説明

ヒートポンプ給湯機

【課題】 除霜運転中においても沸き上げ運転を中断することなく着霜を除霜できるヒートポンプ給湯機を提供する。
【解決手段】 圧縮機13、冷媒水熱交換器14、第1切替弁15、第1膨張弁16、第1空気熱交換器17、第2膨張弁18、第2空気熱交換器19、第2切替弁20を順次配管で環状に接続したヒートポンプ冷媒回路21において、冷媒水熱交換器14と第1切替弁15との間と第2切替弁20の一方を第1冷媒バイパス管22で接続し、第1切替弁15の一方を圧縮機13と第2切替弁20との間に第2冷媒バイパス管23で接続して、着霜が発生している空気熱交換器に対して高温の冷媒が流入するように各切替弁を適切な開口方向に向け、各膨張弁の開度を調節することによって、除霜運転が行えると同時に沸き上げ運転が可能となるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、冷媒回路を備えたヒートポンプ給湯機について、特に湯水の沸き上げと空気熱交換器の除霜を効果的に行うものである。
【背景技術】
【0002】
従来のヒートポンプ給湯機として図7に示すようなものがあった。
湯水を貯湯する貯湯タンク50と配管で接続された加熱手段としての第1ヒートポンプ冷媒回路51aと第2ヒートポンプ冷媒回路51bとを備え、第1ヒートポンプ冷媒回路51aは、圧縮機52a、冷媒水熱交換器53を構成する冷媒側伝熱管53a、第1膨張弁54a、第1空気熱交換器55a、第2膨張弁56a、第2空気熱交換器57aを順次配管で接続されている。同様に、第2ヒートポンプ冷媒回路51bでは、圧縮機52b、冷媒水熱交換器53を構成する冷媒側伝熱管53b、第1膨張弁54b、第1空気熱交換器55b、第2膨張弁56b、第2空気熱交換器57bを順次配管で接続されている。また、冷媒側伝熱管53a、53bの熱が給水側伝熱管58a、58bに伝わることで貯湯タンク50内の湯水を加熱し沸き上げるものである。
【0003】
上記のようなヒートポンプ冷媒回路を2回路備えた構成で、沸き上げ運転時は第1膨張弁54aと第1膨張弁54bを所定の開口まで絞り第2膨張弁を全開にして2つの空気熱交換器で冷媒を加熱し、第1空気熱交換器55a及び55bの除霜運転時は第1膨張弁54a、54bを全開にして第2膨張弁56a、56bを所定の開口まで絞ることで、第1空気熱交換器55a、55bの除霜を行うと同時に第2空気熱交換器57a、57bによって湯水の沸き上げ運転を可能としたものがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−322084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この従来のものでは、第2空気熱交換器に着霜が発生し除霜を行う場合、第1膨張弁及び第2膨張弁を全開にして冷媒を流通させる必要があるため、空気熱交換器を蒸発器として使用できず、沸き上げ運転を停止させなければならなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1では湯水を貯湯する貯湯タンクと、前記貯湯タンク内の湯水を加熱する加熱手段としてのヒートポンプ冷媒回路とを備え、前記ヒートポンプ冷媒回路は、圧縮機、冷媒水熱交換器、膨張弁、空気熱交換器を順次配管で環状に接続されたヒートポンプ給湯機に於いて、前記ヒートポンプ冷媒回路を圧縮機、冷媒水熱交換器、第1切替弁、第1膨張弁、第1空気熱交換器、第2膨張弁、第2空気熱交換器、第2切替弁を順次配管で環状に接続し、前記冷媒水熱交換器と前記第1切替弁の間と前記第2切替弁の一方とを配管で接続し、前記第1切替弁の一方と前記第2切替弁と前記圧縮機の間とを配管で接続した回路で構成したものである。
【0007】
また、請求項2では前記第2空気熱交換器の除霜運転時には、前記第1切替弁と前記第2切替弁の弁方向を変化させ、第1膨張弁を全開にして第2膨張弁を絞った上で、前記第2切替弁、前記第2空気熱交換器、前記第2膨張弁、前記第1空気熱交換器、前記第1膨張弁、前記第1切替弁を順次介して冷媒が流通するものである。
【0008】
また、請求項3では前記第1空気熱交換器の除霜運転時には、前記第1膨張弁を全開にして第2膨張弁を絞った上で、前記第1切替弁、前記第1膨張弁、前記第1空気熱交換器、前記第2膨張弁、前記第2空気熱交換器、前記第2切替弁を順次介して冷媒が流通するものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、ヒートポンプ冷媒回路内のどちらの空気熱交換器に着霜が発生しても、切替弁によって一方の空気熱交換器で除霜を行いながら他方の空気熱交換器を蒸発器として使用できるので、沸き上げ運転を中断せずに除霜運転を行う事が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の一実施形態を示すヒートポンプ給湯機の概略構成図
【図2】この発明の一実施形態のヒートポンプユニットの動作を示したフローチャート
【図3】図2に示した両空気熱交換器の除霜運転の詳細を示したフローチャート
【図4】図2に示した第1空気熱交換器の除霜運転の詳細を示したフローチャート
【図5】図2に示した第2空気熱交換器の除霜運転の詳細を示したフローチャート
【図6】図5の実施例の冷媒回路を示すヒートポンプ給湯機の概略構成図
【図7】従来のヒートポンプ給湯機の概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、この発明を適用した一実施形態を図1に基づいて説明する。
1はヒートポンプユニット2で加熱された湯水を貯湯する貯湯タンクであり、3は一定の圧力で給水管4内にある市水を貯湯タンク1内に供給する給水栓であり、5は台所や洗面所等に設けられた給湯栓である。
【0012】
6は貯湯タンク1上部の高温水を流入する出湯管7と給水管4から分岐した給水バイパス管8とを接続して給湯設定温度になるよう弁開度を調節する混合弁であり、9は給湯設定温度に調節された湯水を給湯栓5へ搬送する給湯管である。
【0013】
10は貯湯タンク1下部とヒートポンプユニット2を配管で接続するヒーポン往き管であり、11はヒートポンプユニット2と貯湯タンク1上部を配管で接続するヒーポン戻り管であり、12はヒーポン往き管10途中にあり貯湯タンク1内の湯水をヒートポンプユニット2内に搬送するヒーポン循環ポンプである。
【0014】
ヒートポンプユニット2は冷媒を圧縮する圧縮機13と、高温高圧の冷媒と貯湯タンク1内の湯水とを熱交換する冷媒水熱交換器14と、冷媒の流動方向を切り替える第1切替弁15と、冷媒を減圧させる減圧手段としての第1膨張弁16と、低温低圧の冷媒と外気との熱交換を行う第1空気熱交換器17と、第2膨張弁18と、第2空気熱交換器19と、第2切替弁20とを冷媒配管で環状に接続したヒートポンプ冷媒回路21で構成されている。また、冷媒水熱交換器14と第1切替弁15の間から第2切替弁20の一方へ冷媒の流動が可能なように第1冷媒バイパス管22で接続されており、第1切替弁15の一方は第2切替弁20と圧縮機13との間へ冷媒を流動可能とする第2冷媒バイパス管23で接続されている。
【0015】
24は第1空気熱交換器17内の冷媒温度を検知する第1空熱交温度検知器であり、25は第2空気熱交換器19内の冷媒温度を検知する第2空熱交温度検知器である。
【0016】
26は貯湯タンク1内の湯水の温度を検知するため側面高さ方向に複数設置された貯湯温度検知器である。また、27は貯湯温度検知器26の検知結果やヒートポンプユニット2内にある各検知器の情報等から湯水の沸き上げ運転を行うか判断する加熱制御部である。
【0017】
28は各空熱交温度検知器で検知された温度が予め設定された設定温度よりも低く着霜のおそれがある時、高温高圧の冷媒を空気熱交換器内に流入させて着霜を溶かす除霜運転を行う除霜運転制御部であり、第1、2空気熱交換器内を共に除霜する際に各機器の動作を制御する両空熱交除霜手段28aと、第1空気熱交換器17を除霜する際に各機器の動作を制御する第1空熱交除霜手段28bと、第2空気熱交換器19内を除霜する際に各機器の動作を制御する第2空熱交除霜手段28cとを備えている。
【0018】
次に、この実施形態のヒートポンプユニット2の動作について図2のフローチャートに基づいて説明する。
まず、加熱制御手段27が貯湯タンク1側面に複数設置された貯湯温度検知器26で得た情報から沸き上げ運転を開始するか判断する(S101)。沸き上げ運転を開始する場合は次のS102の判断へ進み、沸き上げ運転を行わない場合は当該S101の判断を繰り返す。
【0019】
S101で沸き上げ運転を開始する判断をした場合、第1膨張弁16を所定開度まで絞り第2膨張弁18を全開にすることで第1膨張弁16で減圧された冷媒が2つの空気熱交換器内を流通する(S102)。次に、第1切替弁15を冷媒が第1膨張弁16方向に流動するように弁を調節し、第2切替弁20を冷媒が圧縮機13方向に流動するように弁を調節して、冷媒が環状に循環するヒートポンプ冷媒回路21を形成する(S103)。ヒートポンプ冷媒回路21が形成された後に圧縮機13を運転させて(S104)、湯水の沸き上げ運転を開始する。
【0020】
沸き上げ運転開始後、第1空熱交温度検知器24で検知された温度が設定温度(例えば−15℃)以下になっているか除霜運転制御部28が判断して(S105)、設定温度以下であれば、同じように第2空熱交温度検知器25で検知された温度が設定温度以下であるか判断して(S106)、設定温度以下であれば、両方の空気熱交換器に着霜していると判断して第1空気熱交換器17と第2空気熱交換器19の除霜運転を開始し(S107)、設定温度より高ければ、第1空気熱交換器17に着霜があると判断して第1空気熱交換器17の除霜運転を開始する(S108)。また、S105で第1空熱交温度検知器24で検知された温度が設定温度を超えていた場合、第2空熱交温度検知器25で検知された温度が設定温度以下であるか判断して(S109)、設定温度以下であれば、第2空気熱交換器19に着霜があると判断して第2空気熱交換器19の除霜運転を開始し(S110)、設定温度を超えていればS111の判断へ移る。
【0021】
S107、S108及びS110で各空気熱交換器の除霜運転が終了した後、またはS109で第2空熱交温度検知器25の検知結果が設定温度以上だった場合、加熱制御部27が沸き上げ運転を終了するか判断して(S111)、沸き上げ運転を終了する場合は圧縮機13の運転を停止させて沸き上げ運転を終了し(S112)、沸き上げ運転を継続する場合は再びS105で第1空熱交温度検知器24で検知された温度が設定温度以下であるか判断する。
【0022】
次に、上記S107における第1と第2両方の空気熱交換器の除霜運転の詳細を図3に基づいて説明する。
まず、除霜運転が開始されると、両空熱交除霜手段28aが第1膨張弁16の開度を全開にして(S201)、第2膨張弁18も全開になるよう調節する(S202)。そして、第2空熱交温度検知器25で検知された温度が第2空気熱交換器19の除霜を終える完了温度(例えば15℃)を超えたか判断し(S203)、完了温度を超えていれば除霜運転を終了させ、完了温度以下であれば、除霜運転の継続時間が予め設定されている限界時間を超えたか判断して(S204)、限界時間を超えていれば除霜運転を終了させ、限界時間以下であれば再びS203で第2空熱交温度検知器25が検知した温度から次のステップへ移る。
【0023】
次に、上記S108における第1空気熱交換器17の除霜運転の詳細を図4に基づいて説明する。
まず、除霜運転が開始されると、第1空熱交除霜手段28bが第1膨張弁16の開度を全開にして(S301)、第2膨張弁18を所定開度に絞る(S302)。そして、第2空気熱交換器19を蒸発器として使用することで沸き上げ運転を継続しながら、第1空熱交温度検知器24で検知された温度が上記完了温度を超えたか判断し(S303)、完了温度を超えていれば除霜運転を終了させ、完了温度以下であれば、除霜運転の継続時間が上記限界時間を超えたか判断して(S304)、限界時間を超えていれば除霜運転を終了させ、限界時間以下であれば再びS303で第1空熱交温度検知器24が検知した温度から次のステップへ移る。
【0024】
上記S301とS302のステップで、圧縮機13で高温高圧にされた冷媒は第1切替弁15へ向かい、第1膨張弁16、第1空気熱交換器17、第2膨張弁18、第2空気熱交換器19、第2切替弁20内から再び圧縮機13へ流入するヒートポンプ冷媒回路22を流通することで、効果的に第1空気熱交換器17の除霜を行え、かつ第2空気熱交換器19を蒸発器として使用することで沸き上げ運転が可能となる。
【0025】
次に、上記S110における第2空気熱交換器19の除霜運転の詳細を図5及び図6に基づいて説明する。
まず、除霜運転が開始されると第2空熱交除霜手段28cは、第1切替弁15の開口方向を変化させて冷媒を第1膨張弁16から第2冷媒バイパス管23内に流入させる(S401)。次に、第2切替弁20の開口方向を変化させて冷媒を第1冷媒バイパス管22から第2空気熱交換器19内に流入させる(S402)。そして、第1膨張弁16の開度を全開にして(S403)、第2膨張弁18を所定開度に絞る(S404)。
【0026】
図6に示されるようにS401からS404までのステップで、圧縮機13で高温高圧にされた冷媒は第1冷媒バイパス管22へ向かい、第2切替弁20から第2空気熱交換器19、第2膨張弁18、第1空気熱交換器17、第1膨張弁16、第1切替弁15内を流通し、第2冷媒バイパス管23から圧縮機13へ向かうような回路が形成されることで、効果的に第2空気熱交換器19内の除霜が行え、かつ第1空気熱交換器17を蒸発器として使用することで沸き上げ運転が可能となる。
【0027】
S404の次に、第2空熱交温度検知器25で検知された温度が上記完了温度を超えたか判断して(S405)、完了温度を超えていれば除霜運転を終了させ、完了温度以下であれば、除霜運転の継続時間が上記限界時間を超えたか判断して(S406)、限界時間を超えていれば除霜運転を終了させ、限界時間以下であれば再びS405で第2空熱交温度検知器25が検知した温度から次のステップへ移る。
【0028】
以上のように、ヒートポンプ冷媒回路21内にある各切替弁の開口方向を変化させて冷媒の流動方向を変化させ、各膨張弁の開度を調節することで、第1空気熱交換器17だけでなく第2空気熱交換器19の除霜も可能にしたので、どちらか一方に着霜が発生した場合、一方で除霜運転を行いながら他方で沸き上げ運転をおこなえるため、給湯使用する高温水が不足するおそれを解消できる。
【0029】
なお、除霜運転の開始条件は上記実施例に限らず、例えば、第1空気熱交換器17の除霜開始する設定温度を第2空気熱交換器19の設定温度よりも所定値高くする等して、空気熱交換器の除霜運転が開始されるタイミングをずらして交互に行われるようにすることで、一方で除霜運転を行い他方で沸き上げ運転を行う状態を継続させることも可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 貯湯タンク
13 圧縮機
14 冷媒水熱交換器
15 第1切替弁
16 第1膨張弁
17 第1空気熱交換器
18 第2膨張弁
19 第2空気熱交換器
20 第2切替弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯水を貯湯する貯湯タンクと、前記貯湯タンク内の湯水を加熱する加熱手段としてのヒートポンプ冷媒回路とを備え、前記ヒートポンプ冷媒回路は、圧縮機、冷媒水熱交換器、膨張弁、空気熱交換器を順次配管で環状に接続されたヒートポンプ給湯機に於いて、前記ヒートポンプ冷媒回路を圧縮機、冷媒水熱交換器、第1切替弁、第1膨張弁、第1空気熱交換器、第2膨張弁、第2空気熱交換器、第2切替弁を順次配管で環状に接続し、前記冷媒水熱交換器と前記第1切替弁の間と前記第2切替弁の一方とを配管で接続し、前記第1切替弁の一方と前記圧縮機と前記第2切替弁との間とを配管で接続した回路で構成したことを特徴とするヒートポンプ給湯機。
【請求項2】
前記第2空気熱交換器の除霜運転時には、前記第1切替弁と前記第2切替弁の弁方向を変化させ、第1膨張弁を全開にして第2膨張弁を絞った上で、前記第2切替弁、前記第2空気熱交換器、前記第2膨張弁、前記第1空気熱交換器、前記第1膨張弁、前記第1切替弁を順次介して冷媒が流通することを特徴とした前記請求項1記載のヒートポンプ給湯機。
【請求項3】
前記第1空気熱交換器の除霜運転時には、前記第1膨張弁を全開にして第2膨張弁を絞った上で、前記第1切替弁、前記第1膨張弁、前記第1空気熱交換器、前記第2膨張弁、前記第2空気熱交換器、前記第2切替弁を順次介して冷媒が流通することを特徴とする前記請求項2記載のヒートポンプ給湯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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