説明

ヒータ制御装置及び方法並びにプログラム

【課題】出力電力値を細やかに、かつ、精度よく制御すること。
【解決手段】PTC素子を有するPTCヒータを少なくとも2個備えるヒータユニットに適用されるヒータ制御装置であって、各前記PTCヒータに対応して設けられ、オンオフにより前記PTC素子の通電状態と非通電状態とを切り替える切替部と、前記ヒータユニットに対する要求電力値に対し、各前記PTC素子の通電状態と非通電状態との状態組み合わせパターンを規定したパターン情報22と、前記ヒータユニットに対する要求電力が、前記パターン情報で規定される前記要求電力値の中間値である場合に、一定周期内の平均電力が前記要求電力と一致する場合のオンオフ時間の割合に基づいて、前記PTC素子の通電状態と非通電状態との割合を制御する割合制御部20とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車載用PTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータに用いて好適なヒータ制御装置及び方法並びにプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、電気ヒータの一形態であるPTCヒータは、正温度特性を持つ抵抗素子であるPTC素子に直流電源を通電させることにより発熱を得る構造である。PTCヒータは、温度上昇に伴い抵抗値が急激に上昇するタイミングが存在し、単純な直流電源の通電により一定の温度を保持できるため制御構造が簡素化できる等の理由により広く使用されている(例えば、特許文献1)。従来は、PTCヒータに対応した複数のスイッチング素子のオンオフの組み合わせと、その組み合わせによって供給される出力電力とを対応づけた組合せ情報を設けておき、各スイッチング素子のオンオフを組合せ情報に基づいて制御することにより、PTCヒータは要求電力を満たすように駆動されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許2007−283790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の方法では、要求電力に対し、スイッチング素子のオンオフで規定される出力値の組み合わせパターンのうち、最も近い出力電力量を供給する組み合わせパターンを選定して通電していたので、出力電力は段階的に供給することしかできず、また、組み合わせパターンで規定される中間値の出力ができず、細やかな制御ができないという問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、出力電力値を細やかに制御することのできるヒータ制御装置及び方法並びにプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、PTC素子を有するPTCヒータを少なくとも2個備えるヒータユニットに適用されるヒータ制御装置であって、各前記PTCヒータに対応して設けられ、オンオフにより前記PTC素子の通電状態と非通電状態とを切り替える切替手段と、各前記PTC素子の通電状態と非通電状態との状態組み合わせパターンと、該状態組み合わせパターンにより供給される出力電力値とを対応付けたパターン情報と、前記ヒータユニットに対する要求電力が、前記パターン情報で規定された前記出力電力値の中間値である場合に、一定周期内の平均電力が前記要求電力と一致する場合のオンオフ時間の割合に基づいて、前記PTC素子の通電状態と非通電状態との割合を制御する割合制御手段とを具備するヒータ制御装置を提供する。
【0007】
このような構成によれば、各PTCヒータの通電と非通電との状態組み合わせパターンと、状態組み合わせパターンにより供給される出力電力値とが規定されたパターン情報に基づいて、各PTCヒータに対応して設けられた切替手段のオンオフが制御されることによりPTC素子の通電と非通電とが切り替えられ、要求電力を満たす電力を出力する。また、要求電力が、パターン情報で規定される出力電力値の中間値である場合には、一定周期のうち、要求電力と一定周期内の平均電力とが一致する時間だけ、PTC素子が通電状態に制御される。
このように、パターン情報で規定される段階的な出力電力値のみでなく、要求電力が出力電力値の中間値であっても、オンオフ時間の割合を制御することによって、ヒータユニットから出力される電力値を細やかに制御できる。
【0008】
上記ヒータ制御装置の前記割合制御手段は、前記切替手段の通電と非通電との切替によって生じるスイッチング損失が許容損失以下となる周期より大きく、かつ、前記PTCヒータの水温が目標温度に対して所定温度差以下となる条件を含む前記ヒータユニット全体の熱容量によって決定される周期よりも小さい周期を、前記切替手段の切替周期とすることが好ましい。
【0009】
制御性能は、周期が短いほど良いが、PTC素子内に存在するキャパシタンス成分によりサージ電流が発生し、そのサージ電流によりスイッチング損失が増大するため、極端に周期を短くすることができない。また、周期が長すぎる場合には、制御すべき水温が目標温度に対して上下する温度差が大きくなるので、制御するシステムの熱容量を考慮して、極端に周期を長くすることができない。本発明はこれらに対処するべく、スイッチング周期を、スイッチング損失以下となる周期より大きくし、かつ、PTCヒータの水温が目標温度に対して所定温度差以下となる条件を含むヒータユニット全体の熱容量によって決定される周期より小さくするので、ヒータユニットの効率を向上させることができる。
【0010】
上記ヒータ制御装置は、所定タイミングにおいて、現在の電流値と現在の電圧値とに基づいて実電力を算出し、要求電力と実電力との差分を現在の前記要求電力に加えた値を、次回の前記要求電力とすることとしてもよい。
このように、通電電力の要求電力に対する誤差分を、フィードバック制御により補正することにより、要求電力に対する出力精度を向上させることができる。
【0011】
上記ヒータ制御装置は、一定期間内における電力の積分値が、前記一定期間内で前記要求電力に基づいて算出される要求熱量を超過した場合に、前記一定期間の電力出力を停止することとしてもよい。
これにより、フィードバック制御なしに、要求電力に対する出力精度を向上させることができる。
【0012】
上記ヒータ制御装置において、複数の前記PTC素子のうち、消費電力が大きい前記PTC素子から順に、通電状態にする前記PTC素子として選定する選定手段を備えることが好ましい。
消費電力が大きいPTCヒータほど大きい突入電流が発生するので、消費電力の大きいPTCヒータから順に通電状態とすることで、例えば、順次通電していく中で最後に最大許容電流値を大幅に超過してしまう等の状況を防ぎ、電流値の目標値に対する上下変動(リップル)を小さくすることができる。
【0013】
本発明は、PTC素子を有するPTCヒータを少なくとも2個備えるヒータユニットに適用されるヒータ制御方法であって、各前記PTCヒータに対応して設けられ、オンオフにより前記PTC素子の通電状態と非通電状態とを切り替える切替過程と、前記ヒータユニットに対する要求電力が、各前記PTC素子の通電状態と非通電状態との状態組み合わせパターンと、該状態組み合わせパターンにより供給される出力電力値とを対応付けたパターン情報で規定された前記出力電力値の中間値である場合に、一定周期内の平均電力が前記要求電力と一致する場合のオンオフ時間の割合に基づいて、前記PTC素子の通電状態と非通電状態との割合を制御する割合制御過程とを有するヒータ制御方法を提供する。
【0014】
本発明は、PTC素子を有するPTCヒータを少なくとも2個備えるヒータユニットに適用されるヒータ制御プログラムであって、各前記PTCヒータに対応して設けられ、オンオフにより前記PTC素子の通電状態と非通電状態とを切り替える切替処理と、前記ヒータユニットに対する要求電力が、各前記PTC素子の通電状態と非通電状態との状態組み合わせパターンと、該状態組み合わせパターンにより供給される出力電力値とを対応付けたパターン情報で規定された前記出力電力値の中間値である場合に、一定周期内の平均電力が前記要求電力と一致する場合のオンオフ時間の割合に基づいて、前記PTC素子の通電状態と非通電状態との割合を制御する割合制御処理とをコンピュータに実行させるためのヒータ制御プログラムを提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、出力電力値を細やかに、かつ、精度よく制御できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るヒータ制御装置の概略構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る割合調整部が備える機能を展開して示した機能ブロック図である。
【図3】PTCヒータのオンオフ状態と出力電力との関係を示した一例である。
【図4】割合制御部によってPTCヒータの通電時間を制御することを示した一例である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係るヒータ制御装置の動作フローである。
【図6】本発明の第1の実施形態の変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係るヒータ制御装置及び方法並びにプログラムの実施形態について、図面を参照して説明する。
〔第1の実施形態〕
本実施形態において、PTC素子を有するPTCヒータを3個備えるヒータユニットが車載用PTCヒータである場合を想定し、本実施形態のヒータ制御装置が車載用PTCヒータに適用されることとして説明するが、これに限定されない。
図1は、車載用PTCヒータ1に適用したヒータ制御装置10の概略構成図である。
本実施形態においては、車載用PTCヒータ1は、3個のPTCヒータ2a,2b,2cを備えており、各PTCヒータ2a,2b,2cにはそれぞれPTC素子3a,3b,3cが設けられている。
【0018】
以下、特に明記しない場合には、PTCヒータはPTCヒータ2、PTC素子はPTC素子3として記述する。なお、本実施形態においては、車載用PTCヒータ1に設けられるPTCヒータは3個であることとして説明するが、PTCヒータの個数は特に限定されない。また、本実施形態においては、PTCヒータ2a,2b,2cの消費電力の大きさをそれぞれ2.0kW,1.0kW,2.0kWであることとして説明するが、PTCヒータの消費電力の大きさは特に限定されるものでなく、全てのPTCヒータがそれぞれ異なる消費電力であってもよい。
【0019】
図1に示されるように、PTCヒータ2の上流側はヒータ制御装置10を介して直流電源装置のプラス側である端子Aと接続され、下流側はヒータ制御装置10を介して直流電源装置のマイナス側である端子Bと接続されている。
ヒータ制御装置10は、割合調整部11、スイッチング素子(切替手段)12a,12b,12c、電流検出部13、及び電圧検出部14を備えている。以下特に明記しない場合には、スイッチング素子はスイッチング素子12として記述する。
【0020】
スイッチング素子12a,12b,12cは、それぞれPTCヒータ2a,2b,2cに対応づけて設けられている。また、スイッチング素子12は、割合調整部11と接続されており、割合調整部11から出力される制御信号に基づいて、PTCヒータ2a,2b,2cの通電と非通電とを切り替えるべくオンオフが制御される。
電流検出部13は、設けられた経路上の電流値を計測し、計測された電流値の情報を割合調整部11に出力する。
電圧検出部14は、直流電源装置のプラス側に設けられ、ヒータユニット1の電圧値を計測し、計測された電圧値の情報を割合調整部11に出力する。
【0021】
図2は、割合調整部11が備える機能を展開して示した機能ブロック図である。図2に示されるように、割合調整部11は、割合制御部(割合制御手段)20、選定部(選定手段)21、及びパターン情報22を備えている。
割合制御部20は、車載用PTCヒータ(ヒータユニット)1に対する要求電力が、パターン情報22で規定される出力電力値の中間値である場合に、一定周期内の平均電力が要求電力と一致する場合のオンオフ時間の割合に基づいて、PTC素子3の通電状態と非通電状態との割合を制御する。
【0022】
また、割合制御部20は、スイッチング素子12の通電と非通電との切替によって生じるスイッチング損失が許容損失以下となる周期より大きく、かつ、PTCヒータ2の水温が目標温度に対して所定温度差以下となる条件を含む車載用PTCヒータ全体の熱容量によって決定される周期よりも小さい周期を、スイッチング素子12の切替周期とし、この切替周期に基づいてスイッチング素子を制御する。
また、車載用PTCヒータ1に対する要求電力が、パターン情報22で規定される出力電力値である場合には、割合制御部20は、パターン情報22の出力電力値に対応するPTCヒータ2のオンオフの状態組み合わせパターン(詳細は後述する)に基づいて、PTC素子3の通電状態と非通電状態とを制御する。
【0023】
選定部21は、複数のPTCヒータ2を通電状態にする場合には、複数のPTC素子3のうち、消費電力が大きいPTC素子3から順に、通電状態にするPTC素子3として選定する。これは、消費電力が大きいPTCヒータほど大きい突入電流が発生するので、消費電力の大きいPTCヒータから順に通電状態とすることで、例えば、順次通電していく中で最後に最大許容電流値を大幅に超過してしまう等の状況を防ぎ、電流値の上下変動(リップル)を小さくすることができる。
【0024】
パターン情報22は、各PTC素子3の通電状態と非通電状態との状態組み合わせパターンと、状態組み合わせパターンにより供給される出力電力値とを対応付けている。具体的には、図3に示されるように、PTCヒータ2a,2b,2cのそれぞれのオンオフの状態組み合わせパターンと、状態組み合わせパターンに対応した出力電力の情報とが対応付けられている。図3においては、PTCヒータ2のオン状態を黒丸(●)印、オフ状態を白丸(○)印で示すこととし、例えば、PTCヒータ2bをオン状態にし、PTCヒータ2a及び2cをオフ状態にすることにより(パターン1)、1.0kWの出力電力を供給可能であることを示す。また、パターン番号は説明の便宜上、状態組み合わせパターンに割り振った通し番号である。
【0025】
ここで、例えば、要求電力が0.5〔kW〕である場合における割合制御部20の制御方法について説明する。図3に基づき、電力0.5〔kW〕は、全てオフ状態のパターン0(0〔kW〕)と、PTCヒータ2bをオン状態としPTCヒータ2a,2cをオフ状態としたパターン1(1〔kW〕)との中間値の電力である。また、パターン1を100パーセント(%)オン状態にすると1〔kW〕の電力が出力されることから、0.5〔kW〕は、周期Tの50%をオン状態にすれば電力出力が可能となる。つまり、例えばPTCヒータ2bの周期Tが20〔sec:秒〕である場合には、オン状態にする時間Ton=10〔sec〕とし、オフ状態にする時間Toff=10〔sec〕とする(図4参照)。
【0026】
このように、要求電力がパターン情報22で対応付けられた出力電力値の中間値である場合には、割合制御部20は、要求電力を超える電力を供給できる状態組み合わせパターンを選定するとともに、選定したパターンのオンオフ時間の割合を制御して、一定周期内の平均電力が要求電力と一致するようにPTC素子3の通電状態と非通電状態との割合を調整する。
【0027】
次に、上述したヒータ制御装置10における制御方法について、図1から図5を用いて説明する。
ヒータ制御装置10は、取得した要求電力値(例えば、2.5kW)の情報を、時刻T(0)における目標電力値とする(ステップSA1)。割合調整部20において、パターン情報22に基づいて、目標電力値の電力を出力できるPTCヒータ2のオンオフ状態の状態組み合わせパターンを決定する(ステップSA2)。決定された状態組み合わせパターンに基づいて、スイッチング素子12のオンオフ状態が制御され、PTC素子3の通電と非通電が制御される(ステップSA3)。
【0028】
目標電力値が、パターン情報22で示される出力電力値である場合には、出力電圧値に対応付けられたオンオフの状態組み合わせパターンに基づいてPTCヒータ2のオンオフが制御される。または、パターン情報22で示される出力電圧値の中間値である場合には、目標電力を超えて出力できるパターンのうち最も目標電力に近い電力値を供給できるパターンを選定するとともに、選定されたパターンのオン状態にするPTCヒータ2のオン時間とオフ時間との割合が調整されて、制御される。
【0029】
例えば、要求電力値である2.5kWを出力するには、2.5kWを供給でき、かつ、
2.5kWに最も近い電力値(3kW)を出力できる状態組み合わせパターンであるパターン3を選定する。つまり、図3に基づいてPTCヒータ2a,2bをオン状態、PTCヒータ2cをオフ状態とする組み合わせパターンを選定する。また、電力の大きなPTCヒータ2から順次オン状態にするので、PTCヒータ2aを1周期Tの100%の期間をオン状態にした後、PTCヒータ2bをオン状態にする。このとき、PTCヒータ2bは、1周期Tの100%の期間をオン状態にすると1〔kW〕出力されるので、オン状態にする時間Ton=50%に割合を調整し、1kWの50%の出力にするべくPTCヒータ2bを制御する。これにより、PTCヒータ2aによって2kW、及びPTCヒータ2bによって0.5kW出力されるので、合計2.5kWの電力が出力できる。
【0030】
電流検出部13により電流値が計測されるとともに、電圧検出部14により電圧値が計測され、電流値及び電圧値の情報はそれぞれヒータ制御装置10に出力される(ステップSA4)。取得した電流値及び電圧値の情報に基づいて、実電力が算出される(ステップSA5)算出された実電力と現在時刻T(n)の要求電力値との差分に対し、係数K(Kは0から1)を乗算し、現在時刻T(n)の目標電力値を加算したものを、次の時刻T(n+1)における目標電力値とする(ステップSA6)。次の時刻T(n+1)における目標電力値を算出すると、ステップSA2に戻り、処理を繰り返す。
【0031】
上述した実施形態に係るヒータ制御装置10においては、上記処理の全て或いは一部を別途ソフトウェアを用いて処理する構成としてもよい。この場合、ヒータ制御装置10は、CPU、RAM等の主記憶装置、及び上記処理の全て或いは一部を実現させるためのプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、CPUが上記記憶媒体に記録されているプログラムを読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、上述のヒータ制御装置と同様の処理を実現させる。
ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0032】
以上説明してきたように、本実施形態に係るヒータ制御装置10及び方法並びにプログラムによれば、各PTCヒータ2の通電と非通電との状態組み合わせパターンと、状態組み合わせパターンにより供給される出力電力値とが規定されたパターン情報22に基づいて、各PTCヒータ2に対応して設けられたスイッチング素子12のオンオフによってPTC素子3の通電と非通電とが切り替えられ、要求電力を満たす電力を出力する。また、要求電力が、パターン情報22で規定される出力電力値の中間値である場合には、一定周期内の平均電力が要求電力と一致する場合のオンオフ時間の割合に基づいて、PTC素子3の通電状態と非通電状態との割合を制御することにより、車載用PTCヒータ1から出力される電力値を無段階に制御できるので、細やかな制御ができる。さらに、PTC素子3のばらつきによる通電電力の誤差が含まれる場合や、時間の経過に伴い素子自体が温度により抵抗値が変わり、電流が変化するため出力電力の実現精度が悪化する場合であっても、フィードバック制御によって補正を加えることにより、出力精度を向上させて要求電力を満たすことができる。
【0033】
〔変形例〕
なお、本実施形態においては、ヒータ制御装置10が、PTC素子3のばらつきによって生じる通電電力の誤差をフィードバック制御により補正し、要求電力を満たすよう制御していたが、要求電力を満たすための制御方法はこれに限定されない。例えば、要求電力に対し、一定期間(例えば、T秒)内で必要とされる熱量Pc(単位はジュール〔J〕)を予め算出し、その一定期間内における電流値と電圧値との積分値が、上記熱量を超過したら、その区間の出力を止めるよう制御することとしてもよい。具体的には、図6に示されるように、電流検出部13によって検出された電流値Iと、電圧検出部14によって検出された電圧値Vとの積に基づいて算出される瞬時電力Pを時間積分し、予め算出した要求熱量Pc×Tに達した時点で通電を止め、1周期で必要なトータル熱量を制御する。このように、逐次電力を積分し、区間ごとに熱量を一定にすることにより、上述したフィードバック制御なしに要求電力を満たすことができる。
【符号の説明】
【0034】
2,2a,2b,2c PTCヒータ
3,3a,3b,3c PTC素子
10 ヒータ制御装置
11 割合調整部
12,12a,12b,12c スイッチング素子
20 割合制御部
21 選定部
22 パターン情報



【特許請求の範囲】
【請求項1】
PTC素子を有するPTCヒータを少なくとも2個備えるヒータユニットに適用されるヒータ制御装置であって、
各前記PTCヒータに対応して設けられ、オンオフにより前記PTC素子の通電状態と非通電状態とを切り替える切替手段と、
各前記PTC素子の通電状態と非通電状態との状態組み合わせパターンと、該状態組み合わせパターンにより供給される出力電力値とを対応付けたパターン情報と、
前記ヒータユニットに対する要求電力が、前記パターン情報で規定された前記出力電力値の中間値である場合に、一定周期内の平均電力が前記要求電力と一致する場合のオンオフ時間の割合に基づいて、前記PTC素子の通電状態と非通電状態との割合を制御する割合制御手段と
を具備するヒータ制御装置。
【請求項2】
前記割合制御手段は、前記切替手段の通電と非通電との切替によって生じるスイッチング損失が許容損失以下となる周期より大きく、かつ、前記PTCヒータの水温が目標温度に対して所定温度差以下となる条件を含む前記ヒータユニット全体の熱容量によって決定される周期よりも小さい周期を、前記切替手段の切替周期とする請求項1に記載のヒータ制御装置。
【請求項3】
所定タイミングにおいて、現在の電流値と現在の電圧値とに基づいて実電力を算出し、要求電力と実電力との差分を現在の前記要求電力に加えた値を、次回の前記要求電力とする請求項1または請求項2に記載のヒータ制御装置。
【請求項4】
一定期間内における電力の積分値が、前記一定期間内で前記要求電力に基づいて算出される要求熱量を超過した場合に、前記一定期間の電力出力を停止する請求項1から請求項3のいずれかに記載のヒータ制御装置。
【請求項5】
複数の前記PTC素子のうち、消費電力が大きい前記PTC素子から順に、通電状態にする前記PTC素子として選定する選定手段を備える請求項1から請求項4のいずれかに記載のヒータ制御装置。
【請求項6】
PTC素子を有するPTCヒータを少なくとも2個備えるヒータユニットに適用されるヒータ制御方法であって、
各前記PTCヒータに対応して設けられ、オンオフにより前記PTC素子の通電状態と非通電状態とを切り替える切替過程と、
前記ヒータユニットに対する要求電力が、各前記PTC素子の通電状態と非通電状態との状態組み合わせパターンと、該状態組み合わせパターンにより供給される出力電力値とを対応付けたパターン情報で規定された前記出力電力値の中間値である場合に、一定周期内の平均電力が前記要求電力と一致する場合のオンオフ時間の割合に基づいて、前記PTC素子の通電状態と非通電状態との割合を制御する割合制御過程と
を有するヒータ制御方法。
【請求項7】
PTC素子を有するPTCヒータを少なくとも2個備えるヒータユニットに適用されるヒータ制御プログラムであって、
各前記PTCヒータに対応して設けられ、オンオフにより前記PTC素子の通電状態と非通電状態とを切り替える切替処理と、
前記ヒータユニットに対する要求電力が、各前記PTC素子の通電状態と非通電状態との状態組み合わせパターンと、該状態組み合わせパターンにより供給される出力電力値とを対応付けたパターン情報で規定された前記出力電力値の中間値である場合に、一定周期内の平均電力が前記要求電力と一致する場合のオンオフ時間の割合に基づいて、前記PTC素子の通電状態と非通電状態との割合を制御する割合制御処理と
をコンピュータに実行させるためのヒータ制御プログラム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−37813(P2013−37813A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171154(P2011−171154)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】