説明

ビニル芳香族モノマー由来のゴム変性ポリマー

【課題】高度にグラフト化したゴム粒子をもち、且つ制御が容易で、効率がよくそして商業的に実行可能なプロセスを使用して、ビニル芳香族モノマー由来のゴム変性ポリマーを提供する。
【解決手段】相転移点において少なくとも30%のグラフト率をもちそしてグラフト化したビニル芳香族ポリマーの特定量を有する官能化したゴムを含むゴム変性ポリマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はビニル芳香族モノマー由来のゴム変性ポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
高耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)及びアクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)のようなゴム変性ポリマーは典型的には、閉じ込められたマトリックスポリマーを含む不連続なゴム粒子形態で上記マトリックスポリマー中に分散しているような溶解したゴムの存在下でスチレン又はスチレン/アクリロニトリルを重合させることによって製造される。ゴム変性ポリマーの物理的性質はグラフト化したゴム、特にグラフト化レベルの増大に伴って高めることができる。ゴム変性ポリマーの製造プロセスの過程で、マトリックスポリマーはゴムの主鎖上にグラフト化される。グラフト率を増大させるためには、過酸化水素開始剤のような或る種の開始剤がゴムポリマーの主鎖から水素原子を引き抜くために使用することができる。しかしながら、この方法はまた反応性を増大させ、反応制御を困難にする。
【0003】
これまでゴムのグラフト化レベルを増大させる試みがなされてきた。アプローチの一つとしては、ゴム主鎖上に加えられた多くの反応性グラフト化サイトを生じさせる一重項酸素(SO)を使用するゴムの過酸化水素による酸化を包含する。溶解酸素を含むゴム/スチレン混合物中での光化学的SOの発生は特許文献1に記載されている。しかしながら、得られる反応性グラフト化サイトの数はゴム/スチレン混合物中の酸素の溶解度によって制限される。
【0004】
さらに、最終ポリマー中のコンタミとして作用し脱色を引き起こす光増感剤を使用しなければならない。さらに、可溶化剤はリサイクル流れを停止させる光増感剤のために使用されそしてスチレンモノマーから分離しなければならず、このプロセスを経済的に魅力のないものにしている。
【0005】
別のアプローチとしては特許文献2に記載されているようにビスキノン過酸化物のようなSOを発生する化合物を加熱することによってゴム/スチレン混合物中でSOを発生させることを包含している。しかしながら、グラフト化レベルは比較的低くそしてビスキノン過酸化物は商業的用途には適していない。
【0006】
さらに別のアプローチとしては、ペングによって非特許文献1に開示されているように、ポリブタジエン変性ポリスチレンの製造のためにポリブタジエンゴムのグラフト化を増大させるためにトリフェニルホスファイトオゾン化物からSOを発生させることを包含している。しかしながら、記載されたこのプロセスはペングによって仮説化されたような高レベルのグラフト化を達成していない。
【0007】
特許文献3はビニル芳香族モノマー中の亜リン酸塩オゾン化物の分解によるSO及び相転移点において少なくとも30%のグラフト化が達成されるような塊状重合プロセスのゴムフィードを使用して高耐衝撃性スチレンポリマー中で高度にグラフト化したゴムを製造する方法を開示している。しかしながら、このプロセスは追加のオゾン化反応物を必要としそして反応プロセスを複雑化させる。
【0008】
【特許文献1】USP4,717,741
【特許文献2】USP4,895,907
【特許文献3】USP5,959,033
【非特許文献1】“Polybutadien Hydroperoxide by Singlet Oxygen:Its Grafting and Morphology in Polystyrene Matrix”,Journal of Applied Polymer Science,Vol.31,1827−1842(1986)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、従来技術の欠点を改良し、高度にグラフト化したゴム粒子をもち、且つ制御が容易で、効率がよくそして商業的に実行可能なプロセスを使用して、ビニル芳香族モノマー由来のゴム変性ポリマーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、(a)重合したビニル芳香族モノマーからなるマトリックスポリマー、及び(b)閉じ込められたマトリックスポリマーを含む不連続なゴム粒子形態で上記マトリックスポリマー中に分散しているグラフト化したゴムからなるゴム変性ポリマーであって、グラフト化したゴムがi)相転移点において30−100%のグラフト率と、ii)マトリックスポリマー合計量の20−75wt%のゴム変性マトリックスポリマー量をもちそして、iii)グラフト化したゴムがマトリックスポリマーを、重合条件下でマトリックスポリマーと反応することができる官能基をもつ官能化したゴムと反応させてゴムにマトリックスポリマーをグラフト化させることによって製造されることを特徴とするゴム変性ポリマーである。
【0011】
本発明の別の態様は、(a)相転移点において官能化したゴムの少なくとも30%がマトリックスポリマーにグラフト化するように、マトリックスポリマーと反応することができる官能基を含む官能化したゴムの存在下でビニル芳香族モノマーを重合させることを特徴とする、閉じ込められたマトリックスポリマーを含む不連続な分散ゴム粒子をもつマトリックスポリマーからなるそのようなゴム変性ポリマーの製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
規定されたグラフト/マトリックス比で結合している高度にグラフト化したゴムを含む本発明のゴム変性ポリマーは従来技術のゴム変性ポリマーに較べて高められた物理的性質と経済的な優位性をもっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
マトリックスポリマーはビニル芳香族モノマーから製造される如何なるポリマーでもよい。好適なビニル芳香族モノマーとしては、限定はしないが、特許文献4、5及び6に記載されているような重合プロセスで使用される公知のビニル芳香族モノマーを包含する。好ましくは、モノマーは次式:
【0014】
【化1】

【0015】
ここでR’は水素又はメチル、Arはアルキル、ハロ、又はハロアルキルで置換されていてもいなくてもよい1から3の芳香族環をもつ芳香族環構造であり、ここでアルキル基は1から6の炭素原子を含みそしてハロアルキルはハロ置換アルキル基を意味する。好ましくは、Arはフェニルまたはアルキルフェニルであり、アルキルフェニルはアルキル置換フェニル基を意味し、フェニルが最も好ましい。使用できる典型的なビニル芳香族モノマーとしてはスチレン、アルファメチルスチレン、ビニルトルエン特にパラビニルトルエンの全ての異性体、エチルスチレン、プロピルスチレン、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンの全ての異性体、及びこれらの混合物を包含する。ビニル芳香族モノマーはまた他の共重合可能なモノマーと組み合わせてもよい。そのようなモノマーの例としては、限定はしないが、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、メタクリル酸、メチルメタアクリレート、アクリル酸、及びメチルアクリレートのようなアクリルモノマー;マレイミド、フェニルマレイミド、及び無水マレイン酸を包含する。耐衝撃性変性、又はグラフト化したゴムを含む製品はさらに特許文献7、8、9及び10に記載されている。
【0016】
マトリックスポリマーの重量平均分子量(Mw)は典型的には50,000−500,000、好ましくは60,000−400,000そして最も好ましくは80,000−350,000である。
【0017】
グラフト化したゴムは官能化したゴムの官能基とマトリックスポリマーを反応させることによって得られるマトリックスポリマーのグラフト物を含むゴム基質からなる。官能化したゴムは、ASTM D−756−52Tによって決定するとき、0℃を超えない、好ましくは−20℃を超えないガラス転移温度をもち、重合条件下でマトリックスポリマーと反応することができるゴム状分子当たり少なくとも一つの官能基をもつ不飽和の官能化したゴム状ポリマーであればなんでもよい。本発明に適した官能化したゴムは5−300cps(20℃で5wt%スチレン)の範囲の溶液粘度と5−100(ML+1,100℃)のムーニー粘度をもつものである。好適なゴムとしては、限定はしないが、官能化したジエンゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレン−ジエン−モノマー(EPDM)ゴム、及びシリコーンゴムが包含される。好適な官能化したジエンゴムとしては、限定はしないが、官能化した共役1,3−ジエン、例えば、ブタジエン、イソプレン、ピペリレン、クロロプレン、又はそれらの混合物を包含する。好適な官能化したゴムとしてはまた官能化した共役1,3−ジエンのホモポリマー及び1,3−ジエンと1以上の重合可能なモノエチレン性不飽和モノマーとの官能化したインターポリマー、例えば、イソブチレンとイソプレンのコポリマーも包含する。好ましくは、官能化したゴムは、官能化したブタジエン、イソプレン、ピペリレン、クロロプレンのような1,3−共役ジエンのホモポリマーであるか、又は共役ジエンと1以上のスチレン、アクリロニトリルのようなアルファー、ベーターエチレン性不飽和ニトリル、エチレン又はプロピレンのようなアルファーオレフィンとの官能化したコポリマーである。もし官能化したゴムがビニル芳香族モノマーのコポリマーであるなら、官能化したゴムのビニル芳香族含有量は30wt%以下である。その他の官能化したゴムとしては官能化した分岐ゴム及び官能化した低溶液粘度ゴムを包含する。官能化したゴムの混合物もまた使用できる。
【0018】
最も好ましい官能化したゴムは官能化した1,3−ブタジエンのホモポリマーである。線状ジエンゴム、ジエンコポリマーゴム、ブロックコポリマーゴム、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマーのようなその他の官能化していないゴムは、本発明の利点がなお得られる限りにおいて、本発明のゴム変性ポリマーに使用される高度にグラフト化したゴムと組み合わせることができる。典型的には、官能化したゴムは、ゴム変性したビニル芳香族ポリマー中の合計重量の少なくとも50wt%、好ましくは少なくとも55wt%、より好ましくは少なくとも60wt%、そして最も好ましくは少なくとも65wt%含まれる。一態様においては、官能化したゴムは官能化していないゴムを一切含まずに使用される。
【0019】
グラフト化したゴムはマトリックスポリマーの重合過程で官能化したゴムの主鎖上でマトリックスポリマーをグラフト化することによって得られる。これは重合条件下でマトリックスポリマーと反応することができるゴム状分子当たり少なくとも一つの官能基をもつ官能化したゴムの存在下でビニル芳香族ポリマーを重合させることによって達成される。官能基はマトリックスポリマーを重合してグラフト化コポリマーを生成するものであれば、如何なる官能基でもよいが、好ましくは炭素−炭素不飽和を含む官能基である。典型的な官能基としてはマレエート、アクリレート、メチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、エチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレートのような(アルキル)アクリレート、フマレート、イタコネート、シトラコネート、ビニルエーテル、ビニルエステル、シンナメート、マレイミド及びそれらの誘導体を包含する。典型的には、官能基は重合開始剤として作用しないか又は安定なフリーラジカルを生成しない。ゴムはゴムの主鎖に官能基を結合させるのに適した如何なるプロセスによって官能化されてもよい。そのような方法は熟練した当業者には公知である。官能化は典型的にはゴム変性ポリマー重合プロセスに官能化したゴムを追加する前に起こる。
【0020】
一態様においては、官能化したゴムはゴムの主鎖に共重合可能な官能基を内包させることによって得られる。これらのユニットは典型的には、マトリックスポリマーを製造するために使用されるビニル芳香族モノマーと共重合するようにそしてグラフト化プロセスの最終点として作用するように選ばれる。さらに、これらの官能基は、相転移が起こる時間によって、それらが実質上反応する、好ましくは30%以上、より好ましくは35%以上、そして最も好ましくは40%以上反応するようなビニル芳香族モノマーとの反応性レベルをもっている。もし、この反応性レベルが達成されないと、望ましい利点が実現できない。もし、ゴムの主鎖の官能基がビニル芳香族モノマーに対して高い反応性を有していると、ゴム分子当たり一つの官能基で十分である。マレエート、フマレート、マレイミド、アクリレート及びメタクリレート官能基を使用する官能化は、典型的には下記に例示されるような単一の官能基でポリブタジエン鎖を停止に導く:
【0021】
【化2】

【0022】
別法としては、ブタジエンの重合の進行過程で、ペンダント(ぶら下がった)ビニル基を所望の官能基をもつ化合物とブタジエンを反応させることによって導入することができる。コポリマーユニットは、相転移において所望のグラフト率を得るために十分な反応性を有していなければならないか、或いはそのようなユニットの十分な量がそのような反応性が達成されるために含まれていなければならない。もし官能基が低活性であれば、所望のグラフトレベルが達成されるためにはゴム主鎖中に多数の基が内包されていなければならない。グラフト化が増大するにつれ、高い光沢と耐衝撃性に導くより小さなゴム粒子が達成される。好ましくは、官能化したゴムは相転移点において30%のグラフト化レベルが達成できるのに十分な数のグラフトサイトをもっている。換言すれば、グラフト化ゴムの量が相転移において合計ゴムの少なくとも30%となるまで、ゴムはモノビニリデン芳香族モノマーでグラフト化される。
【0023】
ゴムポリマーの重量平均分子量(Mw)はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したとき、一般的には10,000−600,000、典型的には30,000−500,000、好ましくは40,000−400,000そして最も好ましくは50,000−350,000である。
【0024】
ゴム、即ち、官能化したゴム及びもし存在するなら官能化していないゴムの合計量は典型的には、ゴム変性ポリマーがモノマーとゴム成分の合計重量基準で2−30wt%、一般的には4−25wt%、好ましくは5−20wt%、そしてより好ましくは8−20wt%の量で存在する。存在するゴムの量はまた所望の最終ポリマー製品に依存する。典型的には、HIPSのようなポリマーの場合、ゴム変性ポリマー中のゴム量は5−15wt%である。ABSポリマーは典型的には5−30wt%のゴムを含む。用語“ゴム”又は“ゴム等価物”はここで用いられるときは、ポリブタジエンのようなゴムホモポリマーの場合は単純にゴム量を意味し、そしてブロックコポリマーの場合は、ブタジエン−スチレンブロックコポリマーの場合にブロックコポリマーのブタジエン成分を意味するように、ホモ重合するときにゴム状ポリマーを生成するモノマーから作られるコポリマーの量を意味する。
【0025】
本発明の一態様においては、マトリックスポリマーはスチレンとアクリロニトリルのコポリマーでそして官能化したゴムはメタクリレート官能化したポリブタジエンである。この態様においては、スチレン:アクリロニトリルの重量比は99:1−60:40まで変化する。
【0026】
別の態様においては、マトリックスポリマーはポリスチレンでありそして官能化したゴムは官能化したポリブタジエンである。
グラフト化したゴム粒子は典型的には用途によって変わるが、0.01−10ミクロンの体積平均粒子径をもつ。組成物は同様に用途によって変わるが、モノモーダル、バイモーダル又はマルチモーダルである。
【0027】
本発明の別の態様はそのようなゴム変性ポリマーの製造方法に関する。一般的に、本発明のゴム変性ポリマーは特許文献11に記載されているように相転移点で少なくとも30%、好ましくは少なくとも35%のグラフト率が達成されるようなインシツグラフト化と組み合わせた連続塊状重合によって製造される。追加のグラフト化は相転移後に起こり、10%又は20%までの追加のグラフト化が起こることに注目すべきである。それゆえ、このプロセスで製造されるゴム変性ビニル芳香族ポリマーは少なくとも35%、好ましくは少なくとも40%、そして100%までのグラフト率をもつ官能化したゴムを含む。
【0028】
塊状重合は重合開始剤、連鎖移動剤、及び潤滑剤のような添加剤の存在下で行うことができる。典型的な重合開始剤としてはt−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、ベンゾイルパーオキサイド、1,1−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン)プロパノンのような過酸化物、及びアゾ−ビス−イソブチレート及びアゾビス−シアノバレイン酸のようなアゾ化合物が包含される。典型的な連鎖移動剤としては、n−ドデシルメルカプタン及びt−ドデシルメルカプタンのようなメルカプタン、アルファー−メチルスチレンダイマー、1−フェニル−ブテン−2−フルオレン、テルピノール、及びクロロフォルムを包含する。潤滑剤、例えば、ステアリン酸、ベヘン酸、ステアロアミジン酸;酸化抑制剤、例えば、ヒンダードフェノール;可塑剤、例えば、鉱油、ポリエチレングリコール;難燃剤、光安定剤、着色剤、繊維強化剤のようなその他の添加剤及びフィラーもまた使用できる。溶媒もまた塊状重合プロセスで使用してもよい。典型的な溶媒としてはトルエン、ベンゼン、エチルベンゼン、キシレンのような芳香族炭化水素、ヘプタン、ヘキサン、及びオクタンのような炭化水素を包含する。好ましくはエチルベンゼン又はトルエンが使用される。一般的に、溶媒は重合過程における加工性及び熱移動を改善するために十分な量で使用される。そのような量は使用されるゴム、モノマー及び溶媒、プロセス装置及び所望の重合度合いによって変化する。もし使用するなら、溶媒は一般的には溶液の合計重量基準で35wt%まで、好ましくは2−25wt%の量で使用される。
【0029】
好ましくは、重合は特許文献12に記載されているような1以上の実質上線形で、層状流れ又はいわゆる“プラグフロー”タイプの反応器又は別法として、反応器の内容物が本質的に全体を通して均一である撹拌槽で実施されるが、撹拌槽は一般的には1以上の“プラグフロー”タイプの反応器と組み合わせて使用される。重合が最も有利に行われる温度は特定の開始剤、ゴム、及びコモノマー及びもし使用されるなら溶媒の種類及び濃度を含む種々の因子に依存する。一般的に、重合温度は相転移に先立って60−160℃の範囲であるが、100−190℃の温度を使用すると引き続き相転移が起こる。
【0030】
相転移点で少なくとも30%、好ましくは少なくとも35%のグラフト率が達成されるような官能化したゴムをグラフト化するプロセスもまた重合プロセスの過程で使用される。グラフト率は官能化したグラフトゴム:存在する官能化したゴムの合計量の比を意味している。換言すれば、もし官能化したゴムが少なくとも30%のグラフト率をもっていれば、官能化したゴムの少なくとも30%はマトリックスポリマーの少なくとも一つのグラフト化した鎖を含んでいることになる。
【0031】
一態様においては、本発明は(a)重合したビニル芳香族モノマーからなるマトリックスポリマー、及び(b)閉じ込められたマトリックスポリマーを含む不連続なゴム粒子形態で上記マトリックスポリマー中に分散しているグラフト化したゴムを本質的に含むゴム変性ポリマーであって、グラフト化したゴムがi)相転移点において30−100%のグラフト率と、ii)マトリックスポリマー合計量の20−75wt%のゴム変性マトリックスポリマー量をもちそして、iii)グラフト化したゴムがマトリックスポリマーを、重合条件下でマトリックスポリマーと反応することができる官能基をもつ官能化したゴムと反応させてゴムにマトリックスポリマーをグラフト化させることによって製造されることを特徴とするゴム変性ポリマーである。
【0032】
用語“本質的に含む”は組成物中の記載された成分を意味しそしてゴム変性ポリマー組成物の物理的性質又は性能を有意に変えることのないその他の添加物を少量含んでいてもよいことを意味する。
【0033】
本発明のゴム変性ポリマーは小型の家庭用電気器具、電子機器、及び事務機器の包囲体のような多くの用途で使用することができる。
そのようなポリマーを製造するために使用される重合プロセスは、追加の反応物を使用しなくても、高められた物理的性質を示す高度にグラフト化したゴムを含むゴム変性ポリマーを製造するための経済的でそして商業的に実行可能なプロセスである。
【0034】
以下の実施例はさらに本発明を詳細に説明するためのものである。実施例は本発明の範囲を限定することを意図したものではなく、限定すると解釈されるべきではない。特に断りの記載がない限り、全ての部及び%は重量基準である。
【実施例1】
【0035】
51.2%のスチレン、20.8%のアクリロニトリル、17.5%のエチルベンゼン及び10.5%のゴムを含む組成物を、約1225gのポリマーを収容できる容積をもつ撹拌管型反応器の第一ゾーンに552g/hrの速度で供給する。(ゴムの50%は官能化していないブタジエン−スチレン(85/15)ブロックコポリマー、ゴムの50%は同じ組成であるが末端基がメタクリレートであるブロックコポリマーである)。反応器は120rpmで設定された撹拌機を装備しておりそして三つのゾーンからなり、ゾーン1は107℃、ゾーン2は111℃、そしてゾーン3は116℃である。さらに、97.9wt%のエチルベンゼン中に0.4wt%のn−ドデシルメルカプタン、及び1.7wt%の1,1−ジ−ターブチルパーオキシシクロヘキサンを含む供給流れをゾーン1に34g/hrの速度で追加する。重合はゾーン1で開始されそしてゾーン2及び3を通して続く。ゾーン3にエチルベンゼン中に2.95wt%のn−ドデシルメルカプタンの追加供給を30g/hrの速度で追加する。ゾーン3での重合後に、重合混合物を100rpmで設定された撹拌機を装備しそして118℃のゾーン4、119℃のゾーン5そして123℃のゾーン6の三つのゾーンからなる第二反応器に移す。混合物をそれから30rpmで設定された撹拌機を装備しそして131℃のゾーン7、142℃のゾーン8そして152℃のゾーン9の三つのゾーンからなる第三反応器に移す。混合物をそれから235℃の温度の脱気装置に移す。
【実施例2】
【0036】
実施例1に記載された重合反応を、完全にメタクリレートで官能化したゴムからなるゴムに置き換えること以外は、出発物質が本質的には同一組成となるようにして繰り返す。
【0037】
〔比較実施例〕
比較実施例として、実施例1に記載された重合反応を、ゴム成分として官能化されていないゴムのみを使用して繰り返す。上記の実施例から得られる各スチレン系ポリマーを熔融温度約230℃で成形型表面温度約38℃を使用して射出成形する。ショートショット光沢の値は射出成形サイクルで低保持圧力を使用して得られ、フルショット光沢は完全充填部分で測定される。ゴム粒子径は透過電子顕微鏡を使用して測定する。各々の物理的性質の結果を表1に示す。
官能化したゴムの使用は平均ゴム粒子径を減少させそして成形部品の表面に非常に高い光沢を与えることが容易に理解できるであろう。
【0038】
【表1】

【0039】
【特許文献4】USP4,666,987
【特許文献5】USP4,572,819
【特許文献6】USP4,585,825
【特許文献7】USP3,123,655
【特許文献8】USP3,346,520
【特許文献9】USP3,639,522
【特許文献10】USP4,409,369
【特許文献11】USP4,640,959
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明のゴム変性ポリマーは小型の家庭用電気器具、電子機器、及び事務機器の包囲体のような多くの用途で使用することができ、産業上有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)重合したビニル芳香族モノマーからなるマトリックスポリマー、及び(b)閉じ込められたマトリックスポリマーを含む不連続なゴム粒子形態で上記マトリックスポリマー中に分散しているグラフト化したゴムからなるゴム変性ポリマーであって、グラフト化したゴムがi)相転移点において30−100%のグラフト率と、ii)マトリックスポリマー合計量の20−75wt%のゴム変性マトリックスポリマー量をもつことを特徴とすると共に、グラフト化したゴムがマトリックスポリマーを、重合条件下でマトリックスポリマーと反応することができる分子当たり少なくとも一つの官能基をもつ官能化したゴムと反応させてゴムにマトリックスポリマーをグラフトさせることによって製造されるゴム変性ポリマー。
【請求項2】
官能化したゴムが官能化した共役ジエンポリマーゴムである請求項1記載のゴム変性ポリマー。
【請求項3】
官能化したゴムが官能化したポリブタジエンゴムである請求項1記載のゴム変性ポリマー。
【請求項4】
官能化したゴムがマレエート、アクリレート、(アルキル)アクリレート、フマレート、イタコネート、シトラコネート、ビニルエーテル、ビニルエステル、シンナメート、マレイミド及びそれらの誘導体からなる群から選択された官能基を含む請求項1記載のゴム変性ポリマー。
【請求項5】
官能化したゴムがマレエート化ポリブタジエンゴム又はメタクリレート化ポリブタジエンゴムである請求項1記載のゴム変性ポリマー。
【請求項6】
ビニル芳香族モノマーがスチレンである請求項1記載のゴム変性ポリマー。
【請求項7】
ポリマーマトリックスがスチレン−アクリロニトリルコポリマーからなる請求項1記載のゴム変性ポリマー。
【請求項8】
グラフト化したゴムが少なくとも50wt%のグラフト化し且つ官能化したゴムを含む請求項1記載のゴム変性ポリマー。
【請求項9】
(a)相転移点において官能化したゴムの少なくとも30%がマトリックスポリマーにグラフト化するように、マトリックスポリマーと反応することができる官能基を含む官能化したゴムの存在下でビニル芳香族モノマーを重合させることを特徴とする、閉じ込められたマトリックスポリマーを含む不連続な分散ゴム粒子をもつマトリックスポリマーからなるゴム変性ポリマーの製造方法。
【請求項10】
官能化したゴムが官能化した共役ジエンポリマーゴムである請求項9記載の方法。
【請求項11】
官能化したゴムがポリブタジエンゴムである請求項10記載の方法。
【請求項12】
官能化したゴムがマレエート、アクリレート、(アルキル)アクリレート、フマレート、イタコネート、シトラコネート、ビニルエーテル、ビニルエステル、シンナメート、マレイミド及びそれらの誘導体からなる群から選択された官能基を含む請求項9記載の方法。
【請求項13】
官能化したゴムが官能化したマレエート化ポリブタジエンゴム又はメタクリレート化ポリブタジエンゴムである請求項9記載の方法。
【請求項14】
ビニル芳香族モノマーがスチレンである請求項9記載の方法。
【請求項15】
ポリマーマトリックスがスチレン−アクリロニトリルコポリマーからなる請求項9記載の方法。
【請求項16】
グラフト化したゴムが少なくとも50wt%のグラフト化し且つ官能化したゴムを含む請求項9記載の方法。

【公表番号】特表2006−516672(P2006−516672A)
【公表日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503242(P2006−503242)
【出願日】平成16年2月3日(2004.2.3)
【国際出願番号】PCT/US2004/002890
【国際公開番号】WO2004/072137
【国際公開日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(502130582)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレーテッド (21)
【Fターム(参考)】