説明

ピッチングマシン

【課題】本発明は、簡単な機構により投手の腕の動作を視認できて、打撃すべきタイミングを計ることができ、且つ、状況の正確な判断能力を養うトレーニングも可能で、且つ、一般市場向けの生産コストで制作可能な、ピッチングマシンを提供する。
【解決手段】上下一対の投出ローラ上と投出ローラ下を有するローラ式ピッチングマシンにおいて、前記投出ローラの上方近傍に、投球腕が設けてあり、制御部からの信号により、前記投球腕の回転位置に連動して、前記投出ローラ上と前記投出ローラ下との間に球を挟んで、前方に投出させることを特徴とするピッチングマシンである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野球(硬式、軟式)やソフトボール等で使用される打撃練習や捕球練習等に用いられるピッチングマシンに関し、より詳しくは、投球時期を予告して投球するピッチングマシン(投球装置)に関する。
【背景技術】
【0002】
図6は、従来のローラ式といわれるピッチングマシン(投球装置)1を示す正面図である。図において、3は水平方向の回転軸に回転力を発生するモータ、4は投出される球、5は前記モータ3の回転軸にそれぞれ直結し、前記球4を挟み込んで投出する一対のローラ、6はその先端部が前記ローラ5間に臨んでおり、前記球4を前記ローラ5間に送り込む球供給機である。
【0003】
このローラ式ピッチングマシン1では、前記一対のローラ5はモータ3により矢印A,Bの互いに逆方向に回転し、球供給器6から送り出された球4を挟み込んだ後、所定の方向に投出する。
【0004】
図7は、従来のアーム式といわれるピッチングマシン(投球装置)10を示す斜視図である。12はアーム、13はモータ3に直結され、モータ3の回転速度を減速させ回転力を増幅させる減速機、14は回転体、15は減速機13と回転体14との間を巻回し減速機13の回転力を回転体14に伝える駆動ベルト、16は回転体14の中心軸心から離れた位置に固着された凸部、17は回転体14の中心軸心を貫通固着していると共にアーム12の基端部が回転自在な回転軸、18は回転軸17の先端部に固着されたカム、19はカム18の端部に一端が取り付けられカム18を引っ張るばね、20はアーム12の先端部に固定され球4を乗せるハンドである。
【0005】
このアーム式ピッチングマシン(投球装置)10では、モータ3によって発生した回転力は、減速機13により回転速度を減速させて回転力を増幅し、駆動ベルト15を介して回転体14に伝達される。回転体14の回転と共に凸部16は、アーム12を押してアーム12を回転運動させる。図7に示したアーム12の角度は地面に対して水平状態から少々上に位置するが、この時、ばね19は最も伸びた状態になり、ばね19の軸心が回転軸17の軸心を上方から下方へ超えた時、アーム12は、ばね19の弾発力により引っ張られて高速回転し、球4を投出する。
【0006】
従来のローラ式ピッチングマシン1やアーム式ピッチングマシン10により、投球された球4に対し打撃練習をする場合において、これらのピッチングマシン1,10による投球時期を打者に対し予告することにより、打者が打撃のタイミングを取ることを可能にしていた。それらの例として、下記の特許文献が挙げられる。
【特許文献1】特開2006−51348号公報
【特許文献2】特開2004−329425号公報
【特許文献3】特開平09−38266号公報
【特許文献4】特開平08−276044号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1の特開2006−51348号公報では、投球人形の動作を見てボール発射が予見できるが、装置が複雑であり、高価なものとなってしまい、ランニングコストも高く付き一般市場向けには不向きである。また、ボールを上から供給するためには、少なくともスイングするバットより高い位置にボールを運ぶ必要があり、これでは、マシンが人間ほどの高さになり小回りが効かず取り扱いが不便である。
【0008】
そして、特許文献2の特開2004−329425号公報によれば、図8を参照して、図8はピッチングマシン25の平面配置図を示す。ピッチングマシン(投球装置)25は、打席26の正面に、映像を表示するスクリーン31とその近傍にボールの通過切欠き32を有する表示手段30を設け、この表示手段30の後方に投球手段28と制御手段27と映写手段29とを配置している。予め撮影した投手の投球動作の映像を制御手段27のメモリ内(図示せず)に記憶していて、映像信号を映写手段29に送信すると共に所定のタイミングで投球手段28に駆動信号を送信するようになっている。スクリーン31に映し出された投手の投球動作により、投球時期を打者に対し予告することにより、打者が打撃のタイミングを取ることを可能にしていた。
【0009】
このピッチングマシン(投球装置)25は、装置が精密であり、且つ高価である。故障等が起こると高度な専門的な知識を有する技術者を必要として、修理等に時間と高価な経費を必要としているために一般的ではなかった。
【0010】
更に、特許文献3の特開平09−38266号によれば、図7を参照して、球4を投出する駆動系と、この駆動系の回転軸17に設けられたタイミングカム17aと、これに対応して設けられ駆動系の動作を検出する検出スイッチ21aとにより構成される検出手段21と、この検出手段21からの出力信号により順次駆動する複数の発光体22a、22b、22c、22d、22eと検出手段21からの信号出力時から発光体22a、22b、22c、22d、22eの最初の発光までの時間を調整する第1の時期可変装置23と、複数の発光体22a、22b、22c、22d、22eの最初の発光から最終の発光までの各発光間隔を調整する第2の時期可変装置24とを備えている。これ等は複数の発光体22a、22b、22c、22d、22eを順次発光させて球の投出を予告するものである。これも投手が投げる球を打つ練習に対して、十分とは言えず、いまひとつ物足りなさがあった。
【0011】
そして、特許文献4の特開平08−276044号公報によれば、打撃練習時に球供給者がピッチングマシン(投球装置)に球を供給して、案内通路の途中に設けられた移動規制手段により球は停止している。次に球供給者が球をその手に持たないままで、実際の試合でするような投球動作(以下、これを「空の投球動作」という)を開始する。そして、この「空の投球動作」の終了段階で、その手からあたかも球が離れて、これが前方に投球される時点で、その手で操作部を操作して、移動規制手段を解除して停止していた球が一対の回転輪に挟まれて前方に投球される。上記「空の投球動作」を見た打者は、上記投球時期から打撃すべきタイミングを計ることが出来て、打撃練習が行われる。これによると、球供給者による「空の投球動作」が必要条件であり、効率的な打撃練習が出来なくて不便である。
【0012】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものあり、その目的は、簡単な機構により投手の腕の動作を視認できて、打撃すべきタイミングを計ることができ、且つ、状況の正確な判断能力を養うトレーニングも可能で、且つ、一般市場向けの生産コストで製造可能なピッチングマシン(投球装置)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1の発明では、(複数の脚車を有する基台上の枠体に、)回転軸心をそれぞれ水平方向に指向して、上下一対の投出ローラ上と投出ローラ下との間隔が、投出される球の1個分の直径よりやや狭い間隔を有して互いに平行に配置され、前記投出ローラ上の回転軸は第1のモータの出力軸に、また前記投出ローラ下の回転軸は第2のモータの出力軸にそれぞれ連結され、前記投出ローラ上と、前記投出ローラ下とは回転方向は互いに反対方向であり、且つ、それぞれ独立に所定の速度に回転駆動可能に構成されていて、前記球を球供給機から通路下方に転動落下させ、所定の回転スピードにて回転している前記投出ローラ上と前記投出ローラ下との間に前記球を挟んで、前方に投出されるピッチングマシンにおいて、
前記上下一対の投出ローラ上と投出ローラ下の、上方近傍に、投球腕が、第3のモータの出力軸に連結して設けてあり、制御部からの信号により前記投球腕が所定の方向に回転し続け、前記投球腕の位置に連動して、前記球供給機の通路途中にて係止保持していた球を解放させて、前記球を前記通路下方に転動落下させ、所定の方向に回転する前記投球腕の位置が、所定の位置に達することに連動して(下方の約垂直に位置したことに連動して)、所定の回転スピードにて回転している前記投出ローラ上と前記投出ローラ下との間に前記球を挟んで、球検出センサに検出されると共に、前方に投出させることを特徴とするピッチングマシンである。
【0014】
請求項2の発明では、前記投球腕がユニフォーム袖部と、アンダーシャツ腕部とが装着されていることを特徴とする請求項1に記載のピッチングマシンである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明では、回転軸心をそれぞれ水平方向に指向して、上下一対の投出ローラ上と投出ローラ下との間隔が、投出される球の1個分の直径よりやや狭い間隔を有して互いに平行に配置され、前記投出ローラ上の回転軸は第1のモータの出力軸に、また前記投出ローラ下の回転軸は第2のモータの出力軸にそれぞれ連結され、前記投出ローラ上と、前記投出ローラ下とは回転方向は互いに反対方向であり、且つ、それぞれ独立に所定の速度に回転駆動可能に構成されていて、前記上下一対の投出ローラ上と投出ローラ下の、上方近傍に、投球腕が、第3のモータの出力軸に連結して設けてあり、制御部からの信号により、回転する前記投球腕の所定位置に連動して、所定の回転スピードにて回転している前記投出ローラ上と前記投出ローラ下との間に前記球を挟んで、前方に投出させることを特徴とするピッチングマシンである。
【0016】
請求項1の発明の場合、複雑でない安価で単純な構造により、実際のピッチャーのように、投球腕を回転させて、この投球腕の回転に連動させて、タイミング良く球を投出することで、実戦に近い状況を作り出す。これにより打撃の練習効率が向上する。
上下一対の投出ローラが、各々独立のモータの出力軸に連結していて、独立して回転するため、球に任意の回転を与えることにより、様々な投球の種類を再現することが可能となり、これも実戦に近い状況を作り出して、これにより打撃の練習効率が向上する。
実際の投手は、同じような投球腕の振り(回転動作)から、緩急を付けた球を投げ込んでくる。特に早い腕の振り(回転動作)からの遅い球速の球(チェンジアップ等)は、勝負球としてもよく使われる球種である。本発明では、早い腕の振り(回転動作)から、遅い球速の球(チェンジアップ等)を投げることが出来るピッチングマシンである。これにより、早い腕の振り(回転動作)から投げられる、遅い球速の球を打つ練習が可能となり便利である。従来は、ただ単に、遅い球速の球を打つだけの練習しかできなかったが、本発明により、打者が投球腕の動きを視認しながら、早い腕の振り(回転動作)から、投げられる遅い球速の球の打撃練習が出来て、より実践的な練習が可能で便利である。更に、その投球腕の動きに連動して投出される前記球を見ながら、打撃のタイミングを計り、どういう打球をどの方向に飛ばすか考えた打撃練習を可能とし、より実戦に近いビジュアルトレーニングが1人で可能である。
【0017】
請求項2の発明では、請求項1の効果と同一の効果を奏することは勿論であるが、更に、
前記投球腕にユニフォーム袖部41と、アンダーシャツ腕部42とが装着されていて、回動(回転)する前記投球腕をより実戦的で、一層良く視認出来る。これにより、その投球腕の動きに連動して投出される前記球を見ながら、打撃のタイミングを計り、どういう打球をどの方向に飛ばすか考えた打撃練習を可能とし、より実戦に近いビジュアルトレーニングが1人で可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明に係るピッチングマシン(投球装置)1の正面図(一部破断)である。図2は、本発明に係るピッチングマシン(投球装置)1の右側面図である。図1を参照して、このピッチングマシン(投球装置)1を構成するピッチンマシン本体2において、複数の脚車2bを有する基台2a上の枠体の右方に、上下一対を成す投出ローラ上5aと投出ローラ下5bとが、回転軸心をそれぞれ水平方向に指向して、球4の1個分の直径よりやや狭い間隔を有して互いに平行に配置されている。そして、前記投出ローラ上5aの回転軸はモータM1の出力軸に、また前記投出ローラ下5bの回転軸はモータM2の出力軸にそれぞれ連結されている。そして、投出ローラ上5aはモータM1により反時計方向に、前記投出ローラ下5bはモータM2により時計方向に、それぞれ独立に回転駆動可能に構成されている。これにより、前記投出ローラ上5aと投出ローラ下5bとを異なった回転数に設定可能となり、球4による直球を始め、種々の変化球の投出が可能である。
【0020】
前記投出ローラ上5aと前記投出ローラ下5bとの間に球検出センサ43を設け、球4が投出ローラ上5aと投出ローラ下5bとに挟まれているか否かの判定をする(図2、図3参照)。図1を参照して、投出ローラ上5aと投出ローラ下5bの間に球4を挟み込ませるために、球供給機6が、投出ローラ上5aと投出ローラ下5bとの左後方から、投出ローラ上5aと投出ローラ下5bとの間に向けて下り傾斜を付けて配置されている。この球供給機6は、球4の投入口6aを有し、案内樋下7と案内樋上8とをピッチングマシン本体2の枠体に(取り付け方を具体的に図示していないが)取り付けねじ等にて取り付けてある。前記案内樋下7の中間部には、アクチュエータ9aを具備するソレノイド9が配置されている。
【0021】
通常、ソレノイド9のアクチュエータ9aの上端頭部は、復帰ばね9b(図示せず)により、案内樋下7に設けられた切り欠き孔7aから、上方の案内樋上8の方向に向けて球4の通路内に突出して待機状態となっていて、投入口6aから投入された球4を係止保持するようになっている。そして、後述するように制御部46の指令にて、腕40の回動(回転)位置と関連したタイミングにより、ソレノイド9の吸引動作により復帰ばね9b(図示せず)に抗してアクチュエータ9aが、下方に吸引移動されて、球4の通路内に係止保持されていた球4が解放されて、通路下方に転動落下して、所定の回転スピードにて回転している投出ローラ上5aと投出ローラ下5bとの間に挟まれ、球検出センサ43に検出されて、前方に球4が投出される。その後、前記ソレノイド9は、制御部46の指令により、吸引動作を終了し、励磁が解かれ、ソレノイド9のアクチュエータ9aの上端頭部は、復帰ばね9b(図示せず)により、再び、案内樋上8の方向に向けて球4の通路内に突出して、次の球4の係止保持をするために待機状態となる。ところで、前記球供給機6は、球4の収容部(図示せず。)と連動して、制御部46の指令による、球4の繰り出し信号により1個ずつ球4を自動供給させることが可能である。
【0022】
図1を参照して、ピッチングマシン本体2の枠体の右上方(図2では左上方)において、上下一対の投出ローラ上5aと投出ローラ下5bを含むピッチングユニット2cが配置されており、そのピッチングユニット2cの上方部に、投球腕回しモータM3の出力軸に連結して設けてある投球腕40を含む腕振りユニット39が配置されている。前記ピッチングユニット2cを下方に、前記腕振りユニット39が上方に、配置されている図1の配置は、ソフトボール等のアンダースロー用のピッチングマシン1に適している。そして、この投球腕回しモータM3はステップモータとしているが、ACサーボモータでも良いことは勿論である。そして、前記投球腕40の回転に障害にならない位置に投球腕位置検出センサ44が、ピッチングマシン本体2の枠体に設けてある。この位置は、投球腕40が下方に回転してきた時に、その位置を検出することが可能である。
【0023】
図2を参照して、上下一対の投出ローラ上5aと投出ローラ下5bとが、回転軸心をそれぞれ水平方向に指向して、球4の1個分の直径よりやや狭い間隔を有して互いに平行に配置されている。そして、上下一対の投出ローラ上5aと投出ローラ下5bとの間に球4を挟み込み可能な間隔としてあり、投出ローラ上5aはモータM1の出力軸に、投出ローラ下5bはモータM2の出力軸に、それぞれ独立に回転駆動可能なように連結されていることは前述した。そして、ピッチングマシン本体2の枠体内の、これらモータM1とモータM2との右方(図1においては後方)に、制御部46が設けてある。この制御部46は下方に電源部47が、中程にPLCコントローラ48が、上方に受信部49が配置された構成となっている。
【0024】
図3は、リモートコントロールスイッチ55(図1、図2に図示せず)とピッチングマシン本体2と制御部46とからなる本発明のピッチングマシン1の制御ブロック図を示す。
前述したように制御部46は、電源部47とPLCコントローラ48と受信部49とから構成されている。電源部47は、商用電源や発電機65(図5参照)による50/60Hz、AC100Vの電源の供給を受けて、ピッチングマシン本体2を動作させるために、PLCコントローラ48や、モータM1、モータM2、投球腕回しモータM3、ソレノイド9等に必要な電力を供給するためのものである。PLCコントローラ48は、Programmable Logic Controllerとも言われ、マイクロコンピュータ(CPU:中央演算処理装置、図示せず)とメモリ(記憶素子、図示せず)を内蔵した制御装置である。リモートコントロールスイッチ51や、光電センサ又は近接センサ43,44からの入力信号を入力回路(図示せず)で取り込み、予めプログラムされた条件で出力回路(図示せず)をON/OFFすることで、モータM1、モータM2、投球腕回しモータM3、ソレノイド9等を自由に制御して、球4における種々の球種や球速の投球を可能とする。尚、モータM1,M2は、ACモータ、DCモータいずれでも良い。
【0025】
そして、リモートコントロールスイッチ51は、スイッチSAとスイッチSBの組と、スイッチSCとスイッチSDの組と、スイッチSEとスイッチSFの組と、スタートスイッチSSが発する電波信号を、制御部46の受信部49により電波信号を受信してPLCコントローラ48に入力し取り込ませる。スイッチSAとスイッチSBの組では、例えば投球速度が約70km/h〜約100km/hの間の投球速度の選択が可能であり、スイッチSCとスイッチSDの組では、例えば投球速度が約100km/h〜140km/hの間の投球速度の選択が可能であり、スイッチSEとスイッチSFの組では、約150km/h〜160km/hの間の投球速度の選択が可能である。通常、本発明では打者が、リモートコントロールスイッチ51を腰ベルトに吊り下げていたり、ヘルメットにセットして、自分一人の操作による打撃練習が可能であり、勿論、補助者によりリモートコントロールスイッチ51の操作lによる打撃練習も可能である。
【0026】
いずれにしても、スイッチSAとスイッチSBの組、スイッチSCとスイッチSDの組、スイッチSEとスイッチSFの組の、何れかの組のスイッチの1つを選択押下して投球スピードを決定し、球4を投入口6aに投入した後に、スタートスイッチSSを押下することにより、投球腕40の動作が開始し、投球腕40の動作に同期して、球4が投球される。尚、投球速度の測定は、市販のスピードガンを使用可能とする。
【0027】
図4(a)〜(h)は、投球腕40の動き方の説明図である。ピッチングマシン本体2の投球腕40の動きに関係した、球4の投出のタイミングを説明する。
【0028】
図4(a)は、待機状態を示す。ピッチングマシン本体2の電源スイッチ(図示せず)をONにすると、腕位置検出センサ44により投球腕40の位置を確認する。そして、ソレノイド9のアクチュエータ9aの上端頭部は、復帰ばね9b(図示せず)により、案内樋下7に設けられた切り欠き孔7aから、案内樋上8の方向に向けて球4の通路内に上端頭部を突出して待機状態となっていて、例えば、球供給機6により球4の投入口6aから自動供給投入された球4を係止保持状態とする。
【0029】
図4(b)は、図4(a)の状態、即ち、球供給機6の球の投入口6aに投入された球4を、案内樋下7においてソレノイド9のアクチュエータ9aの上端頭部で係止保持状態のまま、投球腕40が後方に(時計方向に)約45°回動した状態の、その直後、モータM1を反時計方向に回転させると共に、モータM2を時計方向に回転させる。これに伴いモータM1に直結している投出ローラ上5aを反時計方向に回転させると共に、モータM2に直結している投出ローラ下5bを時計方向に回転させる。即ち、モータM1に連結している投出ローラ上5aと、モータM2に連結している投出ローラ下5bとを、互いに反対方向に、所定の回転速度になるように回転させる。
【0030】
図4(b)の状態(即ち、投球腕40が後方に(時計方向に)約45°回動した状態)の時に、球4は、案内樋下7の途中においてソレノイド9のアクチュエータ9aの上端頭部で係止保持されている。そして、図4(b)の状態から、次に、図4(c)の状態、即ち、投球腕回しモータM3が反時計方向に順次回動(回転)を始める。それに伴い投球腕40も反時計方向に順次回動(回転)を始める。投球腕回しモータM3の回転速度が、図4(b)の時より少し速い。それに伴い投球腕40の回転速度も少し速い状態となる。
【0031】
そして、図4(c)の状態から引き続いて、図4(d)の状態(図4(b)の状態から約180度回転した状態)、即ち、投球腕回しモータM3の回転速度が、反時計方向に順次回動(回転)し続け、投球腕回しモータM3の回転速度も徐々に加速し、それに伴い投球腕40の回転速度も徐々に加速しながら、更に、回転し続けている。
【0032】
図4(e)は、図4(b)の状態から約315度回転し続けた状態、即ち、投球腕回しモータM3の回転速度を加速し続け、それに伴い投球腕40が反時計方向に回転し続け、投球腕40の位置が後方で約水平の位置(図4(e)の状態)の辺りのタイミングで、ソレノイド9に通電してアクチュエータ9aを下方に吸引させ、アクチュエータ9aの上端頭部で、球4の通路内に係止保持されていた球4を解放させて、球4を通路下方に転動落下させる。
【0033】
投球腕40が反時計方向に回転し続けており、その間に、球4は通路内を転動落下して、所定の回転スピードにて回転している投出ローラ上5aと投出ローラ下5bとの間に球4が挟まれ、球検出センサ43に検出され、更に、反時計方向に回転する投球腕40の位置が、下方の約垂直の位置(図4(f)の状態)の辺りのタイミングで、ピッチングマシン本体2から球4が、前方に投出される。
【0034】
回転し続けている投球腕40を急に停止させるには、投球腕40や投球腕回しモータM3を始め、ピッチングマシン本体2の関係各部位に衝撃等の負担がかかり、故障の原因となり易いので、投球腕40が垂直位置から約45度位置(図4(g)の状態)辺りで停止するように徐々に減速させる。同時に、互いに反対方向に、所定の回転速度に回転していた、モータM1に直結している投出ローラ上5aと、モータM2に直結している投出ローラ下5bとを、停止するように徐々に減速させる。
【0035】
図4(h)は、図4(g)の状態、即ち、投球腕40が垂直位置から約45°位置辺りで停止してから、ゆっくりと投球腕40を時計方向に回動(回転)させて、下方の垂直位置に戻し、ピッチングマシン本体2を待機状態(図4(a)の状態)にする。
【0036】
図5は、本発明のピッチングマシン1が実際に使用される場合の説明図である。打者側から見て、網60aを張ったネット60の後方にピッチングマシン本体2と、その後方に内燃機関付きの発電機65が置かれている。そして、打者は、前記ネット60の網60aの切り欠き孔61から、ユニフォーム袖部41と、アンダーシャツ腕部42とが装着されて、回動(回転)する投球腕40を視認出来る。そして、その投球腕40の動きに連動して投出される球4を見ながら、打撃のタイミングを計り、どういう打球をどの方向に飛ばすか一瞬の間に考えて、打撃を練習することが出来る。いわゆる、より実戦に近いビジュアルトレーニングが可能である。リモートコントロールスイッチ51(図5に図示せず)は打者が身近に携行して操作する。例えば、リモートコントロールスイッチ51を腰ベルトに吊り下げたり、ヘルメットにセットしたりが可能である。打者は、リモートコントロールスイッチ51を押して、制御部(受信部)で受信させ、ピッチングマシン1を動作させて、一人で練習できるように制御部46に複数用意されている所定のプログラムを呼び出すことが可能である。
【0037】
例えば、打者は、打席に立って、投球されるまでの短い間に、視覚要素と行動を連動させる。次のようなビジュアルトレーニングが可能である。
ステップ1(現状確認):即ち、ランナーの有無、攻守交代までのアウトの数、試合の前半か中盤か後半か等の現状確認をする。この状況は、状況表示装置59による表示、例えば「721」これは、7回の攻撃で2アウトでランナー1塁という情報が一瞬のうちに表示される。
ステップ2(外部情報):即ち、監督の指示はどうか、相手チームの守備状況等の外部情報を確認する。これも状況表示装置59による表示が使用可能である。
ステップ3(情報整理、状況判断):即ち、長打すべきか、短打か、バントをすべきか、1球見送るべきか等の情報整理をし、且つ、状況判断する。
ステップ4(行動選択):即ち、打撃は長打か短打かバントか、その方向は等の行動選択をする。
ステップ5(行動)即ち、選択した行動、即ち、その投球腕40の動きに連動して投出される球4を見ながら、打撃のタイミングを計り、どういう打球をどの方向に飛ばすか一瞬の間に考えて、選択した打撃をする。
これ等のステップを常に考えて、本発明のピッチングマシン1により、視覚要素と行動を連動させたビジュアルトレーニング、即ち、最も実際の試合に近い状況でのトレーニングが1人で可能である。勿論、補助者により、リモートコントロールスイッチ51を操作してもらうことも可能である。
【0038】
図1、図2に示しているように、ピッチングユニット2cが上方に、腕振りユニット39が下方に配置されているが、これをピッチングユニット2cを下方に、腕振りユニット39を上方に配置して、図4投球腕40の回転方向を逆回転して、例えば図4(d)から図4(e)の間に投球するように、腕40の振りと、球4を投出ローラ上5aと投出ローラ下5bとから繰り出し投球するタイミングを合わせるようにすれば、オバースローの投球に対応する打撃練習可能なピッチングマシンである。
【産業上の利用可能性】
【0039】
職域や学校や地域等の野球(硬式、軟式)やソフトボール等のチームで使用する守備のトレーニングマシンとして流通可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係るピッチングマシンの正面図(一部破断)である。
【図2】本発明に係るピッチングマシンの右側面図である。
【図3】本発明に係るピッチングマシンの制御ブロック図を示す。
【図4】本発明に係る投球腕40の動き方の説明図である。
【図5】本発明に係るピッチングマシンが実際に使用される場合の説明図である。
【図6】従来のローラ式といわれるピッチングマシンを示す正面図である。
【図7】従来のアーム式といわれるピッチングマシンを示す斜視図である。
【図8】従来のピッチングマシンの平面配置図を示す。
【符号の説明】
【0041】
1 ピッチングマシン
2 ピッチングマシン本体
2a 基台
2b 脚車
2c ピッチングユニット
M1 モータ上
M2 モータ下
M3 投球腕回しモータ
4 球
5a 投出ローラ上
5b 投出ローラ下
6 球供給機
6a 球4の投入口
7 案内樋下
8 案内樋上
9 ソレノイド
39 腕振りユニット
40 投球腕
41 ユニフォーム袖部
42 アンダーシャツ袖部
43 球検出センサ
44 腕検出センサ
46 制御部
47 電源部
48 PLCコントローラ
49 受信部
51 リモートコントロールスイッチ
59 状況表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸心をそれぞれ水平方向に指向して、上下一対の投出ローラ上と投出ローラ下との間隔が、投出される球の1個分の直径よりやや狭い間隔を有して互いに平行に配置され、
前記投出ローラ上の回転軸は第1のモータの出力軸に、また前記投出ローラ下の回転軸は第2のモータの出力軸にそれぞれ連結され、前記投出ローラ上と、前記投出ローラ下とは回転方向は互いに反対方向であり、且つ、それぞれ独立に所定の速度に回転駆動可能に構成されていて、前記球を球供給機から通路下方に転動落下させ、所定の回転スピードにて回転している前記投出ローラ上と前記投出ローラ下との間に前記球を挟んで、前方に投出されるピッチングマシンにおいて、
前記上下一対の投出ローラ上と投出ローラ下の、上方近傍に、投球腕が、第3のモータの出力軸に連結して設けてあり、制御部からの信号により前記投球腕が所定の方向に回転し続け、前記投球腕の位置に連動して、前記球供給機の通路途中にて係止保持していた球を解放させて、前記球を前記通路下方に転動落下させ、所定の方向に回転する前記投球腕の位置が、所定の位置に達することに連動して、所定の回転スピードにて回転している前記投出ローラ上と前記投出ローラ下との間に前記球を挟んで、前方に投出させることを特徴とするピッチングマシン。
【請求項2】
前記投球腕は、ユニフォーム袖部と、アンダーシャツ腕部とが装着されていることを特徴とする請求項1に記載のピッチングマシン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−125225(P2010−125225A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−305449(P2008−305449)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(505073912)ハトリバンテック株式会社 (4)