説明

ヒートポンプ給湯機

【課題】従来のヒートポンプ給湯機は逆風時に圧縮機の負荷オーバーで異常停止してしまうことがあった。
【解決手段】冷媒を圧縮して吐出する運転周波数の変更可能な圧縮機8と、圧縮機8からの冷媒と給湯用の水とを熱交換する水熱交換器9と、水熱交換器9からの冷媒を減圧膨張させる開度変更可能な膨張弁10と、膨張弁10からの低温低圧冷媒と空気とを熱交換する空気熱交換器11と、空気熱交換器11に空気を送風する送風機12と、空気熱交換器11への送風状態が逆風状態であることを検知する風向検知手段13、22と、風向検知手段13、22が逆風状態を検知すると、送風機12の駆動を停止すると共に、圧縮機8の運転周波数を低下する、および/または、膨張弁10の開度を開くようにした負荷軽減制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気熱源のヒートポンプで給湯用の水を沸き上げるヒートポンプ給湯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりこの種のヒートポンプ給湯機では、特許文献1に示されるように、給湯用の湯水を貯湯する貯湯タンクと、貯湯タンク内の湯水を加熱するヒートポンプユニットとを備え、ヒートポンプユニットには、冷媒を高温高圧に圧縮する圧縮機と、給湯用の湯水を加熱する水熱交換器と、膨張弁と、空気熱交換器と、空気熱交換器に送風する送風機とが備えられているものであった。
【0003】
そして、空気熱交換器に送風する送風機に逆風が吹いて送風機の回転数が目標回転数に満たない場合は、送風機の駆動を停止して、送風ファンをフリーランさせて逆風によって空気熱交換器へ熱源となる外気を通風させるようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−144329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところがこの従来のものでは、送風機の駆動を停止すると、空気熱交換器を流れる風が順風から一旦無風となってその後に逆風となるが、無風状態の際に、空気熱交換器での冷媒の蒸発能力が低下し、冷媒密度が高い冷媒が圧縮機に吸入されて圧縮されるため、圧縮機の負荷が急上昇して、圧縮機が異常停止してしまうことがあった。
【0006】
また、風向が定まらず順風と逆風を頻繁に繰り返すような場合は、圧縮機負荷の急上昇により頻繁に圧縮機が停止してしまい、給湯用の湯を沸き上げることができない事態に至る可能性もあった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明は上記課題を解決するため、冷媒を圧縮して吐出する運転周波数の変更可能な圧縮機と、前記圧縮機からの冷媒と給湯用の水とを熱交換する水熱交換器と、前記水熱交換器からの冷媒を減圧膨張させる開度変更可能な膨張弁と、前記膨張弁からの低温低圧冷媒と空気とを熱交換する空気熱交換器と、前記空気熱交換器に空気を送風する送風機と、前記空気熱交換器への送風状態が逆風状態であることを検知する風向検知手段と、前記風向検知手段が逆風状態を検知すると、前記送風機の駆動を停止すると共に、前記圧縮機の運転周波数を低下する、および/または、前記膨張弁の開度を開くようにした負荷軽減制御を行う。
【0008】
また、前記負荷軽減制御に続いて、逆風状態を検知する前の加熱能力よりも加熱能力を低下する能力低下制御を行うと共に、前記風向検知手段が逆風状態の解消を検知すると、前記送風機の駆動を再開し、前記能力低下制御を終了して加熱能力を元に戻すようにした。
【0009】
また、前記風向検知手段は、前記送風機の回転数を検出する回転数センサを備え、この回転数センサで検出する前記送風機の回転数が目標回転数よりも一定回転数以上低い場合あるいは回転数センサが逆回転を検出している場合に、逆風状態であることを検知するようにした。
【発明の効果】
【0010】
以上のように本発明によれば、順風から逆風への切り換わり時に空気熱交換器の蒸発能力が低下して圧縮機に流入する冷媒密度が急激に上昇する際に、圧縮機の運転周波数を低下するかまたは膨張弁の開度を開いて負荷を低減するので、高負荷によって運転停止に至る可能性を減少することができ、風向の安定しない状況においても安定的に給湯用の水を加熱する沸き上げ運転を行うことが可能となる。
【0011】
また、逆風が収まって送風機を駆動再開した後に一時的に無風状態を経過するが、その際に、加熱能力が低減されているため負荷が小さく、圧縮機に流入する冷媒密度が急激に上昇しても運転停止に至る可能性を減少することができ、風向の安定しない状況においても安定的に給湯用の水を加熱する沸き上げ運転を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態の概略構成図
【図2】同一実施形態の作動を説明するためのタイムチャート
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
1は給湯用の湯水を貯える貯湯タンク2を備えたタンクユニット、3は貯湯タンク2下部に接続された給水管、4は貯湯タンク2上部に接続された出湯管、5は貯湯タンク2の側面上下に複数設けられ貯湯温度を検出する貯湯温度センサである。
【0014】
6は給湯用の湯水を沸き上げるヒートポンプ回路7を備えたヒートポンプユニットで、ヒートポンプ回路7は、冷媒を高温高圧に圧縮して吐出する圧縮機8と、圧縮機8からの高温高圧の冷媒と給湯用の水とを熱交換する水熱交換器9と、水熱交換器9から流出した温度低下した冷媒を減圧膨張させる膨張弁10と、膨張弁10で低温低圧とされた冷媒と熱源となる空気とを熱交換する空気熱交換器11とを冷媒配管で環状に接続して構成されている。ここで圧縮機8はインバータ制御によってその運転周波数を可変可能に構成され、膨張弁10はその開度を可変可能に構成されているものである。
【0015】
12は空気熱交換器11に外気を送風するモータ駆動の送風機、13は送風機の回転数を送風方向と共に検出する回転数センサ、14は空気熱交換器11を通過する外気の温度を検出する外気温度センサ、15は圧縮機8から吐出された冷媒温度を検出する吐出冷媒温度センサである。
【0016】
16は貯湯タンク2下部と水熱交換器9の入口を接続する入水管、17は水熱交換器9の出口と貯湯タンク2上部を接続する沸き上げ管、18は入水管16途中に設けられた循環ポンプ、19は入水管16に設けられて入水温度を検出する入水温度センサ、20は沸き上げ管17に設けられて水熱交換器9を通過後の沸き上げ温度を検出する沸き上げ温度センサである。
【0017】
21は予め制御プログラムを記憶され、記憶処理、演算処理等を行うマイクロコンピュータを備えてタンクユニットの制御を行う貯湯制御手段で、貯湯温度センサ5で検出する各貯湯温度から沸き上げ運転の要不要を判断して、ヒートポンプユニット6に沸き上げ運転の開始と停止を指示するものである。
【0018】
22は予め制御プログラムを記憶され、記憶処理、演算処理等を行うマイクロコンピュータを備えてヒートポンプユニット6の制御を行う加熱制御手段で、貯湯制御手段21からの指示によって沸き上げ運転を開始または停止を行うものである。また、この加熱制御手段22と回転数センサ13によって空気熱交換器11への送風状態が逆風状態であることを検知する風向検知手段を構成している。
【0019】
次に、沸き上げ運転時の作動について説明すると、加熱制御手段22は貯湯制御手段21からの沸き上げ運転の開始指示を受けると、所定の加熱能力で運転すべく圧縮機8を所定の運転周波数で駆動し、送風機12を所定の指示回転数で駆動し、さらに膨張弁10を所定開度にすると共に、循環ポンプ18を駆動して沸き上げ温度センサ20で検出する沸き上げ温度が所望の沸き上げ温度となるように沸き上げ運転を開始する。
【0020】
この実施形態では、圧縮機8の所定の運転周波数は、所定の加熱能力、所望の沸き上げ温度、外気温度センサ14で検出する外気温度、および貯湯温度センサ5あるいは入水温度センサ19で検出した入水温度に応じて加熱制御手段22が導出し、膨張弁10の開度は吐出冷媒温度センサ15が検出する温度が所定の温度となるようにフィードバック制御される。また、送風機12の所定の指示回転数は、所定の加熱能力および外気温度に応じて定められ、循環ポンプ18の回転数は沸き上げ温度センサ20で検出する沸き上げ温度が所望の沸き上げ温度と一致するようにフィードバック制御される。
【0021】
そして、貯湯タンク2内が満タンまで沸き上げられたことを貯湯温度センサ5で検出すると、貯湯制御手段21は沸き上げ運転の停止を加熱制御手段22に向けて指示し、加熱制御手段22は圧縮機8、膨張弁10、送風機12、循環ポンプ18の作動を停止して沸き上げ運転を停止するようにしている。
【0022】
この沸き上げ運転を行っている最中に強い逆風が空気熱交換器11に吹き付けた場合の作動について図2のタイムチャートに基づいて説明する。
【0023】
沸き上げ運転中に逆風が吹き始めると(T1)、モータ負荷が増加するため送風機12の回転数が指示回転数に対して低下し始める。そして、回転数センサ13で検出する回転数が指示回転数よりも一定値以上下回ったことを検出すると(T2)、加熱制御手段22(風向検知手段)は逆風状態であると判断し、加熱制御手段22は送風機12の駆動を停止し、圧縮機8の運転周波数を一定値だけ低下すると同時に、膨張弁10の開度を一定開度だけ開く負荷軽減制御を行う。
【0024】
このとき、空気熱交換器11を通過する風量が送風機12による順風から送風機12の停止に伴い無風状態を経過して逆風に移行するため、空気熱交換器11での蒸発能力が一時的に極小となり空気熱交換器11の出口冷媒密度は一時的に急上昇する。しかし、加熱制御手段22が圧縮機8の運転周波数を低下し、膨張弁10の開度を開く負荷軽減制御を行っているため、ヒートポンプ回路7の高圧側の圧力が低下し、圧縮機8の負荷の急上昇を抑制されるので、従来よりも圧縮機8の負荷オーバーによる異常停止が発生しにくい。
【0025】
そして、逆風検知から所定の時間が経過すると(T3)、加熱制御手段は、逆風検知前の所定の加熱能力よりも一定値だけ加熱能力を低下する能力低下制御を開始する。このとき、加熱制御手段22は低下された所定の加熱能力、所望の沸き上げ温度、逆風を検知する前に外気温度センサ14で検出していた外気温度、および貯湯温度センサ5あるいは入水温度センサ19で検出した入水温度に応じて新たな運転周波数を導出し、圧縮機8を新たな運転周波数で駆動する。このとき、加熱能力が低下されたことに伴い、膨張弁10の開度もフィードバック制御により加熱能力低下前の開度よりも開き気味に制御されることとなる。
【0026】
そして、能力低下制御中に逆風が弱まると(T4)、送風機12の逆回転数が低下し始め、回転数センサ13が所定の逆回転数以下まで低下したことを検出すると(T5)、加熱制御手段22(風向検知手段)は逆風状態が解消されたと判断し、加熱制御手段22は送風機12の駆動を再開する。
【0027】
そして、送風機12の運転再開から所定時間が経過した時点(T6)で、加熱制御手段22は能力低下制御を終了して逆風検知前の所定の加熱能力での通常運転に復帰するようにしている。
【0028】
このとき、空気熱交換器11を通過する風量が逆風から送風機12の駆動再開に伴い無風状態を経過して順風に移行するため、空気熱交換器11での蒸発能力が一時的に極小となり空気熱交換器11の出口冷媒密度は一時的に急上昇する。しかし、加熱制御手段22が加熱能力を低下させる能力低下制御を行っているため、ヒートポンプ回路7の高圧側の圧力が低下し、圧縮機8の負荷の急上昇が抑制される。さらには、送風機12の駆動再開から所定時間経過後に元の加熱能力に戻すので、圧縮機8の負荷オーバーを防止することができ、異常停止の発生を防止することができる。
【0029】
このように、順風から逆風への切り換わり時に空気熱交換器11の蒸発能力が低下して圧縮機8に流入する冷媒密度が急激に上昇する際に、圧縮機8の運転周波数を低下するかまたは膨張弁10の開度を開いて負荷を低減するので、高負荷によって運転停止に至る可能性を減少することができ、風向の安定しない状況においても安定的に給湯用の水を加熱する沸き上げ運転を行うことが可能となる。
【0030】
また、逆風が収まって送風機12を駆動再開した後に一時的に無風状態を経過するが、その際に、加熱能力が低減されているため負荷が小さく、圧縮機8に流入する冷媒密度が急激に上昇しても運転停止に至る可能性を減少することができ、風向の安定しない状況においても安定的に給湯用の水を加熱する沸き上げ運転を行うことが可能となる。
【0031】
なお、本発明は上記の実施形態のみに限定されるものではなく、その趣旨を変更しない範囲で改変されても良いもので、例えば、風向検知手段として送風機12の回転数センサ13を用いた例を説明したが、これに代えて、外気温度センサ14が逆風時に空気熱交換器11で冷却された空気の温度を検出することを利用して、外気温度センサ14を用いて風向検知手段を構成しても良いものである。
【0032】
また、負荷軽減制御においては、圧縮機8の運転周波数を低下させると共に、膨張弁10の開度を開くようにした例を説明したが、圧縮機8の運転周波数を低下させるのみの負荷軽減制御、あるいは、膨張弁10の開度を開くのみの負荷軽減制御でも良いものである。
【0033】
また、ヒートポンプ給湯機として貯湯タンク2を有した貯湯式のヒートポンプ給湯機を例に説明したが、これに限られず、例えば、貯湯タンク2のない瞬間式のヒートポンプ給湯機でも良いものである。
【符号の説明】
【0034】
8 圧縮機
9 水熱交換器
10 膨張弁
11 空気熱交換器
12 送風機
13 回転数センサ(風向検知手段)
22 加熱制御手段(風向検知手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮して吐出する運転周波数の変更可能な圧縮機と、前記圧縮機からの冷媒と給湯用の水とを熱交換する水熱交換器と、前記水熱交換器からの冷媒を減圧膨張させる開度変更可能な膨張弁と、前記膨張弁からの低温低圧冷媒と空気とを熱交換する空気熱交換器と、前記空気熱交換器に空気を送風する送風機と、前記空気熱交換器への送風状態が逆風状態であることを検知する風向検知手段と、前記風向検知手段が逆風状態を検知すると、前記送風機の駆動を停止すると共に、前記圧縮機の運転周波数を低下する、および/または、前記膨張弁の開度を開くようにした負荷軽減制御を行うことを特徴とするヒートポンプ給湯機。
【請求項2】
前記負荷軽減制御に続いて、逆風状態を検知する前の加熱能力よりも加熱能力を低下する能力低下制御を行うと共に、前記風向検知手段が逆風状態の解消を検知すると、前記送風機の駆動を再開し、前記能力低下制御を終了して加熱能力を元に戻すようにしたことを特徴とする請求項1記載のヒートポンプ給湯機。
【請求項3】
前記風向検知手段は、前記送風機の回転数を検出する回転数センサを備え、この回転数センサで検出する前記送風機の回転数が目標回転数よりも一定回転数以上低い場合あるいは回転数センサが逆回転を検出している場合に、逆風状態であることを検知するようにしたことを特徴とする請求項2記載のヒートポンプ給湯機。

【図1】
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【図2】
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