説明

ヒュームド・シリカからコロイダルシリカへの変換方法

アルカリ金属水酸化物を含む水溶液にヒュームド・シリカを溶解してアルカリ性ケイ酸塩溶液を製造し、イオン交換を介してアルカリ金属を除去してケイ酸溶液を製造し、ケイ酸溶液の温度、濃度及びpHを、核生成と粒子成長を始めるのに十分な値に調整し、そしてケイ酸溶液を、コロイダルシリカ分散体を製造するのに十分な速度で冷却することによるコロイダルシリカ分散体の製造方法。コロイダルシリカ分散体中のコロイダルシリカ粒子は、約2nmから約100nmの平均粒子サイズを有する。また、基材と、本発明による複数のコロイダルシリカ粒子及びこれらの粒子を懸濁させるための媒体を含む組成物を接触させることによる、基材表面の化学機械研磨方法も供される。この接触は、基材を平坦化するために十分な温度と時間で行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高純度のコロイダルシリカ分散体を製造する方法に関する。より詳細には、本発明は、出発材料としてヒュームド・シリカを用いてコロイダルシリカ分散体を製造する方法に関する。本発明はまた、本発明に従って製造されたコロイダルシリカを用いて基材の表面を化学機械研磨する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
業界におけるコロイダルシリカを製造する最も通常の方法は、1200℃未満の温度で天然ケイ砂と炭酸ナトリウムを溶融によって作られる水ガラスからコロイダルシリカ粒子を製造する方法である。溶融後、この溶融されたケイ酸ナトリウムを急冷して、水中に完全に溶解させ、腐食性が高い水ガラスを形成させる。コロイダルシリカを製造するために、水ガラスを更にイオン交換用の強酸性樹脂床又はカラム中を通過させて、ケイ酸に変換させる。次いで、通常pHが2から3程度のこのケイ酸を容器に入れ、アルカリを用いてそのpHを約8に調整して安定化させ、次に80から100℃の高温に加熱して粒子を形成させる。
【0003】
製造条件によって、最終製品の粒子サイズ分布を5nmから約100nm以下に操作し制御することができるが、原材料であるケイ砂の性質のせいで、この方法から得られる最終コロイダルシリカは、多かれ少なかれFe、Al及びNaのような微量金属を100ppmから1000ppm以下有する。
【0004】
イオン交換によってある程度の量の微量金属を除去できるが、不純物を100ppmよりも低くすることは、たとえ最高品質の天然SiO2を用いても、この方法で達成することは非常に困難である(例えば、「The Chemistry of Silica」、Ralph K.ller、John Wiley & Sons社編集(1979)、及び米国特許第3,947,376号を参照)。
【0005】
非常に高純度のコロイダルシリカをもたらすもう一つの方法は、ゾル−ゲル法によるものである。この方法においては、テトラメトキシシラン(TMOS)又はテトラエトキシシラン(TEOS)のような高純度のアルコキシドが原材料として使用される。最初に、TMOS又はTEOSをメタノール又はエタノールに溶解させ、次いで脱イオン(DI)水を混合して、NH4OHを触媒として使用して加水分解させる。
【0006】
コロイダルシリカが形成された後、アンモニアと有機溶媒を蒸発によって除去できるように、この溶液を高温に加熱する(W.Stoberら、J.Colloid Interface Sci.,26,62(1968))。このように加工されたコロイダルシリカは、原材料が高純度である故に、非常に高純度を有する。
【0007】
しかしながら、この手法はいくつかの欠点を有する。その一つは、この方法から得られるコロイダルシリカが、原材料が非常に高価である故に、更にいっそう高価なことである。二つ目の欠点は、環境に優しくない大量の汚いメタノール又はエタノールが生成されるであろうことである。最後は、このコロイダルシリカが高レベルのアンモニア及び有機溶媒の残留物を有し、それが化学機械研磨(CMP)用途に対しては非常に望ましくない点である。
【0008】
コロイダルシリカには種々のサイズと形状のものがある。ヒュームド・シリカに対するコロイダルシリカの主要な利点は、5から10nmのような非常に小さな粒子を生成できることである。また、コロイダルシリカは一次粒子に良く分散できるが一方ヒュームド・シリカは常に凝集している。このことは、化学機械研磨(CMP)の分野においては、非常に低い欠陥性とある種の金属に対する高い除去率を意味する。
【0009】
しかしながら、大部分のコロイダルシリカは非常に不純である。市販品のGrace社製のLudoxコロイダルシリカは二桁のppm範囲の微量金属を有する。そのため、それは化学機械研磨(CMP)用途には受け入れられない。
【0010】
高純度コロイダルシリカはTEOS又はTMOSから製造することができる。しかしながら、これらのタイプのシリカは、純粋な原材料と複雑な製造方法を必要とする故に非常に高価であり、そして著しい量の廃棄物を生成する。例えば、3部のTEOSから約1部のシリカと2部の不純エタノールが生成する(TEOSは28%のSiO2と72%のEtOHから構成される)。
【0011】
ヒュームド・シリカは一般にきわめて純粋である。これらは75から300nmの平均粒子サイズ(MPS)の範囲の固体粒子で、一次粒子は約25nmのサイズである。しかし、コロイダルシリカとは異なり、それらは、水、湿潤剤、及び安定剤を用いる高せん断研削加工によって化学機械研磨(CMP)スラリーに変換されねばならない。加えて、これらの分散体は、大きな粒子を除去するために濾過を必要とする。このように、ヒュームド・シリカは低価格から中程度の価格であるものの、最終分散体は比較的高価になり得る。
【0012】
従って、コロイダルシリカのサイズに匹敵する平均粒子サイズを有し、ヒュームド・シリカの純度に匹敵する純度も有する低価格から中程度の価格のシリカ分散体が業界において要求されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、コロイダルシリカのサイズに匹敵する平均粒子サイズを有し、ヒュームド・シリカの純度に匹敵する純度も有する低価格から中程度の価格のシリカ分散体を形成することである。
【0014】
本発明のもう一つの目的は、高い材料除去率を含み、一方で基材又は半導体ウエハーの表面の表面欠陥を最小化し、望みの表面平坦化を提供する化学機械研磨(CMP)用のコロイド状製品の研磨剤を提供することである。
【0015】
本発明の更にもう一つの目的は、高純度のケイ酸カリウム溶液を形成することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
これらの目的は、ヒュームド・シリカを原材料として使用し、水中に分散させるのではなく、アルカリ金属水酸化物を含む水溶液に溶解し、その後で、得られたアルカリ性ケイ酸塩溶液を、望みの平均粒子サイズと純度を達成するために制御された方法で、コロイダルシリカ粒子に変換することによって達成される。このようにして、核生成及びと粒子成長の速度を制御することによって(言い換えると、この制御は、アルカリ処理とイオン交換の後のヒュームド・シリカから得られたケイ酸の水溶液の温度、冷却速度、イオン強度及びpHを制御することによって制御された)、例えば、望みの平均粒子サイズと純度が達成された。本発明によるコロイダルシリカ分散体は、市販のコロイダルシリカのサイズに匹敵する平均粒子サイズを有する低価格から中程度のコストのコロイダルシリカ分散体である。更に、その低い金属含有量故に、本発明によるこのコロイダルシリカ粒子は、市販のヒュームド・シリカ粒子の純度に匹敵する純度を有する。なお更に、これらの高純度分散体は、その粒子中に存在する残留のエタノール又はメタノール又はアミンを有しない。
【発明の効果】
【0017】
本発明はコロイダルシリカ分散体の製造方法を提供する。この方法は、アルカリ金属水酸化物を含む水溶液にヒュームド・シリカを溶解して、ケイ酸カリウム溶液のようなアルカリ性ケイ酸塩溶液を製造し、イオン交換を介して大部分のアルカリイオンを除去してケイ酸溶液を製造し、ケイ酸溶液の温度、濃度及びpHを、核生成と粒子の成長を始めるのに十分な値に調整し、そしてケイ酸溶液を十分冷却して、コロイダルシリカ分散体を製造する工程を含む。コロイダルシリカ分散体中のコロイダルシリカ粒子は約2nmから約100nmの平均粒子サイズを有する。
【0018】
本発明は更に、基材表面の化学機械研磨方法を提供する。この方法は、基材と本発明による複数のコロイダルシリカ粒子及びそれらの粒子を懸濁させるための媒体を含む組成物を接触させる工程を含む。この接触は、基材を平坦化するために十分な温度と時間で行われる。
【0019】
本発明はまた更に、約2nmから約100nmの粒子サイズを有するコロイダルシリカ粒子を含む、コロイダルシリカ分散体を提供する。この分散体は10ppm未満の、K以外の微量金属不純物及び10ppm未満の残留メタノール又はエタノールを有する。
【0020】
本発明は、10ppm未満の、K以外の微量金属不純物、及び10ppm未満の残留メタノール又はエタノールを有するケイ酸カリウム溶液も提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、アルカリ金属水酸化物を含む水溶液にヒュームド・シリカを溶解してアルカリ性ケイ酸塩溶液を製造し、イオン交換を介して大部分のアルカリ金属を除去してケイ酸溶液を製造し、ケイ酸溶液の温度、濃度及びpHを、核生成と粒子の成長を始めるのに十分な値に調整し、そしてケイ酸溶液を冷却して、コロイダルシリカ分散体を製造する工程を含む、コロイダルシリカ分散体の製造方法を提供する。
【0022】
このコロイダルシリカ粒子はコロイダルシリカ分散体から単離でき、溶媒を含まないコロイダルシリカ粒子が製造される。しかしながら、この分散体は典型的にはそのまま使用され、又は、基材表面の化学機械研磨用の使用に適する組成物を製造するための有機溶媒、添加剤及び界面活性剤などのその他の添加剤を添加することによって使用される。
【0023】
このコロイダルシリカ粒子は、水溶媒を除去することによるか又は、より好ましくはコロイダルシリカ粒子を濾過し、その後で乾燥することによってコロイダルシリカ分散体から単離できる。
【0024】
本発明の方法に従って製造されたコロイダルシリカ粒子は、約2nmから約100nmの平均粒子サイズ(MPS)を有する。
【0025】
好ましくは、コロイダルシリカ粒子は約300ppm以下の全金属濃度を有する。これらの金属は、Li、Na、K、Rb、Cs、Fr、Fe、Al、及びそれらの如何なる組合せであり得る。より好ましくは、これの金属の濃度は約100ppm以下である。
【0026】
本発明の方法の実行において、アルカリ水溶液、アルコール水溶液又はこれらの組合せのような水溶液にヒュームド・シリカ出発材料を溶解して、アルカリ性ケイ酸塩溶液を製造する。次いで、この、アルカリ性ケイ酸塩溶液がケイ酸溶液に変換されるように、イオン交換によって大部分のアルカリを除去する。次に、ケイ酸溶液であるこの溶液の温度、濃度及びpHを、選択された値によってこの溶液が核生成を開始しそして核生成された粒子がコロイダルシリカ分散体を形成するような値に調整する。
【0027】
好ましくは、核生成開始前のケイ酸溶液の温度は約5℃から約40℃である。
【0028】
好ましくは、核生成開始前のケイ酸溶液中のケイ酸の濃度は約2質量%から約30質量%である。
【0029】
好ましくは、ケイ酸溶液のpHは約1.5から約5であり、好ましくは1.5から約4.0である。
【0030】
好ましくは、ケイ酸溶液の冷却速度は約5℃/分から約100℃/分である。
【0031】
もう一つの態様において、本発明は基材の化学機械研磨方法を提供する。この方法は、基材と、本発明による複数のコロイダルシリカ粒子及びこれらの粒子を懸濁させるための媒体を有する組成物を接触させる工程を含む。この接触は、基材を平坦化するために十分な温度と時間で行われる。
【0032】
これらの粒子は、研磨組成物を製造するために、種々の媒体中に懸濁又は分散させることができる。例えば、これらの粒子は、より大きなサイズ、つまり一次粒子サイズをより高い濃度で、そしてより小さなサイズ、つまり二次粒子をより低い濃度で比例的に含んでもよい。このサイズ変化の結果、従来の研磨剤によっては供されなかった、表面不純物の改善された除去速度、及び制御された表面トポグラフィー(微細構成)がもたらされる。
【0033】
この組成物は、更に、約0.01質量%から約0.9質量%の濃度で存在するカルボン酸又はカルボン酸混合物、約10ppmから約2500ppmの濃度で存在する、好ましくは約10ppmから約1000ppmの濃度で存在する酸化剤、及び約10ppmから約1000ppmの濃度で存在する防蝕剤から選ばれる添加剤を含む。
【0034】
好ましい態様において、一次粒子は約2nmから約100nmの平均粒子サイズを有する。
【0035】
得られた組成物は、乳濁液、コロイド懸濁液、溶液及びスラリーの形体でもあり得て、ここで粒子は、塩基性又は酸性のpH環境において均一に分散して安定であり、そして界面活性剤を含む。
【0036】
好ましい態様において、表面除去率を50ppm以上に著しく低下させるために、陽イオン、陰イオン、非イオン及び両性の界面活性剤又はそれらの混合物、より好ましくは非イオン界面活性剤が使用される。好ましい面活性剤はアルコキシル化された非イオン界面活性剤である。界面活性剤の有益な効果には、研磨摩擦の低減が挙げられる。
【0037】
好ましくは、上限は約1000ppmである。なぜならば、このレベルで有機残留物、つまり欠陥がウエハー表面上に観察されるからである。従って、Cu及びTaを有するような他のフィルムに対するその反応不活性の故に、非イオン界面活性剤が好ましい。
【0038】
本組成物中の粒子は、低レベルのFe、Al、Li、Na、Rb、Cs及びFrのような微量金属も有する。好ましくは、コロイダルシリカ粒子は約300ppm以下の全金属濃度を有する。これらの金属は、Fe、Al、Li、Na、Rb、Cs、Fr又はそれらの如何なる組合せでも良い。更に好ましくは、これらの金属の濃度は約100ppm以下である。更により好ましくは、安定剤として使用できるK以外では、10ppm以下である。
【0039】
好ましくは、約20m2/gから約300m2/gの表面積を有するシリカ粒子は、組成物の全質量の約1質量%から約20質量%を占め、そして媒体が組成物の約81質量%から約99質量%を占める。
【0040】
上述の如く、媒体は水、アルカリ性溶液、有機溶媒又はそれらの混合物であり得て、それらは、乳濁液、コロイド懸濁液、又はスラリーになる。
【0041】
研磨組成物の媒体は、アルコール水溶液、ケトン水溶液、エーテル水溶液、エステル水溶液、又はそれらの組合せのような有機溶媒水溶液であり得る。それは、本発明によるコロイダルシリカ分散体の製造方法における有機溶媒水溶液と同一であっても、異なっていてもよい。好ましい媒体は、アルコール水溶液であり、ここでは、このアルコールは好ましくはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、及びそれらの混合物である。
【0042】
この研磨組成物のpHは約9.0から約11の範囲内又は約2.0から約4.0の酸性域に維持される。
【0043】
図1に関していえば、従来技術によるコロイダルシリカ(SiO2)の「ゾル−ゲル」法の模式図が示されている。
【0044】
図2は、従来法に従って製造されたヒュームド・シリカ(SiO2)から化学機械研磨(CMP)スラリーを製造する模式図である。
【0045】
図3は、本発明の方法によるヒュームド・シリカ(SiO2)からコロイダルシリカを製造する模式図である。
【0046】
図4は、本発明の方法に従って製造された試料の粒子サイズ分布(PSD)を示す。
【0047】
図5は、市販の高純度コロイダルシリカ(FUSO製SiO2)と、本発明の方法によるヒュームド・シリカ(SiO2)から製造されたコロイダルシリカの化学機械研磨(CMP)性能の比較である。
【0048】
本コロイダルシリカ分散体は、コロイダルシリカ粒子をコロイダルシリカ分散体から単離することなく、複数のコロイダルシリカ粒子を含む研磨組成物として使用できる。
【実施例】
【0049】
コロイダルシリカ製造の設備には、ヒュームド・シリカの溶解システム、ケイ酸製造用の撹拌された脱イオン化セクション及び粒子の核生成と成長のための反応器が含まれる。
【0050】
高純度のケイ酸カリウム溶液が、ヒュームド・シリカを高純度の水酸化カリウムに溶解させることによって製造された。KOH、脱イオン水及びヒュームド・シリカの混合物が反応器中に移され、そして90℃に加熱された。全てのシリカが溶解するまでこの温度で撹拌を続けた。この溶液を室温まで冷却し、そして「Pall」0.5μmフィルター(0.5μmの細孔サイズのフィルター)を用いて濾過した。
【0051】
この高純度のケイ酸カリウム溶液の固形分は10から25質量%で、KOH/SiO2は質量比で0.5未満、かつ最終pHは約11から13である。
【0052】
高純度のケイ酸カリウムを、脱イオン水で事前に洗浄したイオン交換樹脂カラムに通すことによってケイ酸が製造された。必要ならば、この時点で混合物のpHを再調整することができる。ケイ酸塩を添加した後、この混合物を15分間撹拌して、ケイ酸溶液を平衡状態にさせた。このケイ酸溶液のpHを測定したところ約2.1であり、必要に応じて調整された。
【0053】
次いで、粒子の核生成と成長を、pH、温度及び時間パラメータを調整することによってケイ酸から開始させた。pH調整用には、種々の化合物が使用でき、K化合物、アルカリ、塩、アミン又は他の好適なpH調整剤が挙げられるがこれらに限定されるものではない。熱、安定剤及びperc(ケイ酸)の供給シーケンスのレベルを制御することによって、オキシドの化学機械研磨(CMP)用途向けの、広い粒子サイズ分布(PSD)と、狭い粒子サイズ分布(PSD)を有する大きな粒子を持つコロイダルシリカが製造された。
【0054】
粒子サイズと粒子サイズ分布は、NiComp又はMalvern動的光散乱装置を用いて求めた。特大サイズの量はAccusizerを用いて測定した。pHはpHプローブ付きpHメーターを用いて測定した。
【0055】
ヒュームド・シリカの溶解
Wacker Chemicals社製のT−30粒子を、ヒュームド・シリカ源として使用した。T−30をKOHに溶解させた。約90℃にて、シリカが迅速に溶解した。
【0056】
未溶解のシリカを除去し、ゲルの形成を防止するための濾過は任意である。最終固形分%は約21%で、約15%のSiO2が含まれ、これは、percを粒子成長させるためのイオン交換法に好適である。ヒュームド・シリカ粉末、例えば、Wacker社から供給されるS−13又はT−30、を高速混合下で、電子グレードのKOHを混合した脱イオン水の溶液に添加した。粉末が完全に分散した後、混合物を反応器に投入して、混合しながら95から100℃まで加熱した。シリカ粉末はゆっくりと、無色透明なケイ酸カリウム溶液に溶解し、SiO2固形分は5から25%、KOH/SiO2質量比は0.3から0.5の範囲である。室温での溶液の最終pHは約11.0から13.3であった。この溶液を濾過して如何なる未溶解物をも除去することは任意である。
【0057】
ケイ酸塩のPerc(ケイ酸)への変換
上記溶液を、脱イオン水で希釈し、又はそのままで、例えばRohm&Haas社のAmberlite IR120のようなプロトン型イオン交換樹脂カラムに通した。この樹脂のケイ酸塩溶液に対する容積比は0.5から2であった。イオン交換の後、大部分のカリウムイオンが除去され、ケイ酸カリウムが、pH1.5から3そしてSiO2固体として5から13質量%を有する、高純度で高透明なケイ酸に変換された。このケイ酸は以下の粒子成長方法において、percとして使用された。
【0058】
粒子成長
次いで、このケイ酸を、粒子の核生成と成長を制御するために、時間と温度を制御しながらpH調整工程にかけた。最終的なコロイダルシリカは、固形分が3から15質量%、平均粒子サイズ(MPS)が10nmから100nm、そしてpHが8から12を有していた。異なる粒子サイズ分布(PSD)の異なるMPS粒子、例えば広いPSD又は狭いPSD、に成長させるため、播種技法を使用することは任意である。播種には、例えば10から20nmの小さなサイズの事前に製造したコロイダルシリカの少量を、ケイ酸カリウム溶液といっしょに、percの添加前に反応器に投入する、又はpercと共にゆっくりと反応器に添加する。
【0059】
後処理
上記のようにして製造されたコロイダルシリカを室温まで冷却する。その後、それを更なる処理にかけることができる。上記のようにして製造されたコロイダルシリカを、限界濾過技法によって40質量%まで更に濃縮し、及び/又は、更に低pH域(2−4)にて、プロトン型樹脂を用いて脱イオン化してコロイダルシリカにすることができる。それを乾燥して、その他の分野の用途向けの高純度シリカ粉末を製造することもできる。
【0060】
本発明において、ヒュームド・シリカを溶解させる試薬はKOHに限定されるものではなく、LiOH、NaOH、CsOHその他でもあり得る。F-、(PO43-などの異なる陰イオンも混ぜうる。
【0061】
本発明を好ましい態様を特別に参照して述べてきた。これまでの記述と実施例は、本発明の単なる例示であると理解すべきである。本発明の精神と範囲から逸脱することなく種々の代替とその改善が、当業者によって考案し得る。従って、本発明は、添付された請求項の範囲内にあるそのような代替、改善、及び変更の全てを包含することを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】コロイダルシリカ(SiO2)の「ゾル−ゲル」法の模式図である。
【図2】従来法に従って、ヒュームド・シリカ(SiO2)から化学機械研磨(CMP)スラリーを製造する模式図である。
【図3】本発明の方法に従ってヒュームド・シリカ(SiO2)からコロイダルシリカを製造する模式図である。
【図4】本発明の方法に従って製造された試料の粒子サイズ分布(PSD)を示す。
【図5】市販の高純度コロイダルシリカ(FUSO Chemicals社、ゾル−ゲル法で製造されたコロイダルSiO2)と、本発明の方法に従ってヒュームド・シリカ(SiO2)から製造されたコロイダルシリカとの化学機械研磨(CMP)性能の比較である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属水酸化物を含む水性溶媒にヒュームド・シリカを溶解してアルカリ性ケイ酸塩溶液を製造し、
イオン交換を介して該アルカリ金属を除去して該ケイ酸アルカリ溶液をケイ酸溶液に変換し、
該ケイ酸溶液の温度、濃度及びpHを、冷却時の核生成と粒子成長を始めるのに十分な値に調整し、そして
該ケイ酸溶液を、該コロイダルシリカ分散体を製造するのに十分な速度で冷却する
工程を含むコロイダルシリカ分散体の製造方法。
【請求項2】
更に、コロイダルシリカ分散体からコロイダルシリカ粒子を単離する工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
単離工程が、水性溶媒を除去することによって行われる、請求項2記載の方法。
【請求項4】
単離工程が、コロイダルシリカ粒子を濾過及び乾燥することによって行われる、請求項2記載の方法。
【請求項5】
コロイダルシリカ粒子が、約2nmから約100nmの平均粒子サイズを有する、請求項2記載の方法。
【請求項6】
コロイダルシリカ粒子が、約300ppm以下の全金属濃度を有する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
金属が、Li、Na、K、Rb、Cs、Fr、Fe、Al、及びそれらのいずれかの組合せから成る群から選ばれる、請求項6記載の方法。
【請求項8】
金属濃度が約100ppm以下である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
温度が約5℃から約40℃である、請求項1記載の方法。
【請求項10】
濃度がケイ酸溶液の約2質量%から約30質量%である、請求項1記載の方法。
【請求項11】
ケイ酸アルカリ溶液のpHが約11から約13であり、そしてケイ酸溶液のpHが約1.5から約5である、請求項1記載の方法。
【請求項12】
ケイ酸溶液の冷却速度が約5℃/分から約100℃/分である、請求項1記載の方法。
【請求項13】
アルカリ金属水酸化物が水酸化カリウムである、請求項1記載の方法。
【請求項14】
基材表面の化学的機械研磨方法であって、該基材と、複数のコロイダルシリカ粒子及び該粒子を懸濁させるための媒体を含む組成物を接触させ;ここで該コロイダルシリカ粒子は、アルカリ金属水酸化物を含む水性溶媒にヒュームド・シリカを溶解してアルカリ性ケイ酸塩溶液を製造し、イオン交換を介して該アルカリ金属を除去して該アルカリ性ケイ酸塩溶液をケイ酸溶液に変換し、該ケイ酸溶液の温度、濃度及びpHを、核生成と粒子成長を始めるのに十分な値に調整し、そして該ケイ酸溶液を、コロイダルシリカ分散体を製造するのに十分な速度で冷却することによって製造され;そして該コロイダルシリカ粒子を該コロイダルシリカ分散体から単離させて、約2nmから約100nmの平均粒子サイズ、及びLi、Na、K、Rb、Cs、Fr、Fe、Al、及びそれらのいずれかの組合せから成る群から選ばれる金属を、約300ppm以下の全金属濃度で有するコロイダルシリカ粒子を製造し;ここで該接触が、該基材を平坦化するために十分な温度と時間で行われる;工程を含む上記方法。
【請求項15】
コロイダルシリカ粒子が、組成物の全質量の約19質量%から約24質量%を占める、請求項14記載の方法。
【請求項16】
コロイダルシリカ粒子が、約20m2/gから約300m2/gの表面積を有する、請求項14記載の方法。
【請求項17】
組成物が、更に、陰イオン、陽イオン、非イオン及び両性の界面活性剤及びそれらの混合物から成る群から選ばれる界面活性剤を含む、請求項14記載の方法。
【請求項18】
界面活性剤がアルコキシル化された非イオン界面活性剤である、請求項17記載の方法。
【請求項19】
組成物が、更に、約0.01質量%から約0.9質量%の濃度でのカルボン酸、約10ppmから約2500ppmの濃度での酸化剤及び約10ppmから約1000ppmの濃度での防蝕剤から成る群から選ばれる少なくとも一つの添加剤を含む、請求項14記載の方法。
【請求項20】
組成物が乳濁液、コロイド懸濁液、溶液及びスラリーから成る群から選ばれる形態である、請求項14記載の方法。
【請求項21】
媒体が組成物の全質量の約1質量%から約86質量%である、請求項14記載の方法。
【請求項22】
媒体が、約6.7から約7.6のpHを有する、請求項14記載の方法。
【請求項23】
媒体が、水、有機溶媒及びそれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項14記載の方法。
【請求項24】
コロイダルシリカ分散体が、コロイダルシリカ粒子をコロイダルシリカ分散体から単離することなく、化学的機械研磨組成物として使用される、請求項14記載の方法。
【請求項25】
アルカリ金属水酸化物が水酸化カリウムである、請求項14記載の方法。
【請求項26】
10ppm未満の、K以外の微量金属不純物を有し、そして10ppm未満の残留メタノール又はエタノールを有する、約2nmから約100nmの粒子サイズを有するコロイダルシリカ粒子を含むコロイダルシリカ分散体。
【請求項27】
コロイダルシリカ分散体が、
アルカリ金属水酸化物を含む水性溶媒にヒュームド・シリカを溶解してアルカリ性ケイ酸塩溶液を製造し、
イオン交換を介してアルカリ金属を除去してケイ酸溶液を生成し、
該ケイ酸溶液の温度、濃度及びpHを、核生成と粒子成長を始めるのに十分な値に調整し、そして
該ケイ酸溶液を、コロイダルシリカ分散体を製造するのに十分な速度で冷却する
工程を含む方法によって製造される、請求項26記載のコロイダルシリカ分散体。
【請求項28】
コロイダルシリカ粒子を水性溶媒中に懸濁させる工程を含む方法によって製造される、請求項26記載のコロイダルシリカ分散体。
【請求項29】
基材と、請求項26記載のコロイダルシリカ分散体を接触させ、ここで該接触が、該基材を平坦化するために十分な温度と時間で行われる工程を含む、基材表面の化学的機械研磨方法。
【請求項30】
10ppm未満の、K以外の微量金属不純物を有し、そして10ppm未満の残留メタノール又はエタノールを有するケイ酸カリウム溶液。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−546617(P2008−546617A)
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−516817(P2008−516817)
【出願日】平成18年1月17日(2006.1.17)
【国際出願番号】PCT/US2006/001589
【国際公開番号】WO2007/001485
【国際公開日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(507409782)プレイナー・ソリューションズ・エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】