説明

ピペラジン誘導体の調製プロセス

本発明は式(III)の化合物を式(II)のカルバモイルクロリドと反応することにより式(I)のトランス−N−{4−{2−[4−(2,3−ジクロロフェニル)−ピペラジン−1−イル]−エチル}−シクロヘキシル}−カルバミド誘導体を調製するためのプロセスに関するもので、それは、溶媒と水酸化アルカリ濃厚水溶液の混合物中、温度40−100℃、相間移動触媒の存在下で反応を行い、相を分離し有機層を洗浄しついで溶媒を除去して得られた式(I)の化合物を重さが一定になるまで乾燥することからなる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は式(I)のトランス−N−{4−{2−[4−(2,3−ジクロロフェニル)−ピペラジン−1−イル]−エチル}−シクロヘキシル}−カルバミド誘導体調製のための新規プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
一般式(I)の化合物はハンガリー国特許第P0302451号明細書にD3/D2受容体拮抗薬としてはじめて開示された。ハンガリー国特許第P0302451号明細書では式(I)の化合物の調製に対して3つの反応経路(A、B、C法)が与えられている。A法によれば、アミン誘導体を(チオ)カルバモイルクロリド化合物と反応させる。実施例3、ハンガリー国特許第P0302451号明細書のA法では、アミンをN,N−ジメチル−カルバモイルクロリドと無水条件で、トリエチルアミン存在下で反応させる。
【0003】
工業的観点から上記の“A”法の難点は反応時間が長く(48時間)、収率が低い(65%)ことである。その上、得られる最終生成物はさらに再結晶ステップで精製しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】ハンガリー国特許第P0302451号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
我々の目的は先行プロセスの欠点がないプロセスを与えること、すなわち、式(I)の化合物を反応時間がより短く収率がより良く容易に仕立てあげられる方法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実験の過程で、我々は驚くべきことに式(III)の化合物またはその塩および/または水和物および/または溶媒和物が、
【0007】
【化1】

【0008】
およびRが独立に、
‐ 任意にアリール基で置換された直鎖または分岐したC1−6アルキル、または
‐ 1−3個の二重結合を含むC2−7のアルケニル基、または
‐ 任意に1またはそれ以上のC1−6アルコキシ、トリフルオロ−C1−6アルコキシ、C1−6アルコキシカルボニル、C1−6アルカノイル、アリール、C1−6アルキルチオ、ハロゲン、またはシアノ基で置換された単環、二環または三環アリール基、または
‐ 任意に置換された単環、二環または三環シクロアルキル基、または
‐ RおよびRは隣接の窒素原子とともに、任意に置換された、飽和または不飽和の、酸素、窒素または硫黄原子から選ばれるさらなるヘテロ原子を含んでもよい、単環または二環の複素環を形成する
を表す一般式(II)のカルバモイルクロリドと
【0009】
【化2】

【0010】
溶媒と塩基濃厚水溶液の混合物中、相間移動触媒としてテトラアルキル−アンモニウム塩の存在下で反応し、RおよびRが上述の通りである一般式(I)の化合物が
【0011】
【化3】

【0012】
高収率(90%以上)かつ短い反応時間で得られることを見出した。
【0013】
本発明によるプロセスを適用することで、仕上げプロセスが容易になる:有機および水相を分離し、ついで有機相を水で洗浄した後、蒸留によって溶媒を除去して最終生成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明はRおよびRが独立に、
‐ 任意にアリール基で置換された直鎖または分岐したC1−6アルキル、または
‐ 1−3個の二重結合を含むC2−7のアルケニル基、または
‐ 任意に1またはそれ以上のC1−6アルコキシ、トリフルオロ−C1−6アルコキシ、C1−6アルコキシカルボニル、C1−6アルカノイル、アリール、C1−6アルキルチオ、ハロゲン、またはシアノ基で置換された単環、二環または三環アリール基、または
‐ 任意に置換された単環、二環または三環シクロアルキル基、または
‐ RおよびRは隣接の窒素原子とともに、任意に置換された、飽和または不飽和の、酸素、窒素または硫黄原子から選ばれるさらなるヘテロ原子を含んでもよい、単環または二環の複素環を形成してもよい
を表す一般式(I)の化合物
【0015】
【化4】

【0016】
の調整のための新規プロセスに関する。
【0017】
本発明の有利な点は、反応時間がより短くなり、最終生成物が反応混合物からさらに精製することなく高純度かつ収率90%以上で回収されることである。
【0018】
およびRがアリールを表す場合、アリール部分はフェニル、トリル、ナフチルおよびフェナントリル基から選ばれる基でよい。
【0019】
本発明による方法では、式(III)の化合物
【0020】
【化5】

【0021】
あるいはその塩および/またはその水和物および/または溶媒和物をRおよびRが上述の通りである一般式(II)のカルバモイルクロリドと
【0022】
【化6】

【0023】
溶媒および塩基濃厚溶液の混合物中、相間移動触媒の存在下で反応する。このようにして最終生成物がより短い反応時間(9−10時間)でよい収率(90%以上)で得られる。
【0024】
本発明の好ましい実施例では、濃厚塩基は水酸化アルカリ、例えばNaOHまたはKOHの水溶液である。
【0025】
相間移動触媒はアルキル部分がC1−6の直鎖または分岐鎖であるテトラアルキルアンモニウム塩である。適切な相間移動触媒の選択において操作が容易であることは重要な因子である。好ましい相間移動触媒はテトラ−n−ブチルアンモニウム塩またはテトラメチルアンモニウム塩であり、そこで塩を形成するアニオンは硫酸アニオン、塩素アニオンまたは臭素アニオンでよい。
【0026】
本発明によるプロセスで使用できる適切な溶媒は、中性の水と混合しない溶媒、例えばトルエン、ジクロロメタン、クロロベンゼンあるいはキシレンを含む。本発明の好ましい実施例では、好適にはジクロロメタンが溶媒として使用できる。
【0027】
本発明によるプロセスの仕上げ段階では、有機および水相を分離し、ついで有機相を水で洗浄後、溶媒を蒸留で除去して望ましい最終生成物を得る。
【実施例】
【0028】
本発明はさらに以下の実施例によって例示されるがこれに限るものではない。
【0029】
〔実施例1〕
トランス4−{2−[4−(2,3−ジクロロフェニル)−ピペラジン−1−イル]−エチル}−N,N−ジメチルカルバモイル−シクロヘキシルアミンの調製
500mlの四つ首フラスコ中にジクロロメタン180ml、40%苛性ソーダ40ml、臭化テトラ−n−ブチルアンモニウム0.54g(0.002mol)およびN,N−ジメチルカルバモイルクロリド3.12g(0.029mol)を加える。混合物を20−25℃の間の温度で30分間撹拌し、ついで6.24g(0.0145mol)のトランス4−{2−[4−(2,3−ジクロロフェニル)−ピペラジン−1−イル]−エチル}−シクロヘキシルアミン二塩酸を加える。混合物を激しく撹拌しながら予め45−50℃に熱したオイルバス中に置き、窒素下で10時間、沸点まで加熱する。ついで反応混合物を室温まで冷却し、相を分離し有機層を3×80mlの水、ついで80mlの10%塩化ナトリウム溶液で洗浄する。溶媒を真空で除去し、得られた残渣をさらに最高50℃の温度で重さが一定になるまで乾燥する。
乾燥重量:5.7g(92%)
融点:212−214℃
【0030】
〔実施例2〕
トランス4−{2−[4−(2,3−ジクロロフェニル)−ピペラジン−1−イル]−エチル}−N,N−ジメチルカルバモイル−シクロヘキシルアミンの調製
500mlの四つ首フラスコ中にジクロロメタン180ml、40%苛性ソーダ40ml、臭化テトラ−n−ブチルアンモニウム0.54g(0.002mol)およびN,N−ジメチルカルバモイルクロリド3.12g(0.029mol)を加える。混合物を20−25℃の間の温度で30分間撹拌し、ついで6.50g(0.0145mol)のトランス4−{2−[4−(2,3−ジクロロフェニル)−ピペラジン−1−イル]−エチル}−シクロヘキシルアミン二塩酸一水和物を加える。混合物を激しく撹拌しながら予め45−50℃に熱したオイルバス中に置き、窒素下で10時間、沸点まで加熱する。ついで反応混合物を室温まで冷却し、相を分離し有機層を3×80mlの水、ついで80mlの10%塩化ナトリウム溶液で洗浄する。溶媒を真空で除去し、得られた残渣をさらに最高50℃の温度で重さが一定になるまで乾燥する。
乾燥重量:5.7g(92%)
融点:212−214℃
【0031】
〔実施例3〕
トランスN−{4−{2−[4−(2,3−ジクロロフェニル)−ピペラジン−1−イル]−エチル}−シクロヘキシル}−モルホリン−4−炭酸アミドの調製
500mlの四つ首フラスコ中にジクロロメタン400ml、40%苛性ソーダ40ml、臭化テトラ−n−ブチルアンモニウム1.2g(0.0036mol)およびN,N−ジメチルカルバモイルクロリド11g(0.074mol)を加える。混合物を20−25℃の間の温度で30分間撹拌し、ついで15.5g(0.036mol)のトランス4−{2−[4−(2,3−ジクロロフェニル)−ピペラジン−1−イル]−エチル}−シクロヘキシルアミン二塩酸を加える。混合物を激しく撹拌しながら予め45−50℃に熱したオイルバス中に置き、窒素下で4時間、沸点まで加熱する。ついで反応混合物を室温まで冷却し、相を分離し有機層を3×80mlの水、ついで150mlの10%塩化ナトリウム溶液で洗浄する。溶媒を真空で除去し、得られた残渣をさらに最高50℃の温度で重さが一定になるまで乾燥する。
乾燥重量:15.2g(90%)
融点:203−205℃

【特許請求の範囲】
【請求項1】
およびRが独立に、
‐ 任意にアリール基で置換された直鎖または分岐したC1−6アルキル、または
‐ 1−3個の二重結合を含むC2−7のアルケニル基、または
‐ 任意に1またはそれ以上のC1−6アルコキシ、トリフルオロ−C1−6アルコキシ、C1−6アルコキシカルボニル、C1−6アルカノイル、アリール、C1−6アルキルチオ、ハロゲン、またはシアノ基で置換された単環、二環または三環アリール基、または
‐ 任意に置換された単環、二環または三環シクロアルキル基、または
‐ RおよびRは隣接の窒素原子とともに、任意に置換された、飽和または不飽和の、酸素、窒素または硫黄原子から選ばれるさらなるヘテロ原子を含んでもよい、単環または二環の複素環を形成する
を表す一般式(I)の化合物を
【化1】

式(III)の化合物が
【化2】

およびRが上述の通りである一般式(II)のカルバモイルクロリドと
【化3】

反応することによって調整するプロセスで、溶媒と水酸化アルカリ濃厚水溶液の混合物中、40−100℃の間の温度で相間移動触媒の存在下で反応を行い、相を分離して有機層を洗浄し、ついで溶媒を除去し得られた式(I)の化合物を重さが一定になるまで乾燥することからなるプロセス。
【請求項2】
相間移動触媒がテトラアルキルアンモニウム塩であることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
テトラアルキルアンモニウム塩がハロゲン化テトラ−n−ブチルアンモニウムであることを特徴とする請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
テトラアルキルアンモニウム塩が臭化テトラアルキルアンモニウムであることを特徴とする請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
溶媒が不活性の水と混ざらない溶媒であることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
溶媒がトルエン、ジクロロメタン、クロロベンゼンまたはキシレンであることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
反応が45−50℃の間の温度で行われることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。

【公表番号】特表2012−512862(P2012−512862A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541615(P2011−541615)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【国際出願番号】PCT/HU2009/000110
【国際公開番号】WO2010/070371
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(591180314)リヒター ゲデオン ニルバーノシャン ミーケデーレスベニュタールシャシャーグ (33)
【Fターム(参考)】