説明

ヒートポンプシステム

【課題】従来に比しさらに低コストかつ高効率運転が可能なヒートポンプシステムを提供すること。
【解決手段】圧縮機11と、圧縮機11に対して接続された状態と切断された状態とに切換可能なエンジン側クラッチ29を介して設けられるエンジン31と、エンジン31に対してエンジン側クラッチ29を介して設けられるとともに圧縮機11に対して接続される発電電動機35と、を備え、圧縮機11は、エンジン31のみによる運転と、発電電動機35のみによる運転と、エンジン11及び発電電動機35による運転とが可能であり、発電電動機35は、圧縮機11がエンジン31のみによる運転をしているときに、エンジン31の動力の一部を利用して発電機として機能させることができること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプシステムに関し、特にエンジンと電動機とによって圧縮機を駆動することができるヒートポンプシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気調和装置の室外機に設けられた圧縮機をエンジンの動力によって駆動させるヒートポンプシステムが知られている。このようなヒートポンプシステムにおいて、特に、1台の室外機に対して複数台の室内機が設置される場合には、室内機の稼働状態等によって空調負荷が様々に変化する。そのため、エンジンの回転数を制御することで圧縮機の負荷調整を図り、空調負荷に対応した運転をする必要がある。この場合、例えば、低負荷時においては、エンジンの回転数が低く制御されることにより、エンジンの燃費が低くなってしまうため、ヒートポンプシステムを高効率で運転させることが困難であった。
【0003】
そこで、例えば特許文献1には、圧縮機に対してエンジンと電動機とがそれぞれ駆動力伝達手段を介して接続されており、エンジンによる駆動と、電動機による駆動と、エンジン及び電動機による駆動とが駆動力伝達手段に設けられたクラッチの切換えによって可能であるヒートポンプシステムが開示されている。このようなヒートポンプシステムによれば、低負荷時には電動機のみで圧縮機を駆動し、高負荷時にはエンジン又はエンジンと電動機とによって圧縮機を駆動することができるため、高効率運転が実現できるものと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−221371号公報(段落0079〜0082、図18)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記に例示したヒートポンプシステムは、エンジンによる駆動と、電動機による駆動と、エンジン及び電動機による駆動とによって、全ての空調負荷の変化に対応するものであるため、さらなる高効率運転を求めた場合に限界があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記のような課題を解決することにより、従来に比しさらに低コストかつ高効率運転が可能なヒートポンプシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決するため、本発明によるヒートポンプシステムは、圧縮機と、該圧縮機に対して接続された状態と切断された状態とに切換可能なエンジン側クラッチを介して設けられるエンジンと、該エンジンに対して前記エンジン側クラッチを介して設けられるとともに前記圧縮機に対して接続される発電電動機と、を備え、前記圧縮機は、エンジンのみによる運転と、発電電動機のみによる運転と、エンジン及び発電電動機による運転とが可能であり、前記発電電動機は、前記圧縮機がエンジンのみによる運転をしているときに、エンジンの動力の一部を利用して発電機として機能させることができることを特徴とする。
また、前記圧縮機は、2台の圧縮機からなり、一方の圧縮機は前記発電電動機に対して接続された状態と切断された状態とに切換可能な圧縮機側クラッチを介して接続されていることを特徴とする。
また、低負荷状態においては、前記エンジン側クラッチを切断された状態にして前記発電電動機を電動機として機能させることで前記圧縮機を運転させ、前記低負荷状態より負荷の大きい第1の中負荷状態においては、前記エンジン側クラッチを接続された状態にして前記エンジンによって前記圧縮機を運転させるとともに、前記発電電動機を発電機として機能させることで前記エンジンの動力の一部を利用して発電を行い、前記第1の中負荷状態より負荷の大きい第2の中負荷状態においては、前記発電電動機の運転を停止した状態で前記エンジン側クラッチを接続された状態にして前記エンジンによって前記圧縮機を運転させ、前記第2の中負荷状態より負荷の大きい高負荷状態においては、前記エンジン側クラッチを接続された状態にして、前記エンジンと前記発電電動機とによって前記圧縮機を運転させる、制御手段を備えることを特徴とする。
また、前記制御手段は、前記発電電動機に対する電力の供給状況を監視する監視手段を備え、所定の水準より電力が不足していると判定される場合には、前記低負荷状態、第1の中負荷状態、第2の中負荷状態及び高負荷状態のいずれにおいても、前記エンジン側クラッチを接続された状態にして前記エンジンによって前記圧縮機を運転させるとともに、前記発電電動機を発電機として機能させることで前記エンジンの動力の一部を利用して発電を行うように選択することができることを特徴とする。
また、前記制御手段は、前記第2の中負荷状態である場合に、前記エンジン側クラッチを接続された状態にして前記エンジンによって前記圧縮機を運転させるとともに、前記発電電動機を発電機として機能させることで前記エンジンの動力の一部を利用して発電を行うことに代えて、前記発電電動機の運転を停止した状態で前記エンジン側クラッチを接続された状態にして前記エンジンによって前記圧縮機を運転させ、前記高負荷状態である場合に、前記エンジン側クラッチを接続された状態にして前記エンジンによって前記圧縮機を運転させるとともに、前記発電電動機を発電機として機能させることで前記エンジンの動力の一部を利用して発電を行うことに代えて、前記エンジン側クラッチを接続された状態にして、前記エンジンと前記発電電動機とによって前記圧縮機を運転させるように選択することができることを特徴とする。
また、前記制御手段は、前記監視手段によって、所定の水準より電力に余剰があると判定される場合には、前記低負荷状態において、前記エンジン側クラッチを切断された状態にして前記発電電動機を電動機として機能させることで前記圧縮機を運転させ、前記第1の中負荷状態、第2の中負荷状態及び高負荷状態においては、前記エンジン側クラッチを接続された状態にして、前記エンジンと前記発電電動機とによって前記圧縮機を運転させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、従来に比しさらに低コストかつ高効率運転が可能なヒートポンプシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(a)本発明の一実施の形態によるヒートポンプシステムの概略を示す模式図である。(b)ヒートポンプシステムにおける圧縮機の駆動系統を示す模式図である。
【図2】圧縮機の制御パターンを示す表である。
【図3】圧縮機の制御パターンを示す表である。
【図4】(a)圧縮機の駆動系統を示す平面模式図である(変形例1)。(b)(a)における圧縮機の駆動系統を示す立面模式図である。
【図5】(a)圧縮機の駆動系統を示す平面模式図である(変形例2)。(b)(a)における圧縮機の駆動系統を示す立面模式図である。
【図6】(a)圧縮機の駆動系統を示す平面模式図である(変形例3)。(b)(a)における圧縮機の駆動系統を示す立面模式図である。
【図7】(a)圧縮機の駆動系統を示す平面模式図である(変形例4)。(b)(a)における圧縮機の駆動系統を示す立面模式図である。
【図8】(a)圧縮機の駆動系統を示す平面模式図である(変形例5)。(b)(a)における圧縮機の駆動系統を示す立面模式図である。
【図9】(a)圧縮機の駆動系統を示す平面模式図である(変形例6)。(b)(a)における圧縮機の駆動系統を示す立面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る実施の形態について図面を参照しながら具体的に説明する。便宜上、同一の構成要素には同一の符号を付け、その説明を省略する。なお、本発明は、エンジンと発電電動機とによって圧縮機が運転されるヒートポンプシステムに広く適用可能であるが、ここではエンジンとしてガスを燃料とするガスエンジンが用いられるヒートポンプシステムに適用した場合の一例について説明する。
【0011】
図1(a)、(b)に示されるように、ヒートポンプシステム1は、第1の圧縮機11a及び第2の圧縮機11b(総称するときは「圧縮機11」とする)と、これらが並列に接続され室外空気と冷媒とを熱交換させる室外熱交換器13と、室内空気と冷媒とを熱交換させる室内熱交換器15と、によって構成されるヒートポンプ回路10を備えている。なお、室外熱交換器13には室外機ファン(図示省略)が付設されている。例えば、図示例におけるヒートポンプ回路10は、圧縮機11の吐出口側に設けられた四方弁14を切り替えることで冷暖房の切換を行うものである。冷房時には、圧縮機11の吐出口から吐出された冷媒が室外熱交換器13に流入するように四方弁が切り替えられ(実線で示す)、この室外熱交換器13を通った冷媒が膨張弁16を介して室内熱交換器に流入し、さらに四方弁14を介して圧縮機11の吸入口に戻るように接続される。そして、暖房時には、圧縮機11の吐出口から吐出された冷媒が室内熱交換器15に流入するように四方弁が切り替えられ(破線で示す)、この室内熱交換器15を通った冷媒が膨張弁16を介して室外熱交換器に流入し、さらに四方弁14を介して圧縮機11の吸入口に戻るように接続される。なお、圧縮機11が2台で構成されている例を示しているが、これに限定されるものでなく、1台のみで構成されるものでも、3台以上で構成されるものであっても構わない。
【0012】
このようなヒートポンプ回路10における圧縮機11の駆動は、原動機による動力がプーリー、ベルト、クラッチ等の動力伝達部によって伝達されることでなされる。第1及び第2の圧縮機11a,11bには、接続された状態と切断された状態とに切換可能な圧縮機側クラッチ21a,21b(総称するときは「圧縮機側クラッチ21」とする)を介して、それぞれ圧縮機側プーリー23a,23b(総称するときは「圧縮機側プーリー23」とする)が接続されている。この圧縮機側プーリー23にはベルト25が掛け回されており、このベルト25は、エンジン側プーリー27にも掛け回されている。エンジン側プーリー27は、接続された状態と切断された状態とに切換可能なエンジン側クラッチ29を介してガスエンジン31に対して接続される。そして、エンジン側プーリー27には、ベルト25が掛け回されているプーリー溝27aとは別に、これより径の小さなプーリー溝27bが設けられており、このプーリー溝27bに掛け回されるベルト33が発電電動機35に接続されている。なお、エンジン側クラッチ29及び圧縮機側クラッチ21は、例えば電磁クラッチが用いられるものであるが、これに限定されるものではない。
【0013】
ガスエンジン31及び発電電動機35の駆動制御並びにエンジン側クラッチ29及び圧縮機側クラッチ21の接続制御は、制御装置40によって行われている。制御装置40は、発電電動機35に電力を供給する電源回路45に接続されており、電源回路45を介して電力系統Gから電力が供給されている。そして、電源回路45では、電力系統Gにおける電力の供給状況を信号として制御装置40に送出している。この信号は、例えば、通常の電力供給状況であることを示す「通常電力信号」、電力が不足している状況であることを示す「電力不足信号」、電力が余っている状況であることを示す「余剰電力信号」の3種類によって構成される。なお、電力の供給状況(3種類の信号)は、電力を供給する電力会社から送信される構成でも構わないし、電力系統の周波数を検知し、検知された周波数と定格周波数とを比較することで導出するものとしても構わない。
【0014】
このように構成されることにより、エンジン側クラッチ29が切断された状態で、圧縮機側クラッチ21を接続し、発電電動機35を電動機として機能させることで圧縮機11を運転させる「電動機駆動モード」と、エンジン側クラッチ29が接続された状態で圧縮機側クラッチ21を接続し、ガスエンジン31によって圧縮機11を運転させるとともに、発電電動機35を発電機として機能させることでガスエンジン31の動力の一部を利用して発電を行う「エンジン発電モード」と、発電電動機35の電源が切られた状態でエンジン側クラッチ29及び圧縮機側クラッチ21を接続し、ガスエンジン31によって圧縮機11を運転させる「エンジン駆動モード」と、エンジン側クラッチ29及び圧縮機側クラッチ21が接続された状態にして、ガスエンジン31と発電電動機35とによって圧縮機11を運転させる「エンジン電動モード」と、による運転が可能となる。
【0015】
実施例では、電動機駆動モード、エンジン発電モード、エンジン駆動モード及びエンジン電動モードの切換が制御装置40によって制御されるものである。通常の電力供給状況である場合における制御装置40による制御パターンを図2に示す。実施例では、空調負荷を0〜100%で表し、空調負荷が0〜Q1%として定義される負荷が最も低い状態の「低負荷状態」と、空調負荷がQ1〜Q2%として定義され、負荷が低負荷より大きな状態の「第1の中負荷状態」と、空調負荷がQ2〜Q3%として定義され、負荷が第1の中負荷状態より大きな状態の「第2の中負荷状態」と、空調負荷がQ3〜100%として定義される負荷が最も高い状態の「高負荷状態」とに負荷状態を分類している。なお、Q1〜Q3は、使用されるガスエンジン31及び発電電動機35の容量(性能)によって決定されるものである。また、1台の圧縮機11bのみで空調負荷に対応できる場合には、圧縮機側クラッチ21aを切断するとともに圧縮機側クラッチ21bを接続することで、圧縮機11bのみを運転させるものである。実施例においては、例えば、「低負荷状態」及び「第1の中負荷状態」の場合に、1台の圧縮機11bのみの運転となる場合がある。
【0016】
制御装置40によって空調負荷が「低負荷状態」であると判定される場合には、電動機駆動モードが選択される。このモードでは、ガスエンジン31が停止され、発電電動機35が電動機として機能するため、圧縮機11は発電電動機35のみによって駆動され、ガスエンジン31を燃費が低い領域で運転させることがない。
【0017】
次に、制御装置40によって空調負荷が「第1の中負荷状態」であると判定される場合には、エンジン発電モードが選択される。このモードでは、ガスエンジン31が駆動され、発電電動機35が発電機として機能するため、圧縮機11はガスエンジン31のみによって駆動され、ガスエンジン31の動力のうち圧縮機11の運転に必要とされない一部が、発電に利用される。
【0018】
次に、制御装置40によって空調負荷が「第2の中負荷状態」であると判定される場合には、エンジン駆動モードが選択される。このモードでは、ガスエンジン31が駆動され、発電電動機35が停止されるため、圧縮機11はガスエンジン31のみによって駆動される。実施例では、ガスエンジン31の容量は、この第2の中負荷状態に合わせて設計されるものである。
【0019】
次に、制御装置40によって空調負荷が「高負荷状態」であると判定される場合には、エンジン電動モードが選択される。このモードでは、ガスエンジン31が駆動され、発電電動機35が電動機として機能するため、圧縮機11はガスエンジン31及び圧縮機11によって駆動される。このように、高負荷状態では圧縮機11の駆動に際し発電電動機35の補助があるため、ガスエンジン31を小型化することが可能となる。
【0020】
また、制御パターンは、電力系統Gにおける電力の供給状況に応じて変更される構成とすることができる。電力系統Gの状況に応じた制御パターンを図3に示す。まず、制御装置40に対して、通常の電力供給状況であることを示す通常電力信号が入力された場合には、上述と同じように制御されるものであるため、説明を省略する。
【0021】
次に、制御装置40に対して、電力が不足している状況であることを示す電力不足信号が入力されている場合について説明する。制御装置40によって空調負荷が「低負荷状態」及び「第1の中負荷状態」であると判定される場合には、エンジン発電モードが選択される。そして、ガスエンジン31によって圧縮機11が運転されるとともに、ガスエンジン31の動力の一部が発電に利用され、発電された電力のうち室外機ファン等の補機に使用する電力を除いた電力が電力系統に回帰する。
【0022】
次に、制御装置40によって空調負荷が「第2の中負荷状態」であると判定される場合には、エンジン発電モード又はエンジン駆動モードが選択される。エンジン発電モードとエンジン駆動モードとのいずれが選択されるかは、使用者が予め設定しておくことができるものであり、電力系統の安定性の向上に対してより多く貢献したい場合には、エンジン発電モードが選択されるように、空調能力を優先したい場合には、エンジン駆動モードが選択されるようにすることができる。
【0023】
エンジン発電モードが選択された場合には、ガスエンジン31によって圧縮機11が運転されるとともに、ガスエンジン31の動力の一部が発電に利用され、発電された電力のうち室外機ファン等の補機に使用する電力を除いた電力が電力系統に回帰することになるため、電力系統の安定化に貢献できるものの、本来必要とされる空調能力より低い出力しか得ることができず、空調能力が制限されるものである。一方、エンジン駆動モードが選択された場合には、通常通りの運転となり、圧縮機11の駆動には電力系統の電力を使用しないことで系統安定化に貢献しながら、必要とされる空量能力を得ることができるものである。
【0024】
次に、制御装置40によって空調負荷が「高負荷状態」であると判定される場合には、エンジン発電モード又はエンジン電動モードが選択される。この場合も、「第2の中負荷状態」と同様、エンジン発電モードとエンジン駆動モードとのいずれが選択されるかは、使用者が予め設定しておくことができるものであり、電力系統の安定性の向上に対してより多く貢献したい場合には、エンジン発電モードが選択されるように、空調能力を優先したい場合には、エンジン電動モードが選択されるようにすることができる。
【0025】
エンジン発電モードが選択された場合には、ガスエンジン31によって圧縮機11が運転されるとともに、ガスエンジン31の動力の一部が発電に利用され、発電された電力のうち室外機ファン等の補機に使用する電力を除いた電力が電力系統に回帰することになるため、電力系統の安定化に貢献できるものの、本来必要とされる空調能力より低い出力しか得ることができず、空調能力が制限されるものである。一方、エンジン電動モードが選択された場合には、通常通りの運転となり、圧縮機11の駆動には電力系統の電力を使用しないことで系統安定化に貢献しながら、必要とされる空調能力を得ることができるものである。
【0026】
なお、「高負荷状態」であると判定された場合は、さらにエンジン駆動モードも選択可能であるようにしても構わない。エンジン駆動モードが選択された場合には、エンジン発電モードが選択されたときの空調能力の制限より緩やかな制限がかかるに留まるが、圧縮機11の駆動には電力系統の電力を使用しないことで系統安定化に貢献するものである。
【0027】
次に、制御装置40に対して、電力が余っている状況であることを示す余剰電力信号が入力された場合について説明する。この場合には、電力系統における余剰電力を消費するようにモードが選択されることで、電力系統の安定化に貢献するものである。まず、制御装置40によって空調負荷が「低負荷状態」であると判定される場合には、通常通り、電動機モードが選択される。
【0028】
次に、制御装置40によって空調負荷が「第1の中負荷状態」、「第2の中負荷状態」及び「高負荷状態」であると判定される場合には、いずれも、エンジン電動モードが選択され、ガスエンジン31及び発電電動機35によって圧縮機11が運転される。なお、「第1の中負荷状態」及び「第2の中負荷状態」(特に第1の中負荷状態)においては、ガスエンジン31のみの動力によって圧縮機11を運転することができるが、余剰電力信号が入力されている場合には、発電電動機35を優先的に電動機として機能させることにより、ガスエンジン31を補助的に使用するものである。
【0029】
このように実施例によれば、電力系統が不足していると判断される場合には、ガスエンジン31によって圧縮機11が運転されることをベースとするため、圧縮機11の駆動に利用されなかった動力によって発電を行うことができ、この電力のうち室外機ファン等の補機に使用する電力を除いた電力を電力系統に回帰させることで、電力系統の安定化に貢献することができる。
【0030】
また、電力系統において余剰電力がある場合には、電動機としての発電電動機35によって圧縮機11が運転されることをベースとし、ガスエンジン31はその補助として使用されるため、余剰電力を優先的に利用することとなり、電力系統の安定化に貢献することができる。
【0031】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、圧縮機11、ガスエンジン31及び発電電動機35の構成については、上記構成に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例がある。
【0032】
図4に変形例1を示す。第1の圧縮機11aには接続された状態と切断された状態とに切換可能な圧縮機側クラッチプーリー121が、第2の圧縮機11bには圧縮機側プーリー123が接続されている。この圧縮機側クラッチプーリー121及び圧縮機側プーリー123にはベルト125が掛け回されており、このベルト125は、接続された状態と切断された状態とに切換可能なエンジン側クラッチプーリー127にも掛け回されている。エンジン側クラッチプーリー127は、一方のクラッチ片がガスエンジン31に対して、他方のクラッチ片がプーリー128に接続される。そして、プーリー128にはベルト133が巻き回されており、このベルト133が発電電動機35に接続されたプーリー135に掛け回されている。
【0033】
図5に変形例2を示す。第1の圧縮機11aには接続された状態と切断された状態とに切換可能な圧縮機側クラッチプーリー221が、第2の圧縮機11bには圧縮機側プーリー223が接続されている。この圧縮機側クラッチプーリー221及び圧縮機側プーリー223にはベルト225が掛け回されており、このベルト225は、接続された状態と切断された状態とに切換可能なエンジン側クラッチプーリー227にも掛け回されている。圧縮機側プーリー223にはプーリー228が接続されており、プーリー228と発電電動機35に接続されたプーリー235とにベルト233が掛け回されている。
【0034】
図6に変形例3を示す。第1の圧縮機11aには接続された状態と切断された状態とに切換可能な圧縮機側クラッチプーリー321が、第2の圧縮機11bには圧縮機側プーリー323が接続されている。この圧縮機側クラッチプーリー321及び圧縮機側プーリー323にはベルト325が掛け回されており、このベルト325は、発電電動機35に接続されたプーリー335にも掛け回されている。プーリー335には接続された状態と切断された状態とに切換可能なクラッチプーリー327が接続され、このクラッチプーリー327とガスエンジン31に接続されたエンジン側プーリー331とにベルト333が掛け回されている。
【0035】
図7に変形例4を示す。第1の圧縮機11aには接続された状態と切断された状態とに切換可能な圧縮機側クラッチプーリー421が、第2の圧縮機11bには圧縮機側プーリー423が接続されている。この圧縮機側クラッチプーリー421及び圧縮機側プーリー423にはベルト425が掛け回されており、このベルト425は、発電電動機35に接続されたプーリー435にも掛け回されている。プーリー435にはプーリー428が接続されており、プーリー428とガスエンジン31に接続されたエンジン側クラッチプーリー427とにベルト433が掛け回されている。
【0036】
図8に変形例5を示す。第1の圧縮機11aには接続された状態と切断された状態とに切換可能な圧縮機側クラッチプーリー521が、第2の圧縮機11bには圧縮機側プーリー523が接続されている。この圧縮機側クラッチプーリー521及び圧縮機側プーリー523にはベルト525が掛け回されており、このベルト525は、発電電動機35に接続されたプーリー535にも掛け回されている。圧縮機側プーリー523にはプーリー528が接続されており、プーリー528とガスエンジン31に接続されたエンジン側クラッチプーリー527とにベルト533が掛け回されている。
【0037】
図9に変形例6を示す。第1の圧縮機11aには接続された状態と切断された状態とに切換可能な圧縮機側クラッチプーリー621が、第2の圧縮機11bには圧縮機側プーリー623が接続されている。この圧縮機側クラッチプーリー621及び圧縮機側プーリー623にはベルト625が掛け回されており、このベルト625は、発電電動機35に接続されたプーリー635にも掛け回されている。圧縮機側プーリー623には、接続された状態と切断された状態とに切換可能なクラッチプーリー627が接続され、このクラッチプーリー627とガスエンジン31に接続されたエンジン側プーリー631とにベルト633が掛け回されている。
【0038】
このように、圧縮機11、ガスエンジン31及び発電電動機35の構成は、電動機駆動モード、エンジン発電モード、エンジン駆動モード及びエンジン電動モードによる運転が切り替え可能であれば、様々な形態を採用することができる。なお、これらの変形例1乃至6においては、2第の圧縮機のうちで第1の圧縮機11a側のみにクラッチプーリーが接続されている。これにより、一方の圧縮機は常に発電電動機と接続されている状態となるが、例えばエンジン駆動モードでは、発電電動機を停止させているため、支障はないものである。
【符号の説明】
【0039】
1 ヒートポンプシステム
11 圧縮機
29 エンジン側クラッチ
31 エンジン
35 発電電動機


【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と、
該圧縮機に対して接続された状態と切断された状態とに切換可能なエンジン側クラッチを介して設けられるエンジンと、
該エンジンに対して前記エンジン側クラッチを介して設けられるとともに前記圧縮機に対して接続される発電電動機と、を備え、
前記圧縮機は、エンジンのみによる運転と、発電電動機のみによる運転と、エンジン及び発電電動機による運転とが可能であり、
前記発電電動機は、前記圧縮機がエンジンのみによる運転をしているときに、エンジンの動力の一部を利用して発電機として機能させることができることを特徴とするヒートポンプシステム。
【請求項2】
前記圧縮機は、2台の圧縮機からなり、
一方の圧縮機は、前記発電電動機に対して接続された状態と切断された状態とに切換可能な圧縮機側クラッチを介して接続されていることを特徴とする請求項1記載のヒートポンプシステム。
【請求項3】
低負荷状態においては、前記エンジン側クラッチを切断された状態にして前記発電電動機を電動機として機能させることで前記圧縮機を運転させ、
前記低負荷状態より負荷の大きい第1の中負荷状態においては、前記エンジン側クラッチを接続された状態にして前記エンジンによって前記圧縮機を運転させるとともに、前記発電電動機を発電機として機能させることで前記エンジンの動力の一部を利用して発電を行い、
前記第1の中負荷状態より負荷の大きい第2の中負荷状態においては、前記発電電動機の運転を停止した状態で前記エンジン側クラッチを接続された状態にして前記エンジンによって前記圧縮機を運転させ、
前記第2の中負荷状態より負荷の大きい高負荷状態においては、前記エンジン側クラッチを接続された状態にして、前記エンジンと前記発電電動機とによって前記圧縮機を運転させる、制御手段を備えることを特徴とする請求項1又は2記載のヒートポンプシステム。
【請求項4】
前記制御手段は、前記発電電動機に対する電力の供給状況を監視する監視手段を備え、
所定の水準より電力が不足していると判定される場合には、
前記低負荷状態、第1の中負荷状態、第2の中負荷状態及び高負荷状態のいずれにおいても、前記エンジン側クラッチを接続された状態にして前記エンジンによって前記圧縮機を運転させるとともに、前記発電電動機を発電機として機能させることで前記エンジンの動力の一部を利用して発電を行うように選択することができることを特徴とする請求項3記載のヒートポンプシステム。
【請求項5】
前記制御手段は、
前記第2の中負荷状態である場合に、
前記エンジン側クラッチを接続された状態にして前記エンジンによって前記圧縮機を運転させるとともに、前記発電電動機を発電機として機能させることで前記エンジンの動力の一部を利用して発電を行うことに代えて、
前記発電電動機の運転を停止した状態で前記エンジン側クラッチを接続された状態にして前記エンジンによって前記圧縮機を運転させ、
前記高負荷状態である場合に、
前記エンジン側クラッチを接続された状態にして前記エンジンによって前記圧縮機を運転させるとともに、前記発電電動機を発電機として機能させることで前記エンジンの動力の一部を利用して発電を行うことに代えて、
前記エンジン側クラッチを接続された状態にして、前記エンジンと前記発電電動機とによって前記圧縮機を運転させるように選択することができることを特徴とする請求項4記載のヒートポンプシステム。
【請求項6】
前記制御手段は、前記監視手段によって、所定の水準より電力に余剰があると判定される場合には、
前記低負荷状態において、前記エンジン側クラッチを切断された状態にして前記発電電動機を電動機として機能させることで前記圧縮機を運転させ、
前記第1の中負荷状態、第2の中負荷状態及び高負荷状態においては、前記エンジン側クラッチを接続された状態にして、前記エンジンと前記発電電動機とによって前記圧縮機を運転させることを特徴とする請求項3乃至5のいずれか記載のヒートポンプシステム。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−225556(P2012−225556A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92733(P2011−92733)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)