説明

ヒートポンプ式給湯機

【課題】バルブカバー内部の水が多量に本体内部に流入した場合でも、制御基板のトラッキング現象などの不具合を確実に防止することのできるヒートポンプ式給湯機を提供すること。
【解決手段】本発明のヒートポンプ式給湯機20は、空気冷媒熱交換器11、圧縮機7、水冷媒熱交換器4および膨張弁10を冷媒流路で接続してなる冷凍サイクル回路を内蔵した本体1と、本体1の内部を、少なくとも空気冷媒熱交換器11が配置されている第1空間(空気室)と、少なくとも圧縮機7が配置されている第2空間(機械室)とに区画する区画部材15と、本体1の外側に設置された入水バルブおよび出湯バルブと、入水バルブおよび出湯バルブを覆い、入水バルブおよび出湯バルブから滴下した結露水等の水を受けるバルブカバー17と、を備え、バルブカバー17内に溜まった水を第2空間内に流入させることなく第1空間内に流入させるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプ式給湯機に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍サイクル回路を用いて空気(大気)の熱を吸熱して湯を沸かすヒートポンプ式給湯機が広く用いられている。このヒートポンプ式給湯機の本体の内部には、空気の熱を冷媒に吸収させる空気冷媒熱交換器、冷媒を圧縮して高温高圧とする圧縮機、高温高圧となった冷媒の熱によって水を加熱する水冷媒熱交換器、水冷媒熱交換器を通過した冷媒を膨張させる膨張弁、これらを接続する冷媒流路、制御基板などが配設されている。
【0003】
一方、ヒートポンプ式給湯機の本体の外側には、給水配管が接続される入水バルブと、給湯配管が接続される出湯バルブとが取り付けられているとともに、この入水バルブおよび出湯バルブを覆うバルブカバーが更に取り付けられている。バルブカバーの内部には、結露水や雨水などが溜まることがある。バルブカバー内に溜まった水がバルブカバーからあふれ出すと、入水バルブや出湯バルブから湯水が漏れていると使用者が誤解して心配する。このため、バルブカバー内に溜まった水を、ヒートポンプ式給湯機の本体内部に導き、本体下部のドレンパンより排水する構造とすることが望ましい。
【0004】
空気調和機の室外機の場合にも、上記と同様の事情がある。空気調和機の室外機では、室内機に接続されている冷媒配管の室外機側接続口に、金属製のパックドバルブが設けられている。パックドバルブは、冷媒温度、外気温度条件によって結露する可能性がある。このため、バルブカバー内部には、パックドバルブに結露した水滴が滴下して溜まってしまう。また、バルブカバー内部に直接雨水などが浸入して、水が溜まることもある。下記特許文献1に記載の空気調和機の室外機では、バルブカバー内部の水を、樋を用いて、室外機の内部に導入するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−74492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1と同様の構造をヒートポンプ式給湯機に適用し、バルブカバー内部の水を、ヒートポンプ式給湯機の本体の内部に流入させた場合には、次のような問題がある。前述したように、ヒートポンプ式給湯機の本体内部には、圧縮機、制御基板、膨張弁などが設置されている。圧縮機の周囲には、保温材や騒音防止用の吸音材等が配設されているため、この保温材や吸音材に浸水すると、本体内部に水分が長期間存在することになる。本体内部は、圧縮機の発熱や沸き上げられた高温の湯が通る出湯管の熱などで高温状態にある。このため、本体内部で水分が蒸発して水蒸気となり、本体内部の上方に設置されている制御基板で水蒸気が結露し、トラッキングを引き起こすことが懸念される。
【0007】
また、空気調和機の室外機の場合と異なり、ヒートポンプ式給湯機では、入水バルブおよび出湯バルブ内を水あるいは湯が通るため、入水バルブまたは出湯バルブと配管との接続不具合(施工不具合)による水漏れがあった場合など、状況によっては、多量の水がバルブカバー内部に溜まることが考えられる。その多量の水が本体内部に流入した場合には、上述した問題がより起き易くなる。
【0008】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、バルブカバー内部の水が多量に本体内部に流入した場合でも、制御基板のトラッキング現象などの不具合を確実に防止することのできるヒートポンプ式給湯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るヒートポンプ式給湯機は、空気の熱を冷媒に吸熱させる空気冷媒熱交換器と、冷媒を圧縮する圧縮機と、圧縮機で圧縮された冷媒によって水を加熱する水冷媒熱交換器と、膨張弁と、これらを接続する冷媒流路とを有する冷凍サイクル回路を内蔵した本体と、本体の内部を、少なくとも空気冷媒熱交換器が配置されている第1空間と、少なくとも圧縮機が配置されている第2空間とに区画する区画部材と、本体の外側に設置され、水の入口となる入水バルブと、本体の外側に設置され、湯の出口となる出湯バルブと、入水バルブおよび出湯バルブを覆い、入水バルブおよび出湯バルブから滴下した結露水等の水を受けるバルブカバーと、を備え、バルブカバー内に溜まった水を第2空間内に流入させることなく第1空間内に流入させるように構成されたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ヒートポンプ式給湯機のバルブカバーから本体内部に流入した水の水蒸気化を抑制することができ、制御基板のトラッキング現象などの不具合を確実に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のヒートポンプ式給湯機の実施の形態1を示す構成図である。
【図2】本発明の実施の形態1のヒートポンプ式給湯機の本体内部の各部品のレイアウト状態を示す透視図(上から見た図)である。
【図3】本発明の実施の形態2のヒートポンプ式給湯機の本体内部の各部品のレイアウト状態を示す透視図(斜視図)である。
【図4】本発明の実施の形態2のヒートポンプ式給湯機の本体内部の各部品のレイアウト状態を示す透視図(上から見た図)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において共通する要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0013】
実施の形態1.
図1は、本発明のヒートポンプ式給湯機の実施の形態1を示す構成図である。なお、図1は、本実施形態のヒートポンプ式給湯機20の構成を模式的に示したものであり、各構成機器の配置場所を必ずしも正確に示すものではない。
【0014】
図1に示すように、ヒートポンプ式給湯機20は、本体1を備えている。本体1には、空気(大気)の熱を吸収し、水を加熱して湯(高温水)を作り出すヒートポンプとしての機能を有する冷凍サイクル回路が内蔵されている。本体1の外側には、本体1に水を供給する給水配管の接続部である入水バルブ2と、本体1内で沸き上げられた湯を外部に送る給湯配管の接続部である出湯バルブ6とが設置されている。更に、本体1の外側には、入水バルブ2および出湯バルブ6を覆うバルブカバー17が設置されている。
【0015】
本体1の内部には、冷媒を圧縮する圧縮機7と、圧縮機7で圧縮された高温高圧の冷媒の熱によって水を加熱する水冷媒熱交換器4と、入水バルブ2から流入した水を水冷媒熱交換器4へ送る入水管3と、水冷媒熱交換器4で沸き上げられた湯を出湯バルブ6へ送る出湯管5と、圧縮機7で圧縮された高圧冷媒を輸送するための高圧側冷媒配管8と、冷媒回路の効率を向上するための内部熱交換器9と、冷媒を膨張させて低圧にするための膨張弁10と、大気から熱を吸収し冷媒を蒸発させるための空気冷媒熱交換器11と、空気冷媒熱交換器11に外気を送り込むファン12と、ファン12を動作させるファンモーター13と、低圧冷媒を輸送するための低圧側冷媒配管14と、本体1の内部を空気室と機械室とに区画する(隔てる)区画部材(セパレータ)15と、空気冷媒熱交換器11から滴下する結露水を受けるドレンパンとしての機能を有するベース16と、本体1の運転を制御する制御部50とが設置されている。制御部50は、操作部60と通信可能に接続されている。制御部50は、操作部60から送られる運転指令に基づいて、本体1内の圧縮機7、膨張弁10、ファンモーター13などを制御する。
【0016】
上述したように、本体1の内部は、区画部材15によって、空気室(第1空間)と、機械室(第2空間)とに区画されている。空気室には、空気冷媒熱交換器11およびファン12が配置されている。機械室には、圧縮機7、内部熱交換器9、膨張弁10等が配置されている。
【0017】
本体1の内部には、バルブカバー17の内部に溜まった、結露水などの水を空気室へ導くための排水管(排水流路)18が更に設けられている。この排水管18は、バルブカバー17の下部から本体1の内部に入り、機械室を横断して、空気室へと延びている。
【0018】
次に、本実施の形態1のヒートポンプ式給湯機20の動作について説明する。本体1に電源が投入されると、制御部50は、操作部60で設定された温度(例えば90℃)まで沸き上げるように指示を受け、本体1内の各構成機器の制御を開始する。
【0019】
貯湯式給湯機の熱源機としてヒートポンプ式給湯機20が用いられる場合には、図示しない貯湯タンクユニット内の貯湯タンクの下部から取り出された水が、給水配管を介して入水バルブ2に供給される。入水バルブ2から流入した水は、入水管3を通って水冷媒熱交換器4へ送られ、冷媒の高熱を受け取り、加熱されて湯となり、水冷媒熱交換器4を出る。水冷媒熱交換器4を出た湯は、出湯管5を通って出湯バルブ6へ送られ、出湯バルブ6に接続された給湯配管を通って、上記貯湯タンクの上部に戻り、貯留される。ただし、本発明のヒートポンプ式給湯機は、貯湯式給湯機の熱源機に限定されるものではなく、給湯先へ直接に湯を供給するものであってもよい。
【0020】
圧縮機7で圧縮された高温高圧の冷媒は、水冷媒熱交換器4で熱を水へ受け渡し、低温中圧の冷媒となる。本実施形態の冷凍サイクル回路では、この低温中圧の冷媒の熱を、圧縮機7に入る前の冷媒へ受け渡すための内部熱交換器9が設けられている。すなわち、水冷媒熱交換器4から出た低温中圧の冷媒は、内部熱交換器9に送られ、圧縮機7に入る前の冷媒へ更に熱を受け渡した後、膨張弁10を通って低温低圧の冷媒に変化する。この低温低圧の冷媒は、空気冷媒熱交換器11へ送られ、大気の熱を吸収して蒸発し、圧縮機7で再び圧縮される。
【0021】
図2は、本発明の実施の形態1のヒートポンプ式給湯機20の本体1内部の各部品のレイアウト状態を示す透視図である。以下、図2に基づいて、本実施形態のヒートポンプ式給湯機20について更に詳細に説明する。
【0022】
図2は、ヒートポンプ式給湯機20を上から見た図である。本体1は、全体として略直方体形状をなしている(ただし、図2中では、本体1の左寄りの部分の図示を省略している)。この図に示すように、バルブカバー17は、上から見て本体1の一方の短辺部分の外側に張り出すように配置されている。このバルブカバー17の内部に入水バルブ2および出湯バルブ6が位置している。空気冷媒熱交換器11は、上から見て本体1の一方の長辺部分に沿って配置されている。ファン12は、空気冷媒熱交換器11と対向するように配置されている。本体1の内部は、区画部材15により、バルブカバー17側に位置する空間と、バルブカバー17と反対側に位置する空間とに隔てられている。バルブカバー17側に位置する空間(第2空間)が機械室になっており、バルブカバー17と反対側に位置する空間(第1空間)が空気室となっている。図2中では、機械室と空気室との境界を一点鎖線で示している。機械室内は、圧縮機7の発熱や、沸き上げられた高温の湯が通る出湯管5の熱などで、高温状態にある。これに対し、空気室内は、風が通り抜けるため、熱がこもることがなく、比較的低温となっている。
【0023】
排水管18は、バルブカバー17の下部から、まず機械室内に入り、機械室の中を通り抜け、区画部材15を貫通して、空気室内に至るように配設されている。バルブカバー17で受けた結露水などの水は、排水管18を通って空気室内のベース16に流入するので、機械室内には流入しない。
【0024】
機械室内には、圧縮機7の周囲に、保温材や騒音防止用の吸音材等が配設されている。この保温材や吸音材に浸水すると、水が抜けにくいため、機械室内に水分が長期間存在することになる。また、機械室内は、前述したように高温状態になっている。このため、バルブカバー17から機械室内に多量の水が流入した場合を想定すると、その水が蒸発して多量の水蒸気が発生し、その水蒸気が制御部50の回路基板(制御基板)で結露して、トラッキングを引き起こすことが懸念される。これに対し、本実施形態のヒートポンプ式給湯機20では、バルブカバー17で受けた水が、高温状態にある機械室内に流入することがなく、排水管18を通って、比較的低温な空気室内に流入する。このため、水蒸気の発生が抑制されるので、制御部50の回路基板のトラッキングを確実に防止することができる。
【0025】
実施の形態2.
次に、図3および図4を参照して、本発明の実施の形態2について説明するが、上述した実施の形態1との相違点を中心に説明し、同一部分または相当部分は同一符号を付し説明を省略する。
【0026】
図3および図4は、それぞれ、本発明の実施の形態2のヒートポンプ式給湯機20の本体1内部の各部品のレイアウト状態を示す透視図である。図3は、斜め方向から見た図(斜視図)であり、図4は、上から見た図である。図4中では、機械室と空気室との境界を一点鎖線で示している。
【0027】
図3に示すように、本実施形態では、排水管18を設けることに代えて、機械室と空気室を隔てる区画部材15をバルブカバー17の設置箇所の内側の位置まで延長している。すなわち、本実施形態の区画部材15は、バルブカバー17の設置箇所の内側の位置へ延びる延長部分151を有している。図4に示すように、区画部材15の延長部分151により、バルブカバー17の設置箇所の内側の位置まで空気室が延長されている。このため、バルブカバー17で受けた水を、空気室に直接に流入させることが可能になっている。バルブカバー17から空気室に流入した水は、図4中の太い矢印で示すようにして、空気室内を流れる。
【0028】
以上説明した実施の形態2によれば、バルブカバー17で受けた水は、空気室に直接に流入するので、機械室に流入することはない。このため、前述した実施の形態1と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0029】
1 本体
2 入水バルブ
3 入水管
4 水冷媒熱交換器
5 出湯管
6 出湯バルブ
7 圧縮機
8 高圧側冷媒配管
9 内部熱交換器
10 膨張弁
11 空気冷媒熱交換器
12 ファン
15 区画部材
151 延長部分
16 ベース
17 バルブカバー
18 排水管
20 ヒートポンプ式給湯機
50 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気の熱を冷媒に吸熱させる空気冷媒熱交換器と、冷媒を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮された冷媒によって水を加熱する水冷媒熱交換器と、膨張弁と、これらを接続する冷媒流路とを有する冷凍サイクル回路を内蔵した本体と、
前記本体の内部を、少なくとも前記空気冷媒熱交換器が配置されている第1空間と、少なくとも前記圧縮機が配置されている第2空間とに区画する区画部材と、
前記本体の外側に設置され、水の入口となる入水バルブと、
前記本体の外側に設置され、湯の出口となる出湯バルブと、
前記入水バルブおよび出湯バルブを覆い、前記入水バルブおよび出湯バルブから滴下した結露水等の水を受けるバルブカバーと、
を備え、
前記バルブカバー内に溜まった水を前記第2空間内に流入させることなく前記第1空間内に流入させるように構成されていることを特徴とするヒートポンプ式給湯機。
【請求項2】
前記バルブカバー内の水を前記第1空間内へ送る排水流路を備えることを特徴とする請求項1記載のヒートポンプ式給湯機。
【請求項3】
前記区画部材は、前記バルブカバーの設置箇所の内側の位置まで前記第1空間を延長するように形成されており、
前記バルブカバー内の水が前記バルブカバーから直接に前記第1空間内に流入可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載のヒートポンプ式給湯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−17874(P2012−17874A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153804(P2010−153804)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)