説明

ビーズ装飾体及びビーズによる表面装飾方法

【課題】色彩を有する絵柄や模様等を浮かび上がらせて、その視覚的美観を増加させて価値を高める。
【解決手段】本発明のビーズ装飾体は、色彩を有する被装飾体12と、被装飾体の表面に形成された透明樹脂層13と、透明樹脂層の更に表面に形成された接着剤層14と、接着剤層を介して透明樹脂層の表面に敷き詰められるように接着された透明なビーズ16aの集合から成るビーズ層16とを含む。透明樹脂層が透明樹脂シートからなり、透明樹脂シートの裏面に塗布された塗料又はインキにより色彩を有する被装飾体を形成することもできる。ビーズによる表面装飾方法は、被装飾体の表面に接着剤を塗布し、接着剤が未硬化の状態で接着剤層上にビーズ粉粒体を散布し、接着剤層を硬化させて被装飾体の表面にビーズ粉粒体から成るビーズ層16を形成する。接着剤を塗布する以前に被装飾体の表面に所定の厚さの透明樹脂層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙や、シート状又は板状の木材、金属、ガラス、合成樹脂等の表面に着色されたインキや塗料から成る被装飾体の表面をビーズにより装飾したビーズ装飾体及びビーズによる表面装飾方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、紙や、シート状又は板状の木材、金属、ガラス、合成樹脂等の表面に着色されたインキや塗料から成る被装飾体の表面をビーズにより装飾するようなことが行われる。このようなビーズを用いた装飾方法として、装飾対象である被装飾体の表面に接着剤を塗布し、その接着剤が未硬化の状態でその接着剤層上にビーズ粉粒体を散布して固定させる方法が知られており、その方法に用いるためのビーズ粉粒体の散布装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このビーズ粉粒体の散布装置では、そのガラスビーズ粉粒体の目詰まりを起こすことなく、しかも、ガラスビーズ粉粒体の均一な積層を可能にし得るとしている。そして、このようなビーズによる表面装飾方法では、装飾対象である被装飾体が描く模様や絵がビーズ粉粒体に覆われてしまうために、透明なビーズの集合から成るビーズ粉粒体を接着し、その模様や絵を透明なビーズ粉粒体を介して視認し得るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平7−28700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のビーズによる表面装飾方法では、装飾対象である被装飾体の表面に直接ビーズ粉粒体を接着するので、ビーズをレンズと考えた場合に、その焦点距離の遙か内側に被装飾体が存在し、被装飾体が描く平面的な模様や絵を平面的なものとして認識し得るに留まり、視覚性の点で十分満足させるものではなかった。
【0006】
本発明の目的は、色彩を有する絵柄や模様等を浮かび上がらせ、その視覚的美観を増加させてその価値を高め得るビーズ装飾体及びビーズによる表面装飾方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、色彩を有する被装飾体と、被装飾体の表面に形成された透明樹脂層と、透明樹脂層の更に表面に形成された接着剤層と、接着剤層を介して透明樹脂層の表面に敷き詰められるように接着された透明なビーズの集合から成るビーズ層とを含むビーズ装飾体である。
【0008】
ビーズ層は外径が均一なガラス質球状ビーズの集合から成る場合、ガラス質球状ビーズの半径をrとするとき、被装飾体とガラス質球状ビーズとの間の隙間が(r/3)〜rの範囲であることが好ましい。
【0009】
ビーズ層は外径が均一な透明樹脂質球状ビーズの集合から成る場合、透明樹脂質球状ビーズの半径をrとするとき、被装飾体と透明樹脂質球状ビーズとの間の隙間が(r/2)〜2rの範囲であることが好ましい。
【0010】
透明樹脂層が透明樹脂シートからなれば、透明樹脂シートの裏面に塗布された塗料又はインキにより色彩を有する被装飾体を形成することもできる。また、透明樹脂層及び接着剤層は粘着剤よりなるものであっても良い。
【0011】
別の本発明は、色彩を有する被装飾体の表面に所定の厚さの透明樹脂層を形成する透明樹脂層形成工程と、その透明樹脂層の表面に接着剤層を形成する接着剤層形成工程と、その接着剤層上にビーズ粉粒体を散布してその接着剤層を介して透明樹脂層の表面に敷き詰められるように接着された透明なビーズの集合から成るビーズ層を形成するビーズ層形成工程とを有するビーズによる表面装飾方法である。
【0012】
ビーズ粉粒体が、外径が均一なガラス質球状ビーズの集合から成る場合、ガラス質球状ビーズの半径をrとするとき、被装飾体とガラス質球状ビーズとの間の隙間が(r/3)〜rの範囲となるような透明樹脂層を透明樹脂層形成工程において形成することが好ましい。
【0013】
ビーズ粉粒体が、外径が均一な透明樹脂質球状ビーズの集合から成る場合、樹脂質球状ビーズの半径をrとするとき、被装飾体と前記透明樹脂質球状ビーズとの間の隙間が(r/2)〜2rの範囲となるような透明樹脂層を透明樹脂層形成工程において形成することもできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のビーズ装飾体及びビーズによる表面装飾方法では、ビーズ層と被装飾体との間に透明樹脂層を形成するので、透明樹脂層の存在に起因する隙間がビーズ層を構成する透明球状ビーズと被装飾体との間に生じ、レンズ作用を成す球状ビーズの焦点近傍に被装飾体を位置させることができる。このため、ビーズ層を介して被装飾体を観察した場合に、ビーズ層を形成する透明な球状ビーズのレンズ作用により、色彩を有する絵画や模様等である被装飾体が浮き上がって見えることになる。このように、その色彩を有する絵柄や模様等である被装飾体が浮かび上がるので、その被装飾体が、紙や、シート状又は板状の木材、金属、ガラス、合成樹脂等の物品の表面に着色されたインキや塗料から成るようなものであれば、その物品の表面に形成された被装飾体の視覚的美観を増加させてその物品の価値を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明実施形態のビーズ装飾体を示す図4のA−A線断面図である。
【図2】本発明のビーズによる表面装飾の手順を示す図である。
【図3】本発明の別のビーズ装飾体を示す図2(d)に対応する断面図である。
【図4】そのビーズ装飾体の正面図である。
【図5】ビーズが透明樹脂層から離間するビーズ装飾体を示す図1に対応する断面図である。
【図6】透明樹脂層及び接着剤層が粘着剤よりなるビーズ装飾体を示す図1に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1に示すように、本発明のビーズ装飾体10は、色彩を有する被装飾体12と、その被装飾体12の表面に形成された透明樹脂層13と、その透明樹脂層13の更に表面に形成された接着剤層14と、その接着剤層14を介して透明樹脂層13の表面に敷き詰められるように接着された透明なビーズ16aの集合から成るビーズ層16とを含む。この実施の形態における被装飾体12は、紙や、シート状又は板状の木材、金属、ガラス、合成樹脂等の表面に着色されたインキや塗料から成り、図1では、紙11の表面に印刷された有色のインキから成る被装飾体12を示す。図4に示すように、紙11の表面に印刷された有色のインキから成る被装飾体12は、この実施の形態では、その紙11の所定の範囲に有色インキによりフクロウの絵が描かれたものである。
【0018】
図1に戻って、ビーズ層16は、透明樹脂層13の表面に敷き詰められるように接着され、外径dが均一な透明な球状ビーズ16aの集合から成る。そのビーズ16aはガラス製であっても良く、透明である限り、樹脂製であっても良い。模様や絵画を描く有色のインキ等から成る被装飾体12はビーズ層16を介して視認され、ビーズ層16における球状ビーズ16aは、ビーズ装飾体10の表面に位置して直接視認されるものである。このため、そのビーズ16aの外径dは被装飾体12の外観上の見栄えを左右する要素であり、その外径dは被装飾体12が描く模様や絵画により決定され、一般的に、0.5〜2.0mmの範囲であることがその美感を向上させるものとして好ましい。
【0019】
透明樹脂層13を形成する樹脂は、透明である限りどの様なものでも使用し得るけれども、均一な厚さtで形成され、その厚さtの調整が容易な点では、ポリエステル系の樹脂又はシリコーン系の樹脂を用いることが好ましい。具体的には、長瀬スクリーン印刷研究所におけるUV硬化インキAZNo.34や、信越化学工業株式会社におけるシルマークインキ透明等のものが例示される。
【0020】
一方、ビーズ16aの集合であるビーズ層16を透明樹脂層13に接着する接着剤層14は、そのビーズ層16を構成する複数のビーズ16aを接着可能である限り、どの様なものでも使用し得る。例えば熱硬化性接着剤であっても良く、紫外線硬化性接着剤であっても良い。また、ビーズ16aを接着可能である限り、印刷用のインキをこの接着剤層14に用いることもできる。この接着剤層14を形成する接着剤は、その接着強度からするとエポキシ系の接着剤が好ましい。具体的に、ビーズ16aがガラスから成る場合には、好ましい接着剤として、株式会社セイコーアドバンスの接着剤No.1690が例示される。一方、ビーズ16aが樹脂から成る場合には、好ましい接着剤として、株式会社セイコーアドバンスの接着剤No.2500メジュウムが例示される。
【0021】
そして、ビーズ層16が、外径dが均一なガラス質球状ビーズ16aの集合から成る場合には、ガラス質球状ビーズ16aの半径をrとするとき、被装飾体12とガラス質球状ビーズ16aとの間の隙間tが(r/3)〜rの範囲となるような透明樹脂層13を形成することが好ましい。一方、ビーズ層16が、外径dが均一な透明樹脂質球状ビーズ16aの集合から成る場合には、その透明樹脂質球状ビーズ16aの半径をrとするとき、被装飾体12と透明樹脂質球状ビーズ16aとの間の隙間tが、(r/2)〜2rの範囲となるような透明樹脂層13を形成することが好ましい。
【0022】
ここで、図1の拡大図に示すように、接着剤層14が、ビーズ層16における複数の球状ビーズ16aを透明樹脂層13に密着させて接着するようなものであれば、被装飾体12と球状ビーズ16aとの間の隙間tは透明樹脂層13の厚さtと同じになる。すると、透明樹脂層13の厚さtを調整することが、被装飾体12と球状ビーズ16aとの間の隙間tを調整することになるので、好ましい。よって、このように、複数の球状ビーズ16aが透明樹脂層13に密着する場合において、ビーズ層16が、外径dが均一なガラス質球状ビーズ16aの集合から成る場合には、ガラス質球状ビーズ16aの半径をrとするとき、その透明樹脂層13の厚さtは、(r/3)〜rの範囲に調整することが好ましい。一方、ビーズ層16が、外径dが均一な透明樹脂質球状ビーズ16aの集合から成る場合には、その透明樹脂質球状ビーズ16aの半径をrとするとき、透明樹脂層13の厚さtを、(r/2)〜2rの範囲に調整することが好ましい。
【0023】
次に、上述したビーズ装飾体を得ることができる本発明のビーズによる表面装飾方法を説明する。
【0024】
本発明のビーズによる表面装飾方法は、被装飾体12の表面に接着剤を塗布し、その接着剤が未硬化の状態でその接着剤層14上にビーズ粉粒体を散布し、その後その接着剤層14を硬化させて被装飾体12の表面に透明なビーズ16aの集合からなるビーズ層16を形成する従来の方法の改良であって、その特徴ある点は、接着剤を塗布する以前に被装飾体12の表面に所定の厚さtの透明樹脂層13を形成する透明樹脂層形成工程が行われ、その透明樹脂層13の表面に接着剤を塗布するところにある。即ち、本発明のビーズによる表面装飾方法は、図2に示すように、被装飾体12準備工程と、透明樹脂層13形成工程と、接着剤層14形成工程と、ビーズ層16形成工程とを備える方法である。以下に各工程を詳細に述べる。
【0025】
図2(a)に示すように、被装飾体12準備工程では、有色のインキや塗料等により模様や絵画等が描かれた被装飾体12を準備する。図2(a)では、紙11の表面に印刷された有色のインキから成る被装飾体12が準備された状態を示す。即ち、図2(a)では、紙11の表面にインキにより着色されて模様や絵画等が描かれる場合を示す。しかし、被装飾体12は、紙11の表面に印刷されたものに限らず、シート状又は板状の木材、金属、ガラス、合成樹脂等の表面に着色されたインキや塗料から成るものであっても良い。この着色は印刷であっても良く、被装飾体12が形成される物品11がシート状又は板状のものであれば、被装飾体12は、クレヨン、パステル等の絵の具により着色されたもの、或いは水性絵の具により着色されたものであっても良い。色付き塗料としては液状のものがよく、絵画用の絵の具でも、ペイントでも、更にはマジックペンを使用してもよい。また塗料は水性でも油性でもよく、被装飾体12が表面に形成される物品11の材料によって適宜選択できる。
【0026】
また、被装飾体12は、色彩を有し、その表面に透明樹脂層13が形成可能であれば良いので、例えば木材の木目が現れる表面を有する木材そのものを被装飾体12としても良く、表面が金属光沢を発する金属そのものを被装飾体12としても良い。即ち、この被装飾体12準備工程において準備される被装飾体12は、色彩を有してその表面の模様や絵画等が視認しうる限り、シート状又は板状の木材、金属、ガラス、合成樹脂等そのものであっても良く、それらの材料で製造された立体的な物品そのものであっても良い。
【0027】
図2(b)に示すように、透明樹脂層13形成工程では、色彩を有する被装飾体12の表面に所定の厚さtの透明樹脂層13を形成する。この透明樹脂層13の形成は、対象物がシート状又は板状のものであれば、スクリーン印刷により行うことができる。スクリーン印刷によりこの透明樹脂層13を形成する場合のインキとしては、前述した、ポリエステル系の樹脂又はシリコーン系の樹脂が例示され、具体的には、長瀬スクリーン印刷研究所におけるUV硬化インキAZNo.34や、信越化学工業株式会社におけるシルマークインキ透明等が好ましい。また、透明樹脂層13の所定の厚さtが一回のスクリーン印刷で印刷可能な範囲の厚さを越えている場合には、そのスクリーン印刷を複数回繰り返して所定の厚さを有する透明樹脂層13を形成する。また、インキとしていわゆる紫外線硬化樹脂を用いれば、熱硬化インキに比較して1回の印刷で肉厚を比較的厚く印刷できるので好ましい。
【0028】
この透明樹脂層13の所定の厚さtはビーズ層16を構成することになる透明なビーズ16aの大きさ、及びそのビーズ16aが透明樹脂層13に密着するか否かによるけれども、そのビーズ16aがガラスであってかつ透明樹脂層13に密着するものであれば、被装飾体12と球状ビーズ16aとの間の隙間tは透明樹脂層13の厚さtと同じになるので、そのガラス質球状ビーズ16aの半径をrとするとき、透明樹脂層形成工程において厚さtが(r/3)〜rの範囲の透明樹脂層13を形成する。このため、例えば、直径が0.6mmのビーズ16aを用いる場合の透明樹脂層13の厚さtは0.1〜0.3mmの範囲とされる。ビーズ16aがガラスである場合において、透明樹脂層13の厚さtが(r/3)未満であると、ビーズ16aによるレンズ作用を発揮することができず、その厚さtがビーズ16aの半径rを越えると、被装飾体12の色彩が描く絵画や模様等が浮き上がって見えることができない。ガラス質球状ビーズ16aの半径をrとするとき、被装飾体12とガラス質球状ビーズ16aとの間の隙間tは、(r/2)〜0.9rの範囲が好ましく、(r/2)〜0.8rの範囲が更に好ましい。
【0029】
一方、後述するビーズ16aが透明樹脂質球状ビーズ16aであってかつ透明樹脂層13に密着するのであれば、被装飾体12と球状ビーズ16aとの間の隙間tは透明樹脂層13の厚さtと同じになるので、その樹脂質球状ビーズ16aの半径をrとするとき、透明樹脂層形成工程において厚さtが(r/2)〜2rの範囲の透明樹脂層13を形成する。このため、例えば、直径が0.6mmの透明樹脂質球状ビーズを用いる場合の透明樹脂層13は0.15〜0.6mmであることが好ましい。ビーズ16aが透明樹脂である場合において、透明樹脂層13の厚さtが(r/2)未満であると、ビーズ16aによるレンズ作用を発揮することができず、その厚さtが2rを越えると、被装飾体12の色彩が描く絵画や模様等が浮き上がって見えることができない。透明樹脂質球状ビーズ16aの半径をrとするとき、被装飾体12と透明樹脂質球状ビーズ16aとの間の隙間tは、r〜1.5rの範囲が好ましく、r〜1.3rの範囲が更に好ましい。
【0030】
図2(c)に示すように、接着剤層14形成工程では、所定の厚さtを有する透明樹脂層13の上に更に接着剤層14を形成する。この接着剤層14も透明である必要がある。この接着剤層14の形成にあってもスクリーン印刷が例示される。この接着剤層14の厚さは後述するビーズ粉粒体を接着し得るに足りるものであれば良く、図1の拡大図に示すように、球状ビーズ16aを透明樹脂層13に密着させた状態で接着するようなものであれば、0.1〜0.15mmの範囲であれば十分と考えられる。スクリーン印刷によりこの接着剤層14を形成する場合の接着剤としては、前述したエポキシ系の接着剤が例示され、具体的には、株式会社セイコーアドバンスの接着剤No.1690や、接着剤No.2500メジュウムが例示される。
【0031】
図2(d)に示すように、透明ビーズ層16形成工程では、接着剤層14形成工程において、被装飾体12の表面に塗布した接着剤が未硬化の状態でその接着剤層14上にビーズ粉粒体を散布し、その後接着剤層14を硬化させることによりビーズ粉粒体の内その接着剤層14に埋没して透明樹脂層13に接触するビーズ16aを透明樹脂層13上に固定させる。接着剤層14が硬化した後に、その接着剤層14により接着されていないビーズ16aを除去し、その接着剤層14を介して透明樹脂層13の表面に敷き詰められるように接着された透明なビーズ16aの集合から成るビーズ層16を透明樹脂層13の表面に形成する。
【0032】
この透明ビーズ層16形成工程において使用するビーズ粉粒体は、外径dが均一な球状ビーズ16aの集合から成り、そのビーズ16aはガラス製であっても良く、透明である限り、樹脂製のビーズ16aであっても良い。ビーズ16aの外径dは前述したように0.5〜2.0mmの範囲であることが好ましい。ビーズ層16を形成するビーズ16aの外径dが0.5mm未満であると、ビーズ16aのレンズ効果を十分に得られないおそれがあり、ビーズ16aの外径dが2.0mmを越えると、そのビーズ16aが互いに密着して成るビーズ層16が奏する装飾的美観が低下する不具合がある。このビーズ層16を形成するビーズ16aの外径dは0.5〜1.5mmであることが好ましく、0.6〜1.0mmであることが更に好ましい。このようなビーズ16aの集合であるビーズ粉粒体の散布は、従来技術で記載した装置を用いる他に、このビーズ粉粒体を小さなスプーンに入れて所望の場所に流し、そのごスプーンの裏面で平らにならして隙間ができないようにしても良い。このようにして、図1に示すようなビーズ装飾体10を得る。
【0033】
このように形成されたビーズ装飾体10では、ビーズ層16を構成する透明球状ビーズ16aと被装飾体12との間に透明樹脂層13を形成したので、透明樹脂層13の存在に起因する隙間が透明ビーズ16aと被装飾体12との間に生じ、レンズとなる球状ビーズ16aの焦点近傍に被装飾体12を位置させることができる。このため、ビーズ層16を介して被装飾体12を観察した場合に、そのビーズ層16を構成する透明ビーズ16aのレンズ作用により、被装飾体12が描く模様や絵画が浮き上がって見えることになる。
【0034】
即ち、ビーズ層16を構成する複数のビーズ16aは、透明であるが故に、いわゆるレンズ作用を生じさせる。ここで、ビーズ16aの半径をrとし、そのビーズ16aから成るレンズの焦点距離をfとし、そのビーズ16aの材質における屈折率をnとすると、この焦点距離fと屈折率nとの関係は、一般的にf=nr/2(n−1)と表される。そして、ビーズ16aがガラスから成るものとすると、そのガラスの屈折率は一般的に1.5であるので、この式からガラス質球状ビーズ16aの焦点距離fは1.5rとなる。
【0035】
ここで、このガラス質球状ビーズ16aと色彩を有する被装飾体12の表面の間には透明樹脂層13が介在し、この透明樹脂層13を形成する樹脂の屈折率はガラスの屈折率より一般的に小さいので、その屈折率の比に応じて、この透明樹脂層13に接着されたガラス質球状ビーズ16aの焦点距離fは若干延びることになる。けれども、その焦点距離fの伸びは僅かであるので、少なくとも透明樹脂層13の厚さt、即ち、被装飾体12とガラス質球状ビーズ16aとの間の隙間tが(r/3)〜rの範囲であれば、ビーズ層16を形成するガラス質球状ビーズ16aの焦点距離fは色彩を有する被装飾体12の表面の近傍に位置することになる。
【0036】
一方、ビーズ16aが透明樹脂から成るものとすると、樹脂の屈折率は一般的に1.3〜1.5といわれており、仮にその屈折率を1.3とすると、前述した式から透明樹脂質球状ビーズ16aにおける焦点距離fは2.17rとなる。ここで、この透明樹脂質球状ビーズ16aと色彩を有する被装飾体12の表面の間には透明樹脂層13が介在し、この透明樹脂層13を形成する樹脂の屈折率も同様と考えられるので、この透明樹脂層13に接着された透明樹脂質球状ビーズ16aの焦点距離fは若干延びることになる。けれども、その焦点距離fの伸びは僅かであるので、少なくとも透明樹脂層13の厚さt、即ち、被装飾体12と透明樹脂質球状ビーズ16aとの間の隙間tが(r/2)〜2rの範囲であれば、ビーズ層16を形成する透明樹脂質球状ビーズ16aの焦点距離fは色彩を有する被装飾体12の表面の近傍に位置することになる。
【0037】
よって、ビーズ層16における複数のガラス質球状ビーズ16a又は複数の透明樹脂質球状ビーズ16aのレンズ作用により、その焦点の近傍に位置する色彩を有する被装飾体12が描く絵画や模様等が浮き上がって立体的に見えることになる。例えば、図4に示すように、被装飾体12が、紙11の表面に描かれたフクロウの絵であれば、そのフクロウの絵をビーズ層16を介して観察すると、その描かれたフクロウが浮き上がって立体的に見えることになる。そして、見る角度により焦点は異なるので、その焦点近傍の被装飾体12が描く模様や絵画の色が変化していれば、そのような絵画や模様等の浮き上がって立体的に見える色彩が見る角度により変化することになり、その見栄えをより一層良くすることができる。このため、本発明では、そのような被装飾体12を有する物品の見栄えを向上してその重みを増すことができる。
【0038】
なお、上述した実施の形態では、対象物である紙11の表面に印刷されたインキから成る被装飾体12を例示して説明したけれども、この被装飾体12は、必ずしも対象となる物品の表面に印刷されたものに限らず、この対象となる物品が存在しないような場合であっても良い。例えば、図3に示すように、透明樹脂シート13の裏面に印刷を行い、その印刷された塗料又はインキから成るものを被装飾体12としてもよい。すると、その透明樹脂シートが透明樹脂層13となり、この透明樹脂層13となる透明樹脂シートの裏面に塗布された塗料やインキにより色彩を有する被装飾体12を形成することができるので、対象となる物品11を不要にすることができる。このように対象となる物品が存在しなくても、ビーズ層16側から被装飾体12を観察すれば、ビーズ層16における複数の透明ビーズ16aによるレンズ作用により、被装飾体12の色彩が描く絵画や模様等が浮き上がって見えることになり、その図形や模様が立体的に見えることにより作品の重みを増すことができる。
【0039】
また、上述した実施の形態では、接着剤層14形成工程において被装飾体12の表面に接着剤を塗布し、その接着剤が未硬化の状態でビーズ層16形成工程においてその接着剤層14上にビーズ粉粒体を散布する場合を説明したが、接着剤用の塗料に予めビーズ粉粒体を混合しておいたビーズ入り塗料を塗布するようにして、接着剤層14形成工程とビーズ層16形成工程を同時に行うようにしても良い。図示しないが、このようなビーズ入り塗料をつくるには、水性又は油性の透明なワニス又はラッカーのような塗料にビーズ粉粒体を混入することが考えられる。このビーズ入り塗料を透明樹脂層13上に塗布するには、そのビーズ入り塗料を小さなスプーンに入れて所望の場所に流し、そのごスプーンの裏面で平らにならして隙間ができないようにすることが考えられる。なお、接着剤としての塗料とビーズ粉粒体とを混合する割合は、接着剤としての塗料の種類並びにビーズ粉粒体を構成するビーズの材質及び大きさによって適宜選択して決められるものである。
【0040】
また、上述した実施の形態では、接着剤層14が、ビーズ層16における複数の球状ビーズ16aを透明樹脂層13に密着させて接着するようなものであって、被装飾体12と球状ビーズ16aとの間の隙間tが透明樹脂層13の厚さtと同じになる場合を説明した。けれども、図5に示すように、接着剤層14は、ビーズ層16における複数の球状ビーズ16aを透明樹脂層13から離間させた状態で接着するようなものであって、被装飾体12と球状ビーズ16aとの間の隙間tが透明樹脂層13の厚さsより大きくなるようなものであっても良い。この場合の被装飾体12と球状ビーズ16aとの間の隙間tは、透明樹脂層13の厚さsに、透明樹脂層13から球状ビーズ16aが離間する量nを加えた値となる。このため、このような接着剤を用いる場合には、予めその接着剤を用いた場合における透明樹脂層13から球状ビーズ16aが離間する量nを求めておいて、その量nを被装飾体12と球状ビーズ16aとの間の必要な隙間tから減じて透明樹脂層13の厚さsを求め、その厚さsの透明樹脂層13を形成することが必要である。
【0041】
即ち、本発明の表面装飾方法において、ビーズ層16における複数の球状ビーズ16aを透明樹脂層13から離間させた状態で接着するような接着剤を用いる場合であって、ビーズ粉粒体が、外径dが均一なガラス質球状ビーズ16aの集合から成る場合には、そのガラス質球状ビーズ16aの半径をrとすると、被装飾体12とガラス質球状ビーズ16aとの間の隙間tが(r/3)〜rの範囲となるような透明樹脂層13を透明樹脂層形成工程において形成する必要がある。一方、ビーズ粉粒体が、外径dが均一な透明樹脂質球状ビーズ16aの集合から成る場合には、その樹脂質球状ビーズ16aの半径をrとするとき、被装飾体12と透明樹脂質球状ビーズ16aとの間の隙間tが(r/2)〜2rの範囲となるような透明樹脂層13を透明樹脂層形成工程において形成する必要がある。
【0042】
また、上述した実施の形態では、透明樹脂層13と接着剤層14を別のものとしたけれども、図6に示すように、透明樹脂層13及び接着剤層14を同一の粘着剤より形成しても良い。粘着剤を用いると、そのビーズ16aは粘着剤の表面において貼り付き、その粘着剤の中に埋没することはない。このため、色彩を有する被装飾体12の表面に粘着剤を塗布して均一な厚さの粘着剤層17を形成し、その粘着剤層17の表面にビーズ粉粒体を散布し、球状ビーズ16aをその粘着剤層17に貼り付ける。すると、球状ビーズ16aは粘着剤層17の表面において僅かに埋没して貼り付く。このため、この粘着剤層17は、図6の拡大図に示すように、球状ビーズ16aと被装飾体12の間に存在して所定の厚さtの透明樹脂層13と、その透明樹脂層13の表面に透明なビーズ16aを敷き詰めるように接着する接着剤層14を構成するものとなる。
【0043】
図6に示すように、粘着剤層17を形成する粘着剤、即ち、透明樹脂層13及び接着剤層14を形成する粘着剤としては、UV硬化タイプの粘着剤や、溶剤性タイプ又は水溶性タイプの粘着剤が挙げられる。例えば、UV硬化タイプの粘着剤として、十条ケミカル株式会社におけるRAYTACK−NEWが例示される。また、透明であることが要件とされるので、溶剤性タイプの粘着剤としては、ゴム系のものが好ましい。この粘着剤による粘着剤層17の形成にあっても、スクリーン印刷が例示され、その必要な厚さが一回のスクリーン印刷で印刷可能な範囲の厚さを越えている場合には、そのスクリーン印刷を複数回繰り返して重ね塗りすることにより、所定の厚さを有する粘着剤層17を形成することができる。
【0044】
更に、上述した実施の形態では、透明樹脂層13の形成手段、接着剤層14の形成手段、及び粘着剤層17の形成手段としてスクリーン印刷を例示したが、この透明樹脂層13、接着剤層14及び粘着剤層17の形成手段はスクリーン印刷に限られず、所望の厚さが得られる限り、刷毛を用いた作業員による塗布作業であっても良く、ロールコートや、バーコートのような形成手段であっても良い。
【符号の説明】
【0045】
10 ビーズ装飾体
12 被装飾体
13 透明樹脂層
14 接着剤層
16 ビーズ層
16a ビーズ
d ビーズの外径
r ビーズの半径
t 被装飾体とビーズとの間の隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
色彩を有する被装飾体(12)と、
前記被装飾体(12)の表面に形成された透明樹脂層(13)と、
前記透明樹脂層(13)の更に表面に形成された接着剤層(14)と、
前記接着剤層(14)を介して前記透明樹脂層(13)の表面に敷き詰められるように接着された透明なビーズ(16a)の集合から成るビーズ層(16)と
を含むビーズ装飾体。
【請求項2】
ビーズ層(16)は外径(d)が均一なガラス質球状ビーズ(16a)の集合から成り、前記ガラス質球状ビーズ(16a)の半径をrとするとき、被装飾体(12)と前記ガラス質球状ビーズ(16a)との間の隙間(t)が(r/3)〜rの範囲である請求項1記載のビーズ装飾体。
【請求項3】
ビーズ層(16)は外径(d)が均一な透明樹脂質球状ビーズ(16a)の集合から成り、前記透明樹脂質球状ビーズ(16a)の半径をrとするとき、被装飾体(12)と前記透明樹脂質球状ビーズ(16a)との間の隙間(t)が(r/2)〜2rの範囲である請求項1記載のビーズ装飾体。
【請求項4】
透明樹脂層(13)が透明樹脂シートからなり、前記透明樹脂シートの裏面に塗布された塗料又はインキにより色彩を有する被装飾体(12)が形成された請求項1ないし3いずれか1項に記載のビーズ装飾体。
【請求項5】
透明樹脂層(13)及び接着剤層(14)が粘着剤よりなる請求項1ないし3いずれか1項に記載のビーズ装飾体。
【請求項6】
色彩を有する被装飾体(12)の表面に所定の厚さ(t)の透明樹脂層(13)を形成する透明樹脂層形成工程と、
前記透明樹脂層(13)の表面に接着剤層を形成する接着剤層形成工程と、
前記接着剤層(14)上にビーズ粉粒体を散布して前記接着剤層(14)を介して前記透明樹脂層(13)の表面に敷き詰められるように接着された透明なビーズ(16a)の集合から成るビーズ層(16)を形成するビーズ層形成工程と
を有するビーズによる表面装飾方法。
【請求項7】
ビーズ粉粒体が、外径(d)が均一なガラス質球状ビーズ(16a)の集合から成り、前記ガラス質球状ビーズ(16a)の半径をrとするとき、被装飾体(12)と前記ガラス質球状ビーズ(16a)との間の隙間(t)が(r/3)〜rの範囲となるような透明樹脂層(13)を透明樹脂層形成工程において形成する請求項6記載のビーズによる表面装飾方法。
【請求項8】
ビーズ粉粒体が、外径(d)が均一な透明樹脂質球状ビーズ(16a)の集合から成り、前記樹脂質球状ビーズ(16a)の半径をrとするとき、被装飾体(12)と前記透明樹脂質球状ビーズ(16a)との間の隙間(t)が(r/2)〜2rの範囲となるような透明樹脂層(13)を透明樹脂層形成工程において形成する請求項6記載のビーズによる表面装飾方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−59921(P2013−59921A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200051(P2011−200051)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(511224092)