説明

ピラゾールを生産するプロセス

式Iの化合物を生産する方法であり、a)R1及びR2がいずれもC1〜C6アルキルである式(II)の化合物を、水及び鹸化反応において不活性である水と混和しない有機溶媒の存在下でメチルヒドラジンと反応させて、R1が式(II)として定義される式IIIの化合物を形成する工程;及びb)その化合物を、b1)式Iの化合物のアニオンを形成するために塩基を添加し、それから式Iの化合物を形成するために酸を添加することにより;又はb2)式Iの化合物を形成するために酸を添加することにより;原位置で(in situ)鹸化し、式Iの化合物の形成に至らしめる工程を含む、前記方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺真菌剤の生産における中間体として有用な、3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸を生産するプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
前記3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(式I)の化合物)は、例えば、WO 03/74491、WO 04/35589、WO 03/70705、WO 07/17450、WO 06/120219、及びWO 06/87343に記載される殺真菌剤の生産のために使用され得る。
【0003】
殺真菌剤は、一般に大量生産される。例えば、クロロタロニル(chlorothalonil)は、2005年には23,000メートルトンを超える量が生産されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
よって、本発明の目的は、高い位置選択性(regioselectivity)(3-ジフルオロメチル-及び5-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸の2つの異性体に関して)で、高収率かつ良質の3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸を経済的に有利かつ取り扱い容易な方法で生産することを可能とする、新規プロセスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
よって、本発明は、式I
【化1】

の化合物を生産するプロセスであり、
a)式II
【化2】

[式中、
R1及びR2は、いずれも独立してC1〜C6アルキルである]
の化合物を、水及び鹸化反応において不活性である水と混和しない有機溶媒の存在下でメチルヒドラジンと反応させて、式III
【化3】

[式中、
R1は、式Iにおいて定義される]
の化合物を形成する工程;及び
b)その化合物を、
b1)式Iの化合物のアニオンを形成するために塩基を添加し、それから式Iの化合物を形成するために酸を添加することにより;又は
b2)式Iの化合物を形成するために酸を添加することにより;
原位置で(in situ)鹸化し、式Iの化合物の形成に至らしめる工程
を含む、前記プロセスに関する。
【0006】
式IIIで表される中間体化合物を生産するプロセスは、WO06/090778により公知である。
【0007】
本発明は、処理工程a)、即ち式IIIで表される中間化合物を調製するための改善されたプロセスを更に提供する。従って、式III
【化4】

[式中、
R1はC1-C6アルキルである]
の化合物を生産するプロセスであり、式II
【化5】

[式中、
R1及びR2はいずれも独立してC1-C6アルキルである]
の化合物を、塩基の非存在下で、水及び水と混和しない有機溶媒の存在下で、メチルヒドラジンと反応させることを含む前記プロセスが提供される。
【0008】
前記置換基の定義中に現れるアルキル基は、直鎖でも分岐鎖でもよく、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、又はtert-ブチルであり、好ましくはメチル又はエチルが挙げられる。
【0009】
式IIの化合物は、アルコキシ基-0-R2により置換される二重結合に関して、2つの異性体:E-及びZ-異性体を生じさせる。いずれの異性体も、又はそれらの混合物も、本発明に係るプロセスに使用され得る。
【0010】
好ましいプロセスにおいて、メチルヒドラジンは、処理工程a)において、R1及びR2がいずれもエチルである式IIの化合物と反応させられる。
【0011】
処理工程a):
工程a)において、メチルヒドラジンは式IIの化合物に対して等モル量、準等モル量(sub-equimolar amount)、又は過剰量で使用することができる。好ましくは、メチルヒドラジンは等モル量で使用される。従って、メチルヒドラジン:式IIの化合物の比は、好ましくは1:0.8〜1:1.2である。
【0012】
本発明の一の態様において、メチルヒドラジンは、水溶液の形態、例えば35%(w/w)又は40%(w/w)の水溶液で使用される。
【0013】
工程a)において使用される有機溶媒は、鹸化工程b)においても存在するので、鹸化反応に不活性とする。
【0014】
工程a)において使用される有機溶媒は、水と混和しない。本発明において、「水と混和しない」とは、その有機溶媒が本発明に係るプロセスの条件下で水と混合されたとき、2つの分離された液相が形成されることを意味する。
【0015】
好ましい有機溶媒は、任意的にハロゲン化した芳香族炭化水素溶媒、ケトン溶媒、任意的にハロゲン化した炭化水素溶媒、又はエーテル溶媒である。前記定義においてハロゲンは一般にフッ素、塩素、臭素、及び/又はヨウ素であり、好ましくはフッ素、臭素、及び/又は塩素である。
【0016】
好ましい「任意的にハロゲン化した芳香族炭化水素溶媒」は、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、及びジクロロベンゼンであり;より好ましくはトルエン及びキシレンであり;最も好ましくはキシレンである。
【0017】
好ましい「ケトン溶媒」は、メチルイソブチルケトンである。好ましい「任意的にハロゲン化した炭化水素溶媒」は、ペンタン、ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン、クロロホルム、及び四塩化炭素であり;より好ましくはシクロヘキサンである。好ましい「エーテル溶媒」は、ジオキサンである。
【0018】
好ましい有機溶媒は、任意的にハロゲン化した芳香族炭化水素溶媒、及び/又はケトン溶媒であり;より好ましくは芳香族炭化水素溶媒、及び/又はケトン溶媒である。本発明の一の態様において、前記有機溶媒は芳香族炭化水素溶媒、特にキシレンである。本発明の一の態様において、前記有機溶媒はメチルイソブチルケトンである。
【0019】
式IIの化合物は、既知であるか、又は文献において既知のプロセスと同様の手法で調製され得る。例えば、そのような化合物は、WO 93/11117に記載の出発物質である3-オキソ-カルボン酸エステルから調製され得る。
【0020】
処理工程a)は、好ましくは、-20℃〜50℃、好ましくは0℃〜50℃、特に10℃〜25℃の範囲の温度において実行される。
【0021】
処理工程a)における反応時間は、一般には15分〜48時間、好ましくは15分〜18時間、より好ましくは15分〜5時間、又は1〜5時間である。前記工程は、常圧、加圧、又は減圧下で実行され得る。
【0022】
一の態様において、工程a)において塩基が使用される。前記塩基は、好ましくは、水酸化物等の無機塩基、例えばLiOH、NaOH、又はKOH等から選択される。好ましい塩基は、NaOH又はKOH等の水酸化物であり;特に好ましくはNaOHである。
【0023】
工程a)において塩基が使用されるとき、好ましくは、反応開始時に、式IIの化合物に対して少なくとも1当量の水が添加され;より好ましくは少なくとも10当量の水が添加され、より好ましくは10〜30当量の水が添加される。
【0024】
処理工程a)において塩基が使用されるとき、反応開始時に添加される水と有機溶媒とのモル比は、好ましくは20:1〜1:20であり;より好ましくは10:1〜1:10である。一の態様において、前記モル比は、10:1〜1:1である。本発明に係るこのモル比は、工程a)の縮合反応による式IIの化合物の消費により形成される水を含まない。最高で、式IIの化合物に対して1当量の水が形成され得る。
【0025】
塩基を使用する工程a)を遂行する一例は:
-メチルヒドラジン及び前記塩基を含む水溶液の調製、
-式IIの化合物の有機溶媒溶液の調製、及び
-両溶液の混合
を含む。
【0026】
前記態様において、メチルヒドラジン及び前記塩基を含む前記水溶液を、前記式IIの化合物の有機溶媒溶液に添加してもよく、その逆でもよい。一の態様において、前記式IIの化合物の有機溶媒溶液は、メチルヒドラジン及び前記塩基を含む前記水溶液に添加される。好ましくは、前記塩基は、使用される式IIの化合物に対して0.1〜0.5当量の量で工程a)中に存在する。
【0027】
もう一つの好ましい態様において、工程a)は、塩基を添加せずに遂行され得る。この態様において、メチルヒドラジン:式IIの化合物のモル比は、1:0.8〜1:0.2、好ましくは1:1であることが好ましい。メチルヒドラジンと有機溶媒とのモル比は、好ましくは1:1〜1:20、より好ましくは1:1〜1:5、更により好ましくは1:1〜1:2である。35%メチルヒドラジンと有機溶媒との質量比は、好ましくは1:1〜1:20、より好ましくは1:1〜1:5、更により好ましくは1:1〜1:1.5である。式IIの化合物と有機溶媒とのモル比は、好ましくは1:1〜1:20、より好ましくは1:1〜1:5、更により好ましくは1:2〜1:4である。式IIの化合物と有機溶媒との質量比は、好ましくは1:1〜1:20、より好ましくは1:1〜1:5、更により好ましくは1:1〜1:2である。
【0028】
本態様において、前記プロセスは、-20℃〜50℃で、好ましくは0℃〜50℃で、より好ましくは0℃〜25℃で、そして特に10〜25℃で遂行されるのが好ましい。
【0029】
工程a)において塩基が使用されないとき、35%(w/w)又は40%(w/w)水溶液等のメチルヒドラジン水溶液が使用される場合、更なる水の添加は不要である。しかしながら、40%w/wメチルヒドラジンが出発物質として使用されるとき、前記メチルヒドラジンが35%w/wにまで希釈されるのに十分な水を添加するのが好ましい。
【0030】
本態様に係る工程a)の一例は:
-メチルヒドラジンを含む水及び有機溶媒溶液の調製、
-式IIの化合物の有機溶媒溶液の調製、及び
-両溶液の混合
を含む処理工程である。
【0031】
前記態様において、メチルヒドラジンを含む前記溶液を、前記式IIの化合物の有機溶媒溶液に添加してもよく、その逆でもよい。一の態様において、前記式IIの化合物の有機溶媒溶液は、メチルヒドラジンを含む前記水溶液に添加される。
【0032】
処理工程b)
工程b)、即ち鹸化は、式IIの化合物の単離を行わず(式IIの化合物が、原位置で使用される)、工程a)の直後に実行される。これは、本発明に係るプロセスの重要な長所であり、特に殺真菌剤の大規模生産を考慮する場合、顕著なコストの節減をもたらす。本発明において、工程b)は、工程b1)(アルカリ鹸化)以下、又は工程b2)(酸性鹸化)以下に記載されるようにして実行され得る。
【0033】
処理工程b1)
工程b1)は、2つの準工程:
i)塩基の添加による、式Iの化合物のアニオン(「アニオン」)の形成、及び
ii)その後の酸の添加による、式Iの化合物(「遊離酸」)の形成
に分割され得る。
【0034】
前記塩基は、好ましくは、水酸化物、例えばLiOH、NaOH、又はKOH等の水酸化物の如き無機酸から選択される。好ましい塩基は、NaOH又はKOH等の水酸化物であり;特に好ましくはNaOHである。
【0035】
アニオン形成に適切な塩基の量は、例えば、工程a)において使用される式IIの化合物に対して少なくとも1当量、好ましくは1〜5当量;より好ましくは1〜3当量である。
【0036】
アニオンの形成は、好ましくは、40℃〜100℃、好ましくは40℃〜70℃のの温度範囲で実行される。アニオン形成の反応時間は、一般に15分〜48時間、好ましくは15分〜18時間、より好ましくは15分〜5時間、又は1〜5時間である。前記アニオン形成は、常圧、加圧、又は減圧下で、好ましくは常圧下で実行され得る。
【0037】
本発明の一の態様において、塩基は、工程a)において既に存在している。前記塩基は、典型的には、後に工程b1)におけるアニオン形成に使用されるものと同じであり、そして好ましくは、NaOH又はKOH等の水酸化物(特に好ましくはNaOH)である。本態様に係る工程a)の一例は:
-メチルヒドラジン及び前記塩基を含む水溶液の調製、
-式IIの化合物の有機溶媒溶液の調製、及び
-両溶液の混合
を含む処理工程である。
【0038】
前記態様において、メチルヒドラジン及び前記塩基を含む前記水溶液を、式IIの化合物の前記有機溶媒溶液に添加してもよく、その逆でもよい。幾つかの態様において、式IIの化合物の前記有機溶媒溶液は、メチルヒドラジン及び前記塩基を含む前記水溶液に添加される。
【0039】
好ましくは、前記塩基は、工程a)において、使用される式IIの化合物に対して0.1〜0.5当量の量で存在し、そして、アニオンの形成のために、塩基の総量が、式IIの化合物に対して、少なくとも1当量、好ましくは1〜5当量;より好ましくは1〜3当量となるように、更なる塩基が添加される。一の態様において、式IIの化合物に対して約0.2当量が、工程a)において存在する。
【0040】
アニオンの形成の後、前記アニオンは、典型的には、その反応混合物の水相中に存在する。本発明の好ましい態様において、前記水相は、酸が添加される前に有機相から分離される。
【0041】
本発明の一の態様において、酸は、前記水相のpH値を7以下、好ましくは6以下、より好ましくは5以下に調整するように添加される。
【0042】
適切な酸は、塩酸若しくは硫酸等の無機酸;又は蟻酸、酢酸、若しくはプロピオン酸等の有機酸である。無機酸が好ましく、そして塩酸が特に好ましい。
【0043】
前記酸は、好ましくは、50℃〜90℃、特に85℃〜90℃の温度範囲で添加される。
【0044】
遊離酸の形成の反応時間は、一般に15分〜48時間、好ましくは15分〜18時間、より好ましくは15分〜5時間である。前記遊離酸形成は、常圧、加圧、又は減圧下で、好ましくは常圧下で実行され得る。
【0045】
本発明のもう一つの重要な態様において、工程a)において塩基が使用されず、そして工程b1)を遂行するために塩基が必ず添加される。前記塩基は、好ましくはNaOH又はKOH等の水酸化物(特に好ましくはNaOH)である。本態様に係る工程a)の一例は:
-メチルヒドラジンを含む水及び有機溶媒溶液の調製、
-式IIの化合物の有機溶媒溶液の調製、及び
-両溶液の混合
を含む処理工程である。
【0046】
前記態様において、メチルヒドラジンを含む前記溶液を、前記式IIの化合物を含む有機溶媒溶液に添加してもよく、その逆でもよい。一の態様において、前記式IIの化合物の有機溶媒溶液は、メチルヒドラジンを含む前記溶液に添加される。
【0047】
塩基は、アニオンを形成するために、存在する塩基の量が、式IIの化合物の量に対して少なくとも1当量、好ましくは1〜5当量;より好ましくは1〜3当量となるように添加される。
【0048】
アニオンを形成した後、前記アニオンは、典型的には、その反応溶液の水相中に存在する。本発明の好ましい態様において、前記水相は、前記酸が添加される前に、有機相から分離される。
【0049】
本発明の一の態様において、酸は、前記水相のpH値を7以下、好ましくは6以下、より好ましくは5以下に調整するように添加される。
【0050】
適切な酸は、塩酸若しくは硫酸等の無機酸;又は蟻酸、酢酸、若しくはプロピオン酸等の有機酸である。無機酸が好ましく、塩酸が特に好ましい。
【0051】
前記酸は、好ましくは50℃〜95℃、特に80℃〜95℃の温度範囲で添加される。
【0052】
遊離酸の形成のための反応時間は、一般に15分〜48時間、好ましくは15分〜18時間、より好ましくは15分〜5時間、又は1〜5時間である。前記遊離酸形成は、常圧、加圧、又は減圧下で、好ましくは常圧下で実行され得る。
【0053】
処理工程b2)
処理工程b2)において、式Iの化合物(「遊離酸」)は、酸性鹸化により直接形成される。
【0054】
工程b2)において使用される酸は、典型的には塩酸若しくは硫酸等の無機酸;又は蟻酸、酢酸、又はプロピオン酸等の有機酸である。無機酸が好ましく、そして塩酸が特に好ましい。
【0055】
好ましい酸の量は、工程a)において使用される式IIの化合物に対して少なくとも0.01当量、より好ましくは0.01〜5当量;更により好ましくは1〜5当量、最も好ましくは1〜3当量である。
【0056】
遊離酸の形成は、好ましくは、40℃〜100℃、特に40℃〜60℃の温度範囲で実行される。反応時間は、一般に15分〜48時間、好ましくは15分〜18時間、より好ましくは15分〜5時間、又は1〜5時間である。前記遊離酸形成は、常圧、加圧、又は減圧下で、好ましくは常圧下で実行され得る。
【0057】
典型的には、式IIの化合物は工程a)の後に有機相中に存在しているので、本発明の好ましい態様において、工程b2)において酸が添加される前に、有機相は水相から分離される。
【0058】
処理工程b1)又はb2)の遂行後の式Iの化合物の単離:
上記典型的なプロセス条件の下で、プロセス工程b1)又はb2)の遂行後、式Iの化合物は沈殿し、そして容易に単離され得る。典型的には、これは、冷却後の濾過によりなされる。
【0059】
本発明は、高い収量で、高度な位置選択性で、そして低コストで、式Iの化合物を生産することを可能とする。
【0060】
本発明の更なる長所は、メチルヒドラジンが水で希釈された状態で使用され得て、実質的に純粋な形態でメチルヒドラジンを使用するよりも危険性が低いことである。この長所は、農業化学における大規模生産において、本発明を更に有用なものとする。
【実施例】
【0061】
本発明は、以下の実施例を用いて例示される。
【0062】
実施例P1:キシレン中で、工程a)及びb1)を使用する、3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸の製造:
処理工程a):
300mmolのメチルヒドラジン(35%(w/w)水溶液の形態で)及び60mmolのNaOH(30%(w/w)水溶液の形態で)は、75gの水中に溶解される(水の総量は、式IIの化合物に対して19.7当量となる)。90gのキシレン(式IIの化合物に対して2.8当量)中の2-[1-エトキシ-メト-(Z)-イリデン]-4,4-ジフルオロ-3-オキソ-酪酸エチルエステルが、15℃で30分かけて添加される。その反応混合物は、25℃で30分間撹拌される。
【0063】
処理工程b1):
450mmolのNaOH(30%(w/w)水溶液の形態で)が添加され、そしてその反応混合物は、65℃で45分間攪拌される。
【0064】
65℃で水相が有機相から分離され、そして、95℃で予め加熱された50gの水及び570mmolのHCl(32%(w/w)溶液の形態で)の溶液に添加される。その反応混合物は、95℃で10分間撹拌され、そして沈殿が形成される。
【0065】
3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸の単離:
前記懸濁物は、3時間かけて25℃まで冷却され、そしてその沈殿は、濾過により回収され、0℃の75gの水で2回洗浄され、そして真空下で60℃で乾燥される。3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸は、結晶の状態で収得される(m.p.:204℃;収率:88%;要/不要異性体の比:99.99:0.01)。「所望の異性体」は、3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸であり;「望ましくない異性体」は、5-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸である。
【0066】
実施例P2:処理工程a)及びb)を使用する、3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸の調製
実施例P2において、異なる溶媒が試験される。異なる溶媒を使用する以外は、全ての反応条件は、上の実施例P1に記載されているものと同じである。収量及び位置選択性は、水溶液中の式Iの化合物のアニオンの段階で、即ち、水相を分離し、そしてその水相を前記HCl溶液に添加する前の段階で測定される。実施例2において、工程a)における塩基-溶液の量は、水で置き換えられた。比較実施例C1(有機溶媒不使用)において、有機溶媒の量は水で置き換えられ、そして前記2-[1-エトキシ-メト-(Z)-イリデン]-4,4-ジフルオロ-3-オキソ-酪酸エチルエステルは、純粋な形態で添加された。比較実施例C2において、水と混和する有機溶媒であるエタノールが使用された。
【0067】
【表1】

【0068】
実施例P3:塩基の非存在下での、3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸エチルの調製
50.0gのキシレン及び4.7gの水に溶解された0.25molのメチルヒドラジンの40%溶液が調製された。100.0gのキシレン中の2-[1-エトキシ-メト-(Z)-イリデン]-4,4-ジフルオロ-3-オキソ-酪酸エチルエステルは、20〜25℃の温度で、30〜60分かけて、前記メチルヒドラジンに添加された。その反応混合物は、15分間撹拌された。前記反応物(reaction mass)の相は分離した。
【0069】
実施例P4:3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸の調製
P3において収得された有機相に、19gの水及び0.51molの30%NaOHが添加され、そして60〜65℃まで加熱された。その反応物は、60〜65℃で45分間撹拌された。アルカリ水相(生産物相)は、80〜85℃で、20.0gの水及び0.54molのHClの32%HCl水溶液に添加された。その反応物は、80〜85℃で、5〜10分間撹拌された。その懸濁物は、80〜85℃から0〜5℃まで冷却された。その懸濁物は濾過され、そして結晶は42.5gの水で2回洗浄された(0℃、置換洗浄(displacement-washing))。その生産物は、60℃で、減圧下で乾燥された。
【0070】
更なる実施例は、下の表に示されている。言及されている項目以外は、反応物質及び条件は実施例P3及びP4と同じである。使用されたメチルヒドラジンは35%であり、更なる水は添加されなかった。キシレン:メチルヒドラジンのw/w比は、60:40であり、そしてキシレンと2-[1-エトキシ-メト-(Z)-イリデン]-4,4-ジフルオロ-3-オキソ-酪酸エチルエステルとのw/w比は、63:37であった。
【0071】
【表2】

【0072】
更なる実施例は、下の表に示されている。言及されている項目以外は、反応物質及び条件は実施例P3及びP4と同じである。
【0073】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

の化合物を生産する方法であり、
a)式II
【化2】

[式中、
R1及びR2は、いずれも独立してC1〜C6アルキルである]
の化合物を、水及び鹸化反応において不活性である水と混和しない有機溶媒の存在下でメチルヒドラジンと反応させて、式III
【化3】

[式中、
R1は、式Iにおいて定義される]
の化合物を形成する工程;及び
b)その化合物を、
b1)式Iの化合物のアニオンを形成するために塩基を添加し、それから式Iの化合物を形成するために酸を添加することにより;又は
b2)式Iの化合物を形成するために酸を添加することにより;
原位置で(in situ)鹸化し、式Iの化合物の形成に至らしめる工程
を含む、前記方法。
【請求項2】
R1及びR2がいずれもエチルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記有機溶媒が、ハロゲン化されていてもよい芳香族炭化水素溶媒、ケトン溶媒、ハロゲン化されていてもよい炭化水素溶媒、又はエーテル溶媒である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記有機溶媒が芳香族炭化水素溶媒である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記有機溶媒がキシレンである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記式IIIの化合物が、b1)前記式Iの化合物のアニオンを形成するために塩基を添加し、そして前記式Iの化合物を形成するために酸を添加することにより鹸化される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
酸を添加する前に水相が単離される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
工程a)が、-20℃〜50℃の反応温度で実行され、そして工程b1)が50℃〜100℃の反応温度で実行される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記式IIIの化合物が、b2)式Iの化合物を形成するために酸を添加することにより鹸化される、請求項1〜5にいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記酸が、工程a)において使用される式IIの化合物に対して少なくとも0.01当量で使用される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記酸が添加される前に有機相が単離され、そして前記酸がその有機相に添加される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
工程a)が、-20℃〜50℃の反応温度で実行され、そして工程b2)が50℃〜100℃の反応温度で実行される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
工程a)において塩基が添加されない、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
工程a)が、メチルヒドラジン:式IIの化合物を1:0.8〜1:1.2のモル比で使用して実行される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
工程a)が、-20℃〜50℃の反応温度で実行される、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
工程a)が、メチルヒドラジドと有機溶媒とを1:1〜1:20の比率で使用して実行される、請求項13〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
工程a)において塩基が存在する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
プロセス工程a)において、式IIの化合物に対して少なくとも1当量の水が反応開始時に添加される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記反応開始時に添加される水と前記有機溶媒との間のモル比が、20:1〜1:20である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
工程a)において水酸化物が存在し、かつ、式IIIの化合物が、b1)式Iの化合物のアニオンを形成するために水酸化物塩基を添加し、それから式Iの化合物を形成するために酸を添加することにより鹸化される、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
工程a)において、前記水酸化物塩基が式IIの化合物に対して0.1〜0.5当量で存在し、そして工程b1)において、前記水酸化物塩基の総量が、使用される式IIの化合物の量に対して少なくとも1当量で存在する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
式III
【化4】

[式中、
R1は、C1〜C6アルキルである]
の化合物を生産する方法であり、式II
【化5】

[式中、
R1及びR2は、いずれも独立してC1〜C6アルキルである]
の化合物を、塩基の非存在下で、水及び水と混和しない有機溶媒の存在下で、メチルヒドラジンと反応させることを含む前記方法。

【公表番号】特表2010−528071(P2010−528071A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509705(P2010−509705)
【出願日】平成20年5月13日(2008.5.13)
【国際出願番号】PCT/EP2008/003841
【国際公開番号】WO2008/145257
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(500584309)シンジェンタ パーティシペーションズ アクチェンゲゼルシャフト (352)
【出願人】(500371307)シンジェンタ リミテッド (141)