ヒンジ装置
【課題】取付部材を回転付勢する付勢手段として付勢力の弱い付勢手段を用いることにより、取付部材の回転に伴って摺動する箇所が早期に摩耗することを防止する。
【解決手段】内側リンク72を本体部3に回転可能に連結する第2支持軸74には、力伝達部材81の基端部を回転可能に設ける。力伝達部材81の先端部は、本体部3の天板部3bに形成されたガイド孔3gから外部に突出させる。この突出した力伝達部材81の先端部に押圧部81bを設ける。取付部材4が閉位置に近い位置に位置しているときに、取付部材の瞬間回転中心から離間した端部には、受け部83bを設ける。押圧部81bをねじりコイルばね82によって受け部83bに押し付けることにより、取付部材4を閉位置側へ回転させる。
【解決手段】内側リンク72を本体部3に回転可能に連結する第2支持軸74には、力伝達部材81の基端部を回転可能に設ける。力伝達部材81の先端部は、本体部3の天板部3bに形成されたガイド孔3gから外部に突出させる。この突出した力伝達部材81の先端部に押圧部81bを設ける。取付部材4が閉位置に近い位置に位置しているときに、取付部材の瞬間回転中心から離間した端部には、受け部83bを設ける。押圧部81bをねじりコイルばね82によって受け部83bに押し付けることにより、取付部材4を閉位置側へ回転させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、扉を躯体に回転可能に連結する際に用いられるヒンジ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種のヒンジ装置は、下記特許文献1に記載されているように、本体部と、この本体部に第1及び第2リンクを介して回転可能に連結された取付部材とを有している。そして、本体部が筐体に取り付けられ、取付部材が扉に取り付けられる。これにより、扉が筐体にヒンジ装置を介して回転可能に取り付けられている。
【0003】
本体部には、捩りコイルばね等の回転付勢手段が設けられている。この回転付勢手段は、第1リンク又は第2リンクを介して取付部材を回転付勢している。すなわち、第1及び第2リンクの一端部は、本体部に互いに平行な第1及び第2支持軸を介してそれぞれ回転可能に連結され、他端部は取付部材に第1及び第2支持軸と平行な第3、第4支持軸を介して回転可能に連結されている。したがって、回転付勢手段が第1リンクを介して取付部材を回転付勢する場合には、第1リンクが回転付勢手段により第1支持軸を中心として回転付勢される。そして、回転付勢された第1リンクが取付部材を第3支持軸を介して回転付勢する。回転付勢手段が第2リンクを介して取付部材を回転付勢する場合には、第2リンクが取付部材を第4支持軸を介して回転付勢する。このように、回転付勢手段の取付部材に対する回転付勢力は、第3支持軸又は第4支持軸を介して取付部材に作用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−112973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
取付部材の瞬間回転中心は、第1支持軸と第3支持軸とを結ぶ直線と、第2支持軸と第3支持軸とを結ぶ直線の交点であり、第1支持軸から第3支持軸へ向かう方向の前方で、かつ第2支持軸から第4支持軸へ向かう方向の前方に位置している。一方、取付部材の回転付勢力が作用する第3及び第4支持軸は、取付部材の瞬間回転中心に近い位置に配置されている。このため、取付部材の瞬間回転中心と第3又は第4支持軸との間の距離、つまり取付部材を回転させるための回転モーメントの腕の長さが比較的短くなっている。そこで、取付部材を回転付勢するため回転付勢手段としては、回転付勢力の大きなものを用いなければならない。ところが、回転付勢手段の回転付勢力を大きくすると、取付部材の回転に伴って摺接する箇所、例えば第1リンクと第3支持軸との間、あるいは第2リンクと第4支持軸との間に大きな摩擦抵抗が発生する。この結果、各摺接箇所が早期に摩耗してしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の問題を解決するために、この発明の第1の態様は、本体部と、この本体部に第1及び第2リンクを介して閉位置と開位置との間を回転可能に連結された取付部材と、上記本体部に設けられ、上記取付部材を上記本体部に対して回転するように付勢する回転付勢手段とを備え、上記第1及び第2リンクの一端部が上記本体部に互いに平行な第1及び第2支持軸を介して回転可能に連結され、上記第1及び第2リンクの他端部が上記取付部材に上記第1及び第2支持軸と平行な第3及び第4支持軸を介して回転可能に連結されたヒンジ装置において、上記回転付勢手段がその一部を上記本体部から突出させた状態で上記本体部の内部に設けられ、上記本体部から外部に突出した上記回転付勢手段の一部が上記取付部材に押圧接触することによって上記取付部材が回転付勢されていることを特徴としている。
この場合、上記取付部材に押圧接触する上記回転付勢手段の上記一部が、上記第1〜第4支持軸の軸線と直交する方向で、かつ上記取付部材の瞬間回転中心から離間する方向に上記本体部から外部突出させられていることが望ましい。
上記本体部が、互いに対向して配置された一対の側板部と、この一対の側板部の一側部どうしを連結する天板部とによって断面「コ」字状に形成され、上記第1及び第2支持軸がその軸線を上記側板部の対向方向に向けて配置され、上記第1支持軸の両端部及び上記第2支持軸の両端部が上記側板部に支持され、上記天板部に切欠き部が形成され、上記回転付勢手段の一部が上記切欠き部を通って上記本体部の外部に突出させられていることが望ましい。
上記回転付勢手段が、上記本体の内部に変位可能に設けられた力伝達部材と、この力伝達部材を変位させる付勢手段とを有し、上記力伝達部材の一部が上記本体部から外部に突出させられていることが望ましい。
上記の問題を解決するために、この発明の第2の態様は、本体部と、この本体部に第1及び第2リンクを介して閉位置と開位置との間を回転可能に連結された取付部材と、上記本体部に設けられ、上記取付部材を上記本体部に対して回転するように付勢する回転付勢手段とを備え、上記第1及び第2リンクの一端部が上記本体部に互いに平行な第1及び第2支持軸を介して回転可能に連結され、上記第1及び第2リンクの他端部が上記取付部材に上記第1及び第2支持軸と平行な第3及び第4支持軸を介して回転可能に連結されたヒンジ装置において、上記取付部材に上記回転付勢手段の回転付勢力が作用する作用部が設けられ、上記取付部材の瞬間回転中心と上記作用部との間の距離が、上記取付部材の瞬間回転中心と上記第3及び第4支持軸との各間の距離よりも長くなるように、上記作用部が配置されていることを特徴としている。
この場合、上記作用部に作用する上記回転付勢手段の付勢力の作用方向が上記取付部材の回転に伴って漸次変化することが望ましい。
上記回転付勢手段が、上記本体部に設けられた力伝達部材と、この力伝達部材を回転付勢する付勢手段とを有し、上記力伝達部材の一端部が上記本体部の内部に回転可能に連結され、上記力伝達部材の他端部が上記本体部から外部に突出し、この突出した他端部が上記取付部材の上記作用部に押圧接触することにより、上記取付部材が上記付勢手段により上記力伝達部材を介して回転させられることが望ましい。
上記第1リンクと上記力伝達部材との間に回転阻止機構が設けられており、上記回転阻止機構は、上記取付部材が上記開位置と上記閉位置とのいずれか一方の位置から他方の位置に向かって回転する場合において、上記他方の位置より所定の角度だけ手前の解除位置に達するまでは、上記力伝達部材が上記付勢手段によって回転させられることを阻止して上記力伝達部材を所定の停止位置に位置固定し、上記取付部材が上記解除位置を越えると、上記力伝達部材が上記付勢手段によって上記他方の位置側へ回動させられることを許容することが望ましい。
上記回転阻止機構が、上記第1リンクに設けられた第1係合部と、上記力伝達部材に設けられた第2係合部とを有し、上記第1及び第2係合部のいずれか一方が、上記第1支持軸の軸線を曲率中心とする凹状の第1円弧面によって構成され、いずれか他方が上記第1支持軸の軸線を曲率中心とする凸状の第2円弧面によって構成され、上記取付部材が上記解除位置に達するまでは上記第1円弧面と上記第2円弧面とが上記第1支持軸の軸線を中心として互いに回転可能に接触することによって上記力伝達部材の回転が阻止され、上記取付部材が上記解除位置を越えると、上記第1円弧面と上記第2円弧面とが互いに離間することによって上記力伝達部材の回転が許容されることが望ましい。
【発明の効果】
【0007】
上記特徴構成を有するこの発明の第1の態様によれば、取付部材を回転付勢するために回転付勢手段の一部を取付部材に押圧接触させており、当該一部を本体部から外部に突出させている。したがって、当該一部が押圧部材に接触する箇所を取付部材の瞬間回転中心から遠くに配置することができる。ここで、回転付勢手段の回転付勢力が一定であると仮定すると、当該一部を取付部材の瞬間回転中心から遠くに配置した分だけ取付部材に作用する回転付勢手段の回転付勢力(回転モーメント)を大きくすることができる。換言すれば、取付部に作用する回転付勢力を大きくすることができる分だけ回転付勢手段の回転付勢力を弱くすることができる。よって、取付部材の回転に伴って摺接する各箇所の早期摩耗を防止することができる。
また、この発明の第2の態様によれば、取付部材の瞬間回転中心と作用部との間の距離が、取付部材の瞬間回転中心と第3及び第4支持軸との各間の距離よりも長いから、回転付勢手段の回転付勢力が一定であると仮定すると、取付部材を回転させる回転付勢力(回転モーメント)を、当該距離が長くなった分だけ大きくすることができる。換言すれば、取付部に作用する回転付勢力を大きくすることができる分だけ回転付勢手段の回転付勢力を弱くすることができる。よって、取付部材の回転に伴って摺接する各箇所の早期摩耗を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、この発明の第1実施の形態を示す斜視図である。
【図2】図2は、同実施の形態の本体部を基部から取り外した状態で示す斜視図である。
【図3】図3は、同実施の形態の基部を示す分解斜視図である。
【図4】図4は、同実施の形態の本体部、取付部材及びそれらに設けられた部材を示す分解斜視図である。
【図5】図5は、同実施の形態を、その取付部材が閉位置に回転した状態で示す平面図である。
【図6】図6は、同実施の形態の本体部及び取付部材をそれぞれ筐体及びに扉に取り付けた状態で示す図5のX−X線に沿う拡大断面図である。
【図7】図7は、同実施の形態を、その取付部材が開位置に位置した状態で示す図6と同様の一部省略断面図である。
【図8】図8は、同実施の形態を、その取付部材が開位置から閉位置に向かって所定角度だけ回転した状態で示す図6と同様の一部省略断面図である。
【図9】図9は、同実施の形態を、取付部材が開位置から平一に向かって力伝達部材が取付部材の当接部に接触し始める接触開始位置まで回転した状態で示す図6と同様の一部省略断面図である。
【図10】図10は、同実施の形態を、取付部材が開位置から閉位置に向かって力伝達部材が取付部材に対して思案位置に位置する中立位置まで回転した状態で示す図6と同様の一部省略断面図である。
【図11】図11は、同実施の形態を、取付部材が開位置から閉位置に向かって図10に示す位置からさらに回転した状態で示す図6と同様の一部省略断面図である。
【図12】図12は、同実施の形態を、取付部材が開位置から閉位置に向かって図11に示す位置からさらに回転した状態で示す図6と同様の一部省略断面図である。
【図13】図13は、同実施の形態を、取付部材が開位置から閉位置に向かって図12に示す位置からさらに回転した状態で示す図6と同様の一部省略断面図である。
【図14】図14は、同実施の形態において用いられている第1リンクを示す図であって、図14(A)はその斜視図、図14(B)はその正面図、図14(C)はその側面図、図14(D)はその平面図、図14(E)は図14(B)のX−X線に沿う断面図である。
【図15】図15は、同実施の形態において用いられている力伝達部材を示す斜視図である。
【図16】図16は、同力伝達部材の平面図である。
【図17】図17は、同力伝達部材の背面図である。
【図18】図18は、同力伝達部材の側面図である。
【図19】図19は、図17のX−X線に沿う断面図である。
【図20】この発明の第2実施の形態を示す斜視図である。
【図21】同実施の形態において用いられている本体部の斜視図である。
【図22】同実施の形態において用いられている力伝達部材の斜視図である。
【図23】同力伝達部材の正面図である。
【図24】同力伝達部材の側面図である。
【図25】同実施の形態を示す図7と同様の断面図である。
【図26】同実施の形態を示す図9と同様の断面図である。
【図27】同実施の形態を示す図10と同様の断面図である。
【図28】同実施の形態を示す図11と同様の断面図である。
【図29】同実施の形態を示す図12と同様の断面図である。
【図30】この発明の第3実施の形態を示す斜視図である。
【図31】同実施の形態において用いられている本体部を示す斜視図である。
【図32】同実施の形態において用いられている外側リンクを示す斜視図である。
【図33】同実施の形態において用いられている力伝達部材を示す斜視図である。
【図34】同力伝達部材を図33と異なる方向から見た斜視図である。
【図35】同力伝達部材の正面図である。
【図36】同力伝達部材の側面図である。
【図37】図35のX−X線に沿う断面図である。
【図38】同実施の形態を示す図7と同様の断面図である。
【図39】同実施の形態を、取付部材が中間位置に位置しているときの状態で示す断面図である。
【図40】同実施の形態を、取付部材が第2付勢範囲内に位置しているときの状態で示す断面図である。
【図41】同実施の形態を、取付部材が解除位置に位置している状態で示す断面図である。
【図42】同実施の形態を、取付部材が解除位置と閉位置との間の位置に位置している状態で示す断面図である。
【図43】同実施の形態を、取付部材が図40に示す位置からさらに閉位置側へ回転して閉位置から所定角度だけ手前の位置に位置している状態で示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
図1〜図19は、この発明の第1実施の形態を示す。この実施の形態のヒンジ装置1は、図1、図2、図5及び図6に示すように、基部2、本体部3及び取付部材4を有している。
【0010】
基部2は、図6に示すように、前面部が開口した躯体Bの右側壁部内面に、それも内面の前端部に固定されている。本体部3は、基部2に着脱可能に取り付けられている。取付部材4は、扉Dの背面の右端部に取り付けられている。そして、取付部材4が本体部3の前側の端部(図6において左側の端部。以下、先端部と称する。)に後述する外側リンク(第1リンク)71及び内側リンク(第2リンク)72を介して水平方向へ回転可能に連結されている。取付部材4は、図6に示す閉位置と図7に示す開位置との間を回転可能である。したがって、扉Dも、閉位置と開位置との間を回転可能である。ただし、扉Dを躯体Bにヒンジ装置1を介して取り付けた状態においては、扉Dが開位置から閉位置に向かって閉位置より若干手前の位置(1°〜2°程度だけ手前の位置)まで回転すると、扉Dが躯体Bの前面に突き当たってそれ以上閉位置側へ回転することができなくなる。したがって、扉Dが躯体Bに支持された状態においては、扉D及び取付部材4が図6に示す閉位置まで回転することがない。なお、この第1実施の形態並びに後述する第2及び第3実施の形態の各構成については、図6に示す躯体Bの前後左右方向及び上下方向(紙面の表裏方向)に基づいて説明するものとする。勿論、この発明は、そのような方向に限定されるものではない。
【0011】
基部2は、特に図2及び図3に示すように、基材5、第1可動部材6及び第2可動部材7を有している。
【0012】
基材5は、特に図3に示すように、長手方向を前後方向(図3において右上がりの左右方向)に向けた断面略四角形の支持部5aを有している。支持部5aは、中実であるが、断面「コ」字状に形成することによって中空にしてもよい。その場合、支持部5aは、その開放部を躯体Bの右側壁部に向けて配置される。支持部5aの上下方向(図3において右下がりの左右方向)を向く両側面には、上方及び下方に突出する固定板部5b,5bがそれぞれ形成されている。この固定板部5b,5bを貫通して躯体Bの右側壁部にねじ込まれたビス(図示せず)を締め付けることにより、基材5が躯体Bの右側壁部内面に固定されている。
【0013】
第1可動部材6は、互いに対向した二つの側板部6a,6aと、この側板部6a,6aの左側部どうしを連結する天板部6bとを有している。この結果、第1可動部材6が、断面略「コ」字状に形成されている。第1可動部材6は、その天板部6bと逆側の開放部を躯体Bの右側壁部に向けるとともに、側板部6aの長手方向を前後方向に向け、側板部6aの厚さ方向を上下方向に向けた状態で配置されている。したがって、側板部6a,6aは、上下方向に対向している。
【0014】
第1可動部材6の側板部6a,6a間には、基材5の支持部5aが挿入されている。側板部6a,6aの互いに対向する内面どうしの間隔は、支持部5aの上下方向の幅より大きくなっている。したがって、第1可動部材6は、側板部6a,6aの間隔と支持部5aの上下方向の幅との差の分だけ基材5に対して上下方向へ移動可能である。
【0015】
第1可動部材6の側板部6a,6aの前後方向における中間部には、それぞれ上方及び下方に突出するガイド部6c,6cが設けられている。このガイド部6c,6cは、基材5の固体板部5b,5bに設けられたガイド凹部5c,5cにそれぞれ上下方向へは移動可能に、前後方向へは移動不能に挿入されている。したがって、第1可動部材6は、基材5に対し、上下方向へは移動可能であるが、前後方向へは移動不能になっている。しかも、第1可動部材5の先端部及び後端部は、固定軸8,9を介して上下方向へは移動可能に、かつ前後方向及び左右方向へは移動不能に連結されている。したがって、第1可動部材6は、基材5に対し上下方向へのみ移動可能であり、前後方向及び左右方向へは移動不能である。第1可動部材6は、後述する第1位置調節機構20により基材5に対して上下方向へ位置調節される。
【0016】
第2可動部材7は、第1可動部材6と同様に、上下に対向する一対の側板部7a,7a及び一対の側板部7a,7aの左側の側部どうしを一体に連結する天板部7bを有している。第2可動部材7は、第1可動部材6と同様な姿勢で配置されている。第2可動部材7の一対の側板部7a,7a間には、第1可動部材6の側板部6a,6a及び天板部6bが挿入されている。一対の側板部7a,7aの内面どうしの間隔は、第1可動部材6の一対の側板部6a,6aの外面どうしの間隔とほぼ同一に設定されている。これにより、第2可動部材7が第1可動部材6に対し前後方向へは移動可能であるが、上下方向へは移動不能になっている。したがって、第2可動部材7は、上下方向へは基材5に対して第1可動部材6と一緒に移動するが、前後方向へは基材5及び第1可動部材6に対して単独で移動する。
【0017】
第2可動部材7の側板部7a,7aの後端部には、前後方向に延びる長孔7cがそれぞれ形成されている。各長孔7c,7cには、第1可動部材6の側板部6a,6aを貫通した固定軸9の上下の両端部がそれぞれ長孔7cの長手方向へ移動可能に、かつ回転可能に挿入されている。また、天板部7bの前端部には、係合溝7dが形成されている。この係合溝7dには、軸線を左右方向に向けた調節ねじ10が左右方向及び上下方向へは移動不能に、しかも前後方向へは移動可能に係合させられている。しかも、調節ねじ10は、係合溝7dに対して調節ねじ10の軸線を中心として回転可能になっている。調節ねじ10の右端部(図3において下端部)は、第1可動部材6の天板部6bの先端部に形成されたねじ孔6dに螺合されている。したがって、調節ねじ10を正逆方向へ回転させると、第2可動部材7の前端部が、固定軸9を中心として左右方向へ回転する。それによって、第2可動部材7の先端部が左右方向へ位置調節される。
【0018】
図6に示すように、基材5と第1可動部材6との間には、第1位置調節機構20が設けられている。第1位置調節機構20は、第1可動部材6の基材5に対する上下方向の位置を調節するためのものであり、ガイドプレート21及び第1調節軸22を有している。
【0019】
ガイドプレート21は、図3に示すように、前後方向に長い略長方形の平板状をなしており、その厚さ方向を左右方向に向けて配置されている。ガイドプレート21の幅、つまり上下方向の幅は、第1可動部材6の天板部6bに形成された前後方向へ延びるガイド孔6eの上下方向の幅より若干広く設定されている。ガイドプレート21は、ガイド孔6eに前後方向へは移動可能に、かつ上下方向へは移動不能に圧入されている。したがって、ガイドプレート21は、上下方向へは第1可動部材6と一緒に移動するが、前後方向へは第1可動部材6に対して相対移動する。この場合、ガイドプレート21がガイド孔6eに圧入されているので、ガイドプレート21の上下の両側面とガイド孔6eの内周面のうちの上下の両側部との間には、比較的大きな摩擦抵抗が発生する。したがって、ガイドプレート21は、その摩擦抵抗より大きな力が作用しない限り前後方向へ移動することはない。逆に、摩擦抵抗に打ち勝つ力をガイドプレート21に作用させることにより、ガイドプレート21を第1可動部材6に対して前後方向へ移動させることができる。ガイドプレート21は、ガイド孔6eに摩擦抵抗がほとんど無い状態で前後方向へ摺動可能に挿入してもよい。
【0020】
第1調節軸22は、図6に示すように、断面円形の第1嵌合部22aを有している。第1嵌合部22aは、その軸線を左右方向(図6において上下方向)に向けて配置されている。第1嵌合部22aの外径は、ガイドプレート21の前端部に形成された第1嵌合孔21aの内径とほぼ同一であり、第1嵌合部22aは、第1嵌合孔21aに、回転可能に、かつ左右方向へ相対移動可能に嵌合されている。しかも、第1嵌合部22aは、第1嵌合孔21aに上下方向及び前後方向へ相対移動不能に嵌合されている。したがって、第1嵌合部22aが上下方向へ移動すると、それに応じてガイドプレート21及び第1可動部材6が上下方向へ移動する。ただし、第1嵌合部22aが前後方向へ移動するときには、ガイドプレート21がガイド孔6e内を前後方向へ移動するだけであり、第1可動部材6が前後方向へ移動することはない。第1嵌合部22aは、第1嵌合孔21aに左右方向へ移動不能に嵌合させてもよい。
【0021】
第1嵌合孔21aの内周面の左端部には、第1嵌合孔21aの内周面に沿って周方向に延びる複数の突出部21bが形成されている。各突出部21bは、第1嵌合孔21aの径方向内側へ向かうにしたがって右側に向かうように傾斜させられている。突出部21bの先端部には、細かい係合歯が周方向に並んで多数形成されている。各係合歯は、突出部21bが弾性変形することにより、第1嵌合孔21aの軸線方向(左右方向)へ変位可能である。
【0022】
第1嵌合部22a左端面の外周部は、突出部21bと対向している。当該左端面の外周部には、細かい係合溝が周方向に並んで多数形成されている。そして、各係合溝に突出部21bの係合歯がそれぞれ係合することにより、第1調節軸22の回転が所定の大きさの力で阻止されている。第1調節軸22を所定の大きさ以上の力で回転させると、突出部21bの先端部が第1嵌合部22aの左端面から左方へ離間するように弾性変形し、係合歯が係合溝から脱出する。したがって、第1調節軸22は、所定の大きさ以上の力を作用させることによって回転させることができる。勿論、第1調節軸22は、回転した後は係合歯が係合溝に係合することにより、その回転位置に所定の大きさの力で回転止めされる。
【0023】
第1嵌合部22aの基材5側を向く右端面(図3において下端面)には、第1偏心軸部22bが形成されている。この第1偏心軸部22bは、断面円形をなしている。第1偏心軸部22bの軸線は、第1嵌合部22aの軸線と平行であり、しかも第1嵌合部22aの軸線に対し第1嵌合部22aの径方向へ離間させられている。つまり、第1偏心軸部22bは、第1嵌合部22aに対して偏心させられているのである。
【0024】
第1可動部材6の天板部6bと対向する支持部5aの左側面(図3において上側面)には、第1調節凹部23が形成されている。この第1調節凹部23は、前後方向へ延びている。第1調節凹部23には、第1偏心軸部22bが回転可能に挿入されている。しかも、第1偏心軸部22bは、第1調節凹部23に前後方向へは移動可能に、上下方向へは移動不能に挿入されている。したがって、第1嵌合部22aの軸線を中心として第1調節軸22を正逆方向へ回転させると、第1偏心軸部22bは、第1調節凹部23内を前後方向へ移動しつつ、第1嵌合部22aを上下方向へ移動させる。その結果、第1可動部材6が基材5に対しガイドプレート21を介して上下方向へ移動させられる。よって、第1調節軸22を正逆方向へ回転させることにより、第1可動部材6の基材5に対する上下方向の位置を調節することができる。なお、第1可動部材6には、第2可動部材7が上下方向へ移動不能に連結されているので、第1可動部材6を上下方向へ位置調節すると、第2可動部材7も第1可動部材6と一緒に上下方向へ位置調節される。
【0025】
第1嵌合部22aの左端面の中央部、つまり第2可動部材7の天板部7bと対向する第1嵌合部22aの端面の中央部には、第1頭部22cが形成されている。この第1頭部22cは、断面円形をなしており、その軸線を第1嵌合部22aの軸線と一致させて形成されている。第1頭部22cは、第2可動部材7の天板部7bに形成された第1連結孔24に上下方向及び前後方向へ移動不能に嵌合されている。したがって、第1調節軸22を正逆方向へ回転させると、第2可動部材7が第1可動部材6と一緒に上下方向へ移動する。しかし、第2可動部材7は、上記のように、前後方向へは第1可動部材6と一緒に移動することがなく、第1可動部材6に対しガイドプレート21と一緒に前後方向へ移動する。なお、第2可動部材7は、第1可動部材6に上下方向へ移動不能に連結されており、上下方向へは第1可動部材6と一緒に移動する。したがって、第1頭部22cは、必ずしも第2可動部材7の第1第1連結孔24に嵌合させる必要がない。嵌合させない場合には、第1連結孔24が不要である。
【0026】
第1調節軸22の第1嵌合部22aがガイドプレート21の第1嵌合孔21aに嵌合され、頭部22cが第2可動部材7の天板部7bの第1連結孔24に嵌合され、第1偏心軸部22bが基材5の第1調節凹部23に挿入されていることから明らかなように、第1調節軸22は、第1可動部材6の天板部6bを左右方向に貫通している。このように第1可動部材6の天板部6bを貫通することは、次に述べる第2位置調節機構30の第2調節軸32も同様である。
【0027】
図6に示すように、基材5と第2可動部材7との間には、第2位置調節機構30が設けられている。第2位置調節機構30は、第2中間部7の基材5に対する前後方向への位置を調節するためのものであり、ガイドプレート21及び第2調節軸32を有している。
【0028】
ガイドプレート21の後端部には、これを左右方向に貫通する第2嵌合孔21cが形成されている。第1嵌合孔21cは、第1嵌合孔21aと同一形状、同一寸法を有しており、その内周面には突出部21bと同一形状、同一寸法を有する複数の突出部21dが形成されている。一方、第2調節軸32は、第1調節軸22と同一形状、同一寸法に形成されている。したがって、第2調節軸32は、第1調節軸22の第1嵌合部22a、第1偏心軸部22b及び第1頭部22cにそれぞれ対応する第2嵌合部32a、第2偏心軸部32b及び第2頭部32cを有している。第2嵌合部32aの左端面の外周部には、多数の係合溝が周方向に並んで形成されている。
【0029】
第2調節軸32の第2嵌合部32aは、ガイドプレート21の第2嵌合孔21bに回転可能かつ左右方向へ移動可能に嵌合されている。しかも、第2嵌合部32aは、第2嵌合孔21bに上下方向及び前後方向へ移動不能に嵌合されている。したがって、第2嵌合部32aは、ガイドプレート21と一緒に上下方向及び前後方向へ移動する。換言すれば、第2嵌合部32aが上下方向及び前後方向へ移動すると、ガイドプレート21が第2嵌合部32aと一緒に上下方向及び前後方向へ移動する。第2嵌合部32aは、第2嵌合孔21bに左右方向へ移動不能に嵌合させてもよい。
【0030】
第2嵌合部32aに形成された多数の係合溝には突出部21dの先端部に形成された多数の係合歯がそれぞれ係合している。したがって、第2調節軸32は、第2嵌合孔21bに対する回転が所定の大きさの力で阻止されている。換言すれば、第2調節軸32は、第1調節軸22と同様に所定の大きさ以上の力を作用させることによって回転させることができる。
【0031】
支持部5aの第1調節凹部23が形成された側面には、第2調節凹部33が形成されている。この第2調節凹部33は、第1調節凹部23より後方に配置されており、上下方向に延びている。第2調節凹部33には、第2調節軸32の第2偏心軸部32bが回転可能かつ上下方向へ移動可能に挿入されている。しかも、第2偏心軸部32bは、第2調節凹部33に前後方向へは移動不能に挿入されている。したがって、第2嵌合部32aの軸線を中心として第2調節軸32を回転させると、第2偏心軸部32bが第2調節凹部33内を上下方向へ移動しつつ、第2嵌合部32aを前後方向へ移動させる。この結果、ガイドプレート21がガイド孔6e内を前後方向へ移動する。
【0032】
第2可動部材7の天板部7bには、第2連結孔34が形成されている。この第2連結孔34は、第1連結孔24より後方に配置されている。第2連結孔34には、第2頭部32cが回転可能に、かつ左右方向へ移動可能に嵌合されている。しかも、第2頭部32cは、第2連結孔34に上下方向及び前後方向へは移動不能に嵌合されている。したがって、第2嵌合部32aが前後方向へ移動すると、第2可動部材7が第2嵌合部32aと一緒に前後方向へ移動する。よって、第2調節軸32を正逆方向へ回転させることにより、第2可動部材7を基材5及び第1可動部材6に対して前後方向へ位置調節することができる。
【0033】
ここで、第2可動部材7が前後方向へ移動する際には、ガイドプレート21が第1可動部材6に対して前後方向へ移動し、その結果第1調節軸22が基材5に対して前後方向へ移動する。しかるに、第1調節軸22の第1偏心軸部22bは、基材5の第1調節凹部23に前後方向へ移動可能に嵌合している。したがって、第2可動部材7の前後方向への移動が、基材5及び第1調節軸22によって阻害されることはない。同様に、第1可動部材6が上下方向へ移動する際には、第2調節軸32が基材5に対して上下方向へ移動するが、第2調節軸32の第2偏心軸部32bが基材5の第2調節凹部33に上下方向へ移動可能に挿入されているから、第1可動部材6の上下方向への移動が、基材5及び第2調節軸32によって阻害されることはない。
【0034】
このように、第1調節軸22を回転させることによって第1及び第2可動部材6,7を基材5に対して上下方向へ位置調節することができ、第2調節軸32を回転させることによって第2可動部材7を基材5及び第1可動部材6に対して前後方向へ位置調節することができる。その一方、位置調節後の第1及び第2可動部材6,7は、ガイドプレート21とガイド孔6eとの間に発生する摩擦抵抗、並びに第1嵌合孔21aの突出部21bの係合歯と第1調節軸22の係合溝との係合、及び第2嵌合孔21cの突出部21d係合歯と第2調節軸32の係合溝との係合により、基材5に所定の大きさの力で位置固定される。基材5と第1及び第2可動部材6,7との各間に、第1、第2可動部材6,7を基材5に固定する固定機構をそれぞれ設ける場合には、ガイドプレート21のガイド孔6eに対する摩擦抵抗や、係合歯と係合溝との係合が不要である。
【0035】
上記本体部3は、互いに対向して配置された一対の側板部3a,3aと、この一対の側板部3a,3aの左側部どうしを連結する天板部3bとを有しており、側板部3a,3a及び天板部3bによって断面略「コ」字状に形成されている。本体部3は、その長手方向を前後方向に、側板部3a,3aの対向方向を上下方向にそれぞれ向け、かつその開放部を右側(第2可動部材7側)に向けて配置されている。側板部3a,3a間には、第2可動部材7が挿脱可能に挿入されている。側板部3a,3aの互いに対向する内面間の距離は、第2可動部材7の側板7a,7aの外面間の距離とほぼ等しい距離に設定されている。したがって、側板部3a,3a間に第2可動部材7を挿入すると、本体部3が第2可動部材7に対し上下方向へ移動不能に連結される。
【0036】
本体部3の先端部は、第2可動部材7の先端部に第1係合機構40を介して着脱可能に取り付けられている。一方、本体部3の後端部は、第2可動部材7の後端部に第2係合機構50を介して着脱可能に取り付けられている。
【0037】
まず、第1係合機構40について説明すると、図2、図3及び図6に示すように、第2可動部材7の両側板部7a,7aの先端面には、前方に向かって開放された第1係合凹部41がそれぞれ形成されている。一方、本体部3の側板部3a,3aの先端部の基材5側の部位には、図4及び図6に示すように、長手方向を上下方向に向けた第1係合軸42の両端部がそれぞれ取り付けられている。第1係合軸42は、第1係合凹部41の開放部と対向させた状態で本体部3を後方へ移動させることにより、第1係合凹部41にその開放部から底部まで挿入可能である。第1係合軸42が第1係合凹部41の底部まで挿入された状態では、本体部3の先端部が第2可動部材7の先端部に、左右方向へ移動不能に、かつ後方へ移動不能に係止される。このようにして本体部3の先端部が、第2可動部材7の先端部に着脱可能に取り付けられている。
【0038】
第1係合軸42は、第2可動部材7の先端部に形成された傾斜面43を摺動させて第1係合凹部41に挿入することも可能である。すなわち、図2及び図3に示すように、第2可動部材7の側板部7aの先端部には、天板部7b側の端部から第1係合凹部41まで延びる傾斜面43が形成されている。この傾斜面43は、前方へ向かうにしたがって天板部7b側から第1係合凹部41に接近するように傾斜している。したがって、第1係合軸42を傾斜面43の天板部7b側の端部に押し付けた状態で本体部3を前方へ移動させると、第1係合軸42は、傾斜面43上を前方に向かって摺動する。そして、傾斜面43を通過すると、第1係合凹部41の開放部に達する。その後、本体部3を後方へ移動させることによって、第1係合軸42を第1係合凹部41に挿入することができる。
【0039】
次に、第2係合機構50について説明する。図2、図3及び図6に示すように、第2可動部材7の側板部7a,7aの後端部には、長手方向を上下方向に向けた第2係合軸51が位置固定して設けられている。一方、本体部3の側板部3a,3aには、長手方向を上下方向に向けた支持軸52が位置固定して設けられている。この支持軸52には、操作部材53が回転可能に支持されている。操作部材53は、図6に示す係合位置と、この係合位置から図3において反時計方向へ所定角度だけ離間した解除位置との間を回転可能である。操作部材53は、支持軸53に設けられた捩じりコイルばね54の付勢力により、解除位置から係合位置に向かって付勢されている。
【0040】
図4及び図6に示すように、操作部材53の前方を向く面には、第2係合凹部53aが形成されている。この第2係合凹部53aは、前方に向かって開放されており、操作部材53を解除位置から係合位置まで回転させると、第2係合軸51が第2係合凹部53aにその開放部から底部に突き当たるまで相対的に入り込む。第2係合軸51が第2係合凹部53aの底部に突き当たったときの操作部材53の位置が係合位置である。操作部材53が係合位置に位置した状態においては、第2係合軸51と第2係合凹部53aとの係合により、本体部3の左右方向への移動が阻止されるとともに、本体部3の後方への移動が捩じりコイルばね54の付勢力によって阻止される。このようにして、本体部3の後端部が第2可動部材7の後端部に着脱可能に取り付けられている。勿論、係合部材53を捩じりコイルばね54の付勢力に抗して係合位置から解除位置まで回転させると、第2係合軸51が第2係合凹部53aから脱出する。これにより、本体部3の後端部と第2可動部材7の後端部との間の係合状態を解除することができる。
【0041】
操作部材53には、傾斜面53bが形成されている。この傾斜面53bは、第2係合凹部53aに続いてその右側(図6において下側)に配置されており、後方へ向かうにしたがって右方へ向かうように傾斜させられている。しかも、傾斜面53bは、図6に示すように、第1係合凹部41に係合した第1係合軸42を中心として本体部3を時計方向へ回転させてその後端部を第2係合軸51に接近させると、傾斜面53bが第2係合軸51に突き当たるように配置されている。傾斜面53bが第2係合軸51に突き当たった状態において、本体部3をさらに時計方向へ回転させると、操作部材53が第2係合軸51及び傾斜面53bにより捩りコイルばね54の付勢力に抗して係合位置から解除位置側へ回転させられる。操作部材53が回転すると、それに応じて第2係合軸51が傾斜面53b上を前方へ向かって相対移動する。第2係合軸51が傾斜面53bを乗り越える(このときの操作部材53の位置より若干反時計方向へ向かった位置が解除位置である。)と、操作部材53が捩じりコイルばね54によって係合位置まで回転させられる。この結果、第2係合軸51が第2係合凹部53a内にその開放部から底部に突き当たるまで挿入される。
【0042】
本体部3は、第2可動部材7に次の三つの方法のいずれかよって取り付けることができる。
第1の取付方法は、まず第1係合軸42を第1係合凹部41に挿入するものである。その状態で、本体部3を第1係合軸42を中心として時計方向へ回転させ、本体部3の後端部を第2可動部材7の後端部に接近させる。すると、上記のように、傾斜面53bが第2係合軸51に突き当たる。その後、本体部3をさらに時計方向へ回転させると、操作部材53が捩じりコイルばね54の付勢力に抗して係合位置から解除位置へ向かう方向(図6において反時計方向)へ回転させられる。第2係合軸51が傾斜面53bを乗り越えると、操作部材53が捩じりコイルばね54によって係合位置側へ回転させられ、第2係合軸51が第2係合凹部53aに入り込んで係合する。この状態では、本体部3の左右方向への移動が第1係合軸42と第1係合凹部41との係合及び第2係合軸51と第2係合凹部53aとの係合によって阻止される。さらに、捩じりコイルばね54の付勢力によって第1係合軸42が第1係合凹部41の底面に押し付けられるとともに、第2係合軸51が第2係合凹部53aの底面に押し付けられることにより、本体部3の前後方向への移動が阻止される。勿論、本体部3の上下方向への移動が第2可動部材7の側板部7a,7aによって阻止されている。これにより、本体部3が第2可動部材7に位置固定状態で着脱可能に取り付けられる。
【0043】
第2の取付方法は、第1の取付方法とは逆に、第2係合軸51を第2係合凹部53aに予め係合させておくものである。その状態で、本体部3を第2係合軸51を中心として回転させ、本体部3の先端部を第2可動部材7の先端部に接近させる。すると、第1係合軸42が傾斜面43に突き当たる。本体部3の先端部をさらに接近させると、第1係合軸42が傾斜面43上を前方へ摺動する。このとき、第1係合軸42の前方への移動に伴って本体部3が前方へ移動するので、その分だけ操作部材53が第2係合軸51によって後方へ押され、係合位置側から解除位置側へ回転させられる。その後、第1係合軸42が傾斜面43を乗り越えると、第1係合軸42が第1係合凹部41に入り込み可能になる。すると、操作部材53が捩りコイルばね54によって係合位置まで回転させられ、それに応じて本体部3が後方へ移動させられる。本体部3の後方へ移動により、第1係合軸42が第1係合凹部41にその底部に突き当たるまで挿入される。これによって、本体部3が第2可動部材7に着脱可能に取り付けられる。
【0044】
第3の方法は、第1係合軸42及び第2係合軸51をそれぞれ傾斜面43,53bに同時に接触させるものである。その状態で、本体部3を第2可動部材7に接近移動させると、第1係合軸42が傾斜面43上を前方へ移動し、第2係合軸51が傾斜面53b上を後方へ移動する。勿論、このときには、本体部3の第2可動部材7への接近移動に伴って操作部材53が第1係合軸51により係合位置から解除位置側へ回転させられる。第1係合軸42及び第2係合軸51が、傾斜面43,53bをそれぞれ乗り越えると、捩りコイルばね54によって操作部材53が解除位置から係合位置側へ回転させられ、第2係合凹部53aに第2係合軸51が入り込む。係合軸51が第2係合凹部53aの底部に突き当たると、本体部3が捩りコイルばね54によって後方へ移動させられ、第1係合軸42が第1係合凹部41に挿入される。これによって、本体部3が第2可動部材7に着脱可能に取り付けられる。
【0045】
図4に示すように、本体部3の天板部3bには、第1、第2及び第3貫通孔3d,3e,3fが形成されている。第1、第2及び第3貫通孔3d,3e,3fは、それぞれ調節ねじ10、第1調節軸22及び第2調節軸32をそれぞれ回転操作するためのドライバ等の工具を挿通するためのものであり、調節ねじ10、第1調節軸22及び第2調節軸32とそれらの軸線方向において対向するように配置されている。
【0046】
本体部3の後端部と第2可動部材7の後端部との間には、第3係合機構60が設けられている。第3係合機構60は、本体部3が第2可動部材7から外れてしまうことを防止するためのものである。すなわち、上記のように、本体部3の第2可動部材7に対する前方への移動は、捩じりコイルばね54の付勢力によって阻止されている。したがって、仮に本体部3が捩じりコイルばね54の付勢力以上の力で前方へ押されると、本体部3が前方へ移動し、第1係合軸42が第1係合凹部41から抜け出てしまう。その結果、本体部3が第2可動部材7から右方へ外れてしまうおそれがある。このような事態を確実に防止するために、第3係合機構60が設けられているのである。
【0047】
第3係合機構60は、ロック部材61を有している。ロック部材61は、本体部3の後端部に支持軸52を介して回転可能に取り付けられている。ロック部材61は、図6に示すロック位置とこのロック位置から図6において反時計方向へ所定角度だけ離れたロック解除位置との間を回転可能である。ロック部材61は、捩じりコイルばね54によりロック解除位置からロック位置へ向かう方向へ回転付勢されている。ロック部材61は、捩りコイルばね54と異なるコイルばねによってロック解除位置側からロック位置側へ回転付勢させてもよい。また、ロック部材61は、本体部3の後端部に支持軸52と異なる軸を介して回転可能に取り付けてもよい。
【0048】
ロック部材61の先端部の上下の両端部には、第2可動部材7側に向かって突出する突出部61a,61aが形成されている。一方、第2可動部材7の側板部7a,7aの後端部の左側部(図3において上側部)には、ロック溝62,62が形成されている。このロック溝62は、突出部61aが左右方向へ出没可能であるように、その寸法が定められている。しかも、ロック溝62の前後方向の寸法は、突出部61aの前後方向の寸法とほぼ同一に設定されている。さらに、ロック溝62は、本体部3が第2可動部材7に正規の位置に取り付けられた状態でのみ、突出部61aがロック溝62に出没可能であるように配置されている。換言すれば、突出部61aは、本体部3を第2可動部材7に対し上記第1〜第3の方法のいずれによって取り付ける場合であっても、本体部3の取り付けが完了するまではロック溝62に入り込むことができないように配置されている。
【0049】
本体部3を第2可動部材7に対し上記第1〜第3の方法のいずれかによって取り付ける場合において、取り付け開始時には、突出部61aが第2可動部材7の側板部7aに突き当たる。したがって、本体部3を第2可動部材7に接近移動させると、それに応じて突出部61aがロック位置からロック解除位置側へ回転させられる。その後、本体部3が第2可動部材7に取り付けられると、つまり第1係合機構40の第1係合軸42が第1係合凹部41の底部に突き当たるまで挿入されるとともに、第2係合機構50の第2係合軸51が第2係合凹部53aの底部に突き当たるまで挿入されると、ロック部材61が捩じりコイルばね54によってロック解除位置からロック位置まで回転させられ、突出部61aがロック溝62に入り込む。すると、突出部61a及びロック溝62の前後方向の寸法が同一に設定されているから、本体部3が第2可動部材7に対して前後方向へ移動不能に係止される。したがって、本体部3が前方へ移動して第2可動部材7から外れてしまうような事態を確実に防止することができる。
【0050】
なお、第1〜第3のいずれの方法で本体部3を第2可動部材7に取り付けた場合であっても、操作部材53を係合位置から解除位置まで回転させることによって本体部3を第2可動部材7から取り外すことができる。操作部材53を解除位置に回転させると、第2係合軸51が第2係合凹部53aから脱出する。そこで、操作部材53が第2係合軸51から左方へ離間し、かつ突出部61aがロック溝62から脱出するまで本体部3の後端部を第2可動部材7から左方へ離間移動させる。つまり、本体部3を第1係合軸42を中心として図6の反時計方向へ回転させる。次に、本体部3を前方へ移動させ、第1係合軸42を第1係合凹部41から脱出させる。その後、本体部3を左方へ移動させることによって第2可動部材7から取り外すことができる。
【0051】
本体部3の先端部には、外側リンク(第1リンク)71の一端部が第1支持軸73を介して回転可能に連結されている。第1支持軸73は、その軸線を上下方向に向けて配置されており、その両端部が本体部3の側板部3a,3aの先端部のうちの基部2側に位置する部位に支持されている。第1支持軸73の軸線が上下方向を向いているので、外側リンク71は水平面内において回転する。本体部3の先端部には、内側リンク(第2リンク)72の一端部が、第2支持軸74を介して回転可能に連結されている。第2支持軸74は、第1支持軸73と平行であり、第1支持軸73より前側かつ左側に位置するように配置されている。第2支持軸74は、第1支持軸73と前後方向において同一位置又は後方に配置してもよい。
【0052】
図4及び図6に示すように取付部材4には、連結軸体75が設けられている。連結軸体75は、第1及第2支持軸73,74と平行に延びる二つの軸部75a,75bを有している。一方の軸部(第3支持軸)75aには、外側リンク71の他端部が回転可能に支持されている。他方の軸部(第4支持軸)75bには、内側リンク72の他端部が、回転可能に支持されている。この結果、取付部材4が本体部3の先端部に内側リンク71及び外側リンク72を介して回転可能に連結され、ひいては扉Dが躯体Bにヒンジ装置1を介して回転可能に支持されている。なお、軸部75a,75bは、互いに独立した軸体としてそれぞれ形成してもよい。
【0053】
取付部材4は、図6に示す閉位置と、図7に示す開位置との間を回転可能である。取付部材4の閉位置は、図6に示すように、外側リンク71が取付部材4に突き当たることによって規定されている。なお、軸部75aには、一対の凹部75c,75cが形成されている。この凹部75c,75cは、取付部材4が閉位置に位置したときに、内側リンク72の一部が入り込むように配置されている。これによって、取付部材4が閉位置まで確実に回転することができるようになっている。一方、取付部材4の開位置は、図7に示すように、内側リンク72が取付部材4に突き当たることによって規定されている。勿論、取付部材4の閉位置及び開位置については、周知の他の構造によって規定するようにしてもよい。
【0054】
なお、図6には、取付部材4が閉位置に位置しているとき、扉Dがその吊り元側(ヒンジ装置1による支持側)から自由端側へ向かうにしたがって躯体Bに接近するように若干傾斜した状態で記載されている。しかし、扉Dは、実際には図6に示す位置まで回転することがなく、扉Dの自由端が躯体Bの前面に突き当たることにより、扉Dは躯体Bの前面と平行になるまでしか回転することがない。したがって、ヒンジ装置1が実際に使用される場合には、取付部材4が閉位置まで回転することがなく、取付部材4は閉位置より僅かな角度(例えば1〜2°程度)だけ開位置側の位置において停止する。
【0055】
取付部材4は、本体部3に二つのリンク71,72を介して回転可能に支持されているので、取付部材4の瞬間回転中心をCとすると、図8に示すように、瞬間回転中心Cは、第1支持軸73及び軸部75aの各軸線と直交する直線と、第2支持軸74及び軸部75bの各軸線と直交する直線との交点として求められる。瞬間回転中心Cは、取付部材4が閉位置と開位置との間のいずれの位置に位置しているときでも、支持軸73から軸部75aに向かう方向において軸部75aの前方に位置するとともに、支持軸74から軸部75bに向かう方向において軸部75bの前方に位置している。換言すれば、取付部材4が閉位置と開位置との間のいずれの位置に位置している場合であっても、瞬間回転中心Cがそのような位置に位置するように、第1支持軸73、第2支持軸74及び軸部75a,7bが配置されているのである。
【0056】
本体部3の先端部と取付部材4との間には、回転付勢機構(回転付勢手段)80が設けられている。回転付勢機構80は、取付部材5が開位置と閉位置との間の所定の解除位置(図10に示す位置)と、閉位置との間に位置しているときに、取付部材4を閉位置まで回転させるとともに、閉位置に維持するためのものであり、力伝達部材81、捩りコイルばね(付勢手段)82及び受け部材83を有している。
【0057】
力伝達部材81は、図4及び図15〜図19に示すように、その基端部(図6において躯体Bの右側壁部側の端部)には、挿通孔81aが形成されている。この挿通孔81aは、その軸線を上下方向に向けて配置されており、図6において左上がりの長孔として形成されている。挿通孔81aには、第2支持軸74が回転可能に、かつ挿通孔81aの長手方向へ相対移動可能に挿入されている。したがって、力伝達部材81は、第2支持軸74を中心として回転可能であるとともに、挿通孔81aの長さの範囲内においてその長手方向へ移動可能である。挿通孔81aは、長孔とすることなく、断面円形に形成してもよい。その場合には、力伝達部材81が第2支持軸74に対して回転可能ではあるが、第2支持軸73の径方向へは移動不能になる。また、力伝達部材81は、第2支持軸74に設けることなく、第2支持軸74と平行な軸を本体部3に設け、その軸に回転可能に、かつ挿通孔81aの長手方向へ移動可能に設けてもよく、あるいは当該軸に回転可能に、かつ移動不能に設けてもよい。
【0058】
本体部3の天板部3bの先端部には、天板部3bを左右方向に貫通し、かつその長手方向に沿って延びるガイド孔3g(切欠き部)が形成されている。このガイド孔3gには、力伝達部材81の先端部がガイド孔3gの長手方向へ移動可能に挿通されている。これにより、力伝達部材81が第1支持軸73を中心とする回転したときに、力伝達部材81の先端部が天板部3bに干渉する(突き当たる)ことが防止されている。ガイド孔3gは、天板部3bの先端面から前方に開放してもよい。
【0059】
力伝達部材81の先端部には、押圧部(本体部3から外部に突出した力伝達部材の他端部;一部)81bが形成されている。押圧部81bは、凸曲面からなるものであり、特にこの実施の形態では凸の円弧面によって構成されている。円弧面は、その中心線を上下方向に向けて配置されている。つまり、円弧面は、上下方向に延びている。押圧部81bを構成する円弧面は、図6〜図13に示すように、取付部材4が開位置と閉位置との間のいずれの位置に位置しているときでも、挿通孔81aを通って本体部3の外部に突出しており、その突出量は取付部材4が開位置側から閉位置側へ向かって回転するのに伴って増大する。
【0060】
力伝達部材81の先端部の後方側を向く部分(図18において右側を向く部分)には、逃げ凹部81cが形成されている。逃げ凹部81cは、前方に向かって凹む円弧面からなるものであり、押圧部81bを構成する円弧面のうちの図18において右側に位置する端部に接するように配置されている。
【0061】
第2支持軸74には、捩りコイルばね82が外挿されている。捩りコイルばね82の一端部82aは、第1係合軸42に突き当たっている。捩りコイルばね82の他端部82bは、力伝達部材81に突き当たっている。この結果、ねじりコイルばね82は、力伝達部材81を図6において時計方向へ回転するように常時付勢している。ただし、力伝達部材81は、取付部材4が開位置と解除位置との間に位置しているときには、後述するクラッチ機構90によって時計方向への回転が阻止され、図10に示す停止位置に停止させられている。また、捩りコイルばね82は、力伝達部材81を図6の上方へ付勢している。この付勢力により、通常は、挿通孔81aの右下端部が第2支持軸74に突き当てられている。なお、捩じりコイルばね82は、第1支持軸74に設けることなく、他の軸、例えば上記のように、力伝達部材81を第2支持軸74と異なる軸に設ける場合には、その軸に設けてもよい。
【0062】
取付部材4には、受け部材83が取り付けられている。受け部材83は、図6に示すように、取付部材4が閉位置に位置しているときに取付部材4のうちの瞬間回転中心Cから遠い側に位置する端部、より詳しくは第1及び第2支持軸73,74の軸線と直交する方向において瞬間回転中心Cから遠い側に位置する端部に配置されている。受け部材83には、凹部83aが形成されている。この凹部83aを区画する内側面及びこの内側面に続く外面に作用部83bが形成されている。すなわち、凹部83aの内側面の一部は、取付部材5が閉位置に位置しているときに図6において後方側に位置しており、この後方側に位置する一部が前方を向く平面83cとされている。この平面83cと凹部83aの開口部に隣接する外面(図6において下側を向く面)との交差部に外側に向かって凸の円弧面83dが形成されている。平面83cと円弧面83dとによって作用部83bが構成されている。作用部83bは、必ずしも平面83c及び円弧面83dによって構成する必要がなく、他の曲面によって構成してもよい。
【0063】
外側リンク71と力伝達部材81との間には、クラッチ機構(回転阻止機構)90が設けられている。クラッチ機構90は、取付部材4が開位置と解除位置との間に位置しているときに、力伝達部材81が捩りコイルばね82によって図7及び図8の時計方向へ回転させられるのを阻止して、力伝達部材81を停止位置に維持するためのものであり、次のように構成されている。
【0064】
すなわち、図7、図8及び図14に示すように、外側リンク71は、上下に対向して配置された一対の側板部71a,71aと、この一対の側板部71a,71aの一側部(図14(C)において左側部)に一体に形成されて当該一対の側板部71a,71aどうしを連結する天板部71bとを有している。側板部71a,71aの一端部(図14(A)において右端部)が第1支持軸73によって本体部3に回転可能に連結され、側板部71a,71aの他端部が軸部75aによって取付部材4に回転可能に連結されている。
【0065】
側板部71a,71aの互いに対向する内面には、互いに接近する方向(上下方向)に突出する第1突出部91,91がそれぞれ形成されている。第1突出部91は、側板部71a,71aの互いに対向する内面のうちの第1支持軸73側の端部であって、第1支持軸73より後方に位置する箇所に配置されている。第1突出部91の前方を向く面には、第1係合面(第1係合部)92が形成されている。この第1係合面92は、第1支持軸73の軸線を中心とする凹状の円弧面(第1円弧面)によって構成されている。
【0066】
一方、力伝達部材81の先端部には、上下方向に突出する一対の第2突出部93,93が形成されている。この第2突出部93は、押圧部81bより若干基端側に配置されている。第2突出部93の後方を向く面には、第2係合面(第2係合部)94が形成されている。この第2係合面94は、第1係合面92を構成する円弧面と同一の曲率半径を有する凸状の円弧面(第2円弧面)によって構成されている。第2係合面94は、取付部材4が開位置と解除位置との間に位置しているときには、力伝達部材81が捩じりコイルばね82によって図7の時計方向へ付勢されることによって第1係合面92に突き当たっている。この結果、力伝達部材81の時計方向への回転が外側リンク71によって阻止されており、このときの力伝達部材81の位置が停止位置である。
【0067】
力伝達部材81が停止位置に位置しているときには、第2係合面94を構成する円弧面の中心線が第1支持軸73の軸線(=第1係合面92の中心線)と一致するよう第2係合面94が配置されている。したがって、力伝達部材81を介して外側リンク71に伝達された捩じりコイルばね82の付勢力は、第1支持軸73によって受け止められる。よって、外側リンク71は、捩じりコイルばね82によって回転させられることがなく、力伝達部材81が停止位置に維持される。
【0068】
力伝達部材81がクラッチ機構90によって停止位置に維持されるのは、取付部材4が開位置と解除位置との間に位置しているときだけであり、取付部材4が解除位置を越えて閉位置側へ回転すると、力伝達部材81が捩じりコイルばね82の付勢力によって時計方向へ回転させられる。そして、それによって取付部材4が解除位置から閉位置まで回転させられる。
【0069】
すなわち、図7及び図8に示すように、取付部材4が解除位置より開位置側に位置しているときには、作用部83bが押圧部81bに対して離間している。
【0070】
しかるに、取付部材4が開位置から閉位置側へ向かって回転して、解除位置より僅かな角度(例えば5°程度)だけ手前の位置に達すると、図9に示すように、作用部83bの円弧面83dが押圧部81bに突き当たる。この場合、作用部83bの円弧面83dは、押圧部81bのうちの、瞬間回転中心Cから最も離間した箇所(以下、第1頂点という。)をPとすると、第1頂点Pから前方(図9において左方)へ僅かに離間した箇所において押圧部81bに突き当たっている。したがって、取付部材4がさらに閉位置側へ回転すると、円弧面83dが押圧部81bを右方(図9において下方)へ押す。この結果、力伝達部材81が挿通孔81aの長手方向に沿って右側(図9において下側)へ移動し、それに伴って第2係合面94が第1係合面92に対して右方へ移動する。ここで、第1及び第2係合面92,94が円弧面であるのに対し、第2係合面94は直線移動するが、取付部材4が解除位置近傍に位置しているときには、第1及び第2係合面92,94の接触長さが短い。しかも、第2係合面94の移動方向が第1及び第2係合面92,94の接触部の接線方向に近い方向、つまり接線とのなす角度が小さい方向である。したがって、第2係合面94は、第1係合面92に対して円滑に移動することができる。
【0071】
取付部材4が解除位置に達すると作用部83bの円弧面83dが第1頂点Pにおいて押圧部81bに接触する。このときには、第1係合面92が第2係合面94に対し第1支持軸73を中心として反時計方向(図9においてほぼ上方)へ回転することと、第2係合面94が第1係合面92に対して右方(図9においてほぼ下方)へ移動することとにより、第1及び第2係合面92,94がそれらの周方向ないしはその接線方向又はそれに近い方向へ互いに離間する。この結果、クラッチ機構90による力伝達部材81の回転阻止状態が解除され、力伝達部材81が図10の時計方向へ回転可能になる。力伝達部材81は、捩りコイルばね82により第2支持軸74を中心として図10の時計方向へ回転させられる。
【0072】
ここで、押圧部81bを構成する円弧面のうちの、第2支持軸74の軸線から最も離間した箇所(以下、第2頂点という。)をQとすると、取付部材4が解除位置に位置しているときには、第2頂点Qが第1頂点Pより前方(図10において左方)に位置している。したがって、力伝達部材81が第1支持軸73を中心として図10の時計方向へ回転すると、押圧部81bが作用部83bの円弧部83dに突き当たり、押圧部81bが受け部材83を後方(図10の右方)へ押す。これにより、取付部材4が解除位置から閉位置側へ回転させられる。
【0073】
取付部材4が解除位置から閉位置側へ回転すると、作用部83bによって右側へ押圧移動させられていた力伝達部材81が捩りコイルばね82によって左側へ移動させられる。力伝達部材81は、取付部材4が解除位置から所定の小さな角度(例えば5度程度)だけ回転すると、挿通孔81aの図10における右下の端部が第1支持軸73に突き当たるまで左方へ移動させられる。したがって、その後は、力伝達部材81が挿通孔81aの長手方向へ移動することがなくなり、時計方向へ回転するだけになる。
【0074】
力伝達部材81の回転により、取付部材4が閉位置に達すると、外側リンク71が取付部材4に突き当たることによって取付部材4が停止し、それ伴って力伝達部材81が停止する。取付部材4及び力伝達部材81は、捩りコイルばね82の付勢力によりそれぞれ停止した位置に維持される。
【0075】
取付部材4が解除位置から閉位置まで回転するときには、図11〜図13及び図6に示すように押圧部81bの作用部83bに対する接触箇所が、円弧面83dから平面83cに移動する。この結果、捩じりコイルばね82による取付部材4に対する回転付勢力(回転モーメント)が増大する。
【0076】
すなわち、力伝達部材81に対する捩じりコイルばね82の回転付勢力が取付部材4の位置に拘わらず一定であると仮定すると、取付部材4に対する捩じりコイルばね82の回転付勢力は、瞬間回転中心Cから押圧部81bと作用部83bとの接触箇所までの距離と、押圧部81bと作用部83bとの接触箇所における法線(当該接触箇所における押圧部81bの作用部83bに対する押圧方向を向く力の作用線)と、当該接触箇所と瞬間回転中心Cとを結ぶ線とのなす押圧角度とによって定まる。瞬間回転中心から押圧部81bと作用部83bとの接触箇所までの距離は、図10〜図13から明らかなように、取付部材4が解除位置から閉位置側へ回転するのに伴って増大する。同様に、押圧角度は、取付部材4が解除位置から閉位置側へ回転するのに伴って90°に接近するように漸次増大する。したがって、捩じりコイルばね82による取付部材4に対する回転付勢力は、取付部材4が開位置側へ回転するのに伴って漸次増大する。特に、この実施の形態では、取付部材4が閉位置に達するまで漸次増大している。しかし、捩じりコイルばね82による取付部材4に対する回転付勢力は、解除位置から閉位置より若干手前の位置までだけ漸次増大させ、その後は一定にしてもよい。
【0077】
取付部材4を閉位置から開位置側へ回転させると、押圧部81bが作用部83bによって押され、力伝達部材81が捩りコイルばね82の付勢力に抗して図6〜図13の反時計方向へ回転させられる。取付部材4が解除位置に対して上記角度(5°)だけ手前の位置に達すると、その後は取付部材4の開位置側への回転に伴って力伝達部材81が回転させられるのみならず、作用部83bの円弧面83dによって押圧部81bが右方へ押されるので、力伝達部材81が挿通孔81aの長手方向に沿って右方へ移動させられる。取付部材4の回転に伴う外側リンク71の回転並びに力伝達部材81の回転及び移動により、第1及び第2係合面92,94が互いに接近する。
【0078】
取付部材4が閉位置から解除位置に達すると、円弧面83dが押圧部81bの第1頂点Pに接触する。したがって、取付部材4が解除位置からさらに開位置側へ回転すると、それに伴って第1リンク71が回転するのみならず、力伝達部材81が捩りコイルばね82によって左方へ移動させられる。その結果、第1及び第2係合面92,94が互いに接近して互いに隣接する端部側から接触し始める。取付部材4が解除位置から5°程度だけ開位置側へ回転すると、力伝達部材81が停止位置に達し、作用部83bの円弧面83dが押圧部81bに対し第2頂点Qにおいて接触する。したがって、力伝達部材81が第2支持軸74を中心として図9の時計方向へ回転可能になる。しかるに、このときには第1及び第2係合面92,94が互いに接触しているので、力伝達部材81は停止位置において停止状態に維持される。
【0079】
取付部材4がさらに開位置側へ回転すると、作用部83dが押圧部81bから離間する。したがって、その後は取付部材4だけが回転し、力伝達部材81は停止位置に留まる。取付部材4は、開位置まで回転すると、内側リンク72が外側リンク71に突き当たることによってそれ以上回転することができなくなり、開位置に停止する。
【0080】
図6に示すように、本体部3の先端部には、回転ダンパ機構100が設けられている。この回転ダンパ機構100は、取付部材4の閉位置側への高速回転を阻止して低速で回転させるためのものであり、取付部材4の閉位置側への高速回転を力伝達部材81を介して低速に抑える。
【0081】
回転ダンパ機構100は、ケーシング101及びロータ102を有している。ケーシング101は、円筒状をなしており、その軸線を上下方向に向けた状態で本体部3に固定されている。一方、ロータ102は、その軸線をケーシング101の軸線と一致させて配置されており、その一端部がケーシング101内に回転可能に挿入されている。ケーシング101の内部には、ロータ102の一方向への回転を低速に抑え、他方向への高速回転を許容するダンパ手段(図示せず)が設けられている。ロータ102の他端部は、ケーシング101から外部に突出しており、その突出した他端部には、第1歯車部103が形成されている。
【0082】
一方、力伝達部材81には、第2歯車部104が設けられている。第2歯車部104は、挿通孔81aの内面の右側の端部が第2支持軸74に突き当たっているときには、第2歯車部104の軸線が第1支持軸73の軸線と一致するように配置されている。第2歯車部104は、第1歯車部103と噛み合っている。したがって、力伝達部材81が回転すると、ロータ102が回転させられる。この場合、力伝達部材81が停止位置から図6の時計方向へ回転するとき、つまり取付部材4が閉方向へ回転時には、ロータ102が上記一方向へ回転させられる。その結果、力伝達部材81の時計方向への高速回転が阻止され、ひいては取付部材4の高速回転が阻止される。よって、取付部材4は、閉方向へは低速で回転する。逆に力伝達部材81が図6の反時計方向へ回転すると、ロータが上記他方向へ回転する。したがって、力伝達部材81は高速回転することができ、取付部材4は閉位置から開位置側へ向かって高速で回転することができる。なお、力伝達部材81は、挿通孔81aの長手方向に沿ってその長さの分だけ移動可能であり、力伝達部材81が左側へ移動すると、力伝達部材81の回転中心(第2支持軸74の軸線)と第2歯車部104の軸線とがずれる。しかし、挿通孔81aの長さは、短いものである。しかも、力伝達部材81が左側へ移動すると、第1及び第2歯車部103,104の中心間距離が若干長くなる。したがって、力伝達部材81が左側へ移動した状態においても、第1及び第2歯車部103,104は、良好な噛み合い状態を維持する。
【0083】
上記構成のヒンジ装置においては、回転付勢機構80の力伝達部材81の先端部(他端部;一部)が本体部3の天板部3bに形成されたガイド孔3gから外部に突出し、その突出した先端部に押圧部81bが形成されている。そして、この押圧部81bは、取付部材4の瞬間回転中心Cから離間する端部に設けられた受け部材83の作用部83bを押圧する。この押圧箇所は、第3及び第4支持軸たる軸部75b、75cより瞬間回転中心Cから遠くに配置されている。この結果、捩じりコイルばね82の付勢力が取付部材4に大きな回転モーメントとして伝達される。換言すれば回転モーメントの増大分だけ捩じりコイルばね82の付勢力を弱くすることができる。したがって、第1、第2支持軸73,74及び軸部75a,75bに作用する力、特に軸部75a,75bに作用する力を軽減することができる。よって、それらの軸73,74,75a,75b、取付部材4及び第1、第2支持軸73,74の摩耗を少なくすることができ、それによってヒンジ装置1の寿命を長くすることができる。
【0084】
次に、この発明の他の実施の形態について説明する。なお、以下に述べる実施の形態については、上記実施の形態と異なる構成だけを説明することと、同様な構成部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0085】
図20〜図29は、この発明の第2実施の形態を示す。この実施の形態のヒンジ装置1Aにおいては、クラッチ機構90に代えてクラッチ機構(回転阻止機構)110が用いられている。クラッチ機構110は、次のように構成されている。
【0086】
すなわち、図20及び図21に示すように、ガイド孔3gの長手方向に沿う二つの内面の先端部には、係止突出部(第1係合部)111,111がそれぞれ形成されている。係止突出部111,111は、互いに接近するように、上下方向に突出させられている。ガイド孔3gに係止突出部111,111が形成されることにより、ガイド孔3gの内部が、係止突出部111より前側に位置する前側部分3hと、後側に位置する後側部分3iとに区分されている。
【0087】
また、このヒンジ装置1Aにおいては、力伝達部材81に代えて力伝達部材81Aが用いられている。図22〜図24に示すように、力伝達部材81Aの先端部には、上下一対の当接部(第2係合部)112,112が形成されている。一対の当接部112,112は、押圧部81bより基端側(図22において下側)に配置されている。しかも、一対の当接部112,112は、押圧部81bを上下に挟むように配置されている。当接部112の左方(図22において上方)を向く面は、左方に向かって凸の円弧面によって構成されている。当接部112は、他の凸曲面によって構成してもよい。
【0088】
当接部112,112は、図25〜図27に示すように、取付部材4が開位置と解除位置との間に位置しているときには、ガイド孔3gの前側部分3hに挿入されており、捩じりコイルばね82の付勢力によって当接部112の円弧面が係止突出部111に押し付けられ、力伝達部材81Aが停止させられている。この位置が力伝達部材81Aの停止位置である。
【0089】
上記の構成において、取付部材4が開位置から解除位置に対して所定角度(例えば5°)だけ手前の位置まで回転すると、図26に示すように、作用部83bの円弧面83dが押圧部81bに突き当たる。その後、取付部材4が解除位置まで回転する間に、作用部83bが押圧部81bを右方(図26において下方へ)押し、力伝達部材81Aを同方向へ移動させる。勿論、力伝達部材81Aの移動に伴って当接部112も右方へ移動する。取付部材4が解除位置に達すると、図27に示すように、当接部112が係止突出部111より右方に移動する。この結果、係止突出部111による当接部112の係止状態が解除され、力伝達部材81Aが解除位置から閉位置まで回転可能になる。力伝達部材81Aは、捩じりコイルばね82によって閉位置まで回転させられる。すると、作用部83bが押圧部81bによって後方へ押され、取付部材4が閉位置まで回転させられる。
【0090】
勿論、取付部材4を閉位置から開位置側へ回転するときには、取付部材4が解除位置の所定角度(例えば5°)だけ手前の位置に達してから解除位置まで回転する間に、作用部83bが押圧部81bを右方へ押し、力伝達部材81Aを同方向へ移動させる。その結果、当接部112が係止突出部111の右側を通り抜けることができる。そして、解除位置からさらに上記所定角度(5°)だけ回転すると、取付部材4が捩じりコイルばね82によって左方へ移動させられ、当接部112がガイド孔3gの前側部分3hに入り込む。それによって、力伝達部材81Aの時計方向への回転が阻止される。その後、作用部81bは、取付部材4の開位置側への回転に伴って押圧部81bから離間する。
【0091】
図30〜図43は、この発明の第3実施の形態を示す。この実施の形態のヒンジ装置1Bにおいては、クラッチ機構90に代えてクラッチ機構120が用いられている。さらに、このヒンジ装置1Bにおいては、クラッチ機構120の係止状態を解除状態に切り換えるための切換機構130、及び取付部材4を閉位置側へ付勢する補助回転付勢機構140が用いられている。
【0092】
まず、クラッチ機構120について説明すると、図31に示すように、本体部3の前端部には、上下方向に延びる横長孔121が形成されている。この横長孔121は、ガイド孔3gより前側に配置されている。横長孔121の上下方向の長さは、ガイド孔3gの上下方向の幅より長く設定されている。横長孔121の後方側の側面には、ガイド孔3gの先端部が交差している。この場合、ガイド孔3gは、横長孔121とその長手方向の中央部において交差している。この結果、横長孔121とガイド孔3gとが互いに連通している。また、横長孔121の後方側の側面のうち上下方向の両端部が残っており、その残った両端部に第1係合面(第1係合部)122が形成されている。
【0093】
図33〜図37は、この実施の形態において用いられている力伝達部材81Bを示す。この力伝達部材81Bの先端部(各図において上端部)には、上下方向に延びる係合部123が形成されている。この係合部123の外面のうちの左側(力伝達部材81Bの先端側)に位置する部分には、押圧部81bが形成されている。係合部123の外面のうちの後方を向く部分には、第2係合面(第2係合部)124が形成されている。この第2係合面124は、押圧部81bに対して力伝達部材81の基端側に続いて形成されている。
【0094】
係合部123は、その上下方向の長さ及び前後方向の幅が横長孔121の上下方向の長さ及び前後方向の幅とそれぞれほぼ同一に設定されている。しかも、取付部材4が開位置と解除位置との間に位置しているときには、係合部123が横長孔121に前後方向へは移動不能に、かつ挿通孔81aの長手方向へは移動可能に挿入されている。勿論、このときには、図38〜図40に示すように、第2係合面124が第1係合面122に突き当たっており、それによって力伝達部材81Bの第2支持軸74を中心とする時計方向への回転が阻止されている。このときの力伝達部材81Bの位置が停止位置である。
【0095】
力伝達部材81Bが挿通孔81aの長手方向に沿って左側(図38〜図43において上側)へ所定距離だけ移動すると、第2係合面124が第1係合面122から左側へ離間する。すると、これと同時に係合部123が横長孔121から左側へ脱出する。その結果、力伝達部材81Bが停止位置から時計方向へ回転可能になり、捩りコイルばね82によって時計方向へ回転させられる。なお、力伝達部材81Bが時計方向へ回転すると、係合部123に対して力伝達部材81Bの基端側に続く部分に形成された幅狭部81eがガイド孔3g内に前後方向へ移動可能に入り込む。
【0096】
力伝達部材81Bが停止位置から時計方向へ離間した状態において、力伝達部材81Bが停止位置側へ回転すると、幅狭部81eがガイド孔3gから前方へ脱出し、横長孔121の前側に位置する内面に突き当たる。その後、力伝達部材81Bが右方へ移動させられると、第2係合面124が第1係合面122と対向し、捩りコイルばね82の付勢力によって第1係合面122に押し付けられる。これによって、力伝達部材81Bが停止位置に位置させられる。
【0097】
次に、切換機構130について説明すると、図32に示すように、外側リンク71の側板部71a,71aの対向する内面には、互いに接近するように上下方向へ突出する一対の係合突起131,131が形成されている。係合突起131は、側板部71aのうちの第1支持軸73側の端部に配置されており、第1支持軸73に対してその径方向へ所定距離だけ離間させられている。
【0098】
図33〜図37に示すように、力伝達部材81Bの基端と先端との間の略中間部には、上下方向へ突出する一対の当接突出部132が形成されている。力伝達部材81Bの先端側を向く当接突出部132の上面には、第1及び第2傾斜面133,134が形成されている。第1傾斜面133は、後方へ向かうにしたがって力伝達部材81Bの先端に近づくように傾斜させられている。第2径斜面134は、後方へ向かうにしたがって力伝達部材81Bの基端に近づくように傾斜させられている。第1傾斜面133の後端部と第2傾斜面134の前端部とは互いに交差させられている。第1及び第2傾斜面133,134のなす角度はほぼ直角である。第1傾斜面133と第2傾斜面134とは、それらの交差部に形成された円弧面等の凸曲面によって滑らかに連なっている。
【0099】
図38に示すように、取付部材4が開位置とそこから閉位置側へ所定の角度だけ離間した中間位置との間に位置しているときには、第1傾斜面133が外側リンク71の係合突起131に捩りコイルばね82によって押し付けられている。これにより、力伝達部材81Bが挿通孔81aの長手方向に沿って左側へ移動することが阻止されている。以下、このときの挿通孔81aに沿う方向における力伝達部材81Bの位置を係止位置という。力伝達部材81Bが係止位置に位置しているときには、第2支持軸74が挿通孔81aの左斜め前方の端部側に位置している。したがって、力伝達部材8Bは、係止位置から挿通孔81aの長手方向に沿って右側へ移動可能である。
【0100】
取付部材4が開位置から閉位置側へ回転すると、それに伴って外側リンク71が第1支持軸73を中心として反時計方向へ回転する。その結果、係合突起131と第1傾斜面133との接触点が第1傾斜面133の後端側へ移動する。このとき、第1傾斜面133が後方へ向かうにしたがって力伝達部材81Bの先端に接近するように傾斜しているので、力伝達部材4は捩りコイルばね82の付勢力に抗して右側へ、それも挿通孔81aの長手方向に沿って右側へ移動させられる。取付部材4が所定の中間位置に達すると、図39に示すように、係合突起131が第1及び第2傾斜面133,134の交差部と接触する。このときには、力伝達部材81Bが最も右側へ移動している。以下、このときの挿通孔81aに沿う方向における力伝達部材81Bの位置を右限界位置という。
【0101】
取付部材4が中間位置から閉位置側へさらに回転し、それに伴って外側リンク71が第1支持軸73を中心として反時計方向へさらに回転すると、図40に示すように、係合突起131が第2傾斜面134に接触する。取付部材4がさらに閉位置側へ回転すると、それに伴って係合突起131と第2傾斜面134との接触箇所が、第2傾斜面134の後方へ移動する。ここで、第2傾斜面134が後方へ向かうにしたがって力伝達部材81Bの基端に接近するように傾斜しているので、力伝達部材4は捩りコイルばね82の付勢力により取付部材4の閉方向への回転に伴って左側へ、それも挿通孔81aの長手方向に沿って左側へ移動させられる。
【0102】
図41に示すように、取付部材4が開位置から閉位置に向かって解除位置まで回転すると、係合突起131が第2傾斜面134から後方へ離間する。これと同時に第2係合面124が第1係合面122から左方へ離間する。この結果、クラッチ機構120による係止状態が解除され、力伝達部材81Bが停止位置から時計方向へ回転可能になる。以下、このときの挿通孔81aの長手方向における力伝達部材81Bの位置を離間位置という。力伝達部材81Bが離間位置に位置しているときには、挿通孔81aの右側の端部と第2支持軸74との間には、若干の隙間がある。したがって、力伝達部材81Bは、取付部材4の回転に伴って離間位置からさらに左側へ若干移動可能である。取付部材4が解除位置から所定の角度(例えば5°)だけ閉方向へ回転すると、挿通孔81aの右側の端部が第2支持軸74に突き当たる。その結果、力伝達部材81Bがそれ以上左側へ移動することができなくなる。以下、このときの力伝達部材81Bの位置を左限界位置という。
【0103】
図40に示すように、係合突起131が第2傾斜面134に接触しているときには、回転付勢機構80の作用部83bが押圧部81bにほぼ接触しているが、このときには力伝達部材81Bが作用部83bと押圧部81bとの接触点における接線方向とほぼ同一方向へ移動するので、取付部材4が捩りコイルばね82によって閉方向へ回転付勢されることがほとんどない。しかるに、取付部材4が解除位置に達すると、力伝達部材81Bが第2支持軸74を中心として時計方向へ回転するので、作用部83bが押圧部81bによって後方へ押され、それによって取付部材4が閉位置側へ回転させられる。押圧部81bと作用部83bとの接触箇所は、取付部材4が解除位置から閉位置に対して所定の小さな角度だけ手前の自由位置に達するまで、取付部材4の回転に伴って凹部8aの奥側へ移動する。取付部材4が自由位置を越えると、押圧部81bが作用部83bから離間する。したがって、自由位置と閉位置との間では、回転付勢機構80による閉方向への回転付勢力が取付部材4に作用することがなく、取付部材4は自由に回転することができる。勿論、上記の実施の形態と同様に、回転付勢機構80は、取付部材4が解除位置と閉位置との間のいずれの位置に位置しているときにおいても取付部材4を閉方向へ付勢するものであってもよい。
【0104】
クラッチ機構120及び切換機構130は、取付部材4が閉位置から開位置まで開方向へ回転すると、次のようにして元の状態に戻る。すなわち、いま取付部材4が閉位置に位置しているものとする。このときには、力伝達部材81bが左限界位置に位置し、係合突起131が第2傾斜面134から離間している。
【0105】
取付部材4が閉位置から開位置に向かって開回転し、解除位置に対して所定の角度(5°)だけ手前の位置に達すると、作用部83bが押圧部81bに突き当たる。したがって、その後は力伝達部材81Bが取付部材4の開位置側への回転に伴って右側へ押圧移動される。取付部材4が解除位置まで回転すると、力伝達部材81Bが離間位置まで移動させられる。このとき、係合突起131第2傾斜面134の右側の端縁に接しており、取付部材4が解除位置を越えて開位置側へ回転すると、係合突起131が第2傾斜面134に接触する(図40参照)。したがって、取付部材4が解除位置を越えて開位置側へ回転すると、力伝達部材81Bが捩りコイルばね82の付勢力に抗して右側へ移動させられる。その後は、取付部材4の開位置側への回転に伴って係合突起131と第2傾斜面134の接触箇所が前方へ移動し、第1及び第2傾斜面133,134の交差部を乗り越えた(図39参照)後、係合突起13が第1傾斜面133に接触する(図38)。
【0106】
次に、補助回転付勢機構140について説明する。補助回転付勢機構140は、取付部材4が中間位置と解除位置との間に位置しているときに取付部材4を閉位置側へ回転付勢するものであり、捩りコイルばね82、係合突起131及び第2傾斜面134によって構成されている。
【0107】
すなわち、取付部材4が中間位置と解除位置との間に位置しているときには、上記のように、第2傾斜面124が捩りコイルばね82の付勢力によって係合突起131に押し付けられており、係合突起131を押す。この場合、第2傾斜面124は、第1傾斜面123とのなす角度が90°であることから明らかなように、係合突起131と第2傾斜面134との接触箇所と第1支持軸73の軸線とを結ぶ線とほぼ直交する方向へ係合突起131を押す。この押圧力によって外側リンク71が第1支持軸73を中心として反時計方向へ回転させられ、それによって取付部材4が閉位置側へ回転させられる。
【0108】
取付部材4が開位置と中間位置との間に位置しているときには、第1傾斜面134が係合突起131を押している。しかるに、このときには、第1傾斜面134の係合突起131に対する押圧力の作用線が、係合突起131と第1傾斜面134との接触点と、第1支持軸73の軸線とを結ぶ線とほぼ平行で、かつ極めて接近しているか同一線である。したがって、第1傾斜面133を介して係合突起131に作用する捩りコイルばね82の付勢力は、外側リンク71を回転させる力としてはほとんど作用しない。第1傾斜面133の傾斜角度を変えることにより、第1傾斜面133を介して係合突起131に作用する捩りコイルばね82の付勢力を大きくし、それによって取付部材4が閉位置と中間位置との間に位置しているときにも取付部材4を閉位置側へ回転付勢させるようにしてもよい。
【0109】
なお、この発明は、上記の実施の形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲において各種の変形例を採用することができる。
例えば、上記の実施の形態においては、取付部材4が解除位置から閉位置側へ回転するときに回転付勢機構80が取付部材4を閉位置側へ付勢するようになっているが、回転付勢機構80に代えて、取付部材4が所定の解除位置から開位置側へ回転するときに取付部材4を開位置側へ付勢する回転付勢機構を用いてもよい。
また、クラッチ機構(回転阻止機構)90,110,120は、回転付勢機構80と異なる構成の回転付勢機構にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0110】
この発明に係るヒンジ装置は、扉を筐体に取り付けるためのヒンジ装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0111】
C 瞬間回転中心
1 ヒンジ装置
1A ヒンジ装置
1B ヒンジ装置
3 本体部
3a 側板部
3b 天板部
3g ガイド孔(切欠き部)
4 取付部材
71 外側リンク(第1リンク)
72 内側リンク(第2リンク)
73 第1支持軸
74 第2支持軸
75a 軸部(第3支持軸)
75b 軸部(第4支持軸)
80 回転付勢機構(回転付勢手段)
81 力伝達部材
81A 力伝達部材
81B 力伝達部材
81b 押圧部(力伝達部材の他端部;力伝達部材の一部)
82 捩りコイルばね(付勢手段)
83b 作用部
90 クラッチ機構(回転阻止機構)
92 第1係合面(第1係合部)
94 第2係合面(第2係合部)
110 クラッチ機構(回転阻止機構)
111 係止突出部(第1係合部)
112 当接部(第2係合部)
120 クラッチ機構(回転阻止機構)
122 第1係合面(第1係合部)
124 第2係合面(第2係合部)
【技術分野】
【0001】
この発明は、扉を躯体に回転可能に連結する際に用いられるヒンジ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種のヒンジ装置は、下記特許文献1に記載されているように、本体部と、この本体部に第1及び第2リンクを介して回転可能に連結された取付部材とを有している。そして、本体部が筐体に取り付けられ、取付部材が扉に取り付けられる。これにより、扉が筐体にヒンジ装置を介して回転可能に取り付けられている。
【0003】
本体部には、捩りコイルばね等の回転付勢手段が設けられている。この回転付勢手段は、第1リンク又は第2リンクを介して取付部材を回転付勢している。すなわち、第1及び第2リンクの一端部は、本体部に互いに平行な第1及び第2支持軸を介してそれぞれ回転可能に連結され、他端部は取付部材に第1及び第2支持軸と平行な第3、第4支持軸を介して回転可能に連結されている。したがって、回転付勢手段が第1リンクを介して取付部材を回転付勢する場合には、第1リンクが回転付勢手段により第1支持軸を中心として回転付勢される。そして、回転付勢された第1リンクが取付部材を第3支持軸を介して回転付勢する。回転付勢手段が第2リンクを介して取付部材を回転付勢する場合には、第2リンクが取付部材を第4支持軸を介して回転付勢する。このように、回転付勢手段の取付部材に対する回転付勢力は、第3支持軸又は第4支持軸を介して取付部材に作用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−112973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
取付部材の瞬間回転中心は、第1支持軸と第3支持軸とを結ぶ直線と、第2支持軸と第3支持軸とを結ぶ直線の交点であり、第1支持軸から第3支持軸へ向かう方向の前方で、かつ第2支持軸から第4支持軸へ向かう方向の前方に位置している。一方、取付部材の回転付勢力が作用する第3及び第4支持軸は、取付部材の瞬間回転中心に近い位置に配置されている。このため、取付部材の瞬間回転中心と第3又は第4支持軸との間の距離、つまり取付部材を回転させるための回転モーメントの腕の長さが比較的短くなっている。そこで、取付部材を回転付勢するため回転付勢手段としては、回転付勢力の大きなものを用いなければならない。ところが、回転付勢手段の回転付勢力を大きくすると、取付部材の回転に伴って摺接する箇所、例えば第1リンクと第3支持軸との間、あるいは第2リンクと第4支持軸との間に大きな摩擦抵抗が発生する。この結果、各摺接箇所が早期に摩耗してしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の問題を解決するために、この発明の第1の態様は、本体部と、この本体部に第1及び第2リンクを介して閉位置と開位置との間を回転可能に連結された取付部材と、上記本体部に設けられ、上記取付部材を上記本体部に対して回転するように付勢する回転付勢手段とを備え、上記第1及び第2リンクの一端部が上記本体部に互いに平行な第1及び第2支持軸を介して回転可能に連結され、上記第1及び第2リンクの他端部が上記取付部材に上記第1及び第2支持軸と平行な第3及び第4支持軸を介して回転可能に連結されたヒンジ装置において、上記回転付勢手段がその一部を上記本体部から突出させた状態で上記本体部の内部に設けられ、上記本体部から外部に突出した上記回転付勢手段の一部が上記取付部材に押圧接触することによって上記取付部材が回転付勢されていることを特徴としている。
この場合、上記取付部材に押圧接触する上記回転付勢手段の上記一部が、上記第1〜第4支持軸の軸線と直交する方向で、かつ上記取付部材の瞬間回転中心から離間する方向に上記本体部から外部突出させられていることが望ましい。
上記本体部が、互いに対向して配置された一対の側板部と、この一対の側板部の一側部どうしを連結する天板部とによって断面「コ」字状に形成され、上記第1及び第2支持軸がその軸線を上記側板部の対向方向に向けて配置され、上記第1支持軸の両端部及び上記第2支持軸の両端部が上記側板部に支持され、上記天板部に切欠き部が形成され、上記回転付勢手段の一部が上記切欠き部を通って上記本体部の外部に突出させられていることが望ましい。
上記回転付勢手段が、上記本体の内部に変位可能に設けられた力伝達部材と、この力伝達部材を変位させる付勢手段とを有し、上記力伝達部材の一部が上記本体部から外部に突出させられていることが望ましい。
上記の問題を解決するために、この発明の第2の態様は、本体部と、この本体部に第1及び第2リンクを介して閉位置と開位置との間を回転可能に連結された取付部材と、上記本体部に設けられ、上記取付部材を上記本体部に対して回転するように付勢する回転付勢手段とを備え、上記第1及び第2リンクの一端部が上記本体部に互いに平行な第1及び第2支持軸を介して回転可能に連結され、上記第1及び第2リンクの他端部が上記取付部材に上記第1及び第2支持軸と平行な第3及び第4支持軸を介して回転可能に連結されたヒンジ装置において、上記取付部材に上記回転付勢手段の回転付勢力が作用する作用部が設けられ、上記取付部材の瞬間回転中心と上記作用部との間の距離が、上記取付部材の瞬間回転中心と上記第3及び第4支持軸との各間の距離よりも長くなるように、上記作用部が配置されていることを特徴としている。
この場合、上記作用部に作用する上記回転付勢手段の付勢力の作用方向が上記取付部材の回転に伴って漸次変化することが望ましい。
上記回転付勢手段が、上記本体部に設けられた力伝達部材と、この力伝達部材を回転付勢する付勢手段とを有し、上記力伝達部材の一端部が上記本体部の内部に回転可能に連結され、上記力伝達部材の他端部が上記本体部から外部に突出し、この突出した他端部が上記取付部材の上記作用部に押圧接触することにより、上記取付部材が上記付勢手段により上記力伝達部材を介して回転させられることが望ましい。
上記第1リンクと上記力伝達部材との間に回転阻止機構が設けられており、上記回転阻止機構は、上記取付部材が上記開位置と上記閉位置とのいずれか一方の位置から他方の位置に向かって回転する場合において、上記他方の位置より所定の角度だけ手前の解除位置に達するまでは、上記力伝達部材が上記付勢手段によって回転させられることを阻止して上記力伝達部材を所定の停止位置に位置固定し、上記取付部材が上記解除位置を越えると、上記力伝達部材が上記付勢手段によって上記他方の位置側へ回動させられることを許容することが望ましい。
上記回転阻止機構が、上記第1リンクに設けられた第1係合部と、上記力伝達部材に設けられた第2係合部とを有し、上記第1及び第2係合部のいずれか一方が、上記第1支持軸の軸線を曲率中心とする凹状の第1円弧面によって構成され、いずれか他方が上記第1支持軸の軸線を曲率中心とする凸状の第2円弧面によって構成され、上記取付部材が上記解除位置に達するまでは上記第1円弧面と上記第2円弧面とが上記第1支持軸の軸線を中心として互いに回転可能に接触することによって上記力伝達部材の回転が阻止され、上記取付部材が上記解除位置を越えると、上記第1円弧面と上記第2円弧面とが互いに離間することによって上記力伝達部材の回転が許容されることが望ましい。
【発明の効果】
【0007】
上記特徴構成を有するこの発明の第1の態様によれば、取付部材を回転付勢するために回転付勢手段の一部を取付部材に押圧接触させており、当該一部を本体部から外部に突出させている。したがって、当該一部が押圧部材に接触する箇所を取付部材の瞬間回転中心から遠くに配置することができる。ここで、回転付勢手段の回転付勢力が一定であると仮定すると、当該一部を取付部材の瞬間回転中心から遠くに配置した分だけ取付部材に作用する回転付勢手段の回転付勢力(回転モーメント)を大きくすることができる。換言すれば、取付部に作用する回転付勢力を大きくすることができる分だけ回転付勢手段の回転付勢力を弱くすることができる。よって、取付部材の回転に伴って摺接する各箇所の早期摩耗を防止することができる。
また、この発明の第2の態様によれば、取付部材の瞬間回転中心と作用部との間の距離が、取付部材の瞬間回転中心と第3及び第4支持軸との各間の距離よりも長いから、回転付勢手段の回転付勢力が一定であると仮定すると、取付部材を回転させる回転付勢力(回転モーメント)を、当該距離が長くなった分だけ大きくすることができる。換言すれば、取付部に作用する回転付勢力を大きくすることができる分だけ回転付勢手段の回転付勢力を弱くすることができる。よって、取付部材の回転に伴って摺接する各箇所の早期摩耗を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、この発明の第1実施の形態を示す斜視図である。
【図2】図2は、同実施の形態の本体部を基部から取り外した状態で示す斜視図である。
【図3】図3は、同実施の形態の基部を示す分解斜視図である。
【図4】図4は、同実施の形態の本体部、取付部材及びそれらに設けられた部材を示す分解斜視図である。
【図5】図5は、同実施の形態を、その取付部材が閉位置に回転した状態で示す平面図である。
【図6】図6は、同実施の形態の本体部及び取付部材をそれぞれ筐体及びに扉に取り付けた状態で示す図5のX−X線に沿う拡大断面図である。
【図7】図7は、同実施の形態を、その取付部材が開位置に位置した状態で示す図6と同様の一部省略断面図である。
【図8】図8は、同実施の形態を、その取付部材が開位置から閉位置に向かって所定角度だけ回転した状態で示す図6と同様の一部省略断面図である。
【図9】図9は、同実施の形態を、取付部材が開位置から平一に向かって力伝達部材が取付部材の当接部に接触し始める接触開始位置まで回転した状態で示す図6と同様の一部省略断面図である。
【図10】図10は、同実施の形態を、取付部材が開位置から閉位置に向かって力伝達部材が取付部材に対して思案位置に位置する中立位置まで回転した状態で示す図6と同様の一部省略断面図である。
【図11】図11は、同実施の形態を、取付部材が開位置から閉位置に向かって図10に示す位置からさらに回転した状態で示す図6と同様の一部省略断面図である。
【図12】図12は、同実施の形態を、取付部材が開位置から閉位置に向かって図11に示す位置からさらに回転した状態で示す図6と同様の一部省略断面図である。
【図13】図13は、同実施の形態を、取付部材が開位置から閉位置に向かって図12に示す位置からさらに回転した状態で示す図6と同様の一部省略断面図である。
【図14】図14は、同実施の形態において用いられている第1リンクを示す図であって、図14(A)はその斜視図、図14(B)はその正面図、図14(C)はその側面図、図14(D)はその平面図、図14(E)は図14(B)のX−X線に沿う断面図である。
【図15】図15は、同実施の形態において用いられている力伝達部材を示す斜視図である。
【図16】図16は、同力伝達部材の平面図である。
【図17】図17は、同力伝達部材の背面図である。
【図18】図18は、同力伝達部材の側面図である。
【図19】図19は、図17のX−X線に沿う断面図である。
【図20】この発明の第2実施の形態を示す斜視図である。
【図21】同実施の形態において用いられている本体部の斜視図である。
【図22】同実施の形態において用いられている力伝達部材の斜視図である。
【図23】同力伝達部材の正面図である。
【図24】同力伝達部材の側面図である。
【図25】同実施の形態を示す図7と同様の断面図である。
【図26】同実施の形態を示す図9と同様の断面図である。
【図27】同実施の形態を示す図10と同様の断面図である。
【図28】同実施の形態を示す図11と同様の断面図である。
【図29】同実施の形態を示す図12と同様の断面図である。
【図30】この発明の第3実施の形態を示す斜視図である。
【図31】同実施の形態において用いられている本体部を示す斜視図である。
【図32】同実施の形態において用いられている外側リンクを示す斜視図である。
【図33】同実施の形態において用いられている力伝達部材を示す斜視図である。
【図34】同力伝達部材を図33と異なる方向から見た斜視図である。
【図35】同力伝達部材の正面図である。
【図36】同力伝達部材の側面図である。
【図37】図35のX−X線に沿う断面図である。
【図38】同実施の形態を示す図7と同様の断面図である。
【図39】同実施の形態を、取付部材が中間位置に位置しているときの状態で示す断面図である。
【図40】同実施の形態を、取付部材が第2付勢範囲内に位置しているときの状態で示す断面図である。
【図41】同実施の形態を、取付部材が解除位置に位置している状態で示す断面図である。
【図42】同実施の形態を、取付部材が解除位置と閉位置との間の位置に位置している状態で示す断面図である。
【図43】同実施の形態を、取付部材が図40に示す位置からさらに閉位置側へ回転して閉位置から所定角度だけ手前の位置に位置している状態で示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
図1〜図19は、この発明の第1実施の形態を示す。この実施の形態のヒンジ装置1は、図1、図2、図5及び図6に示すように、基部2、本体部3及び取付部材4を有している。
【0010】
基部2は、図6に示すように、前面部が開口した躯体Bの右側壁部内面に、それも内面の前端部に固定されている。本体部3は、基部2に着脱可能に取り付けられている。取付部材4は、扉Dの背面の右端部に取り付けられている。そして、取付部材4が本体部3の前側の端部(図6において左側の端部。以下、先端部と称する。)に後述する外側リンク(第1リンク)71及び内側リンク(第2リンク)72を介して水平方向へ回転可能に連結されている。取付部材4は、図6に示す閉位置と図7に示す開位置との間を回転可能である。したがって、扉Dも、閉位置と開位置との間を回転可能である。ただし、扉Dを躯体Bにヒンジ装置1を介して取り付けた状態においては、扉Dが開位置から閉位置に向かって閉位置より若干手前の位置(1°〜2°程度だけ手前の位置)まで回転すると、扉Dが躯体Bの前面に突き当たってそれ以上閉位置側へ回転することができなくなる。したがって、扉Dが躯体Bに支持された状態においては、扉D及び取付部材4が図6に示す閉位置まで回転することがない。なお、この第1実施の形態並びに後述する第2及び第3実施の形態の各構成については、図6に示す躯体Bの前後左右方向及び上下方向(紙面の表裏方向)に基づいて説明するものとする。勿論、この発明は、そのような方向に限定されるものではない。
【0011】
基部2は、特に図2及び図3に示すように、基材5、第1可動部材6及び第2可動部材7を有している。
【0012】
基材5は、特に図3に示すように、長手方向を前後方向(図3において右上がりの左右方向)に向けた断面略四角形の支持部5aを有している。支持部5aは、中実であるが、断面「コ」字状に形成することによって中空にしてもよい。その場合、支持部5aは、その開放部を躯体Bの右側壁部に向けて配置される。支持部5aの上下方向(図3において右下がりの左右方向)を向く両側面には、上方及び下方に突出する固定板部5b,5bがそれぞれ形成されている。この固定板部5b,5bを貫通して躯体Bの右側壁部にねじ込まれたビス(図示せず)を締め付けることにより、基材5が躯体Bの右側壁部内面に固定されている。
【0013】
第1可動部材6は、互いに対向した二つの側板部6a,6aと、この側板部6a,6aの左側部どうしを連結する天板部6bとを有している。この結果、第1可動部材6が、断面略「コ」字状に形成されている。第1可動部材6は、その天板部6bと逆側の開放部を躯体Bの右側壁部に向けるとともに、側板部6aの長手方向を前後方向に向け、側板部6aの厚さ方向を上下方向に向けた状態で配置されている。したがって、側板部6a,6aは、上下方向に対向している。
【0014】
第1可動部材6の側板部6a,6a間には、基材5の支持部5aが挿入されている。側板部6a,6aの互いに対向する内面どうしの間隔は、支持部5aの上下方向の幅より大きくなっている。したがって、第1可動部材6は、側板部6a,6aの間隔と支持部5aの上下方向の幅との差の分だけ基材5に対して上下方向へ移動可能である。
【0015】
第1可動部材6の側板部6a,6aの前後方向における中間部には、それぞれ上方及び下方に突出するガイド部6c,6cが設けられている。このガイド部6c,6cは、基材5の固体板部5b,5bに設けられたガイド凹部5c,5cにそれぞれ上下方向へは移動可能に、前後方向へは移動不能に挿入されている。したがって、第1可動部材6は、基材5に対し、上下方向へは移動可能であるが、前後方向へは移動不能になっている。しかも、第1可動部材5の先端部及び後端部は、固定軸8,9を介して上下方向へは移動可能に、かつ前後方向及び左右方向へは移動不能に連結されている。したがって、第1可動部材6は、基材5に対し上下方向へのみ移動可能であり、前後方向及び左右方向へは移動不能である。第1可動部材6は、後述する第1位置調節機構20により基材5に対して上下方向へ位置調節される。
【0016】
第2可動部材7は、第1可動部材6と同様に、上下に対向する一対の側板部7a,7a及び一対の側板部7a,7aの左側の側部どうしを一体に連結する天板部7bを有している。第2可動部材7は、第1可動部材6と同様な姿勢で配置されている。第2可動部材7の一対の側板部7a,7a間には、第1可動部材6の側板部6a,6a及び天板部6bが挿入されている。一対の側板部7a,7aの内面どうしの間隔は、第1可動部材6の一対の側板部6a,6aの外面どうしの間隔とほぼ同一に設定されている。これにより、第2可動部材7が第1可動部材6に対し前後方向へは移動可能であるが、上下方向へは移動不能になっている。したがって、第2可動部材7は、上下方向へは基材5に対して第1可動部材6と一緒に移動するが、前後方向へは基材5及び第1可動部材6に対して単独で移動する。
【0017】
第2可動部材7の側板部7a,7aの後端部には、前後方向に延びる長孔7cがそれぞれ形成されている。各長孔7c,7cには、第1可動部材6の側板部6a,6aを貫通した固定軸9の上下の両端部がそれぞれ長孔7cの長手方向へ移動可能に、かつ回転可能に挿入されている。また、天板部7bの前端部には、係合溝7dが形成されている。この係合溝7dには、軸線を左右方向に向けた調節ねじ10が左右方向及び上下方向へは移動不能に、しかも前後方向へは移動可能に係合させられている。しかも、調節ねじ10は、係合溝7dに対して調節ねじ10の軸線を中心として回転可能になっている。調節ねじ10の右端部(図3において下端部)は、第1可動部材6の天板部6bの先端部に形成されたねじ孔6dに螺合されている。したがって、調節ねじ10を正逆方向へ回転させると、第2可動部材7の前端部が、固定軸9を中心として左右方向へ回転する。それによって、第2可動部材7の先端部が左右方向へ位置調節される。
【0018】
図6に示すように、基材5と第1可動部材6との間には、第1位置調節機構20が設けられている。第1位置調節機構20は、第1可動部材6の基材5に対する上下方向の位置を調節するためのものであり、ガイドプレート21及び第1調節軸22を有している。
【0019】
ガイドプレート21は、図3に示すように、前後方向に長い略長方形の平板状をなしており、その厚さ方向を左右方向に向けて配置されている。ガイドプレート21の幅、つまり上下方向の幅は、第1可動部材6の天板部6bに形成された前後方向へ延びるガイド孔6eの上下方向の幅より若干広く設定されている。ガイドプレート21は、ガイド孔6eに前後方向へは移動可能に、かつ上下方向へは移動不能に圧入されている。したがって、ガイドプレート21は、上下方向へは第1可動部材6と一緒に移動するが、前後方向へは第1可動部材6に対して相対移動する。この場合、ガイドプレート21がガイド孔6eに圧入されているので、ガイドプレート21の上下の両側面とガイド孔6eの内周面のうちの上下の両側部との間には、比較的大きな摩擦抵抗が発生する。したがって、ガイドプレート21は、その摩擦抵抗より大きな力が作用しない限り前後方向へ移動することはない。逆に、摩擦抵抗に打ち勝つ力をガイドプレート21に作用させることにより、ガイドプレート21を第1可動部材6に対して前後方向へ移動させることができる。ガイドプレート21は、ガイド孔6eに摩擦抵抗がほとんど無い状態で前後方向へ摺動可能に挿入してもよい。
【0020】
第1調節軸22は、図6に示すように、断面円形の第1嵌合部22aを有している。第1嵌合部22aは、その軸線を左右方向(図6において上下方向)に向けて配置されている。第1嵌合部22aの外径は、ガイドプレート21の前端部に形成された第1嵌合孔21aの内径とほぼ同一であり、第1嵌合部22aは、第1嵌合孔21aに、回転可能に、かつ左右方向へ相対移動可能に嵌合されている。しかも、第1嵌合部22aは、第1嵌合孔21aに上下方向及び前後方向へ相対移動不能に嵌合されている。したがって、第1嵌合部22aが上下方向へ移動すると、それに応じてガイドプレート21及び第1可動部材6が上下方向へ移動する。ただし、第1嵌合部22aが前後方向へ移動するときには、ガイドプレート21がガイド孔6e内を前後方向へ移動するだけであり、第1可動部材6が前後方向へ移動することはない。第1嵌合部22aは、第1嵌合孔21aに左右方向へ移動不能に嵌合させてもよい。
【0021】
第1嵌合孔21aの内周面の左端部には、第1嵌合孔21aの内周面に沿って周方向に延びる複数の突出部21bが形成されている。各突出部21bは、第1嵌合孔21aの径方向内側へ向かうにしたがって右側に向かうように傾斜させられている。突出部21bの先端部には、細かい係合歯が周方向に並んで多数形成されている。各係合歯は、突出部21bが弾性変形することにより、第1嵌合孔21aの軸線方向(左右方向)へ変位可能である。
【0022】
第1嵌合部22a左端面の外周部は、突出部21bと対向している。当該左端面の外周部には、細かい係合溝が周方向に並んで多数形成されている。そして、各係合溝に突出部21bの係合歯がそれぞれ係合することにより、第1調節軸22の回転が所定の大きさの力で阻止されている。第1調節軸22を所定の大きさ以上の力で回転させると、突出部21bの先端部が第1嵌合部22aの左端面から左方へ離間するように弾性変形し、係合歯が係合溝から脱出する。したがって、第1調節軸22は、所定の大きさ以上の力を作用させることによって回転させることができる。勿論、第1調節軸22は、回転した後は係合歯が係合溝に係合することにより、その回転位置に所定の大きさの力で回転止めされる。
【0023】
第1嵌合部22aの基材5側を向く右端面(図3において下端面)には、第1偏心軸部22bが形成されている。この第1偏心軸部22bは、断面円形をなしている。第1偏心軸部22bの軸線は、第1嵌合部22aの軸線と平行であり、しかも第1嵌合部22aの軸線に対し第1嵌合部22aの径方向へ離間させられている。つまり、第1偏心軸部22bは、第1嵌合部22aに対して偏心させられているのである。
【0024】
第1可動部材6の天板部6bと対向する支持部5aの左側面(図3において上側面)には、第1調節凹部23が形成されている。この第1調節凹部23は、前後方向へ延びている。第1調節凹部23には、第1偏心軸部22bが回転可能に挿入されている。しかも、第1偏心軸部22bは、第1調節凹部23に前後方向へは移動可能に、上下方向へは移動不能に挿入されている。したがって、第1嵌合部22aの軸線を中心として第1調節軸22を正逆方向へ回転させると、第1偏心軸部22bは、第1調節凹部23内を前後方向へ移動しつつ、第1嵌合部22aを上下方向へ移動させる。その結果、第1可動部材6が基材5に対しガイドプレート21を介して上下方向へ移動させられる。よって、第1調節軸22を正逆方向へ回転させることにより、第1可動部材6の基材5に対する上下方向の位置を調節することができる。なお、第1可動部材6には、第2可動部材7が上下方向へ移動不能に連結されているので、第1可動部材6を上下方向へ位置調節すると、第2可動部材7も第1可動部材6と一緒に上下方向へ位置調節される。
【0025】
第1嵌合部22aの左端面の中央部、つまり第2可動部材7の天板部7bと対向する第1嵌合部22aの端面の中央部には、第1頭部22cが形成されている。この第1頭部22cは、断面円形をなしており、その軸線を第1嵌合部22aの軸線と一致させて形成されている。第1頭部22cは、第2可動部材7の天板部7bに形成された第1連結孔24に上下方向及び前後方向へ移動不能に嵌合されている。したがって、第1調節軸22を正逆方向へ回転させると、第2可動部材7が第1可動部材6と一緒に上下方向へ移動する。しかし、第2可動部材7は、上記のように、前後方向へは第1可動部材6と一緒に移動することがなく、第1可動部材6に対しガイドプレート21と一緒に前後方向へ移動する。なお、第2可動部材7は、第1可動部材6に上下方向へ移動不能に連結されており、上下方向へは第1可動部材6と一緒に移動する。したがって、第1頭部22cは、必ずしも第2可動部材7の第1第1連結孔24に嵌合させる必要がない。嵌合させない場合には、第1連結孔24が不要である。
【0026】
第1調節軸22の第1嵌合部22aがガイドプレート21の第1嵌合孔21aに嵌合され、頭部22cが第2可動部材7の天板部7bの第1連結孔24に嵌合され、第1偏心軸部22bが基材5の第1調節凹部23に挿入されていることから明らかなように、第1調節軸22は、第1可動部材6の天板部6bを左右方向に貫通している。このように第1可動部材6の天板部6bを貫通することは、次に述べる第2位置調節機構30の第2調節軸32も同様である。
【0027】
図6に示すように、基材5と第2可動部材7との間には、第2位置調節機構30が設けられている。第2位置調節機構30は、第2中間部7の基材5に対する前後方向への位置を調節するためのものであり、ガイドプレート21及び第2調節軸32を有している。
【0028】
ガイドプレート21の後端部には、これを左右方向に貫通する第2嵌合孔21cが形成されている。第1嵌合孔21cは、第1嵌合孔21aと同一形状、同一寸法を有しており、その内周面には突出部21bと同一形状、同一寸法を有する複数の突出部21dが形成されている。一方、第2調節軸32は、第1調節軸22と同一形状、同一寸法に形成されている。したがって、第2調節軸32は、第1調節軸22の第1嵌合部22a、第1偏心軸部22b及び第1頭部22cにそれぞれ対応する第2嵌合部32a、第2偏心軸部32b及び第2頭部32cを有している。第2嵌合部32aの左端面の外周部には、多数の係合溝が周方向に並んで形成されている。
【0029】
第2調節軸32の第2嵌合部32aは、ガイドプレート21の第2嵌合孔21bに回転可能かつ左右方向へ移動可能に嵌合されている。しかも、第2嵌合部32aは、第2嵌合孔21bに上下方向及び前後方向へ移動不能に嵌合されている。したがって、第2嵌合部32aは、ガイドプレート21と一緒に上下方向及び前後方向へ移動する。換言すれば、第2嵌合部32aが上下方向及び前後方向へ移動すると、ガイドプレート21が第2嵌合部32aと一緒に上下方向及び前後方向へ移動する。第2嵌合部32aは、第2嵌合孔21bに左右方向へ移動不能に嵌合させてもよい。
【0030】
第2嵌合部32aに形成された多数の係合溝には突出部21dの先端部に形成された多数の係合歯がそれぞれ係合している。したがって、第2調節軸32は、第2嵌合孔21bに対する回転が所定の大きさの力で阻止されている。換言すれば、第2調節軸32は、第1調節軸22と同様に所定の大きさ以上の力を作用させることによって回転させることができる。
【0031】
支持部5aの第1調節凹部23が形成された側面には、第2調節凹部33が形成されている。この第2調節凹部33は、第1調節凹部23より後方に配置されており、上下方向に延びている。第2調節凹部33には、第2調節軸32の第2偏心軸部32bが回転可能かつ上下方向へ移動可能に挿入されている。しかも、第2偏心軸部32bは、第2調節凹部33に前後方向へは移動不能に挿入されている。したがって、第2嵌合部32aの軸線を中心として第2調節軸32を回転させると、第2偏心軸部32bが第2調節凹部33内を上下方向へ移動しつつ、第2嵌合部32aを前後方向へ移動させる。この結果、ガイドプレート21がガイド孔6e内を前後方向へ移動する。
【0032】
第2可動部材7の天板部7bには、第2連結孔34が形成されている。この第2連結孔34は、第1連結孔24より後方に配置されている。第2連結孔34には、第2頭部32cが回転可能に、かつ左右方向へ移動可能に嵌合されている。しかも、第2頭部32cは、第2連結孔34に上下方向及び前後方向へは移動不能に嵌合されている。したがって、第2嵌合部32aが前後方向へ移動すると、第2可動部材7が第2嵌合部32aと一緒に前後方向へ移動する。よって、第2調節軸32を正逆方向へ回転させることにより、第2可動部材7を基材5及び第1可動部材6に対して前後方向へ位置調節することができる。
【0033】
ここで、第2可動部材7が前後方向へ移動する際には、ガイドプレート21が第1可動部材6に対して前後方向へ移動し、その結果第1調節軸22が基材5に対して前後方向へ移動する。しかるに、第1調節軸22の第1偏心軸部22bは、基材5の第1調節凹部23に前後方向へ移動可能に嵌合している。したがって、第2可動部材7の前後方向への移動が、基材5及び第1調節軸22によって阻害されることはない。同様に、第1可動部材6が上下方向へ移動する際には、第2調節軸32が基材5に対して上下方向へ移動するが、第2調節軸32の第2偏心軸部32bが基材5の第2調節凹部33に上下方向へ移動可能に挿入されているから、第1可動部材6の上下方向への移動が、基材5及び第2調節軸32によって阻害されることはない。
【0034】
このように、第1調節軸22を回転させることによって第1及び第2可動部材6,7を基材5に対して上下方向へ位置調節することができ、第2調節軸32を回転させることによって第2可動部材7を基材5及び第1可動部材6に対して前後方向へ位置調節することができる。その一方、位置調節後の第1及び第2可動部材6,7は、ガイドプレート21とガイド孔6eとの間に発生する摩擦抵抗、並びに第1嵌合孔21aの突出部21bの係合歯と第1調節軸22の係合溝との係合、及び第2嵌合孔21cの突出部21d係合歯と第2調節軸32の係合溝との係合により、基材5に所定の大きさの力で位置固定される。基材5と第1及び第2可動部材6,7との各間に、第1、第2可動部材6,7を基材5に固定する固定機構をそれぞれ設ける場合には、ガイドプレート21のガイド孔6eに対する摩擦抵抗や、係合歯と係合溝との係合が不要である。
【0035】
上記本体部3は、互いに対向して配置された一対の側板部3a,3aと、この一対の側板部3a,3aの左側部どうしを連結する天板部3bとを有しており、側板部3a,3a及び天板部3bによって断面略「コ」字状に形成されている。本体部3は、その長手方向を前後方向に、側板部3a,3aの対向方向を上下方向にそれぞれ向け、かつその開放部を右側(第2可動部材7側)に向けて配置されている。側板部3a,3a間には、第2可動部材7が挿脱可能に挿入されている。側板部3a,3aの互いに対向する内面間の距離は、第2可動部材7の側板7a,7aの外面間の距離とほぼ等しい距離に設定されている。したがって、側板部3a,3a間に第2可動部材7を挿入すると、本体部3が第2可動部材7に対し上下方向へ移動不能に連結される。
【0036】
本体部3の先端部は、第2可動部材7の先端部に第1係合機構40を介して着脱可能に取り付けられている。一方、本体部3の後端部は、第2可動部材7の後端部に第2係合機構50を介して着脱可能に取り付けられている。
【0037】
まず、第1係合機構40について説明すると、図2、図3及び図6に示すように、第2可動部材7の両側板部7a,7aの先端面には、前方に向かって開放された第1係合凹部41がそれぞれ形成されている。一方、本体部3の側板部3a,3aの先端部の基材5側の部位には、図4及び図6に示すように、長手方向を上下方向に向けた第1係合軸42の両端部がそれぞれ取り付けられている。第1係合軸42は、第1係合凹部41の開放部と対向させた状態で本体部3を後方へ移動させることにより、第1係合凹部41にその開放部から底部まで挿入可能である。第1係合軸42が第1係合凹部41の底部まで挿入された状態では、本体部3の先端部が第2可動部材7の先端部に、左右方向へ移動不能に、かつ後方へ移動不能に係止される。このようにして本体部3の先端部が、第2可動部材7の先端部に着脱可能に取り付けられている。
【0038】
第1係合軸42は、第2可動部材7の先端部に形成された傾斜面43を摺動させて第1係合凹部41に挿入することも可能である。すなわち、図2及び図3に示すように、第2可動部材7の側板部7aの先端部には、天板部7b側の端部から第1係合凹部41まで延びる傾斜面43が形成されている。この傾斜面43は、前方へ向かうにしたがって天板部7b側から第1係合凹部41に接近するように傾斜している。したがって、第1係合軸42を傾斜面43の天板部7b側の端部に押し付けた状態で本体部3を前方へ移動させると、第1係合軸42は、傾斜面43上を前方に向かって摺動する。そして、傾斜面43を通過すると、第1係合凹部41の開放部に達する。その後、本体部3を後方へ移動させることによって、第1係合軸42を第1係合凹部41に挿入することができる。
【0039】
次に、第2係合機構50について説明する。図2、図3及び図6に示すように、第2可動部材7の側板部7a,7aの後端部には、長手方向を上下方向に向けた第2係合軸51が位置固定して設けられている。一方、本体部3の側板部3a,3aには、長手方向を上下方向に向けた支持軸52が位置固定して設けられている。この支持軸52には、操作部材53が回転可能に支持されている。操作部材53は、図6に示す係合位置と、この係合位置から図3において反時計方向へ所定角度だけ離間した解除位置との間を回転可能である。操作部材53は、支持軸53に設けられた捩じりコイルばね54の付勢力により、解除位置から係合位置に向かって付勢されている。
【0040】
図4及び図6に示すように、操作部材53の前方を向く面には、第2係合凹部53aが形成されている。この第2係合凹部53aは、前方に向かって開放されており、操作部材53を解除位置から係合位置まで回転させると、第2係合軸51が第2係合凹部53aにその開放部から底部に突き当たるまで相対的に入り込む。第2係合軸51が第2係合凹部53aの底部に突き当たったときの操作部材53の位置が係合位置である。操作部材53が係合位置に位置した状態においては、第2係合軸51と第2係合凹部53aとの係合により、本体部3の左右方向への移動が阻止されるとともに、本体部3の後方への移動が捩じりコイルばね54の付勢力によって阻止される。このようにして、本体部3の後端部が第2可動部材7の後端部に着脱可能に取り付けられている。勿論、係合部材53を捩じりコイルばね54の付勢力に抗して係合位置から解除位置まで回転させると、第2係合軸51が第2係合凹部53aから脱出する。これにより、本体部3の後端部と第2可動部材7の後端部との間の係合状態を解除することができる。
【0041】
操作部材53には、傾斜面53bが形成されている。この傾斜面53bは、第2係合凹部53aに続いてその右側(図6において下側)に配置されており、後方へ向かうにしたがって右方へ向かうように傾斜させられている。しかも、傾斜面53bは、図6に示すように、第1係合凹部41に係合した第1係合軸42を中心として本体部3を時計方向へ回転させてその後端部を第2係合軸51に接近させると、傾斜面53bが第2係合軸51に突き当たるように配置されている。傾斜面53bが第2係合軸51に突き当たった状態において、本体部3をさらに時計方向へ回転させると、操作部材53が第2係合軸51及び傾斜面53bにより捩りコイルばね54の付勢力に抗して係合位置から解除位置側へ回転させられる。操作部材53が回転すると、それに応じて第2係合軸51が傾斜面53b上を前方へ向かって相対移動する。第2係合軸51が傾斜面53bを乗り越える(このときの操作部材53の位置より若干反時計方向へ向かった位置が解除位置である。)と、操作部材53が捩じりコイルばね54によって係合位置まで回転させられる。この結果、第2係合軸51が第2係合凹部53a内にその開放部から底部に突き当たるまで挿入される。
【0042】
本体部3は、第2可動部材7に次の三つの方法のいずれかよって取り付けることができる。
第1の取付方法は、まず第1係合軸42を第1係合凹部41に挿入するものである。その状態で、本体部3を第1係合軸42を中心として時計方向へ回転させ、本体部3の後端部を第2可動部材7の後端部に接近させる。すると、上記のように、傾斜面53bが第2係合軸51に突き当たる。その後、本体部3をさらに時計方向へ回転させると、操作部材53が捩じりコイルばね54の付勢力に抗して係合位置から解除位置へ向かう方向(図6において反時計方向)へ回転させられる。第2係合軸51が傾斜面53bを乗り越えると、操作部材53が捩じりコイルばね54によって係合位置側へ回転させられ、第2係合軸51が第2係合凹部53aに入り込んで係合する。この状態では、本体部3の左右方向への移動が第1係合軸42と第1係合凹部41との係合及び第2係合軸51と第2係合凹部53aとの係合によって阻止される。さらに、捩じりコイルばね54の付勢力によって第1係合軸42が第1係合凹部41の底面に押し付けられるとともに、第2係合軸51が第2係合凹部53aの底面に押し付けられることにより、本体部3の前後方向への移動が阻止される。勿論、本体部3の上下方向への移動が第2可動部材7の側板部7a,7aによって阻止されている。これにより、本体部3が第2可動部材7に位置固定状態で着脱可能に取り付けられる。
【0043】
第2の取付方法は、第1の取付方法とは逆に、第2係合軸51を第2係合凹部53aに予め係合させておくものである。その状態で、本体部3を第2係合軸51を中心として回転させ、本体部3の先端部を第2可動部材7の先端部に接近させる。すると、第1係合軸42が傾斜面43に突き当たる。本体部3の先端部をさらに接近させると、第1係合軸42が傾斜面43上を前方へ摺動する。このとき、第1係合軸42の前方への移動に伴って本体部3が前方へ移動するので、その分だけ操作部材53が第2係合軸51によって後方へ押され、係合位置側から解除位置側へ回転させられる。その後、第1係合軸42が傾斜面43を乗り越えると、第1係合軸42が第1係合凹部41に入り込み可能になる。すると、操作部材53が捩りコイルばね54によって係合位置まで回転させられ、それに応じて本体部3が後方へ移動させられる。本体部3の後方へ移動により、第1係合軸42が第1係合凹部41にその底部に突き当たるまで挿入される。これによって、本体部3が第2可動部材7に着脱可能に取り付けられる。
【0044】
第3の方法は、第1係合軸42及び第2係合軸51をそれぞれ傾斜面43,53bに同時に接触させるものである。その状態で、本体部3を第2可動部材7に接近移動させると、第1係合軸42が傾斜面43上を前方へ移動し、第2係合軸51が傾斜面53b上を後方へ移動する。勿論、このときには、本体部3の第2可動部材7への接近移動に伴って操作部材53が第1係合軸51により係合位置から解除位置側へ回転させられる。第1係合軸42及び第2係合軸51が、傾斜面43,53bをそれぞれ乗り越えると、捩りコイルばね54によって操作部材53が解除位置から係合位置側へ回転させられ、第2係合凹部53aに第2係合軸51が入り込む。係合軸51が第2係合凹部53aの底部に突き当たると、本体部3が捩りコイルばね54によって後方へ移動させられ、第1係合軸42が第1係合凹部41に挿入される。これによって、本体部3が第2可動部材7に着脱可能に取り付けられる。
【0045】
図4に示すように、本体部3の天板部3bには、第1、第2及び第3貫通孔3d,3e,3fが形成されている。第1、第2及び第3貫通孔3d,3e,3fは、それぞれ調節ねじ10、第1調節軸22及び第2調節軸32をそれぞれ回転操作するためのドライバ等の工具を挿通するためのものであり、調節ねじ10、第1調節軸22及び第2調節軸32とそれらの軸線方向において対向するように配置されている。
【0046】
本体部3の後端部と第2可動部材7の後端部との間には、第3係合機構60が設けられている。第3係合機構60は、本体部3が第2可動部材7から外れてしまうことを防止するためのものである。すなわち、上記のように、本体部3の第2可動部材7に対する前方への移動は、捩じりコイルばね54の付勢力によって阻止されている。したがって、仮に本体部3が捩じりコイルばね54の付勢力以上の力で前方へ押されると、本体部3が前方へ移動し、第1係合軸42が第1係合凹部41から抜け出てしまう。その結果、本体部3が第2可動部材7から右方へ外れてしまうおそれがある。このような事態を確実に防止するために、第3係合機構60が設けられているのである。
【0047】
第3係合機構60は、ロック部材61を有している。ロック部材61は、本体部3の後端部に支持軸52を介して回転可能に取り付けられている。ロック部材61は、図6に示すロック位置とこのロック位置から図6において反時計方向へ所定角度だけ離れたロック解除位置との間を回転可能である。ロック部材61は、捩じりコイルばね54によりロック解除位置からロック位置へ向かう方向へ回転付勢されている。ロック部材61は、捩りコイルばね54と異なるコイルばねによってロック解除位置側からロック位置側へ回転付勢させてもよい。また、ロック部材61は、本体部3の後端部に支持軸52と異なる軸を介して回転可能に取り付けてもよい。
【0048】
ロック部材61の先端部の上下の両端部には、第2可動部材7側に向かって突出する突出部61a,61aが形成されている。一方、第2可動部材7の側板部7a,7aの後端部の左側部(図3において上側部)には、ロック溝62,62が形成されている。このロック溝62は、突出部61aが左右方向へ出没可能であるように、その寸法が定められている。しかも、ロック溝62の前後方向の寸法は、突出部61aの前後方向の寸法とほぼ同一に設定されている。さらに、ロック溝62は、本体部3が第2可動部材7に正規の位置に取り付けられた状態でのみ、突出部61aがロック溝62に出没可能であるように配置されている。換言すれば、突出部61aは、本体部3を第2可動部材7に対し上記第1〜第3の方法のいずれによって取り付ける場合であっても、本体部3の取り付けが完了するまではロック溝62に入り込むことができないように配置されている。
【0049】
本体部3を第2可動部材7に対し上記第1〜第3の方法のいずれかによって取り付ける場合において、取り付け開始時には、突出部61aが第2可動部材7の側板部7aに突き当たる。したがって、本体部3を第2可動部材7に接近移動させると、それに応じて突出部61aがロック位置からロック解除位置側へ回転させられる。その後、本体部3が第2可動部材7に取り付けられると、つまり第1係合機構40の第1係合軸42が第1係合凹部41の底部に突き当たるまで挿入されるとともに、第2係合機構50の第2係合軸51が第2係合凹部53aの底部に突き当たるまで挿入されると、ロック部材61が捩じりコイルばね54によってロック解除位置からロック位置まで回転させられ、突出部61aがロック溝62に入り込む。すると、突出部61a及びロック溝62の前後方向の寸法が同一に設定されているから、本体部3が第2可動部材7に対して前後方向へ移動不能に係止される。したがって、本体部3が前方へ移動して第2可動部材7から外れてしまうような事態を確実に防止することができる。
【0050】
なお、第1〜第3のいずれの方法で本体部3を第2可動部材7に取り付けた場合であっても、操作部材53を係合位置から解除位置まで回転させることによって本体部3を第2可動部材7から取り外すことができる。操作部材53を解除位置に回転させると、第2係合軸51が第2係合凹部53aから脱出する。そこで、操作部材53が第2係合軸51から左方へ離間し、かつ突出部61aがロック溝62から脱出するまで本体部3の後端部を第2可動部材7から左方へ離間移動させる。つまり、本体部3を第1係合軸42を中心として図6の反時計方向へ回転させる。次に、本体部3を前方へ移動させ、第1係合軸42を第1係合凹部41から脱出させる。その後、本体部3を左方へ移動させることによって第2可動部材7から取り外すことができる。
【0051】
本体部3の先端部には、外側リンク(第1リンク)71の一端部が第1支持軸73を介して回転可能に連結されている。第1支持軸73は、その軸線を上下方向に向けて配置されており、その両端部が本体部3の側板部3a,3aの先端部のうちの基部2側に位置する部位に支持されている。第1支持軸73の軸線が上下方向を向いているので、外側リンク71は水平面内において回転する。本体部3の先端部には、内側リンク(第2リンク)72の一端部が、第2支持軸74を介して回転可能に連結されている。第2支持軸74は、第1支持軸73と平行であり、第1支持軸73より前側かつ左側に位置するように配置されている。第2支持軸74は、第1支持軸73と前後方向において同一位置又は後方に配置してもよい。
【0052】
図4及び図6に示すように取付部材4には、連結軸体75が設けられている。連結軸体75は、第1及第2支持軸73,74と平行に延びる二つの軸部75a,75bを有している。一方の軸部(第3支持軸)75aには、外側リンク71の他端部が回転可能に支持されている。他方の軸部(第4支持軸)75bには、内側リンク72の他端部が、回転可能に支持されている。この結果、取付部材4が本体部3の先端部に内側リンク71及び外側リンク72を介して回転可能に連結され、ひいては扉Dが躯体Bにヒンジ装置1を介して回転可能に支持されている。なお、軸部75a,75bは、互いに独立した軸体としてそれぞれ形成してもよい。
【0053】
取付部材4は、図6に示す閉位置と、図7に示す開位置との間を回転可能である。取付部材4の閉位置は、図6に示すように、外側リンク71が取付部材4に突き当たることによって規定されている。なお、軸部75aには、一対の凹部75c,75cが形成されている。この凹部75c,75cは、取付部材4が閉位置に位置したときに、内側リンク72の一部が入り込むように配置されている。これによって、取付部材4が閉位置まで確実に回転することができるようになっている。一方、取付部材4の開位置は、図7に示すように、内側リンク72が取付部材4に突き当たることによって規定されている。勿論、取付部材4の閉位置及び開位置については、周知の他の構造によって規定するようにしてもよい。
【0054】
なお、図6には、取付部材4が閉位置に位置しているとき、扉Dがその吊り元側(ヒンジ装置1による支持側)から自由端側へ向かうにしたがって躯体Bに接近するように若干傾斜した状態で記載されている。しかし、扉Dは、実際には図6に示す位置まで回転することがなく、扉Dの自由端が躯体Bの前面に突き当たることにより、扉Dは躯体Bの前面と平行になるまでしか回転することがない。したがって、ヒンジ装置1が実際に使用される場合には、取付部材4が閉位置まで回転することがなく、取付部材4は閉位置より僅かな角度(例えば1〜2°程度)だけ開位置側の位置において停止する。
【0055】
取付部材4は、本体部3に二つのリンク71,72を介して回転可能に支持されているので、取付部材4の瞬間回転中心をCとすると、図8に示すように、瞬間回転中心Cは、第1支持軸73及び軸部75aの各軸線と直交する直線と、第2支持軸74及び軸部75bの各軸線と直交する直線との交点として求められる。瞬間回転中心Cは、取付部材4が閉位置と開位置との間のいずれの位置に位置しているときでも、支持軸73から軸部75aに向かう方向において軸部75aの前方に位置するとともに、支持軸74から軸部75bに向かう方向において軸部75bの前方に位置している。換言すれば、取付部材4が閉位置と開位置との間のいずれの位置に位置している場合であっても、瞬間回転中心Cがそのような位置に位置するように、第1支持軸73、第2支持軸74及び軸部75a,7bが配置されているのである。
【0056】
本体部3の先端部と取付部材4との間には、回転付勢機構(回転付勢手段)80が設けられている。回転付勢機構80は、取付部材5が開位置と閉位置との間の所定の解除位置(図10に示す位置)と、閉位置との間に位置しているときに、取付部材4を閉位置まで回転させるとともに、閉位置に維持するためのものであり、力伝達部材81、捩りコイルばね(付勢手段)82及び受け部材83を有している。
【0057】
力伝達部材81は、図4及び図15〜図19に示すように、その基端部(図6において躯体Bの右側壁部側の端部)には、挿通孔81aが形成されている。この挿通孔81aは、その軸線を上下方向に向けて配置されており、図6において左上がりの長孔として形成されている。挿通孔81aには、第2支持軸74が回転可能に、かつ挿通孔81aの長手方向へ相対移動可能に挿入されている。したがって、力伝達部材81は、第2支持軸74を中心として回転可能であるとともに、挿通孔81aの長さの範囲内においてその長手方向へ移動可能である。挿通孔81aは、長孔とすることなく、断面円形に形成してもよい。その場合には、力伝達部材81が第2支持軸74に対して回転可能ではあるが、第2支持軸73の径方向へは移動不能になる。また、力伝達部材81は、第2支持軸74に設けることなく、第2支持軸74と平行な軸を本体部3に設け、その軸に回転可能に、かつ挿通孔81aの長手方向へ移動可能に設けてもよく、あるいは当該軸に回転可能に、かつ移動不能に設けてもよい。
【0058】
本体部3の天板部3bの先端部には、天板部3bを左右方向に貫通し、かつその長手方向に沿って延びるガイド孔3g(切欠き部)が形成されている。このガイド孔3gには、力伝達部材81の先端部がガイド孔3gの長手方向へ移動可能に挿通されている。これにより、力伝達部材81が第1支持軸73を中心とする回転したときに、力伝達部材81の先端部が天板部3bに干渉する(突き当たる)ことが防止されている。ガイド孔3gは、天板部3bの先端面から前方に開放してもよい。
【0059】
力伝達部材81の先端部には、押圧部(本体部3から外部に突出した力伝達部材の他端部;一部)81bが形成されている。押圧部81bは、凸曲面からなるものであり、特にこの実施の形態では凸の円弧面によって構成されている。円弧面は、その中心線を上下方向に向けて配置されている。つまり、円弧面は、上下方向に延びている。押圧部81bを構成する円弧面は、図6〜図13に示すように、取付部材4が開位置と閉位置との間のいずれの位置に位置しているときでも、挿通孔81aを通って本体部3の外部に突出しており、その突出量は取付部材4が開位置側から閉位置側へ向かって回転するのに伴って増大する。
【0060】
力伝達部材81の先端部の後方側を向く部分(図18において右側を向く部分)には、逃げ凹部81cが形成されている。逃げ凹部81cは、前方に向かって凹む円弧面からなるものであり、押圧部81bを構成する円弧面のうちの図18において右側に位置する端部に接するように配置されている。
【0061】
第2支持軸74には、捩りコイルばね82が外挿されている。捩りコイルばね82の一端部82aは、第1係合軸42に突き当たっている。捩りコイルばね82の他端部82bは、力伝達部材81に突き当たっている。この結果、ねじりコイルばね82は、力伝達部材81を図6において時計方向へ回転するように常時付勢している。ただし、力伝達部材81は、取付部材4が開位置と解除位置との間に位置しているときには、後述するクラッチ機構90によって時計方向への回転が阻止され、図10に示す停止位置に停止させられている。また、捩りコイルばね82は、力伝達部材81を図6の上方へ付勢している。この付勢力により、通常は、挿通孔81aの右下端部が第2支持軸74に突き当てられている。なお、捩じりコイルばね82は、第1支持軸74に設けることなく、他の軸、例えば上記のように、力伝達部材81を第2支持軸74と異なる軸に設ける場合には、その軸に設けてもよい。
【0062】
取付部材4には、受け部材83が取り付けられている。受け部材83は、図6に示すように、取付部材4が閉位置に位置しているときに取付部材4のうちの瞬間回転中心Cから遠い側に位置する端部、より詳しくは第1及び第2支持軸73,74の軸線と直交する方向において瞬間回転中心Cから遠い側に位置する端部に配置されている。受け部材83には、凹部83aが形成されている。この凹部83aを区画する内側面及びこの内側面に続く外面に作用部83bが形成されている。すなわち、凹部83aの内側面の一部は、取付部材5が閉位置に位置しているときに図6において後方側に位置しており、この後方側に位置する一部が前方を向く平面83cとされている。この平面83cと凹部83aの開口部に隣接する外面(図6において下側を向く面)との交差部に外側に向かって凸の円弧面83dが形成されている。平面83cと円弧面83dとによって作用部83bが構成されている。作用部83bは、必ずしも平面83c及び円弧面83dによって構成する必要がなく、他の曲面によって構成してもよい。
【0063】
外側リンク71と力伝達部材81との間には、クラッチ機構(回転阻止機構)90が設けられている。クラッチ機構90は、取付部材4が開位置と解除位置との間に位置しているときに、力伝達部材81が捩りコイルばね82によって図7及び図8の時計方向へ回転させられるのを阻止して、力伝達部材81を停止位置に維持するためのものであり、次のように構成されている。
【0064】
すなわち、図7、図8及び図14に示すように、外側リンク71は、上下に対向して配置された一対の側板部71a,71aと、この一対の側板部71a,71aの一側部(図14(C)において左側部)に一体に形成されて当該一対の側板部71a,71aどうしを連結する天板部71bとを有している。側板部71a,71aの一端部(図14(A)において右端部)が第1支持軸73によって本体部3に回転可能に連結され、側板部71a,71aの他端部が軸部75aによって取付部材4に回転可能に連結されている。
【0065】
側板部71a,71aの互いに対向する内面には、互いに接近する方向(上下方向)に突出する第1突出部91,91がそれぞれ形成されている。第1突出部91は、側板部71a,71aの互いに対向する内面のうちの第1支持軸73側の端部であって、第1支持軸73より後方に位置する箇所に配置されている。第1突出部91の前方を向く面には、第1係合面(第1係合部)92が形成されている。この第1係合面92は、第1支持軸73の軸線を中心とする凹状の円弧面(第1円弧面)によって構成されている。
【0066】
一方、力伝達部材81の先端部には、上下方向に突出する一対の第2突出部93,93が形成されている。この第2突出部93は、押圧部81bより若干基端側に配置されている。第2突出部93の後方を向く面には、第2係合面(第2係合部)94が形成されている。この第2係合面94は、第1係合面92を構成する円弧面と同一の曲率半径を有する凸状の円弧面(第2円弧面)によって構成されている。第2係合面94は、取付部材4が開位置と解除位置との間に位置しているときには、力伝達部材81が捩じりコイルばね82によって図7の時計方向へ付勢されることによって第1係合面92に突き当たっている。この結果、力伝達部材81の時計方向への回転が外側リンク71によって阻止されており、このときの力伝達部材81の位置が停止位置である。
【0067】
力伝達部材81が停止位置に位置しているときには、第2係合面94を構成する円弧面の中心線が第1支持軸73の軸線(=第1係合面92の中心線)と一致するよう第2係合面94が配置されている。したがって、力伝達部材81を介して外側リンク71に伝達された捩じりコイルばね82の付勢力は、第1支持軸73によって受け止められる。よって、外側リンク71は、捩じりコイルばね82によって回転させられることがなく、力伝達部材81が停止位置に維持される。
【0068】
力伝達部材81がクラッチ機構90によって停止位置に維持されるのは、取付部材4が開位置と解除位置との間に位置しているときだけであり、取付部材4が解除位置を越えて閉位置側へ回転すると、力伝達部材81が捩じりコイルばね82の付勢力によって時計方向へ回転させられる。そして、それによって取付部材4が解除位置から閉位置まで回転させられる。
【0069】
すなわち、図7及び図8に示すように、取付部材4が解除位置より開位置側に位置しているときには、作用部83bが押圧部81bに対して離間している。
【0070】
しかるに、取付部材4が開位置から閉位置側へ向かって回転して、解除位置より僅かな角度(例えば5°程度)だけ手前の位置に達すると、図9に示すように、作用部83bの円弧面83dが押圧部81bに突き当たる。この場合、作用部83bの円弧面83dは、押圧部81bのうちの、瞬間回転中心Cから最も離間した箇所(以下、第1頂点という。)をPとすると、第1頂点Pから前方(図9において左方)へ僅かに離間した箇所において押圧部81bに突き当たっている。したがって、取付部材4がさらに閉位置側へ回転すると、円弧面83dが押圧部81bを右方(図9において下方)へ押す。この結果、力伝達部材81が挿通孔81aの長手方向に沿って右側(図9において下側)へ移動し、それに伴って第2係合面94が第1係合面92に対して右方へ移動する。ここで、第1及び第2係合面92,94が円弧面であるのに対し、第2係合面94は直線移動するが、取付部材4が解除位置近傍に位置しているときには、第1及び第2係合面92,94の接触長さが短い。しかも、第2係合面94の移動方向が第1及び第2係合面92,94の接触部の接線方向に近い方向、つまり接線とのなす角度が小さい方向である。したがって、第2係合面94は、第1係合面92に対して円滑に移動することができる。
【0071】
取付部材4が解除位置に達すると作用部83bの円弧面83dが第1頂点Pにおいて押圧部81bに接触する。このときには、第1係合面92が第2係合面94に対し第1支持軸73を中心として反時計方向(図9においてほぼ上方)へ回転することと、第2係合面94が第1係合面92に対して右方(図9においてほぼ下方)へ移動することとにより、第1及び第2係合面92,94がそれらの周方向ないしはその接線方向又はそれに近い方向へ互いに離間する。この結果、クラッチ機構90による力伝達部材81の回転阻止状態が解除され、力伝達部材81が図10の時計方向へ回転可能になる。力伝達部材81は、捩りコイルばね82により第2支持軸74を中心として図10の時計方向へ回転させられる。
【0072】
ここで、押圧部81bを構成する円弧面のうちの、第2支持軸74の軸線から最も離間した箇所(以下、第2頂点という。)をQとすると、取付部材4が解除位置に位置しているときには、第2頂点Qが第1頂点Pより前方(図10において左方)に位置している。したがって、力伝達部材81が第1支持軸73を中心として図10の時計方向へ回転すると、押圧部81bが作用部83bの円弧部83dに突き当たり、押圧部81bが受け部材83を後方(図10の右方)へ押す。これにより、取付部材4が解除位置から閉位置側へ回転させられる。
【0073】
取付部材4が解除位置から閉位置側へ回転すると、作用部83bによって右側へ押圧移動させられていた力伝達部材81が捩りコイルばね82によって左側へ移動させられる。力伝達部材81は、取付部材4が解除位置から所定の小さな角度(例えば5度程度)だけ回転すると、挿通孔81aの図10における右下の端部が第1支持軸73に突き当たるまで左方へ移動させられる。したがって、その後は、力伝達部材81が挿通孔81aの長手方向へ移動することがなくなり、時計方向へ回転するだけになる。
【0074】
力伝達部材81の回転により、取付部材4が閉位置に達すると、外側リンク71が取付部材4に突き当たることによって取付部材4が停止し、それ伴って力伝達部材81が停止する。取付部材4及び力伝達部材81は、捩りコイルばね82の付勢力によりそれぞれ停止した位置に維持される。
【0075】
取付部材4が解除位置から閉位置まで回転するときには、図11〜図13及び図6に示すように押圧部81bの作用部83bに対する接触箇所が、円弧面83dから平面83cに移動する。この結果、捩じりコイルばね82による取付部材4に対する回転付勢力(回転モーメント)が増大する。
【0076】
すなわち、力伝達部材81に対する捩じりコイルばね82の回転付勢力が取付部材4の位置に拘わらず一定であると仮定すると、取付部材4に対する捩じりコイルばね82の回転付勢力は、瞬間回転中心Cから押圧部81bと作用部83bとの接触箇所までの距離と、押圧部81bと作用部83bとの接触箇所における法線(当該接触箇所における押圧部81bの作用部83bに対する押圧方向を向く力の作用線)と、当該接触箇所と瞬間回転中心Cとを結ぶ線とのなす押圧角度とによって定まる。瞬間回転中心から押圧部81bと作用部83bとの接触箇所までの距離は、図10〜図13から明らかなように、取付部材4が解除位置から閉位置側へ回転するのに伴って増大する。同様に、押圧角度は、取付部材4が解除位置から閉位置側へ回転するのに伴って90°に接近するように漸次増大する。したがって、捩じりコイルばね82による取付部材4に対する回転付勢力は、取付部材4が開位置側へ回転するのに伴って漸次増大する。特に、この実施の形態では、取付部材4が閉位置に達するまで漸次増大している。しかし、捩じりコイルばね82による取付部材4に対する回転付勢力は、解除位置から閉位置より若干手前の位置までだけ漸次増大させ、その後は一定にしてもよい。
【0077】
取付部材4を閉位置から開位置側へ回転させると、押圧部81bが作用部83bによって押され、力伝達部材81が捩りコイルばね82の付勢力に抗して図6〜図13の反時計方向へ回転させられる。取付部材4が解除位置に対して上記角度(5°)だけ手前の位置に達すると、その後は取付部材4の開位置側への回転に伴って力伝達部材81が回転させられるのみならず、作用部83bの円弧面83dによって押圧部81bが右方へ押されるので、力伝達部材81が挿通孔81aの長手方向に沿って右方へ移動させられる。取付部材4の回転に伴う外側リンク71の回転並びに力伝達部材81の回転及び移動により、第1及び第2係合面92,94が互いに接近する。
【0078】
取付部材4が閉位置から解除位置に達すると、円弧面83dが押圧部81bの第1頂点Pに接触する。したがって、取付部材4が解除位置からさらに開位置側へ回転すると、それに伴って第1リンク71が回転するのみならず、力伝達部材81が捩りコイルばね82によって左方へ移動させられる。その結果、第1及び第2係合面92,94が互いに接近して互いに隣接する端部側から接触し始める。取付部材4が解除位置から5°程度だけ開位置側へ回転すると、力伝達部材81が停止位置に達し、作用部83bの円弧面83dが押圧部81bに対し第2頂点Qにおいて接触する。したがって、力伝達部材81が第2支持軸74を中心として図9の時計方向へ回転可能になる。しかるに、このときには第1及び第2係合面92,94が互いに接触しているので、力伝達部材81は停止位置において停止状態に維持される。
【0079】
取付部材4がさらに開位置側へ回転すると、作用部83dが押圧部81bから離間する。したがって、その後は取付部材4だけが回転し、力伝達部材81は停止位置に留まる。取付部材4は、開位置まで回転すると、内側リンク72が外側リンク71に突き当たることによってそれ以上回転することができなくなり、開位置に停止する。
【0080】
図6に示すように、本体部3の先端部には、回転ダンパ機構100が設けられている。この回転ダンパ機構100は、取付部材4の閉位置側への高速回転を阻止して低速で回転させるためのものであり、取付部材4の閉位置側への高速回転を力伝達部材81を介して低速に抑える。
【0081】
回転ダンパ機構100は、ケーシング101及びロータ102を有している。ケーシング101は、円筒状をなしており、その軸線を上下方向に向けた状態で本体部3に固定されている。一方、ロータ102は、その軸線をケーシング101の軸線と一致させて配置されており、その一端部がケーシング101内に回転可能に挿入されている。ケーシング101の内部には、ロータ102の一方向への回転を低速に抑え、他方向への高速回転を許容するダンパ手段(図示せず)が設けられている。ロータ102の他端部は、ケーシング101から外部に突出しており、その突出した他端部には、第1歯車部103が形成されている。
【0082】
一方、力伝達部材81には、第2歯車部104が設けられている。第2歯車部104は、挿通孔81aの内面の右側の端部が第2支持軸74に突き当たっているときには、第2歯車部104の軸線が第1支持軸73の軸線と一致するように配置されている。第2歯車部104は、第1歯車部103と噛み合っている。したがって、力伝達部材81が回転すると、ロータ102が回転させられる。この場合、力伝達部材81が停止位置から図6の時計方向へ回転するとき、つまり取付部材4が閉方向へ回転時には、ロータ102が上記一方向へ回転させられる。その結果、力伝達部材81の時計方向への高速回転が阻止され、ひいては取付部材4の高速回転が阻止される。よって、取付部材4は、閉方向へは低速で回転する。逆に力伝達部材81が図6の反時計方向へ回転すると、ロータが上記他方向へ回転する。したがって、力伝達部材81は高速回転することができ、取付部材4は閉位置から開位置側へ向かって高速で回転することができる。なお、力伝達部材81は、挿通孔81aの長手方向に沿ってその長さの分だけ移動可能であり、力伝達部材81が左側へ移動すると、力伝達部材81の回転中心(第2支持軸74の軸線)と第2歯車部104の軸線とがずれる。しかし、挿通孔81aの長さは、短いものである。しかも、力伝達部材81が左側へ移動すると、第1及び第2歯車部103,104の中心間距離が若干長くなる。したがって、力伝達部材81が左側へ移動した状態においても、第1及び第2歯車部103,104は、良好な噛み合い状態を維持する。
【0083】
上記構成のヒンジ装置においては、回転付勢機構80の力伝達部材81の先端部(他端部;一部)が本体部3の天板部3bに形成されたガイド孔3gから外部に突出し、その突出した先端部に押圧部81bが形成されている。そして、この押圧部81bは、取付部材4の瞬間回転中心Cから離間する端部に設けられた受け部材83の作用部83bを押圧する。この押圧箇所は、第3及び第4支持軸たる軸部75b、75cより瞬間回転中心Cから遠くに配置されている。この結果、捩じりコイルばね82の付勢力が取付部材4に大きな回転モーメントとして伝達される。換言すれば回転モーメントの増大分だけ捩じりコイルばね82の付勢力を弱くすることができる。したがって、第1、第2支持軸73,74及び軸部75a,75bに作用する力、特に軸部75a,75bに作用する力を軽減することができる。よって、それらの軸73,74,75a,75b、取付部材4及び第1、第2支持軸73,74の摩耗を少なくすることができ、それによってヒンジ装置1の寿命を長くすることができる。
【0084】
次に、この発明の他の実施の形態について説明する。なお、以下に述べる実施の形態については、上記実施の形態と異なる構成だけを説明することと、同様な構成部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0085】
図20〜図29は、この発明の第2実施の形態を示す。この実施の形態のヒンジ装置1Aにおいては、クラッチ機構90に代えてクラッチ機構(回転阻止機構)110が用いられている。クラッチ機構110は、次のように構成されている。
【0086】
すなわち、図20及び図21に示すように、ガイド孔3gの長手方向に沿う二つの内面の先端部には、係止突出部(第1係合部)111,111がそれぞれ形成されている。係止突出部111,111は、互いに接近するように、上下方向に突出させられている。ガイド孔3gに係止突出部111,111が形成されることにより、ガイド孔3gの内部が、係止突出部111より前側に位置する前側部分3hと、後側に位置する後側部分3iとに区分されている。
【0087】
また、このヒンジ装置1Aにおいては、力伝達部材81に代えて力伝達部材81Aが用いられている。図22〜図24に示すように、力伝達部材81Aの先端部には、上下一対の当接部(第2係合部)112,112が形成されている。一対の当接部112,112は、押圧部81bより基端側(図22において下側)に配置されている。しかも、一対の当接部112,112は、押圧部81bを上下に挟むように配置されている。当接部112の左方(図22において上方)を向く面は、左方に向かって凸の円弧面によって構成されている。当接部112は、他の凸曲面によって構成してもよい。
【0088】
当接部112,112は、図25〜図27に示すように、取付部材4が開位置と解除位置との間に位置しているときには、ガイド孔3gの前側部分3hに挿入されており、捩じりコイルばね82の付勢力によって当接部112の円弧面が係止突出部111に押し付けられ、力伝達部材81Aが停止させられている。この位置が力伝達部材81Aの停止位置である。
【0089】
上記の構成において、取付部材4が開位置から解除位置に対して所定角度(例えば5°)だけ手前の位置まで回転すると、図26に示すように、作用部83bの円弧面83dが押圧部81bに突き当たる。その後、取付部材4が解除位置まで回転する間に、作用部83bが押圧部81bを右方(図26において下方へ)押し、力伝達部材81Aを同方向へ移動させる。勿論、力伝達部材81Aの移動に伴って当接部112も右方へ移動する。取付部材4が解除位置に達すると、図27に示すように、当接部112が係止突出部111より右方に移動する。この結果、係止突出部111による当接部112の係止状態が解除され、力伝達部材81Aが解除位置から閉位置まで回転可能になる。力伝達部材81Aは、捩じりコイルばね82によって閉位置まで回転させられる。すると、作用部83bが押圧部81bによって後方へ押され、取付部材4が閉位置まで回転させられる。
【0090】
勿論、取付部材4を閉位置から開位置側へ回転するときには、取付部材4が解除位置の所定角度(例えば5°)だけ手前の位置に達してから解除位置まで回転する間に、作用部83bが押圧部81bを右方へ押し、力伝達部材81Aを同方向へ移動させる。その結果、当接部112が係止突出部111の右側を通り抜けることができる。そして、解除位置からさらに上記所定角度(5°)だけ回転すると、取付部材4が捩じりコイルばね82によって左方へ移動させられ、当接部112がガイド孔3gの前側部分3hに入り込む。それによって、力伝達部材81Aの時計方向への回転が阻止される。その後、作用部81bは、取付部材4の開位置側への回転に伴って押圧部81bから離間する。
【0091】
図30〜図43は、この発明の第3実施の形態を示す。この実施の形態のヒンジ装置1Bにおいては、クラッチ機構90に代えてクラッチ機構120が用いられている。さらに、このヒンジ装置1Bにおいては、クラッチ機構120の係止状態を解除状態に切り換えるための切換機構130、及び取付部材4を閉位置側へ付勢する補助回転付勢機構140が用いられている。
【0092】
まず、クラッチ機構120について説明すると、図31に示すように、本体部3の前端部には、上下方向に延びる横長孔121が形成されている。この横長孔121は、ガイド孔3gより前側に配置されている。横長孔121の上下方向の長さは、ガイド孔3gの上下方向の幅より長く設定されている。横長孔121の後方側の側面には、ガイド孔3gの先端部が交差している。この場合、ガイド孔3gは、横長孔121とその長手方向の中央部において交差している。この結果、横長孔121とガイド孔3gとが互いに連通している。また、横長孔121の後方側の側面のうち上下方向の両端部が残っており、その残った両端部に第1係合面(第1係合部)122が形成されている。
【0093】
図33〜図37は、この実施の形態において用いられている力伝達部材81Bを示す。この力伝達部材81Bの先端部(各図において上端部)には、上下方向に延びる係合部123が形成されている。この係合部123の外面のうちの左側(力伝達部材81Bの先端側)に位置する部分には、押圧部81bが形成されている。係合部123の外面のうちの後方を向く部分には、第2係合面(第2係合部)124が形成されている。この第2係合面124は、押圧部81bに対して力伝達部材81の基端側に続いて形成されている。
【0094】
係合部123は、その上下方向の長さ及び前後方向の幅が横長孔121の上下方向の長さ及び前後方向の幅とそれぞれほぼ同一に設定されている。しかも、取付部材4が開位置と解除位置との間に位置しているときには、係合部123が横長孔121に前後方向へは移動不能に、かつ挿通孔81aの長手方向へは移動可能に挿入されている。勿論、このときには、図38〜図40に示すように、第2係合面124が第1係合面122に突き当たっており、それによって力伝達部材81Bの第2支持軸74を中心とする時計方向への回転が阻止されている。このときの力伝達部材81Bの位置が停止位置である。
【0095】
力伝達部材81Bが挿通孔81aの長手方向に沿って左側(図38〜図43において上側)へ所定距離だけ移動すると、第2係合面124が第1係合面122から左側へ離間する。すると、これと同時に係合部123が横長孔121から左側へ脱出する。その結果、力伝達部材81Bが停止位置から時計方向へ回転可能になり、捩りコイルばね82によって時計方向へ回転させられる。なお、力伝達部材81Bが時計方向へ回転すると、係合部123に対して力伝達部材81Bの基端側に続く部分に形成された幅狭部81eがガイド孔3g内に前後方向へ移動可能に入り込む。
【0096】
力伝達部材81Bが停止位置から時計方向へ離間した状態において、力伝達部材81Bが停止位置側へ回転すると、幅狭部81eがガイド孔3gから前方へ脱出し、横長孔121の前側に位置する内面に突き当たる。その後、力伝達部材81Bが右方へ移動させられると、第2係合面124が第1係合面122と対向し、捩りコイルばね82の付勢力によって第1係合面122に押し付けられる。これによって、力伝達部材81Bが停止位置に位置させられる。
【0097】
次に、切換機構130について説明すると、図32に示すように、外側リンク71の側板部71a,71aの対向する内面には、互いに接近するように上下方向へ突出する一対の係合突起131,131が形成されている。係合突起131は、側板部71aのうちの第1支持軸73側の端部に配置されており、第1支持軸73に対してその径方向へ所定距離だけ離間させられている。
【0098】
図33〜図37に示すように、力伝達部材81Bの基端と先端との間の略中間部には、上下方向へ突出する一対の当接突出部132が形成されている。力伝達部材81Bの先端側を向く当接突出部132の上面には、第1及び第2傾斜面133,134が形成されている。第1傾斜面133は、後方へ向かうにしたがって力伝達部材81Bの先端に近づくように傾斜させられている。第2径斜面134は、後方へ向かうにしたがって力伝達部材81Bの基端に近づくように傾斜させられている。第1傾斜面133の後端部と第2傾斜面134の前端部とは互いに交差させられている。第1及び第2傾斜面133,134のなす角度はほぼ直角である。第1傾斜面133と第2傾斜面134とは、それらの交差部に形成された円弧面等の凸曲面によって滑らかに連なっている。
【0099】
図38に示すように、取付部材4が開位置とそこから閉位置側へ所定の角度だけ離間した中間位置との間に位置しているときには、第1傾斜面133が外側リンク71の係合突起131に捩りコイルばね82によって押し付けられている。これにより、力伝達部材81Bが挿通孔81aの長手方向に沿って左側へ移動することが阻止されている。以下、このときの挿通孔81aに沿う方向における力伝達部材81Bの位置を係止位置という。力伝達部材81Bが係止位置に位置しているときには、第2支持軸74が挿通孔81aの左斜め前方の端部側に位置している。したがって、力伝達部材8Bは、係止位置から挿通孔81aの長手方向に沿って右側へ移動可能である。
【0100】
取付部材4が開位置から閉位置側へ回転すると、それに伴って外側リンク71が第1支持軸73を中心として反時計方向へ回転する。その結果、係合突起131と第1傾斜面133との接触点が第1傾斜面133の後端側へ移動する。このとき、第1傾斜面133が後方へ向かうにしたがって力伝達部材81Bの先端に接近するように傾斜しているので、力伝達部材4は捩りコイルばね82の付勢力に抗して右側へ、それも挿通孔81aの長手方向に沿って右側へ移動させられる。取付部材4が所定の中間位置に達すると、図39に示すように、係合突起131が第1及び第2傾斜面133,134の交差部と接触する。このときには、力伝達部材81Bが最も右側へ移動している。以下、このときの挿通孔81aに沿う方向における力伝達部材81Bの位置を右限界位置という。
【0101】
取付部材4が中間位置から閉位置側へさらに回転し、それに伴って外側リンク71が第1支持軸73を中心として反時計方向へさらに回転すると、図40に示すように、係合突起131が第2傾斜面134に接触する。取付部材4がさらに閉位置側へ回転すると、それに伴って係合突起131と第2傾斜面134との接触箇所が、第2傾斜面134の後方へ移動する。ここで、第2傾斜面134が後方へ向かうにしたがって力伝達部材81Bの基端に接近するように傾斜しているので、力伝達部材4は捩りコイルばね82の付勢力により取付部材4の閉方向への回転に伴って左側へ、それも挿通孔81aの長手方向に沿って左側へ移動させられる。
【0102】
図41に示すように、取付部材4が開位置から閉位置に向かって解除位置まで回転すると、係合突起131が第2傾斜面134から後方へ離間する。これと同時に第2係合面124が第1係合面122から左方へ離間する。この結果、クラッチ機構120による係止状態が解除され、力伝達部材81Bが停止位置から時計方向へ回転可能になる。以下、このときの挿通孔81aの長手方向における力伝達部材81Bの位置を離間位置という。力伝達部材81Bが離間位置に位置しているときには、挿通孔81aの右側の端部と第2支持軸74との間には、若干の隙間がある。したがって、力伝達部材81Bは、取付部材4の回転に伴って離間位置からさらに左側へ若干移動可能である。取付部材4が解除位置から所定の角度(例えば5°)だけ閉方向へ回転すると、挿通孔81aの右側の端部が第2支持軸74に突き当たる。その結果、力伝達部材81Bがそれ以上左側へ移動することができなくなる。以下、このときの力伝達部材81Bの位置を左限界位置という。
【0103】
図40に示すように、係合突起131が第2傾斜面134に接触しているときには、回転付勢機構80の作用部83bが押圧部81bにほぼ接触しているが、このときには力伝達部材81Bが作用部83bと押圧部81bとの接触点における接線方向とほぼ同一方向へ移動するので、取付部材4が捩りコイルばね82によって閉方向へ回転付勢されることがほとんどない。しかるに、取付部材4が解除位置に達すると、力伝達部材81Bが第2支持軸74を中心として時計方向へ回転するので、作用部83bが押圧部81bによって後方へ押され、それによって取付部材4が閉位置側へ回転させられる。押圧部81bと作用部83bとの接触箇所は、取付部材4が解除位置から閉位置に対して所定の小さな角度だけ手前の自由位置に達するまで、取付部材4の回転に伴って凹部8aの奥側へ移動する。取付部材4が自由位置を越えると、押圧部81bが作用部83bから離間する。したがって、自由位置と閉位置との間では、回転付勢機構80による閉方向への回転付勢力が取付部材4に作用することがなく、取付部材4は自由に回転することができる。勿論、上記の実施の形態と同様に、回転付勢機構80は、取付部材4が解除位置と閉位置との間のいずれの位置に位置しているときにおいても取付部材4を閉方向へ付勢するものであってもよい。
【0104】
クラッチ機構120及び切換機構130は、取付部材4が閉位置から開位置まで開方向へ回転すると、次のようにして元の状態に戻る。すなわち、いま取付部材4が閉位置に位置しているものとする。このときには、力伝達部材81bが左限界位置に位置し、係合突起131が第2傾斜面134から離間している。
【0105】
取付部材4が閉位置から開位置に向かって開回転し、解除位置に対して所定の角度(5°)だけ手前の位置に達すると、作用部83bが押圧部81bに突き当たる。したがって、その後は力伝達部材81Bが取付部材4の開位置側への回転に伴って右側へ押圧移動される。取付部材4が解除位置まで回転すると、力伝達部材81Bが離間位置まで移動させられる。このとき、係合突起131第2傾斜面134の右側の端縁に接しており、取付部材4が解除位置を越えて開位置側へ回転すると、係合突起131が第2傾斜面134に接触する(図40参照)。したがって、取付部材4が解除位置を越えて開位置側へ回転すると、力伝達部材81Bが捩りコイルばね82の付勢力に抗して右側へ移動させられる。その後は、取付部材4の開位置側への回転に伴って係合突起131と第2傾斜面134の接触箇所が前方へ移動し、第1及び第2傾斜面133,134の交差部を乗り越えた(図39参照)後、係合突起13が第1傾斜面133に接触する(図38)。
【0106】
次に、補助回転付勢機構140について説明する。補助回転付勢機構140は、取付部材4が中間位置と解除位置との間に位置しているときに取付部材4を閉位置側へ回転付勢するものであり、捩りコイルばね82、係合突起131及び第2傾斜面134によって構成されている。
【0107】
すなわち、取付部材4が中間位置と解除位置との間に位置しているときには、上記のように、第2傾斜面124が捩りコイルばね82の付勢力によって係合突起131に押し付けられており、係合突起131を押す。この場合、第2傾斜面124は、第1傾斜面123とのなす角度が90°であることから明らかなように、係合突起131と第2傾斜面134との接触箇所と第1支持軸73の軸線とを結ぶ線とほぼ直交する方向へ係合突起131を押す。この押圧力によって外側リンク71が第1支持軸73を中心として反時計方向へ回転させられ、それによって取付部材4が閉位置側へ回転させられる。
【0108】
取付部材4が開位置と中間位置との間に位置しているときには、第1傾斜面134が係合突起131を押している。しかるに、このときには、第1傾斜面134の係合突起131に対する押圧力の作用線が、係合突起131と第1傾斜面134との接触点と、第1支持軸73の軸線とを結ぶ線とほぼ平行で、かつ極めて接近しているか同一線である。したがって、第1傾斜面133を介して係合突起131に作用する捩りコイルばね82の付勢力は、外側リンク71を回転させる力としてはほとんど作用しない。第1傾斜面133の傾斜角度を変えることにより、第1傾斜面133を介して係合突起131に作用する捩りコイルばね82の付勢力を大きくし、それによって取付部材4が閉位置と中間位置との間に位置しているときにも取付部材4を閉位置側へ回転付勢させるようにしてもよい。
【0109】
なお、この発明は、上記の実施の形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲において各種の変形例を採用することができる。
例えば、上記の実施の形態においては、取付部材4が解除位置から閉位置側へ回転するときに回転付勢機構80が取付部材4を閉位置側へ付勢するようになっているが、回転付勢機構80に代えて、取付部材4が所定の解除位置から開位置側へ回転するときに取付部材4を開位置側へ付勢する回転付勢機構を用いてもよい。
また、クラッチ機構(回転阻止機構)90,110,120は、回転付勢機構80と異なる構成の回転付勢機構にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0110】
この発明に係るヒンジ装置は、扉を筐体に取り付けるためのヒンジ装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0111】
C 瞬間回転中心
1 ヒンジ装置
1A ヒンジ装置
1B ヒンジ装置
3 本体部
3a 側板部
3b 天板部
3g ガイド孔(切欠き部)
4 取付部材
71 外側リンク(第1リンク)
72 内側リンク(第2リンク)
73 第1支持軸
74 第2支持軸
75a 軸部(第3支持軸)
75b 軸部(第4支持軸)
80 回転付勢機構(回転付勢手段)
81 力伝達部材
81A 力伝達部材
81B 力伝達部材
81b 押圧部(力伝達部材の他端部;力伝達部材の一部)
82 捩りコイルばね(付勢手段)
83b 作用部
90 クラッチ機構(回転阻止機構)
92 第1係合面(第1係合部)
94 第2係合面(第2係合部)
110 クラッチ機構(回転阻止機構)
111 係止突出部(第1係合部)
112 当接部(第2係合部)
120 クラッチ機構(回転阻止機構)
122 第1係合面(第1係合部)
124 第2係合面(第2係合部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、この本体部に第1及び第2リンクを介して閉位置と開位置との間を回転可能に連結された取付部材と、上記本体部に設けられ、上記取付部材を上記本体部に対して回転するように付勢する回転付勢手段とを備え、上記第1及び第2リンクの一端部が上記本体部に互いに平行な第1及び第2支持軸を介して回転可能に連結され、上記第1及び第2リンクの他端部が上記取付部材に上記第1及び第2支持軸と平行な第3及び第4支持軸を介して回転可能に連結されたヒンジ装置において、
上記回転付勢手段がその一部を上記本体部から突出させた状態で上記本体部の内部に設けられ、上記本体部から突出した上記回転付勢手段の一部が上記取付部材に押圧接触することによって上記取付部材が回転付勢されていることを特徴とするヒンジ装置。
【請求項2】
上記取付部材に押圧接触する上記回転付勢手段の上記一部が、上記第1〜第4支持軸の軸線と直交する方向で、かつ上記取付部材の瞬間回転中心から離間する方向に上記本体部から突出させられていることを特徴とする請求項1に記載のヒンジ装置。
【請求項3】
上記本体部が、互いに対向して配置された一対の側板部と、この一対の側板部の一側部どうしを連結する天板部とによって断面「コ」字状に形成され、上記第1及び第2支持軸がその軸線を上記側板部の対向方向に向けて配置され、上記第1支持軸の両端部及び上記第2支持軸の両端部が上記側板部に支持され、上記天板部に切欠き部が形成され、上記回転付勢手段の一部が上記切欠き部を通って上記本体部の外部に突出させられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のヒンジ装置。
【請求項4】
上記回転付勢手段が、上記本体の内部に変位可能に設けられた力伝達部材と、この力伝達部材を変位させる付勢手段とを有し、上記力伝達部材の一部が上記本体部から外部に突出させられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のヒンジ装置。
【請求項5】
本体部と、この本体部に第1及び第2リンクを介して閉位置と開位置との間を回転可能に連結された取付部材と、上記本体部に設けられ、上記取付部材を上記本体部に対して回転するように付勢する回転付勢手段とを備え、上記第1及び第2リンクの一端部が上記本体部に互いに平行な第1及び第2支持軸を介して回転可能に連結され、上記第1及び第2リンクの他端部が上記取付部材に上記第1及び第2支持軸と平行な第3及び第4支持軸を介して回転可能に連結されたヒンジ装置において、
上記取付部材に上記回転付勢手段の回転付勢力が作用する作用部が設けられ、上記取付部材の瞬間回転中心と上記作用部との間の距離が、上記取付部材の瞬間回転中心と上記第3及び第4支持軸との各間の距離よりも長くなるように、上記作用部が配置されていることを特徴とするヒンジ装置。
【請求項6】
上記作用部に作用する上記回転付勢手段の付勢力の作用方向が上記取付部材の回転に伴って漸次変化することを特徴とする請求項5に記載のヒンジ装置。
【請求項7】
上記回転付勢手段が、上記本体部に設けられた力伝達部材と、この力伝達部材を回転付勢する付勢手段とを有し、上記力伝達部材の一端部が上記本体部の内部に回転可能に連結され、上記力伝達部材の他端部が上記本体部から外部に突出し、この突出した他端部が上記取付部材の上記作用部に押圧接触することにより、上記取付部材が上記付勢手段により上記力伝達部材を介して回転させられることを特徴とする請求項5又は6に記載のヒンジ装置。
【請求項8】
上記第1リンクと上記力伝達部材との間に回転阻止機構が設けられており、上記回転阻止機構は、上記取付部材が上記開位置と上記閉位置とのいずれか一方の位置から他方の位置に向かって回転する場合において、上記他方の位置より所定の角度だけ手前の解除位置に達するまでは、上記力伝達部材が上記付勢手段によって回転させられることを阻止して上記力伝達部材を所定の停止位置に位置固定し、上記取付部材が上記解除位置を越えると、上記力伝達部材が上記付勢手段によって上記他方の位置側へ回動させられることを許容することを特徴とする請求項7に記載のヒンジ装置。
【請求項9】
上記回転阻止機構が、上記第1リンクに設けられた第1係合部と、上記力伝達部材に設けられた第2係合部とを有し、上記第1及び第2係合部のいずれか一方が、上記第1支持軸の軸線を曲率中心とする凹状の第1円弧面によって構成され、いずれか他方が上記第1支持軸の軸線を曲率中心とする凸状の第2円弧面によって構成され、上記取付部材が上記解除位置に達するまでは上記第1円弧面と上記第2円弧面とが上記第1支持軸の軸線を中心として互いに回転可能に接触することによって上記力伝達部材の回転が阻止され、上記取付部材が上記解除位置を越えると、上記第1円弧面と上記第2円弧面とが互いに離間することによって上記力伝達部材の回転が許容されることを特徴とする請求項8に記載のヒンジ装置。
【請求項1】
本体部と、この本体部に第1及び第2リンクを介して閉位置と開位置との間を回転可能に連結された取付部材と、上記本体部に設けられ、上記取付部材を上記本体部に対して回転するように付勢する回転付勢手段とを備え、上記第1及び第2リンクの一端部が上記本体部に互いに平行な第1及び第2支持軸を介して回転可能に連結され、上記第1及び第2リンクの他端部が上記取付部材に上記第1及び第2支持軸と平行な第3及び第4支持軸を介して回転可能に連結されたヒンジ装置において、
上記回転付勢手段がその一部を上記本体部から突出させた状態で上記本体部の内部に設けられ、上記本体部から突出した上記回転付勢手段の一部が上記取付部材に押圧接触することによって上記取付部材が回転付勢されていることを特徴とするヒンジ装置。
【請求項2】
上記取付部材に押圧接触する上記回転付勢手段の上記一部が、上記第1〜第4支持軸の軸線と直交する方向で、かつ上記取付部材の瞬間回転中心から離間する方向に上記本体部から突出させられていることを特徴とする請求項1に記載のヒンジ装置。
【請求項3】
上記本体部が、互いに対向して配置された一対の側板部と、この一対の側板部の一側部どうしを連結する天板部とによって断面「コ」字状に形成され、上記第1及び第2支持軸がその軸線を上記側板部の対向方向に向けて配置され、上記第1支持軸の両端部及び上記第2支持軸の両端部が上記側板部に支持され、上記天板部に切欠き部が形成され、上記回転付勢手段の一部が上記切欠き部を通って上記本体部の外部に突出させられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のヒンジ装置。
【請求項4】
上記回転付勢手段が、上記本体の内部に変位可能に設けられた力伝達部材と、この力伝達部材を変位させる付勢手段とを有し、上記力伝達部材の一部が上記本体部から外部に突出させられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のヒンジ装置。
【請求項5】
本体部と、この本体部に第1及び第2リンクを介して閉位置と開位置との間を回転可能に連結された取付部材と、上記本体部に設けられ、上記取付部材を上記本体部に対して回転するように付勢する回転付勢手段とを備え、上記第1及び第2リンクの一端部が上記本体部に互いに平行な第1及び第2支持軸を介して回転可能に連結され、上記第1及び第2リンクの他端部が上記取付部材に上記第1及び第2支持軸と平行な第3及び第4支持軸を介して回転可能に連結されたヒンジ装置において、
上記取付部材に上記回転付勢手段の回転付勢力が作用する作用部が設けられ、上記取付部材の瞬間回転中心と上記作用部との間の距離が、上記取付部材の瞬間回転中心と上記第3及び第4支持軸との各間の距離よりも長くなるように、上記作用部が配置されていることを特徴とするヒンジ装置。
【請求項6】
上記作用部に作用する上記回転付勢手段の付勢力の作用方向が上記取付部材の回転に伴って漸次変化することを特徴とする請求項5に記載のヒンジ装置。
【請求項7】
上記回転付勢手段が、上記本体部に設けられた力伝達部材と、この力伝達部材を回転付勢する付勢手段とを有し、上記力伝達部材の一端部が上記本体部の内部に回転可能に連結され、上記力伝達部材の他端部が上記本体部から外部に突出し、この突出した他端部が上記取付部材の上記作用部に押圧接触することにより、上記取付部材が上記付勢手段により上記力伝達部材を介して回転させられることを特徴とする請求項5又は6に記載のヒンジ装置。
【請求項8】
上記第1リンクと上記力伝達部材との間に回転阻止機構が設けられており、上記回転阻止機構は、上記取付部材が上記開位置と上記閉位置とのいずれか一方の位置から他方の位置に向かって回転する場合において、上記他方の位置より所定の角度だけ手前の解除位置に達するまでは、上記力伝達部材が上記付勢手段によって回転させられることを阻止して上記力伝達部材を所定の停止位置に位置固定し、上記取付部材が上記解除位置を越えると、上記力伝達部材が上記付勢手段によって上記他方の位置側へ回動させられることを許容することを特徴とする請求項7に記載のヒンジ装置。
【請求項9】
上記回転阻止機構が、上記第1リンクに設けられた第1係合部と、上記力伝達部材に設けられた第2係合部とを有し、上記第1及び第2係合部のいずれか一方が、上記第1支持軸の軸線を曲率中心とする凹状の第1円弧面によって構成され、いずれか他方が上記第1支持軸の軸線を曲率中心とする凸状の第2円弧面によって構成され、上記取付部材が上記解除位置に達するまでは上記第1円弧面と上記第2円弧面とが上記第1支持軸の軸線を中心として互いに回転可能に接触することによって上記力伝達部材の回転が阻止され、上記取付部材が上記解除位置を越えると、上記第1円弧面と上記第2円弧面とが互いに離間することによって上記力伝達部材の回転が許容されることを特徴とする請求項8に記載のヒンジ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
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【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【公開番号】特開2012−127168(P2012−127168A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282249(P2010−282249)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000107572)スガツネ工業株式会社 (153)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000107572)スガツネ工業株式会社 (153)
【Fターム(参考)】
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