説明

ピンジャック

【課題】 表裏間の連通に起因する音響振動の漏れや外部の塵埃等の進入の問題を簡明な構成で解決すること。
【解決手段】 ハウジング1の正面にのみ開口する二つの取付空間1a2、1b2にコンタクト部材2a、2bのコンタクト部2a1、2b1を組み込み、ハウジング1の正面及び基板に接合する一側にのみ開口する延長空間1a3、1b3にコンタクト部材2a、2bのターミナル部2a2、2b2を組み込む。更に取付空間1a2、1b2上の嵌合空間1a1、1b1に台座部3a、3aを嵌合させてブッシュ部材3、3を取り付け、ブッシュ部材本体3c、3cにキャップ部4c、4cを外装しつつ、ハウジング1の正面にアース金具4を取り付ける。アース金具4のターミナル部4aは、コンタクト部材2aのターミナル部2a2を配した延長空間1a3の開口部付近に、深さ位置を変えて配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーディオ機器の音声信号その他の種々の信号の伝達や各種電気乃至電子機器への電源供給路の接続のためにこれと対になるピンプラグと共に用いられるピンジャックに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のピンジャックは、円筒状のブッシュ部を突出させたハウジングと、該ハウジング中に後部から装入されたコンタクト部材と、前記ブッシュ部も含めて前記ハウジングの正面側に外装したアース金具とからなり、該アース金具及び前記コンタクト部材から各々延長するターミナル部は、接続対象との関係で、該ハウジングの後方又は側方に突出するように構成されている。前記コンタクト部材は、そのコンタクト部が、前記ブッシュ部のプラグ挿入孔から挿入されたプラグのピン部に接触するように位置決めされているのは云うまでもない。
【0003】
このようなピンジャックは、コンタクト部材をハウジングにその後部から装入して取り付けるものであるため、ハウジングの後部が開口しており、通常、ブッシュ部のプラグ挿入孔の開口部から後部の開口部までが連通状態となっている。そのため、この種のピンジャックを、例えば、音響機器のスピーカボックスに配された音声信号の授受用の接続手段として使用する場合等には、スピーカから放射される音響振動が該ピンジャックを通じて漏れるような問題を生じる。またいずれの機器に使用する場合であれ、外部の塵埃が機器内部に進入する虞が生じる。
【0004】
例えば、特許文献1、2、3、4のピンジャックは、概ね以上のような構成であり、前記のようなスピーカボックスに配して音声信号の授受に使用するような場合には、前記のような音響振動の漏れの問題があり、そのような用法でない場合であっても、塵埃の進入が極度に問題となるような機器に使用する場合には不都合である。
【0005】
そこで以上のようなハウジングの後部の開口部を閉じるために、開口部にボンド等を塗布するとか、ピンジャック自体を何らかのケースで被覆してしまうというような手段が知られているが、これでは機器に取り付ける際に組立工数を増加させたり、部品点数を増加させるという問題がある。
【0006】
そこで予めハウジング後部に生じている開口部をカバー部材で閉じておくということが考えられる。特許文献5のピンジャックは、以上のような目的で構成されたものではないが、本体部(ハウジング)と、その裏面側に配するカバー部とからなる構成が提案されている。カバー部が本体部と薄肉状のヒンジ部を介して一体成形されたタイプ及び各々個別に成形され、後に組み合わされるタイプのものが提案されている。これによれば、前記ピンジャックの表裏が連通することにより生じる問題は解決されるが、いずれにしても形状が複雑で大型であるカバー部のような部品が増加する難点がある。
【0007】
【特許文献1】特開平07−135052号公報
【特許文献2】特開平07−037649号公報
【特許文献3】特開平05−326077号公報
【特許文献4】特開2004−281242号公報
【特許文献5】特開平08−335484号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上の従来技術の問題点を解決し、後に行われる機器への組み込み工程での組立工数を増加させたり、部品点数を増加させたり、更には、複雑な部品の成形等を必要としない、簡明な構成でありつつ、その表裏間の連通に起因する、音響振動の漏れや外部の塵埃等の進入の問題を解決することのできるピンジャックを提供することを解決の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1は、正面及び四側部中の組込対象機器の基板に当接することとなる側部の各々にのみ開口する空間を備えたハウジングと、該ハウジングの正面側から装入してコンタクト部を該空間内に配し、ターミナル部を前記組込対象機器の基板に当接することとなる側部の開口から突出させるコンタクト部材と、該コンタクト部材を該空間に取り付けた後に前記ハウジングの正面側に取り付けるブッシュ部材であって、その取付位置を、プラグ挿入孔が該空間に連通し、かつ正面から該プラグ挿入孔に挿入したプラグのピン部が該コンタクト部材のコンタクト部に接触し得るように位置決めしたブッシュ部材と、該ブッシュ部材にキャップ部を外装しつつ該ハウジングの正面に配し、アース端子を前記組込対象機器の基板に当接することとなる側部の開口から突出させるアース金具と、で構成したピンジャックである。
【0010】
本発明の2は、本発明の1のピンジャックに於いて、前記コンタクト部材を、フォーク状のコンタクト部と、その基部から該コンタクト部と直交する方向に延長し、該コンタクト部を前記ハウジングの前記空間に配した場合に、その底部に沿って前記組込対象機器の基板に当接することとなる側部の開口に延長状態となり、かつ該開口から突出することとなるターミナル部とで構成し、前記ブッシュ部材を、軸心に沿ってプラグ挿入孔を備えた円筒状のブッシュ部材本体と、該ブッシュ部材本体の裏面側から突出させた抑え脚であって、該ブッシュ部材本体を前記ハウジングの正面側に取り付けた場合に、前記空間に配した前記コンタクト部から延長するターミナル部を、その先端で、該空間の底部に押し付け固定し得るように構成した抑え脚とで構成し、前記アース金具を、前記ハウジングの正面側に配した前記ブッシュ部材本体に外装するキャップ部と、該ハウジングの正面側に当接状態に配するカバー部と、該カバー部の二箇所以上に構成した爪片であって、該ハウジングに形成した係止溝に挿入係止し得る爪片と、該カバー部から、前記組込対象機器の基板に当接することとなる側部の開口に突出させるべく延長したターミナル部とで構成したものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の1のピンジャックによれば、ブッシュ部材をハウジングとは別個に構成し、コンタクト部材を正面側からハウジング内に取り付けた後に、該ブシュ部材を該ハウジングの正面に取り付けるようにしたものであるため、ハウジングの後部を閉じた構成にすることが可能となる。それ故に、ハウジングの後部が開口していることに起因する音漏れや塵埃の進入の問題を確実に解決することができることになる。即ち、ハウジングにコンタクト部材の取付のための後部開口が不要になり、そのため、ブッシュ部材のプラグ挿入孔と該後部開口とが連通することで生じるピンジャック表裏間の音漏れ、空気の流通、これに起因する塵埃の機器中への進入等の問題が無くなるものである。
【0012】
本発明の2のピンジャックによれば、後部を閉じたハウジングによる簡単に組立可能なピンジャックを容易に構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
発明を実施する最良の形態を以下に示す一実施例に基づいて説明する。
【0014】
この実施例のピンジャックは、図1及び図2に示すように、その一対を一組として構成したものであり、基本的に、ハウジング1と、これに組み込まれる二つのコンタクト部材2a、2b、ブッシュ部材3、3及び一つのアース金具4とで構成したものである。
【0015】
前記ハウジング1は、図1〜図4に示すように、耐熱性かつ絶縁性の樹脂で成形した概ね直方体状をなす部材であり、その正面及び一側部に開口した二つの空間1a、1bを備えたものである。該空間1a、1bは、それぞれ一つのピンジャックを構成するための要素であり、各々コンタクト部材2a又は2b及びブッシュ部材3の取付用として、並びに接続対象であるプラグのピン部を挿入する挿入孔の先端部を構成する役割を担当する。なお、この実施例では、前記ハウジング1の一側部は、組込対象機器の基板に接合状態に取り付ける取付面となる側部であり、ハウジング1の長さ方向の一端部となる側部である。
【0016】
該空間1a、1bは、図2(a)、(c)、図3(a)及び図4(a)に示すように、ハウジング1の長さ方向に沿って並べて構成したものである。
該空間1a、1bのハウジング1の正面側に開口する部位は、同図に示すように、前記ブッシュ部材3、3の台座部3aを嵌め込むための浅い嵌合空間1a1、1b1と、該各嵌合空間1a1、1b1の中心に形成した、前記コンタクト部材2a、2bのコンタクト部2a1、2b1を取り付ける取付空間1a2、1b2と、該取付空間1a2、1b2から前記一側部に連通開口する、前記コンタクト部材2a、2bのターミナル部2a2、2b2を配する延長空間1a3、1b3とで構成したものである。
【0017】
前記嵌合空間1a1、1b1は、図3(a)に示すように、平面から見てほぼ正方形に形成した凹部空間であり、図7(a)、(e)に示すように、平面又は底面から見て概ね正方形であるブッシュ部材3、3の台座部3aを嵌合し得るように構成してある。その深さも、図2(a)、(b)、(c)及び図4(a)、(b)に示すように、該台座部3a、3aの厚みに対応する寸法に構成してある。
【0018】
前記取付空間1a2、1b2は、この実施例では、図3(a)に示すように、それぞれ平面から見て、一方がハウジング1の長さ方向に沿って延び、他方がこれと交差する概ね十字状の溝空間に構成し、前記一側部から遠い方の取付空間1a2には、該ハウジング1の長さ方向に沿った溝空間の、同図中右側に沿った部位に、更に長さ方向に延長して、コンタクト部材2aのコンタクト部2a1を構成する一対のフォーク片の各々を嵌合する取付溝1a21、1a21を形成する。なお、この取付溝1a21、1a21は、それらの間の中心がハウジング1に取り付けられるブッシュ部材3のプラグ挿入孔3c1の中心軸と一致するように位置決めする。更に該取付溝1a21、1a21は、上記一対のフォーク片がプラグのピン部の挿入によって拡開する際に、それを許容できるように、上部側がその拡開方向に拡大した状態に構成する。また該取付空間1a2のハウジング1の長さ方向に交差する側の溝空間の両端側は、各々前記ブッシュ部材3の抑え脚3b、3bを進入嵌合させる押圧空間1a22、1a22ともなる。
【0019】
前記一側部に近い方の取付空間1b2には、該ハウジング1の長さ方向に沿った溝空間の、図3(a)中左側に沿った部位に、更に長さ方向に延長して、コンタクト部材2bのコンタクト部2b1を構成する一対のフォーク片の各々を嵌合する取付溝1b21、1b21を形成する。なお、この取付溝1b21、1b21も、それらの間の中心がハウジング1に取り付けられるブッシュ部材3のプラグ挿入孔3c1の中心軸と一致するように位置決めする。
【0020】
以上から分かるように、前記一側部に遠い方の取付空間1a2と近い方の取付空間1b2とは、その十字状の溝空間の内、該ハウジング1の長さ方向に沿った溝空間の位置が異なる。前者の取付空間1a2のハウジング1の長さ方向に沿った溝空間は、中心位置である取付溝1a21、1a21の左側(図3(a)中)に位置し、後者の取付空間1b2のハウジング1の長さ方向に沿った溝空間は、中心位置である取付溝1b21、1b21の右側(図3(a)中)に位置するようになっている。
【0021】
また前記取付溝1b21、1b21は、上記一対のフォーク片がプラグのピン部の挿入によって拡開する際に、それを許容できるように、上部側がその拡開方向に拡大した状態に構成するものとする。
更に又該取付空間1b2のハウジング1の長さ方向に交差する側の溝空間の両端側は、各々前記ブッシュ部材3の抑え脚3b、3bを進入嵌合させる押圧空間1b22、1b22ともなるものである。
【0022】
前記取付空間1a2、1b2、取付溝1a21、1b21及び押圧空間1a22、1b22の深さは、図2(a)、(b)に示すように、前記コンタクト部材2a、2bのコンタクト部2a1、2b1の基部からこれを構成するフォーク片の先端までの高さに一致させる。
【0023】
前記二つの延長空間1a3、1b3の内、前者は、前記ハウジング1の一側部から遠い方の嵌合空間1a2から延長し、後者は、近い方の取付空間1b2から延長したものである。前者の延長空間1a3は、図3(a)に示すように、前記取付空間1a2の、ハウジング1の長さ方向と交差する側の溝空間の、同図中右側の端部から更に僅かに右側に延長した上で、これと直交する方向に向け、前記一側部に向かって延長したものである。なおこの延長空間1a3は、途中で前記取付空間1b2の、ハウジング1の長さ方向と交差する側の溝空間の右端側を交差して通過する状態となる。また後者の延長空間1b3は、これも図3(a)に示すように、前記取付空間1b2の、ハウジング1の長さ方向と交差する側の溝空間の、同図中左側の端部から更に僅かに左側に延長した上で、これと直交する方向を向け、前記一側部に向かって延長したものである。
【0024】
該延長空間1a3、1b3は、いずれもその深さは、図2(b)、(c)、図3(d)及び図4(b)に示すように、前記取付空間1a2、1b2、取付溝1a21、1b21、押圧空間1a22、1b22と同一とし、かついずれも先に述べたように、前記一側部に開口するものとする。また該延長空間1a3、1b3は、いずれもそのどの部位でもハウジング1の正面側にも開口したものとする。
【0025】
なお、該延長空間1a3、1b3の内、前者は、前記したように、該コンタクト部材2aのターミナル部2a2を配することを目的とするものであるが、図2(c)に示すように、これは、その底部側に配するものとし、後述するように、この延長空間1a3の開口部付近を前記アース金具4のターミナル部4aの突出口と兼ねさせ、このターミナル部4aは、該延長空間1a3の深さ方向途中から突出させるものとする。
また前記コンタクト部材2a、2bのコンタクト部2a1、2b1を取り付ける取付空間1a2、1b2は、その中心の深さ方向途中までをプラグのピン部を挿入する挿入空間と兼ねるものとする。
【0026】
前記ハウジング1の正面側には、図2(a)、図3(a)及び図4(a)に示すように、その長さ方向の両端付近に、その正面側に配するアース金具4の二つの爪片4b、4bを係止する係止溝1c、1cを形成したものとする。またハウジング1の長さ方向の一方の側部には、図1(a)、図3(a)及び図4(c)に示すように、ボルトをねじ込み、上記アース金具4と共に、該ハウジング1を対象の機器類のケース等に固定するためのネジ下孔1dを開口したものとする。
【0027】
前記コンタクト部材2a、2bの内、前者は、前記ハウジング1の前記一側部から遠い方の取付空間1a2に取り付けるそれであり、特に図5(a)〜(d)に示すように、一対のフォーク片からなるコンタクト部2a1と、その基部からこれと直交する一方、即ち、該コンタクト部2a1のフォーク片の先端側から見た場合に、左側に折り曲げた二つの支持片2a11、2a11と、その基部から該支持片2a11、2a11と逆方向に折り曲げ、途中から該コンタクト部2a1のフォーク片の並びと平行に延長するターミナル部2a2とで構成したものである。該コンタクト部材2aは導電性の金属、この実施例では、黄銅によって全体を一体に構成したものである。
【0028】
前記コンタクト部2a1は、これを構成する一対のフォーク片の先端が内側に膨らみ、その間に進入するプラグのピン部によって拡開されつつこれと電気的に接続し得るように構成してある。これらのフォーク片の各々の途中から基部までには側方に膨らむ補強突条2a1aが構成してあり、また各基部側の背部には、基部側から前記取付溝1a21に装入した場合に抜け戻りを阻止する小三角形の返り突起2a1bが構成してある。なお、該コンタクト部2a1を構成するフォーク片の高さは、前記したところから理解されるように、該取付溝1a21の深さと一致させてある。
【0029】
前記ターミナル部2a2は、図5(a)〜(d)に示すように、取付状態で前記ハウジング1の延長空間1a3内に位置する部分は該延長空間1a3の幅に一致させ、前記ハウジング1の一側部から外部に突出する部分は、それより細幅に構成したものである。またこの幅広の部分の大部分には補強突条2a2aが形成してある。
【0030】
前記コンタクト部材2a、2bの内、後者は、前記ハウジング1の前記一側部に近い方の取付空間1b2に取り付けるそれであり、特に図6(a)〜(d)に示すように、一対のフォーク片からなるコンタクト部2b1と、その基部からこれと直交する一方、即ち、該コンタクト部2b1のフォーク片の先端側から見た場合に、右側に折り曲げた二つの支持片2b11、2b11と、その基部から該支持片2b11、2b11と逆方向に折り曲げ、途中から該コンタクト部2b1のフォーク片の並びと平行に延長するターミナル部2b2とで構成したものである。該コンタクト部材2bは導電性の金属、この実施例では、黄銅によって全体を一体に構成したものである。
【0031】
前記コンタクト部2b1は、前記コンタクト部2a1と同様に、これを構成する一対のフォーク片の先端が内側に膨らみ、これらのフォーク片の各々には補強突条2b1aが構成してあり、また各基部側の背部には、基部側から前記取付溝1b21に装入した場合に抜け戻りを阻止する返り突起2b1bが構成してある。なお、該コンタクト部2a1を構成するフォーク片の高さは、該取付溝1b21の深さと一致させてある。
【0032】
前記ターミナル部2b2は、図6(a)〜(d)に示すように、取付状態で前記ハウジング1の延長空間1b3内に位置する部分は該延長空間1b3の幅に一致させ、前記ハウジング1の一側部から外部に突出する部分は、それより細幅に構成したものである。
【0033】
前記ブッシュ部材3は、図7(a)〜(e)に示すように、軸心に沿ってプラグ挿入孔3c1を開口した概ね円筒状のブッシュ部材本体3cと、該ブッシュ部材本体3cの基部に構成した、平面から見て概ね正方形の台座部3aと、その裏面側から突出させた一対の抑え脚3b、3bとで構成したものである。
【0034】
前記ブッシュ部材本体3cは、前記し、図7(a)〜(d)に示すように、概ね円筒状であるが、上端周囲には面取りを施してあり、周囲には、高さ方向に沿って3本の突条3c2、3c2、3c2を膨出させてある。この突条3c2、3c2、3c2は、アース金具4のキャップ部4cを該ブッシュ部材本体3cに外装した場合にその外装状態を緩みなくする趣旨のものである。
【0035】
前記台座部3aは、図7(a)、(e)に示すように、平面又は底面から見てほぼ正方形の板状の構成要素であり、その対角線上にある一対の角部が角状に切り欠かれている。この台座部3aの厚み及び平面寸法は、先に述べたところから理解されるように、ハウジング1の嵌合空間1a1、1b1に一致させてある。
【0036】
前記抑え脚3b、3bは、図7(b)〜(e)に示すように、相互に前記プラグ挿入孔3c1を挟んで180度の角度間隔で配した断面正方形の棒状部材であり、その長さは、前記取付空間1a2、1b2の深さから前記コンタクト部材2a、2bのターミナル部2a2、2b2の厚み分だけ減算した寸法としたものである。従ってこのブッシュ部材3の台座部3aを前記嵌合空間1a1、1b1に嵌合配置すると、該抑え脚3b、3bは前記押圧空間1a22、1b22に装入状態となり、図2(c)、(d)に示すように、その下端で予め配してあるコンタクト部材2a、2bのターミナル部2a2、2b2の対応部位を押圧固定することになる。
【0037】
前記アース金具4は、図8(a)〜(e)に示すように、前記ハウジング1の正面側に配した前記ブッシュ部材本体3cに外装する二つのキャップ部4c、4cと、これらを繋ぎつつ該ハウジング1の正面側に当接状態に配するほぼ長方形のカバー部4dと、該カバー部4dの二つの短辺に形成した爪片4b、4bと、該カバー部4dの一方の短辺から延長したターミナル部4aと、該カバー部4dの一方の長辺を半円形に膨出させ、その膨出した部位に前記ハウジング1のネジ下孔1dに対応させて開口したボルト孔4eとで構成したものである。なお、このアース金具4は、導電性の金属、この実施例では、黄銅を採用して全体を一体に構成したものである。
【0038】
前記二つのキャップ部4c、4cは、図2(a)、(c)及び図8(a)、(d)、(e)に示すように、前記カバー部4dに、前記ハウジング1へのブッシュ部材本体3c、3cの配置に対応させて位置決めし、かつその内径、内部高さ及び上部形状も該ブッシュ部材本体3c、3cの外径、高さ及び上部形状に対応させたものとする。なお、該キャップ部4c、4cは、云うまでもなく、その上部中央にプラグのピン部の径を十分に越える内径の円孔4fが開口させてある。
【0039】
前記爪片4b、4bは、図8(a)〜(e)に示すように、前記カバー部4dの両短辺の中心に、裏面側に直角に折り曲げて構成し、前記ハウジング1の両短辺寄りの中央に形成してある各係止溝1c、1cに挿入可能に位置決めする。各爪片4d、4dは、特に図8(b)、(c)に示すように、その両側部に、これを該係止溝1cに挿入した場合に抜け戻りを阻止する返り突起4b1、4b1を構成しておくものとする。
【0040】
また前記アース金具4のターミナル部4aは、図1(c)、図2(c)及び図8(a)〜(e)に示すように、ハウジング1にアース金具4を取り付けた場合に、そのカバー部4dの、ハウジング1の前記一側部側に対応することとなる短辺に構成し、かつハウジング1に形成された前記延長空間1a3の末端が開口する部位で、該カバー部4dから該延長空間1a3内に垂下するように直角に折り曲げ、該延長空間1a3の高さ方向途中の位置で直角に方向を変え、外方に向かって延長する構成としたものである。
【0041】
従ってこの実施例のピンジャックの組立では、まず初めにハウジング1の正面側からコンタクト部材2a、2bを、それぞれ該当する取付空間1a2、1b2及び延長空間1a3、1b3に装着する。コンタクト部材2a、2bの取付順序は自由である。
【0042】
コンタクト部材2aは、コンタクト部2a1をその基部側からハウジング1の取付空間1a2の取付溝1a21に装入する。同時に、そのターミナル部2a2を該取付空間1a2からハウジング1の一側部に延長する延長空間1a3に装入する。図2(a)〜(d)には、ハウジング1へのコンタクト部材2aの装入状態が示されている。
【0043】
コンタクト部材2bも、コンタクト部材1aと同様に、コンタクト部2b1をその基部側からハウジング1の取付空間1b2の取付溝1b21に装入する。同時に、そのターミナル部2b2を該取付空間1b2からハウジング1の一側部に延長する延長空間1b3に装入する。図2(a)〜(d)には、同様に、ハウジング1へのコンタクト部材2bの装入状態も示されている。
【0044】
次いでブッシュ部材3、3をハウジング1に取り付ける。この取り付けは、それぞれ取付空間1a2、1b2に対応する嵌合空間1a1、1b1にその台座部3a、3aを嵌合配置させることで行う。このように、ブッシュ部材3、3の台座部3a、3aを嵌合空間1a1、1b1に嵌合させると、該台座部3a、3aの裏面から垂下する抑え脚3b、3bが前記各取付空間1a2、1b2中の押圧空間1a22、1a22、1b22、1b22中に進入し、それらの各下端で既に配置してあるコンタクト部材2a、2bのターミナル部2a2、2b2の基部付近の対応部位を押圧固定することになる。図2(a)〜(d)には、またこの状態も示されている。
【0045】
この後、ハウジング1の正面側及びハウジング1から突出するブッシュ部材本体3c、3cにアース金具4を被覆状態に取り付ける。
アース金具4は、ハウジング1の正面にその裏面側を向け、かつハウジング1の長さ方向に沿った向きにその長さ方向の向きを一致させた上で、キャップ部4c、4cを該ハウジング1から突出するブッシュ部材本体3c、3cに外装する。同時にそのカバー部4dの両短辺に位置する爪片4b、4bをハウジング1の両短辺に位置する係止溝1c、1cに装入する。更に同時にカバー部4dの、ハウジング1の一側側に対応する短辺に位置するターミナル部4aを、該ハウジング1の延長空間1a3の開口部付近に装入する。
【0046】
該アース金具4は、その爪片4b、4bがハウジング1の係止溝1c、1cに装入状態になると、該爪片4b、4bの両側の返り突起4b1、4b1が該係止溝1c、1cの両側に係止状態となり、ハウジング1の正面に確実に固定されることになる。これによって、ブッシュ部材本体3c、3cはハウジング1に確実に固定される。前記コンタクト部材2a、2bは、そのコンタクト部2a1、2b1を構成する一対のフォーク片の各背後側に形成してある返り突起2a1b、2a1b、2b1b、2b1bが取付溝1a21、1a21、1b21、1b21の側部に係止状態になることで固定され、更にそのターミナル部2a2、2b2の基部付近がブッシュ部材3、3の抑え脚3b、3bで押圧固定されることで一層確実に所定位置に固定されることになる。
【0047】
以上のように、この実施例のピンジャックは、簡単な構成で組立が容易である。
またこの実施例のピンジャックは、ハウジング1の背後側には開口部がなく、かつ延長空間1a3、1b3の、ハウジング1の一側部への開口部は、その部位が、機器類に取り付ける場合に基板に接合固定されることになる。そのためこの実施例のピンジャックでは、正面側のプラグ挿入孔3c1がハウジング1の背後側と連通することは全くない。それ故、ハウジング1の後部が開口していることに起因する外部への音漏れや、内外の空気の流通、並びに塵埃の進入の問題を確実に解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】(a)は実施例のピンジャックの正面図、(b)は平面図、(c)は底面図、(d)は左側面図、(e)は右側面図。
【図2】(a)は図1(a)のA−A線断面図、(b)は図1(a)のB−B線断面図、(c)は図1(a)のC−C線断面図、(d)は図1(e)のD−D線断面図。
【図3】(a)は実施例のハウジングの正面図、(b)は背面図、(c)は平面図、(d)は底面図、(e)は左側面図、(f)は右側面図。
【図4】(a)は図3(a)のE−E線断面図、(b)は図3(a)のF−F線断面図、(c)は図3(a)のG−G線断面図、(d)はハウジングの斜視図。
【図5】(a)実施例の一方のコンタクト部材の拡大側面図、(b)は(a)を右側から見た図、(c)は(a)を下方から見た図、(d)は(a)のコンタクト部材の斜視図。
【図6】(a)実施例の他方のコンタクト部材の拡大側面図、(b)は(a)を右側から見た図、(c)は(a)を下方から見た図、(d)は(a)のコンタクト部材の斜視図。
【図7】(a)は実施例のブッシュ部材の拡大正面図、(b)は拡大右側面図、(c)は拡大底面図、(d)は(a)のH−H線断面図、(e)は拡大背面図。
【図8】(a)は実施例のアース金具の拡大正面図、(b)は拡大平面図、(c)は拡大底面図、(d)は拡大左側面図、(e)は一部切欠拡大右側面図。
【符号の説明】
【0049】
1 ハウジング
1a、1b 空間
1a1、1b1 嵌合空間
1a2、1b2 取付空間
1a3、1b3 延長空間
1a21、1b21 取付溝
1a22、1b22 押圧空間
1c 係止溝
1d ネジ下孔
2a、2b コンタクト部材
2a1、2b1 コンタクト部
2a1a、2b1a コンタクト部の補強突条
2a1b、2b1b 返り突起
2a11、2b11 支持片
2a2、2b2 コンタクト部材のターミナル部
2a2a ターミナル部の補強突条
3 ブッシュ部材
3a 台座部
3b 抑え脚
3c ブッシュ部材本体
3c1 プラグ挿入孔
3c2 突条
4 アース金具
4a アース金具のターミナル部
4b 爪片
4b1 返り突起
4c キャップ部
4d カバー部
4e ボルト孔
4f 円孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正面及び四側部中の組込対象機器の基板に当接することとなる側部の各々にのみ開口する空間を備えたハウジングと、
該ハウジングの正面側から装入してコンタクト部を該空間内に配し、ターミナル部を前記組込対象機器の基板に当接することとなる側部の開口から突出させるコンタクト部材と、
該コンタクト部材を該空間に取り付けた後に前記ハウジングの正面側に取り付けるブッシュ部材であって、その取付位置を、プラグ挿入孔が該空間に連通し、かつ正面から該プラグ挿入孔に挿入したプラグのピン部が該コンタクト部材のコンタクト部に接触し得るように位置決めしたブッシュ部材と、
該ブッシュ部材にキャップ部を外装しつつ該ハウジングの正面に配し、アース端子を前記組込対象機器の基板に当接することとなる側部の開口から突出させるアース金具と、
で構成したピンジャック。
【請求項2】
前記コンタクト部材を、フォーク状のコンタクト部と、その基部から該コンタクト部と直交する方向に延長し、該コンタクト部を前記ハウジングの前記空間に配した場合に、その底部に沿って前記組込対象機器の基板に当接することとなる側部の開口に延長状態となり、かつ該開口から突出することとなるターミナル部とで構成し、
前記ブッシュ部材を、軸心に沿ってプラグ挿入孔を備えた円筒状のブッシュ部材本体と、該ブッシュ部材本体の裏面側から突出させた抑え脚であって、該ブッシュ部材本体を前記ハウジングの正面側に取り付けた場合に、前記空間に配した前記コンタクト部から延長するターミナル部を、その先端で、該空間の底部に押し付け固定し得るように構成した抑え脚とで構成し、
前記アース金具を、前記ハウジングの正面側に配した前記ブッシュ部材本体に外装するキャップ部と、該ハウジングの正面側に当接状態に配するカバー部と、該カバー部の二箇所以上に構成した爪片であって、該ハウジングに形成した係止溝に挿入係止し得る爪片と、該カバー部から、前記組込対象機器の基板に当接することとなる側部の開口に突出させるべく延長したターミナル部とで構成した請求項1のピンジャック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−176958(P2008−176958A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−7297(P2007−7297)
【出願日】平成19年1月16日(2007.1.16)
【出願人】(000102500)SMK株式会社 (528)