説明

ビスフェノール製造用の触媒の製造

イオン交換樹脂触媒の促進剤での部分的な中和によってイオン交換樹脂触媒を製造する改善された方法である。促進剤および流体を、容器または反応器の中へ導入し、容器または反応器の中にイオン交換樹脂触媒床を形成するイオン交換樹脂触媒でこれを部分的に充填する。流体および促進剤は、イオン交換樹脂触媒床を部分的に流体化させて触媒床全体に亘る促進剤の迅速な均一分布を実現するのに十分な速度で上向流方向に再循環させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
発明の分野
本発明は、容器または反応器の中での触媒の促進剤による部分中和によってイオン交換樹脂触媒を製造する方法に関する。触媒は、ビスフェノール(例えばビスフェノール−A)の製造のために有用であることができる。
【背景技術】
【0002】
背景および関連技術の説明
ビスフェノールAは、一般的に、促進剤(例えば、アミノメルカプタン促進剤)によって部分的に中和されたイオン交換樹脂触媒(例えば、カチオン交換樹脂触媒)を用いたフェノールとアセトンとの反応によって製造される。
【0003】
イオン交換樹脂触媒の部分中和(例えば、100%未満の中和)(「促進(promotion)」ということもある)は、促進剤を良好に撹拌された容器または反応器(イオン交換樹脂触媒および流体(例えば水)を収容する)にゆっくり添加して、促進剤を容器または反応器の全体に亘って一様に分布させることによって実現できる。しかし、多くのビスフェノール−A製造プラントは、良好に撹拌された容器をこの目的のためには有さない。代わりに、種々の公知の技術を用いて、促進剤を、固定触媒床反応器中のイオン交換樹脂触媒に、反応器をビスフェノール−A製造に用いる直前に添加する。促進剤は、典型的には、固定触媒床反応器内のイオン交換樹脂触媒に、酸−塩基中和反応によって、またはイオン交換プロセスによって(促進剤が、塩基ではなく塩として導入される場合)結合している。酸−塩基中和反応およびイオン交換プロセスの両者とも極めて急速に起こるため、これらの方法を用いて固定触媒床全体に亘る促進剤の一様または均一な分布を得ることは難しい。
【0004】
GB1 539 463号は、メルカプトアミン(またはメルカプトアミンの塩)の溶液を固定触媒床反応器に通し、次いで水を固定触媒床に下向流方向に、触媒床全体に亘ってメルカプトアミンを分布させるのに十分な時間通すことによる、カチオン交換樹脂触媒のメルカプトアミン促進剤による部分中和を記載する。GB1 539 463号は、迅速かつ一様な促進剤の分布を与えるために必要な流速、促進剤添加速度、または水中の酸濃度を記載しない。
【0005】
JP06−296871号は、ビスフェノール−Aを製造するために反応器を触媒で充填する方法を記載し、該方法は、(i)反応器を非変性樹脂触媒で充填して非変性樹脂触媒充填層を反応器内に形成するステップ、および(ii)非変性樹脂触媒の一部を、硫黄含有アンモニウム塩を伴うフェノール溶液と酸性化水中で反応させることによって樹脂触媒を作製するステップを含む。JP06−296871号は、酸性化流体を再循環させて反応器に戻すことを教示しない。これに代えて、JP06−296871号は、水を樹脂触媒層に通した後に水を反応器から「排出する」ことを教示する。従って、JP06−296871号は、促進のワンパス法を開示する。
【0006】
WO2001−094014号は、触媒の反応器内での促進を記載する。促進は、促進剤の溶液、酸および水を反応器に通すことによって実現する。溶液はケトンを水中に含有する。
【0007】
WO2000−053315号およびWO2005−042154号は、エアまたは不活性ガスのバブルを反応器の底部または側部に注入して触媒床を混合する(促進剤を反応器内に導入する一方で、または促進剤を反応器に添加した後で)ことを記載する。
【0008】
WO 2005−021155号は、促進剤および酸の水中の溶液を反応器に亘って「平衡が得られる」まで循環させることによる反応器の促進を記載する。平衡の要求は、WO2005−021155号で明確には規定されていない。
【0009】
WO2005−102520号は、ビスフェノールプラント廃水から回収された促進剤を触媒床の促進用に使用することを記載する。
【0010】
米国特許第3,394,089号は、非中和または塩の形のメルカプトアルキルアミンを、イオン交換樹脂触媒の撹拌された水性スラリーに添加して、一様に分布しかつ部分的に中和された触媒を得ることを記載する。
【0011】
米国特許第6,723,881号は、別個の撹拌された容器を、触媒への促進剤添加のために使用し、次いで触媒を固定床反応器内に移すことを記載する。
【0012】
要約すると、先行技術は、イオン交換樹脂触媒床全体に亘る促進剤の迅速かつ一様な分布が得られるような条件を与えていない。先行技術で開示される方法は、追加的な設備の使用、より長い製造時間、および/またはより高い製造コストをもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、産業において、先行技術で記載される別個の混合容器またはガスの添加なしで、迅速な様式でのイオン交換樹脂触媒床全体に亘る促進剤の一様な分布を与える、イオン交換樹脂触媒を製造する改善された方法についての要求が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の要約
本発明は、イオン交換樹脂触媒を製造する方法を対象とする。該方法は、(a)容器をイオン交換樹脂触媒で部分的に充填してイオン交換樹脂触媒床を容器内に形成すること、(b)流体を容器内に導入すること、(c)流体をイオン交換樹脂触媒床経由で上向流(upflow)方向に再循環させること、(d)促進剤(promoter)を該再循環させる流体中に導入すること、および(e)該再循環させる流体を、該促進剤をイオン交換樹脂触媒床全体に亘って一様に分布させるのに十分な速度に維持すること、を含む。
【0015】
本発明の一態様において、容器内の流体は、少なくとも約5%の触媒床膨張を実現するのに十分な速度に維持する。この様式において、促進剤の均一な分布を迅速に実現できる。
【0016】
本発明の別の態様において、容器を部分的にイオン交換樹脂触媒で充填でき、例えば容器の約50パーセント〜約95パーセントを、流体の容器への導入前に触媒で充填できる。次いで、促進剤を容器に、イオン交換樹脂触媒を部分的に中和するのに十分な量で導入できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明の詳細な説明
以下の詳細な説明において、本発明の具体的な態様を、その好ましい態様との関係で説明する。しかし、以下の説明が本発明の技術の特定の態様または特定の用途に特有である限りにおいて、例示のみであって単に例示的な態様の簡潔な説明を与えるのみであることが意図される。従って、本発明は、下記の具体的な態様に限定されず、むしろ;本発明は、特許請求の範囲の真の範囲に入る全ての変更、改変および均等の態様を包含する。
【0018】
本発明は、容器または反応器の中での触媒の促進剤による部分中和によってイオン交換樹脂触媒を製造する方法を提供する。促進剤は、容器または反応器の中に導入し、これを部分的にイオン交換樹脂触媒で充填してイオン交換樹脂触媒床を形成する。流体(例えば水または酸性化水)を触媒床に導入して、触媒床を介して、好ましくは上向流方向で再循環させる。再循環させる流体は、イオン交換樹脂触媒床を少なくとも部分的に流体化させて促進剤を触媒床全体に亘って迅速に一様に分布させるのに十分な速度に維持する。
【0019】
イオン交換樹脂触媒固定床中での促進剤の分散を支配する基本的な現象を注意深く調べた後、主な分散機構は、触媒固定床の部分流体化に起因する触媒粒子移動と直接関連することを見出した。本発明を何らの一理論に限定するものでもないが、再循環させる流体の十分な上向流速度を維持することは、(1)触媒床の膨張および少なくとも部分的な流体化を与え、そして(2)触媒粒子と促進剤との適切な混合を促進する、と理論付けられる。結果として、過度に促進された触媒粒子は、低く促進される触媒粒子と密接に接触する。流体(例えば水)の妥当な酸性化はまた、触媒粒子と流体との間でのプロトン化促進剤のイオン交換の効率を増大させることにより、促進剤(例えば、酸性化水中でプロトン化促進剤となるもの)の隣接触媒粒子間での動員を改善できる。
【0020】
よって、流体および促進剤を上向流方向に再循環させることにより触媒床全体に亘って促進剤を分布させ、そして触媒床を部分的に流体化するのに十分な速度に流体を維持することが重要である。この方法を用い、触媒床全体に亘る促進剤の迅速かつ均一な分布を実現できる。
【0021】
本発明で用いるイオン交換樹脂触媒は、酸型のカチオン交換樹脂であることができる。好ましくは、本発明で用いるカチオン交換樹脂はスルホン酸基を有する。カチオン交換樹脂の例としては、スルホン化スチレン/ジビニルベンゼンコポリマー樹脂、スルホン化架橋スチレン樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド−スルホン酸樹脂、およびベンゼン−ホルムアルデヒド−スルホン酸樹脂、ならびにこれらの任意の混合物が挙げられる。
【0022】
本発明において有用な、市販で入手可能なカチオン交換樹脂触媒の例としては、DOWEX(商標)50WX4,DOWEX(商標)50WX2,DOWEX(商標)M−31,DOWEX(商標)MONOSPHERE M−31,DOWEX(商標)DR−2030およびDOWEX(商標)MONOSPHERE DR−2030の触媒(The Dow Chemical Companyにより製造、販売)ならびにこれらの任意の混合物が挙げられる。
【0023】
本発明において有用な、市販で入手可能なイオン交換樹脂触媒の他の例としては、Diaion(商標)SK104,Diaion(商標)SKlB,Diaion(商標)PK208,Diaion(商標)PK212およびDiaion(商標)PK216(Mitsubishi Chemical Industries,Limitedにより製造);Amberlyst(商標)−31,Amberlyst(商標)−121,Amberlyst(商標)−232およびAmberlyst(商標)−131(Rohm&Haasにより製造);T−38,T−66およびT−3825(Thermaxにより製造);Lewatit(商標)K1131,Lewatit(商標)K1131S,Lewatit(商標)K1221,Lewatit(商標)K1261およびLewatit(商標)SC104(Lanxessにより製造);Indion(商標)140,Indion(商標)130,Indion(商標)180およびIndion(商標)225(Ion Exchange India Limitedにより製造);ならびにPurolite(商標) CT−124,Purolite(商標) CT−222およびPurolite(商標) CT−122(Puroliteにより製造)、ならびにこれらの任意の混合物を挙げることができる。
【0024】
本発明で用いる促進剤は、結合促進剤型の任意の促進剤であることができる。「結合促進剤」は、促進剤を触媒上に酸−塩基反応によって「固定する」少なくとも1つの塩基性官能基(例えばアミノ基)を含有する促進剤を意味する。塩基性官能基を有さない「フリー」または「可溶性」の促進剤とは区別される。この型のフリーまたは可溶性の促進剤は、通常濃縮反応媒体(例えば、フェノール、アセトンおよびビスフェノールの混合物)中に溶解し、そして、ビスフェノールAの製造の間に容器または反応器の中に供給する流体として使用できる。
【0025】
本発明において有用な好適な促進剤の例としては、アミノアルカンチオール、アルキル−アミノアルカンチオール,ジアルキル−アミノアルカンチオール,チアゾリジン,芳香族メルカプトアミン,メルカプトアルキルアミド,ピリジンアルカンチオール,メルカプトアルキルフェニルピリジン,N−アルキル−N−メルカプトアルキル−メルカプトアルキルアニリン,ジメルカプトアルキルピリジン,メルカプトアルキル−ベンジルアミン,アミノチオフェノール,ピリジンアルキルチオエステル,ピリジンアルキルスルフィド,イミジゾール(imidizole)アルキルチオール,イミジゾールアルキルチオエステル,イミジゾールアルキルスルフィド,フタルイミジンアルキルチオール,フタルイミジンアルキルチオエステル,多硫黄チオアルキルピリジン,多硫黄チオピリジン,多硫黄チオベンゾチアゾール,多硫黄チオイミジゾール,多硫黄チオベンズイミジゾール、およびこれらの混合物;または、1つ以上のチオールおよび/またはスルフィド官能基ならびにイオン結合によってカチオン交換樹脂に付着するのに好適な塩基性官能基を含有する他の化合物が挙げられる。1つ以上のチオールおよび/またはスルフィド官能基の例としては、官能基R−S−RおよびR−SHが挙げられる。上記で列挙する任意の促進剤の酸塩型(例えばアミノエタンチオール−HCl)もまた使用できる。幾つかの促進剤について、酸塩型が好ましい。これはしばしば水中でより可溶性であるからである。
【0026】
より具体的には、アミノアルカンチオールの例としては、アミノエタンチオール、アミノプロパンチオール、アミノブタンチオール、アミノペンタンチオール、およびこれらの任意の混合物等が挙げられる。
【0027】
ピリジンアルカンチオールの例としては、4−ピリジンメタンチオール、3−ピリジンメタンチオール、2−(4−ピリジル)エタンチオール、2−(2−ピリジル)エタンチオール、2−(3−ピリジル)エタンチオール、3−(4−ピリジル)プロパンチオール、3−(3−ピリジル)プロパンチオール、3−(4−ピリジル)プロパンチオール、4−(4−ピリジル)ブタンチオール、4−(3−ピリジル)ブタンチオール、4−(2−ピリジル)ブタンチオールおよびこれらの任意の混合物等が挙げられる。
【0028】
チアゾリジンの例としては、2,2−ジメチルチアゾリジン、2−メチル−2−フェニルチアゾリジン、3−メチルチアゾリジン、2−メチル−2−エチルチアゾリジン、2,2−(ペンタメチレン)チアゾリジン、2−メチル−2−ドデシルチアゾリジン、2−メチル−2−カルブエトキシメチルチアゾリジン、2,2,4,5−テトラメチルチアゾリジン、2,2,3−トリメチルチアゾリジン、2,2−ジメチル−3−オクチルチアゾリジン、2−メチル−2−エチル−3−アミノエチルチアゾリジン、2−シクロヘシルチアゾリジン、およびこれらの任意の混合物等が挙げられる。
【0029】
アミノチオフェノールの例としては、1,4−アミノチオフェノールおよびこれらの任意の混合物等が挙げられる。
【0030】
アルキルアミノアルカンチオールの例としては、プロピルアミノプロパンチオール、プロピルアミノブタンチオール、プロピルアミノエタンチオール、およびこれらの任意の混合物等が挙げられる。
【0031】
ジアルキルアミノアルカンチオールの例としては、ジメチルアミノエタンチオール、エチルシクロヘキシルアミノブタンチオール、およびこれらの任意の混合物等が挙げられる。
【0032】
メルカプトアルキルアミドの例としては、n−(2−メルカプトエチル)プロピオンアミド等が挙げられる。
【0033】
メルカプトアルキルフェニルピリジンの例としては、2−(4−メルカプトメチルフェニル)ピリジン、3−(4−メルカプトメチルフェニル)ピリジン、4−(4−メルカプトメチルフェニル)ピリジン、2−(3−メルカプトメチルフェニル)ピリジン、3−(3−メルカプトメチルフェニル)ピリジン、4−(3−メルカプトメチルフェニル)ピリジン、2−(2−メルカプトメチルフェニル)ピリジン、3−(2−メルカプトメチルフェニル)ピリジン、4−(2−メルカプトメチルフェニル)ピリジン、2−(4−(2−メルカプトエチル)フェニル)ピリジン、3−(4−(2−メルカプトエチル)フェニル)ピリジン、4−(4−(2−メルカプトエチル)フェニル)ピリジン、2−(3−(2−メルカプトエチル)フェニル)ピリジン、3−(3−(2−メルカプトエチル)フェニル)ピリジン、4−(3−(2−メルカプトエチル)フェニル)ピリジン,2−(2−(2−メルカプトエチル)フェニル)ピリジン、3−(2−(2−メルカプトエチル)フェニル)ピリジン、4−(2−(2−メルカプトエチル)フェニル)ピリジン、およびこれらの任意の混合物等が挙げられる。
【0034】
N−アルキル−n−メルカプトアルキル−メルカプトアルキルアニリンの例としては、n−(2−メルカプトエチル)−4−(2−メルカプトエチル)アニリン、n−(2−メルカプトエチル−n−メチル−4−(2−メルカプトエチル)アニリン、n−エチル−n−(2−メルカプトエチル)−4−(2−メルカプトエチル)アニリン、n−(2−メルカプトプロピル)−4−(2−メルカプトエチル)アニリン、n−(2−メルカプトプロピル)−n−メチル−4−(2−メルカプトエチル)アニリン、n−エチル−n−(2−メルカプトプロピル)−4−(2−メルカプトエチル)アニリン、n−(2−メルカプトエチル)−4−(2−メルカプトプロピル)アニリン、n−(2−メルカプトエチル)−n−メチル−4−(2−メルカプトプロピル)アニリン、n−エチル−n−(2−メルカプトエチル)−4−(2−メルカプトプロピル)アニリン、n−(2−メルカプトプロピル)−4−(2−メルカプトプロピル)アニリン、n−(2−メルカプトプロピル)−n−メチル−4−(2−メルカプトプロピル)アニリン、n−エチル−n−(2−メルカプトプロピル)−4−(2−メルカプトプロピル)アニリン、およびこれらの任意の混合物等が挙げられる。
【0035】
ジメルカプトアルキルピリジンの例としては、3,5−ジ−(2−メルカプトエチル)ピリジン、2,5−ジ−(2−メルカプトエチル)ピリジン、2,6−ジ−(2−メルカプトエチル)ピリジン、3,5−ジ−(2−メルカプトプロピル)ピリジン、2,5−ジ−(2−メルカプトプロピル)ピリジン、2,6−ジ−(2−メルカプトプロピル)ピリジン、およびこれらの任意の混合物等が挙げられる。
【0036】
ピリジンアルキルチオエステルの例としては、2−(2’−チオアセテートエチル)ピリジン、4−(2’−チオアセテートエチル)ピリジン、ピリジンアルキルスルフィド2−(2’−tert−ブチルチオエチル)ピリジン、4−(2’−tert−ブチルチオエチル)ピリジン、およびこれらの任意の混合物等が挙げられる。
【0037】
イミジゾールアルキルチオールの例としては、2−メルカプトエチルベンズイミダゾール等が挙げられる。
【0038】
イミジゾールアルキルチオエステルの例としては、n,s−ジアセチル−2−メルカプトエチルベンズイミダゾール等が挙げられる。
【0039】
フタルイミジンアルキルチオールの例としては、n−(2’−メルカプトエチル)−フタルイミジン等が挙げられる。
【0040】
フタルイミジンアルキルチオエステルの例としては、s−アセチル−n−(2’−メルカプトエチル)−フタルイミジン等が挙げられる。
【0041】
多硫黄チオアルキルピリジンの例としては、2−(3’−tert−ブチルチオプロピルチオエチル)ピリジン、4−(6’−tert−ブチルチオヘキシルチオエチル)ピリジン、4−(4’−tert−ブチルチオブチルチオエチル)ピリジン、4−(5’−tert−ブチルチオペンチルチオエチル)ピリジン、4−(3’−tert−ブチルチオプロピルチオエチル)ピリジン、およびこれらの任意の混合物等が挙げられる。
【0042】
多硫黄チオピリジンの例としては、2−(6’−tert−ブチルチオヘキシルチオ)ピリジン、2−(4’−tert−ブチルチオブチルチオ)ピリジン、2−(5’−tert−ブチルチオペンチルチオ)ピリジン、2−(3’−tert−ブチルチオプロピルチオ)ピリジン、4−(3’−tert−ブチルチオプロピルチオ)ピリジン、およびこれらの任意の混合物等が挙げられる。
【0043】
多硫黄チオベンゾチアゾールの例としては、2−(6’−tert−ブチルチオヘキシルチオ)ベンゾチアゾール、2−(5’−tert−ブチルチオペンチルチオ)ベンゾチアゾール、2−(4’−tert−ブチルチオブチルチオ)ベンゾチアゾール、6−エトキシ−2−(3’−tert−ブチルチオプロピルチオ)ベンゾチアゾール、2−(3’−tert−ブチルチオプロピルチオ)ベンゾチアゾール、およびこれらの任意の混合物等が挙げられる。
【0044】
多硫黄チオイミジゾールおよびチオベンズイミジゾールの例としては、1−メチル−2−(3’−tert−ブチルチオプロピルチオ)イミジゾール、2−(6’−tert−ブチルチオヘキシルチオ)ベンズイミジゾール、2−(5’−tert−ブチルチオペンチルチオ)ベンズイミジゾール、2−(4’−tert−ブチルチオブチルチオ)ベンズイミジゾール、2−(3’−tert−ブチルチオプロピルチオ)ベンズイミジゾール、5−メチル−2−(3’−tert−ブチルチオプロピルチオ)ベンズイミジゾールヒドロクロリド、およびこれらの任意の混合物等が挙げられる。
【0045】
最も好ましくは、本発明において有用な促進剤は、2,2’−ジメチルチアゾリジン、アミノエタンチオール、および4−ピリジンエタンチオールまたはその異性体、ならびにこれらの任意の混合物等のうち1種であることができる。
【0046】
促進剤は、容器または反応器に、イオン交換樹脂触媒を部分的に中和するのに十分な量で添加できる。部分中和は、イオン交換樹脂触媒上の酸基の一部を促進剤で中和することを意味する。好ましくは、酸基の約5%〜約50%を中和する。より好ましくは、酸基の約10%〜約30%を中和する。
【0047】
本発明において用いる流体は、水、より好ましくは酸性化水であることができる。任意の無機酸または有機酸を水に添加して酸性化水を形成できる。無機酸および有機酸としては、例えば、HCl、H2SO4,リン酸、アルキルスルホン酸、芳香族スルホン酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、およびこれらの任意の組合せを挙げることができる。リン酸は、本発明において有用な酸の好ましい例である。
【0048】
水中の酸濃度は、約0.001〜約5モーラー(molar)、好ましくは約0.005〜約1モーラー、および最も好ましくは約0.01〜約0.5モーラーであることができる。
【0049】
加えて、容器または反応器に供給する酸性化水中の促進剤のモル濃度は、好ましくは水中の酸のモル濃度未満であり、これにより促進剤上の塩基性基(例えばアミノ官能基)が水中の酸によって(中和された促進剤がイオン交換樹脂触媒に接触する前に)中和される。
【0050】
促進剤は、イオン交換樹脂触媒に、酸−塩基中和反応によってまたはイオン交換プロセスによって結合する。流体(例えば水)中の任意の酸の不存在下で、促進剤中の塩基性基は、イオン交換樹脂触媒上の酸基によって直接中和される。酸性化水を使用する場合、水中の酸は、促進剤中の塩基性基を中和し、次いで中和された促進剤(プロトン化促進剤)は、触媒に、イオン交換によって付着する。
【0051】
直接中和およびイオン交換プロセスの両者は、促進剤を触媒に導入するために良好に働く。幾つかの促進剤は、水中で比較的低い溶解性を有してもよい。しかし、この種の促進剤の酸塩は、通常溶解しやすい。よって、流体(例えば水)の妥当な酸性化は、促進剤の可溶性を改善でき、これにより促進剤−水混合物は単一相になる。単一相混合物の使用は、促進剤を反応器内に導入して、反応器の断面に亘る促進剤の一様な分布を確保するために好ましい。
【0052】
本発明に従い、高い触媒床膨張および触媒床全体に亘る促進剤の迅速な均一分布を実現するのに十分な速度で流体を維持することは重要である。好ましくは、流体の速度は、少なくとも約5%の触媒床膨張;より好ましくは約5%〜約100%の触媒床膨張;および最も好ましくは約10%〜約30%の触媒床膨張を実現するのに十分である。一般的に、再循環させる流体の速度(高い床膨張を実現するのに十分なもの)は、約0.1m/hr〜約100m/hr;より好ましくは、約0.5m/hr〜約50m/hr;および最も好ましくは、約1m/hr〜約20m/hrの範囲内であることができる。
【0053】
触媒床の床膨張は、一般的に、流体中の触媒粒子の沈降の速度に関する原則によって支配される。因子(例えば、流体粘度、流体密度、触媒粒子密度および触媒粒子径(サイズ))は、全て、触媒粒子の沈降の速度に対して顕著な影響を有する。これらの因子は、床膨張に顕著に影響する。水は、イオン交換樹脂触媒を製造するために一般的に使用される流体であるが、流体粘度および流体密度は一般的には同じであり、触媒粒子密度は若干変わる場合がある。しかし、触媒粒子のサイズは、異なる触媒の間で顕著に変わる場合がある。種々の粒子サイズの分布を含有できる触媒もあるし、比較的均一な粒子サイズを有することができる触媒もある。よって、種々の粒子サイズの触媒が、同じ高い触媒床膨張を実現するために種々の水速度を必要とする場合がある。より小さい粒子サイズの触媒は、同じ高い触媒床膨張を実現するために、より大きい粒子サイズの触媒よりも低い水速度を必要とする場合がある。例えば、Dowex(商標)50WX4等の触媒について、5%〜100%の床膨張を得るための好ましい速度範囲は、約22℃にて約3m/hr〜約29m/hrであることができる。Amberlyst(商標)(例えばAmberlyst(商標)31WET,121WET,および232WET)等の触媒について、5%〜100%の床膨張を得るための好ましい速度範囲は、30℃にて約1m/hr〜約14m/hrであることができる。Amberlyst(商標)131WET等の触媒について、5%〜100%の床膨張を得るための好ましい速度範囲は、30℃にて約2m/hr〜約22m/hrであることができる。
【0054】
床膨張はまた、温度に(主に流体粘度の温度への顕著な依存性に起因し)左右される。例えば、床膨張は、50℃では30℃でよりも約30%〜約35%低いことができ、そして70℃では30℃でよりも約50%〜約60%低いことができる。本発明においてイオン交換樹脂触媒を製造するための操作温度は、約0℃〜約100℃、好ましくは約10℃〜約70℃、およびより好ましくは約20℃〜約50℃の範囲であることができる。
【0055】
本発明の一態様に従い、容器または反応器は、イオン交換樹脂触媒で部分的に充填でき、容器または反応器の中に十分な空間を残して触媒床の部分的な膨張を可能にする。例えば、容器または反応器は、約50%〜約95%を触媒で充填でき、より好ましくは約70%〜約90%を触媒で充填できる。流体は、容器または反応器に上向流方向で導入する。流体は、触媒床経由で再循環させ、触媒床を部分的に膨張させて少なくとも約5%の触媒床膨張を実現するのに十分な速度を維持する。流体を再循環させることは、容器または反応器を出る流体を容器または反応器の入口に再導入することを意味する。床膨張は、容器または反応器の中で用いるイオン交換樹脂触媒についての流体速度の関数として測定する。詳細な測定および計算を下記の例1にて説明する。
【0056】
任意に、再循環させる流体は、触媒微粉の除去のためにフィルターに、レベル制御のためにサージドラムに、ポンプに、および/または他の設備に(容器または反応器の入口に流体を再導入する前に)通すことができる。
【0057】
再循環させる流体から触媒粒子または他の固形分を除去するために用いるフィルターは、バッグフィルター、カートリッジフィルター、または別の種類のフィルターであることができる。適切な種類のフィルターのを選択して固形分を液体から除去することは、十分に、化学製造プラント工学の当業者の専門知識の範囲内である。
【0058】
サージドラムを使用して流体レベルを管理できる。流体を容器または反応器に通して再循環させる場合、流体は、通常、容器もしくは反応器の全体積を占有するか、または、容器または反応器の頂部からオーバーフローする場合もある。加えて、容器または反応器に添加する促進剤は、通常、触媒の上に吸着し、よって容器または反応器の中で流体を再循環させるための可能な体積の量が低下する。サージドラムの使用は、例えば促進剤を添加する場合に、可変の液体レベルを可能にし、サージドラム内のレベルが上昇して、所望の場合には過剰の流体を取上げる。
【0059】
酸性化水を触媒床経由で再循環させるために用いるポンプは、遠心分離のポンプまたは任意の他の種類のポンプであることができる。この用途のために適切な種類のポンプの選択もまた、十分に、化学製造プラント工学の当業者の専門知識の範囲内である。
【0060】
本発明において有用な他の設備は、流動制御バルブ、フローメーター、ならびに温度および圧力の測定装置(当該分野に周知)を包含できる。
【0061】
促進剤を容器または反応器の中に導入するための種々の手法が存在する。促進剤は、流体と同時に容器または反応器の中に2つの別個の流れとして導入でき、流体の容器または反応器の中への導入前に流体に導入でき、または流体の容器または反応器の中への導入後の流体に導入できる。例えば、再循環させる流体に促進剤を添加する一方、再循環させる流体を十分な上向流速度で維持できる。流体は、容器または反応器に通し、促進剤とともに同じ速度で、促進剤が床全体に亘って一様に分布するまで再循環させ続ける。流体を、次いで、容器または反応器から取出す。代替として、再循環させる流体に促進剤を添加することに代えて、予め準備した、促進剤を含有する流体を、容器または反応器に直接供給してもよい。促進剤添加が完了した時点で、流体および促進剤を容器または反応器に通して再循環させ、そして十分な上向流速度で、促進剤が床全体に亘って一様に分布するまで維持する。流体を、次いで、容器または反応器から取出す。
【0062】
促進剤は、1つ以上のステップで流体に添加できる。促進剤の添加時間は、約0.5時間〜約5日間、およびより好ましくは約4時間〜約1.5日間であることができる。
【0063】
促進剤の分布を測定して促進剤が触媒床全体に亘って一様に分布しているかを評価するための種々の手法が存在する。1つの方法は、例えば、まず触媒試料を触媒床内の1つ以上の点から採取する。試料を次いで促進剤量について分析して、触媒の中和の均一性を評価する。結果を用いて、促進が触媒床全体に亘って一様に分布されたかを評価できる。
【0064】
中和パーセントを触媒床の幾つかの点(例えば、触媒床の一様に間隔を空けた高さでの幾つかの点)で測定する場合、触媒の中和の均一性は、触媒床の幾つかの点の各々で測定される中和パーセントと触媒床の幾つかの点から得られる平均中和パーセントとを比較することにより評価できる。例えば、触媒床の3つの異なる点での中和パーセントが15%,20%および25%である場合、これらの3つの異なる点からの平均中和パーセントは20%である。従って、触媒床の3つの異なる点での中和パーセント間の、平均中和パーセントからの差は、−5%,0%および+5%である。よって、3つの異なる点での中和パーセントは、全て、平均中和パーセントの+/−5%以内である。
【0065】
促進剤は、一般的に、触媒床の幾つかの点で測定される中和パーセントが全て平均中和パーセントの概略+/−10%以内;好ましくは平均中和パーセントの+/−5%以内;およびより好ましくは平均中和パーセントの+/−3%以内である場合に、触媒床全体で一様に分布すると考えられる。
【0066】
加えて、以下の個別のステップを本発明のプロセスに加えることができる。これらの以下のステップは任意であり、そして所望により別個に実施できる:
(1)イオン交換樹脂触媒は、流体で予めリンスして不所望の化合物を触媒から除去でき;または
(2)部分的に中和されたイオン交換樹脂触媒もまた流体でリンスして、酸および吸収されなかった促進剤を触媒床から、イオン交換樹脂触媒の促進が実現された後に除去できる。
【0067】
以下の実施例および比較例は、本発明を詳細に更に説明するがその範囲を限定すると解釈すべきではない。
【0068】
実施例1
この実施例では、イオン交換樹脂触媒床の膨張(これは上向流水速度の関数である)を、ガラスシリンダー反応器内で測定した。ガラスシリンダーは、内径1インチおよび全長24インチを有していた。ガラスシリンダーを注意深く垂直に向け、フリットを収容する末端取付け部を取付けて一様な流れの分布を確保した。
【0069】
水湿潤Dowex(商標)50WX4カチオン交換樹脂触媒(The Dow Chemical Companyから供給)を、ガラスシリンダー反応器内に高さ13.75インチまで充填した。反応器を、次いで水で満たした。水は、反応器に通して上向流方向で循環および再循環させた。水の流速は、容器内の循環または再循環する水をある時間収集し、次いで体積を測定することにより測定した。操作温度は室温(約20℃〜25℃)であった。
【0070】
与えられた流速でのイオン交換樹脂触媒床の膨張した高さ(「膨張床高さ」)は、樹脂触媒床のガラスシリンダー内での頂部レベルを、水が流れる間観察し、そしてルーラーを用いて反応器内の樹脂触媒床の頂部レベルを測定することにより測定した。触媒床の床膨張(「床膨張」)は、以下の式(1)を用いて算出できる:
式(1):床膨張(%)=[(膨張床高さ/底部床高さ)−1]×100
「底部床高さ」は、流速がゼロのときの触媒床の元の高さである。
【0071】
この実施例のための上記手順は、幾つかの異なる流速を用いて繰り返した。この実施例の結果(流速、速度、床高さおよび床膨張パーセント等)を表1に示す。
【0072】
表1中、流速は体積流速であり、cm3/分単位で測定した。体積流速をガラスシリンダー反応器の断面積で除することにより、体積流速を速度に変換した。速度を算出するための式は、V=F/A(式中、Vは速度、Fは体積流速、およびAは断面積(A=πD2/4)である)であり;または、式中の単位として、速度は、以下の式(2)から算出できる:
式(2):V(m/時)=F(cm3/分)/A(cm2)/(100cm/m)×(60分/時)
【0073】
表1中のデータは、反応器全体に亘るイオン交換樹脂触媒の床膨張が、上向流速度が増大するに従って増大したことを示す。床膨張は、流速が30ml/分を超える場合において、より迅速に増大した。流速が約10ml/分未満の場合、床膨張は観察されなかった。これは床膨張が十分に高い速度でのみ生じることを示した。
【0074】
【表1】

【0075】
実施例2
この実施例において、イオン交換樹脂触媒のビーズまたは粒子の分散時間(これは上向流水速度の関数である)は、ガラスシリンダー反応器内で測定した。
【0076】
実施例1において記載したのと同じ種類のガラスシリンダー反応器および試験手順を用いた。ガラスシリンダーは、染色したDowex(商標)50WX4カチオン交換樹脂触媒で高さ3.75インチまで充填した。樹脂触媒は、極めて小濃度のメチレンブルー色素で、樹脂触媒をガラスシリンダー反応器内に添加する前に染色した。樹脂触媒のビーズまたは粒子の膨潤および水中での密度は、存在する色素の量には影響されなかった。ガラスシリンダー反応器を追加の非染色Dowex(商標)50WX4カチオン交換樹脂触媒で高さ約12.3〜12.5インチまで充填した。ガラスシリンダー反応器を、次いで水で満たした。水は、ガラスシリンダー反応器に通し、上向流方向に循環および再循環させた。染色したイオン交換樹脂触媒が触媒床全体に亘って均一に分散するまでに必要な時間を測定した。イオン交換樹脂触媒床の底部高さおよび膨張高さもまた測定した。
【0077】
この実施例の上記手順を、幾つかの異なる上向流流速を用いて繰返した。この実施例の結果(流速、速度、床膨張および分散時間等)を表2中に列挙する。
【0078】
表2中のデータは、イオン交換樹脂触媒が反応器全体に亘って分散するのに必要な時間が、上向流速度が増大したのに従って迅速に低減されることを示す。表2中の結果は、樹脂触媒のビーズまたは粒子の反応器全体に亘る分散が、上向流速度が増大したのに従って迅速に増大したことを確認した。結果はまた、触媒粒子分散が、20ml/分の流速では生じなかったこと、およびこの流速では床膨張が観察されなかったことを示した。結果は、触媒のビーズまたは粒子の分散が、十分に高い速度でのみ迅速に生じたことを確認する。
【0079】
【表2】

【0080】
実施例3
この実施例では、イオン交換樹脂触媒の促進の均一性を、ガラスシリンダー反応器内の流体速度の関数として測定した。
【0081】
実施例1において記載したのと同じ種類のガラスシリンダー反応器および試験手順を用いた。ガラスシリンダーは、水湿潤Dowex(商標)50WX4カチオン樹脂触媒で高さ20インチまで充填した。ガラスシリンダーを次いで水(リン酸で濃度0.1モル/リットルで酸性化したもの)で満たした。酸性化水(1000ml)は、ガラスシリンダー反応器に通し、上向流方向で流速50ml/分で再循環させた。11.53gのジメチルチアゾリジンを含む促進剤を酸性化水に添加した。
【0082】
促進剤を含む酸性化水を、イオン交換樹脂触媒床に50ml/分の上向流速度で通した。酸性化水を、イオン交換樹脂触媒床に通して連続的に再循環させ、そして50ml/分の上向流速度で維持した。
【0083】
同じ上向流流速を、ジメチルチアゾリジン溶液の導入のために、および酸性化水の再循環のために用いた。促進剤の添加終了後、酸性化水を4時間再循環させた。流れを次いで遮断し、そしてガラスシリンダー反応器の水を空にした。イオン交換樹脂触媒試料を、触媒床の6つの一様に間隔を空けた高さでガラスシリンダー反応器から採取したが、イオン交換樹脂触媒は反応器から取出さなかった。
【0084】
これらの試料を脱イオン水で洗浄し、そして標準水酸化ナトリウムで滴定して、触媒中和のパーセントを評価した。この実施例の結果を表3に列挙する。データ(流速、速度、流れ方向、および床膨張等)もまた表3中に列挙する。
【0085】
実施例4
上向流の流速30ml/分を用いたことを除いて実施例3を繰り返した。結果はまた表3中に示す。
【0086】
比較例A
上向流の流速10ml/分を用いたことを除いて実施例3を繰り返した。結果はまた表3中に示す。この実験の間、床膨張は観察されなかった。
【0087】
比較例B
流速50ml/分を下向流方向で用いたことを除いて実施例3を繰り返した。結果はまた表3中に示す。この実験の間、床膨張は観察されなかった。
【0088】
【表3】

【0089】
表3中の結果は、実施例3および4のイオン交換触媒が、促進剤で、比較例AおよびBにおけるよりも一様に中和されたことを示す。実施例3において、促進剤の均一分布は、大幅により迅速に実現された。水が十分に高い上向流速度で再循環されたからである。
【0090】
実施例4における床膨張は、実施例3でのものよりも低かった。イオン交換樹脂触媒は、実施例4において、実施例3におけるよりも低い均一性で中和された。しかし、実施例4の触媒中和均一性は、比較例AおよびBのものよりも良好であった。比較例AおよびBにおいて、床膨張は観察されなかった。
【0091】
表3における結果は、イオン交換樹脂触媒を部分的に中和するための促進剤の均一分布が、十分に高い上向流速度で実現できることを確認する。
【0092】
実施例5
容積26m3のイオン交換樹脂触媒反応器を22m3の水湿潤Dowex(商標)50WX4触媒で満たした。0.039モル/リットルのリン酸を含む酸性化水を反応器内に導入し、反応器に通して上向流方向で再循環させた。
【0093】
この実施例において、サージドラムを用いて促進剤添加中の液体体積の変化を管理し、バッグフィルターを用いて微粉触媒粒子を再循環水から除去し、そして遠心分離ポンプを用いて水を再循環させた。
【0094】
再循環する水の流速を測定して、実施例1で記載した式(2)に従って速度に変換した。得られる速度は5.8m/時であった。この速度で実現される床膨張は、実施例1で記載した表1に従い約14%と見積もられた。
【0095】
950キログラムの2,2’−ジメチルチアゾリジンを含む促進剤を、再循環する水に19時間かけて添加した。2,2’−ジメチルチアゾリジンの添加が完了した後、水を更に約20時間再循環させ続けた。触媒の試料を反応器側部から試料バルブ経由で採取し、中和パーセントにつき、実施例3で記載した方法に従って滴定により測定した。結果は、これらの試料についての触媒中和が、18.6%〜19.2%の範囲(これは平均中和の18.9%から±0.3%以内)であったことを示す。
【0096】
上記の方法において所定の変更が本発明の範囲から逸脱することなく実施できることが当業者に明らかとなろう。従って、記載される本明細書における全ての事項は、例示としてのみであって保護を求める範囲の限定としてではないと解釈されることが意図される。更に、本発明の方法は、上記の具体的な例(これらが言及する表を含む)によって限定すべきでない。むしろ、これらの例およびこれらが言及する表は、本発明の方法の例示である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン交換樹脂触媒を製造する方法であって:
(a)容器をイオン交換樹脂触媒で部分的に充填してイオン交換樹脂触媒床を容器内に形成すること、
(b)流体を容器内に導入すること、
(c)流体を触媒床経由で上向流方向に再循環させること、
(d)促進剤を該再循環させる流体中に導入すること、および
(e)該再循環させる流体を、少なくとも約5パーセントの触媒床膨張を実現して該促進剤を触媒床全体に亘って一様に分布させるのに十分な速度に維持すること
を含む、方法。
【請求項2】
流体の速度が、約5パーセント〜約100パーセントの触媒床膨張を実現するのに十分である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
流体の速度が、約10パーセント〜約30パーセントの触媒床膨張を実現するのに十分である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
容器の約50体積パーセント〜約95体積パーセントを、流体の導入前にイオン交換樹脂触媒で部分的に充填することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
容器の約70体積パーセント〜約90体積パーセントを、流体の導入前にイオン交換樹脂触媒で部分的に充填することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
促進剤を、イオン交換樹脂触媒を少なくとも部分的に中和するのに十分な量で容器内に導入する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
促進剤を、イオン交換樹脂触媒の約5パーセント〜約50パーセントを中和するのに十分な量で容器内に導入する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
促進剤を、イオン交換樹脂触媒の約10パーセント〜約30パーセントを中和するのに十分な量で容器内に導入する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
促進剤を、再循環させる流体に1つよりも多いステップで導入する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
促進剤を、再循環させる流体に約0.5時間〜約5日間で導入する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
促進剤を、再循環させる流体に約4時間〜約1.5日間で導入する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
促進剤が、結合促進剤型である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
促進剤が、アミノ基を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
促進剤が、アミノ基およびチオール基を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
促進剤が、2,2’−ジメチルチアゾリジン、アミノエタンチオール、4−ピリジンエタンチオールまたはこれらの混合物を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
流体が水を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
流体が、酸性化水を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
酸性化水が、HCl、H2SO4、リン酸、アルキルスルホン酸、芳香族スルホン酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、またはこれらの任意の組合せの酸を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
酸性化水が、リン酸を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
酸性化水が、酸を約0.001モーラー〜約5モーラーの濃度で含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
酸性化水が、酸を約0.005モーラー〜約1モーラーの濃度で含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
酸性化水が、酸を約0.01モーラー〜約0.5モーラーの濃度で含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
水中の促進剤のモル濃度が、水中の酸のモル濃度未満である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
温度約0℃〜約100℃で実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
温度約10℃〜約70℃で実施する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
温度約20℃〜約50℃で実施する、請求項25に記載の方法。

【公表番号】特表2010−528859(P2010−528859A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512270(P2010−512270)
【出願日】平成20年6月3日(2008.6.3)
【国際出願番号】PCT/US2008/065636
【国際公開番号】WO2008/157025
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】