説明

ピラゾールの調製のための方法

本発明は、式(I)(式中、R1はC1−C4ハロアルキルであり;R2はC1−C6アルキルであり、そしてR3はメチル又はエチルである)の化合物の調製方法であって、
式(II)(式中、置換基は式Iについて定義したとおりである)の化合物と、
式III (式中、R3は式Iについて定義したとおりであり、そしてnは0又は1である)の化合物を反応させることによる方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、置換されたピラゾールの位置選択的なN−アルキル化のための方法、及び置換されたピラゾールの位置選択的なN−アルキル化におけるリン酸トリアルキル又はホスホン酸トリアルキルの使用に関する。
【0002】
N−アルキル化置換ピラゾール、例えば、3−ジフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸エチルエステルは、例えば、WO03/074491に記載されるように、殺真菌剤の調製における価値のある中間体である。
【0003】
WO95/25099に従い、N−アルキル化置換ピラゾールは、塩基性条件下において対応する置換ピラゾールとハロゲン化アルキルを反応させることにより調製することができる。しかしながら、置換ピラゾールのN−アルキル化におけるハロゲン化アルキルの使用は、これらの毒性により問題を有する。さらに、これらの化合物は高価であり、加えてピラゾール環の2つの窒素原子に関して、低度の位置選択性しか示さない。これらの理由により、このような方法は、特にN−アルキル化置換ピラゾールの大規模な調製には不適当である。
【0004】
JP−2000−044541に従い、N−アルキル化置換ピラゾールは、塩基の添加を伴い、対応する置換ピラゾールとカルボン酸ジアルキルエステルを反応させることにより調製することができる。カルボン酸ジアルキルエステルの使用は、これらの化合物の低い反応性のために、一般に塩基の添加による置換ピラゾールの反応性を増大する必要性があるため望ましくない。さらに、このようなN−アルキル化の位置選択性は、一般にピラゾール環上の置換基の化学的性質に依存するため、いくつかのケースにおいてカルボン酸ジアルキルエステルを使用するN−アルキル化は不十分な位置選択性を示す。
【0005】
従って、本発明の目的は、上述の既知の方法の不都合を回避し、そして経済的な利点及び簡単な取り扱い方法において、高収率且つ高品質においてこれらの化合物を調製することを可能にするN−アルキル化置換ピラゾールの新規な調製方法を供することである。
【0006】
従って、本発明は、式I
【化1】

(式中、R1はC1−C4ハロアルキルであり;R2はC1−C6アルキルであり、そしてR3はメチル又はエチルである)の化合物の調製方法であって、
式II
【化2】

(式中、置換基は式Iについて定義したとおりである)の化合物と、
式III
【化3】

(式中、Rは式Iについて定義したとおりであり、そしてnは0又は1である)の化合物を反応させることによる方法に関する。
【0007】
上記の置換基の定義において見られるアルキル基は、直鎖又は分岐鎖であってよく、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル又はtert−ブチル、好ましくはメチル又はエチルであってよい。ハロゲンは、一般にフッ素、塩素、臭素又はヨウ素であり、好ましくはフッ素である。C1−C4ハロアルキル基は、上述のC1−C4アルキル基に由来し、そして好ましくはジフルオロメチル又はトリフルオロメチルである。
【0008】
本発明に従う方法は、好ましくは、式Iの化合物であって、式中、
1がジフルオロメチル又はトリフルオロメチルであり;
2がメチル又はエチルであり、そして/又は
3がメチルである、
化合物の調製のために適当である。
【0009】
本発明に従う方法は、式Iの化合物であって、式中R1がジフルオロメチルである化合物の調製に特に適当である。
【0010】
本発明に従う化合物は、式Iの化合物であって、式中R1がジフルオロメチルであり;R2がエチルであり、そしてR3がメチルである化合物の調製に特に適当である。
【0011】
本発明に従う化合物は、また、式Iの化合物であって、式中R1がトリフルオロメチルであり;R2がエチルであり、そしてR3がメチルである化合物の調製に特に適当である。
【0012】
好ましい方法において、式IIの化合物を、式III の化合物であって、式中nが1である化合物と反応させる。
【0013】
特に好ましい方法において、式IIの化合物を、式III の化合物であって、式中nが1であり、そしてR3がメチルである化合物と反応させる。
【0014】
本発明に従う反応は、好ましくは100℃〜200℃、特には150℃〜200℃の温度範囲において行われる。
【0015】
本発明に従う反応は、無水の、不活性な溶媒中で行うことができる。適当な溶媒は、例えば、キシレン、メシチレン、tert−ブチルベンゼン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、デカリン、ジブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジフェニルエーテル及びアニソールである。本発明に従う方法は、好ましくは溶媒を伴わずに行われる。
【0016】
本発明に従う反応において、式III の化合物は、式IIの化合物に対して等モル量又は過剰量において、好ましくは最大30倍の過剰量において、特には最大10倍の過剰量において、より特には2倍〜8倍の過剰量において使用される。
【0017】
本発明に従う方法は、式I(式中、R1はジフルオロメチルであり、R2はエチルであり、そしてR3はメチルである)の化合物の調製であって、式II(式中、R1はジフルオロメチルであり、R2はエチルである)の化合物と、式III (式中、R3はメチルであり、そしてnは1である)の化合物との反応による調製であって、150℃〜200℃の温度範囲において、溶媒を伴わずに、式III の化合物が式IIの化合物に対して2倍〜8倍の過剰量において使用される調製に特に適当である。
【0018】
式IIの化合物は既知であり、あるいは文献中に知られる方法に類似して調製することができる。例えば、このような化合物は、オルトギ酸トリメチルとの反応、続くヒドラジンとの反応による2ステップ合成法に基づき、3−オキソ−カルボン酸エステルから調製することができる。このような反応は、例えば、JP−2000−044541において記載される。式IIの化合物の調製のための更なる合成経路は、JP−2001−322983において記載され、ここで、例えば、3−トリフルオロメチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸エチルエステルは、3−クロロ−4,4,4−トリフルオロ−2−ホルミル−2−ブテン酸エチルエステルから出発してヒドラジンとの反応により調製される。
【0019】
式III の化合物は、アルキル化剤として既知であり、市販されている。例えば、置換された窒素含有複素環のN−アルキル化は、Journal of the Chemical Society, Perkin Transactions 1, 21, 2506-2508 (1973)及びBulletin of the Chemical Society of Japan, 50, 1510-1512 (1977)に記載される。そこでは、ピラゾールのN−アルキル化において位置選択特性を有するこのようなアルキル化剤は何ら言及されていない。
【0020】
本発明はまた、式IIの化合物の位置選択的アルキル化における式III の化合物の使用に関する。
【0021】
本発明はまた、式IIの化合物の位置選択的アルキル化のための方法であって、ここで式III の化合物がアルキル化剤として使用される方法に関する。
【0022】
本発明は以下の実施例の助けにより説明される。
【実施例】
【0023】
実施例P1: 3−ジフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸エチルエステルの調製:
5.7gの3−ジフルオロメチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸エチルエステル(30mmol)及び25mlのリン酸トリメチル(214mmol)の混合物を180℃の温度で18時間撹拌する。その後250mlの氷水混合物を添加する。生じた反応生成物を濾過し、水で洗浄し、そして50mlの酢酸エチル中に溶かす。有機相を50mlの塩化ナトリウム飽和溶液で洗浄し、そして硫酸ナトリウムで乾燥させ、そして蒸発により濃縮する。3.9g(64%の理論値)の3−ジフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸エチルエステルが結晶形態において得られる(融点59−60℃)。
【0024】
実施例P2: 3−トリフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸エチルエステルの調製:
4.16gの3−トリフルオロメチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸エチルエステル(20mmol)及び10mlのリン酸トリメチル(86.4mmol)の混合物を180℃の温度で16時間撹拌する。その後200mlの氷水混合物を添加する。生じた反応生成物を濾過し、水で洗浄し、そして50mlの酢酸エチル中に溶かす。有機相をそれぞれ50mlの塩化ナトリウム飽和溶液で2回洗浄し、そして硫酸ナトリウムで乾燥させ、そして蒸発により濃縮する。4.0g(90%の理論値)の3−トリフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸エチルエステルが結晶形態において得られる(融点55−57℃)。
【0025】
実施例P3: 3−トリフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸エチルエステルの調製:
2.08gの3−トリフルオロメチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸エチルエステル(10mmol)及び2.3mlのリン酸トリメチル(20mmol)の混合物を180℃の温度で16時間撹拌する。その後200mlの氷水混合物を添加する。生じた反応生成物を濾過し、水で洗浄し、そして50mlの酢酸エチル中に溶かす。有機相をそれぞれ50mlの塩化ナトリウム飽和溶液で2回洗浄し、そして硫酸ナトリウムで乾燥させ、そして蒸発により濃縮する。1.9g(86%の理論値)の3−トリフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸エチルエステルが結晶形態において得られる(融点55−57℃)。
【0026】
以下の式Iの化合物は上記実施例に基づき調製することができる:
【表1】

【0027】
本発明は、高収率に制御された方法において、高度の位置選択性を有し、且つ低コストで置換ピラゾールをアルキル化することを可能にする。
【0028】
本発明の更なる利点は、塩基を添加することなく置換ピラゾールをアルキル化できることである。
【0029】
本発明の方法のための出発物質は、利便性及び取り扱いの容易さにより区別でき、そしてまた安価である。
【0030】
本発明の好ましい態様において、該方法は、溶媒なしに行われ、このような態様は、特に、本発明に従う安価で多様な方法を構成している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

(式中、R1はC1−C4ハロアルキルであり;R2はC1−C6アルキルであり、そしてR3はメチル又はエチルである)の化合物の調製方法であって、ここで
式II
【化2】

(式中、R1及びR2は式Iについて定義したとおりである)の化合物と、
式III
【化3】

(式中、R3は式Iについて定義したとおりであり、そしてnは0又は1である)の化合物を反応させる、方法。
【請求項2】
前記反応が、溶媒の添加なしに行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式III
【化4】

(式中、R3は請求項1において定義したとおりである)の化合物の、
式II
【化5】

(式中、R1及びR2は請求項1において定義したとおりである)の化合物の位置選択的アルキル化における、使用。
【請求項4】
式II
【化6】

(式中、R1及びR2は請求項1において定義したとおりである)の化合物の位置選択的アルキル化のための方法であって、ここで式III
【化7】

(式中、R3は請求項1において定義したとおりである)の化合物がアルキル化剤として使用される、方法。

【公表番号】特表2008−517019(P2008−517019A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−537197(P2007−537197)
【出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【国際出願番号】PCT/EP2005/011232
【国際公開番号】WO2006/045504
【国際公開日】平成18年5月4日(2006.5.4)
【出願人】(500584309)シンジェンタ パーティシペーションズ アクチェンゲゼルシャフト (352)