説明

ヒンジ構造

【課題】軸部材を略その全長に亘って軸受部の軸受孔に挿通させる必要がなく、軸部材を挿通させ易いヒンジ構造を提供する。
【解決手段】一の部材1と他の部材3とに設けた軸受部2、4に軸部材5を挿通させて回動自在に連結するヒンジ構造である。軸部材5は、軸部6と、該軸部6の軸方向中間部に連設される離心部7と、を備える。一の部材1と他の部材3はそれぞれ、一軸部61が挿通される一軸受部21、41と他軸部62が挿通される他軸受部22、42とを備える。軸部材5の離心部7の軸方向一端7aから他軸部62の軸方向他端62bまでの長さL1が、他端側に位置する一軸受部21の他端21bから、他端側に位置する他軸受部42の軸方向一端42aまでの長さL2よりも短く形成され、且つ、軸部材5の軸方向長さL3が、一端側に位置する一軸受部41の他端41bから、他端側に位置する他軸受部42の一端42aまでの長さL4よりも長く形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一の部材と他の部材とを回動自在に連結するヒンジ構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、一の部材と他の部材とを回動自在に連結するヒンジ構造が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−218119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のヒンジ構造は、一の部材と他の部材にそれぞれ軸受部を設け、この軸受部に軸部材を挿通させることで、一の部材と他の部材とを回動自在に連結するものであった。
【0005】
軸部材を軸受部に挿通させるには、軸受部の軸受孔を連通させた状態で、軸部材を一方側の軸受孔の端部から他方側の軸受孔の端部にかけて挿通させるものであった。このため、軸部材を略その全長に亘って軸受部の軸受孔に挿通させる必要があり、軸部材を挿通させるの作業が面倒なものであった。
【0006】
本発明はこれらの事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、一の部材と他の部材とにそれぞれ設けた軸受部の軸受孔に軸部材を挿通させ易いヒンジ構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、一の部材1と他の部材3とにそれぞれ設けた軸受部2、4の軸受孔を回動中心となる直線上で連通させ、前記連通させた軸受孔に軸部材5を挿通させて前記一の部材1と前記他の部材3とを回動自在に連結するヒンジ構造であって、前記軸部材5は、前記軸受孔に挿通される軸部6と、該軸部6の軸方向中間部において前記回動中心から離れる方向へ向けて連設される離心部7と、を備え、前記一の部材1と前記他の部材3はそれぞれ、前記軸部材5の前記軸部6のうち前記離心部7よりも軸方向一端(図1の61a)側に位置する一軸部61が挿通される一軸受部21、41と前記離心部7よりも軸方向他端(図1の62b)側に位置する他軸部62が挿通される他軸受部22、42とを備え、前記軸部材5の前記離心部7の軸方向一端7aから前記他軸部62の軸方向他端62bまでの長さL1が、前記一の部材1と前記他の部材3とが回動自在に連結された時の相対的な位置関係であり前記軸受孔が一直線上で連通する連結状態における、両方の前記一軸受部21、41のうち軸方向他端側に位置する一軸受部(図1の他軸受部22)の軸方向他端21bから両方の前記他軸受部22、42のうち軸方向他端側に位置する他軸受部(図1の一軸受部42)の軸方向一端42aまでの長さL2よりも短く形成され、且つ、前記軸部材5の軸方向一端61aから軸方向他端62bまでの長さL3が、前記一の部材1と前記他の部材3の前記連結状態における、両方の前記一軸受部21、41のうち軸方向一端側に位置する一軸受部41の軸方向他端41bから両方の前記他軸受部22、42のうち軸方向他端側に位置する他軸受部(図1の他軸受部42)の軸方向一端42aまでの長さL4よりも長く形成されることを特徴とする。
【0008】
これにより、一の部材1と他の部材3の連結状態において軸部材5の一軸部61を軸方向他端側の一軸受部21の軸方向他端21bから軸受孔に挿通させていき、他軸部62の他端62bが他軸受部22、42よりも一端側へ位置すると、今度はこの他軸部62の他端62bを軸方向一端側の他軸受部22の軸方向一端22aから軸受孔に挿通させていき、軸部材5が両方の部材1、3の一軸受部21、41と他軸受部22、42とに挿通させることで、容易に軸部材5を装着することができる。
【0009】
また請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記軸部材5が軸方向に移動するのを規制する移動規制手段8を備えることを特徴とする。
【0010】
これにより、軸部材5が軸方向に移動して、一の部材1と他の部材3とが外れるのを防止することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明においては、従来のように軸部材を略その全長に亘って軸受部の軸受孔に挿通させる必要がなく、軸部材を挿通させ易いものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態を示し、(a)は一の部材と他の部材の連結状態における位置関係を示す正面図であり、(b)は軸部材の正面図である。
【図2】同上において、軸部材の一の部材および他の部材への装着を説明する説明図である。
【図3】(a)は同上において軸部材の一の部材および他の部材への装着を説明する説明図であり、(b)はその更に他例を説明する説明図である。
【図4】同上において、軸部材の一の部材および他の部材への装着を説明する説明図である。
【図5】同上の具体例における一の部材の背面側から見た斜視図である。
【図6】同上の具体例における他の部材を示し、(a)は正面図であり、(b)は側断面図である。
【図7】同上の具体例における軸部材を示し、(a)は正面図であり、(b)は側面図である。
【図8】同上の具体例において、一の部材と他の部材とを連結した状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について図1乃至図4に基づいて説明する。
【0014】
本発明は、図1に示すように、一の部材1と他の部材3とにそれぞれ設けた軸受部2、4の軸受孔に軸部材5を挿通させて、一の部材1と他の部材3とを回動自在に連結するヒンジ構造である。
【0015】
一の部材1と他の部材3の形状は特に限定されないが、一の部材1の略直線状をした端辺に軸受部2を備えるとともに、他の部材3の略直線状をした端辺に軸受部4を備える。
【0016】
軸受部2、4は、内部に軸受孔を有するもので、通常は筒状に形成されるものであるが、周方向の一部が切欠されて筒状になっていなくてもよく、この場合には内部が軸受溝となる。軸受孔に軸部材5が挿通されて、一の部材1と他の部材3とが互いに回動する際の回動中心となる。
【0017】
軸部材5は、軸受孔に挿通される軸部6と、軸部6の軸方向中間部において回動中心から離れる方向へ向けて連設される離心部7と、を備える。軸部材5は可撓性を有しており、ある程度撓ませながら軸受孔に挿通させることができる。
【0018】
離心部7は、回動中心から離れる方向へ連設されるため軸受孔には挿通されないもので、軸部材5が軸方向に移動して軸受部2、4に当接すると、それ以上の軸方向の移動が阻止される。また離心部7は、軸部材5を一の部材1と他の部材3とに装着する際の把持部となるものである。
【0019】
また、離心部7の形状や個数は特に限定されないものであり、また、軸部材5の軸方向の離心部7が位置する部分には軸部6が有っても無くてもよい。つまり、軸部材5は、離心部7よりも軸方向一端61a(以下、単に一端61aという)側に位置する一軸部61と、離心部7よりも軸方向他端62b(以下、単に他端62bという)側に位置する他軸部62とを備えていればよい。
【0020】
そして、一の部材1と他の部材3とに設けられる軸受部2、4もこれに対応して、それぞれ、一軸部61が挿通される一軸受部21、41と、他軸部62が挿通される他軸受22、42とを備えている。一軸受部21、41と他軸受部22、42とは軸方向に隙間をあけて形成され、この隙間に離心部7が位置する。一の部材1と他の部材3は、回動自在に連結された時に、軸受部2、4の軸受孔が一直線(回動中心)上で連通するが、この連結状態において、互いに軸方向に並設され、同心状には重ならない。図1に示す実施形態では、一の部材1の一軸受部21および他軸受部22が、他の部材3の一軸受部41および他軸受部42の軸方向内側に位置しているが、一軸受部21および他軸受部22が一軸受部41および他軸受部42の軸方向外側に位置していてもよい。また、一の部材1の一軸受部21が他の部材3の一軸受部41よりも軸方向内側に位置し且つ一の部材1の他軸受部22が他の部材3の他軸受部42よりも軸方向外側に位置したり、一の部材1の一軸受部21が他の部材3の一軸受部41よりも軸方向外側に位置し且つ一の部材1の他軸受部22が他の部材3の他軸受部42よりも軸方向内側に位置してもよい。
【0021】
次に、軸部材5と軸受部2、4の長さの関係について説明する。
【0022】
軸部材5の離心部7の一端7aから他軸部62の他端62bまでの長さL1は、図1に示すように、連結状態における、両方の一軸受部21、41のうち他端側に位置する一の部材1の一軸受部21の他端21bから、両方の他軸受部22、42のうち他端側に位置する他の部材3の他軸受部42の一端42aまでの長さL2よりも短く形成される。
【0023】
さらに、軸部材5の一端61aから他端62bまでの長さL3(すなわち軸方向の全長)は、連結状態における、両方の一軸受部21、41のうち一端側に位置する他の部材3の一軸受部41の他端41bから、両方の他軸受部22、42のうち他端側に位置する他の部材3の他軸受部42の一端42aまでの長さL4よりも長く形成される。また、軸部材5の一軸部61の軸方向の長さL5は、一の部材1の一軸受部21の他端21bから他の部材3の一軸受部41の他端41bまでの長さL6よりも長くなるように形成され、軸部材5の他軸部62の軸方向の長さL7は、一の部材1の他軸受部22の一端22aから他の部材3の他軸受部42の一端42aまでの長さL8よりも長くなるように形成される。
【0024】
また、図1に示す実施形態では、一の部材1の一軸受部21の他端21bから他軸受部22の一端22aまでの長さL9は、軸部材5の離心部7の一端7aから他軸部62の他端62bまでの長さL1よりも長く形成されるが、長さL9が長さL1より若干短く形成されてもよい。
【0025】
上記一の部材1と他の部材3とを軸部材5による回動自在に連結するには、まず、一の部材1と他の部材3の軸受部2、4を、使用状態における所定の位置関係となるように位置させ、軸受孔を回動中心となる直線上で連通させる。
【0026】
次に、図2に示すように、軸部材5の一軸部61の一端61aを、一の部材1の一軸受部21の軸受孔に他端21b側から挿通させていく。ここで、上述したように、長さL1<長さL2となるように形成されているため、図3(a)に示すように、離心部7が一の部材1の一軸受部21に当接するまでに、軸部材5の他軸部62の他端62bが他の部材3の他軸受部42の一端42a(本実施形態ではさらに図3(a)では一の部材1の他軸受部22の一端22a)よりも一端側に位置する。
【0027】
また、長さL9が長さL1より若干短く形成されている場合でも、図3(b)に示すように、他軸部62の他端62bが一の部材1の他軸受部22の一端22aよりも他端側に位置するものの、他の部材3の他軸受部42の一端42aよりも一端側に位置し、他の部材3の他軸受部42へと挿入することができる。なお、このように長さL9が長さL1より若干短く形成されている場合には、軸部材5の離心部7と他軸部62とを撓ませて、他軸部62の他端62bを一の部材1の他軸受部22の一端22aから挿通させる。
【0028】
次に、軸部材5の他軸部62の他端62bを一端側の一の部材1の他軸受部22の一端22aから軸受孔に挿通させていく。ここで、上述したように、長さL3>長さL4、長さL5>長さL6、長さL7>長さL8となるように形成されているため、図4に示すように軸部材5の一軸部61が一の部材1と他の部材3の一軸受部21、41に挿通されるとともに、軸部材5の他軸部62が一の部材1と他の部材3の他軸受部22、42に挿通される状態となり、この状態が連結状態となる。
【0029】
上記説明をふまえ、以下に具体例について図5乃至図8に基づいて説明するが、上記説明と同様の説明は省略し、上述していない新たな構成について主に説明する。図5は、一の部材1の背面側から見た斜視図であり、図6(a)は、他の部材3の正面図であり、(b)は他の部材3の側断面図であり、図7(a)は軸部材5の正面図、図7(b)は軸部材5の側面図であり、図8は一の部材1と他の部材3とを連結した状態の斜視図である。
【0030】
本例は、ガス調理器に用いられるもので、一の部材1がガス調理器の前面の一部をなす電池収納部の前面パネル部であり、他の部材3が前記電池収納部カバーに覆われる電池収納部カバーである。
【0031】
本例では、軸部材5と、一の部材1および他の部材3の軸受部2、4とに関し、軸方向に線対称となっている。また、一の部材1の一軸受部21の他端21bから他軸受部22の一端22aまでの長さL9が軸部材5の離心部7の一端7aから他軸部62の他端62bまでの長さL1より若干短く形成されており、軸部材5を撓ませて、一の部材1の一軸受部21と他軸受部22との間に装着する。
【0032】
図6に示すように、他の部材3に移動規制手段8を設けてある。移動規制手段8は、軸部材5が軸方向に移動するのを規制し、一の部材1と他の部材3とが外れるのを防止するものである。移動規制手段8は、一規制部81および他規制部82を備え、さらに保持部83を備えるものである。一規制部81は、離心部7が当接して軸部材5が一端61a側へ移動するのを規制するもので、本例では、他の部材3の一面に形成される凹所31の一端側の内側壁にて構成される。他規制部82は、離心部7が当接して軸部材5の他端62b側へ移動するのを規制するもので、本例では凹所31の他端側の内側壁にて構成される。
【0033】
保持部83は、軸部材5が軸周りに回動して、離心部7が一規制部81および他規制部82に当接しない状態になるのを阻止するもので、本例では、凹所31に保持爪32が突設されて構成され、保持爪32と凹所31の底面との間に離心部7を挟持するものである。離心部7を保持爪32に保持させるには、図4に示すように軸部材5を一の部材1と他の部材3とに挿通させた後、離心部7を軸周りに回転させ、保持爪32と凹所31の底面との間に挟持させる。
【0034】
また本例では、離心部7に、離心部7が軸部材5から離れる方向および軸方向とに直交する方向に突出される、把持部71が設けてある。このため、離心部7を保持爪32に保持させた後、把持部71を把持して離心部7を回転させて保持を解除し、一の部材1と他の部材3とを離脱させる際に、離心部7を回転させ易くなる。
【0035】
なお、一規制部81、他規制部82、保持部83は前記の形態に限定されないものである。例えば、一規制部81、他規制部82が凹所31から略垂直に突出する保持爪32で構成されたり、保持部が凹所31から略垂直に突出する二つの保持爪32で構成され、この保持爪32間に離心部7の一部を挟持させるものでもよい。また移動規制手段8は、本例では他の部材3に設けられるが、一の部材1に設けられてもよく、また両方に設けられてもよい。
【0036】
また、本例では、一の部材1がガス調理器の電池収納部の前面パネル部であり、他の部材3が電池収納部カバーであるが、一の部材1がガス調理器の電池収納部カバーであり、他の部材3が電池収納部の前面パネル部であってもよく、また、ガス調理器の他の構成部品であってもよい。また、本発明はガス調理器だけでなく、様々な機器に適用可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 一の部材
2 軸受部
21a 一端
21b 他端
21 一軸受部
22a 一端
22b 他端
22 他軸受部
3 他の部材
31 凹所
32 保持爪
41b 他端
41 一軸受部
42a 一端
42 他軸受部
4 軸受部
5 軸部材
6 軸部
61 一軸部
61a 一端
62 他軸部
62b 他端
7 離心部
7a 一端
71 把持部
8 移動規制手段
81 一規制部
82 他規制部
83 保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の部材と他の部材とにそれぞれ設けた軸受部の軸受孔を回動中心となる直線上で連通させ、前記連通させた軸受孔に軸部材を挿通させて前記一の部材と前記他の部材とを回動自在に連結するヒンジ構造であって、
前記軸部材は、前記軸受孔に挿通される軸部と、該軸部の軸方向中間部において前記回動中心から離れる方向へ向けて連設される離心部と、を備え、
前記一の部材と前記他の部材はそれぞれ、前記軸部材の前記軸部のうち、前記離心部よりも軸方向一端側に位置する一軸部が挿通される一軸受部と、前記離心部よりも軸方向他端側に位置する他軸部が挿通される他軸受部とを備え、
前記軸部材の前記離心部の軸方向一端から前記他軸部の軸方向他端までの長さが、前記一の部材と前記他の部材とが回動自在に連結された時の相対的な位置関係であり前記軸受孔が一直線上で連通する連結状態における、両方の前記一軸受部のうち軸方向他端側に位置する一軸受部の軸方向他端から両方の前記他軸受部のうち軸方向他端側に位置する他軸受部の軸方向一端までの長さよりも短く形成され、且つ、
前記軸部材の軸方向一端から軸方向他端までの長さが、前記一の部材と前記他の部材の前記連結状態における、両方の前記一軸受部のうち軸方向一端側に位置する一軸受部の軸方向他端から両方の前記他軸受部のうち軸方向他端側に位置する他軸受部の軸方向一端までの長さよりも長く形成されることを特徴とするヒンジ構造。
【請求項2】
前記軸部材が軸方向に移動するのを規制する移動規制手段を備えることを特徴とする請求項1のヒンジ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−50140(P2013−50140A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187440(P2011−187440)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(301071893)株式会社ハーマン (94)
【Fターム(参考)】