説明

ヒンジキャップのヒンジ構造

【課題】キャップの被着部に吐出装置が相当の高さで立設している場合でも、片手によるワンタッチの操作でキャップをスムーズに開閉できるヒンジキャップのヒンジ構造を提供する。
【解決手段】キャップ15から外側に突出する第1支持腕部17に設けられた回転移動軸18と、キャップ下部体16から外側に突出する第2支持腕部19に形成された軸受移動ガイド穴20とからなる。回転移動軸18は、長円形の断面形状を有している。軸受移動ガイド穴20は、始端側に軸密着面21aを備える始端側収容凹部21と、終端側に軸密着面22aを備える終端側収容凹部22と、これらの間に介在して設けられた湾曲移動ガイド部23とからなる。湾曲移動ガイド部23は、回転移動軸18の外周18aの移動軌跡に沿った形状の内側ガイド面23aと、回転移動軸18の外周18bの移動軌跡に沿った形状の外側ガイド面23bとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒンジキャップのヒンジ構造に関し、特に、ヒンジキャップのキャップをキャップ被着部に回動可能に連結して、該キャップによってキャップ被着部の上面部を開閉可能に覆えるようにしたヒンジキャップのヒンジ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば液体状の化粧料や、薬品類、食品類等を収容する容器の上端部には、当該上端部を着脱可能に覆うキャップが取り付けられており、キャップを装着することで、容器の非使用時等に、内容液がこぼれ出ないようにしたり、容器の上端部に設けられた吐出装置や吐出ノズルを損傷させないようにしている。
【0003】
一方、キャップは、容器から着脱可能に分離して用いる別部材であると、容器から取り外した際に紛失し易くなることから、キャップを容器から分離することなく連結した状態のまま、容器の上端部に装着できるようにしたキャップ付き容器も一般に用いられている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。特許文献1のキャップ付き容器では、内容液が充填された容器の口首部に取り付けられたキャップは、口首部に装着されたキャップ本体に対して薄肉ヒンジ部を介して蓋体を回動可能に連結されたヒンジキャップとなっている。特許文献2のキャップ付き容器では、容器体の口首部に取り付けられたキャップは、ノズルを備えると共に装着筒の両側に断面形状が円形の係合突部を付設した注出キャップと、両側の摺動板部に縦長孔を穿設した蓋体とによって構成されており、蓋体の摺動板部の縦長孔へ注出キャップの係合突部を摺動可能に嵌め込んで、係合突部を縦長孔に沿って摺動させつつ蓋体を注出キャップに対して引き上げた状態で、蓋体を回動させることによって、蓋体を、注出キャップの側方へ移動させてノズルと干渉させることなく開放できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−105707号公報
【特許文献2】特開2001−180722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のキャップ付き容器では、蓋体は、薄肉ヒンジ部を介してキャップ本体に固定された状態で回動可能に連結されているため、例えば容器の上端部に内容液を吐出させる吐出装置や吐出ノズルが設けられていて、これらがキャップ本体から相当の高さで立設している場合には、回動による開閉時に蓋体が吐出装置や吐出ノズルにぶつかり易くなる。従ってこのようなキャップ付き容器では、ヒンジキャップを用いることが困難になる。また、特許文献2のキャップ付き容器では、蓋体を注出キャップに対して一旦引き上げた状態で、注出キャップの両側の断面形状が円形の係合突部を中心に蓋体を回動させて、ノズルと干渉させることなく蓋体を開閉できるようになっているが、一方の手で容器体の口頸部等を把持しながら、他方の手で蓋体を引き上げたり回動させる操作を行う必要があるため、例えば片方の手によるワンタッチの操作で蓋体をスムーズに開閉することは困難である。
【0006】
本発明は、例えばキャップの被着部に吐出装置や吐出ノズルが相当の高さで立設している場合でも、例えば片方の手によるワンタッチの操作によって、キャップを容易且つスムーズに開閉することのできるヒンジキャップのヒンジ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ヒンジキャップのキャップをキャップ被着部に回動可能に連結して、前記キャップによって前記キャップ被着部の上面部を開閉可能に覆えるようにしたヒンジキャップのヒンジ構造であって、該ヒンジ構造は、前記キャップ又は前記キャップ被着部のいずれか一方から突出する第1支持腕部に設けられた回転移動軸と、他方から突出する第2支持腕部に形成された軸受移動ガイド穴とからなり、前記回転移動軸は、非円形の断面形状を有しており、前記軸受移動ガイド穴は、前記キャップを前記キャップ被着部に被着した際に前記回転移動軸がその外周面の一部を密着させた状態で納められる、始端側に軸密着面を備える始端側収容凹部と、前記キャップを前記キャップ被着部に対して所定の開放角度で最も開放した際に前記回転移動軸がその外周面の一部を密着させた状態で納められる、終端側に軸密着面を備える終端側収容凹部と、該終端側収容凹部と前記始端側収容凹部との間に介在して湾曲形状に延設して設けられた湾曲移動ガイド部とからなり、該湾曲移動ガイド部は、当該湾曲移動ガイド部に沿って前記回転移動軸が前記始端側収容凹部から前記終端側収容凹部に向けて回転しながら移動する際の、前記湾曲形状の曲率中心側における前記回転移動軸の外周の移動軌跡に沿った形状を有する内側ガイド面と、前記湾曲形状の曲率中心側とは反対側における前記回転移動軸の外周の移動軌跡に沿った形状を有する外側ガイド面とを備えているヒンジキャップのヒンジ構造を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のヒンジキャップのヒンジ構造によれば、例えばキャップの被着部に吐出装置や吐出ノズルが相当の高さで立設している場合でも、例えば片方の手によるワンタッチの操作によって、キャップを容易且つスムーズに開閉することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(a)、(b)は、本発明の好ましい第1実施形態に係るヒンジキャップのヒンジ構造によってキャップが開閉されるキャップ付き容器の、要部を断面で示す正面図である。
【図2】(a)は、本発明の好ましい第1実施形態に係るヒンジキャップのヒンジ構造の構成を説明する、要部を断面で示すキャップ付き容器の部分正面図、(b)は、軸受移動ガイド穴において回転しながら移動する回転移動軸の軌跡を説明する(a)のA部の略示拡大図である。
【図3】(a)〜(d)は、本発明の好ましい第1実施形態に係るヒンジキャップのヒンジ構造によってキャップが開閉される状況を説明する、要部を断面で示すキャップ付き容器の部分正面図である。
【図4】(a)〜(d)は、本発明の好ましい第2実施形態に係るヒンジキャップのヒンジ構造によってキャップが開閉される状況を説明する、要部を断面で示すキャップ付き容器の部分正面図である。
【図5】(a)〜(d)は、本発明の好ましい第3実施形態に係るヒンジキャップのヒンジ構造によってキャップが開閉される状況を説明する、要部を断面で示すキャップの正面図である。
【図6】(a)〜(d)は、本発明の好ましい第4実施形態に係るヒンジキャップのヒンジ構造によってキャップが開閉される状況を説明する、要部を断面で示すキャップ付き容器の部分正面図である。
【図7】軸受移動ガイド穴において回転しながら移動する回転移動軸の軌跡を説明する(a)のB部の略示拡大図である。
【図8】(a)〜(d)は、本発明の好ましい第5実施形態に係るヒンジキャップのヒンジ構造によってキャップが開閉される状況を説明する、要部を断面で示すキャップ付き容器の部分正面図である。
【図9】軸受移動ガイド穴において回転しながら移動する回転移動軸の軌跡を説明する(a)のC部の略示拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の好ましい第1実施形態に係るヒンジキャップのヒンジ構造10は、例えば図1(a)、(b)に示すように、内容液として例えば化粧水を収容すると共に、収容した内容液を吐出させる公知のポンプ式の吐出装置11が容器本体12の口首部に取り付けられたキャップ付き容器13において、吐出装置11の上部を覆って装着されたヒンジキャップ14を構成するキャップ15を、キャップ下部体16に対して、回転中心を移動させつつ回動可能に連結するための構造として採用されたものである。
【0011】
本第1実施形態では、ヒンジキャップ14は、吐出装置11の筒状ガイド壁11aの外側に同心状に配置されて装着固定されるキャップ下部体16と、該キャップ下部体16をキャップ被着部として当該キャップ被着部16に回動可能に連結される、キャップ上部体としてのキャップ15とによって構成されている。また、ポンプ式の吐出装置11には、ノズル部を備える押圧ヘッド11bが筒状ガイド壁11aに案内されて上下に摺動可能に設けられており、押圧ヘッド11bを押圧することによって、内容液を吐出できるようになっている。一方、吐出装置11の押圧ヘッド11bは、押圧されない状態では、筒状ガイド壁11aやキャップ下部体16よりも相当の高さで上方に突出しているため、キャップ15の回転中心を固定した状態では、キャップ15を回動させると該キャップ15の周縁部が押圧ヘッド11bの上端部に突き当たるため、キャップ15を開閉することが困難である。
【0012】
本第1実地形態のヒンジキャップのヒンジ構造10は、上述のように吐出装置11の押圧ヘッド11bがキャップ被着部であるキャップ下部体16から相当の高さで突出していても、所定の軌跡に沿ってキャップ15の回転中心を移動させることで、キャップ15の開閉をスムーズに行えるようにする機能を備えている。
【0013】
そして、本第1実施形態のヒンジキャップのヒンジ構造10は、キャップ15をキャップ被着部としてのキャップ下部体16に回動可能に連結して、キャップ15によってキャップ下部体16の上面部を開閉可能に覆えるようにしたヒンジ構造であって、図2(a)、(b)にも示すように、キャップ15から径方向外側に突出する第1支持腕部17に設けられた回転移動軸18と、キャップ下部体16から径方向外側に突出する第2支持腕部19に形成された軸受移動ガイド穴20とからなる。
【0014】
回転移動軸18は、非円形の断面形状として、好ましくは長円形(本実施形態では楕円形)の断面形状を有している。回転移動軸18の断面形状が楕円形であると、キャップ15の開閉をスムースに行なうことができる。楕円形以外の長円形の例としては、相対する2本の直線と該直線同士を円弧で結んだ形状であるカプセル形状(あるいは陸上競技用のトラック円形状)がある。
【0015】
軸受移動ガイド穴20は、キャップ15をキャップ下部体16に被着した際に回転移動軸18がその外周面の一部を密着させた状態で納められる、始端側に軸密着面21aを備える始端側収容凹部21と、キャップ15をキャップ下部体16に対して所定の開放角度で最も開放した際に回転移動軸18がその外周面の一部を密着させた状態で納められる、終端側に軸密着面22aを備える終端側収容凹部22と、この終端側収容凹部22と始端側収容凹部21との間に介在して湾曲形状に延設して設けられた湾曲移動ガイド部23とからなる。
【0016】
湾曲移動ガイド部23は、当該湾曲移動ガイド部23に沿って回転移動軸18が始端側収容凹部21から終端側収容凹部22に向けて回転しながら移動する際の、上記湾曲形状の曲率中心側における回転移動軸18の外周(最内周部18a)の移動軌跡に沿った形状を有する内側ガイド面23aと、上記湾曲形状の曲率中心側とは反対側における回転移動軸18の外周(最外周部18b)の移動軌跡に沿った形状を有する外側ガイド面23bとを備えている。従って、当該軸受移動ガイド穴20は、湾曲移動ガイド部23に沿って回転移動軸18が始端側収容凹部21から終端側収容凹部22に向けて回転しながら移動する際の軸受と回転移動ガイドの役割を有している。
【0017】
本第1実施形態では、ヒンジキャップ14を構成するキャップ下部体16は、図1(a)、(b)及び図2(a)に示すように、円筒形状の合成樹脂成形品である。キャップ下部体16は、その上面部及び下面部が開口面となっており、例えば下面部の開口周縁部を、吐出装置11の筒状ガイド壁11aと装着スカート部11cとの間の環状段差部11dに接合又は螺合等することで、筒状ガイド壁11aの外側に同心状に配置された状態で固定される。キャップ下部体16の上面部には、開口周縁部の内側にインナーリング部材16aが取り付けられており、このインナーリング部材16aを介してキャップ15がキャップ下部体16に被着される。また、キャップ下部体16の外周面から径方向外側に突出して、第2支持腕部19が一体として設けられており、この第2支持腕部19に軸受移動ガイド穴20が形成されている。
【0018】
ヒンジキャップ14を構成するキャップ15は、下面部が開口面となった有天面円筒形状の合成樹脂成形品である。キャップ15は、その下面部の開口周縁部をキャップ下部体16の上面部のインナーリング部材16aに係着することで、キャップ下部体16の上面部を開閉可能に覆うことができる。また、キャップ15の外周面から径方向外側に突出して、第1支持腕部17が一体として設けられている。キャップ15の外周面の第1支持腕部17とは径方向反対側の部分には、指掛けつば部15aが外側に突出して設けられており、この指掛けつば部15aに指を掛けることで、キャップ15の開放操作を容易に行うことができる。
【0019】
本第1実施形態では、第1支持腕部17は、キャップ15の外周面の周方向に間隔をおいて配置された同一形状を有する一対の支持腕片17aからなり、これらの支持腕片17aは、キャップ15の下部の外周面から湾曲形状で斜め下方に延設して設けられている。第1支持腕部17の先端部分には、両側の支持腕片17aに両端を支持させて、楕円形の断面形状を有する回転移動軸18が、これらの支持腕片17aの間隔部分に取り付けられている。
【0020】
また、本第1実施形態では、第2支持腕部19は、第1支持腕部17の一対の支持腕片17aの間隔部分に差し込むことが可能な厚さを備えており、キャップ下部体16の外周面から斜め上方に延設して設けられている。軸受移動ガイド穴20が形成された第2支持腕部19の先端部分に、第1支持腕部17の先端部分の支持腕片17aの間隔部分に取り付けられた回転移動軸18を差し込むことで、軸受移動ガイド穴20の内部に回転移動軸18が移動可能に配置された、本第1実施形態のヒンジ構造10が形成されると共に、キャップ15がキャップ被着部であるキャップ下部体16に回動可能に連結される。
【0021】
なお、本第1実施形態では、第2支持腕部19の軸受移動ガイド穴20の外周部分には、湾曲移動ガイド部23の外側ガイド面23b側の部分を一部切り欠いて、移動軸導入用切欠き20aが形成されている。移動軸導入用切欠き20aは、楕円形の断面形状を有する回転移動軸18の短軸方向の幅よりも若干小さい幅で切り欠かれており、移動軸導入用切欠き20aを挟んだ両側の外周部分を弾性変形させつつ、回転移動軸18を軸受移動ガイド穴20の内部に導入できるようになっている。
【0022】
そして、本第1実施形態では、第2支持腕部19に形成された軸受移動ガイド穴20は、図2(b)に示すように、キャップ15をキャップ下部体16に被着した際に(図3(a)参照)、回転移動軸18がその外周面の一部を密着させた状態で納められる、始端側に軸密着面21aを備える始端側収容凹部21と、キャップ15をキャップ下部体16に対して所定の開放角度で最も開放した際に(図3(d)参照)、回転移動軸18がその外周面の一部を密着させた状態で納められる、終端側に軸密着面22aを備える終端側収容凹部22と、この終端側収容凹部22と始端側収容凹部21との間に介在して湾曲形状に延設して設けられた湾曲移動ガイド部23とからなる。
【0023】
始端側収容凹部21は、本第1実施形態では、回転移動軸18が楕円形の断面形状を有していることから、当該楕円形の略半分の形状の中空断面形状部分によって構成されており、図2(b)における下部右側の楕円に沿った円弧形状部分が、始端側の軸密着面21aとなっている。この軸密着面21aによって、回転移動軸18は、始端側収容凹部21に納められた位置を保持したままでは回転しないように規制されることになる。
【0024】
終端側収容凹部22は、本第1実施形態では、回転移動軸18が始端側収容凹部21に納められた状態から、湾曲移動ガイド部23に沿って移動しながら略180回転した後に納められる部分となっている。終端側収容凹部22もまた、回転移動軸18の楕円形の断面形状の略半分の形状の中空断面形状部分によって構成されており、図2(b)における上部右側の楕円に沿った円弧形状部分が、終端側の軸密着面22aとなっている。この軸密着面22aによって、終端側収容凹部22に納められた位置を保持したままでは回転移動軸18が回転しないように規制することが可能になる。
【0025】
回転移動軸18を回転させながら移動させる湾曲移動ガイド部23は、回転移動軸18が始端側収容凹部21から終端側収容凹部22に向けて、或いは終端側収容凹部22から始端側収容凹部21に向けて移動する際に、回転移動軸18が当該湾曲移動ガイド部23に沿って移動しながらでしか回転しないように規制すると共に、当該湾曲移動ガイド部23の途中で回転中心を保持したままでは回転できないようにする機能を備える。このため、湾曲移動ガイド部23は、当該湾曲移動ガイド部23の湾曲形状の曲率中心側の回転移動軸18の最内周部18aの移動軌跡に沿った形状を有する内側ガイド面23aと、当該湾曲移動ガイド部23の湾曲形状の曲率中心側とは反対側の最外周部18bの移動軌跡に沿った形状を有する外側ガイド面23bとを備えている。
【0026】
これらの始端側収容凹部21、終端側収容凹部22、及び湾曲移動ガイド部23の形状や軌跡は、例えばキャップ15及び回転移動軸18の形状や、回転移動軸18を移動させながキャップ15を回動させる際のキャップ15や回転移動軸18の中心位置の移動軌跡等を設定した後に、設定した中心位置の移動軌跡に沿って回転移動軸18を回転及び移動させながら、当該回転移動軸18の最内周部18aや最外周部18bの軌跡を、例えば図面やCADシステムのコンピューターディスプレイ上にプロットすることによって、所定の形状や軌跡となるように容易に設計することができる。
【0027】
そして、本実施形態の湾曲移動ガイド部23の形状を形成する回転移動軸18の外周の移動軌跡は、始端側収容凹部21から終端側収容凹部22に向けて、最初は図2(b)の左斜め上方向(最外周部18bが押圧ヘッド11bに近づく方向)の軌跡となり、次いで図2(b)の右斜め上方向(最外周部18bが押圧ヘッド11bから遠ざかる方向)の軌跡となるように設計されている。このように設計することで、キャップ15は、吐出装置11の押圧ヘッド11bと干渉することなく、押圧ヘッド11bをかわした状態で回動することが可能になる。
【0028】
そして、上述の構成を備える本実施形態のヒンジキャップのヒンジ構造10によれば、例えばキャップ15が被着されるキャップ下部体16から吐出装置11の押圧ヘッド11bが相当の高さで立設していても、例えば片方の手によるワンタッチの操作によって、キャップ15を容易且つスムーズに開閉することが可能になる。
【0029】
すなわち、本実施形態によれは、ヒンジキャップのヒンジ構造10は、回転移動軸18が非円形の断面形状として好ましくは楕円形の断面形状を有しており、軸受移動ガイド穴20が、始端側に軸密着面21aを備える始端側収容凹部21と、終端側に軸密着面22aを備える終端側収容凹部22と、終端側収容凹部22と始端側収容凹部21との間に介在して湾曲形状に延設して設けられた、回転移動軸18の最内周部18aの移動軌跡に沿った内側ガイド面23a及び回転移動軸18の最外周部18bの移動軌跡に沿った外側ガイド面23bを備える湾曲移動ガイド部23とからなるので、図3(a)〜(d)に示すように、キャップ15をキャップ下部体16に被着した状態と、キャップ15をキャップ下部体16に対して所定の開放角度で最も開放した状態との間で、回転移動軸18を例えば始端側収容凹部21から終端側収容凹部22に向けて湾曲移動ガイド部23に沿って回転させながら移動させることで、キャップ15は、吐出装置11の押圧ヘッド11bと干渉することなく、押圧ヘッド11bをかわした状態で回動することが可能になる。これによって、例えば片方の手によるワンタッチの操作によって、キャップ15を容易且つスムーズに開閉することが可能になる。
【0030】
また、非円形の断面形状の回転移動軸18と湾曲移動ガイド部23を組み合せることにより、前記特許文献2に開示の技術とは異なり、本実施形態のキャップ15がその自重によって、不用意にスライド移動することが無いことも、片方の手によるワンタッチの操作によって、キャップ15を容易且つスムーズに開閉することを可能にする。
【0031】
図4(a)〜(d)は、本発明の好ましい第2実施形態に係るヒンジキャップのヒンジ構造30によってキャップ15’が開閉される状況を説明するキャップ付き容器の部分正面図である。本第2実施形態では、ポンプ式の吐出装置11’の押圧ヘッド11b’が、上記第1実施形態の押圧ヘッド11bよりも高い高さでキャップ下部体16’の上方に突出しており、これに伴って、軸受移動ガイド穴20’の湾曲移動ガイド部23’を上記第1実施形態の湾曲移動ガイド部23よりも縦長に長く形成したものである。
【0032】
本第2実施形態のヒンジキャップのヒンジ構造30によっても、回転移動軸18’を例えば始端側収容凹部21’から終端側収容凹部22’に向けて湾曲移動ガイド部23’に沿って回転させながら移動させることで、キャップ15’は、吐出装置11’の押圧ヘッド11b’と干渉することなく、押圧ヘッド11b’をかわした状態で回動することが可能になり、これによって上記第1実施形態のヒンジ構造10と同様の作用効果を奏することになる。
【0033】
図5(a)〜(d)は、本発明の好ましい第3実施形態に係るヒンジキャップのヒンジ構造40によってキャップ44が開閉されるヒンジキャップ42の正面図である。本第3実施形態では、ヒンジキャップ42は、円筒形状のキャップ下部体43と、有天面円筒形状のキャップ44とからなり、キャップ44は、キャップ被着部としてのキャップ下部体43に、ヒンジ構造40を介して回動可能に連結している。また、本第3実施形態では、回転移動軸45を備える第1支持腕部46がキャップ下部体43の内側面から径方向内側に突出して設けられており、軸受移動ガイド穴47を備える第2支持腕部48がキャップ44の内側面から径方向内側に突出して設けられている。
【0034】
本第3実施形態のヒンジキャップのヒンジ構造40によっても、回転移動軸45を例えば軸受移動ガイド穴47の始端側収容凹部47aから終端側収容凹部47bに向けて湾曲移動ガイド部47cに沿って回転させながら移動させることで、キャップ44は、ヒンジキャップ42の内側に突出して設けられた部材や部分と干渉することなく、これらをかわした状態で回動することが可能になり、これによって上記第1実施形態のヒンジ構造10と略同様の作用効果を奏することになる。
【0035】
また、本第3実施形態では、ヒンジ構造40を形成する第1支持腕部46や第2支持腕部48が、キャップ44又はキャップ下部体43の内側に突出して設けられており、ヒンジキャップ42の外側にはヒンジ構造40が突出していないので、ヒンジキャップ42の外観がシンプルになって、ヒンジキャップ42が装着されるキャップ付き容器の美観を向上させることが可能になると共に、デザイン性を向上させることが可能になり、またキャップ付き容器のコンパクト化を容易に図ることが可能になる。
【0036】
図6(a)〜(d)は、本発明の好ましい第4実施形態に係るヒンジキャップのヒンジ構造50によってキャップ51が開閉される状況を説明するキャップ付き容器の部分正面図である。本第4実施形態では、ヒンジキャップ52は、回転移動軸53及び軸受移動ガイド穴54を除いて、上記第1実施形態のヒンジキャップ14と同様の構成を備えている。すなわち、本第4実施形態では、図7にも示すように、ヒンジ構造50を形成する第1支持腕部55に設けられた回転移動軸53は、非円形の断面形状として、矩形の断面形状を有している。ヒンジ構造50を形成する第2支持腕部56に設けられた軸受移動ガイド穴54は、始端側に直角部分を含む軸密着面57aを備える始端側収容凹部57と、終端側に直角部分を含む軸密着面58aを備える終端側収容凹部58と、終端側収容凹部58と始端側収容凹部57との間に介在して湾曲形状に延設して設けられた湾曲移動ガイド部59とからなる。
【0037】
本第4実施形態のヒンジキャップのヒンジ構造50によっても、回転移動軸53を例えば軸受移動ガイド穴54の始端側収容凹部57から終端側収容凹部58に向けて湾曲移動ガイド部59に沿って回転させながら移動させることで、キャップ51は、吐出装置11の押圧ヘッド11bと干渉することなく、押圧ヘッド11bをかわした状態で回動することが可能になり、これによって上記第1実施形態のヒンジ構造10と同様の作用効果を奏することになる。
【0038】
図8(a)〜(d)は、本発明の好ましい第5実施形態に係るヒンジキャップのヒンジ構造60によってキャップ61が開閉される状況を説明するキャップ付き容器の部分正面図である。本第5実施形態では、ヒンジキャップ62は、回転移動軸63及び軸受移動ガイド穴64を除いて、上記第1実施形態のヒンジキャップ14と同様の構成を備えている。すなわち、本第5実施形態では、図9にも示すように、ヒンジ構造60を形成する第1支持腕部65に設けられた回転移動軸63は、非円形の断面形状として、三角形の断面形状を有している。ヒンジ構造60を形成する第2支持腕部66に設けられた軸受移動ガイド穴64は、始端側に平端面部分を含む軸密着面67aを備える始端側収容凹部67と、終端側に角部分を含む軸密着面68aを備える終端側収容凹部68と、終端側収容凹部68と始端側収容凹部67との間に介在して湾曲形状に延設して設けられた湾曲移動ガイド部69とからなる。
【0039】
本第5実施形態のヒンジキャップのヒンジ構造60によっても、回転移動軸63を例えば軸受移動ガイド穴64の始端側収容凹部67から終端側収容凹部68に向けて湾曲移動ガイド部69に沿って回転させながら移動させることで、キャップ61は、吐出装置11の押圧ヘッド11bと干渉することなく、押圧ヘッド11bをかわした状態で回動することが可能になり、これによって上記第1実施形態のヒンジ構造10と同様の作用効果を奏することになる。
【0040】
本発明のヒンジ構造を有するヒンジキャップは、公知の射出成形、切削加工、光造形等で製造することができる。
【0041】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、キャップが係着されるキャップ被着部は、キャップと共にヒンジキャップを構成するキャップ下部体である必要は必ずしも無く、吐出装置が設けられた容器自体の上端部分等であっても良い。また、キャップ被着部の上面部から吐出装置や吐出ノズルが突出していなくても良い。さらに、本発明のヒンジ構造が採用されるキャップ付き容器は、化粧水を内容液として収容したものである必要は必ずしも無く、その他の化粧料や、薬品類、食品類等を収容した容器であっても良い。
【符号の説明】
【0042】
10,30,40,50,60 ヒンジキャップのヒンジ構造
11,11’ 吐出装置
11b,11b’ 押圧ヘッド
13 キャップ付き容器
14,42,52,62 ヒンジキャップ
15,15’,44,51,61 キャップ
16,16’,43 キャップ下部体(キャップ被着部)
17,46,55,65 第1支持腕部
18,45,53,63 回転移動軸
18a 曲率中心側における回転移動軸の外周(最内周部)
18b 曲率中心側とは反対側における回転移動軸の外周(最外周部)
19,48,56,66 第2支持腕部
20,20’,47,54,64 軸受移動ガイド穴
21,21’,47a,57,67 始端側収容凹部
21a,57a,67a 軸密着面
22,22’,47b,58,68 終端側収容凹部
22a,58a,68a 軸密着面
23,47c,59,69 湾曲移動ガイド部
23a 内側ガイド面
23b 外側ガイド面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒンジキャップのキャップをキャップ被着部に回動可能に連結して、前記キャップによって前記キャップ被着部の上面部を開閉可能に覆えるようにしたヒンジキャップのヒンジ構造であって、
該ヒンジ構造は、前記キャップ又は前記キャップ被着部のいずれか一方から突出する第1支持腕部に設けられた回転移動軸と、他方から突出する第2支持腕部に形成された軸受移動ガイド穴とからなり、
前記回転移動軸は、非円形の断面形状を有しており、
前記軸受移動ガイド穴は、前記キャップを前記キャップ被着部に被着した際に前記回転移動軸がその外周面の一部を密着させた状態で納められる、始端側に軸密着面を備える始端側収容凹部と、前記キャップを前記キャップ被着部に対して所定の開放角度で最も開放した際に前記回転移動軸がその外周面の一部を密着させた状態で納められる、終端側に軸密着面を備える終端側収容凹部と、該終端側収容凹部と前記始端側収容凹部との間に介在して湾曲形状に延設して設けられた湾曲移動ガイド部とからなり、
該湾曲移動ガイド部は、当該湾曲移動ガイド部に沿って前記回転移動軸が前記始端側収容凹部から前記終端側収容凹部に向けて回転しながら移動する際の、前記湾曲形状の曲率中心側における前記回転移動軸の外周の移動軌跡に沿った形状を有する内側ガイド面と、前記湾曲形状の曲率中心側とは反対側における前記回転移動軸の外周の移動軌跡に沿った形状を有する外側ガイド面とを備えているヒンジキャップのヒンジ構造。
【請求項2】
前記回転移動軸は、長円形の断面形状を有している請求項1記載のヒンジキャップのヒンジ構造。
【請求項3】
前記第1支持腕部及び前記第2支持腕部は、前記キャップ又は前記キャップ被着部の内側に突出して設けられている請求項1又は2記載のヒンジキャップのヒンジ構造。
【請求項4】
前記キャップ被着部は、吐出装置が設けられた容器の上端部に取り付けられたキャップ下部体である請求項1〜3のいずれか1項記載のヒンジキャップのヒンジ構造。
【請求項5】
前記キャップ被着部は、吐出装置が設けられた容器の上端部分である請求項1〜3のいずれか1項記載のヒンジキャップのヒンジ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−126415(P2012−126415A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278389(P2010−278389)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】