説明

ヒーターユニット及び記録装置

【課題】媒体に対する異物の吹き付けを抑制することのできるヒーターユニット及び記録装置を提供する。
【解決手段】吸入口33を介して空気を吸入する吸入手段35と、吸入手段35により吸入された空気が流れる空気流路36と、空気流路36の途中に配置されて空気を加熱する加熱手段38と、加熱手段38により加熱された空気を空気流路36の下流から排出する排出口34と、空気流路36における鉛直方向下側の流路面に設けられた開口部Kと、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒーターユニット及び記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、記録媒体に対して液体を付着させることで記録を行う記録装置として、インク
ジェット式記録装置が広く知られている。そして、こうした記録装置には、インク(液体
)が付着した記録媒体を搬送途中に乾燥させるための乾燥装置が記録媒体の搬送経路上に
設けられている(例えば、特許文献1)。
【0003】
この乾燥装置は、外部から空気を取り入れるための吸引ファンと、取り入れられた空気
を温めるための加熱ヒーターと、温められた空気(温風)を搬送途中の記録媒体に向けて
吹き出す吹出口と、吹出口から吹き出された温風を吸気ファンに再び導く流通空間とを備
えている。そして、温風を循環させて記録媒体に吹き付けることにより、記録媒体に付着
したインクを乾燥させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−45861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の記録装置では、吸引ファンが記録装置内の空気を吸引するため
、吸引した空気に記録媒体に付着している紙粉や埃等の異物が混入するおそれがある。そ
のため、記録媒体に対して温風とともに上記異物を吹き付けてしまうおそれがあった。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、媒体に対する異物の吹き付け
を抑制することのできるヒーターユニット及び記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明のヒーターユニットは、吸入口を介して空気を吸
入する吸入手段と、前記吸入手段により吸入された前記空気が流れる空気流路と、前記空
気流路の途中に配置されて前記空気を加熱する加熱手段と、前記加熱手段により加熱され
た前記空気を前記空気流路の下流から排出する排出口と、前記空気流路における鉛直方向
下側の流路面に設けられた開口部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明のヒーターユニットによれば、吸入手段により吸入した空気が開口部を介して流
路外に流れ込ませることができる。よって、空気流路に供給された空気中に含まれた埃等
の異物を開口部内に回収することができる。また、空気流路に供給された空気中から落下
した異物を鉛直方向下側の開口部に直接落下させることもできる。よって、排出口から排
出される空気に含まれる異物の量を抑制し、対象物に吹き付けられる異物の量を大幅に低
減することができる。
【0009】
また、上記ヒーターユニットにおいては、前記空気流路は、本体部に設けられた第1流
路形成部材と、前記本体部に取り付けられる前記吸入手段に一体に設けられた第2流路形
成部材とから構成されており、前記開口部は前記第1流路形成部材及び前記第2流路形成
部材における隙間から構成されているのが好ましい。
この構成によれば、本体部に吸入手段を取り付けることで第1流路形成部材及び第2流
路形成部材との間に生じた隙間により開口部を簡便且つ確実に構成することができる。
【0010】
また、上記ヒーターユニットにおいては、前記吸入手段は、前記本体部に対して揺動可
能に取り付けられているのが好ましい。
この構成によれば、吸入手段を駆動する際、該吸入手段が本体部に対して揺動させるこ
とができる。よって、吸入手段に一体に設けられた第2流路形成部材に例えば異物が付着
している場合に、該異物を隙間に落とすことで回収できる。
【0011】
また、上記ヒーターユニットにおいては、前記開口部は、該開口部を介して前記空気流
路から流れ込ませる空間に連通しているのが好ましい。
この構成によれば、開口部を介して流れ込んだ空気が空間内で淀ませることで空気中に
含まれる異物を空間内に堆積させることができる。よって、空気中に含まれる異物を良好
に除去することができる。
【0012】
また、上記ヒーターユニットにおいては、前記空気流路は、前記開口部が設けられた前
記流路面の下流側に、前記開口部の開口面に対して鉛直方向上側に向かって傾斜する傾斜
部を有するのが好ましい。
この構成によれば、開口部に吹き込まれた空気が傾斜部に衝突させることができる。よ
って、開口部の近傍に空気の淀みを積極的に発生させることができ、空気中に含まれた異
物を開口部内に効率的に回収することができる。
【0013】
本発明の記録装置は、記録媒体に対し流体を噴射する記録ヘッドと、前記記録媒体上の
前記流体を乾燥させるヒーターユニットと、を有する記録装置であって、前記ヒーターユ
ニットとして、上述のヒーターユニットを有することを特徴とする。
【0014】
本発明の記録装置によれば、例えば記録媒体から生じた紙粉等の異物を含む空気を吸入
手段が吸入した場合でも、開口部により異物を除去することができる。よって、排出口か
ら異物を含まない温風を記録媒体に吹きつけることで流体を良好に乾燥させることができ
る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】記録装置の概略構成を示す図。
【図2】ヒーターユニットの構成を示す斜視図。
【図3】記録装置の拡大概略断面図。
【図4】ヒーターユニットの要部構成を示す斜視図。
【図5】ヒーターユニットの作用を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を記録装置の一種であるインクジェット式記録装置(以下、「記録装置」
と略す。)及び該記録装置が備える乾燥装置に具体化した実施形態を図1及び図2に従っ
て説明する。なお、以下の説明における図面中においては、XYZ座標系を用いる場合が
あり、具体的に記録が施された連続紙がプリンターから記録ヘッドの下方からヒーターユ
ニットの下方へと搬送される方向をY方向で示し、該搬送方向に直交する方向であって且
つ連続紙の幅方向をX方向で示すものとする。すなわち、搬送装置におけるシートの搬送
面をXY平面で規定することができる。また、また、シートの搬送面に直交する方向をZ
方向で示すものとする。なお、図面中のX方向、Y方向及びZ方向を示す矢印において、
「○」の中に「・」が記載されたもの(矢の先端を前から見た図)は紙面の裏から表に向
かう矢印を意味し、「○」の中に「×」が記載されたもの(矢の羽根を後ろから見た図)
は紙面の表から裏に向かう矢印を意味するものとする。
【0017】
図1に示すように、記録装置11は、その外郭を形成する略矩形箱状の本体ケース12
を備えている。本体ケース12内には、長尺状の連続紙(記録媒体)Sを繰り出す繰り出
し部13と、繰り出された連続紙Pにインクを噴射して記録を施す記録部14と、該記録
部14にて記録が施された連続紙Pを巻き取る巻き取り部15が設けられている。
【0018】
すなわち、本体ケース12内において、連続紙Pにおける搬送方向の上流側となる後側
(−Y方向側)寄りの位置には繰り出し部13が配設されているとともに、下流側(+Y
方向側)となる前側寄りの位置には巻き取り部15が配設されている。そして、繰り出し
部13と巻き取り部15との間となる搬送経路の途中位置に記録部14が配設されている
。また、記録部14における後側寄りの位置には、連続紙Pを支持可能なプラテン16が
設けられている。
【0019】
図1に示すように、繰り出し部13には、X方向(紙面と直交する方向)に延びる巻き
軸17が回転可能に設けられている。そして、その巻き軸17には、連続紙Pがあらかじ
めロール状に巻かれた状態で巻き軸17と一体に回転可能に支持されている。すなわち、
連続紙Pは、巻き軸17が回転することにより巻き軸17から繰り出されて搬送方向の下
流側に搬送されるようになっている。また、繰り出し部13における斜め前側の位置には
、巻き軸17から繰り出された連続紙Pを巻き掛けて記録部14に向けて導くための第1
中継ローラー18がX方向に延びた状態で回転可能に設けられている。そして、第1中継
ローラー18に、巻き軸17から繰り出された連続紙Pを後側下方から巻き掛けることに
より、連続紙Pの搬送方向を水平方向に変換するようになっている。
【0020】
また、プラテン16の前側には、該プラテン16を挟んで上流側の第1中継ローラー1
8と前後方向(Y方向)で対向する第2中継ローラー19が第1中継ローラー18と平行
な態様でX方向に延びるように設けられている。なお、第1中継ローラー18及び第2中
継ローラー19は各々の周面の頂部がプラテン16の上面である支持面と同一の高さとな
るように各々配置される位置が調整されている。そのため、第1中継ローラー18により
搬送方向が水平方向に変換された連続紙Pは、プラテン16の支持面に摺接しつつ下流側
となる前側に搬送された後、第2中継ローラー19に前側上方から巻き掛けられることに
より、連続紙Pの搬送方向が水平方向から前斜め下方に変換される。
【0021】
また、プラテン16の前側であって第2中継ローラー19の後側の位置には、搬送ロー
ラー対20,21が間隔をあけて配設されている。搬送ローラー対20,21は、それぞ
れX方向に延びるとともに連続紙Pにおいて記録が施される面に当接するローラー部材と
しての駆動ローラー20a,21aと、連続紙Pの他方の面に当接する従動ローラー20
b,21bとにより構成されている。そして、駆動ローラー20a,21aと従動ローラ
ー20b,21bとにより連続紙Pを狭持した状態で、駆動ローラー20a,21aの駆
動回転に従動ローラー20b,21bが従動回転することで連続紙Pの搬送が行われるよ
うになっている。
【0022】
そして、第2中継ローラー19の前側には巻き取り部15が配設されると共に、該巻き
取り部15における下方(第2中継ローラー19の前斜め下方)の位置には巻き取り軸2
2が回転可能に設けられている。そして、巻き取り軸22に対して連続紙Pの搬送方向下
流端となる先端が巻きつけられるようになっている。上記のように、繰り出し部13、記
録部14、巻き取り部15及び搬送ローラー対20,21により、記録媒体である連続紙
Pを搬送経路に沿って搬送する搬送手段が構成されている。
【0023】
また、図1に示すように、記録部14の上方であってプラテン16と対向する位置には
、ラインヘッドタイプの記録ヘッド23が設けられている。記録ヘッド23の下面はイン
クを噴射する図示しない複数のノズルが開口する水平なノズル形成面になっている。記録
ヘッド23は水平方向において連続紙Pの搬送方向と直交する方向に延びるとともに、長
手方向の長さが連続紙Pの最大紙幅に対応する長さを有している。そして、記録ヘッド2
3は搬送される連続紙Pの記録領域に対して搬送経路の途中でインクを噴射して記録を施
すようになっている。
【0024】
さらに、連続紙Pの搬送方向において記録部14よりも下流側となる記録ヘッド23の
前側の位置には、記録ヘッド23から噴射されたインクが付着した連続紙Pに乾燥処理を
施す乾燥手段としてのヒーターユニット24を着脱可能な装着部5が設けられている。ヒ
ーターユニット24には、制御部25が電気的に接続されているとともに、該制御部25
によってヒーターユニット24の温度等が制御されるようになっている。
【0025】
また、図1に示すように本体ケース12の上面12aであってヒーターユニット24の
装着部5に対応する位置には、開口部26が形成されているとともに、該開口部26を覆
蓋可能な蓋体27が設けられている。蓋体27は開口部26を覆蓋する覆蓋位置(図1に
おいて実線で示す位置状態)と、開口部26を開放する非覆蓋位置(図1において二点破
線で示す位置状態)との間で変位するように、蓋体27において後側に設けられた回転軸
27aを介して本体ケース12に対して回動可能に支持されている。すなわち、蓋体27
は図1において矢印Aに示す方向に回動するようになっている。
【0026】
また、蓋体27の略中央には指先を差し入れ可能な開口27b(図2参照)が設けられ
るとともに、蓋体27における本体ケース12の内面側の面には開口27bを覆うように
断面視略U字状の陥入部27cが形成されている図2参照。すなわち、この開口27b及
び陥入部27cはユーザーが指先を差し入れて蓋体27を回動変位するための取手となっ
ている。そして、蓋体27を覆蓋位置から非覆蓋位置に変位させることにより、開放状態
にされた開口部26を介してヒーターユニット24を本体ケース12内の装着部5に対し
て着脱可能になっている。
【0027】
ヒーターユニット24は、記録ヘッド23の前側(下流側)であって搬送ローラー対2
0,21の間の位置に配設されており、水平方向において連続紙Pの搬送方向と直交する
方向に延びるとともに、長手方向の長さが連続紙Pの最大紙幅に対応する長さとなってい
る。
【0028】
次に、ヒーターユニット24について図2、3に従って説明する。図2はヒーターユニ
ット24を示す斜視図であり、図3は記録装置の拡大概略断面図である。図2に示すよう
に、ヒーターユニット24は平面視で略長方形状からなる本体部31を有している。なお
、本体部31は、例えば変性ポリフェニレンエーテル等の樹脂により形成され、この本体
部31の外面によりヒーターユニット24の外郭が構成されている。
【0029】
本体部31の短手方向一方側(+Y側)の側部には、空気を取り込むための複数の吸入
口33が所定間隔をおいて規則的に開口形成されている。複数の吸入口33の下流側には
、吸入口33を介して空気を吸入するファン(吸入手段)35がそれぞれ配置されている
(図3参照)。また、本体部31の天部には、把持部材32が設けられている。把持部材
32は、長手方向(所定方向、X軸方向)に延びる軸周りに、略水平面(XY平面)から
略直角に回動自在な構成となっている。
【0030】
この把持部材32を把持するとともに上方に持ち上げることにより、本体部31内の装
着部5にヒーターユニット24を着脱できるようになっている(図3参照)。また、作業
者は把持部材32を把持することでヒーターユニット24の交換時に該ヒーターユニット
24の持ち運びを容易に行うことが可能となっている。
【0031】
図3に示すように、本体部31の下側となる下面31cの上流側(−Y側)の位置には
、本体部31の長手方向に沿う略矩形状の吹出口(排出口)34が連続紙Pの搬送方向の
下流側に向かって開口形成されている。
【0032】
また、本体部31の内部であって吸入口33と対向する位置には、吸入口33を介して
本体部31外の空気を内部に取り込むためのファンユニット45が設けられている。さら
に、本体部31の内部には、吸入口33から取り込んだ空気を吹出口34にまで導くため
の空気流路36が設けられている。
【0033】
本体部31の内部には上記空気流路36の一部を構成する第1板金(第1流路形成部材
)41が取り付けられている。また、本体部31の内部には上記空気流路36の一部を構
成する第2板金(第2流路形成部材)42が取り付けられている。第2板金42は複数の
ファン35を保持するためのものであり、該複数のファン35は第2板金42を介して本
体部31に固定されている。
【0034】
図4はヒーターユニット24における要部構成としてファンユニット45の構成を示す
図である。第2板金42は平面視略矩形状の板状からなり、ファン35が所定間隔をおい
て規則的に配置されている。なお、ファン35が配置される間隔は、本体部31に設けら
れた吸入口33に一致している。また、第2板金42はファン35が取り付けられる取付
面と反対側に本体部31に固定される固定部42aが設けられている。
【0035】
図3に戻って、第1板金41は一対の湾曲部材41a,41bを有している。湾曲部材
41a,41bは上流側から下流側に向かって一端、同図中における斜め左下に延びた後
、斜め右下に向けて湾曲した形状を有している。これら湾曲部材41a,41bは、下流
側の端部がそれぞれ本体部31の底面に設けられた吹出口34に連結している。また、湾
曲部材41aは上流側の端部が第2板金42に当接するようになっている。なお、ファン
ユニット45は第2板金42の固定部42aを介して本体部31に取り付けられている。
なお、固定部42aと本体部31との取付部分には不図示の弾性部材が設けられており、
これにより後述するようにファンユニット45は本体部31に対して揺動可能とされてい
る。
【0036】
なお、湾曲部材41aにおける第2板金42との当接部分には樹脂部材(不図示)が設
けられており、これにより湾曲部材41a及び第2板金42を密着させるようになってい
る。そして、本体部31の両側面(図示略)と第1板金41及び第2板金42により、本
体部31内で空気が流れる上記空気流路36を区画形成している。
【0037】
また、空気流路36の内部においてファン35の送風方向下流側であって吹出口34の
上流側上方の位置には、ヒーター(加熱手段)38が設けられている。さらに、ヒーター
38よりも下方の空気流路36を構成する部分の湾曲部材41a,41bは、上述したよ
うに上流側から下流側に向かって上流側が上方となるように傾斜している。
【0038】
また、第2板金42は、複数のファンを保持する保持部分43と、該保持部分43にお
けるZ方向上端において+Y方向に突出した凸部43aと、保持部分43におけるZ方向
下端において−Y方向に突出した凸部43bと、を有している。
【0039】
このような構成に基づき、ヒーターユニット24は、ヒーター38を発熱させた状態で
ファン35を回転させることで、吸入口33から取り込んだ空気をヒーター38により加
熱した後、温めた空気(温風)を底部に設けられた吹出口34から連続紙Pに対して搬送
方向の上流側から下流側に向かって吹き付けるようになっている。
【0040】
ところで、上記ヒーターユニット24が着脱される装着部5が設けられる空間において
は連続紙Pが順次搬送されるため、連続紙Pに付着していた紙粉や埃等の異物が飛散した
状態となっている。従って、ヒーターユニット24のファン35が吸入口33から取り込
む空気に紙粉等の異物が含まれると、吹出口34から連続紙Pに対して異物を吹き付けて
しまうおそれがある。
【0041】
これに対し、本実施形態では空気流路36における鉛直方向下側の流路面に開口部Kを
設けている。具体的には、第2板金42が本体部31に取り付けられた時、凸部43bが
第1板金41の湾曲部材41bとの間に隙間Sを生じさせる形状に設計されている。すな
わち、上記開口部Kを第1板金41及び第2板金42の間に生じる隙間Sにより構成して
いる。このように第1板金41及び第2板金42間に生じる隙間Sを用いることで開口部
Kを簡便且つ確実に形成している。また、開口部Kは空気流路36におけるファン35の
近傍に設けられたものとなっている。
【0042】
また、湾曲部材41bは、第2板金42の凸部43bに対して鉛直方向上側(+Z方向
側)に向かって左斜め上方に傾斜する傾斜面41cを有している。すなわち、傾斜面41
cは開口部Kの近傍に設けられている。
【0043】
また、ヒーターユニット24における本体部31の内部には、前側面31b、下面31
c、両側面及び湾曲部材41bにより区画される独立した空間部(空間)39が形成され
ている。空間部90は上記開口部Kを介して空気流路36に連通している。この空間部3
9は開口部Kを介して空気流路36から空気を流れ込ませるためのものである。空気流路
36から空間部39に流れ込んだ空気には淀みが生じるようになっている。
【0044】
また、空間部39内にはフィルター44が設けられている。このフィルター44は空間
部39内に流れ込んだ空気中に含まれる異物を捕捉するためのものであり、例えば空気を
透過させつつ紙粉等の異物を捕捉できる構造のものであれば適宜採用することができる。
フィルター44の一例としては、例えばスポンジ等の多孔質部材を用いることができる。
これにより、空間部39内に流れ込んだ空気中に含まれた異物(紙粉又は異物)を確実に
捕捉できるようになっている。
【0045】
また、図2に示したように、ヒーターユニット24は装着部5に対して正確に装着され
た状態では、ヒーターユニット24における本体部31の下面31cにより搬送ローラー
対20、21間における連続紙Pの記録領域の上部を上方から覆うように構成されている
。そして、連続紙Pの表面、本体部31の下面31c及び搬送ローラー対20,21によ
り、ヒーターユニット24の吹出口34から連続紙Pに向けて吹き出された温風を滞留さ
せて連続紙Pのインクを乾燥させる乾燥領域Dが形成されている。すなわち、乾燥領域D
の天井面が本体部31の下面31cで構成されると共に、乾燥領域Dにおける連続紙Pの
搬送方向の上流側と下流側の領域が連続紙Pの表面に当接する駆動ローラー20a,21
aにより覆われるようになっている。この点で、ヒーターユニット24における本体部3
1の下面31cは、吹出口34が形成されると共に該吹出口34から連続紙Pの搬送方向
の下流側に向けて搬送経路を上方から覆うように延設された延設面部として機能する。
以上のように、本実施形態では、繰り出し部13、記録部14、搬送ローラー対20,
21及び巻き取り部15からなる搬送手段とヒーターユニット24とにより搬送される連
続紙Pに対して乾燥を施すための乾燥領域Dを形成する乾燥装置が構成されている。
【0046】
また、ヒーターユニット24は、本体部31の下面31cが平面状に形成されていると
ともに、重心がヒーターユニット24の中心にくるように構成されている。そのため、ヒ
ーターユニット24を装着部5から取り出した場合に、ヒーターユニット24単体を装着
姿勢の状態で床や机等に直接置くことができるようになっている。
【0047】
次に、上記のように構成された記録装置11の動作として、特に乾燥領域D内における
連続紙Pの乾燥処理に着目して説明する。
例えば記録装置11において記録処理が開始されると、ヒーターユニット24のヒータ
ー38が発熱しつつファン35が駆動して温風が吹き出され始めると共に、連続紙Pが繰
り出し部13から繰り出されて搬送方向の上流側から下流側へと搬送される。続いて、連
続紙Pが記録部14に搬送されると、記録部14ではプラテン16上を摺動する連続紙P
の表面に対して記録ヘッド23から連続紙Pの表面にインクが噴射される。そして、イン
クが付着した連続紙Pはさらに搬送されて乾燥領域D内を通過する。乾燥領域D内では、
搬送される連続紙Pの表面に対して上流側に位置するヒーターユニット24の吹出口34
から下流側に向かって温風が吹き付けられる。
【0048】
このとき、ヒーターユニット24は、ファンユニット45の各ファン35を駆動し、吸
入口33を介して本体部31外の空気を内部に取り込む。このとき、吸入口33から取り
込んだ空気には紙粉等の異物が含まれてしまう。空気流路36に取り込まれた空気に含ま
れる異物は重力により鉛直方向下側に落下し、開口部Kに回収されるようになる。開口部
Kは空気流路36におけるファン35の近傍に設けられているため、ファン35による取
り込み直後の空気中から異物を効率的に回収することができる。また、空気流路36に取
り込まれた空気の一部は開口部Kを介して空間部39に流れ込む。そのため、上述のよう
に開口部Kに向かって落下する異物を積極的に空間部39へと引き込むことができる。
【0049】
また、ファン35により空気流路36に取り込まれた空気は開口部Kの近傍に設けられ
た傾斜面41cに衝突する。これにより、開口部Kの近傍に空気の淀みを積極的に発生さ
せることができ、空気中に含まれた異物を開口部K内に効率的に回収することができる。
【0050】
開口部Kを通って空間部39に流れ込んだ空気は、一端狭い空間(開口部K)から広い
空間(空間部39)に流れ込むため、大きな淀みが生じた状態となる。したがって、開口
部Kを介して空間部39内に入り込んだ空気中に含まれる異物は空間部39に設けられた
フィルター44へと落下して確実に捕捉される。また、開口部Kを介して空間部39内に
入り込んだ空気がフィルター44を透過すると、空気中に含まれていた異物はフィルター
44により確実に捕捉されることとなる。よって、開口部Kから空間部39内に引き込ん
だ異物はフィルター44により確実に捕捉されるので、開口部Kから再度空気流路36に
異物が飛散するといった不具合の発生を確実に防止することができる。
【0051】
図5はヒーターユニット24の作用を説明するための図である。
ここで、開口部Kを規定する第2板金42の凸部43b上には、開口部K内に上手く引
き込まれなかった異物が付着する場合がある。これに対し、本実施形態に係るヒーターユ
ニット24はファンユニット45が本体部31に対して揺動可能に取り付けられているた
め、ファン35の駆動時に発生する振動によって、図5に示すようにファンユニット45
を構成する第2板金42が本体部31に対して揺動することなる。従って、第2板金42
に形成された凸部43bに付着した異物Iは振動によって開口部K内へと落下させること
ができる。
【0052】
以上のように、本実施形態によれば、吸入口33から空気流路36内に取り込んだ空気
中に異物が含まれている場合であっても、開口部Kを介して空間部39内に空気を取り込
むことで空気中に含まれる異物を概ね回収することができる。よって、ヒーター38によ
り暖められる空気中にはほとんど異物が含まれないため、吹出口34から連続紙Pの表面
に対して温風とともに吹きつけられる異物の量を大幅に低減することができる。
【0053】
なお、乾燥領域Dの上部(天井面)及び連続紙P搬送方向に沿った上流側と下流側の側
面は、ヒーターユニット24の下面31c及び駆動ローラー20a,21aにより覆われ
ているため、吹出口34から吹き出された温風が効率よく乾燥領域D内に滞留する。また
、乾燥領域D内では温風が上流側から下流側に向かって吹き出されることにより、下流側
に搬送される連続紙Pに対して広範囲且つ長時間にわたって温風が吹き付けられるため、
連続紙Pの表面に付着したインクの乾燥が促進される。そして、連続紙Pは、表面のイン
クが乾燥した状態で巻き取り部15に搬送されるとともに巻き取り軸22によって巻き取
られる。
【0054】
また、乾燥領域Dの上部全体がヒーターユニット24における本体部31の下面31c
により構成されるため、乾燥領域Dの上部に本体部31の下面31cと他の部材との隙間
等がない。したがって、温風が乾燥領域D外に漏れ出ることを抑制でき、乾燥領域におけ
る乾燥効率の低下を抑制することができる。
【0055】
また、ヒーターユニット24の上流側と下流側とに配設された搬送ローラー対20,2
1の駆動ローラー20a,21aとにより、乾燥領域Dにおける連続紙Pの搬送経路に沿
った上流側と下流側の領域が覆われるため、搬送経路に沿って温風が逃げることを抑制す
ることができる。したがって、乾燥領域における乾燥効率の低下をさらに抑制することが
できる。
【0056】
また、ヒーターユニット24は、搬送方向の下流側に向かって搬送される連続紙Pに対
して広範囲にわたって順風となるように温風を吹き付けることができる。したがって、乾
燥領域Dにおいて、連続紙Pを効率よく乾燥することができる。
【0057】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内
において適宜変更可能である。例えば、記録媒体は連続紙Pに限らず、連続フィルム等で
あってもよい。また、連続紙Pは搬送途中で所定の長さに切断されてもよい。さらに、記
録媒体は長尺状のものに限らず所定の大きさに形成された単票紙であってもよい。
【0058】
ヒーターユニット24は着脱可能なものに限らず、記録装置11の本体ケース12内に
固定して設けられていてもよい。記録ヘッド23はラインヘッドタイプに限らず、短尺の
記録ヘッドが連続紙Pの搬送方向と交差する方向に移動して連続紙Pの全幅に記録を行う
ようにしてもよい。
【0059】
温風の吹き出し方向は、連続紙Pにおける搬送方向の下流側に向かう斜め方向とは限ら
ず、例えば連続紙Pに対して鉛直方向下向きの方向であってもよい。駆動ローラー20a
,21aは長尺状のものに限らず、幅方向に複数に分割されたものを用いてもよい。また
、従動ローラー20b,21bがなくてもよい。さらに、乾燥領域Dに駆動ローラー20
a,21aを設けなくてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、記録装置をインクジェット式記録装置11に具体化したが、
インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする記録装置を採用してもよい。微小量の
液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお
、液滴とは、上記記録装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引
くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、記録装置が噴射させることができ
るような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、
粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹
脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、
顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合された
ものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインク
や液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジ
ェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。記録装置の
具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプ
レイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルターの製造などに用いられる電極材や色材など
の材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する記録装置、バイオチップ製造に用い
られる生体有機物を噴射する記録装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴
射する記録装置、捺染装置やマイクロディスペンサー等であってもよい。さらに、時計や
カメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する記録装置、光通信素子等に用いら
れる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液
を基板上に噴射する記録装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッ
チング液を噴射する記録装置を採用してもよい。そして、これらのうちいずれか一種の記
録装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0061】
S…連続紙(記録媒体)、K…開口部、S…隙間、11…記録装置、23…記録ヘッド、
24…ヒーターユニット(乾燥手段)、31…本体部、33…吸入口、34…吹出口(排
出口)、35…ファン(吸入手段)、36…空気流路、38…ヒーター(加熱手段)、3
9…空間部(空間)、41…第1板金(第1流路形成部材)、41c…傾斜面、42…第
2板金(第2流路形成部材)、44…フィルター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入口を介して空気を吸入する吸入手段と、
前記吸入手段により吸入された前記空気が流れる空気流路と、
前記空気流路の途中に配置されて前記空気を加熱する加熱手段と、
前記加熱手段により加熱された前記空気を前記空気流路の下流から排出する排出口と、
前記空気流路における鉛直方向下側の流路面に設けられた開口部と、を備えることを特
徴とするヒーターユニット。
【請求項2】
前記空気流路は、本体部に設けられた第1流路形成部材と、前記本体部に取り付けられ
る前記吸入手段に一体に設けられた第2流路形成部材とから構成されており、
前記開口部は前記第1流路形成部材及び前記第2流路形成部材における隙間から構成さ
れていることを特徴とする請求項1に記載のヒーターユニット。
【請求項3】
前記吸入手段は、前記本体部に対して揺動可能に取り付けられていることを特徴とする
請求項2に記載のヒーターユニット。
【請求項4】
前記開口部は、該開口部を介して前記空気流路から流れ込ませる空間に連通しているこ
とを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のヒーターユニット。
【請求項5】
前記空気流路は、前記開口部が設けられた前記流路面の下流側に、前記開口部の開口面
に対して鉛直方向上側に向かって傾斜する傾斜部を有することを特徴とする請求項1〜4
のいずれか一項に記載のヒーターユニット。
【請求項6】
記録媒体に対し流体を噴射する記録ヘッドと、前記記録媒体上の前記流体を乾燥させる
乾燥手段と、を有する記録装置であって、
前記乾燥手段として、請求項1〜5のいずれか一項に記載のヒーターユニットを有する
ことを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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