説明

ヒートポンプ式給湯機

【課題】 二酸化炭素冷媒を吸収圧縮する電動圧縮機の冷凍機油の油戻り性を確保でき、かつ電動圧縮機の漏れ電流を許容値以下に抑える。
【解決手段】 二酸化炭素冷媒を吸収圧縮する密閉型電動圧縮機1A、1Bに用いる冷凍機油として、複数の油を混合して誘電率が最大3.0となるように調整し、二酸化炭素と程好い相溶性を有する冷凍機油を用いることにより、非相溶性の冷凍機油を単独で用いた場合の問題であった圧縮機への油戻り性を確保して圧縮機摺動部における摩耗を防止するとともに、相溶性の冷凍機油を単独で用いた場合の問題であった電動圧縮機の漏れ電流を法定の許容値以下に抑える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプ式給湯機に係り、具体的には、二酸化炭素冷媒を用いた冷凍サイクルの密閉型電動圧縮機に用いる冷凍機油の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、冷凍サイクルに用いる冷媒として、地球環境保全、不燃性、低毒性といった観点から、自然冷媒である二酸化炭素(CO2)が注目されている。この二酸化炭素冷媒を適用可能な製品としては、ヒートポンプ式給湯機の他に、電動カーエアコン、寒冷地用暖房機器、自動販売器などが挙げられる。
【0003】
また、地球環境問題の観点から更なる省エネルギー化及び高効率化が要求され、二酸化炭素冷媒を用いたヒートポンプ式給湯機が用いられている。このヒートポンプ式給湯機によれば、一般家庭用給湯機の主流であるガス式と比べてランニングコストが約1/5と低く、電気温水器と比べても成績係数(COP:Coefficient of Performance)が3.0以上の高効率化が可能であるという利点がある。また、ヒートポンプ式給湯機の冷媒として、HFC(Hydro Fluoro Carbons)を適用すると、冷媒の熱物性から最高で約60℃の給湯しかできず、また高出力の圧縮機が必要となるのに対し、二酸化炭素冷媒を用いたヒートポンプ式給湯機の場合は、冷媒の熱物性から約90℃の出湯も可能である。
【0004】
ここで、ヒートポンプ式給湯機には2通りの給湯方式があり、一つは、深夜電力を利用してヒートポンプサイクルを稼動し、家庭が一日で使用するお湯をタンクに貯めておく貯湯方式である。他の一つは、お湯を使用する度に、ヒートポンプサイクルを起動して必要量だけ給湯する瞬間式である。この瞬間式の場合、ヒートポンプサイクルによって実際に給湯可能になるまでの間の給湯を賄う、補助的な小容量の貯湯タンクは必要である。一般には、貯湯方式が主流であるが、貯湯タンクの容量によってお湯の使用量が制限されるため、大容量の貯湯タンクが必要となり、ヒートポンプサイクルユニット内に貯湯タンクを収納できず、別に貯湯タンクユニットが必要になることから、設置スペースが広くなるとともに、重量が重くなってしまう等の問題がある。これに対して、瞬間式の場合では高出力の圧縮機が必要となる問題があるが、その都度運転して給湯するので湯切れの心配もなく、補助的な小容量の貯湯タンクで済む。そのため、ヒートポンプサイクルユニット内に貯湯タンクを納めることができ、設置スペースが小さく、かつ軽量にすることができるから、マンション等の集合住宅といった狭いスペースにも設置し易い。また、貯湯方式と比べ稼働時間が大幅に少なくなるので、COPも向上し、更なる省エネルギー化が図れる等の利点がある。
【0005】
ところで、冷凍サイクルの圧縮機においては、摺動部の潤滑、密封、冷却等のために、一般に、圧縮機の冷凍機油を冷媒中に封入して用いられる。しかし、二酸化炭素冷媒を用いた冷凍サイクルにおける圧縮機の圧縮条件は、高温(120〜130℃)、高圧(約15MPa)であることから、適用する冷凍機油の使用条件も厳しいものとなる。そのため、圧縮機の信頼性確保の面から潤滑性、更には省エネルギー化、高効率化に対応することができる性状の冷凍機油が要求されている。また、電動圧縮機の絶縁材には、エステル系絶縁フィルム(主に耐熱PET:Poly Ethylene Terephtalate
)が使用されていることから、系内に水分が多量に存在すると炭酸水素イオンとプロトンを生成するため、従来のHFC冷媒雰囲気よりも劣化が著しいので、吸水性の低い冷凍機油が好ましい。
【0006】
二酸化炭素を冷媒とするヒートポンプ式給湯機に採用されている冷凍機油は、特許文献1に記載されているように、冷媒との相溶性や熱化学安定性が優れるということから、両末端がアルキル化されたポリアルキレングリコール油が主流である。しかし、ポリアルキレングリコール油は、電気絶縁油としての体積抵抗率が規格(1013Ω・cm)を大きく下回り、更に誘電率εが非常に高い(ε=約5.0)ため、電動圧縮機の稼動時における漏れ電流が増大し、電気用品安全法により定められた漏れ(リーク)電流の許容値(1.0mA以下)を満足することが難しいという問題がある。なお、電気用品安全法は、電気用品の製造、輸入、販売等を規制するとともに、電気用品の安全性の確保につき民間事業者の自主的な活動を促進することにより、電気用品による危険及び障害の発生を防止することを目的とする法律である。ところで、電動圧縮機の稼動時における漏れ電流は、電動機の回転数に相関して増大することが知られており、瞬間式のヒートポンプ給湯機のように、始動時から大容量の電動圧縮機を高速回転させる用途の場合は、漏れ電流が非常に大きくなる。また、ポリアルキレングリコール油は吸水性が高いことから、水分管理のための設備や時間が必要になる。さらに、ポリアルキレングリコール油は加水分解に対しては安定であるため、油中水分は電動圧縮機内のエステル系絶縁フィルムの加水分解に寄与し、絶縁特性を低下させてしまう。
【0007】
一方、特許文献2には、ポリアルキレングリコール油以外の二酸化炭素と相溶性を持つ冷凍機油として、ポリオールエステル油が記載されている。しかし、ポリオールエステル油は、二酸化炭素冷媒との相溶性が高すぎることから、圧縮機内での溶解粘度が大幅に低下し、封入する油粘度も非常に高くなって、圧縮部のシール性が低下して、圧縮効率の向上が制限される。特に、二酸化炭素を用いたヒートポンプサイクルは、超臨界状態で運転されるため、相溶性が高すぎると圧縮機から流出して冷凍サイクルを循環する油が多くなり、圧力損失や熱交換効率が大幅に低下するおそれがある。
【0008】
これに対して、特許文献3、4等には、誘電率等の電気特性に優れ、吸水性が低く、かつ二酸化炭素と非相溶性を示す炭化水素油を用いることが提案されている。しかし、炭化水素油は、潤滑性が劣るため、二酸化炭素を冷媒とする過酷な摺動条件には適用することができない。また、炭化水素油であっても、ポリαオレフィン油は、粘度指数が高く低温流動性に優れるが、圧縮機への戻り量の面では万全ではない。また、アルキルベンゼン油は粘度指数が小さいため冷凍サイクルの低温部での粘度が増大し滞留するため不向きである。
【0009】
【特許文献1】特開平10−46169号公報
【特許文献2】特開2000−104084号公報
【特許文献3】特開2001−294886号公報
【特許文献4】特開2000−110725号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
基本的に、二酸化炭素を冷媒とするヒートポンプ式給湯機の電動圧縮機に用いる冷凍機油として、特許文献3、4に記載されたような、二酸化炭素に溶け込まない又は溶け込みにくい性質(非相溶性)を有する例えばポリαオレフィン油や鉱物油などの炭化水素油を用いると、圧縮機の摺動部のシール性が良好で、圧縮効率が向上すので好ましい。また、これらの炭化水素油は、誘電率が小さく、かつ吸水性が低いから、漏れ電流の増大や絶縁劣化の問題はない。
【0011】
しかし、炭化水素油は、二酸化炭素との相溶性が無くても、あるいは相溶性が小さくても、超臨界状態で運転される圧縮機の高温によって流動性が増し、冷凍機油が冷媒とともに圧縮機から流出して冷凍サイクルを循環することになる。その循環される冷凍機油は、冷凍サイクルの低温部に達すると、流動性が低下して滞留してしまうことになる。そのため、圧縮機への油戻り量が減少して、ついには圧縮機内の油量が減少して、摺動部の油切れが起こり、磨耗もしくは焼き付きなどの不具合が生ずるという問題がある。なお、ポリαオレフィン油は、粘度指数が高く、低温流動性に優れているが、圧縮機への油戻り量の面では必ずしも万全ではない。
【0012】
そこで、圧縮機への油戻り量を確保するには、二酸化炭素と相溶性を有する冷凍機油が好ましいことになる。しかし、二酸化炭素との相溶性を有するポリアルキレングリコール油は、電気特性、特に誘電率が非常に高いため、電動圧縮機の稼動時における漏れ電流が増大し、法定の漏れ電流の許容値を満足することが難しいという問題がある。また、ポリアルキレングリコール油は、吸水性が高いことから、電動圧縮機の絶縁特性を低下させてしまうという問題がある。つまり、冷凍サイクル内に水分が存在すると、二酸化炭素冷媒が炭酸になってエステル系絶縁フィルムの大幅な機械強度の低下や、伸び低下を引き起こすという問題がある。
【0013】
さらに、二酸化炭素との相溶性を有するポリオールエステル油は、二酸化炭素冷媒との相溶性が高過ぎるため、超臨界状態で運転される二酸化炭素を用いたヒートポンプサイクルの場合、圧縮機から流出して冷凍サイクルを循環する油が多くなり、圧力損失や熱交換効率が大幅に低下するおそれがある。
【0014】
そこで、本発明は、二酸化炭素冷媒を吸収圧縮する電動圧縮機の冷凍機油の油戻り性を確保でき、かつ電動圧縮機の漏れ電流を許容値以下に抑えることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記課題を解決するため、密閉型電動圧縮機に用いる冷凍機油として、複数の油を混合して誘電率が最大3.0となるように調整された冷凍機油でを用いることを特徴とする。
【0016】
基本的に、二酸化炭素冷媒を圧縮する電動圧縮機に用いる冷凍機油は、油戻り性を考慮すると、二酸化炭素と程好い相溶性を有する冷凍機油が好ましい。本発明は、油戻り性に優れる二酸化炭素との相溶性を有する冷凍機油は、誘電率が高く漏れ電流が大きくなるのに対し、二酸化炭素との相溶性を有しない(又は、相溶性が小さい)冷凍機油は油戻り性に劣るが、誘電率が低いので漏れ電流が小さいという、相反する特性に着目してなされたものである。
【0017】
すなわち、複数の油を混合して誘電率が最大3.0となるように調整することにより、二酸化炭素と程好い相溶性を有する冷凍機油を得ることができる。これにより、非相溶性の冷凍機油を単独で用いた場合の問題であった圧縮機への油戻り性を確保して、圧縮機摺動部における摩耗を防止できるとともに、相溶性の冷凍機油を単独で用いた場合の問題であった電動圧縮機の漏れ電流を法定の許容値以下に抑えることができる。ここで、二酸化炭素と程好い相溶性を有する冷凍機油とは、圧縮機への油戻り量を確保することができる粘度指数と低温流動性に優れた冷凍機油を意味する。また、誘電率はJIS C 2101に規定の測定法により計測する。
【0018】
そこで、混合する複数の油は、少なくとも、二酸化炭素との相溶性が高い油と、二酸化炭素との相溶性が低い油を混合することが好ましい。例えば、二酸化炭素との相溶性が高い油はポリオールエステル油であり、二酸化炭素との相溶性が低い油はポリαオレフィン油と鉱油の少なくとも一方を選択することが好ましい。鉱油としてはナフテン系鉱油やパラフィン系鉱油のいずれをも用いることができる。
【0019】
この場合、ポリオールエステル油の混合割合は、5乃至70重量%の範囲とし、残余は、潤滑性向上剤や酸化防止剤等の一般的な添加剤を除き、ポリαオレフィン油と鉱油の少なくとも一方とすることができる。さらに、好ましくは、ポリオールエステル油の混合割合は、5重量%〜30重量%の範囲とする。ポリオールエステル油の配合割合が5重量%未満では圧縮機への充分な油戻り量が得られず、混合油の潤滑性も劣るため摺動部の摩耗が増加してしまう。また、ポリオールエステル油の配合割合が70重量%を超えると、冷凍サイクルへの油流出が多くなり、圧力損失や熱交換効率が大幅に低下するおそれがある。しかも、ポリオールエステル油は、吸水性があることから、水分管理が容易でなくなり、加水分解に起因する油劣化が進行するので好ましくない。
【0020】
また、ポリオールエステル油にポリαオレフィン油と鉱油の少なくとも一方を混合して得られる冷凍機油は、動粘度が100℃で5乃至15mm/sの範囲であり、かつ粘度指数が100以上であることが好ましい。つまり、二酸化炭素の透過性が大きいため、本発明の冷凍機油の粘度は、フロン系冷媒の冷凍機油と比べて若干高めの粘度グレードとすることが、シール性の上で好ましい。具体的には、ロータリー式冷媒圧縮機の場合は、100℃の粘度が2〜8mm/s、スクロール式圧縮機の場合では,100℃で7〜15mm/sの範囲が好ましい。つまり。100℃における動粘度がこれ以下であると、圧縮機の十分な耐摩耗性が得られなくなること、更にはシール性が十分に保たれなくなり、圧縮効率が低下してしまうからである。また、100℃における動粘度がこれを超えてしまうと粘性抵抗、機械損失が増大することから、圧縮機効率を低下させ、更には粘性が大きくなり圧縮機への油戻り量が少なくなってしまう問題があるからである。なお、冷凍機油の粘度はJIS K 2283に規定の測定法で計測する。
【0021】
また、本発明の冷凍機油の粘度指数は、冷凍サイクル低温部での冷凍機油の滞留を考慮し、圧縮機への油戻り量が確保しやすい粘度指数が100以上が好ましい。なお、本発明の冷凍機油には、潤滑性向上剤、酸化防止剤、酸捕捉剤、消泡剤、金属不活性剤等を添加しても全く問題はない。
【0022】
また、ポリαオレフィン油は、分子量分布を有しているが、炭素数が20〜50の範囲からなる成分が全体の50重量%以上含むものが好ましい。炭素数が20以下の成分を多く含むと圧縮機内で高圧化された超臨界状態の二酸化炭素冷媒により圧縮機から油流出し易くなり、炭素数が50以上の成分を多く含むと低温での流動性が著しく低下するので好ましくない。
【0023】
また、ポリオールエステル油としては、多価アルコールと1価の脂肪酸とから合成され、熱安定性に優れるヒンダードタイプが好ましい。例えば、多価アルコールとしては、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールがある。1価の脂肪酸としては、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、2−メチルブタン酸、2−メチルペンタン酸、2−メチルヘキサン酸、2−エチルヘキサン酸、イソオクタン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸等があり、これら単独又は2種類以上の混合脂肪酸を用いる。特に、冷凍機油の基油として、分子中にエステル結合を少なくとも4ケ保有する下記の一般式(化1)乃至(化2)で示される脂肪酸のエステル油の群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。但し、同式中のRは、炭素数5〜12のアルキル基を表している。
【0024】
【化1】

【0025】
【化2】

【0026】
また、鉱油としては、ナフテン系鉱油やパラフィン系鉱油を用いることができる。例えば、パラフィン基系原油、中間基系原油あるいはナフテン基系原油を常圧蒸留するか、あるいは常圧蒸留の残渣油を減圧蒸留して得られる留出油を常法に従って精製することによって得られる精製油、あるいは精製後更に深脱ロウ処理することによって得られる深脱ろう油、更には水素化処理によって得られる水素化処理油などが挙げられる。その際の精製法は特に制限はなく様々な方法が使用される。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、二酸化炭素冷媒を吸収圧縮する電動圧縮機の冷凍機油の油戻り性を確保でき、かつ電動圧縮機の漏れ電流を許容値以下に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明を実施形態に基づいて説明する。ここでは、本発明を二酸化炭素を用いたヒートポンプ式給湯機(以下、給湯機と略す。)に適用した実施形態を説明するが、本発明は、これに限定されるものではなく、二酸化炭素冷媒を用いた電動カーエアコン、寒冷地向暖房器具、自動販売器等にも適用できる。
【0029】
図1に一実施形態の給湯機の基本的な系統構成図を示し、図2に本実施形態の主要機器の配置図を示す。図1に示すように、本実施形態の給湯機は、二酸化炭素冷媒が循環する冷媒サイクルと、給水された水を加熱するサイクルとに分類される。図中の実線が冷媒サイクルであり、破線が水サイクルとなっている。また、本実施形態の給湯機は、お湯を使用する度に、ヒートポンプサイクルを起動して必要量だけ給湯する瞬間式であるが、これに限定されるものではない。しかし、瞬間式の給湯機は、高出力圧縮機を搭載することから、特に、漏れ電流や圧縮機の摩耗が問題になる。また、瞬間式は高出力を要するため、本実施形態では、冷媒サイクルを二系統有するものを示しているが、これに限定されるものではない。
【0030】
まず、二酸化炭素冷媒サイクルについて説明する。圧縮機1A、1Bは、低温、低圧の冷媒ガスを圧縮し、高温及び高圧の冷媒ガスを吐出して水冷媒熱交換器2に送る。水冷媒熱交換器2に送られた冷媒ガスは、その熱を給水された低温の水に顕熱交換する。その後、電動膨張弁3A、3Bを通り、低温及び低圧の冷媒となって空気側熱交換器4A、4Bへ送られる。空気側熱交換器4A、4Bに入った冷媒は周囲から熱を吸収して蒸発し、送風ファン5A、5Bにより冷気を放出する。空気側熱交換器4A、4Bを出た低温及び低圧の冷媒ガスは、再び圧縮機1A、1Bに吸込まれ、以下同じサイクルが繰り返される構成となっている。二酸化炭素冷媒は、超臨界サイクルとなるため高圧側は臨界点を超え、圧力を任意で設定できることから容易に100℃近い高温水を得ることが可能である。
【0031】
次に、水を加熱するサイクルについて説明する。給水口6から供給された低温の水は、水冷媒熱交換器2に送られて冷媒から熱を得てお湯となり、貯湯タンク7に一旦送られた後、出湯口8から給湯される。その際に給水された水は、水冷媒熱交換器2から直接送られてきたお湯と混合され、出湯口8に供給するお湯の温度を調節するためにも使用される。また、水冷媒熱交換器2は給水された水以外にも、保温のため貯湯タンク7のお湯を再加熱したり、図示はしていないが、風呂浴槽の追い炊き等、更には床暖房や浴室暖房といった家庭用のトータルエネルギーシステムとしての熱源にも使用される。
一般的なヒートポンプ式給湯機の貯湯方式では、大容量の貯湯タンクを必要とするため熱源ニユットと貯湯タンクユニットを別々のキャビネットに収納するが、本実施形態の瞬間式の場合は、貯湯タンク7は容量が小さい補助タンクで済む。そのため、図2に示すように、熱源ユニットと貯湯タンクユニットの一体型が可能であり、設備のコンパクト化が図れる。
【0032】
圧縮機1A、1Bとしては、スクロール式やロータリー式等の容積形圧縮機が主に用いられるが、一例として、横置スクロール式圧縮機を用いた密閉型電動圧縮機の縦断面図を図3に示す。図示のように、圧縮機1A、1Bは、固定スクロール部材9の端板10に直立する渦巻状ラップ11と、この固定スクロール部材9と実質的に同一形状の端板12とラップ13からなる旋回スクロール部材14とを、互いにラップ11とラップ13とを向い合わせにして噛み合わせて圧縮機構部を形成している。そして、旋回スクロール部材14をクランクシャフト15によって旋回運動させると、固定スクロール部材9及び旋回スクロール部材14によって形成される圧縮室15a、15b……のうち、最も外側に位置している圧縮室は、旋回運動にともなって容積が次第に縮小しながら、両スクロール部材9、14の中心に向かって移動していく。圧縮室15a、15b……が両スクロール部材9、14の中心近傍に達したとき、圧縮室15a、15b……が吐出口16と連通して、両圧縮室内の圧縮ガスが吐出パイプ17から圧縮機外に吐出される。
【0033】
図3の圧縮機では、圧力容器18内に電動モーター19が内蔵されており、圧縮機は一定速あるいは図示しないインバータによって制御された電圧に応じた回転速度でクランクシャフト15が回転し、圧縮動作を行う。また、吐出パイプ17の下部に油溜め部が設けられており、この冷凍機油20は圧力差によってクランクシャフト15に設けられた油孔21を通って、旋回スクロール部材14とクランクシャフト15との摺動部、滑り軸受け22等の潤滑に供給される。
【0034】
次に、本実施形態の二酸化炭素を冷媒とする給湯機の圧縮機1A、1Bに用いた冷凍機油の実施例について、以下に説明する。
(実施例1)
【0035】
実施例1では、図1の実施形態の給湯機を用いて2160時間運転する実機試験を行った。この実機試験は、夏期条件である20℃の恒温室内で給湯機を運転し、給湯温度を高温貯湯条件である60℃に設定した。また、図4に、本発明の実施例及び比較例で用いる化合物(冷凍機油)A〜Kの性状乃至特性を示す。同図において、化合物の種類のPAOはポリαオレフィン油、POEはヒンダードタイプポリオールエステル油(ペンタエリスリトール/ジペンタエリスリトール系の分岐鎖混合脂肪酸エステル)、PAGはポリアルキレングリコール油(ポリプロピレンの両末端ジメチルエーテル)である。
【0036】
実施例1の冷凍機油は、図5に示すように、図4の化合物A(PAO)と化合物B(POE)を80/20重量%で混合して圧縮機に封入した。図5の比較例1〜3では、実施例1の混合油を構成する成分である化合物A(PAO)単独と、化合物B(POE)単独と、二酸化炭素用冷凍機油として主流である化合物C(PAG)を圧縮機に封入し、実施例1と同様の実機試験を実施した。
【0037】
ここで、実機試験における冷凍機油の評価項目について説明する。給湯機の信頼性を確保する上では、圧縮機の摩耗を抑制することが重要である。そのため給湯機の評価には圧縮機の摩耗状態に着眼し、試験前後での滑り軸受けとシャフト間の摩耗による隙間増加量を測定した。滑り軸受けとシャフト間の隙間増加量が増えるほど摩耗量が大きいことを示し、一般に隙間増加量が増えるに伴い振動や騒音が大きくなる。また、運転後の圧縮機の冷凍機油残量を調べ、試験に用いた冷凍機油の全酸価を測定した。一般に、冷媒との相溶性が劣ると圧縮機への油戻り量が少なくなり、摺動部の潤滑不良を起こすと言われる。更に、漏れ電流を測定するため、フィルタ回路の一方を交流電源とアースに接続し、もう一方の端子間の交流電圧を測定し、この電圧を1kΩで除した値を漏れ電流として測定した。給湯機の起動時に漏れ電流が多くなることから、運転開始1分間で最も高い電流値を図5に記載した。また、COP(Coefficient of Performance)を測定し、比較例3のCOPを100%(基準)として記載した。
【0038】
本試験の目標値は、滑り軸受けとシャフト間の摩耗による隙間増加量が15μm以下、漏れ電流値が1.0mA以下、試験後の圧縮機内残油量が減少しない、COPが比較例3を100%とした場合に100%以上、全酸価0.1mgKOH/g以下であることの全項目を満たすことを目標とした。
【0039】
実施例1及び比較例1〜3の評価結果は、図5に示すとおりである。同図中の( )内は、混合油の重量混合割合を示す。図5には、実施例及び比較例の冷凍機油の誘電率、粘度指数を併記した。図5から明らかなように、本発明の実施例1の冷凍機油は、比較例1、2の冷凍機油と比べて、摩耗を抑制することができ、これによって給湯機の高い信頼性が得られる。また、実施例1の冷凍機油を用いた給湯機の漏れ電流は、問題がない程度であったのに対し、比較例3に示す冷凍機油を用いた給湯機は漏れ電流が非常に大きく、感電の問題がある。また、図5に併記したように、誘電率は使用した冷凍機油によって異なり、特に比較例3のポリアルキレングリコール油は電気特性が劣る。実施例1の冷凍機油を用いた給湯機の場合、残油量についても、二酸化炭素と相溶性を示す比較例2、3と大差がなく、十分な圧縮機への油戻りが確保されている。一方、比較例1は、冷媒と非相溶性を示す冷凍機油であるため冷媒サイクルの低温部である電動膨張弁3から空気側熱交換器4に大量に滞留してしまい圧縮機内の残油量が大幅に低下し、摩耗が増加している。
【0040】
また、実施例1の冷凍機油を用いた給湯機は、混合油を構成する化合物Aに二酸化炭素冷媒が溶解しないことから、圧縮部のシール性が十分に確保でき、比較例3と比較してCOPが向上している。これに対して、比較例2は冷凍機油に対する冷媒の溶解性が非常に大きいため、圧縮機から冷媒サイクルへの油上がり量が増大して熱交換効率を低下させている。また、冷媒が溶け込み易いことから溶解粘度が低下し、圧縮機圧縮部での十分なシール性が保たれなくなっているのでCOPが低下している。また、実施例1の冷凍機油の全酸価は問題がない程度であったが、比較例2のポリオールエステル油は加水分解に由来する劣化が生じているため全酸価値が高い。
【0041】
図5に示した比較例1〜3のように、1種類の冷凍機油を単独で用いた給湯機の場合には、評価項目の全てを満たす給湯機は得られないことがわかる。なお、図5には示していないが、ポリαオレフィン油に代えて、鉱油を用いても実施例1と同様な結果が得られた。
(実施例2〜実施例6)
【0042】
次に、給湯機の設置温度を実施例1よりも低い中間期条件の7℃に設定し、その他条件は実施例1と同様な試験を行い、図6に示す評価結果が得られた。なお、測定した評価項目も図5と同様である。
【0043】
実施例2〜6は、実施例1において性能の向上を確かめられた化合物Aと化合物Bの混合油を用い、混合油の濃度を変えたものである。また、比較例4、5は、化合物Aと化合物Bにおける化合物Bの混合濃度が5重量%以下のもの、70重量%を越えるものを用いた。比較例6は、二酸化炭素用冷凍機油として主流である化合物Cを用いて、同様の実機試験を実施した。
【0044】
実施例2〜6及び比較例4〜6の評価結果は、図6に示すとおりである。同図中の( )内は、混合油の重量混合割合を示す。図6には、実施例及び比較例の冷凍機油の誘電率、粘度指数を併記した。図6から明らかなように、本発明の実施例2〜6の冷凍機油を用いた給湯機は、化合物B(POE)の混合割合を5重量〜70重量%とすることで、滑り軸受けとシャフト間の隙間増加量を低減でき、かつ、比較例6と比べて漏れ電流を大幅に抑制できることがわかる。また、残油量も十分であり、比較例6を基準としたCOPも向上もしくは維持可能である。試験に用いた実施例2〜6の冷凍機油の全酸価も増加していないことを確認した。
【0045】
これに対して、比較例4の化合物B(POE)の混合濃度を3重量%とした混合油を用いた給湯機は、二酸化炭素との相溶性が十分でないため残油量が少なくなり、滑り軸受け〜シャフト間の隙間増加量が大きくなっている。また、比較例5で示すように化合物B(POE)の混合濃度が70重量%を超える混合油を用いた給湯機は、冷凍機油に対する冷媒の溶解性が非常に大きいため、圧縮機から冷媒サイクルへの油上がり量が増大して熱交換効率を低下させることがわかる。また、冷媒が溶け込み易いことから溶解粘度が低下し、圧縮機圧縮部での十分なシール性が保たれなくなっているのでCOPが低下しており、試験油の全酸価が高い。
【0046】
このように、化合物A(ポリαオレフィン油)に対する化合物B(ポリオールエステル油)の混合割合が5重量〜70重量%の範囲内の混合油を冷凍機油として用いた給湯機の場合は、評価項目を全て満たす給湯機が得られる。なお、化合物A(ポリαオレフィン油)に対する化合物B(ポリオールエステル油)の混合割合は、混合油の相溶性や耐加水分解性を考慮して10重量%〜30重量%の割合で配合することがより好ましい。
(実施例7)〜(実施例9)
【0047】
次に、給湯機の設置温度を実施例2〜6よりも低い冬期条件の−5℃設定し、その他条件は実施例1と同様な試験を行い、図7に示す評価結果が得られた。なお、測定した評価項目は図5と同様である。
【0048】
実施例7〜9は、実施例2〜6において性能の向上を確かめられた化合物A(ポリαオレフィン油)と化合物B(ポリオールエステル油)の混合油の濃度を80/20重量%で固定し、混合油の粘度を変えて実機試験を行ったのもである。実施例7では、冷凍機油として図4に示す化合物D(PAO)と化合物E(POE)の混合油を用いた。実施例8は、実施例1と同様の混合油を用い、実施例9では化合物F(PAO)と化合物G(POE)の混合油を用い、その粘度を5〜15mm/sの範囲とした。
【0049】
一方、比較例7では、化合物H(PAO)と化合物I(POE)の混合油を用い、実施例8は、化合物J(PAO)と化合物K(POE)の混合油を用い、その粘度が5mm/s以下のもの、15mm/sを越えるものを用いた。比較例9では、化合物C(PAG)を用いて、実施例7と同様の実機試験を実施した。
【0050】
実施例7〜9及び比較例7〜9の試験結果を図7に示す。図中の( )内は混合油の重量割合を示す。また、図7には、実施例及び比較例の冷凍機油の誘電率、粘度指数を併記している。図7から明らかなように、本発明の実施例2〜6の冷凍機油を用いた給湯機は、圧縮機に封入したPAO(ポリαオレフィン油)とPOE(ポリオールエステル油)との混合油の粘度を5〜15mm/sの範囲とすることで、滑り軸受けとシャフト間の隙間増加量を低減でき、かつ、比較例9と比べて漏れ電流を大幅に抑制できることがわかる。また、残油量も十分であり、比較例9を基準としたCOPも向上もしくは維持可能である。試験に用いた冷凍機油の全酸価も増加していないことを確認した。
【0051】
これに対して、比較例7の粘度が5mm/s以下の混合油を用いた給湯機は、粘度が低すぎ、十分な油膜が形成されず、滑り軸受けとシャフト間の隙間増加量が大きくなり、更に圧縮部での十分なシール性が保たれずにCOPが低下している。逆に、比較例8で示すように、混合油の粘度が高すぎると、圧縮機の粘性抵抗、機械損失が増大することからCOPを低下させている。
【0052】
これらのことから、本発明の実施例7〜9によれば、PAO(ポリαオレフィン油)とPOE(ポリオールエステル油)との混合油の粘度を5〜15mm/sの範囲とすることで、評価項目の全てを満たす給湯機が得られた。
(実施例10)
【0053】
次に、給湯機の設置温度を実施例7〜9よりも低い厳冬期条件の−15℃設定し、その他条件は実施例1と同様な試験を行い、図8に示す評価結果が得られた。なお、測定した評価項目は図5と同様である。
【0054】
実施例10は、実施例8と同じく、化合物A(PAO)と化合物B(POE)の混合油の濃度を80/20重量%のものを用いて実機試験を行ったのもである。比較例10は、比較例9と同じく、二酸化炭素用冷凍機油として主流である化合物C(PAG)を用いた。
【0055】
図8から明らかなように、実施例10を用いた試験によれば、実施例8に比べて、滑り軸受け隙間増加量、漏れ電流及び全酸価が若干悪化するが、残油量については問題無し、COPについては比較例10に優るという結果が得られた。このことから、本発明の実施例10の冷凍機油は、−15℃の環境でも用いることができることがわかる。
【0056】
以上、実施例1〜10の冷凍機油を用いた給湯機の試験結果から、本発明に係る冷凍機油を用いた給湯機によれば、圧縮機への油戻り量を十分に確保して圧縮機の摩耗を抑制でき、かつ冷凍機油の誘電率を3.0以下に抑えることができるから、漏れ電流を許容値以下に抑制可能である。更に、圧縮機への油戻り量を十分に確保できるから、COPを向上できる。
【0057】
なお、本実施形態の給湯機においては、密閉型電動圧縮機として高圧チャンバ方式のスクロール式圧縮機を用いたが、本発明はこれに限らず、2段圧縮ロータリー式圧縮機やローラとベーンが一体化されたスイング式圧縮機でも同様な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施形態のヒートポンプ式給湯機の基本的な系統構成図を示す。
【図2】図1実施形態の主要機器の配置図を示す図である。
【図3】本発明が適用可能な密閉型電動圧縮機の一実施形態の横置スクロール式圧縮機の縦断面図を示す。
【図4】本発明の実施例の冷凍機油で用いる化合物A(PAO)と化合物B(POE)の性状乃至特性が異なる化合物を示す図である。
【図5】本発明の実施例1に係る冷凍機油を用いて実施したヒートポンプ式給湯機の試験結果の評価項目と、比較例1〜3の冷凍機油を用いて実施したヒートポンプ式給湯機の試験結果の評価項目とを対比して示す図である。
【図6】本発明の実施例2〜6に係る冷凍機油を用いて実施したヒートポンプ式給湯機の試験結果の評価項目と、比較例4〜6の冷凍機油を用いて実施したヒートポンプ式給湯機の試験結果の評価項目とを対比して示す図である。
【図7】本発明の実施例7〜9に係る冷凍機油を用いて実施したヒートポンプ式給湯機の試験結果の評価項目と、比較例7〜9の冷凍機油を用いて実施したヒートポンプ式給湯機の試験結果の評価項目とを対比して示す図である。
【図8】本発明の実施例10に係る冷凍機油を用いて実施したヒートポンプ式給湯機の試験結果の評価項目と、比較例10の冷凍機油を用いて実施したヒートポンプ式給湯機の試験結果の評価項目とを対比して示す図である。
【符号の説明】
【0059】
1A、1B 圧縮機
2 水冷媒熱交換器
3A、3B 電動膨張弁
4A、4B 空気側熱交換器
5A、5B 送風ファン
6 給水口
7 貯湯タンク
8 出湯口
9 固定スクロール部材
10、12 端板
11 渦巻状ラップ
13 ラップ
14 旋回スクロール部材
15 クランクシャフト
16 吐出口
18 圧力容器
19 電動モーター
20 冷凍機油
22 滑り軸受け

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素冷媒を吸入圧縮する密閉型電動圧縮機と、前記圧縮機から吐出された冷媒の熱を放熱する第1の熱交換器と、該第1の熱交換器から流出する冷媒を減圧する減圧器と、前記減圧器にて減圧された冷媒の熱を吸熱する第2の熱交換器とを介して循環する冷凍サイクルを備え、前記第1の熱交換器により給水を加熱して給湯するヒートポンプ式給湯機であって、前記密閉型電動圧縮機の冷凍機油は、複数の油を混合して誘電率が最大3.0となるように調整された冷凍機油であることを特徴とするヒートポンプ式給湯機。
【請求項2】
前記冷凍機油は、二酸化炭素との相溶性が高い油と、二酸化炭素との相溶性が低い油の少なくとも2つの油を混合してなることを特徴とする請求項1に記載のヒートポンプ式給湯機。
【請求項3】
前記二酸化炭素との相溶性が高い油は、ポリオールエステル油であり、前記二酸化炭素との相溶性が低い油は、ポリαオレフィン油と鉱油の少なくとも一方であることを特徴とする請求項2に記載のヒートポンプ式給湯機。
【請求項4】
前記冷凍機油は、前記ポリオールエステル油の混合割合が5乃至70重量%の範囲であることを特徴とする請求項3に記載のヒートポンプ式給湯機。
【請求項5】
前記冷凍機油は、動粘度が100℃で5乃至15mm/sの範囲であり、かつ粘度指数が100以上であることを特徴とする請求項3に記載のヒートポンプ式給湯機。
【請求項6】
前記ポリオールエステル油は、下記の式1乃至2(式中、Rは炭素数5乃至12のアルキル基を表す。)であることを特徴とする請求項3に記載のヒートポンプ式給湯機。
【化1】

【化2】

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素冷媒を吸入圧縮する密閉型電動圧縮機と、前記圧縮機から吐出された冷媒の熱を放熱する第1の熱交換器と、該第1の熱交換器から流出する冷媒を減圧する減圧器と、前記減圧器にて減圧された冷媒の熱を吸熱する第2の熱交換器とを介して循環する冷凍サイクルを備え、前記第1の熱交換器により給水を加熱して給湯するヒートポンプ式給湯機であって、前記密閉型電動圧縮機の冷凍機油は、複数の油を混合して誘電率が最大3.0となるように調整された冷凍機油であることを特徴とするヒートポンプ式給湯機。
【請求項2】
前記冷凍機油は、二酸化炭素との相溶性が高い油と、二酸化炭素との相溶性が低い油の少なくとも2つの油を混合してなることを特徴とする請求項1に記載のヒートポンプ式給湯機。
【請求項3】
前記二酸化炭素との相溶性が高い油は、ポリオールエステル油であり、前記二酸化炭素との相溶性が低い油は、ポリαオレフィン油と鉱油の少なくとも一方であることを特徴とする請求項2に記載のヒートポンプ式給湯機。
【請求項4】
前記冷凍機油は、前記ポリオールエステル油の混合割合が5乃至70重量%の範囲であることを特徴とする請求項3に記載のヒートポンプ式給湯機。
【請求項5】
前記冷凍機油は、動粘度が100℃で5乃至15mm/sの範囲であり、かつ粘度指数が100以上であることを特徴とする請求項3に記載のヒートポンプ式給湯機。
【請求項6】
前記ポリオールエステル油は、下記の式1乃至2(式中、Rは炭素数4乃至11のアルキル基を表す。)であることを特徴とする請求項3に記載のヒートポンプ式給湯機。
【化1】

【化2】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−275339(P2006−275339A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−92411(P2005−92411)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(502131431)日立ホーム・アンド・ライフ・ソリューション株式会社 (302)
【Fターム(参考)】