説明

ヒンジ機構

【課題】
回動が規制されるヒンジ機構を提供すること。
【解決手段】
着脱自在な一対の平板24,42の連結によって、平板42の回動を許容するヒンジ機構であって、平板42には、略円形孔43が開口形成され、平板24は、略円形孔43に挿入可能なヒンジ軸25を有し、略円形孔43は、その周縁の一部に、少なくとも平板24,42の板厚W1以上の幅W2を有し、ヒンジ軸25の挿入が可能なスリット44と、ヒンジ軸25と当接して平板42の回動を規制する回動規制部45とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒンジ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、箱本体と蓋体との間の開閉機構としては、特許文献1に記載されているようなヒンジ構造のものが知られている。特許文献1に示される蓋体の開閉機構では、蓋体に突設されたヒンジピンが、ケースに立設されたスライド溝に嵌入され、スライド溝に延設された軸受部内に収容され、軸受部内を回動することによって、蓋体の開閉を可能としている。
【0003】
しかし、このような蓋体の開閉機構には、以下に説明する技術的な課題があった。
【0004】
【特許文献1】実開平7−27188号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の蓋体の開閉機構では、軸受部が円形となっており、ヒンジピンは、軸受部の内周面に当接して360度回動可能なように構成されているため、蓋体の回動を規制することが出来なかった。
【0006】
このため、かかる開閉機構を採用した容器の場合、蓋体を閉めて箱本体に固定する場合には、蓋体と箱本体との間にロック機構のようなものを設ける必要がある。また、蓋体を開放した状態で任意の位置に止めたい時は別途、ストッパー等の係止手段を用いる必要があった。
【0007】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、別途ロック機構や係止手段を必要とせず、一対の平板という簡素な構成によって回動を任意に規制することが出来るヒンジ機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明にかかるヒンジ機構は、着脱自在な一対の平板の連結によって、いずれかの前記平板の回動を許容するヒンジ機構であって、一方の前記平板には、略円形孔が開口形成され、他方の前記平板は、前記略円形孔に挿入可能なヒンジ軸を有し、前記略円形孔は、その周縁の一部に、少なくとも前記平板の板厚以上の幅を有し、前記ヒンジ軸の挿入が可能なスリットと、前記ヒンジ軸と当接して前記平板の回動を規制する回動規制部とを備えるようにした。
【0009】
このような構成によれば、一対の平板に形成されたヒンジ軸と孔の組み合わせによって、複雑な加工や、別部品を必要とせず、簡素で、着脱容易、回動規制可能なヒンジ機構が提供される。
【0010】
また、前記一対の平板は、開口部を有する箱本体と、前記開口部を覆う蓋体のいずれか一方を構成するものであってもよい。
【0011】
この構成によれば、例えば、電子機器の筐体に当該ヒンジ機構が採用されれば、電子機器を所定場所に設置後、内部部品のメンテナンス・保守が容易に行なわれる。
【0012】
また、前記スリットは、外方に向かって拡開していてもよい。
【0013】
この構成によれば、ヒンジ軸の挿脱が容易になる。
【0014】
また、前記回動規制部は、扇状をしており、その一辺が、前記スリットの延長線上に設けられていてもよい。
【0015】
この構成によれば、平板の孔加工の容易性が増す。
【0016】
また、前記回動規制部は、前記略円形孔内に2箇所突設されていてもよい。
【0017】
この構成によれば、2箇所の回動規制部で回動可能範囲・位置が決定されるので、回動時及び回動規制時の安定性が増す。
【発明の効果】
【0018】
本発明にかかるヒンジ機構によれば、一対の平板に形成されたヒンジ軸と孔の組み合わせによって、複雑な加工や、別部品を必要とせず、簡素で、着脱容易、任意の位置・範囲で回動規制可能なヒンジ機構が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施の形態について、添付図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明のヒンジ機構を備えた箱1を閉じた状態の外観斜視図であり、図2は、同箱1の分解斜視図である。
【0020】
同図に示す箱1は、金属製の平板を組み合わせて構成されており、箱本体2と、箱本体2の開口部を覆う蓋体4とを備える。箱本体2と蓋体4とは、着脱自在な一対の平板によって構成され、これらの平板の連結により、箱本体2の一辺を軸として蓋体4を回動させ、蓋体4の開閉を可能としている。箱1は、電子部品を内蔵する電子機器、郵便受け、自転車の駐輪装置・コインパーキング等の料金箱、等の各種収容物の筐体として用いられる。尚、平板材料は、所定の厚みを有するものであれば金属に限らず、樹脂、材木等であってもよい。
【0021】
本実施例の箱本体2は、正面22と底面23と背面24とが1枚の平板の折り曲げ加工により一体構成されたコ字状平板21と、コ字状平板21の左右両側面を覆う側面用平板3とにより構成される。側面用平板3は、コ字状平板21の周縁を更に折り曲げた縁部21aに重合してネジ止め等により固定される。
【0022】
尚、箱本体2の形状や構成、組立方法は、本実施例に示したものに限らず、例えば、1枚の平板を箱状に鋳出成形したものでもよいし、複数の矩形平板の接片同士を溶接して箱状にしたものでもよい。
【0023】
蓋体4は、箱本体2からの分離が可能で、箱本体2の底面23に対向する開口部を覆うものであれば、どのような形状でも構わないが、本実施例の蓋体4は、1枚の平板の周囲4辺のうち、箱本体2の背面24側の辺を除く3辺を折り曲げ加工し、上面41と1対の左右両側面42と1つの正面側側面47から構成される。
【0024】
次に、本発明のヒンジ機構の詳細について説明する。尚、本実施例のヒンジ機構は、箱本体2の背面24の上辺を軸として、蓋体4を回動させるものである。
【0025】
箱本体2の背面24上には、図3の背面24の平面図(a)及び側面図(b)にも示すように、上辺に沿って平行に、かつ、側面用平板3に向かう方向にそれぞれヒンジ軸25が突出形成されている。尚、ヒンジ軸25の側面用平板3の方向への突出幅W0は、本実施例では、平板の板厚W1分となっているが、これより長く突出していてもよい。
【0026】
このヒンジ軸25を中心として回動する蓋体4の左右両側面42の箱本体2背面24側には、図4の箱1の側面平面図及び図4を一部拡大した図5にも示すように、ヒンジ軸25が挿入可能な略円形孔43が開口形成されている。つまり、ヒンジ軸25の縦方向の長さL1(図5参照)は、孔43に内接するよう、孔43の直径と略等しくされ、孔43の直径>L1の関係が成立する。
【0027】
更に、孔43は、その周縁の一部に、ヒンジ軸25の挿入可能なスリット44を備えている。スリット44は、少なくとも平板の板厚W1以上の幅W2を有し、ヒンジ軸25を外部から孔43内に挿入するために、外方に連通形成されている。
【0028】
尚、本実施例のスリット44は、蓋体4が箱本体2の開口部を完全に覆った状態(蓋体4が閉じられた状態)で、箱本体2の正面22から背面24に向かう方向に伸びて、外部と連通するように形成されるが、必ずしもこの方向にスリット44が形成されている必要はない。
【0029】
更に、本実施例の蓋体4の側面42の形状は、真四角ではなく、スリット44が外部に連通する辺を斜辺とする略台形状をしている。このため、スリット44の長さは上下で異なっており、また更に、下側のスリット外周縁46は、鋭角ではなく研磨等により丸みを持たせている。これにより、スリット44のヒンジ軸導入口を、外部に向かって広く拡開させ、ヒンジ軸25の挿脱を容易にするとともに、手を切る等の危険性がなく人体への安全が確保される。
【0030】
また更に、孔43は、その周縁の一部に、内部に挿入されたヒンジ軸25と当接して蓋体4の回動を規制する回動規制部45を備えている。本実施例の回動規制部45は、扇状をしており、ヒンジ軸25のスリット44からの挿入を妨げない位置に、内方に向かって突設されている。
【0031】
回動規制部45の扇の角度、突設位置、スリット44との位置関係は、自由に決めることが出来る。つまり、これらの要因相互の関係で、回動許容範囲が決まる。本実施例では、回動規制部45の角度R1が90度であり、図4,図5のように蓋体4が閉じられた状態から、図7の箱本体2の背面24と蓋体4の上面41が平行になった状態まで、つまり、180度−扇の角度(90度)=90度の範囲(図5及び図7のAに示す範囲)で、蓋体4が回動可能となっている。
【0032】
更に、本実施例の回動規制部45は、扇の一辺が、スリット44の延長線上に設けられており、平板の孔加工の容易性が増すものとなっている。
【0033】
このように、孔43を有する平板と、ヒンジ軸25を有する平板との簡素な組み合わせで、平板と平板のヒンジ開閉機構が実現され、更に、孔43の内方に回動規制部45を設けることにより、開閉範囲が規制されるので、ロック機構や嵌合部等の係止構造を採用する必要がなくなる。これによって、箱本体2及び蓋体4の形状の設計自由度が増す。
【0034】
以上のような構成により、箱本体2と蓋体4とが図8に示すように、分離状態にある時には、箱本体2のヒンジ軸25が、蓋体4のスリット44を通って、スリット44に連通する孔43に導入され(本実施例では、図7に示すように、蓋体4の上面41を垂直に傾けた状態でヒンジ軸25が導入可能となる)、箱本体2と蓋体4とが連結される。そして、図6,図7に示すように、ヒンジ軸25を中心として、蓋体4が回動し、その回動は、回動規制部45の形状、設置場所、スリット44との位置関係に応じた範囲で規制される。尚、図6は、蓋体4を回動可能範囲の半分(45度)まで回動させ、蓋体4が開いている状態を示している。
【0035】
また、蓋体4を箱本体2から離脱させたい場合には、ヒンジ軸25を孔43に導入した時と同様、蓋体4の上面41を垂直に傾けた状態(図7)にまで移動し、そのまま上方に蓋体4を引き抜くことによって、ヒンジ軸25がスリット44を通って抜け出る(図8)。
【0036】
このように、一対の平板に形成されたヒンジ軸25と孔43の組み合わせによって、複雑な加工や、別部品を必要とせず、簡素で、着脱容易、回動規制可能なヒンジ機構が提供される。
【0037】
これにより、例えば、電子機器の筐体に当該ヒンジ機構が採用されれば、電子機器を所定場所に設置後、内部部品のメンテナンス・保守が容易に行なわれる。また、駐輪場等の料金箱であれば、図1,図2に示す箱本体2の正面22に設けられた孔部22aと蓋体4の正面側側面47に設けられた孔部47aを南京錠等で連結するだけの構成で中身の安全性が守られ(特に、金属製平板で構成されていれば、外の環境にも耐え、人為的な破壊も防止される)、集金員は、蓋体4を箱本体2から外して、内部に収容された硬貨や紙幣を短時間のうちに回収することが出来る。
【0038】
以上は、箱本体2にヒンジ軸25が設けられ、蓋体4にヒンジ軸25が内接する孔43が設けられた場合の箱の実施例について説明したが、箱本体2に孔43が設けられ、蓋体4にヒンジ軸25が設けられるような箱であっても、同様に、本発明のヒンジ機構は成立するものであり、このような場合も本発明に含まれる。
【0039】
また、回動規制部45は、図9(a),(b)に示すように、2箇所あってもよい。この場合は、双方の回動規制部45の一辺同士が中心に向かって延長される辺の交差する角度Aが、回動可能範囲となる。図9(a)に示す回動規制部45a,45bは、実質的に先の実施例の図5の回動規制部45と同じ90度の範囲で、回動を許容するものであるが、ヒンジ軸25の両側面(背面24の表裏面)が、各々、回動規制部45a,45bに当接して係止するので、回動時及び回動規制時の安定性が増す。
【0040】
回動可能範囲を広くしたい場合には、図9(b)に示すように、扇の角度を鋭角にした回動規制部45cを設けるだけでもよいが、回動規制部45cの位置に略対向する位置に回動規制部45dを設けることによって、同じ回動可能範囲でも、回動時及び回動規制時の安定性が増し、回動可能範囲を確実に決定することが出来る。
【0041】
尚、図9(a),(b)では、1の孔43に設けられる回動規制部45の形状が略同じとなっているが、各々異なる形状であっても構わず、回動許容範囲、回動位置、平板の板厚・材質、要求強度等の設計上の制約に応じて、種々の変更が可能である。
【0042】
回動規制部45の別実施例を図9(c)に示す。図9(c)の回動規制部45eは、扇の角度が鈍角(90度以上)となっており、ヒンジ軸25の回動範囲Aを狭く(回動範囲=180度−扇の角度)することが出来る。但し、図9(c)の実施例では、蓋体4は完全に閉じられないようになっている。
【0043】
尚、図9に示した蓋体4は、側面42が矩形状になっており、スリット44の上下の長さが略等しくなっている。
【0044】
同じ回動可能範囲でも、例えば、図5と図9(a)のように、回動規制部45の形状、位置のパターンは複数通り考えられるので、例えば、平板の板厚・材質・強度、その他設計上の制約に応じて、変更が可能である。
【0045】
また、上述した実施例のヒンジ軸25は、図3に示したように、箱本体2の背面24の上方から所定距離離間した位置に設けられたが、例えば、図10(a)に示す背面24aのように、上辺を箱本体2の幅より長くしてヒンジ軸25aが上辺に一体化されていても、ヒンジ開閉の妨げとはならず、差し支えない。また、ヒンジ軸25は必ずしも矩形状である必要はなく、例えば、図10(b)に示す背面24bのように、台形状のヒンジ軸25bを備えていてもよい。また、図10(c)に示す背面24cのように、T字状のヒンジ軸25cを備えていてもよい。いずれにせよ、ヒンジ軸25は、孔43に内接して回動可能な幅W3を少なくとも板厚W1分、有する形状であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】箱の外観斜視図である。
【図2】図1の箱の分解斜視図である。
【図3】図1の箱の背面平面図である。
【図4】図1の箱の蓋体が閉じている状態の側面平面図である。
【図5】図4の部分拡大図である。
【図6】図1の箱の蓋体が開いている状態の側面平面図である。
【図7】図1の箱の蓋体が開いている状態の側面平面図である。
【図8】図1の箱の箱本体と蓋体とが分離している状態の側面平面図である。
【図9】回動規制部の他の実施例を示す図である。
【図10】ヒンジ軸の他の実施例を示す図である。
【符号の説明】
【0047】
1:箱
2:箱本体
21:コ字状平板
21a:縁部
22:正面
23:底面
24:背面
25:ヒンジ軸
3:側面用平板
4:蓋体
41:上面
42,47:側面
43:孔
44:スリット
46:スリット外周縁
45:回動規制部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着脱自在な一対の平板の連結によって、いずれかの前記平板の回動を許容するヒンジ機構であって、
一方の前記平板には、略円形孔が開口形成され、
他方の前記平板は、前記略円形孔に挿入可能なヒンジ軸を有し、
前記略円形孔は、その周縁の一部に、
少なくとも前記平板の板厚以上の幅を有し、前記ヒンジ軸の挿入が可能なスリットと、
前記ヒンジ軸と当接して前記平板の回動を規制する回動規制部とを備える
ことを特徴とするヒンジ機構。

【請求項2】
前記一対の平板は、開口部を有する箱本体と、前記開口部を覆う蓋体のいずれか一方を構成するものである
ことを特徴とする請求項1記載のヒンジ機構。
【請求項3】
前記スリットは、
外方に向かって拡開している
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のヒンジ機構。
【請求項4】
前記回動規制部は、
扇状をしており、
その一辺が、前記スリットの延長線上に設けられる
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のヒンジ機構。
【請求項5】
前記回動規制部は、
前記略円形孔内に2箇所突設される
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のヒンジ機構。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2006−249667(P2006−249667A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−63356(P2005−63356)
【出願日】平成17年3月8日(2005.3.8)
【出願人】(502131408)株式会社井口一世 (4)
【Fターム(参考)】