説明

ピットカバー装置

【課題】ピット内部に配置された二つの部材を一方方向に沿って各々自在に移動可能とする、ピットカバー装置を提供する。
【解決手段】床面120に形成されたピット100の開口部101を塞ぐピットカバー装置1は、ピット100内を一方方向に往復移動可能な第一部材10と、第一部材10に対し一方方向に並べられ、第一部材10とは独立してピット100内を一方方向に往復移動可能な第二部材20と、第一部材10と第二部材20との間の開口部101を塞ぐカバー部材30とを備える。カバー部材30の一端31は、第一部材10に伴って一方方向に移動可能に、第一部材10に支持されている。カバー部材30の他端32は、第二部材20に伴って一方方向に移動可能に、第二部材20に支持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピットカバー装置に関し、特に、床面に形成されたピットの開口部を塞ぐピットカバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車整備工場等における整備作業を安全に行なうために必要なピットカバー装置に関し、ピットカバーをピット内の邪魔にならない位置に収納することができるとともにピット深さを浅くすることができるピットカバー装置が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。また、大形車両の点検整備作業が安全で、移動が円滑な移動リフト装置のピットカバー装置が提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−138698号公報
【特許文献2】特開2000−26081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1および2に記載の技術では、ピット内部に一台の固定リフトと、一台の移動リフトとが設けられている。固定リフトは、ピット内部に固定されており、移動不能に設けられている。そのため、これら固定リフトと移動リフトとの一方に自動車の前輪を搭載し、他方に後輪を搭載する場合、前輪と後輪との間隔は変更できるものの、固定リフトが障害となってピット内における自動車の設置位置を自在に変更できない。その結果、ピット内の自動車の配置が制約を受け、自動車の移動範囲を大きく取れない問題があった。
【0005】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、ピット内部に配置された二つの部材を一方方向に沿って各々自在に移動可能とする、ピットカバー装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るピットカバー装置は、床面に形成されたピットの開口部を塞ぐ。ピットカバー装置は、ピット内を一方方向に往復移動可能な第一部材と、第一部材に対し一方方向に並べられ、第一部材とは独立してピット内を一方方向に往復移動可能な第二部材と、第一部材と第二部材との間の開口部を塞ぐカバー部材とを備える。カバー部材の一端は、第一部材に伴って一方方向に移動可能に、第一部材に支持されている。カバー部材の他端は、第二部材に伴って一方方向に移動可能に、第二部材に支持されている。
【0007】
上記ピットカバー装置において、第一部材は、カバー部材を一端側から収容可能な収容部を含んでもよい。
【0008】
上記ピットカバー装置において、収容部は、開口部からピットの底部へ向かって延びるように形成されていてもよい。
【0009】
上記ピットカバー装置において、第一部材は、一方方向に沿って第二部材側へ延び、カバー部材を支持するとともにカバー部材の一方方向への移動を導くレール部を含み、カバー部材は、レール部に対し一方方向に相対移動して収容部に収容されてもよい。
【0010】
上記ピットカバー装置において、収容部には、カバー部材が収容部へ出入りする出入口が形成されており、レール部は、出入口において湾曲された湾曲部を有してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のピットカバー装置によると、ピットの開口部を確実に塞ぎつつ、ピット内部に配置された二つの部材を一方方向に沿って各々自在に移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施の形態のピットカバー装置が適用されるピットの一例を示す模式図である。
【図2】ピットカバー装置の全体構成を示す模式図である。
【図3】第一部材の斜視図である。
【図4】レール部を拡大して示す模式図である。
【図5】レール部が屈曲した状態を示す模式図である。
【図6】カバー部材の平面図である。
【図7】第一部材の支持構造を示す模式図である。
【図8】レール部およびカバー部材の支持構造を示す模式図である。
【図9】レール部の支持構造を示す斜視図である。
【図10】第二部材の支持構造を示す模式図である。
【図11】ピット内において第一部材と第二部材とが最接近した状態を示す模式図である。
【図12】ピット内において第一部材と第二部材とが最も離れた状態を示す模式図である。
【図13】ピット内において第一部材と第二部材とが長手方向の一方側へ移動した状態を示す模式図である。
【図14】ピット内において第一部材と第二部材とが長手方向の他方側へ移動した状態を示す模式図である。
【図15】実施の形態2の第一部材の斜視図である。
【図16】実施の形態2のレール部の支持構造を示す模式図である。
【図17】実施の形態2の第一部材と第二部材とが最接近した状態を示す模式図である。
【図18】実施の形態2の第一部材と第二部材とが最も離れた状態を示す模式図である。
【図19】実施の形態2の第一部材と第二部材とが長手方向の一方側へ移動した状態を示す模式図である。
【図20】実施の形態2の第一部材と第二部材とが長手方向の他方側へ移動した状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づいてこの発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
【0014】
なお、以下に説明する実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本発明にとって必ずしも必須のものではない。また、以下の実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、上記個数などは例示であり、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態のピットカバー装置が適用されるピット100の一例を示す模式図である。図1に示すように、床面に形成されたピット100の内部の空間110には、第一部材10と、第二部材20とが配置されている。第二部材20は、第一部材10に対し、図1中に両矢印DR1で示す一方方向の一例としての、ピット100の長手方向に並べられている。
【0016】
第一部材10は、床面120に掘設されたピット100内部の空間110を、ピット100の長手方向に往復移動可能に設けられている。第二部材20は、第一部材10とは独立して、ピット100の長手方向に往復移動可能に設けられている。第一部材10と第二部材20とは、ピット100内を移動することにより、ピット100の外部に配置された外部機器200との間の相対距離を、各々自在に変化可能とされている。
【0017】
本実施の形態の第一部材10および第二部材20は、それぞれ一対の回転ローラ11,21を備えている。一対の回転ローラ11,21を連結するように、回転シャフト12,22が設けられている。回転シャフト12,22は、支持体13,23によって、それぞれ回転可能に支持されている。回転ローラ11,21は、その最上部がピット100の外部に露出するように配置されている。
【0018】
外部機器200は、たとえば回転ローラ11,21上に載置される対象物の状態を検出可能な電気機器とすることができる。第一部材10および第二部材20がピット100の長手方向に自在に移動することにより、外部機器200は、対象物が外部機器200に近接した場合と、対象物が外部機器200から離れた場合とのいずれの場合でも、対象物の状態を検出可能とされている。
【0019】
また、第一部材10および第二部材20が各々独立して移動可能であるので、第一部材10と第二部材20との間隔を広げることで大型の対象物を回転ローラ11,21に載置でき、上記間隔を狭めることで小型の対象物を回転ローラ11,21に載置できる。つまり、対象物の寸法に応じて第一部材10と第二部材20との間隔を調整することにより、外部機器200は、種々の寸法を有する対象物の状態を検出できる。
【0020】
なお、第一部材10および第二部材20は、図1に示す構成を有するものに限られない。第一部材10と第二部材20とは、ピット100内の一方方向に並べられ、それぞれ独立してピット100内を一方方向に往復移動可能であれば、任意の構成を有していても構わない。
【0021】
図2は、ピットカバー装置1の全体構成を示す模式図である。ピットカバー装置1は、床面120から掘り込まれるように形成されたピット100の、開口部101を塞ぐ装置である。ピットカバー装置1は、第一部材10および第二部材20に搭載される装置の移動に伴い発生する、ピット100の開口部101を塞ぐための装置である。図1を参照して説明した外部機器200は、ピット100外部の、床面120上に載置されている。外部機器200は、ピット100の外部に固定されている。なお、外部機器200は、ピット100内部の空間110に設置されてもよく、また、ピット100が形成されている床面120から離れた別室に設置されてもよい。
【0022】
図2に示すように、ピットカバー装置1は、第一部材10と第二部材20とを備える。第一部材10と第二部材20とは、ピット100の内部の空間110を、両矢印DR1で示す方向に、各々独立して往復移動可能である。ピットカバー装置1はまた、第一部材10と第二部材20との間に配置されたカバー部材30を備える。カバー部材30は、第一部材10と第二部材20との間の開口部101を塞ぐように配置されている。
【0023】
ピットカバー装置1はまた、カバー部材40と、カバー部材50とを備える。カバー部材40は、ピット100の壁部103と第二部材20との間の開口部101を塞ぐように配置されている。カバー部材50は、壁部103に対向するピット100の壁部104と第一部材10との間の開口部101を塞ぐように配置されている。
【0024】
第一部材10および第二部材20の上面と、カバー部材30,40,50の上面とは、ピット100の開口部101を塞いでいる。そのため、ピットカバー装置1は、ピット100の開口部101から人や物が転落することを防止している。また、第一部材10および第二部材20の上面と、カバー部材30,40,50の上面とは、ピット100の外部の床面120に対し略同一の高さに配置されている。つまり、第一部材10および第二部材20の上面と、カバー部材30,40,50の上面と、床面120との間に発生する段差は小さくなっている。そのため、第一部材10および第二部材20の上面に載置される対象物を、床面120からカバー部材30,40,50の上面を経由させて、容易に第一部材10および第二部材20の上面へ移動可能とされている。
【0025】
カバー部材30は、図2中に両矢印DR1で示すピット100の長手方向に延在している。カバー部材30の一端31が第一部材10側に配置されており、他端32が第二部材20側に配置されている。カバー部材30の他端32は、第二部材20に固定支持されている。そのため、カバー部材30の他端32は、ピット100の長手方向への第二部材20の往復移動に伴って、ピット100の長手方向に移動可能とされている。
【0026】
第一部材10には、カバー部材30の一端31を収容可能な収容部15が形成されている。収容部15は、ピット100の開口部101からピット100の底部102へ向かって延びるように形成されている。カバー部材30の一端31は、収容部15内に収容されている。
【0027】
第一部材10は、ピット100の長手方向に沿って第二部材20側へ延びる、レール部17を含む。カバー部材30は、第一部材10と第二部材20との間においてレール部17によって支持されている。カバー部材30は、ピット100の長手方向に沿って、レール部17上をレール部17に対し相対移動する。レール部17は、ピット100の長手方向におけるカバー部材30の移動を導いている。
【0028】
カバー部材30は、レール部17に対し相対移動して、一端31側から収容部15内に収容される。カバー部材30の一端31は、収容部15内において第一部材10によって支持されており、第一部材10に伴ってピット100の長手方向に移動可能とされている。
【0029】
空間110の内部の壁部103近傍には、壁部103と対向するようにガイド壁105が配置されている。壁部103とガイド壁105との間には、カバー部材40を収容可能な収容部107が形成されている。カバー部材40は、第二部材20に伴ってピット100の長手方向に移動して、収容部107へ出入りする。ガイド壁105と第二部材20との間には、カバー部材40を支持するとともにカバー部材40の移動を導く、図示しないレール部が配置されている。
【0030】
空間110の内部の壁部104近傍には、壁部104と対向するようにガイド壁106が配置されている。壁部104とガイド壁106との間には、カバー部材50を収容可能な収容部108が形成されている。カバー部材50は、第一部材10に伴ってピット100の長手方向に移動して、収容部108へ出入りする。ガイド壁106と第一部材10との間には、カバー部材50を支持するとともにカバー部材50の移動を導く、図示しないレール部が配置されている。
【0031】
図3は、第一部材10の斜視図である。図2および図3に示すように、第一部材10に取り付けられ第二部材20側へ延びるように形成されたレール部17は、一対のレール17a,17bを含む。収容部15には、カバー部材30が収容部15へ出入りする出入口16が形成されている。カバー部材30は、レール17a,17bによって支持されながらレール17a,17bに対し相対移動して、出入口16を経由して収容部15内部へ移動する。
【0032】
図4は、レール部17を拡大して示す模式図である。図3および図4に示すように、レール17a,17bは、第二部材20側へ突き出す先端部61と、先端部61に対し第一部材10に近接する側の根元部62とを含む。先端部61と根元部62とは、接合部63において接合されている。接合部63において、接合部材64を用いて先端部61および根元部62の端部同士が接合されることにより、レール17a,17bが形成されている。
【0033】
レール17a,17bの根元部62は、湾曲形状の湾曲部18を有する。根元部62は、略L字形状に形成されており、略直交する二本の腕部を有する。腕部の一方はピット100の長手方向に沿って水平方向に延在し、腕部の他方は垂直方向に延在する。二本の腕部が接合する部位が湾曲されて、湾曲部18が形成されている。レール部17は、カバー部材30が収容部15へ出入りする出入口16において、湾曲された湾曲部18を有している。
【0034】
図5は、レール部17が屈曲した状態を示す模式図である。図4と図5とを比較して、レール部17は、先端部61と根元部62とを接合する接合部63において屈曲する。レール部17は、図4および図5中の両矢印DR1に示す方向に沿って、第一部材10から第二部材20へ向かって延びるように形成されている。図5に示すように接合部63においてレール部17を屈曲させることにより、両矢印DR1に示す方向におけるレール部17の延在長さを小さくすることができる。そのため、第一部材10と第二部材20との間隔を小さくすることができ、ピット100内における第一部材10と第二部材20との移動範囲をより大きくすることができる。
【0035】
図6は、カバー部材30の平面図である。図6に示すように、カバー部材30は、レール部17の延在するピット100の長手方向に平行に並べられた、複数のカバー単体34を含む。カバー単体34は、たとえば、鋼製の細板(履板)により形成することができる。カバー部材30は、複数のカバー単体34を複数の履板を蝶番、チェーン、ピンなどの任意の接合部材を用いて鎖状に連結した、可撓性を有する有端のクローラ状の形状に形成されている。また、上記履板に替えて、複数の箱体を連結してカバー部材30を形成してもよい。なお、図2に示すカバー部材40,50についても、上述したカバー部材30と同様の構成とすることができる。
【0036】
図7は、第一部材10の支持構造を示す模式図である。図7に示す、第一部材10を支持する支持梁70は、断面がH形の形鋼であるH形鋼を用いて形成されている。支持梁70は、ピット100の長手方向に延在するように配置されている。支持梁70は、ピット100の長手方向の側面に固定されている。図7に示すように、第一部材10は、支持梁70によって往復移動可能に支持されており、また第一部材10と同様に、第二部材20も支持梁70によって往復移動可能に支持されている。
【0037】
支持梁70は、H形状の縦線部分を形成する上フランジ71および下フランジ72と、H形状の横線部分を形成するウェブ73とを有する。支持梁70はまた、ウェブ73の中央部に接合された、リブ部74を有する。リブ部74は、ウェブ73に対し直交し、かつ、上フランジ71および下フランジ72に対し平行に延在するように形成されている。
【0038】
第一部材10には、車輪78が取り付けられている。この車輪78が下フランジ72の上側の表面である走行面78a上を走行することにより、第一部材10は支持梁70に対して相対移動する。支持梁70がピット100の側面に固定されているために、第一部材10は、支持梁70に対する相対移動により、ピット100内の空間110を、支持梁70の延在方向に沿って往復移動する。
【0039】
図8は、レール部17およびカバー部材30の支持構造を示す模式図である。図9は、レール部17の支持構造を示す斜視図である。図8および図9に示すように、レール部17は、支持梁70の下フランジ72により支持されている。レール部17には切欠き部が形成されており、この切欠き部が下フランジ72を挟むようにして、レール部17は下フランジ72と係合している。図8に示す構造では、レール部17と支持梁70との干渉を回避するために、レール部17に切欠き部が形成されている。ただし、切欠き部は必ずしも必要ではない。つまり、レール部17と支持梁70とは、互いに干渉することなく、レール部17が支持梁70に対して相対移動可能な構造であれば、任意の構成を有していてもよい。
【0040】
レール部17には、車輪78が取り付けられている。この車輪78が下フランジ72の上側の表面である走行面78a上を走行することにより、レール部17は支持梁70に対して相対移動する。支持梁70がピット100の側面に固定されているために、レール部17は、支持梁70に対する相対移動により、ピット100内の空間110を、支持梁70の延在方向に沿って往復移動する。レール部17は第一部材10と一体に往復移動するので、第一部材10とレール部17とが、同一の下フランジ72上の走行面78a上を走行するように設けられているのが好ましい。
【0041】
また、カバー部材30には、車輪79が取り付けられている。この車輪79がレール部17の上側の表面である走行面79a上を走行することにより、カバー部材30はレール部17に対して相対移動する。図2に示すように他端32において第二部材20に固定されたカバー部材30は、第二部材20の移動に伴って、第一部材10に取り付けられたレール部17に対して相対移動する。そのため、カバー部材30は、第一部材10と第二部材20とがそれぞれ移動して、第一部材10と第二部材20との間隔が変動した場合でも、確実に第一部材10と第二部材20との間の開口部101を塞ぐことが可能とされている。
【0042】
カバー部材30がレール部17の走行面79a上を走行するとき、カバー部材30の自重により、カバー部材30からレール部17へ荷重が加えられる。図8中下方向の荷重がカバー部材30からレール部17へ加わることにより、レール部17は、図8中の反時計回り方向へ倒れようとし、またレール部17は、図8中右向きの、ウェブ73へ接近する側へずれようとする。
【0043】
上記のレール部17が倒れようとする力に対抗してレール部17の配置を保つために、レール部17にはローラ81が設けられ、リブ部74の先端部にはローラ81が接触するローラ当て部82が設けられている。また、上記のレール部17がずれようとする力に対向してレール部17の配置を保つために、レール部17にはローラ83が設けられ、下フランジ72にはローラ83が接触するローラ当て部84が設けられている。
【0044】
カバー部材30がレール部17に対し相対的に移動するとき、ローラ81がローラ当て部82と接触しつつ転動し、かつ、ローラ83がローラ当て部84と接触しつつ転動する。これにより、レール部17にカバー部材30の荷重がかかる場合の、レール部17の位置ずれを抑制できる。そのため、レール部17の配置を適切に保つことができるので、カバー部材30はレール部17上を安定して走行することができる。
【0045】
リブ部74の先端部に設けられるローラ当て部82は、リブ部74の一部が曲げ加工されて形成されてもよく、リブ部74と別の部材がねじ止め、かしめ、溶接などの任意の接合方法により接合されて形成されてもよい。また、図8に示すように、下フランジ72の一部に車輪78が走行する走行面78aおよびローラ当て部84が形成されている構成に限られない。下フランジ72の上面に板状の別部材が接合され、当該板状部材の表面に走行面78aが形成され、側面にローラ当て部84が形成されてもよい。ローラ当て部82,84が支持梁70と異なる別部材により形成される場合、当該別部材として、強度に優れる焼入材が適用されるのが好ましい。
【0046】
図10は、第二部材20の支持構造を示す模式図である。第二部材20には、車輪77が取り付けられている。この車輪77がリブ部74の上側の表面である走行面77a上を走行することにより、第二部材20は支持梁70に対して相対移動する。支持梁70がピット100の側面に固定されているために、第二部材20は、支持梁70に対する相対移動により、ピット100内の空間110を、支持梁70の延在方向に沿って往復移動する。
【0047】
上述した第二部材20と同様に、カバー部材40,50には、車輪が取り付けられている。この車輪が支持梁70のリブ部74上を走行することにより、カバー部材40,50は、空間110内を、支持梁70の延在方向に沿って往復移動する。
【0048】
なお、第一部材10および第二部材20は、支持梁70によって往復移動可能に支持される上述した構造を、必ずしも有していなくてもよい。他の例では、たとえば、ピット100の底部102にレールが敷設され、第一部材10および第二部材20は、ピット100の底部102と対向する底面に、車輪を有してもよい。この車輪がレール上を転動することにより、第一部材10および第二部材20は、ピット100内の空間110を、支持梁70の延在方向に沿って往復移動してもよい。
【0049】
以上の構成を備えるピットカバー装置1において、第一部材10と第二部材20とが各々独立してピット100内を移動した場合の、カバー部材30の挙動について説明する。図11は、ピット100内において第一部材10と第二部材20とが最接近した状態を示す模式図である。図4および図5を参照して説明したように、レール部17の先端部61が根元部62に対して折れ曲がり、ピット100の長手方向におけるレール部17の長さを小さくしていることにより、第一部材10と第二部材20との移動可能な範囲が広げられている。すなわち、第一部材10と第二部材20とは、より接近可能であり、間隔をより小さくするように移動可能とされている。
【0050】
このとき、第一部材10と第二部材20との間のカバー部材30は、第一部材10に形成された収容部15にその大部分が収容されている。カバー部材30は、レール部17によって支持されて、第一部材10と第二部材20との間の開口部101を塞いでいる。カバー部材40は、一部が収容部107の内部に配置され、ピット100の壁部103と第二部材20との間の開口部101を塞いでいる。カバー部材50は、一部が収容部108の内部に配置され、ピット100の壁部104と第一部材10との間の開口部101を塞いでいる。
【0051】
図12は、ピット100内において第一部材10と第二部材20とが最も離れた状態を示す模式図である。ピット100の長手方向におけるレール部17の長さを最も大きくするように、レール部17の先端部61が、根元部62に対して屈曲しておらず、ピット100の長手方向に延びるように配置されている。そのため、第一部材10と第二部材20とは、より離れた位置に移動可能であり、間隔をより大きくするように移動可能とされており、第一部材10と第二部材20との移動可能な範囲が広げられている。
【0052】
このとき、第一部材10と第二部材20との間のカバー部材30は、収容部15から抜き出され、その大部分がレール部17によって支持されて、第一部材10と第二部材20との間の開口部101を塞いでいる。ピット100の壁部103と第二部材20との間の開口部101を塞ぐカバー部材40は、大部分が収容部107の内部に配置されている。ピット100の壁部104と第一部材10との間の開口部101を塞ぐカバー部材50は、大部分が収容部108の内部に配置されている。
【0053】
図13は、ピット100内において第一部材10と第二部材20とが長手方向の一方側へ移動した状態を示す模式図である。図14は、ピット100内において第一部材10と第二部材20とが長手方向の他方側へ移動した状態を示す模式図である。図13および図14において、レール部17の先端部61が一部折れ曲がり、第一部材10と第二部材20とは等しい間隔を保ちながら、ピット100の長手方向に移動している。カバー部材30は、一部が収容部15に収容され、レール部17に支持されて第一部材10と第二部材20との間の開口部101を塞いでいる。
【0054】
図13に示す状態で、カバー部材40の大部分が収容部107の内部に配置され、一方カバー部材50は一部のみが収容部108の内部に収容されて、ピット100の壁部104と第一部材10との間の開口部101を塞いでいる。また、図14に示す状態で、カバー部材50の大部分が収容部108の内部に配置され、一方カバー部材40は一部のみが収容部107の内部に収容されて、ピット100の壁部103と第二部材20との間の開口部101を塞いでいる。
【0055】
図11〜図14に示すように、ピット100内の空間110における第一部材10と第二部材20との配置によらず、常にピット100の開口部101は、第一部材10および第二部材20の上面と、カバー部材30,40,50の上面とによって塞がれている。したがって、ピットカバー装置1によって確実にピット100の開口部101を覆うことができる。
【0056】
また、ピット100の開口部101を塞ぐカバー部材30を収容する収容部15を、第一部材10とともに移動可能とすることにより、第一部材10と第二部材20とのピット100内の空間110における自在な移動を許容できる。第一部材10と第二部材20とのピット100内における可動範囲が重複しているため、第一部材10と第二部材20との移動範囲をより大きくすることができる。したがって、第一部材10および第二部材20の上部に搭載される対象物の、ピット100内での移動に係る制約をなくし、移動量の自由度を向上させることができる。
【0057】
上述した説明と一部重複する部分もあるが、本実施の形態の特徴的な構成を以下、列挙する。床面120に形成されたピット100の開口部101を塞ぐ本実施の形態のピットカバー装置1は、ピット100内を両矢印DR1にて示す一方方向に往復移動可能な第一部材10を備える。ピットカバー装置1はまた、第一部材10に対し上記一方方向に並べられ、第一部材10とは独立してピット100内を上記一方方向に往復移動可能な第二部材20を備える。ピットカバー装置1はまた、第一部材10と第二部材20との間の開口部101を塞ぐカバー部材30を備える。カバー部材30の一端31は、第一部材10に伴って上記一方方向に移動可能に、第一部材10に支持されている。カバー部材30の他端32は、第二部材20に伴って上記一方方向移動可能に、第二部材20に支持されている。
【0058】
このようにすれば、カバー部材30を第一部材10および第二部材20とともに移動できることで、第一部材10と第二部材20との移動範囲の制約を低減できる。第一部材10と第二部材20との一方がピット100内を移動してもよく、第一部材10と第二部材20とがともに移動してもよい。すなわち、ピット100内部に配置された第一部材10と第二部材20とを、両矢印DR1にて示す一方方向に沿って各々自在に移動させることができ、第一部材10と第二部材20との移動範囲を拡大させることができる。このとき、第一部材10と第二部材20との間のピット100の開口部101はカバー部材30によって確実に塞がれるので、ピット100内への人や物の転落を確実に防止することができる。
【0059】
また、第一部材10は、カバー部材30を一端31側から収容可能な収容部15を含む。このようにすれば、第一部材10と第二部材20とを接近させるように移動させたとき、カバー部材30を収容部15内に収容できるので、カバー部材30が第一部材10と第二部材20との移動の妨げとなることを抑制できる。したがって、第一部材10と第二部材20とを、互いの間隔をより小さくするように移動させることができ、移動範囲をより大きくすることができる。
【0060】
また、収容部15は、開口部101からピット100の底部102へ向かって延びるように形成されている。このようにすれば、上方の開口部101側からカバー部材30を収容部15内へ下降させるように移動させることができ、より容易にカバー部材30を収容部15内へ導くことができる。
【0061】
また、第一部材10は、一方方向DR1に沿って第二部材20側へ延び、カバー部材30を支持するとともにカバー部材30の一方方向DR1への移動を導く、レール部17を含む。カバー部材30は、レール部17に対し一方方向DR1に相対移動して収容部15に収容される。このようにすれば、第一部材10と第二部材20との間の開口部101において、カバー部材30をレール部17によって確実に支持させることができ、また、レール部17に沿ってカバー部材30を円滑に移動させることができる。
【0062】
また、収容部15には、カバー部材30が収容部15へ出入りする出入口16が形成されている。レール部17は、出入口16において湾曲された湾曲部18を有する。このようにすれば、湾曲部18に沿うようにカバー部材30を移動させて収容部15へ出入りさせることができるので、一層円滑にカバー部材30を収容部15内へ収容することができる。
【0063】
(実施の形態2)
図15は、実施の形態2の第一部材の斜視図である。図15に示す実施の形態2の第一部材10は、基本的に、図3に示す実施の形態1の第一部材と同様の構造を備えている。しかし、実施の形態2の第一部材10は、レール17a,17bの先端部61と根元部62とが接合部によって接合されておらず、レール17a,17bは屈曲不可能な一体構造に形成されている点で、実施の形態1と異なっている。
【0064】
図16は、実施の形態2のレール部の支持構造を示す模式図である。実施の形態1と同様に、レール部17は、支持梁70の下フランジ72により支持されている。レール部17には、車輪78が取り付けられており、この車輪78が下フランジ72の上側の表面である走行面78a上を走行することにより、レール部17は支持梁70に対して相対移動する。
【0065】
図16には、レール部17に加えて、第二部材20が図示されている。実施の形態2では、後述するように、第二部材20は、ピット100の底部102に敷設されたレール上に往復移動可能に支持されている。第二部材20は、支持梁70により支持されておらず、そのため、第二部材20は、支持梁70に対して相対的に任意の位置に配置することが可能とされている。
【0066】
図16に示すように、第二部材20は、支持梁70に支持されたレール部17との間に空間29を形成するように、配置されている。第二部材20とレール部17との間には、第二部材20の往復移動方向に沿って延びる、空間29が形成されている。この空間29が第二部材20の側方に形成されているために、屈曲不可能な一体構造のレール部17と第二部材20との干渉を回避することができる。なお、第二部材20は、レール部17との間に空間29を形成しつつ、図10に示す実施の形態1と同様に支持梁70のリブ部74上に往復移動可能に支持されてもよい。
【0067】
レール部17と第二部材20との間に空間29を確保することで、レール部17を屈曲させなくても、レール部17と第二部材20とは干渉せずに、互いに相対移動可能とされている。レール部17と第二部材20との干渉を考慮する必要がないため、第一部材10と第二部材20とを互いにより接近させることができ、第一部材10と第二部材20との間隔をより小さくすることができる。したがって、ピット100内における第一部材10と第二部材20との移動範囲をさらに大きくすることができる。
【0068】
レール部17が屈曲可能に形成されている場合において、接合部63(図3〜図5参照)よりも先端部61側のレール部17(レール17a,17b)に支持梁70が干渉すると、レール部17は屈曲できない。つまり、接合部63よりも先端部61側のレール部17と支持梁70との干渉を回避する必要があり、その結果、先端部61は支持梁70によって支持できない。したがって、先端部61が屈曲していないとき、レール部17は片持ちの状態となるので、レール部17上に設置されたカバー部材30上に重量物を搭載することは困難である。
【0069】
これに対し、実施の形態2のように、空間29が形成されてレール部17と第二部材20との干渉が回避されている構成とすれば、レール部17の先端部61が支持梁70により支持された支持構造を形成することができる。すなわち、レール部17の強度がさらに高められた構造が設けられるので、レール部17はさらなる重量物を支持することができる。したがって、レール部17により支持されるカバー部材30の強度を一層向上させることができ、加えて、カバー部材30上に重量物を搭載することも可能となる。
【0070】
図17は、実施の形態2の第一部材と第二部材とが最接近した状態を示す模式図である。図18は、実施の形態2の第一部材と第二部材とが最も離れた状態を示す模式図である。図19は、実施の形態2の第一部材と第二部材とが長手方向の一方側へ移動した状態を示す模式図である。図20は、実施の形態2の第一部材と第二部材とが長手方向の他方側へ移動した状態を示す模式図である。
【0071】
実施の形態2では、ピット100の底部102に、図示しないレールが敷設されている。第一部材10は、ピット100の底部102と対向する底面に、車輪178を有している。第二部材20は、ピット100の底部102と対向する底面に、車輪177を有している。車輪177,178がレール上を転動することにより、第一部材10および第二部材20は、ピット100内の空間110を、両矢印DR1にて示す一方方向に沿って往復移動可能に設けられている。
【0072】
レール部17と第二部材20との間に図16に示す空間29が形成されているために、図17〜図20に示すように、屈曲不可能なレール部17は、第二部材20と干渉することなく、第二部材20の側面を通過することができる。そのため、第一部材10および第二部材20が図17〜図20に示す任意の相対位置関係にある場合において、カバー部材30は、常にレール部17によって支持されている。レール部17の延在方向における、根元部62から先端部61に至るまでのレール部17のすべての部分が、支持梁70によって支持されている。したがって、上述した通り、カバー部材30上にさらなる重量物を搭載することができる。
【0073】
また、図17〜図20に示すように、ピット100の底部102近傍において、ガイド壁105には、壁部103から離れる側に屈曲した屈曲部105aが形成されている。同様に、底部102近傍において、ガイド壁106には、壁部104から離れる側に屈曲した屈曲部106aが形成されている。壁部103,104とそれぞれ対向するように配置されたガイド壁105,106は、壁部103,104から離隔する方向に底部102の近傍部が屈曲した、屈曲部105a,106aをそれぞれ有する。
【0074】
ガイド壁105と壁部103との間のカバー部材40を収容する収容部107には、ピット100の底部102近傍に、両矢印DR1にて示す一方方向に延びる収容小空間107aが形成されている。ガイド壁106と壁部104との間のカバー部材50を収容する収容部108には、ピット100の底部102近傍に、両矢印DR1にて示す一方方向に延びる収容小空間108aが形成されている。この収容小空間107a,108aが形成されていることにより、カバー部材40,50を収容するための空間をより大きくすることができる。
【0075】
カバー部材40,50のための拡大された収容容積を確保できることにより、第一部材10および第二部材20の移動方向(すなわち上記一方方向)におけるカバー部材40,50の長さを、より長くすることができる。そのため、第二部材20を壁部103からより離れた位置にまで移動させることができ、第一部材10を壁部104からより離れた位置にまで移動させることができる。したがって、第一部材10および第二部材20の移動可能範囲を一層大きくすることができるので、第一部材10および第二部材20の上部に搭載される対象物の移動量の自由度を、一層向上させることができる。なお、カバー部材30を収容する収容部15を、上述した収容部107,108と同様に形成することにより、同等の作用、効果が得られることは勿論である。
【0076】
なお、実施の形態1および2の説明においては、床面120に形成されたピット100の開口部101を塞ぐピットカバー装置1について説明したが、本実施の形態の構成を、任意の空間の天井側に形成された開口部を覆う被覆装置に適用することができる。この場合、空間内部に配置された二つの部材を一方方向に沿って各々自在に移動させることができる効果を、同様に得ることができる。
【0077】
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0078】
1 ピットカバー装置、10 第一部材、15 収容部、16 出入口、17 レール部、17a,17b レール、18 湾曲部、20 第二部材、29 空間、30,40,50 カバー部材、31 一端、32 他端、34 カバー単体、61 先端部、62 根元部、63 接合部、64 接合部材、70 支持梁、71 上フランジ、72 下フランジ、73 ウェブ、74 リブ部、77,78,79 車輪、77a,78a,79a 走行面、81,83 ローラ、82,84 ローラ当て部、100 ピット、101 開口部、102 底部、103,104 壁部、105,106 ガイド壁、107,108 収容部、110 空間、120 床面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に形成されたピットの開口部を塞ぐピットカバー装置であって、
前記ピット内を一方方向に往復移動可能な第一部材と、
前記第一部材に対し前記一方方向に並べられ、前記第一部材とは独立して前記ピット内を前記一方方向に往復移動可能な第二部材と、
前記第一部材と前記第二部材との間の前記開口部を塞ぐカバー部材とを備え、
前記カバー部材の一端は、前記第一部材に伴って前記一方方向に移動可能に、前記第一部材に支持されており、
前記カバー部材の他端は、前記第二部材に伴って前記一方方向に移動可能に、前記第二部材に支持されている、ピットカバー装置。
【請求項2】
前記第一部材は、前記カバー部材を前記一端側から収容可能な収容部を含む、請求項1に記載のピットカバー装置。
【請求項3】
前記収容部は、前記開口部から前記ピットの底部へ向かって延びるように形成されている、請求項2に記載のピットカバー装置。
【請求項4】
前記第一部材は、前記一方方向に沿って前記第二部材側へ延び、前記カバー部材を支持するとともに前記カバー部材の前記一方方向への移動を導く、レール部を含み、
前記カバー部材は、前記レール部に対し前記一方方向に相対移動して前記収容部に収容される、請求項2または請求項3に記載のピットカバー装置。
【請求項5】
前記収容部には、前記カバー部材が前記収容部へ出入りする出入口が形成されており、
前記レール部は、前記出入口において湾曲された湾曲部を有する、請求項4に記載のピットカバー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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