説明

ヒューズボックス

【課題】 ヒューズボックスの止水性の向上および安定化を図る。
【解決手段】 バッテリーボックス40上に搭載されるヒューズボックス10において、アッパカバー12の周壁12aの下端面12bをケース本体11にロック結合するロアカバー13の底壁13bあるいはケース本体11の底壁11eに当接させて第一止水部Aとし、ケース本体11の底壁11eから立設している本体周壁11aをアッパカバー12の周壁12aの内面と所要幅の圧力低下用空隙Sをあけて設けていると共に、該本体周壁11aの上端より外側に屈曲して形成したリブ11bを、アッパカバー12の周壁12aの内面側に突出させて第二止水部Bとし、第二止水部Bと第一止水部Aとの間に圧力低下用空隙Sを介在させ、第一止水部Aを通して外部から浸入する高圧水が圧力低下用空隙Sで圧力が低下されて上方位置の第二止水部Bを通過不能とする防水機構を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒューズボックスに関し、詳しくは、バッテリーボックスの上部に搭載し、バッテリーターミナルに接続されるバスバーおよびバスバーに介設されるヒューズを収容しており、特に、ヒューズに対する防水機能を高めているものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等に搭載されるヒューズボックスの従来の止水構造として、例えば、特開平9−308053号(特許文献1)に開示されている図9の構造が挙げられる。
図9に示されるように、バスバー6やヒューズ7などを取り付けているケース本体2と、該ケース本体2の上面に被せるアッパカバー3と、ケース本体2の下面に被せるロアカバー4とからなり、ケース本体2とアッパカバー3、ロアカバー4とをロック部5a、5bで互いにロック結合してなる電気接続箱1において、アッパカバー3の全周壁3aに沿った内側にリブ3bを設けて二重壁構造とし、この周壁3aとリブ3bとの間にケース本体2の周壁2aを内嵌させて、電気接続箱1全体を止水構造としている。
【0003】
前記従来構造では、アッパカバー3の全周壁3aとリブ3bとの二重壁構造により止水しているが、全周を二重壁として止水機能を持たせると大型化し、搭載位置にスペース上の制限がある場合に搭載しにくくなる。また、アッパカバーの全周壁3aにリブ3bを設けた場合、ソリやヒケによって変形しやすく、組みつけ性に問題が発生する場合がある。
【0004】
【特許文献1】特開平9−308053号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記問題に鑑みてなされたもので、ケース全体を大型化させることなく、止水が必要な箇所に確実な止水機構を設けることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は、ケース本体内部にバッテリーターミナルと接続されるバスバーを収容していると共に、該バスバーに接続されたヒューズを備え、該ケース本体にアッパカバーを被せて結合し、バッテリーボックス上に搭載されるヒューズボックスであって、
前記アッパカバーの周壁の下端面を前記ケース本体にロック結合するロアカバーの底壁あるいは前記ケース本体の底壁に当接させて第一止水部としている一方、
前記ケース本体の底壁から立設している本体周壁を前記アッパカバーの周壁内面と所要幅の圧力低下用空隙をあけて設けていると共に、該本体周壁の上端を屈曲し、アッパカバーの周壁内面側に突出させて第二止水部とし、該第二止水部と前記第一止水部との間に前記圧力低下用空隙を介在させ、前記第一止水部を通して外部から浸入する高圧水が前記圧力低下用空隙で圧力が低下されて上方位置の前記第二止水部を通過不能とする防水機構を備えていることを特徴とするヒューズボックスを提供している。
【0007】
前記防水機構は、ベルヌーイの法則および質量保存の法則を用いている。即ち、前記第一止水部の狭い隙間から浸入する水は高圧でアッパカバー内に入るが、該第一止水部と第二止水部との間に圧力低下用空隙が介在することにより、この圧力低下用空隙で水が左右に逃げて圧力が分散、低下するため、圧力不足により第二止水部の狭い隙間を水が通過することができず、ケース本体内部への水の浸入を防ぐことができる。この防水機構により、常に安定した一定かつ高度な防水性能を確保することができるため、特にヒューズの浸水や腐食等を防止することができる。
【0008】
前記ヒューズの配置部分に当たる外周位置に前記第一止水部、圧力低下用空隙および第二止水部を備えた防水機構を設けてもよい。
即ち、防水性能の点においては、ヒューズボックスの全周囲に前記防水機構を設けることが望ましいが、他の箇所での浸水はヒューズボックスの下部に形成した排水穴からも排水されるため、 特に水がかからないようにする必要があるヒューズ配置位置の外周部分に設けるだけでもよい。また、前記防水機構を部分的に設けることにより、全周に設ける場合に比して圧力低下用空隙の形成スペースも減少するため、レイアウト性が向上し、ヒューズボックスの小型化も可能となる。
【発明の効果】
【0009】
上述したように、本発明によれば、第一止水部から浸入した高圧の水が圧力低下用空隙で分散し、圧力が低下するため、第二止水部からケース本体内への水の浸入を防止することができる。また、アッパカバーやケース本体あるいはロアカバーの周壁にソリやヒケによる変形が生じても、前記防水機構による止水性は影響を殆ど受けないため、常に安定した高い防水性能を備えることができる。
【0010】
さらに、ヒューズ配置部分の外周位置にのみ前記防水機構を備えることにより、ヒューズの浸水防止とレイアウト性の向上あるいはヒューズボックスの小型化をバランスよく実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。なお、以下に説明するいずれの実施形態も、自動車のエンジンルームの浸水領域に配置されるヒューズボックスに本発明を適用している。
【0012】
図1乃至図5は本発明の第一実施形態に係るヒューズボックス10を示す。ヒューズボックス10は、ケース本体11に複数のバスバー21、22、23および該バスバー21、22、23に接続した2つのヒュージブルリンク25、26を備え、該ケース本体11にアッパカバー12とロアカバー13を被せて結合し、バッテリーボックス40の上に搭載している。
【0013】
詳しくは、前記ケース本体11の上面には、図2に示すように、1枚の入力側バスバー21と2枚の出力側バスバー22、23を配置している。ヒュージブルリンク25の入力端子25aとヒュージブルリンク26の入力端子26aを、入力側バスバー21の一端側に突設したボルト21a、21bに嵌めてナットNで締結固定し、ヒュージブルリンク25の出力端子25bを出力側バスバー22の一端側のボルト22aに、ヒュージブルリンク26の出力端子26bを出力側バスバー23の一端側のボルト23aに、それぞれ嵌めてナットNで締結固定している。
これらバスバー21〜23は、ケース本体11の周壁11aの所要位置の内側に突設したバスバー固定爪11fによりケース本体11に固定されている。
【0014】
入力側バスバー21の他端側は、バッテリーターミナルBTのバッテリー端子31と接続する接続片21cとしている。バッテリー端子31は、スタータへ接続される電線w1と、リレーボックスへ接続される電線w0に圧着接続(共圧)され、先端には円弧部31aと、該円弧部31aから突出する一対の締付片31b、31cとを備えている。入力側バスバー21の前記接続片21cには、この締付片31b、31cに形成されたボルト穴(図示せず)と連通するボルト穴21dを設けている。
出力側バスバー22の他端側には、ボルト22bを突設し、図2に示すように、出力電線w2に圧着接続した穴あき端子32を該ボルト22bに嵌めてナットNで締結固定している。同様に、出力側バスバー23の他端側にもボルト23bを突設し、出力電線w3に圧着接続した穴あき端子33をボルト23bに嵌めてナットNで締結固定している。
【0015】
アッパカバー12は、図1に示すように、全周壁12aを一重構造としている。また、アッパカバー12の周壁12aは、その下端面12bを、アッパカバー12をケース本体11に被せたときに該ケース本体11にロック結合するロアカバー13の底壁13bの最外周縁の上面に当接させ、第一止水部Aを形成している。該周壁12aの外面には、図4(A)(B)に示すように、後述のロアカバー13の被ロック部17bに係止されるロック部17aを形成している。
【0016】
ロアカバー13は、図5(A)(B)に示すように、底壁13bの最外周縁より所要幅あけた内側位置より周壁13aを立設し、図1に示すように、アッパカバー12を被せたときに、アッパカバー12の周壁12aとロアカバー13の周壁13aとの間に空隙Sが形成されるようにしている。
【0017】
また、ロアカバー13の底壁13bの所要位置の上面には、最外周縁よりも外側に突出するように被ロック部17bを形成している。
さらに、ロアカバー13の底壁13bには排水穴15を設けている。詳しくは、ヒュージブルリンク25、26の設置位置の真下にそれぞれ1箇所ずつの排水穴15aを形成し、出力側バスバー22、23と穴あき端子32、33との接続箇所の下に排水穴15bを2箇所ずつ形成している。
【0018】
ケース本体11の全周には、図1に示すように、前記ロアカバー13にケース本体11をロック結合したときにおけるロアカバー13の周壁13aの内側位置より周壁11aを立設し、該周壁11aの外面をロアカバー13の周壁13aの内面に接触させている。この周壁11aのうち、バッテリーターミナルBTの取付部と出力電線w2、w3の導出部を除く全長にわたって、図2および図3にも示すように、その上端を外側に屈曲させてリブ11bを突設している。図1に示すように、このリブ11bの下面11cはロアカバー13の周壁13aの上端面に接している。また、該リブ11bの先端面11dはアッパカバー12の周壁12aの内面に当接させて、第二止水部Bを形成している。
さらに、ケース本体11の底壁11eにも排水穴16を形成している。
【0019】
次に、前記構成の電気接続箱10をバッテリーボックス40の上に固定する方法を説明する。
まず、ケース本体11の下面にロアカバー13を被せ、図2に示すように互いにロック部18で結合する。
次に、図2に示すように、バッテリー端子31の円弧部31aをバッテリーボックス40の上方に突出したバッテリーポスト41に外嵌し、締付片31b、31cのボルト穴と入力側バスバー21の接続片21cのボルト穴21dを重ねあわせ、ボルトBを通してナットNで締め付けることで、円弧部31aをバッテリーポスト41に外嵌固定し、バッテリーとヒュージブルリンク25、26との電気接続を図ると同時に、ヒューズボックス10をバッテリーボックス40の上面に固定する。
最後に、アッパカバー12をケース本体11の上面に被せ、アッパカバー12のロック部17aとロアカバー13の被ロック部17bとをロック結合する。
【0020】
前記構成のヒューズボックス10は、図1に示すように、アッパカバー12の周壁12a、ロアカバー13の周壁13aと底壁13b、ケース本体11のリブ11bとで囲まれた圧力低下用空隙Sを外周部に備えると共に、該圧力低下用空隙Sを前記第一止水部Aと上方位置の第二止水部Bとの間に介在させている。従って、万が一、第一止水部Aのわずかな隙間から水が高圧でボックス内に浸入しても、前記圧力低下用空隙S内で水が左右に逃げることにより、水の圧力は分散、低下し、圧力不足によって第二止水部Bからケース本体11内部への浸入は不可能となる。
【0021】
図6および図7は本発明の第二実施形態を示し、リブ11bの形成範囲において第一実施形態と相違するが、その他の点では第一実施形態と同一構成であるため同一符号を付して説明を省略する。
【0022】
詳しくは、ケース本体11の周壁11aのうち、前記ヒュージブルリンク25、26の配置部分の外周位置と出力側バスバー23の外周位置にのみリブ11bを突設している。また、ケース本体11の周壁11aの内側にバスバー固定爪11fを形成している箇所については、前記リブ11bを設けていない。
【0023】
本実施形態においては、高度な防水性が求められるヒュージブルリンク25、26の配置部分の外周位置に、圧力低下用空隙Sと、該空隙Sを挟む第一止水部Aと第二止水部Bとが配置されているため、ヒューズボックス10に求められる防水性を一定に確保することができる。また、このような防水機構を他の外周部に設けないことにより、レイアウト性が向上し、ヒューズボックス10の小型化も可能となる。
【0024】
図8は本発明の第三実施形態を示し、ロアカバーがなく、アッパカバー12とケース本体11とで防水機構を形成している点で前記第一、第二実施形態と相違している。
【0025】
詳しくは、アッパカバー12の周壁12aの下端面12bは、ケース本体11の底壁11eの最外周縁の上面に当接して第一止水部Aを形成している。ケース本体11の周壁11aは、アッパカバー12の周壁12aの内面より所要幅あけた位置に立設し、該周壁11aの上端を外側に屈曲させてリブ11bを突設し、該リブ11bの先端面11dをアッパカバー12の周壁12aの内面に当接させて第二止水部Bを形成している。
なお、アッパカバー12とケース本体11とは、アッパカバー12のロック部17aをケース本体11の被ロック部17cに係止して互いにロック結合している。
【0026】
本実施形態においては、ロアカバーはないが、アッパカバー12の周壁12aとケース本体11の周壁11aの間に、前記第一止水部Aと第二止水部Bとに挟まれた圧力低下用空隙Sを形成しているため、第一止水部Aから浸入した高圧水をこの圧力低下用空隙Sで分散して圧力低下させ、第二止水部Bからケース本体11内への水の浸入を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】 本発明の第一実施形態に係るヒューズボックスの防水機構を示す拡大断面図である。
【図2】 バッテリーボックス上に載置したヒューズボックスを示す平面図である。
【図3】 ケース本体を示す平面図である。
【図4】 アッパカバーを示し、(A)は上面側を示す平面図であり、(B)は側面図である。
【図5】 ロアカバーを示し、(A)は内面側を示す平面図であり、(B)は側面図である。
【図6】 本発明の第二実施形態に係るヒューズボックスの内部を示す平面図である。
【図7】 図6に示すケース本体を示す平面図である。
【図8】 本発明の第三実施形態に係るヒューズボックスの防水機構を示す拡大断面図である。
【図9】 従来例の図である。
【符号の説明】
【0028】
10 ヒューズボックス
11 ケース本体
11a 周壁
11b リブ
12 アッパカバー
12a 周壁
13 ロアカバー
13a 周壁
13b 底壁
21 入力側バスバー
22、23 出力側バスバー
25、26 ヒュージブルリンク
A 第一止水部
B 第二止水部
BT バッテリーターミナル
S 圧力低下用空隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース本体内部にバッテリーターミナルと接続されるバスバーを収容していると共に、該バスバーに接続されたヒューズを備え、該ケース本体にアッパカバーを被せて結合し、バッテリーボックス上に搭載されるヒューズボックスであって、
前記アッパカバーの周壁の下端面を前記ケース本体にロック結合するロアカバーの底壁あるいは前記ケース本体の底壁に当接させて第一止水部としている一方、
前記ケース本体の底壁から立設している本体周壁を前記アッパカバーの周壁内面と所要幅の圧力低下用空隙をあけて設けていると共に、該本体周壁の上端を屈曲し、アッパカバーの周壁内面側に突出させて第二止水部とし、該第二止水部と前記第一止水部との間に前記圧力低下用空隙を介在させ、前記第一止水部を通して外部から浸入する高圧水が前記圧力低下用空隙で圧力が低下されて上方位置の前記第二止水部を通過不能とする防水機構を備えていることを特徴とするヒューズボックス。
【請求項2】
前記ヒューズの配置部分に当たる外周位置に前記第一止水部、圧力低下用空隙および第二止水部を備えた防水機構を設けている請求項1に記載のヒューズボックス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−49251(P2006−49251A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−247557(P2004−247557)
【出願日】平成16年7月31日(2004.7.31)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】