説明

ヒートシンク固定構造および方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヒートシンク固定構造および方法に関し、特にMCM(multi−chip module)のプリント基板に搭載された複数のLSIに放熱シートを介して当接させられたヒートシンクを固定する構造および方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、MCMの放熱構造においてLSIからヒートシンクへの放熱は放熱シートを介し行うが、ヒートシンクと放熱シートとの接触状態を一定に保つため、MCMの実装部にばねを組み込み、ばねによってヒートシンクを一定の力でLSIに押し当て、放熱シートの圧縮歪みが一定に保たれるようにしていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、ヒートシンクをばねでLSIに押し付ける構造では、次のような問題点があった。
【0004】
第1の問題点は、ばねを組み込むためこれを保持する機構部品が必要であり、部品点数が増加する。また構造が複雑となり、小型化が困難である。
【0005】
第2問題点は、MCMの実装部に振動、衝撃が加わり、ばね力を超える力がヒートシンクに加わった場合に、ヒートシンクが移動してしまい、ヒートシンクと放熱シートとの接触状態が変化することがあった。
【0006】
本発明は、以上の問題点を解決するMCM等におけるヒートシンク固定構造を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明のヒートシンク固定構造は、基板(図1の5)と、この基板に搭載された集積回路装置(図1の4)と、前記基板に固定されたフランジ(図1の7)と、前記集積回路装置の上面に放熱シート(図1の6)を介して当接するヒートシンク(図1の1)と、前記ヒートシンクの側面の複数箇所に設けられた前記基板と平行な複数の高さ決めピン(図1の2)と、前記高さ決めピンが嵌合されるガイド穴(図1の11)が設けられ前記フランジに螺合する固定ねじ(図1の12)により前記フランジの側面に固定される複数のクランプ(図1の10)とを含み、前記ヒートシンクの前記高さ決めピンが設けられた2つの側面に挟まれた部分の長さが対応する前記クランプが固定された前記フランジの側面間の長さより小さく、前記クランプの前記固定ねじが挿通する開口部(図1の17)は前記固定ねじの外形に対し前記基板と垂直な方向に余裕があることを特徴とする。
【0008】
本発明のヒートシンク固定構造は、基板(図1の5)と、この基板に搭載された集積回路装置(図1の4)と、前記基板に固定されたフランジ(図1の7)と、前記集積回路装置の上面に放熱シート(図1の6)を介して当接するヒートシンク(図1の1)と、前記ヒートシンクの側面の複数箇所に設けられた前記基板と平行な複数の高さ決めピン(図1の2)と、前記高さ決めピンが嵌合されるガイド穴(図1の11)が設けられ前記フランジに螺合する固定ねじ(図1の12)により前記フランジの側面に固定される複数のクランプ(図1の10)と、前記フランジに固定され前記ヒートシンクに設けられたピン穴(図1R>1の3)に挿入された前記基板と垂直な方向の位置決めピン(図1の8)とを含み、前記ヒートシンクの前記高さ決めピンが設けられた側面が対応する前記クランプが固定された前記フランジの側面より後退して位置し、前記クランプの前記固定ねじが挿通する開口部(図1の17)は前記固定ねじの外形に対し前記基板と垂直な方向に余裕があることを特徴とする。
【0009】
上述のヒートシンク固定構造は、前記基板は長方形で、前記フランジは前記基板の周縁のみを覆う額縁状の枠で、前記ヒートシンクは長方形の底面の周縁を前記フランジに対向させるようにし、前記クランプは前記フランジの対向する側面それぞれに2つずつ固定され、前記高さ決めピンは前記クランプに対応して前記ヒートシンクの対向する側面に2つずつ設けられるようにし、前記基板には、前記集積回路装置が複数個、搭載されるようにすることもできる。
【0010】
本発明のヒートシンク固定方法は、上述のヒートシンク固定構造において、前記基板(図1R>1の5)に搭載された前記集積回路装置(図1の4)の上面に前記放熱シート(図1の6)を載せ、前記ヒートシンク(図1の1)を前記放熱シートを介して前記集積回路上に載せてから、前記ヒートシンクを前記集積回路に押しつけるように負荷した状態で前記ガイド穴に前記高さ決めピン(図1の2)を嵌合させて前記クランプ(図1の10)を前記固定ねじにより前記フランジ(図1の7)に固定することを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1および図2は、それぞれ本発明の実施の形態のMCMにおけるヒートシンク固定構造の分解斜視図および組み立てた斜視図である。図3は図1のAA断面図であり、図4は図2R>2のBB断面図である。
【0012】
プリント基板5に実装されるLSI4の上面には放熱シート6が取り付けられている。プリント基板5にねじ(図示略)で固定される金属製のフランジ7の上面には、2本の位置決めピン8が植設され、ヒートシンク1の底面に設けたピン穴3にピン8を挿通させてヒートシンク1を放熱シート6を介してLSI4上に載せる。
【0013】
ヒートシンク1は両側面に水平な高さ決めピン2を4本有し、ピン2はクランプ10が有するガイド穴11に嵌合される。クランプ10は、それぞれにおいて下辺に2つの縦方向に長い逆U字状の切り込み17を有し、切り込み17を挿通し、フランジ7の側面に設けられたタップ9に螺合するねじ12でフランジ7の側面に固定される。従って、ヒートシンク1は、フランジ7に対しクランプ10を介して両側部が縦方向に動かないように保持されている。
【0014】
図4に示すように示すように、ピン8とピン穴3の間にはクリアランス16を設けておく。またヒートシンク1の両側面間の幅14はフランジ7の両側面間の幅15より十分短くし、幅14と幅15の差よりクリアランス16を小さいものとしておき、位置決めピン8のフランジ7の両側辺に対する位置精度およびピン穴3のヒートシンク1の両側辺に対する位置精度を十分に出しておくことにより、ヒートシンク1の幅14等に製造時の寸法公差が発生した場合においてもクランプ10をフランジ7に固定したときに、クランプ10の側面とフランジ7の側面、すなわちクランプ10との間にはクリアランス18が確保され、クランプ10とヒートシンク1の側面が接触することはない。
【0015】
図4に示すように、クランプ10が有する切り込み17には、ねじ12の軸径に対し、縦方向の十分なクリアランス13を設けておき、ヒートシンク1に荷重16を加え放熱シート6の厚さが変化した場合においても、ねじ12でクランプ10をフランジ7に確実に固定する事ができるようにしておく。また、ヒートシンク1の底面は平面で、フランジ7の高さはLSI4の上面に載せられた放熱シート6の高さより十分に低くなるようにしておく。
【0016】
次に、発熱体であるLSI4からヒートシンク1までの熱の流れを説明する。ヒートシンク1は熱伝導効率の良い金属材料、例えばAlである。放熱シート6は、熱伝導効率が高い材料であり、LSI4で発生した熱は放熱シート6を介してヒートシンク1に伝わり、ヒートシンク1が有する複数のフィンにより外気に放熱される。
【0017】
次に、本実施の形態のヒートシンク固定構造の組立方法について図面を参照して説明する。
【0018】
図1に示すように、プリント基板5にLSI4を搭載し、フランジ7を固定し、LSI4に放熱シート6を載せたMCMの上に、位置決めピン8をピン穴3に差し込むようにしてヒートシンク1を載せる。このようにヒートシンク1の底面を放熱シート6に接触させた状態で、ヒートシンク1にLSI4に向け押し付ける一定の荷重を加えて、ヒートシンク1およびLSI4と放熱シート6との接触を一定の状態になるようにして、クランプ10をガイド穴11に高さ決めピン2を嵌合させてねじ12により、フランジ7の側面に固定する。高さ決めピン2はガイド穴11内を自由に摺動可能であり、ねじ12を締め付けてもクランプ10とヒートシンク1とは、クリアランス18が確保されているため、ねじ12の締め付け力がヒートシンク1に加わることはなく、ヒートシンク1に歪みが生じることはない。
【0019】
ねじ12によるクランプ10の固定後においては、ヒートシンク1はピン2がガイド穴11に嵌合されるためフランジ7に対し高さ方向において固定され、ヒートシンク1と放熱シート6の接触状態が変化することはない。
【0020】
なお、クランプ10のねじ12が挿通する部分は、切り込みでなく、長穴でもかまわない。
【0021】
また、ヒートシンク1の底面をフランジ7との接触部分より放熱シート6との接触部分を下へ突出するように段差を設ければ、放熱シート6をフランジ7より高くする必要はない。
【0022】
【発明の効果】
第1の効果は、構造が簡単で、ヒートシンクを集積回路装置上に固定する作業が容易であるということである。このため組立て作業には熟練の必要がなく、短時間で組立てることが可能である。
【0023】
第2の効果は、振動、衝撃が生じた場合においてもヒートシンクと集積回路装置との間の距離は、確実に一定に保たれるということである。このため、ヒートシンクおよび集積回路装置と放熱シートとの接触状態は常に一定に保たれる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態のヒートシンク固定構造の分解斜視図である。
【図2】図1に示すヒートシンク固定構造の組立後の斜視図である。
【図3】図1のAA断面図である。
【図4】図2のBB断面図である。
【符号の説明】
1 ヒートシンク
2 高さ決めピン
3 ピン穴
4 LSI
5 プリント基板
6 放熱シート
7 フランジ
8 位置決めピン
9 タップ
10 クランプ
11 ガイド穴
17 切り込み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、この基板に搭載された集積回路装置と、前記基板に固定されたフランジと、前記集積回路装置の上面に放熱シートを介して当接するヒートシンクと、前記ヒートシンクの側面の複数箇所に設けられた前記基板と平行な複数の高さ決めピンと、前記高さ決めピンが嵌合されるガイド穴が設けられ前記フランジに螺合する固定ねじにより前記フランジの側面に固定される複数のクランプとを含み、前記ヒートシンクの前記高さ決めピンが設けられた2つの側面に挟まれた部分の長さが対応する前記クランプが固定された前記フランジの側面間の長さより小さく、前記クランプの前記固定ねじが挿通する開口部は前記固定ねじの外形に対し前記基板と垂直な方向に余裕があることを特徴とするヒートシンク固定構造。
【請求項2】
基板と、この基板に搭載された集積回路装置と、前記基板に固定されたフランジと、前記集積回路装置の上面に放熱シートを介して当接するヒートシンクと、前記ヒートシンクの側面の複数箇所に設けられた前記基板と平行な複数の高さ決めピンと、前記高さ決めピンが嵌合されるガイド穴が設けられ前記フランジに螺合する固定ねじにより前記フランジの側面に固定される複数のクランプと、前記フランジに固定され前記ヒートシンクに設けられたピン穴に挿入された前記基板と垂直な方向の位置決めピンとを含み、前記ヒートシンクの前記高さ決めピンが設けられた側面が対応する前記クランプが固定された前記フランジの側面より後退して位置し、前記クランプの前記固定ねじが挿通する開口部は前記固定ねじの外形に対し前記基板と垂直な方向に余裕があることを特徴とするヒートシンク固定構造。
【請求項3】
前記基板は長方形で、前記フランジは前記基板の周縁のみを覆う額縁状の枠で、前記ヒートシンクは長方形の底面の周縁を前記フランジに対向させることを特徴とする請求項1または2に記載のヒートシンク固定構造。
【請求項4】
前記クランプは前記フランジの対向する側面それぞれに2つずつ固定され、前記高さ決めピンは前記クランプに対応して前記ヒートシンクの対向する側面に2つずつ設けられたことを特徴とする請求項3に記載のヒートシンク固定構造。
【請求項5】
前記基板には、前記集積回路装置が複数個、搭載されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のヒートシンク固定構造。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のヒートシンク固定構造において、前記基板に搭載された前記集積回路装置の上面に前記放熱シートを載せ、前記ヒートシンクを前記放熱シートを介して前記集積回路上に載せてから、前記ヒートシンクを前記集積回路に押し付けるように負荷した状態で、前記ガイド穴に前記高さ位置決めピンを嵌合させて前記クランプを前記固定ねじにより前記フランジに固定することを特徴とするヒートシンク固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【特許番号】特許第3564350号(P3564350)
【登録日】平成16年6月11日(2004.6.11)
【発行日】平成16年9月8日(2004.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−50635(P2000−50635)
【出願日】平成12年2月28日(2000.2.28)
【公開番号】特開2001−244668(P2001−244668A)
【公開日】平成13年9月7日(2001.9.7)
【審査請求日】平成13年1月15日(2001.1.15)
【出願人】(000168285)エヌイーシーコンピュータテクノ株式会社 (572)
【参考文献】
【文献】特開平04−186752(JP,A)
【文献】実開昭54−084063(JP,U)
【文献】特開平03−292799(JP,A)
【文献】実開昭64−006085(JP,U)
【文献】実開平03−077489(JP,U)
【文献】特開平03−250697(JP,A)