説明

ピペラジン誘導体の製造方法

【課題】ミルタザピンの製造中間体として有用なピペラジン誘導体および製造方法の提供。
【解決手段】式(V):


で表わされるピペラジン誘導体と蓚酸又はその二水和物を、酢酸エチルとメタノールの混合溶媒中で反応させて得られる、ピペラジン誘導体(V)の蓚酸塩。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピペラジン誘導体の製造方法に関する。さらに詳しくは、抗鬱剤として有用なミルタザピンの製造中間体として好適に使用しうるピペラジン誘導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ミルタザピンは、抗鬱剤として有用な化合物である。従来、ミルタザピンの製造中間体として、ピペラジン誘導体が知られている。ピペラジン誘導体の製造方法としては、1−メチル−3−フェニルピペラジンと、2−クロロ−3−シアノピリジンとをフッ化カリウムの存在下で反応させる方法が知られている(特許文献1)。
【0003】
しかしながら、この方法には、フッ化カリウムが使用されているため、ガラスが使用された装置やガラスがライニングされた装置は、腐食されるので使用することができないという欠点や、反応溶液にはタールの生成量が多く、目的化合物であるピペラジン誘導体を取り出すことが困難であるという工業的生産性の面で欠点がある。
【0004】
また、前記ピペラジン誘導体の重要な製造中間体である1−メチル−3−フェニルピペラジンを製造する方法としては、スチレンオキシドとN−メチルエタノールアミンとを水中で反応させる方法(特許文献2)や、2−フェニルピペラジンをヨウ化メチルでメチル化させる方法が知られている(特許文献3)。
【0005】
しかしながら、前者の方法には、異性体が生成し、カラム分離などの煩雑な処理を必要とするので、生産性の面で欠点がある。また、後者の方法には、1−メチル−3−フェニルピペラジンを高収率で得ることができず、また大量のアセトンを必要とするので、工業的生産性に劣るという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭59−42678号公報
【特許文献2】特公昭53−15520号公報
【特許文献3】米国特許第4,772,705号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、煩雑な操作を必要とせずに、ミルタザピンの製造中間体として有用なピペラジン誘導体およびその重要な製造中間体である1−メチル−3−フェニルピペラジンを工業的に容易に製造しうる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、
〔1〕 式(V):
【0009】
【化1】

【0010】
で表わされるピペラジン誘導体と蓚酸又はその二水和物を、酢酸エチルとメタノールの混合溶媒中で反応させることを含む、式(VI):
【0011】
【化2】

【0012】
で表わされるピペラジン誘導体蓚酸塩の製造方法、並びに
〔2〕 式(VI):
【0013】
【化3】

【0014】
で表わされるピペラジン誘導体蓚酸塩
が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明に方法により、煩雑な操作を必要とせずに、ミルタザピンの製造中間体として有用なピペラジン誘導体を工業的に容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、実施例11で得られた2−(4−メチル−2−フェニルピペラジン−1−イル)−3−シアノピリジン蓚酸塩の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
まず、スチレンオキシドとN−メチルエタノールアミンとを非プロトン性極性有機溶媒中で反応させることにより、式(I):
【0018】
【化4】

【0019】
で表わされるジオール化合物を選択性よく得ることができる。
【0020】
N−メチルエタノールアミンの量は、特に限定がないが、経済性および反応後の処理を考慮して、通常、スチレンオキシド1モルに対して、0.8〜1.2モル程度であることが好ましい。
【0021】
非プロトン性極性有機溶媒としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−オン、N−メチル−2−ピロリドンなどが挙げられ、これらは、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。これらの中では、ジメチルホルムアミドおよび1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−オンは、本発明において好適に使用しうるものである。
【0022】
非プロトン性極性有機溶媒の量は、特に限定がないが、通常、スチレンオキシド100重量部に対して100〜600容量部、好ましくは150〜400容量部程度であることが望ましい。
【0023】
反応は、N−メチルエタノールアミンをスチレンオキシドに滴下することによって行なうことが好ましい。
【0024】
反応温度は、反応を促進させる観点から、50℃以上、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上であることが望ましく、あまりにも温度が高い場合には、副生成物が生成するようになるので、120℃以下、好ましくは100℃以下であることが望ましい。
【0025】
なお、反応の際の雰囲気には特に限定がない。該雰囲気は、大気であってもよく、例えば、窒素ガスなどの不活性ガスであってもよい。
【0026】
反応時間は、特に限定がないが、通常、2〜5時間程度である。反応の終点は、例えば、ガスクロマトグラフィーなどで、N−メチルエタノールアミンの面積百分率が0.5%以下となった時点とすることができる。
【0027】
かくして、式(I)で表わされるジオール化合物が得られる。
【0028】
次に、ジオール化合物は、クロロ化させることにより、ジクロロ化合物とすることができる。
【0029】
なお、クロロ化の前には、ジオール化合物を塩とすることが、副生成物の量を低減させ、反応を容易に進行させる観点から好ましい。
【0030】
ジオール化合物を塩とする方法としては、例えば、生成したジオール化合物を含む反応溶液に酸〔式(III)におけるHX〕を導入する方法などが挙げられる。前記ジオール化合物を塩とするのに好適に使用しうる酸としては、塩酸(塩化水素ガス)、臭化水素酸、メシル酸、ベシル酸、p−トルエンスルホン酸などが挙げられる。これらの中では、塩酸(塩化水素ガス)、メシル酸およびベシル酸が好ましく、塩酸(塩化水素ガス)およびメシル酸がより好ましい。
【0031】
酸の量は、ジオール化合物を十分に塩にするために、ジオール化合物1当量に対して1当量以上、好ましくはジオール化合物に対して1.0〜1.2当量とすることが望ましい。
【0032】
次に、ジオール化合物またはジオール化合物の塩〔以下、両者を総称してジオール化合物(塩)という〕をクロロ化する。
【0033】
なお、ジオール化合物を、塩化チオニルなどのクロロ化剤を用いてクロロ化させた場合には、式(III):
【0034】
【化5】

【0035】
(式中、HXは酸を示す)
で表わされるジクロロ化合物の塩を得ることができる。また、得られたジクロロ化合物の塩に、例えば、アルカリの添加などの処理を施せば、式(II):
【0036】
【化6】

【0037】
で表わされるジクロロ化合物を得ることができる。
【0038】
なお、ジオール化合物(塩)をクロロ化させる際には、前記で得られたジオール化合物(塩)を含む反応溶液からジオール化合物(塩)を単離させることなく、該反応溶液をそのまま使用することができる。
【0039】
前記ジオール化合物(塩)のクロロ化は、例えば、塩化チオニル、オキシ塩化燐、オキザリルクロリド、ホスゲンなどのクロロ化剤を用いて行なうことができる。クロロ化剤の量は、特に限定がないが、通常、ジオール化合物(塩)1当量に対して2〜3.5当量程度、好ましくは2〜3当量程度であることが望ましい。
【0040】
より具体的には、クロロ化剤を用いたジオール化合物(塩)のクロロ化は、例えば、クロロ化剤を前記で得られた反応溶液と混合し、適宜攪拌するか、クロロ化剤をトルエン、ジメチルホルムアミド、1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−オンなどの有機溶媒に溶解しておき、そのクロロ化剤の有機溶媒溶液と、前記で得られた反応溶液とを混合し、適宜、攪拌することによって容易に行なうことができる。この場合、有機溶媒の量は、通常、クロロ化剤100重量部に対して100〜500重量部程度であることが好ましい。
【0041】
ジオール化合物(塩)のクロロ化は、0〜30℃でジオール化合物(塩)をクロロ化剤に滴下することによって容易に行なうことができる。
【0042】
ジオール化合物(塩)をクロロ化するのに要する時間は、特に限定がないが、通常、1〜12時間程度である。また、クロロ化の終点は、例えば、ガスクロマトグラフィーなどで容易に確認することができる。
【0043】
かくして、ジオール化合物(塩)をクロロ化させることにより、式(II)で表わされるジクロロ化合物または式(III)で表わされるジクロロ化合物の塩が得られる。
【0044】
なお、得られたジクロロ化合物またはジクロロ化合物の塩を含む反応溶液には、例えば、塩化チオニルなどのクロロ化剤やジメチルホルムアミドなどの水溶性有機溶媒を除去するために、まず、水中に反応溶液を滴下する。水の量は、通常、ジメチルホルムアミドなどの水溶性有機溶媒100重量部に対して100〜300重量部であることが好ましい。滴下温度は、通常、0〜30℃、好ましくは、0〜25℃であることが望ましい。
【0045】
次に、アルカリ水溶液をこの反応溶液に滴下し、そのpHを0.8〜1.0に調整する。アルカリ水溶液としては、濃度が10〜40重量%の水酸化カリウム水溶液や水酸化ナトリウム水溶液を用いることができる。滴下温度は、0〜25℃、好ましくは0〜20℃であることが望ましい。なお、アルカリ水溶液は、あらかじめ5〜10℃に冷却しておくことが好ましい。
【0046】
次に、前記反応溶液には、該反応溶液のpHが4〜5となるように、アルカリ水溶液を加える。アルカリ水溶液は、0〜25℃の温度で流入することが好ましい。
【0047】
次に、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、トルエンなどの炭化水素系溶媒、好ましくはトルエンで抽出することが望ましい。また、必要により、洗浄し、無水硫酸マグネシウムや無水硫酸ナトリウムなどで乾燥し、活性白土などを加えた後に濾過し、ジクロロ化合物を単離することができる。
【0048】
ジクロロ化合物を塩として単離する場合には、濾過した濾液に、使用したN−メチルエタノールアミン100重量部に対してイソプロパノール30〜100重量部を加えてから、塩化水素を加えてもよい。塩化水素の量は、使用したN−メチルエタノールアミン1モルあたり、0.9〜1.2モル程度であることが好ましい。なお、塩化水素を添加する際には、発熱を伴うので、あらかじめ反応溶液を20℃以下の温度に冷却した後に添加することが好ましい。
【0049】
この溶液を10〜20℃の温度で1〜2日間攪拌または静置することにより、濾過性のよいジクロロ化合物の塩の結晶を得ることができる。
【0050】
次に、得られた式(II)で表わされるジクロロ化合物または式(III)で表わされるジクロロ化合物の塩をアンモニアと反応させることにより、式(IV):
【0051】
【化7】

【0052】
で表わされる1−メチル−3−フェニルピペラジンを得ることができる。
【0053】
ジクロロ化合物またはジクロロ化合物の塩〔以下、ジクロロ化合物(塩)という〕と、アンモニアとの反応は、例えば、溶媒中で行なうことができる。
【0054】
溶媒としては、例えば、ジメチルホルムアミドなどの非プロトン性極性有機溶媒;トルエンなどの炭化水素系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒;およびジイソプロピルエーテルなどのエーテル系溶媒などから選ばれた1種以上の溶媒を好適に使用することができる。それらのなかでは、ジメチルホルムアミドとトルエンの混合溶媒が好ましい。溶媒の量は、通常、ジクロロ化合物(塩)100重量部に対して、100〜1000容量部、好ましくは120〜800容量部であることが望ましい。
【0055】
アンモニアは、そのまま気体の状態で溶媒に吹き込んでもよく、水に溶解させ、アンモニア水として使用してもよい。アンモニアをアンモニア水として使用する場合には、アンモニア水におけるアンモニア濃度は、通常、15〜28%程度であることが好ましい。アンモニアの量は、ジクロロ化合物(塩)1モルに対して、10〜50モル、好ましくは15〜30モル、より好ましくは20〜30モルであることが、反応性および経済性の観点から望ましい。
【0056】
また、ジクロロ化合物(塩)とアンモニアとを反応させる際には、相間移動によって反応を促進させる観点から、4級アンモニウム塩を使用することが好ましい。4級アンモニウム塩としては、例えば、臭化テトラブチルアンモニウム、塩化ベンジルトリメチルアンモニウム、臭化ベンジルトリメチルアンモニウム、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム、臭化ベンジルトリエチルアンモニウム、塩化トリカプリルメチルアンモニウム、ヨウ化テトラブチルアンモニウムなどが挙げられ、これらは、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。4級アンモニウム塩の量は、反応性および経済性の観点から、ジクロロ化合物(塩)1モルに対して200mg〜50g、好ましくは200mg〜30g、より好ましくは1〜30gであることが望ましい。
【0057】
ジクロロ化合物(塩)とアンモニアとを反応させる際の温度は、特に限定がないが、通常、10〜80℃、好ましくは20〜50℃、より好ましくは30〜50℃であることが望ましい。
【0058】
反応時間は、特に限定がないが、通常、1〜10時間程度である。また、反応の終点は、例えば、高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィーなどで容易に確認することができる。
【0059】
かくして得られた式(IV)で表わされる1−メチル−3−フェニルピペラジンを含む反応溶液に、水酸化ナトリウムなどのアルカリ水溶液を加えてアルカリ性とする。アルカリ水溶液の濃度は、20〜50重量%程度であることが好ましい。また、反応溶液はアルカリ性、例えば、そのpHが11〜12程度であればよい。
【0060】
次に、アルカリ性とした溶液を、例えば、トルエン、酢酸エチル、エーテルなど、好ましくはトルエンで1回以上抽出し、無水硫酸マグネシウムなどで乾燥した後、蒸留などの方法により、1−メチル−3−フェニルピペラジンを単離することができる。
【0061】
1−メチル−3−フェニルピペラジンから2−(4−メチル−2−フェニルピペラジン−1−イル)−3−シアノピリジンの製造は、例えば、1−メチル−3−フェニルピペラジンと2−クロロ−3−シアノピリジンとを塩基とアルカリ金属ハロゲン化物の存在下で非プロトン性極性有機溶媒中で反応させることによって容易に行なうことができる。
【0062】
1−メチル−3−フェニルピペラジンの量は、2−クロロ−3−シアノピリジンとの反応を十分に進行させる観点から、2−クロロ−3−シアノピリジン1モルに対して、0.7〜1.1モル、好ましくは0.8〜1.1モル、より好ましくは0.8〜1.0モルであることが望ましい。
【0063】
なお、両者の反応の際には、非プロトン性極性有機溶媒が使用される。非プロトン性極性有機溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−オンなどが挙げられる。これらの中では、ジメチルホルムアミドは、好適に使用しうるものである。溶媒の量は、特に限定がないが、通常、1−メチル−3−フェニルピペラジン100重量部に対して、100〜800容量部、好ましくは150〜500容量部であることが望ましい。
【0064】
また、反応の際には、反応を促進させ、副生成物の生成を抑制するために、塩基が使用される。塩基としては、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンなどのアルキルアミン;N−メチルモルホリンなどの環状アミン;ピリジン、ピコリンなどの有機塩基や、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムなどの無機塩基が挙げられる。塩基の量は、1−メチル−3−フェニルピペラジンと2−クロロ−3−シアノピリジンとの反応を迅速に進行させる観点から、2−クロロ−3−シアノピリジン1モルに対して0.5〜20モル、好ましくは0.7〜2モルであることが望ましい。
【0065】
また、本発明においては、反応を促進させるために、アルカリ金属ハロゲン化物が使用される。アルカリ金属ハロゲン化物としては、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウムなどが挙げられる。アルカリ金属ハロゲン化物の量は、その溶解性および経済性の観点から、2−クロロ−3−シアノピリジン1モルに対して0.05〜1.5モル、好ましくは0.07〜1.2モルであることが望ましい。
【0066】
なお、本発明においては、触媒として、例えば、ヨウ化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、塩化ベンジルトリメチルアンモニウムなどの4級アンモニウム塩などを適量で使用してもよい。
【0067】
1−メチル−3−フェニルピペラジンと2−クロロ−3−シアノピリジンとの反応は、例えば、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス中で行なうことが好ましい。
【0068】
また、反応温度は、通常、反応速度を向上させる観点および副生成物の生成を抑制する観点から、90〜160℃、好ましくは110〜150℃であることが望ましい。反応時間は、反応温度によって異なるので一概には決定することができないが、通常、12〜24時間程度である。
【0069】
また、反応は、反応温度110〜125℃で8〜12時間還流し、125〜135℃で低揮発留分を留去した後、135〜140℃で5〜10時間加熱する反応条件で行なってもよい。
【0070】
1−メチル−3−フェニルピペラジンと2−クロロ−3−シアノピリジンとの反応終了後には、得られた反応溶液に含まれている溶媒を濃縮したり、あるいは水を添加し、酢酸エチルなどの溶媒で抽出し、濃縮して粗生成物を得たり、適当な溶媒から再結晶させることにより、式(V):
【0071】
【化8】

【0072】
で表わされるピペラジン誘導体である2−(4−メチル−2−フェニルピペラジン−1−イル)−3−シアノピリジンを容易に単離することができる。
【0073】
例えば、反応溶液を内温70〜95℃、減圧度7〜2.7kPaで、使用したジメチルホルムアミドの75〜95%を留去し、70〜80℃で1−メチル−3−フェニルピペラジン100重量部に対して水100〜250重量部を加える。
【0074】
次に、アルカリでpHを8〜9とする。アルカリとしては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムなどが挙げられる。アルカリとして水酸化ナトリウムを用いる場合には、通常、10〜40重量%の水酸化ナトリウム水溶液として使用することができる。
【0075】
次に、この反応溶液を酢酸エチルで抽出する。酢酸エチルの量は、1−メチル−3−フェニルピペラジン100重量部に対して、300〜1500重量部であることが好ましい。また、抽出温度は、40〜50℃であることが好ましい。
【0076】
また、本発明においては、生成した2−(4−メチル−2−フェニルピペラジン−1−イル)−3−シアノピリジンを酢酸エチル、メタノールやエタノールなどの有機溶媒に溶解させ、これに酸を添加し、濾過し、乾燥させ、生成した2−(4−メチル−2−フェニルピペラジン−1−イル)−3−シアノピリジンの塩をピペラジン誘導体として使用することができる。この場合、酸として、例えば、蓚酸、コハク酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸などの有機酸、硫酸、塩酸、リン酸などの無機酸を用いることができる。それらのなかでは、蓚酸は、結晶性、純度および収率の観点から好ましい。
【0077】
例えば、反応溶液から抽出した2−(4−メチル−2−フェニルピペラジン−1−イル)−3−シアノピリジンを含む溶液に、1−メチル−3−フェニルピペラジン100重量部に対して、メタノール100〜150重量部を加え、40〜50℃で蓚酸二水和物を添加するか、あるいは蓚酸100重量部に対してメタノール250〜400重量部の割合で蓚酸をメタノールに溶解させた溶液を滴下してもよい。蓚酸の量は、1−メチル−3−フェニルピペラジン1モルあたり、0.9〜1.5モルであることが好ましい。
【0078】
次に、この溶液を15〜25℃に冷却し、1〜10時間熟成した後、濾過し、メタノールと酢酸エチルとの混合溶媒(例えば、メタノール1容量部に対して酢酸エチル3〜4容量部)で洗浄することができる。その後、50〜60℃の乾燥温度で乾燥することにより、式(VI):
【0079】
【化9】

【0080】
で表わされるピペラジン誘導体蓚酸塩を得ることができる。
【0081】
かくして得られるピペラジン誘導体およびピペラジン誘導体蓚酸塩は、ミルタザピンの製造中間体として有用な化合物である。
【実施例】
【0082】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0083】
実施例1〔ジオール化合物の製造〕
ジメチルホルムアミド38kgにスチレンオキシド20kg(166モル)を添加し、約80℃でN−メチルエタノールアミン11.4kg(151モル)を滴下した。その後、80℃で3時間攪拌し、ガスクロマトグラフィーにて反応の終点を確認し、室温まで冷却し、ジオール化合物のジメチルホルムアミド溶液を得た。
【0084】
得られたジオール化合物がN−(2−ヒドロキシエチル)−N−メチル−α−ヒドロキシ−β−フェニルエチルアミンであることは、得られたジオール化合物が以下の物性を有することで確認することができた。
【0085】
1H−NMR(400MHz,CDCl3 )δppm:7.26−7.37(m,5H)、4.73−4.77(m,1H)、3.66−3.67(m,2H)、3.0−4.0(m,4H)、2.5−2.7(m,4H)、2.37(s,3H)
【0086】
実施例2〔ジオール化合物のメシル酸塩の製造〕
スチレンオキシド25g(0.2モル)をジメチルホルムアミド50mlに添加し、これに80℃でN−メチルエタノールアミン14.3g(0.19モル)を滴下した。80℃で3時間攪拌し、ガスクロマトグラフィーで反応の終点を確認し、冷却した。
【0087】
次に、得られた反応溶液に、トルエン85gを添加し、10℃に冷却し、メシル酸18.2gを滴下した。
【0088】
得られた溶液の一部を減圧濃縮し、分析したところ、N−(2−ヒドロキシエチル)−N−メチル−α−ヒドロキシ−β−フェニルエチルアミンメシル酸塩であることが以下の結果から確認された。
【0089】
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6 )δppm:9.20(1H,OH)、7.3−7.7(m,6H)、5.08(m,1H,CO)、3.2−3.4(m,4H,2XC2 N)、2.92(dd−like,3H,NCH3)、2.37(d−like,3H,C3 SO)
【0090】
実施例3〔ジクロロ化合物の塩酸塩の製造〕
実施例2で得られた反応溶液に、塩化チオニル56.2g(0.19モル)を0〜30℃で滴下し、20〜30℃で6時間攪拌した。冷却後、反応溶液を水120ml中に18〜24℃の温度で滴下した。
【0091】
次に、得られた溶液に、30%水酸化カリウム水溶液225gを20〜25℃の温度で滴下し、pHを4.4に調整し、静置し、分液した。
【0092】
有機層に無水硫酸マグネシウム6gを添加し、10分間攪拌し、活性白土6gを添加し、15分間攪拌した後、濾過し、トルエン21.7gで洗浄した。トルエン溶液に、28〜38℃で11.6%塩化水素酢酸エチル溶液60g(0.19モル)を滴下し、20〜30℃で1時間攪拌した後、濾過し、トルエン87gで洗浄し、45〜60℃で乾燥してN−(2−クロロエチル)−N−メチル−α−クロロ−β−フェニルエチルアミン塩酸塩(ジクロロ化合物の塩酸塩)37.7gを得た(収率73.9%)。
【0093】
実施例4〔ジクロロ化合物の製造〕
実施例1と同様の方法で製造した反応溶液の温度を0〜25℃に調節しながら、該反応溶液を、塩化チオニル45kgをトルエン67.4kgに溶解させた溶液に滴下した後、45〜55℃で2時間攪拌した。
【0094】
得られた反応溶液を25℃以下に冷却した後、該反応溶液に水95kgを滴下し、次いで30重量%の水酸化カリウム水溶液50.8kgを20〜25℃で滴下し、静置して分液した。
【0095】
得られた水層にトルエン55kgを添加し、攪拌して分液し、抽出した有機層を先の有機層と合わせて無水硫酸マグネシウム4.8kgで脱水した。その後、活性白土4.8kgを添加し、濾過し、次いでトルエン19.9kgで洗浄し、ジクロロ化合物のトルエン溶液を得た。
【0096】
実施例5〔ジクロロ化合物の塩の製造〕
実施例4で得られたトルエン溶液に、10〜35℃で塩化水素ガス5.5kgを導入し、20〜25℃で2時間攪拌して濾過し、トルエン69kgで洗浄して生成物30kgを得た。
【0097】
得られた生成物がジクロロ化合物〔N−(2−クロロエチル)−N−メチル−α−クロロ−β−フェニルエチルアミン〕塩酸塩であることは、得られた生成物が以下の物性を有することで確認することができた。
【0098】
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6 )δppm:7.397−7.766(m,5H)、5.82(bd,1H)、3.41−4.1(m,6H)、2.908(s,3H)
融点:123.8−126.7℃
【0099】
実施例6〔1−メチル−3−フェニルピペラジンの製造〕
室温で28%アンモニア水132g(2.175モル)に、酢酸エチル100ml、臭化テトラブチルアンモニウム460mgおよび実施例3で得られたジクロロ化合物の塩酸塩20.1g(0.075モル)を添加し、40〜45℃で3時間攪拌した。
【0100】
得られた反応溶液を分液し、水層を40〜45℃で酢酸エチル30mlで2回抽出し、有機層を合わせた。その後、有機層を減圧下で蒸留して生成物7.1gを得た(ジクロロ化合物の塩酸塩からの収率53.8%)。
【0101】
得られた化合物が1−メチル−3−フェニルピペラジンであることは、得られた生成物が以下の物性を有することで確認することができた。
【0102】
1H−NMR(400MHz,CDCl3)δppm:1.8−1.9(br,1H)、1.95−2.19(m,2H)、2.31(s,3H)、2.78−3.15(m,4H)、3.84−3.89(m,1H)、7.22−7.41(m,5H)
沸点(400Pa):107−112℃
【0103】
実施例7〔ピペラジン誘導体の製造〕
実施例6で得られた1−メチル−3−フェニルピペラジン5.51g(31.3ミリモル)、2−クロロ−3−シアノピリジン4.47g(31.3ミリモル)、トリエチルアミン4.1g(31.3ミリモル)およびヨウ化カリウム5.20g(31.3ミリモル)を、ジメチルホルムアミド11mlに添加し、窒素ガス雰囲気中で125〜130℃で24時間反応させた。
【0104】
次に、減圧下でトリエチルアミンとジメチルホルムアミドを反応溶液から留去した後、水20mlと酢酸エチル25mlを添加し、10%水酸化ナトリウム水溶液でpHを8〜9に調整した。分液後、水層を酢酸エチル30mlで2回抽出し、有機層を合わせ、5%重曹水で洗浄した。
【0105】
有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮した。残渣を石油エーテルから結晶化し、淡黄色の2−(4−メチル−2−フェニルピペラジン−1−イル)−3−シアノピリジン3.14gを得た(1−メチル−3−フェニルピペラジンからの収率36%、融点65.7−66.8℃)。そのHPLC純度は、97.1%であった。
【0106】
実施例8〔ピペラジン誘導体の製造〕
実施例6で得られた1−メチル−3−フェニルピペラジン5.51g(31.3ミリモル)、2−クロロ−3−シアノピリジン4.47g(31.3ミリモル)、トリエチルアミン4.1g(31.3ミリモル)およびヨウ化カリウム5.20g(31.3ミリモル)を、ジメチルホルムアミド11mlに添加し、窒素ガス雰囲気中で125〜130℃で24時間反応させた。
【0107】
次に、減圧下でトリエチルアミンとジメチルホルムアミドを反応溶液から留去した後、水20mlと酢酸エチル25mlを添加し、10%水酸化ナトリウム水溶液でpHを8〜9に調整した。分液後、水層を酢酸エチル30mlで2回抽出し、有機層を合わせ、5%重曹水で洗浄した。
【0108】
有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、この有機層に、蓚酸3.9gをメタノール15mlに溶解させた溶液を添加した。
【0109】
次に、この溶液を濾過し、乾燥し、白色の生成物6.8gを得た(1−メチル−3−フェニルピペラジンからの収率59%)。そのHPLC純度は99.2%であった。得られた生成物が2−(4−メチル−2−フェニルピペラジン−1−イル)−3−シアノピリジン蓚酸塩であることは、得られた生成物が以下の物性を有することで確認することができた。
【0110】
1H−NMR(CDCl3 ,400MHz)δppm:8.29、7.77、6.76(dd,each 1H);7.1−7.44(m,5H)、5.46(t,1H,CPh);3.83、3.59(m,each H);2.95(dd,1H);2.65−2.80(m,4H);2.55(m,1H);2.33(s,3H,NC3
【0111】
実施例9〔ジオール化合物〜ジクロロ化合物の製造〕
スチレンオキシド296.3kg(2466モル)とジメチルホルムアミド559kgを反応釜に仕込み、75〜84℃でN−メチルエタノールアミン169.3kg(2254モル)を滴下し、2時間同温度で攪拌した。ガスクロマトグラフィーにて分析したところ、N−メチルエタノールアミンは検出されなかった。
【0112】
次に、その溶液の液温を10℃に冷却し、その溶液を、トルエン930.3kgと塩化チオニル667kg(5606モル)の混合液に0〜23℃で滴下した。
【0113】
トルエン70.8kgで、混合液が入っていた容器を洗浄し、反応溶液に加え、45〜52℃で2時間攪拌した。ガスクロマトグラフィーにて分析したところ、N−(2−ヒドロキシエチル)−N−メチル−α−ヒドロキシ−β−フェニルエチルアミンが消失したことを確認し、反応溶液を約10℃に冷却し、水998kgへ2〜29℃で滴下して過剰の塩化チオニルを加水分解した。
【0114】
トルエン105.3kgで反応釜を洗浄し、洗液を加水分解液に加えた。3〜19℃で、pHが1となるまで25%水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、さらに6〜25℃で、pHが4.2となるまで、25%水酸化ナトリウム水溶液(1073kg)を加えた。有機層を分液し、水層をトルエン711kgで抽出し、有機層を合一した。無水硫酸マグネシウム70.7kgで脱水し、活性白土V2(水澤化学(株)製、商品名)71.4kgを加えて脱色した後、濾過した。
【0115】
濾過物をトルエン254.9kgで洗浄し、濾液にイソプロパノール94.3kgを加えた。20℃で塩化水素ガス81.2kgを吹き込み、1日間熟成し、濾過し、トルエン692kgで結晶を洗浄した。湿結晶の量は524.3kgであり、分析の結果、N−(2−クロロエチル)−N−メチル−α−クロロ−β−フェニルエチルアミン塩酸塩(ジクロロ化合物の塩酸塩)409.9kgが含まれていた(N−メチルエタノールアミンに対する収率67.7%)。
【0116】
実施例10〔1−メチル−3−フェニルピペラジンの製造〕
トルエン515kg、ジメチルホルムアミド1320kg、臭化テトラブチルアンモニウム41kgおよび28%アンモニア水1392kgを反応釜に仕込み、実施例9で得られたN−(2−クロロエチル)−N−メチル−α−クロロ−β−フェニルエチルアミン塩酸塩の湿結晶524.3kg(純分409.9kg)とトルエン519.2kgのスラリー溶液を流入した。トルエン178kgでスラリー溶液が入っていた容器を洗浄し、反応釜に流入した。40〜44℃で2時間攪拌し、ガスクロマトグラフィーで反応の終点を確認した。25%水酸化ナトリウム水溶液246.3kgに水酸化ナトリウム109kgを溶解した液を加え、pHを11.7とした。45〜47℃で2時間攪拌し、分液した。水層に、25%水酸化ナトリウム水溶液71kgに水酸化ナトリウム31kgを溶解した溶液を加え、23〜24℃でトルエン461kgを用いて攪拌抽出し、分液した。さらに、水層にトルエン461kgを加えて攪拌抽出した。有機層を合一し、無水硫酸マグネシウム76kgで乾燥した。濾過し、濾過物をトルエン143kgで洗浄した。濾液を減圧下で濃縮し、トルエンを留去した。さらに、減圧下(450〜720Pa)でジメチルホルムアミドを留去した後、主成分として1−メチル−3−フェニルピペラジン157.8kgを得た(収率:58.7%)。その沸点は98〜122℃(0.2〜2kPa)であった。
【0117】
なお、留出した1−メチル−3−フェニルピペラジンは、室温で固化するため、次工程で使用するジメチルホルムアミドに溶解させておくことが好ましい。
【0118】
実施例11〔ピペラジン誘導体の製造〕
反応釜にジメチルホルムアミド284.6kg、実施例10で得られた1−メチル−3−フェニルピペラジン150.9kg、ヨウ化カリウム14.2kg、2−クロロ−3−シアノピリジン142.3kgおよびトリエチルアミン91kgを加えて加熱した。115〜120℃で10時間攪拌し、次いで内温が135℃となるまで加熱してトリエチルアミンを留去した。
【0119】
さらに、135〜137℃で5時間攪拌した。HPLCで反応の終点を確認した後、80℃まで冷却した。6.5〜2.7kPaの減圧下、内温30〜79℃でジメチルホルムアミド250kgを留去した。水226.3kgを流入し、41℃で25%水酸化ナトリウム水溶液35kgを加えてpHを8.2に調整した。41℃で酢酸エチル612.3kgを加えて攪拌抽出し、静置して分液した。有機層を5%食塩水で洗浄し、47℃で静置し、分液した。有機層に、メタノール179kgを流入し、41〜49℃で蓚酸二水和物107.9kgを分割添加した。43〜49℃で1時間攪拌し、18〜20℃に冷却し、80分間熟成した後、濾過した。濾過速度は2685L/hrであった。
【0120】
酢酸エチル164.3kgとメタノール47.85kgの混合溶媒で結晶を洗浄し、50〜60℃で減圧乾燥して、2−(4−メチル−2−フェニルピペラジン−1−イル)−3−シアノピリジン蓚酸塩195.3kgを得た(収率:61.9%)。そのHPLC純度は99.4%、その融点は200〜210℃であり、またその嵩密度は0.4g/mLであった。
【0121】
得られた2−(4−メチル−2−フェニルピペラジン−1−イル)−3−シアノピリジン蓚酸塩の顕微鏡写真を図1に示す。また、その物性は、以下のとおりである。
【0122】
IR(KBr)ν=3039、2223、1733、1636、1578、1567、1436、758、701cm-1
1H−NMR(CDCl3 ,400MHz)δppm:8.29、7.77、6.76(dd,each 1H);7.1−7.44(m,5H)、5.46(t,1H,CPh);3.83、3.59(m,each H);2.95(dd,1H);2.65−2.80(m,4H);2.55(m,1H);2.33(s,3H,NC3
【0123】
比較例1
ジメチルホルムアミド28mLに、1−メチル−3−フェニルピペラジン2.0gおよび2−クロロ−3−シアノピリジン1.62gを溶解し、窒素雰囲気下、乾燥フッ化カリウム1.92gを加えて135〜140℃で攪拌した。
【0124】
4時間後に、HPLCにより、反応をチェックしたところ、目的の2−(4−メチル−2−フェニルピペラジン−1−イル)−3−シアノピリジンの生成率は66.5%であった。さらに、2時間反応を続けたところ、生成率が50.7%となり、不純物が増えていたため、反応を停止した。
【0125】
得られた反応溶液を水150mLの中に注ぎ込み、酢酸エチル100mLで抽出した。有機層を水30mLで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、濃縮した。ヘキサンなどの溶媒で結晶化を試みたが、結晶化しなかった。
【0126】
そこで、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、2−(4−メチル−2−フェニルピペラジン−1−イル)−3−シアノピリジン1.58gを得た(収率:50.3%)。その融点は、66.2℃であった。
【0127】
なお、本発明の態様として、以下のものが挙げられる。
〔1〕 スチレンオキシドとN−メチルエタノールアミンとを非プロトン性極性有機溶媒中で反応させることを含む、式(I):
【0128】
【化10】

【0129】
で表わされるジオール化合物の製造方法。
〔2〕 非プロトン性極性有機溶媒がジメチルホルムアミドまたは1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−オンである前記〔1〕記載のジオール化合物の製造方法。
〔3〕 前記〔1〕で得られたジオール化合物を単離せずに、クロロ化することを含む、式(II):
【0130】
【化11】

【0131】
で表わされるジクロロ化合物の製造方法。
〔4〕 前記〔1〕で得られたジオール化合物を酸で塩とした後、クロロ化することを含む、式(III):
【0132】
【化12】

【0133】
(式中、HXは酸を示す)
で表わされるジクロロ化合物の塩の製造方法。
〔5〕 前記〔3〕で得られたジクロロ化合物または前記〔4〕で得られたジクロロ化合物の塩をアンモニアと反応させることを含む、式(IV):
【0134】
【化13】

【0135】
で表わされる1−メチル−3−フェニルピペラジンの製造方法。
〔6〕 1−メチル−3−フェニルピペラジンと、2−クロロ−3−シアノピリジンとを塩基およびアルカリ金属ハロゲン化物の存在下で非プロトン性極性有機溶媒中で反応させることを含む、式(V):
【0136】
【化14】

【0137】
で表わされるピペラジン誘導体の製造方法。
〔7〕 式(VI):
【0138】
【化15】

【0139】
で表わされるピペラジン誘導体蓚酸塩。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明の製造方法によって得られた1−メチル−3−フェニルピペラジンは、ミルタザピンの製造中間体として有用なピペラジン誘導体およびその製造中間体として好適に使用しうるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(V):
【化1】


で表わされるピペラジン誘導体と蓚酸又はその二水和物を、酢酸エチルとメタノールの混合溶媒中で反応させることを含む、式(VI):
【化2】


で表わされるピペラジン誘導体蓚酸塩の製造方法。
【請求項2】
式(VI):
【化3】


で表わされるピペラジン誘導体蓚酸塩。

【図1】
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【公開番号】特開2013−40196(P2013−40196A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−231010(P2012−231010)
【出願日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【分割の表示】特願2008−262502(P2008−262502)の分割
【原出願日】平成12年9月27日(2000.9.27)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】