説明

ピペラジン塩およびその調製方法

本発明は、新規トランスN‐{4‐{2‐[4‐(2,3‐ジクロロフェニル)‐ピペラジン‐1‐イル]‐エチル}‐シクロヘキシルアミンジヒドロクロリド一水和物およびその調製のための方法に関する。その方法は、
a)トランス2‐{1‐[4‐(N‐tert‐ブトキシカルボニル)アミノ]‐シクロヘキシル}‐酢酸エステルを水素化ホウ素ナトリウムおよび三塩化アルミニウムと反応させ、トランス2‐{1‐[4‐(N‐tert‐ブトキシカルボニル)‐アミノ]‐シクロヘキシル}‐エタノールを得て、
b)得られたトランス2‐{1‐[4‐(N‐tert‐ブトキシカルボニル)‐アミノ]‐シクロヘキシル}‐エタノールを酸結合剤の存在下で塩化メタンスルホニルと反応させ、トランス2‐{1‐[4‐(N‐tert‐ブトキシカルボニル)‐アミノ]‐シクロヘキシル}‐エチルメタンスルフォネートを得て、
c)得られたトランス2‐{1‐[4‐(N‐tert‐ブトキシカルボニル)‐アミノ]‐シクロヘキシル}‐エチルメタンスルフォネートを酸結合剤の存在下で2,3‐ジクロロフェニルピペラジンと反応させ、トランス2‐{1‐[4‐(N‐tert‐ブトキシカルボニル)‐アミノ]‐シクロヘキシル}‐カルバミン酸‐tert‐ブチルエステルを得て、
d)得られたトランス2‐{1‐[4‐(N‐tert‐ブトキシカルボニル)‐アミノ]‐シクロヘキシル}‐カルバミン酸‐tert‐ブチルエステルを塩酸水/メタノールの混合液中で40〜100℃の温度で加熱して、トランスN‐{4‐{2‐[4‐(2,3‐ジクロロフェニル)‐ピペラジン‐1‐イル]‐エチル}‐シクロヘキシルアミンジヒドロクロリド一水和物を得る、工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規トランス{4‐{2‐[4‐(2,3‐ジクロロフェニル)‐ピペラジン‐1‐イル]‐エチル}‐シクロヘキシルアミンジヒドロクロリド一水和物およびその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明のトランス{4‐{2‐[4‐(2,3‐ジクロロフェニル)‐ピペラジン‐1‐イル]‐エチル}‐シクロヘキシルアミンジヒドロクロリド一水和物は、D/D受容体に作用する多くの化合物の調製のための鍵となる中間体である。類似の化合物は、ハンガリー国特許第P0103988号明細書およびハンガリー国特許第P0302451号明細書、およびBioorg.Med.Chem.Lett.EN;7;18;1997 2403−2408頁に記載されていた。
【0003】
ハンガリー国特許第P0103988号明細書は、トランス{4‐{2‐[4‐(2,3‐ジクロロフェニル)‐ピペラジン‐1‐イル]‐エチル}‐シクロヘキシルアミンジヒドロクロリドの調製のための反応経路を開示する。実施例1に記載される調製方法によれば、2,3‐ジクロロフェニル‐ピペラジンとトランス2‐{1‐[4‐(N‐terc‐ブトキシカルボニル)‐アミノ]‐シクロヘキシル}‐アセトアルデヒドを溶解し、ナトリウムトリアセトキシボロヒドリド存在下でジクロロメタン中で結合させることで、トランスN‐{4‐{2‐[4‐(2,3‐ジクロロフェニル)‐ピペラジン‐1‐イル]‐エチル}‐シクロヘキシル}‐カルバミン酸第3ブチルエステルを得る。次に実施例2に記載されている方法に従い塩酸によって保護基は酢酸エチルから除去される。トランスN‐{4‐{2‐[4‐(2,3‐ジクロロフェニル)‐ピペラジン‐1‐イル]‐エチル}‐シクロヘキシル}‐カルバミン酸第3ブチルエステル、またはトランスN‐{4‐{2‐[4‐(2,3‐ジクロロフェニル)‐ピペラジン‐1‐イル]‐エチル}‐シクロヘキシル}‐アミンジヒドロクロリドに関する生産量はいずれも記載されていない。
【0004】
上記手段の欠点は、トランス2‐{1‐[4‐(N‐tert‐ブトキシカルボニル)‐アミノ]‐シクロヘキシル}‐酢酸エステルからトランス2‐{1‐[4‐(N‐tert‐ブトキシカルボニル)‐アミノ]‐シクロヘキシル}‐アセトアルデヒドを調製する際、その反応が70℃以下で実行された場合、たった55%の生産量しか達成できないことである(Stemp等 J.Med.Chem.2000,第43巻,No.9,7878‐7885頁)。しかしながら、上記の作動温度および非常に有害な水素化ジイソブチルアルミニウムの使用は、工業規模において技術的問題が起きる。したがって、この反応は追加の設備および過酷な条件下でのみ実行することができる。
【0005】
上記の文献(Bioorg.Med.Chem.Lett.EN;7;18;1997 2403−2408)で開示された手順は8つの反応工程からなり、および化合物は、いかなる特徴付けもなく、一般に言及されるだけである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】ハンガリー国特許第P0103988号明細書
【特許文献2】ハンガリー国特許第P0302451号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Bioorg.Med.Chem.Lett.EN;7;18;1997 2403−2408頁
【非特許文献2】Stemp等 J.Med.Chem.2000,第43巻,No.9,7878−7885頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
我々の目的は、安全および手間のかからない工業規模でのトランスN‐{4‐{2‐[4‐(2,3‐ジクロロフェニル)‐ピペラジン‐1‐イル]‐エチル}‐シクロヘキシルアミン重要中間体の調製方法を提供することである。その方法により、厳しい反応条件および余計な設備を使用することなく、単純反応工程によって、高収量で調製されることができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
我々の経験の過程において、我々は驚くべきことにトランス2‐{1‐(4‐[N‐tert‐ブトキシカルボニル]‐アミノ)‐シクロヘキシル}‐酢酸エステルから始まり、本発明にしたがい経済的方法を用いて、トランス4‐{2‐[4‐(2,3‐ジクロロフェニル)‐ピペラジン‐1‐イル]‐エチル}‐シクロヘキシルアミンジヒドロクロリド一水和物が4つの簡単で経済的な合成工程によって工業規模で高純度に生成されすべての工程は高収量を達成できることを発見した。
【0010】
工程1において、トランス2‐{1‐(4‐[N‐tert‐ブトキシカルボニル]‐アミノ)‐シクロヘキシル}‐酢酸エステルは、水素化ホウ素ナトリウムおよび三塩化アルミニウムを用いることで、トランス‐2‐{1‐[4‐(N‐tert‐ブトキシカルボニル)‐アミノ]‐シクロヘキシル}‐エチルアルコールに定量的に変換される。次の工程において、工程1で得られたトランス2‐{1‐[4‐(N‐tert‐ブトキシカルボニル)‐アミノ]‐シクロヘキシル}‐エチルアルコールは、塩化メタンスルホニルと反応させメチルエステルを得て、その後、メチルエステルは酸結合剤の存在下で2,3‐ジクロロフェニルピペラジンと反応させる。最終工程において、高純度高収量でトランスN‐{4‐{2‐[4‐(2,3‐ジクロロフェニル)‐ピペラジン‐1‐イル]‐エチル}‐シクロヘキシルアミンジヒドロクロリド一水和物を得るために、水/塩酸/メタノールの混合液中で40〜100℃の単純反応条件下で保護基を除去する。
【0011】
工程1において、トランス2‐{1‐[4‐(N‐tert‐ブトキシカルボニル)‐アミノ]‐シクロヘキシル}‐酢酸エステルは、トランス2‐{1‐[4‐(N‐terc‐ブトキシカルボニル)‐アミノ]‐シクロヘキシル}‐エチルアルコールに変換される。前記反応が低温(−40℃)で、非常に有害な水素化リチウムアルミニウム存在下でのみ実施できることが当業者に知られている。我々の実験において、驚くべきことに、この反応がエーテル溶媒(例えばTHF)のもと、0〜30℃、好ましくは5〜25℃で水素化ホウ素ナトリウムおよび三塩化アルミニウム存在下で行われる場合、トランス2‐{1‐[4‐(N‐tert‐ブトキシカルボニル)‐アミノ]‐シクロヘキシル}‐エチルアルコールがほぼ定量的収量で得られることを発見した。
【0012】
第2工程において、第1工程で得られたトランス2‐{1‐[4‐(N‐tert‐ブトキシカルボニル)‐アミノ]‐シクロヘキシル}‐エチルアルコールは酸結合剤の存在下で塩化メタンスルホニルで処理され、メチルエステルを得る。任意に、この反応は出発物質であるトランス2‐{1‐[4‐(N‐tert‐ブトキシカルボニル)‐アミノ]‐シクロヘキシル}‐エチルアルコールの分離をすることなく実施することができる。適切には、この反応工程において使用することができる酸結合剤は、不活性型有機塩基、好ましくは不活性型有機アミン、より好ましくは、トリエチルアミンを含む。適切には、使用することができる溶媒は不活性水非混和性の溶媒、例えば、トルエン、ジクロロメタン、クロロベンゼンまたはキシレン、好ましくはジクロロメタンを含む。この反応の効率はほぼ定量的である。
【0013】
次の工程において、トランス2‐{1‐[4‐(N‐tert‐ブトキシカルボニル)‐アミノ]‐シクロヘキシル}‐エチルメタンスルフォネートを2,3‐ジクロロフェニル‐ピペラジンと酸結合剤の存在下で反応させ、トランス{4‐[2‐[4‐[(2,3‐ジクロロフェニル)‐ピペラジン‐1‐イル]‐エチル]‐シクロヘキシル}‐カルバミン酸‐tert‐ブチルエステルを得る。任意の経路として、この反応は、出発物質であるトランス2‐{1‐[4‐(N‐tert‐ブトキシカルボニル)‐アミノ]‐シクロヘキシル}‐エチルメタンスルフォネートの分離をすることなく実施することができる。酸結合剤としてアルカリ塩基、例えばアルカリ炭酸塩、好ましくはカリウム炭酸塩が使用される。適切には、この反応工程で使用することができる溶媒は水非混和性の溶媒、例えば、トルエン、ジクロロメタン、クロロベンゼンまたはキシレン、好ましくはジクロロメタンを含む。収率は80%を超える。
【0014】
本発明の好ましい実施例において、上記3つの反応工程は、1つの工程に減される。そして、この反応は中間体化合物の分離をすることなく一つの反応容器において実施される。この場合、高コストの別々の工程の器材を掃除する必要がない。この方法において、全収量は出発原料に基づいて70%を超える。それによって、経済的な効率を高める。
【0015】
最終工程において、N‐tert‐ブトキシカルボニル保護基は、塩酸水及びメタノールの混合液中、結晶性生成物を得るために、40〜400℃好ましくは45〜50℃で除去され、これが新規トランスN‐{4‐{2‐[4‐(2,3‐ジクロロフェニル)‐ピペラジン‐1‐イル]‐エチル}シクロヘキシル}‐アミンのジヒドロクロリド一水和物であることを証明する。我々は驚くべきことに、水存在下にこの反応を実施することで、トランスN‐{4‐{2‐[4‐(2,3‐ジクロロフェニル)‐ピペラジン‐1‐イル]‐エチル)‐シクロヘキシル}‐アミンジヒドロクロリド一水和物が高純度で99%を超える収率でほぼ定量的に得られることを発見した。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、以下の実施例に限定されないで例示される。
【実施例1】
【0017】
トランス2‐{1‐[4‐(N‐tert‐ブトキシカルボニル)‐アミノ]‐シクロヘキシル}‐酢酸エステルの調製
500mlの4つ口フラスコにトランス2‐[1‐(4‐(アミノ]‐シクロヘキシル)‐酢酸エチルエステル40g(0.18mol)およびジクロロメタン160mlを加え、その後、トリエチルアミン18.2g(0.18mol)を加える。この得られた反応混合液は5〜10℃で冷却され、その後ジクロロメタン100mlにおけるジ(tert‐ブチル)重炭酸塩40.0g(0.18mol)の溶液が窒素下で撹拌しながら1時間かけて加えられる。その後、反応混合液は室温まで温められ、反応が進むまで撹拌される。反応終了後、5%含水炭酸ナトリウム100gが加えられ、この層を分離する。有機層は水50mlによって洗われ、分離したのち有機層をNaSO存在下で乾燥させ、濾液を真空中で40mlに濃縮させる。得られた濃い結晶性懸濁液はプラッターに注入され、赤外線下で、最高35℃で乾燥される。
【0018】
この方法において、47.9gのトランス2‐{1‐[4‐(N‐tert‐ブトキシカルボニル)‐アミノ]‐シクロヘキシル}‐酢酸エステルが得られた。
収率:93%
融点:73〜74℃
【実施例2】
【0019】
トランス2‐{1‐[4‐(N‐tert‐ブトキシカルボニル)‐アミノ]‐シクロヘキシル}‐エタノール
500mlの4つ口フラスコにトランス2‐[1‐[4‐(アミノ]‐シクロヘキシル)‐酢酸エチルエステルヒドロクロリド40g(0.18mol)およびジクロロメタン160mlが加えられる。結果として得られた懸濁液にトリエチルアミン18.2g(0.18mol)が加えられる。反応混合液は8〜10℃で冷却され、ジクロロメタン100mlにおけるジ(tert‐ブチル)重炭酸塩40.0g(0.185mol)の溶液が窒素下で撹拌しながら1時間かけて加えられる。その後、反応混合液は、22〜25℃の間の温度に温め、反応が進行するまで撹拌する。その反応終了後、5%含水炭酸ナトリウム100gが加えられ、この層を分離する。有機層は水50mlで抽出され、分離した後、有機層をNaSo存在下で乾燥させ、濾液を真空中で濃縮させる。得られたトランス2‐{1‐[4‐(N‐tert‐ブトキシカルボニル)‐アミノ]‐シクロヘキシル}‐酢酸エチルエステルはテトラヒドロフラン460mlで溶解され、その後、窒素下25℃で、水素化ホウ素ナトリウム13.68g(0.36mol)が加えられる。撹拌しながら、反応混合溶液に、テトラハイドロフラン250ml abs.中、24.0g(0.18mol)の塩化アルミニウム溶液が18〜22℃の温度で、窒素下で1時間かけて滴下で加えられ、その後混合液はさらに2時間撹拌される。その反応終了後、5〜10℃まで冷却され、水650mlおよびトルエン600mlを加えられる。その後、40〜45mlの濃縮塩酸を加えてpHが3〜4に調節され、20〜25℃で1時間、撹拌が続けられた。層が分離され、水層はトルエン50mlで抽出され、含まれる有機層は3×150mlの水で洗われ、真空状態で乾燥される。
【0020】
この方法において、41.1gのトランス2‐{1‐[4‐(N‐tert‐ブトキシカルボニル)‐アミノ]‐シクロヘキシル}‐エタノールが得られた。
収率:94%
融点:101〜103℃
【実施例3】
【0021】
トランス2‐{1‐[4‐(N‐tert‐ブトキシカルボニル)‐アミノ]‐シクロヘキシル}‐エチルメタンスルフォネート
撹拌しながらトランス2‐{1‐[4‐(N‐tert‐ブトキシカルボニル)‐アミノ]‐シクロヘキシル}‐エタノール37g(0.15mol)はジクロロメタン360ml、20〜25℃で溶解され、トリエチルアミン19.6g(0.19mol)を加えられる。得られた溶液は0〜5℃に冷却され、ジクロロメタン100ml中、ジ(tert‐ブチル)重炭酸塩40.0g(0.185mol)の溶液が1時間かけて滴下で加えられる。その後、さらに1時間撹拌される一方で、温度は0〜5℃に維持され、pHはトリエチルアミンを加えることで8〜9に保たれる。その反応終了後、水450mlは加えられ、15分間撹拌された後、層が分離される。水層はジクロロメタン30mlで抽出され、含まれる有機層は3×300mlの水で洗われ、ジクロロメタン溶液は真空状態で濃縮される。
【0022】
この方法において、46.2gのトランス2‐{1‐[4‐(N‐tert‐ブトキシカルボニル)‐アミノ]‐シクロヘキシル}‐エチルメタンスルフォネートが得られた。
収率:90%
融点:112〜113℃
【実施例4】
【0023】
トランスN‐tert‐ブトキシカルボニル‐4‐{2‐[4‐(2,3‐ジクロロフェニル)‐ピペラジン‐1‐イル]‐エチル}‐シクロヘキシルアミン
48g(0.15mol)のトランス2‐{1‐[4‐(N‐tert‐ブトキシカルボニル)‐アミノ]‐シクロヘキシル}‐エチルメタンスルフォネートがアセトニトリル800mlで懸濁される。得られた懸濁液に75g(0.28mol)の1‐2,3‐ジクロロフェニル)‐ピペラジンヒドロクロリドおよび71.8g(0.56mol)の炭化カリウムが加えられ、反応混合液は加熱還流し、15〜17時間撹拌される。その反応終了後、混合溶液は45〜50℃まで冷却され、水900mlが加えられる。撹拌しながら、温度は室温にし、撹拌はさらに1.5時間続けられる。その分離された生成物は濾過され、中性になるまで水で洗われる。次に水400mlおよび濃縮塩酸7mlの溶液は加えられ、その混合溶液は20〜25℃で2時間撹拌され、濾過し、その後、水15〜20mlで洗われる。得られた粗生成にアセトニトリル540mlを加え、反応混合液は加熱還流され、15分間撹拌される。混合溶液は0〜5℃に冷却され、温度がこのレベルに維持されながら撹拌は1時間続けられる。沈殿した生成物は濾過され、10mlの冷却アセトニトリルで洗浄され、乾燥される。
【0024】
この方法において、54.7gのトランスN‐tert‐ブトキシカルボニル‐4‐{2‐[4‐(2,3‐ジクロロフェニル)‐ピペラジン‐1‐イル]‐エチル)‐シクロヘキシルアミンが得られた。
収率:80%
融点:150〜154℃
【実施例5】
【0025】
トランスN‐tert‐ブトキシカルボニル‐4‐{2‐[4‐(2,3‐ジクロロフェニル)‐ピペラジン‐1‐イル]‐エチル}‐シクロヘキシルアミンの調製
1Lの4つ口丸底フラスコにトランス2‐{1‐[4‐(N‐tert‐ブトキシカルボニル)‐アミノ]‐シクロヘキシル}‐酢酸エチルエステル42.9g(0.15mol)およびテトラヒドロフラン400mlを加え、得られた溶液に、窒素下25℃で水素化ホウ素ナトリウム11.4g(0.3mol)を加える。撹拌された反応混合液に、
テトラヒドロフラン225ml abs.中、20.0g(0.15mol)の塩化アルミニウム溶液が18〜22℃の温度で、窒素下で1時間かけて滴下で加えられ、その後、混合液はさらに2時間撹拌される。その反応終了後、混合液は5〜10℃まで冷却され、水650mlのあとにトルエン450mlを加えられ、pHは30〜40ml濃縮塩酸を加えることにより3〜4に調節される。撹拌は20〜25℃で1時間続けられる。層が分離され、水層はトルエン50mlで抽出され、含まれた有機層は3×150mlの水で洗われ、真空状態で約50mlに濃縮される。濃縮され、撹拌された溶液にジクロロメタン360mlおよびトリエチルアミン19.6g(0.19mol)を20〜20℃で加えられる。溶液は、その後、0〜5℃で冷却され、ジクロロメタン90ml中、塩化メタンスルホニル19.7g(0.17mol)の溶液を1時間かけて滴下で加えられ、その反応混合液はさらに1時間撹拌される。pHはトリエチルアミンを加えることで8〜9に維持される。その反応終了後、450mlの水が加えられ、混合液は15分間撹拌され、その後、層は分離させる。水層はジクロロメタン30mlで抽出され、次に有機層は3×300mlの水で洗われる。ジクロロメタン溶液は真空中で約70mlに濃縮され、その後900mlアセトニトリルが加えられ、約80〜100ml溶媒が真空で蒸留して取り除かれる。得られた残留物は20〜25℃で冷却され、1‐(2,3‐ジクロロフェニル)‐ピペラジン‐ヒドロクロリド75g(0.28mol)および炭酸カリウム71.8g(0.56mol)が加えられ、その後混合液は加熱還流され、15〜16時間撹拌される。最終反応後、混合液が45〜50℃に冷却され、水900mlが加えられ、その後、撹拌された混合液は室温まで冷却される。撹拌は温度がこのレベルに維持されながら、さらに1.5時間続けられる。得られた生成物は濾過して取り除かれ、中性になるまで水で洗われ、その後水400mlおよび濃縮塩酸が加えられる。20〜25℃で2時間、撹拌後、得られた生成物は濾過され、水で洗浄される。得られた粗生成にアセトニトリル540mlが加えられ、得られた混合溶液は加熱還流され、15分間撹拌され、その後0〜5℃まで冷却される。撹拌はさらに1時間0−5℃で続けられる。沈殿した生成物は濾過して取り除かれ、冷却アセトニトリル10mlで洗浄され、その後乾燥される。
【0026】
この方法において、51.3gのトランスN‐tert‐ブトキシカルボニル‐4‐{2‐[4‐(2,3‐ジクロロフェニル)‐ピペラジン‐1‐イル]‐エチル)}‐シクロヘキシルアミンが得られた。
収率:75%
融点:150〜154℃
【実施例6】
【0027】
トランスN‐tert‐ブトキシカルボニル‐4‐{2‐[4‐(2,3‐ジクロロフェニル)‐ピペラジン‐1‐イル]‐エチル)}‐シクロヘキシルアミンの調製
500mlの4つ口フラスコにトランス2‐[1‐(4‐アミノシクロヘキシル)‐酢酸エチルエステルヒドロクロリド40g(0.18mol)およびジクロロメタン160mlを加えられる。結果として得られた懸濁液にトリエチルアミン18.2g(0.18mol)は加えられる。得られた混合液は0〜10℃で冷却され、その後ジクロロメタン100ml中、ジ(tert‐ブチル重炭酸塩)40.0g(0.185mol)の溶液が窒素下で撹拌しながら1時間かけて加えられる。反応混合液は、22〜25℃に温められ、反応が進行するまで撹拌が続けられる。その反応終了後、5%含水炭酸ナトリウム溶液100gが加えられ、層を分離する。有機層は水50mlで抽出され、有機層を分離した後、NaSO存在下で乾燥させ、溶媒を真空中で取り除く。
【0028】
得られたトランス2‐{1‐[N‐tert‐ブトキシカルボニル)‐アミノ]‐シクロヘキシル}‐酢酸エチルエステルはテトラヒドロフラン468mlで溶解され、その後、窒素下、25℃で、水素化ホウ素ナトリウム13.68g(0.36mol)が加えられる。撹拌された反応混合溶液に、テトラヒドロフラン絶対値270ml中、24.0g(0.18mol)の塩化アルミニウム溶液は18〜22℃、1時間かけて滴下で加えられ、その後混合液はさらに2時間撹拌される。次にその反応混合液は、5〜10℃まで冷却され、水650mlおよびトルエン600mlを加えられ、pHは、濃縮塩酸を加え3〜4に調節される。20〜25℃で1時間、撹拌された後、層が分離され、水層はトルエン50mlで抽出される。含まれる有機層は3×150mlの水で洗われ、その混合溶液は真空中で60mlに濃縮される。撹拌された濃縮溶液にジクロロメタン430mlおよびトリエチルアミン23.5g(0.23mol)が20〜25℃で加えられる。得られた溶液は、その後、0〜5℃に冷却され、ジクロロメタン110ml中、塩化メタンスルホニル23.6g(0.2mol)の溶液が1時間かけて滴下で加えられる。反応混合液は0〜5℃に維持され、1時間撹拌される。pHはトリエチルアミンを加えることで8〜9に維持される。最終反応終了後、水500mlが加えられ、混合液は15分間撹拌され、その後、層は分離される。水層は水50mlで抽出され、含まれる有機層は3×300mlの水で洗われる。ジクロロメタン溶液は真空状態で約80mlに濃縮され、アセトニトリル1Lが加えられ、その後、約80〜100mlの溶媒が真空で蒸留して取り除かれる。得られた混合溶液は20〜25℃に冷却され、1‐(2,3‐ジクロロフェニル)‐ピペラジンが80g(0.3mol)および炭酸カリウム82.8g(0.6mol)が加えられる。反応混合液は加熱還流され、15〜17時間撹拌される。混合液は、その後、45〜50℃に冷却され、水1Lは加えられ、撹拌され、混合液は室温まで冷却され、撹拌はさらに1.5時間続けられる。沈殿した生成物は濾過して取り除かれ、中性になるまで洗われ、水400ml及び濃縮塩酸7mlの溶液が加えられる。得られた混合溶液は20〜25℃で2時間、撹拌され、生成物は濾過され、水で洗浄される。得られた粗生成にアセトニトリル600mlは加えられ、混合溶液は15分間還流中で撹拌され、その後、0〜5℃まで冷却され、撹拌はさらに1時間続けられる。沈殿した生成物は濾過して取り除かれ、冷却アセトニトリル10mlで洗浄され、乾燥される。
【0029】
この方法において、57.5gのトランスN‐tert‐ブトキシカルボニル‐4‐{2‐[4‐(2,3‐ジクロロフェニル)‐ピペラジン‐1‐イル]‐エチル}‐シクロヘキシルアミンが得られた。
収率:70%
融点:150〜154℃
【実施例7】
【0030】
トランス‐4‐{2‐[‐(2,3‐ジクロロフェニル)‐ピペラジン‐1‐イル]‐エチル}‐シクロヘキシルアミンジヒドロクロリド一水和物の調製
【0031】
500mlの3つ口丸底フラスコにトランスN‐tert‐ブトキシカルボニル‐4‐{2‐[4‐(2,3‐ジクロロフェニル)‐ピペラジン‐1‐イル]‐エチル}‐シクロヘキシルアミン22g(0.05mol)およびエタノール150mlを加えられる。撹拌された混合溶液に水113ml中、37.2mlの濃縮塩酸の溶液を加え、混合溶液を45〜50℃で加熱され、撹拌は2時間、同じ温度で続けられる。反応終了後、メタノール水溶液120〜140mlが蒸留して取り除かれ、結果として得られた混合溶液を室温まで冷却し、さらに撹拌しながら5〜10℃まで冷却する。撹拌は同じ温度で1時間続けられる。沈殿した生成物は濾過され、乾燥される。
【0032】
この方法において、21.5gのトランス‐4‐{2‐[‐(2,3‐ジクロロフェニル)‐ピペラジン‐1‐イル]‐エチル)‐シクロヘキシルアミンジヒドロクロリド一水和物が得られた。
収率:94%
融点:310℃以上(粉砕する)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスN‐{4‐{2‐[4‐(2,3‐ジクロロフェニル)‐ピペラジン‐1‐イル]‐エチル}‐シクロヘキシルアミンジヒドロクロリド一水和物。
【請求項2】
a)トランス2‐{1‐[4‐(N‐tert‐ブトキシカルボニル)アミノ]‐シクロヘキシル}‐酢酸エステルを水素化ホウ素ナトリウムおよび三塩化アルミニウムと反応させ、トランス2‐{1‐[4‐(N‐tert‐ブトキシカルボニル)‐アミノ]‐シクロヘキシル}‐エタノールを得て、
b)得られたトランス2‐{1‐[4‐(N‐tert‐ブトキシカルボニル)‐アミノ]‐シクロヘキシル}‐エタノールを酸結合剤の存在下で塩化メタンスルホニルと反応させ、トランス2‐{1‐[4‐(N‐tert‐ブトキシカルボニル)‐アミノ]‐シクロヘキシル}‐エチルメタンスルフォネートを得て、
c)得られたトランス2‐{1‐[4‐(N‐tert‐ブトキシカルボニル)‐アミノ]‐シクロヘキシル}‐エチルメタンスルフォネートを酸結合剤の存在下で2,3‐ジクロロフェニル‐ピペラジンと反応させ、トランス2‐{1‐[4‐(N‐tert‐ブトキシカルボニル)‐アミノ]‐シクロヘキシル}‐カルバミン酸‐tert‐ブチルエステルを得て、
d)得られたトランス2‐{1‐[4‐(N‐tert‐ブトキシカルボニル)‐アミノ]‐シクロヘキシル}‐カルバミン酸‐tert‐ブチルエステルを塩酸水/メタノールの混合液中で40〜100℃の温度で加熱して、トランスN‐{4‐{2‐[4‐(2,3‐ジクロロフェニル)ピペラジン‐1‐イル]‐エチル}‐シクロヘキシルアミンジヒドロクロリド一水和物を得る、工程を含むことを特徴とする、
トランスN‐{4‐{2‐[4‐(2,3‐ジクロロフェニル)‐ピペラジン‐1‐イル]‐エチル}‐シクロヘキシルアミンジヒドロクロリド一水和物の調製方法。
【請求項3】
工程a)およびb)が得られた中間化合物を単離することなく実施されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程b)において有機アミンが酸結合剤として使用されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
工程b)においてトリエチルアミンが酸結合剤として使用されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
工程c)においてアルカリ炭酸塩が酸結合剤として使用されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
工程d)において加熱が45〜50℃の間の温度で実施されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。

【公表番号】特表2012−512239(P2012−512239A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541613(P2011−541613)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際出願番号】PCT/HU2009/000108
【国際公開番号】WO2010/070369
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(591180314)リヒター ゲデオン ニルバーノシャン ミーケデーレスベニュタールシャシャーグ (33)