉系幹細胞を使用することができる。腫瘍形成能を持つ「支持細胞」の使用は避けるべきである。例えば、臍帯血または骨髄のCD34陰性またはCD133陰性単核球を、支持細胞として使用すべきである。支持細胞は、好ましくは、細胞移植あたり1×10〜5×10細胞の濃度範囲で使用される。支持細胞の投与は、好ましくは、幹細胞含有集団と一緒に達成される。
【0025】
動物モデルの場合、キメラ状態を生じさせるための宿主動物として役立つ免疫不全哺乳動物、好ましくは齧歯動物、特に好ましくはマウスを利用することが好ましい。動物の性別は重要でない。特にマウスは6週齢を越える週齢を持つべきである。レシピエントが主として適応免疫応答にいくつかの免疫欠陥を持つ近親交配系統の子孫である場合、本方法は容易になる。マウス系統SCIDおよびNOD/SCID(Jackson Laboratory、米国メイン州バーハーバー)、Rag2−/−/γ−/−(Taconic Animal Models、デンマーク・リレスケンスベド(Lille Skensved))、BNX(Taconic Animal Models、デンマーク・リレスケンスベド)またはNOD/SCID B2mnull(Jackson Laboratory、米国メイン州バーハーバー)、NOD/SCID IL−2受容体γ鎖null(Jackson Laboratory、米国メイン州バーハーバー)は、好ましい。何よりもまず、免疫不全動物は特定病原体不在条件下で飼育すべきであるが、その他は、標準的な飼育で十分である。
【0026】
キメラ状態を生じさせるのに必要な幹細胞は任意の幹細胞含有供給源から採取することができる。好ましくは、これらの細胞は造血(血液生成)能を持つべきである。そのような造血幹細胞は、増殖することができる細胞であり、造血システム(特に免疫システム)の全ての細胞を生成させることができる。そのような幹細胞は、主として、ヒト骨髄、動員および非動員末梢血、臍帯血および臍帯組織の調製物に見出すことができる。本発明に従って使用される幹細胞は、ヒト免疫システムの細胞を生成させることができる。特に、幹細胞はBリンパ球およびTリンパ球、NK細胞、単球、顆粒球、ならびに樹状細胞に分化することができる。
【0027】
ドナーの年齢および性別は重要でない。幹細胞の濃縮は可能であるが、一般に、その必要はない。好ましくは、単核単細胞画分を利用できるようにすべきである。通常の方法による赤血球および顆粒球の除去が推奨される。新たに得た調製物も、低温保存調製物も、利用することができる。選ばれた生体染色色素(例えばCFSE)による細胞染色は、本方法の成功を損なわない。
【0028】
一般に、キメラ状態を生じさせようとする動物は、幹細胞の移植に先立って、なかんずく残存動物免疫担当細胞の除去を目的とするコンディショニングにより、その受容性が高められる。これは、好ましくは、レシピエント生物の放射線照射によって行われる。放射線源としては、放射性同位元素およびx線装置を利用することができる。照射は、推奨される動物特異的な亜致死線量を上回ってはならない。この線量は各育種系統ごとに個別に決定される。一般に、複数回照射ではなく単回照射を行うべきである。NOD/SCIDマウスに関する単回照射の亜致死線量は、一般的には、250〜350cGyである。
【0029】
移植物の投与は、照射によるコンディショニングの後、程なく行うか、遅延期間を置いてから行うことができる。「の後、程なく」という用語は放射直後の投与を含意し、一方、遅延期間には数日が包含される。一般的には、照射後3〜24時間の時間枠を、考慮に入れる。移植物の投与箇所が選択の余地なく指定されることはない。単細胞懸濁液の場合、静脈内投与または腹腔内投与が好ましい。動物は必要に応じて麻酔することができる。好ましくは、マウス1匹につき、幹細胞を含有する1×10〜5×10個の単核球を移植する。CD34陽性幹細胞の含有量は、好ましくは、5〜5×10(好ましくは1×10〜1×10)の範囲にある。
【0030】
移植後は、動物を標準条件下または特定病原体不在条件下で飼育する。
【0031】
生成したキメラ状態の発生は、移植レシピエント動物の末梢血の試料に基づき、定期的な照査によって決定する。マウスの場合は、特に、後眼窩静脈叢または尾静脈から採血するとよい。ヒト細胞の比率は、好ましくは、ヒト特異的抗体(系列マーカー、分化抗原、活性化マーカー)を用いるフローサイトメトリーによって決定される。試料体積がごくわずかである場合は、種特異的汎白血球マーカー、例えばCD45を、可能であればドナー種とレシピエント種の直接比較に、それぞれ使用することが推奨される。
【0032】
好都合なことに、本発明の方法を適用した場合、移植の14日後には既に、末梢におけるヒト細胞の確実な検出が可能である。本発明の条件下では、この形のモニタリングにより、一時的再構成の成功に関して、信頼できる結論を得ることができる。さらにまた、末梢におけるヒト細胞の存在は、脾臓および骨髄における生着と相関する。
【0033】
本発明は、動物の新規コンディショニング方法を使って、標準化が可能な再現性の高い新規方法を、ヒト幹細胞に関連して提供することにより、ヒトキメラ動物の作出に関する従来技術の課題と欠点を、克服するものである。
【0034】
本方法は、等価なキメラの提供を可能にすることで、従来技術で知られている高い個体間変動性を減少させる。本発明の条件下で観察される死亡率はわずか10%である。
【0035】
本発明の新規な側面は、造血システムのヒト免疫担当細胞を形成させるキメラの信頼できる実現である。
【0036】
したがって本発明のさらにもう一つの目的は、造血システムのヒト免疫担当細胞を含有する非ヒト哺乳動物におけるヒト免疫システムの動物モデルである。特に、T細胞およびB細胞、単球、樹状細胞、NK細胞、顆粒球、ならびにCD34幹細胞が包含される。本発明の条件下では、全ての動物が、末梢血、脾臓、および骨髄にヒト生着を示す。造血の永続的再構成は好都合である。本発明に従って処置したNOD/SCIDマウスで移植後56日目にアッセイしたヒト血液像の発現および組成は、好都合なことに、5ヶ月間にわたって検出可能だった。それゆえ、本発明に従って作出される動物モデルは、極めて安定である。
【0037】
本発明は、有利には、特に反応性適応免疫システムに焦点をあてて、ヒトの免疫システムと同等(等価)な免疫システムを発現させる動物を提供する。本発明の動物モデルでは、ヒト免疫担当細胞が、有利には、人体における機能性と同等な機能性、特に、抗原に対する同等な応答、およびヒトのプロファイルと同等なサイトカインプロファイルを持つ。
【0038】
動物モデル中のヒト樹状細胞は、ヒトインターロイキン−8を構成的に産生する能力、ならびにヒトインターロイキン−6、ヒトインターロイキン−1β、およびヒト腫瘍壊死因子−α(TNF−α)を免疫刺激(例えばLPSによる刺激)後に産生する能力を持つ。
【0039】
驚いたことに、動物は移植片対宿主疾患の目に見える兆候を何も示さない。レシピエント生物におけるヒト造血幹細胞の新しい安定発現の結果として、そこから得られる細胞のさらなる移植を、有利には一匹または数匹の二次レシピエントで行うことができ、そうすることで、キメラ生物のさらなる増殖を行うことができる。
【0040】
コンディショニングした移植レシピエント動物は、その脾臓中に、ヒト細胞の範囲内で、均衡のとれた量のT細胞(中央値:29%)およびB細胞(中央値:20%)を持つ。さらにまた、ヒトNK細胞(中央値:0.36%)、単球(中央値:1.1%)、顆粒球(中央値:4%)およびCD34陽性幹細胞(中央値:0.7%)を検出することができる。中央値は21匹の動物の検査に基づく。
【0041】
ヒトB細胞の活性を示す証拠としてインビボでのヒト免疫グロブリンMおよび免疫グロブリンGの形成が証明された。
【0042】
樹状細胞(骨髄中のヒト細胞の0.2%〜2.4%)の高い反応性が、インビトロでのLPS刺激後のサイトカイン産生によって実証された。これらの細胞は、刺激の24時間後および48時間後に、IL−1β(>1,000pg/ml)、IL−6(>5,000pg/ml)、TNF−α(>90pg/ml)およびIL−10(>100pg/ml)などのサイトカインを産生する。サイトカインIL−8は既に構成的に分泌されている。このサイトカインパターンはヒトにおける感染イベントと同等である。適応免疫応答の活性化および発現に重要な役割を持つ強力な抗原提示細胞(外来抗原および内在抗原)としての樹状細胞の反応性を持ち、反応性ヒトT細胞およびB細胞が同時に存在することにより、ヒト免疫システムと等価な(キメラ)動物モデルの機能性が得られる。
【0043】
マウスにおけるヒト適応免疫システムの機能性は、誘導されたT細胞依存性抗原特異的抗体産生(免疫化)を確認することにより、疑いの余地なく実証された。免疫グロブリンGアイソタイプの抗原特異的抗体を生成させるという形で、免疫応答の成熟が証明された。
【0044】
このように本発明の動物モデルは、好都合なことに、製品開発および研究、特に薬理学的研究、前臨床試験、病原研究、新しい診断戦略または治療戦略の開発に適したヒト免疫システムのモデル系になる。
【0045】
ヒト反応性キメラを作出するための本発明の方法、およびそれによって作出される本発明の動物モデルは、有利には、ヒトモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体の生産を可能にする。動物に基づく外来部分および完全な生理的糖修飾を持たない完全ヒト抗体の生産は、とりわけ重要である。これらのヒト抗体は、医薬品市場、治療薬市場および診断薬市場において、極めて重要である。
【0046】
動物モデルにおいて本発明に従って生成されるヒト細胞は、有利には、外来抗原および内在抗原を検出する能力を持ち、それに基づいて免疫応答を生じさせる能力を持つ。これに基づいて、なかんずく、抗原特異的樹状細胞を生成させること、例えばヒト、ヒト化またはマウス治療抗体などを使用することによる免疫治療プロトコールを試験すること、免疫調節物質(クロマチン修飾因子、「小分子」)または免疫調節作用を持つ細胞集団(間葉系幹細胞、調節性T細胞、組織工学産物)を特徴づけることが、可能になりうる。
【0047】
このモデルは、有利には、感染性疾患(例えばHSV、EBV、HIV、風疹)、自己免疫疾患、腫瘍性疾患、移植関連疾患または炎症性疾患および治療戦略のモデルをさらに開発するためのプラットフォーム技術として、利用することができる。
【0048】
以下に、一つの実施形態と、それに関連する図面とを利用して、本発明の方法を説明する。
【実施例】
【0049】
1.調整上清の製造
ヒト肺細胞癌細胞株(ここではライプツィヒ大学動物学研究所から入手したII型肺細胞株358/8サブクローン[NCI−H358由来])または肉腫細胞株(VA−ES−BL、Deutsche Sammlung fuer Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH、ドイツ・ブラウンシュワイク、ACC328)を、5%ウシ胎仔血清を添加したRPMI 1640中、滅菌条件下で、対数増殖期に到達するまで増殖させる。調整培地を調製するために、2〜4×10細胞/mlを播種する。培養培地を3日後に回収して集め、滅菌条件下で濾過し(孔径0.2μm)、さらに使用するまで、少なくとも−20℃で、分割保存した。
【0050】
調整培養上清には、以下に挙げる濃度範囲でサイトカインが含まれる:IL−8(500pg/ml〜10ng/ml)、IL−6(50pg/ml〜1ng/ml)、VEGF(500pg/ml〜10ng/ml)、IP−10(20pg/ml〜1ng/ml)、MCP−1(500pg/ml〜10ng/ml)、ANG(20pg/ml〜1ng/ml)、およびtPA(500pg/ml〜15ng/ml)。
【0051】
しかし、TNF−α、IL−10、MIG、RANTES、sVCAM−1、sCD40L、bFGF、sP−セレクチン、またはIGFの存在は検出することができないか、高濃度には検出することができない(≦20pg/ml)。
【0052】
2.マウスにおいてヒト免疫システムを生成させる方法
少なくとも6週齢の雄および雌NOD/SCIDマウス(Jackson Laboratories, 米国)を、特定病原体不在条件下で飼育し、レシピエントとした。x線治療装置を使って動物の全身照射を350cGyで実行し、照射の3〜5時間後に、ヒト臍帯血から単離した1〜10×10個の単核球を、エーテル麻酔した動物の尾静脈に投与した。個別のドナー血に由来する細胞およびいくつかの混合血試料に由来する細胞を利用した。Boyum(1976)の方法に従い、リンパ球分離培地LSM 1077(PAA Laboratories、オーストリア・パッシング)を使った密度勾配遠心分離によって、単核球を単離した。単核球画分を移植に先だって少なくとも24時間は−196℃で保存し、移植日に、間に合うように融解した。移植を行うまで、細胞を培地またはPBS中に4℃で保存した。細胞の投与後、直ちに、上述のようにして得たヒト肺細胞株の調整細胞培地の初回用量200μlを、腹腔内投与した。さらに、移植後14日目まで二日ごとに、動物を鎮静させずに上清を追加投与した。
【0053】
追加コンディショニングの効果を実証するために、比較群には、各細胞画分を与え、細胞培養上清の投与は行わなかった。
【0054】
3.ヒトキメラ状態および免疫システムの機能性の特徴づけ
マウスのヒト造血再構成の照査として、移植後14日目から開始して二週間毎に、約75μlの血液試料を、尾静脈穿刺によって、またはメスで尾静脈をわずかに傷つけることによって、各マウスから採取した。凝固を防ぐために、ヘパリンナトリウムを試料に加えた後、試料を良く混合した。移植の8週間後に、ヒト長期生着を決定するためにマウスを屠殺し、その動物の末梢血、脾臓、骨髄および肝臓を単離した。固形臓器から単細胞懸濁液を機械的に調製した。必要に応じて、それらの細胞から結合組織を分離するために、ナイロンフィルターで濾過を行った。赤血球は蒸留水で溶解するか、塩化アンモニウム含有緩衝液を使って溶解した。生着を特徴づけるために、マウス抗原との考えうる交差反応性に関して分析前に試験しておいた直接コンジュゲートヒト特異的抗体を利用した。以下のヒト特異的抗体を利用した:CD45、CD3、CD19、CD56、CD14、CD16、CD34、HLA−DR、抗lineageカクテル、CD11c、CD123(Becton Dickinson、ドイツ・ハイデルベルク)。さらにまた、特異性対照として、マウス特異的CD45抗体(IQ Products、ドイツ・オルデンブルク)によるマーキングも行った。個々の系列に関するデータは、ヒトCD45陽性細胞に対する相対比率に基づく。マーキングした試料をFACS Calibur(Becton Dickinson)で分析した。ヒトCD45陽性細胞の含有量が≧0.1%であった場合に、そのレシピエントはヒトキメラ状態を示したとする。
【0055】
調整細胞培養上清を利用することにより、臍帯血の単核球5×10個および10×10個の移植後に、全ての動物がヒトキメラ状態を示す。動物の死亡率は10%だった。
【0056】
図1は、調整上清を投与した移植レシピエントNOD/SCID動物の移植8週間後の末梢血、脾臓および骨髄のフローサイトメトリー分析の結果を示している。これらのドットプロットは、CD19(一般的なB細胞マーカー)、CD3(一般的なT細胞マーカー)、CD34(幹細胞マーカー、主として造血幹細胞および系列拘束された(linien-gepraegte)前駆細胞を含む)などのヒト特異的抗体によって特徴づけられる生細胞を、CD45(一般的な白血球マーカー)に対してプロットしたものを示している。
【0057】
図1に示すように、ヒトTリンパ球およびヒトBリンパ球ならびにヒト造血幹細胞が生成した。さらにまた、ヒト単球およびヒトNK細胞およびヒト顆粒球も検出された。上述の細胞集団は、末梢血、脾臓、および骨髄など、全ての造血器官に検出することができる。
【0058】
図2aは、調整上清を投与した移植レシピエントNOD/SCID動物における移植8週間後の骨髄(脾臓および末梢血を代表)のフローサイトメトリー分析を示している。これらのドットプロットは、HLA−DR、CD11c(右図、領域R5)またはCD123(左図、領域R4)などのヒト特異的抗原の発現、ならびに系列特有の抗原、例えば抗lineageカクテル抗体混合物に含まれるCD3(一般的なT細胞マーカー)、CD16(好中性顆粒球、NK細胞の亜群、および単球、マクロファージのマーカー)、CD19およびCD20(一般的なB細胞マーカー)、CD14(単球マーカー、マクロファージ、好中球、好酸球の検出)ならびにCD56(一般的なNK細胞マーカー、T細胞の亜群)の不在によって特徴づけられるヒト樹状細胞を示している。
【0059】
図2aでは、系列特有の抗原が発現していないか、ごくわずかしか発現してない生細胞が、図示されている。これらの細胞は、二つのヒト樹状細胞集団を含んでいる。
【0060】
形質細胞様(plasmoide)樹状細胞集団はCD123およびHLA−DRの発現によって特徴づけられる(図2a、左図、領域R4)。キメラ動物の骨髄では、中央値で0.21%の細胞が、形質細胞様樹状細胞である。全身性細菌感染の代用物としてLPS(10μg/マウス)を全身投与すると、形質細胞様樹状細胞の比率が2.4%に増加する。
【0061】
骨髄系樹状細胞集団は、細胞表面に、CD11cおよびHLA−DRを発現させる(図2a、右図、領域R5)。キメラ動物の骨髄では、中央値で0.17%の細胞が、骨髄系樹状細胞である。全身性細菌感染の代用物としてLPS(10μg/マウス)を全身投与すると、骨髄系樹状細胞の比率が2.1%に増加する。
【0062】
樹状細胞は抗原提示細胞の重要な代表であり、適応免疫応答を生じる根拠になる。さらにまた、それらは免疫寛容の発生過程にも重要な関与をする。これらの細胞の機能的反応性は、LPSによる全身刺激後の樹状細胞の比率の増加から導かれる。
【0063】
さらにまた、ヒト好塩基性細胞(I型アレルギー反応のエフェクター細胞)も検出された(図2a、左図、領域R3)。
【0064】
図2bは、調整上清を投与したヒト化NOD/SCIDマウスのLPS刺激(10μg/ml、白いバー)後の単離骨髄細胞のサイトカイン放出を、刺激なしの対照(黒いバー)と比較した図である。
【0065】
ヒト細胞の活性を調べるために、感染の代用物として、インビトロで、再構成NOD/SCIDマウスの骨髄細胞を、LPSで刺激した。刺激なしの対照も行った。刺激の24時間後および48時間後に、培養上清中のヒト特異的サイトカイン、例えばIL−1β、IL−6、IL−8、IL−10、IL−12p70およびTNF−αを、BDサイトメトリービーズアレイ分析により、FACS−Scan(Becton Dickinson)で決定した。
【0066】
強い誘導性サイトカイン放出に基づいて、ヒト樹状細胞の反応性が明確に実証された(図2b)。これらの細胞は、刺激の24時間後および48時間後に、IL−1β(>1,000pg/ml)、IL−6(>5,000pg/ml)、TNV−α(>90pg/ml)およびIL−10(>100pg/ml)などのサイトカインを産生する。サイトカインIL−8は既に構成的に分泌されている。このサイトカインパターンはヒトにおける感染イベントのサイトカインパターンと同等である。さらにまた、対照培養物におけるIL−1β、IL−6、IL−10、TNF−αおよびIL−12p70のサイトカイン分泌が存在しないか、ごくわずかであることから、この骨髄の細胞は再構成マウスにおける炎症イベントを表す予備刺激を示さないと言うことができる。
【0067】
図3aおよび3bは、調整細胞培養上清の投与が、移植レシピエントマウスの脾臓におけるヒトTリンパ球およびBリンパ球の分布に及ぼす影響を示している。図3aは調整上清を投与しない対照を表し、図3bは調整上清を投与した場合を表す。個々の細胞系列に関するデータ(中央値、黒い三角形およびバーの右横に数値)を、ヒトCD45陽性細胞に対する相対比率として記載する。バーは、試験動物内での分布(二つの四分位値および二つの極値)を表す。
【0068】
コンディショニングがTリンパ球およびBリンパ球の分布に及ぼす影響を、対照と比較して、図3に図示する。調整細胞培養上清を投与しない場合(図3a)、ヒト化動物は主としてB細胞を産生し(中央値:62%CD19陽性細胞)、それらは血中ならびに脾臓および骨髄中に検出することができる。これらの動物はT細胞(CD3陽性細胞)を中央値で1.6%しか持たない。
【0069】
これに対し、調整細胞培養上清の投与後は(図3b)、均衡のとれた量のT細胞(29%CD3陽性細胞)およびB細胞(20%CD19陽性細胞)が形成される。これらの動物は、1%の単球/マクロファージ(CD14陽性細胞)、4%のCD16陽性細胞(NK細胞、顆粒球、単球の亜群)および0.7%のCD34陽性幹細胞または拘束された前駆細胞という、中央値の分布を持つ。Bリンパ球およびTリンパ球の均衡のとれた分布に基づいて、特異的免疫反応、特にT細胞依存性免疫反応を生成させるための前提条件が与えられる。全てのキメラ動物は、調整細胞培養上清の投与後に、特に骨髄に局在するCD34陽性幹細胞集団を産生した。このようにして、これらの動物では、永続的な造血が保証される。したがって、選択したキメラ動物の骨髄をさらなるレシピエントに移植することにより、選択条件下で増殖を行うことができる。
【0070】
個々のヒト細胞型の検出(図1、2、3)により、機能的反応性(特に適応免疫システムの機能的反応性)にとっての前提条件が与えられる。
【0071】
図4aおよび4bは、調整上清を利用してヒト単核球を移植した後のヒトキメラ状態の生成動態を示している。ヒトCD45陽性細胞の含有量が全細胞の≧0.1%であるレシピエントは、ヒトキメラ状態を示す。
【0072】
これに関連して、図4aは、5×10個のMNCが移植された全ての動物の血液におけるヒトCD45陽性細胞の含有量中央値(菱形付きの黒線)および14日目と比較したヒトCD45陽性細胞含有量の増加(白いバー)を示している。
【0073】
図4bは、5×10個のMNCを移植した動物の血液におけるヒトCD45陽性細胞の平均含有量を、ヒト生着の発生の関数として示している。動物の分類は、「低」応答動物(CD45陽性細胞の相対比率の増加が14日目と比較して<1、n=9[9匹])および「高」応答動物(CD45陽性細胞の相対比率の増加が14日目と比較して>1、n=12[12匹])に基づいた。
【0074】
「低」応答動物に関するデータ(下向きの三角形)を丸付の黒線および黒いバーで表す。「高」応答動物に関するデータ(上向きの三角形)を四角形付の黒線および白いバーで表す。
【0075】
表面分子CD45は全ての白血球によって発現される。したがってヒトCD45陽性細胞の含有量は、宿主におけるヒト造血システムの発生を表す。
【0076】
5×10個の細胞を投与した後に、全ての動物が、任意の時点で検出することのできるヒト生着を示した(ヒトCD45陽性細胞の含有量が全細胞の≧0.1%)。図4aに図示するように、血液におけるCD45陽性細胞の比率は、移植後14日目から56日目まで、継続的に増加する。56日目には、平均で13倍の増加を検出することができる。全ての移植動物の血液におけるヒトCD45陽性細胞の平均含有量は10.5%である。しかし、試験動物群内で、良い応答動物と悪い応答動物とに細分化することができ、それらはCD45細胞含有量の決定によって早期に決定することができる。この細分化は、14日目と比較して、他の全ての分析日に、血液中のヒトCD45陽性細胞の含有量の増加を決定することによって、達成された。1より大きい値を「高」応答動物とし、1より小さい値を「低」応答動物とする。したがって、移植後28日目には既に、個々の動物の再構成能に関して言明することができ、42日目には高い信頼性を持って言明することができる(図4b)。移植後56日目に、「高」応答動物は血中に平均で18%のヒトCD45陽性細胞を持つのに対して、「低」応答動物の場合は平均でわずか0.7%である。
【0077】
図5は、調整上清を投与した後のヒト化マウスのリンパ系器官におけるヒトCD45陽性細胞の相対含有量中央値(移植後56日目)を、低生着群および高生着群の関数として示している。図4bに関連して説明したように、動物は、「高」応答動物(図5の左側−「高」、n=12[12匹])と、「低」応答動物(図5の右側−「低」、n=9[9匹])とに、分類される。
【0078】
末梢血中のヒトCD45陽性細胞の相対含有量の決定は、脾臓および骨髄(BM)におけるヒト細胞の含有量と、高度に相関する(図5)。したがって「高」応答動物は、骨髄中に中央値(図5の黒い三角形)で36.5%のヒトCD45陽性細胞を持ち、一方、「低」応答動物の場合はわずか0.6%である。同等な状態が脾臓における細胞の分布でも再現される(18.4%対1.3%)。
【0079】
したがって、末梢血におけるヒトCD45陽性細胞の含有量の増加を決定することにより、個体間の振れが少ない試験動物群を、さらなる実験のために、容易に選択することができる。図示した結果は、全ての造血器官にヒト細胞が定着することも実証している。
【0080】
図6は、移植8週間後のヒト化マウスの骨髄におけるヒトCD45陽性細胞の相対含有量中央値を、適用したMNCの数(したがってそこに含まれる幹細胞の数)、調整上清の使用ならびに支持細胞の使用の関数として、図示している。中央値を菱形で図示し、対応する数値を、それぞれバーの右横に示す。臍帯血の単核球のAC133陰性細胞画分を支持細胞として使用した。AC133は、特に造血幹細胞(そしてこれらの細胞の大部分はCD34を保有する)ならびに神経幹細胞および膵臓細胞の前駆細胞によって発現される表面分子である。この細胞画分は、対照実験において、それら自体の造血細胞生着を起こさなかった。
【0081】
キメラ状態のレベルは、適用する細胞の数に依存する(図6)。臍帯血の単核球(MNC)1×10個の投与後に、調整上清によるレシピエントの追加コンディショニングを行わなかった場合は、わずかな動物が、極めて低レベルのキメラ状態を発現させるにすぎない(n=7[7匹]、左端の欄)。ヒトCD45陽性細胞の相対比率は中央値が0.01%なので、成功した生着の定義よりも低い。
【0082】
調整細胞培養上清を使用することにより(n=4[4匹]、左から2番目の欄)、動物は中央値で0.02%のヒトCD45陽性細胞を発現させる。
【0083】
しかし、1×10個のMCNを4×10個の支持細胞(臍帯血のAC133陰性MNC)と共に投与し、調整上清を加えると、動物は、ヒトキメラ状態をうまく発現させることができる(n=5[5匹]、左から3番目の欄)。CD45陽性細胞の相対比率の中央値は9.8%である。
【0084】
5×10個の支持細胞(臍帯血のAC133陰性MNC)を与えた対照動物はヒト生着を示さなかった(n=5[5匹]、右から2番目の欄)。調整上清の追加投与は、ヒトCD45陽性細胞の形成を強化しなかった(0.01%のCD45陽性細胞、n=2[2匹]、右端の欄)。
【0085】
しかし、10×10個の細胞を投与した後に、上清によるコンディショニングを行わないで、動物に有意なキメラ状態が生じたことは、注目に値する(43.4%のCD45陽性細胞、n=9[9匹]、中央の欄)。
【0086】
しかし、10×10個の細胞を投与した後に細胞培養上清によるレシピエントのコンディショニング下で極めて高レベルに生成するキメラ状態の極めて低い変動性は、際立っている(46.4%、CD45陽性細胞、n=5[5匹]、右から3番目の欄)。この低い変動性は、極めて高レベルで存在する安定したヒトキメラ状態と共に、(例えば病原研究などのための)ヒト化マウスのさらなる投与にとって、理想的な前提条件である。
【0087】
形成されたヒトB細胞のマウスにおける適正な機能をアッセイするために、血清中のヒト免疫グロブリンM(IgM)および免疫グロブリンG(IgG)を、ELISAによって決定した。この試験は、マウス免疫グロブリンとの交差反応性を示さない。検出限界は20ng/mlの免疫グロブリンである。
【0088】
免疫グロブリン(Ig)のヒト特異的な決定によって、5×10個の細胞の移植後に、キメラにおけるB細胞のインビボ反応性を実証した。IgG産生は、49日目に752ng/mlで検出され始め、IgM産生を伴って、56日目の6,728ng/mlというレベルまで、継続的に増加した。
【0089】
ヒト適応免疫システムの適正な機能を調べるために、破傷風トキソイド(TT)を使って、ヒト化NOD/SCID動物のT細胞依存性免疫化を行った。ELISAによるヒト特異的TT特異抗体アッセイ(IgG、IgM)で、免疫反応性をアッセイした(図7)。
【0090】
説明した方法に従って相対T細胞比率が>20%(移植後56日目における血中のCD3陽性細胞の相対比率、n=2;図7左側のT細胞群)である完全なヒト免疫システムを発生させた動物で、実験を行った。対照群として、血中の相対ヒトT細胞比率が<2%である動物を使用した(図7右側のB細胞群、n=6)。免疫化は、0日目(免疫化の0日目は移植後56日目に相当する)、14日目、28日目、42日目に、それぞれ50μgの破傷風トキソイドをGERBUアジュバント10(Gerbu、ガイベルク)に入れて、腹腔内に行った。抗体の形成を、免疫化後42日目(D42)に測定した(移植後112日目に相当する)。
【0091】
図7は、樹立されたヒト免疫システムを持つマウスにおいて、破傷風トキソイド(TT)による免疫化後に、抗原特異的免疫応答がIgM抗体およびIgG抗体の形で達成されることを示している。高いT細胞含有量を持つ動物(T細胞群−白いバー)では、免疫化(Imm)後42日目(D42)に、破傷風トキソイド特異的なヒトIgM(hu−TT−IgM)およびIgG(hu−TT−IgG)抗体を検出することができる。相対T細胞比率が低いキメラ動物(B細胞群−黒いバー)では、TT特異的抗体が産生されなかった。
【0092】
マウス中に生成したヒト免疫システムは安定であり、移植後3ヶ月をはるかに越えても依然として機能的であることが、ヒト抗体の形でのT細胞依存性免疫応答に基づいて証明された(図7)。
【0093】
引用文献の一覧
(1)Tornell J, Snaith M. “Transgenic systems in drug discovery: from target identification to humanized mice” Drug Discovery Today 2002; 7(8):461−470.
(2)Bolon B. “Genetically engineered animals in drug discovery and development: A maturing resource for toxicologic research” Basic & Clinical Pharmacology & Toxicology 2004; 95(4):154−161.
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(11)Cravens PD, Melkus MW, Padgett−Thomas A, Islas−Ohlmayer M, del M, Garcia JV. “Development and Activation of Human Dendritic Cells In Vivo in a Xenograft Model of Human Hematopoiesis” Stem Cells 2005; 23(2):264−278.
【0094】
略号の一覧
本発明の説明および図面では、以下の略号を使用する。
ANG :アンギオゲニン
APC:アロフィコシアニン
bFGF:塩基性線維芽細胞増殖因子
CD:分化クラスター
CFSE:カルボキシフルオレシンスクシンイミジルエステル
DSZM:Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH(ドイツ微生物細胞培養収集機関)
EBV:エプシュタイン・バーウイルス
ELISA:酵素結合免疫吸着アッセイ
HLA:ヒト白血球抗原
HIV:ヒト免疫不全ウイルス
HSV:ヒト口内炎ウイルス
hu:ヒト
IGF:インスリン様成長因子
IL:インターロイキン
IP−10:インターフェロン−γ誘導タンパク質10
KM:骨髄
LPS:リポ多糖
MCP−1:単球化学誘引タンパク質−1
MIG:インターフェロンγ誘導モノカイン
MNC:単核球
NOD:非肥満糖尿病性
NK:ナチュラルキラー
PC7:フィコシアニン7
PE:フィコエリトリン
PerCP:ペリジニンクロロフィルタンパク質
RANTES:ランテス(regulated upon activation, normal T−cell expressed and secretedの頭字語)
sCD40L:可溶性CD40リガンド
SCID:重症複合免疫不全症
sPセレクチン:可溶性血小板セレクチン
sVCAM−1:血管細胞接着分子−1
TNF−α:腫瘍壊死因子−アルファ
tPA:組織型プラスミノゲン活性化因子
VEGF:血管内皮増殖因子
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1a】図1aは、調整上清を投与した移植レシピエントNOD/SCID動物の移植8週間後の末梢血、脾臓および骨髄のフローサイトメトリー分析の結果を示す。
【図1b】図1bは、調整上清を投与した移植レシピエントNOD/SCID動物の移植8週間後の末梢血、脾臓および骨髄のフローサイトメトリー分析の結果を示す。
【図2a】図2aは、調整上清を投与した移植レシピエントNOD/SCID動物における移植8週間後の骨髄(脾臓および末梢血を代表)のフローサイトメトリー分析を示す。
【図2b】図2bは、調整上清を投与したヒト化NOD/SCIDマウスのLPS刺激(10μg/ml、白いバー)後の単離骨髄細胞のサイトカイン放出を、刺激なしの対照(黒いバー)と比較した図である。
【図3a】図3aは、調整細胞培養上清の投与が、移植レシピエントマウスの脾臓におけるヒトTリンパ球およびBリンパ球の分布に及ぼす影響を示す。
【図3b】図3bは、調整細胞培養上清の投与が、移植レシピエントマウスの脾臓におけるヒトTリンパ球およびBリンパ球の分布に及ぼす影響を示す。
【図4a】図4aは、調整上清を利用してヒト単核球を移植した後のヒトキメラ状態の生成動態を示す。
【図4b】図4bは、調整上清を利用してヒト単核球を移植した後のヒトキメラ状態の生成動態を示す。
【図5】図5は、調整上清を投与した後のヒト化マウスのリンパ系器官におけるヒトCD45陽性細胞の相対含有量中央値(移植後56日目)を、低生着群および高生着群の関数として示す。
【図6】図6は、移植8週間後のヒト化マウスの骨髄におけるヒトCD45陽性細胞の相対含有量中央値を、適用したMNCの数(したがってそこに含まれる幹細胞の数)、調整上清の使用ならびに支持細胞の使用の関数として、図示する。
【図7】図7は、樹立されたヒト免疫システムを持つマウスにおいて、破傷風トキソイド(TT)による免疫化後に、抗原特異的免疫応答がIgM抗体およびIgG抗体の形で達成されることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)造血能を持つヒト幹細胞を非ヒト哺乳動物に移植するステップ、および
b)ヒト細胞株、ヒト細胞および/またはヒト組織の培養物の細胞培養上清で、非ヒト哺乳動物をコンディショニングするステップ
を含む、非ヒト哺乳動物におけるヒト免疫システムの動物モデルを作出する方法。
【請求項2】
細胞培養上清がサイトカインおよび他の分子媒介因子(機能分子)を産生する細胞株から得られることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
細胞培養上清が、因子インターロイキン−8、インターロイキン−6、および血管内皮増殖因子(VEGF)、インターフェロン−γ誘導タンパク質10、単球化学誘引タンパク質−1、アンギオゲニン、および組織型プラスミノゲン活性化因子を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
非ヒト哺乳動物がマウス、好ましくはNODマウスまたはNOD/SCIDマウスであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
造血能を持つヒト幹細胞が好ましくは臍帯血に由来することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
移植が非ヒト哺乳動物の照射の3〜24時間後に行われることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
コンディショニングが細胞培養上清の静脈内投与または腹腔内投与によって達成されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
コンディショニングが、移植日から開始して、好ましくは移植後4週間行われることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
細胞培養上清によるコンディショニングに加えて、それ自体は造血能を持たない支持細胞、好ましくは幹細胞供給源の幹細胞枯渇細胞集団もしくは幹細胞陰性細胞集団または間葉系幹細胞を、非ヒト哺乳動物に投与することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる、非ヒト哺乳動物におけるヒト免疫システムの動物モデル。
【請求項11】
造血システムのヒト免疫担当細胞を含む非ヒト哺乳動物におけるヒト免疫システムの動物モデルであって、前記細胞が特にT細胞およびB細胞、単球、樹状細胞、NK細胞、顆粒球ならびにCD34幹細胞を含む動物モデル。
【請求項12】
ヒト免疫担当細胞が人体と同等な機能性、特に、抗原に対する同等な応答および同等なヒトサイトカインプロファイルを持つことを特徴とする、請求項11に記載の動物モデル。
【請求項13】
動物モデル中のヒト樹状細胞が、ヒトインターロイキン−8を構成的に産生する能力ならびにヒトインターロイキン−6、ヒトインターロイキン−1β、およびヒト腫瘍壊死因子−アルファ(TNF−α)を免疫刺激後に産生する能力を持つことを特徴とする、請求項11または12に記載の動物モデル。
【請求項14】
製品開発、特にヒト抗体の製造を目的とする、または薬理学的研究、免疫学的研究、微生物学的研究、および医学的研究のためのモデル系としての、請求項10から13のいずれか一項に記載の動物モデルの使用。
【請求項15】
動物実験疾患モデルを、特に病原研究のために、そして/または新しい診断戦略および/もしくは治療戦略を開発するために、作出し利用するための、請求項10から13のいずれか一項に記載の動物モデルの使用。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−539771(P2008−539771A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−511550(P2008−511550)
【出願日】平成18年5月17日(2006.5.17)
【国際出願番号】PCT/DE2006/000893
【国際公開番号】WO2006/122545
【国際公開日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【出願人】(507381019)ウニベルジテート・ライプツィヒ (4)