ピン端子
【課題】簡単な構造に留めながらもキャップの保持力を高める。
【解決手段】丸ピン形状をなす金属製の端子本体の先端部に、合成樹脂製のキャップ30が装着されたピン端子であって、端子本体の先端面には、全周に亘って切れ目のない連続した周壁を有する装着孔21が穿設されている一方、キャップ30の後面には、装着孔21内に圧入される圧入部35が突出形成されている。装着孔21の周面には雌ねじ23が切られており、同雌ねじ23の山部24が食い込み突条を構成している。ピン端子の先端が、引っ掛かりのない先細りの誘い込み部が形成された構造となっている。
【解決手段】丸ピン形状をなす金属製の端子本体の先端部に、合成樹脂製のキャップ30が装着されたピン端子であって、端子本体の先端面には、全周に亘って切れ目のない連続した周壁を有する装着孔21が穿設されている一方、キャップ30の後面には、装着孔21内に圧入される圧入部35が突出形成されている。装着孔21の周面には雌ねじ23が切られており、同雌ねじ23の山部24が食い込み突条を構成している。ピン端子の先端が、引っ掛かりのない先細りの誘い込み部が形成された構造となっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感電防止用のキャップを設けたピン端子に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば充電用コネクタに適用されるピン端子では、ピン端子の先端部に絶縁材である合成樹脂製のキャップを装着することで、大電流の通電時等における感電を防止する手段が講じられている。
従来、簡単な構造の防止手段の一例として、下記特許文献1に記載されたものが知られている。このものは、キャップが前面を閉鎖した筒形に形成される一方、ピン端子の先端部に縮径された装着部が形成され、キャップが装着部の外周に圧入されて固定された構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−150040号公報(第7図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように充電用コネクタに適用されたピン端子では、相手のソケット端子に対して頻繁に挿抜されるような使い方をされるため、キャップの保持力が問題となる。
ここで、キャップの素材である合成樹脂は熱膨張率が金属よりも高く、そのため上記のように、キャップがピン端子の装着部に外嵌されたものでは、高温雰囲気に晒される等でキャップが熱膨張すると、内径が拡大することで装着部に対する緩みができ、すなわち保持力に劣る結果を招くこととなるため、その改良が切望されていた。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、その目的は、簡単な構造に留めながらもキャップの保持力を高めるところにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、丸ピン形状をなす金属製の端子本体の先端部に、合成樹脂製のキャップが装着されたピン端子であって、前記端子本体の先端面には、全周に亘って切れ目のない連続した周壁を有する装着孔が穿設されている一方、前記キャップの後面には、前記装着孔内に圧入される圧入部が突出形成されているところに特徴を有する。
【0006】
キャップの後面の圧入部が、端子本体の先端面の装着孔内に圧入されることで、キャップが端子本体の先端面を覆って固定される。キャップが熱膨張すると、圧入部の外径が大きくなるが、一方の装着孔は、切れ目のない連続した周壁を有していて、膨らんだりする余地が無くて一定の内径を維持しているから、圧入部がその外径を増すことに伴ってむしろ圧着具合が増し、結果保持力も増加することとなる。
すなわち、簡単な構造に留めたままでキャップの端子本体に対する保持力が高められる。
【0007】
また、以下のような構成としてもよい。
(1)前記装着孔の周面には食い込み突条が周方向に沿って形成されている。圧入に伴い、周方向に沿って形成された食い込み突条が圧入部の外周に食い込み、キャップの抜け方向の引っ掛かりとなることによって、保持力がより高められる。
【0008】
(2)前記装着孔の周面には雌ねじが切られており、同雌ねじの山部が前記食い込み突条を構成している。圧入部の長い距離範囲に亘って抜け方向の引っ掛かりができるから、保持力がさらに高められる。雌ねじ自体は、タップ等を利用して簡単に形成することができる。
【0009】
(3)前記キャップの前記圧入部の外周には、空気逃がし用の縦溝が全長に亘って形成されている。
装着孔の奥に空気が密閉されてこれが熱膨張すると、圧入部すなわちキャップに対して抜け方向の力が作用することが懸念されるが、膨張した空気は縦溝を通って外部に逃がされるために、抜け方向に力が作用することは回避される。結果、間接的に保持力が高められる。
【0010】
(4)前記キャップが略円錐台状に形成され、このキャップがその最大径よりも大きい径を有する前記端子本体の先端面の中心に装着されるようになっており、かつ、前記端子本体の先端角部には、先端側が前記キャップの最大径よりも小さい径を持った先細りのテーパ面が形成されている。
キャップの外面から端子本体の先端部のテーパ面に亘って、引っ掛かりのない先細りの誘い込み部が形成され、ピン端子を相手のソケット端子に挿入するに際して、その挿入力の低下を図ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のピン端子によれば、簡単な構造に留めながらもキャップの端子本体に対する保持力を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態1に係るピン端子の組み付け前の状態の平面図
【図2】同縦断面図
【図3】端子本体の正面図
【図4】キャップの圧入部分の構造を示す断面図
【図5】キャップが圧入された状態の断面図
【図6】組み付け完了後のピン端子の平面図
【図7】実施形態2に係るピン端子の組み付け前の状態の側面図
【図8】同平断面図
【図9】キャップの背面図
【図10】キャップの図7のX−X線断面図
【図11】キャップの圧入部分の構造を示す断面図
【図12】キャップが圧入された状態の断面図
【図13】図12のY−Y線断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図6によって説明する。
本実施形態のピン端子PTは、車両の充電用コネクタの一方を構成する車両側コネクタに装着され、相手の電源側コネクタが嵌合されることに伴い同電源側コネクタに装着されたソケット端子(図示せず)と嵌合接続されるようになっている。
【0014】
ピン端子PTは、図1及び図2に示すように、端子本体10と、その先端に装着されるキャップ30とから構成されている。
端子本体10は、銅、銅合金等の金属製の丸棒を素材とし、圧造、切削等の工程を経て全体として細長い丸ピン形状に形成され、最終形状へと形成された後、表面に銀メッキが施されている。
【0015】
端子本体10は、中央長さ位置から少し後方に寄った位置にフランジ11が形成され、同フランジ11の後側が、電線と接続される電線接続部12に、前側が相手のソケット端子と接続される端子接続部20となっている。なお、フランジ11は、ピン端子PTを車両側コネクタのハウジングにおける端子収容室に装着する場合の位置決め等として利用される。
【0016】
電線接続部12は、後部側が少し縮径された段付き状に形成され、縮径部には後面に開口した中心孔14が形成されることによって、クローズドバレル13が形成されている。電線における端末処理により露出された芯線の端末が、上記のクローズドバレル13の中心孔14に挿通され、かしめ圧着されることによって、電線の端末に端子本体10すなわちピン端子PTが接続されるようになっている。
クローズドバレル13の中心孔14における奥側の内面には、図示2個の水抜き孔15がクローズドバレル13の外面に開口して形成されている。
【0017】
端子接続部20は、上記した電線接続部12よりも小径で全長に亘って等径の丸ピン状に形成されている。この端子接続部20は、一部既述したように、相手のソケット端子における筒形接続部内に緊密に挿入されることで、電気的な接続が取られるようになっている。
【0018】
端子接続部20の先端面には、キャップ30が装着されるようになっている。そのため、端子接続部20の先端面の中心には、装着孔であるねじ孔21が形成されている。ねじ孔21は詳細には、図4に示すように、所定深さの下孔22がドリル等で切削されて形成されたのち、同下孔22の内周面に対して雌ねじ23がタップ等により切られることで形成されている。ねじ孔21の開口縁には、先広がりとなったガイド面25が全周に亘って形成されている。
また、この端子接続部20の先端角部には、前方に向けて次第に小径となった、いわゆる先細りとなったテーパ面27が形成されている。
【0019】
キャップ30は合成樹脂製であって、同じく図4に詳細に示すように、端子本体10の端子接続部20の外径Aよりも少し小さい外径aを持った厚肉の円盤部31の前面に、同円盤部31の外径aに等しい最大径を有する円錐台部32が同心に連設された形状である。なお、円盤部31の後端角部には、後方に向けて次第に小径となったテーパ面33が形成され、このテーパ面33の後縁の径bは、端子接続部20の先端角部に形成されたテーパ面27の先端縁の径Bとほぼ等しい寸法となっている。
【0020】
キャップ30における円盤部31の後面の中心には、端子本体10の端子接続部20の先端面に形成されたねじ孔21内に圧入可能な、丸棒状をなす圧入部35が一体に突出形成されている。この圧入部35は、ねじ孔21における雌ねじ23が切られた深さ位置まで圧入可能な長さ寸法を有している。
圧入部35の突出端には、ガイド用に小径部36が傾斜部37を介して形成されている。
【0021】
本実施形態は上記のような構造であって、ピン端子PTを組み付けるに当たっては、図4の矢線に示すように、キャップ30の圧入部35が、端子本体10の端子接続部20の先端面のねじ孔21内に圧入される。圧入部35は、突出端の小径部36がねじ孔21の開口縁のガイド面25に当たって芯出しされつつ、比較的小抵抗で圧入され、図5に示すように、キャップ30の円盤部31の後面が端子接続部20の先端面に当たったところで圧入が停止される。これにより、図6に示すように、ピン端子PTの組み付けが完了する。
【0022】
組み付けが完了したピン端子PTでは、キャップ30の圧入完了時には、図5に示すように、圧入部35の突出端が、ねじ孔21における雌ねじ23の奥端が形成された位置まで達している。
また、キャップ30の円盤部31における後端角部のテーパ面33の後縁が、これと同径である端子接続部20の先端角部のテーパ面27の先端縁と突き合った状態となる。
これにより、ピン端子PTの先端部分の外周は、キャップ30の円錐台部32の外周、円盤部31の外周、キャップ30側のテーパ面33、及び端子本体10の端子接続部20側のテーパ面27が連続して連なり、これにより、途中で引っ掛かりの無い概ね先細りとなった誘い込み部40が形成されることになる。
【0023】
ピン端子PTは、既述した要領により電線の端末に接続され、車両側コネクタのハウジングに装着されて待ち受け状態にある。充電時には、外部電源に接続された電源側コネクタが車両側コネクタに対して嵌合され、ピン端子PTが電源側コネクタに装着された相手のソケット端子に挿入されて接続されることで、給電路等が形成される。充電が完了した場合等は電源側コネクタが引き抜かれ、ピン端子PTがソケット端子から抜かれる。このとき給電構造によっては、ピン端子PTに大電流が流れた状態にあるが、ピン端子PTの先端には絶縁材からなるキャップ30が装着されているから、触れることで感電することが未然に防止される。
【0024】
一方、ピン端子PTは、充電作業が行われる度に相手のソケット端子に挿抜され、特にピン端子PTが引き抜かれる際には、ソケット端子における筒形接続部の内周との間の摩擦力を受けて、キャップ30に対して端子本体10から外れる方向の力が作用する。しかしながらこの実施形態では、キャップ30の装着構造において、キャップ30の後面に突出形成された圧入部35が、端子本体10の端子接続部20の先端面に形成されたねじ孔21の内部に圧入されているから、キャップ30の外れる方向の力に抗した高い保持力が得られる。
【0025】
詳細には、ピン端子PTは、大電流が流れまた配設位置の関係から高温に晒されやすいという事情がある。ここで、キャップ30の素材である合成樹脂は、端子本体10の素材である金属よりも熱膨張率が高いために、仮にキャップが端子本体の先端に設けられた装着部に外嵌されて圧入された構造であると、キャップの方がより熱膨張して内径が拡大することにより、装着部に対する緩みができる。それに対して本実施形態では、キャップ30が熱膨張すると圧入部35の外径が大きくなり、それに伴い圧入部35の外周がねじ孔21の内周に向けてより密着するようになる。
【0026】
ここで、端子本体が、金属製の帯材を幅方向に回曲して円筒形に形成され、その先端の中空内に、キャップ30の後面の圧入部35が圧入された構造であると、上記のように圧入部35が熱膨張して外径が大きくなった場合に、帯材の突き合わされた両側縁が離れつつ中空も広がってしまい、密着性が得られない。
それに対して本実施形態では、装着孔であるねじ孔21が、中実材である端子本体10の端子接続部20の先端面を切削することで形成され、言い換えると、ねじ孔21は切れ目の無い連続した周壁を有する構造であるから、圧入部35が熱膨張で膨らんだ場合も、ねじ孔21側は膨らんだりする余地が無くて一定の内径を維持しているから、圧入部35が上記のように外径を増した場合には、確実に圧着具合が増し、結果保持力も増加することになる。
【0027】
それに加え、ねじ孔21の内周には雌ねじ23が切られていて、キャップ30の圧入部35がねじ孔21に圧入されることに伴い、圧入部35のほぼ全長に亘って雌ねじ23の山部24が食い込み、言い換える圧入部35の長い距離範囲に亘って抜け方向の引っ掛かりができるから、保持力がさらに高められる。
すなわち、キャップ30については圧入部35を突出形成しただけであり、一方端子本体10側では、装着孔としてねじ孔21を形成しただけの簡単な構造に留めながらも、キャップ30の端子本体10に対する保持力を大幅に高めることができる。
【0028】
また、ピン端子PTの先端構造として、キャップ30の外面から端子本体10における端子接続部20の先端部のテーパ面27に亘って、引っ掛かりのない先細りの誘い込み部40が形成された構造となっているから、ピン端子PTを相手のソケット端子の筒形接続部に挿入するに際してスムーズに挿入でき、すなわち挿入力の低下を図ることができる。
【0029】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を図7ないし図13によって説明する。
この実施形態2では、キャップ30Aの構造に変更が加えられている。すなわち、キャップ30Aの圧入部35の外周には、長さ方向に沿った図示2本の空気逃がし用の縦溝45が、180度間隔を開けて形成されている。
【0030】
詳細には、各縦溝45は、圧入部35の突出端面からその基端部側に延び、さらに円盤部31の後面に沿ってその外周縁に開口するようにして形成されている。また、縦溝45は、圧入部35が端子本体10の端子接続部20における先端面のねじ孔21に圧入された場合に、縦溝45の溝底と、雌ねじ23の山部24の頂上との間に一定の隙間ができる程度の深さ寸法を有している。
その他の構造については、上記実施形態1と同様であって、実施形態1と同一機能を有する部材、部位については、同一符号を付すことによって説明を簡略化し、または省略する。
【0031】
上記の実施形態1では、キャップ30の圧入部35がねじ孔21に圧入された場合に、図5に参照して示すように、ねじ孔21の奥に空気が密閉される構造であるため、ピン端子PTが高温に晒された場合に同空気が熱膨張すると、圧入部35すなわちキャップ30に対して抜け方向の力が作用することが懸念される。
それに対して本実施形態のピン端子PT1は、キャップ30Aの外周に2本の縦溝45が形成されているから、仮に空気が膨張したとしても、図12に示すように、同空気は縦溝45を通って外部に逃がされることで、キャップ30Aに対して抜け方向に力が作用することは回避され、間接的ではあるがキャップ30Aの保持力がさらに高められる。
【0032】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、装着孔の内周に食い込み突条を形成するのに、螺旋形の雌ねじを切って対応したのであるが、円周溝を複数条間隔を開けて形成するようにしてもよい。また、1本の円周溝を形成するだけでもよい。
(2)装着孔の内周に食い込み突条を形成することは割愛してもよく、そのようなものも本発明の技術的範囲に含まれる。
(3)実施形態2において、キャップの圧入部に形成する縦溝の本数は1本でもよく、また3本以上であってもよい。
【0033】
(4)端子本体が金属製の帯材を幅方向に回曲して円筒形に形成され、その先端の中空内を装着孔としてキャップの後面の圧入部を圧入する構造のものであっても、突き合わされた帯材の側縁同士を溶接で固定する等、要は装着孔が、広がる余地が無いように切れ目の無い周壁を全周に亘って備えた構造となっていればよい。
(5)上記実施形態では、充電用コネクタに適用されるピン端子を例示したが、他の用途に用いられるピン端子全般に、本発明は同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0034】
PT,PT1…ピン端子
10…端子本体
20…端子接続部
21…ねじ孔
23…雌ねじ
24…山部(食い込み突条)
27…テーパ面
30…キャップ
32…円錐台部
35…圧入部
40…誘い込み部
45…縦溝
【技術分野】
【0001】
本発明は、感電防止用のキャップを設けたピン端子に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば充電用コネクタに適用されるピン端子では、ピン端子の先端部に絶縁材である合成樹脂製のキャップを装着することで、大電流の通電時等における感電を防止する手段が講じられている。
従来、簡単な構造の防止手段の一例として、下記特許文献1に記載されたものが知られている。このものは、キャップが前面を閉鎖した筒形に形成される一方、ピン端子の先端部に縮径された装着部が形成され、キャップが装着部の外周に圧入されて固定された構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−150040号公報(第7図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように充電用コネクタに適用されたピン端子では、相手のソケット端子に対して頻繁に挿抜されるような使い方をされるため、キャップの保持力が問題となる。
ここで、キャップの素材である合成樹脂は熱膨張率が金属よりも高く、そのため上記のように、キャップがピン端子の装着部に外嵌されたものでは、高温雰囲気に晒される等でキャップが熱膨張すると、内径が拡大することで装着部に対する緩みができ、すなわち保持力に劣る結果を招くこととなるため、その改良が切望されていた。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、その目的は、簡単な構造に留めながらもキャップの保持力を高めるところにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、丸ピン形状をなす金属製の端子本体の先端部に、合成樹脂製のキャップが装着されたピン端子であって、前記端子本体の先端面には、全周に亘って切れ目のない連続した周壁を有する装着孔が穿設されている一方、前記キャップの後面には、前記装着孔内に圧入される圧入部が突出形成されているところに特徴を有する。
【0006】
キャップの後面の圧入部が、端子本体の先端面の装着孔内に圧入されることで、キャップが端子本体の先端面を覆って固定される。キャップが熱膨張すると、圧入部の外径が大きくなるが、一方の装着孔は、切れ目のない連続した周壁を有していて、膨らんだりする余地が無くて一定の内径を維持しているから、圧入部がその外径を増すことに伴ってむしろ圧着具合が増し、結果保持力も増加することとなる。
すなわち、簡単な構造に留めたままでキャップの端子本体に対する保持力が高められる。
【0007】
また、以下のような構成としてもよい。
(1)前記装着孔の周面には食い込み突条が周方向に沿って形成されている。圧入に伴い、周方向に沿って形成された食い込み突条が圧入部の外周に食い込み、キャップの抜け方向の引っ掛かりとなることによって、保持力がより高められる。
【0008】
(2)前記装着孔の周面には雌ねじが切られており、同雌ねじの山部が前記食い込み突条を構成している。圧入部の長い距離範囲に亘って抜け方向の引っ掛かりができるから、保持力がさらに高められる。雌ねじ自体は、タップ等を利用して簡単に形成することができる。
【0009】
(3)前記キャップの前記圧入部の外周には、空気逃がし用の縦溝が全長に亘って形成されている。
装着孔の奥に空気が密閉されてこれが熱膨張すると、圧入部すなわちキャップに対して抜け方向の力が作用することが懸念されるが、膨張した空気は縦溝を通って外部に逃がされるために、抜け方向に力が作用することは回避される。結果、間接的に保持力が高められる。
【0010】
(4)前記キャップが略円錐台状に形成され、このキャップがその最大径よりも大きい径を有する前記端子本体の先端面の中心に装着されるようになっており、かつ、前記端子本体の先端角部には、先端側が前記キャップの最大径よりも小さい径を持った先細りのテーパ面が形成されている。
キャップの外面から端子本体の先端部のテーパ面に亘って、引っ掛かりのない先細りの誘い込み部が形成され、ピン端子を相手のソケット端子に挿入するに際して、その挿入力の低下を図ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のピン端子によれば、簡単な構造に留めながらもキャップの端子本体に対する保持力を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態1に係るピン端子の組み付け前の状態の平面図
【図2】同縦断面図
【図3】端子本体の正面図
【図4】キャップの圧入部分の構造を示す断面図
【図5】キャップが圧入された状態の断面図
【図6】組み付け完了後のピン端子の平面図
【図7】実施形態2に係るピン端子の組み付け前の状態の側面図
【図8】同平断面図
【図9】キャップの背面図
【図10】キャップの図7のX−X線断面図
【図11】キャップの圧入部分の構造を示す断面図
【図12】キャップが圧入された状態の断面図
【図13】図12のY−Y線断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図6によって説明する。
本実施形態のピン端子PTは、車両の充電用コネクタの一方を構成する車両側コネクタに装着され、相手の電源側コネクタが嵌合されることに伴い同電源側コネクタに装着されたソケット端子(図示せず)と嵌合接続されるようになっている。
【0014】
ピン端子PTは、図1及び図2に示すように、端子本体10と、その先端に装着されるキャップ30とから構成されている。
端子本体10は、銅、銅合金等の金属製の丸棒を素材とし、圧造、切削等の工程を経て全体として細長い丸ピン形状に形成され、最終形状へと形成された後、表面に銀メッキが施されている。
【0015】
端子本体10は、中央長さ位置から少し後方に寄った位置にフランジ11が形成され、同フランジ11の後側が、電線と接続される電線接続部12に、前側が相手のソケット端子と接続される端子接続部20となっている。なお、フランジ11は、ピン端子PTを車両側コネクタのハウジングにおける端子収容室に装着する場合の位置決め等として利用される。
【0016】
電線接続部12は、後部側が少し縮径された段付き状に形成され、縮径部には後面に開口した中心孔14が形成されることによって、クローズドバレル13が形成されている。電線における端末処理により露出された芯線の端末が、上記のクローズドバレル13の中心孔14に挿通され、かしめ圧着されることによって、電線の端末に端子本体10すなわちピン端子PTが接続されるようになっている。
クローズドバレル13の中心孔14における奥側の内面には、図示2個の水抜き孔15がクローズドバレル13の外面に開口して形成されている。
【0017】
端子接続部20は、上記した電線接続部12よりも小径で全長に亘って等径の丸ピン状に形成されている。この端子接続部20は、一部既述したように、相手のソケット端子における筒形接続部内に緊密に挿入されることで、電気的な接続が取られるようになっている。
【0018】
端子接続部20の先端面には、キャップ30が装着されるようになっている。そのため、端子接続部20の先端面の中心には、装着孔であるねじ孔21が形成されている。ねじ孔21は詳細には、図4に示すように、所定深さの下孔22がドリル等で切削されて形成されたのち、同下孔22の内周面に対して雌ねじ23がタップ等により切られることで形成されている。ねじ孔21の開口縁には、先広がりとなったガイド面25が全周に亘って形成されている。
また、この端子接続部20の先端角部には、前方に向けて次第に小径となった、いわゆる先細りとなったテーパ面27が形成されている。
【0019】
キャップ30は合成樹脂製であって、同じく図4に詳細に示すように、端子本体10の端子接続部20の外径Aよりも少し小さい外径aを持った厚肉の円盤部31の前面に、同円盤部31の外径aに等しい最大径を有する円錐台部32が同心に連設された形状である。なお、円盤部31の後端角部には、後方に向けて次第に小径となったテーパ面33が形成され、このテーパ面33の後縁の径bは、端子接続部20の先端角部に形成されたテーパ面27の先端縁の径Bとほぼ等しい寸法となっている。
【0020】
キャップ30における円盤部31の後面の中心には、端子本体10の端子接続部20の先端面に形成されたねじ孔21内に圧入可能な、丸棒状をなす圧入部35が一体に突出形成されている。この圧入部35は、ねじ孔21における雌ねじ23が切られた深さ位置まで圧入可能な長さ寸法を有している。
圧入部35の突出端には、ガイド用に小径部36が傾斜部37を介して形成されている。
【0021】
本実施形態は上記のような構造であって、ピン端子PTを組み付けるに当たっては、図4の矢線に示すように、キャップ30の圧入部35が、端子本体10の端子接続部20の先端面のねじ孔21内に圧入される。圧入部35は、突出端の小径部36がねじ孔21の開口縁のガイド面25に当たって芯出しされつつ、比較的小抵抗で圧入され、図5に示すように、キャップ30の円盤部31の後面が端子接続部20の先端面に当たったところで圧入が停止される。これにより、図6に示すように、ピン端子PTの組み付けが完了する。
【0022】
組み付けが完了したピン端子PTでは、キャップ30の圧入完了時には、図5に示すように、圧入部35の突出端が、ねじ孔21における雌ねじ23の奥端が形成された位置まで達している。
また、キャップ30の円盤部31における後端角部のテーパ面33の後縁が、これと同径である端子接続部20の先端角部のテーパ面27の先端縁と突き合った状態となる。
これにより、ピン端子PTの先端部分の外周は、キャップ30の円錐台部32の外周、円盤部31の外周、キャップ30側のテーパ面33、及び端子本体10の端子接続部20側のテーパ面27が連続して連なり、これにより、途中で引っ掛かりの無い概ね先細りとなった誘い込み部40が形成されることになる。
【0023】
ピン端子PTは、既述した要領により電線の端末に接続され、車両側コネクタのハウジングに装着されて待ち受け状態にある。充電時には、外部電源に接続された電源側コネクタが車両側コネクタに対して嵌合され、ピン端子PTが電源側コネクタに装着された相手のソケット端子に挿入されて接続されることで、給電路等が形成される。充電が完了した場合等は電源側コネクタが引き抜かれ、ピン端子PTがソケット端子から抜かれる。このとき給電構造によっては、ピン端子PTに大電流が流れた状態にあるが、ピン端子PTの先端には絶縁材からなるキャップ30が装着されているから、触れることで感電することが未然に防止される。
【0024】
一方、ピン端子PTは、充電作業が行われる度に相手のソケット端子に挿抜され、特にピン端子PTが引き抜かれる際には、ソケット端子における筒形接続部の内周との間の摩擦力を受けて、キャップ30に対して端子本体10から外れる方向の力が作用する。しかしながらこの実施形態では、キャップ30の装着構造において、キャップ30の後面に突出形成された圧入部35が、端子本体10の端子接続部20の先端面に形成されたねじ孔21の内部に圧入されているから、キャップ30の外れる方向の力に抗した高い保持力が得られる。
【0025】
詳細には、ピン端子PTは、大電流が流れまた配設位置の関係から高温に晒されやすいという事情がある。ここで、キャップ30の素材である合成樹脂は、端子本体10の素材である金属よりも熱膨張率が高いために、仮にキャップが端子本体の先端に設けられた装着部に外嵌されて圧入された構造であると、キャップの方がより熱膨張して内径が拡大することにより、装着部に対する緩みができる。それに対して本実施形態では、キャップ30が熱膨張すると圧入部35の外径が大きくなり、それに伴い圧入部35の外周がねじ孔21の内周に向けてより密着するようになる。
【0026】
ここで、端子本体が、金属製の帯材を幅方向に回曲して円筒形に形成され、その先端の中空内に、キャップ30の後面の圧入部35が圧入された構造であると、上記のように圧入部35が熱膨張して外径が大きくなった場合に、帯材の突き合わされた両側縁が離れつつ中空も広がってしまい、密着性が得られない。
それに対して本実施形態では、装着孔であるねじ孔21が、中実材である端子本体10の端子接続部20の先端面を切削することで形成され、言い換えると、ねじ孔21は切れ目の無い連続した周壁を有する構造であるから、圧入部35が熱膨張で膨らんだ場合も、ねじ孔21側は膨らんだりする余地が無くて一定の内径を維持しているから、圧入部35が上記のように外径を増した場合には、確実に圧着具合が増し、結果保持力も増加することになる。
【0027】
それに加え、ねじ孔21の内周には雌ねじ23が切られていて、キャップ30の圧入部35がねじ孔21に圧入されることに伴い、圧入部35のほぼ全長に亘って雌ねじ23の山部24が食い込み、言い換える圧入部35の長い距離範囲に亘って抜け方向の引っ掛かりができるから、保持力がさらに高められる。
すなわち、キャップ30については圧入部35を突出形成しただけであり、一方端子本体10側では、装着孔としてねじ孔21を形成しただけの簡単な構造に留めながらも、キャップ30の端子本体10に対する保持力を大幅に高めることができる。
【0028】
また、ピン端子PTの先端構造として、キャップ30の外面から端子本体10における端子接続部20の先端部のテーパ面27に亘って、引っ掛かりのない先細りの誘い込み部40が形成された構造となっているから、ピン端子PTを相手のソケット端子の筒形接続部に挿入するに際してスムーズに挿入でき、すなわち挿入力の低下を図ることができる。
【0029】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を図7ないし図13によって説明する。
この実施形態2では、キャップ30Aの構造に変更が加えられている。すなわち、キャップ30Aの圧入部35の外周には、長さ方向に沿った図示2本の空気逃がし用の縦溝45が、180度間隔を開けて形成されている。
【0030】
詳細には、各縦溝45は、圧入部35の突出端面からその基端部側に延び、さらに円盤部31の後面に沿ってその外周縁に開口するようにして形成されている。また、縦溝45は、圧入部35が端子本体10の端子接続部20における先端面のねじ孔21に圧入された場合に、縦溝45の溝底と、雌ねじ23の山部24の頂上との間に一定の隙間ができる程度の深さ寸法を有している。
その他の構造については、上記実施形態1と同様であって、実施形態1と同一機能を有する部材、部位については、同一符号を付すことによって説明を簡略化し、または省略する。
【0031】
上記の実施形態1では、キャップ30の圧入部35がねじ孔21に圧入された場合に、図5に参照して示すように、ねじ孔21の奥に空気が密閉される構造であるため、ピン端子PTが高温に晒された場合に同空気が熱膨張すると、圧入部35すなわちキャップ30に対して抜け方向の力が作用することが懸念される。
それに対して本実施形態のピン端子PT1は、キャップ30Aの外周に2本の縦溝45が形成されているから、仮に空気が膨張したとしても、図12に示すように、同空気は縦溝45を通って外部に逃がされることで、キャップ30Aに対して抜け方向に力が作用することは回避され、間接的ではあるがキャップ30Aの保持力がさらに高められる。
【0032】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、装着孔の内周に食い込み突条を形成するのに、螺旋形の雌ねじを切って対応したのであるが、円周溝を複数条間隔を開けて形成するようにしてもよい。また、1本の円周溝を形成するだけでもよい。
(2)装着孔の内周に食い込み突条を形成することは割愛してもよく、そのようなものも本発明の技術的範囲に含まれる。
(3)実施形態2において、キャップの圧入部に形成する縦溝の本数は1本でもよく、また3本以上であってもよい。
【0033】
(4)端子本体が金属製の帯材を幅方向に回曲して円筒形に形成され、その先端の中空内を装着孔としてキャップの後面の圧入部を圧入する構造のものであっても、突き合わされた帯材の側縁同士を溶接で固定する等、要は装着孔が、広がる余地が無いように切れ目の無い周壁を全周に亘って備えた構造となっていればよい。
(5)上記実施形態では、充電用コネクタに適用されるピン端子を例示したが、他の用途に用いられるピン端子全般に、本発明は同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0034】
PT,PT1…ピン端子
10…端子本体
20…端子接続部
21…ねじ孔
23…雌ねじ
24…山部(食い込み突条)
27…テーパ面
30…キャップ
32…円錐台部
35…圧入部
40…誘い込み部
45…縦溝
【特許請求の範囲】
【請求項1】
丸ピン形状をなす金属製の端子本体の先端部に、合成樹脂製のキャップが装着されたピン端子であって、
前記端子本体の先端面には、全周に亘って切れ目のない連続した周壁を有する装着孔が穿設されている一方、前記キャップの後面には、前記装着孔内に圧入される圧入部が突出形成されていることを特徴とするピン端子。
【請求項2】
前記装着孔の周面には食い込み突条が周方向に沿って形成されていることを特徴とする請求項1記載のピン端子。
【請求項3】
前記装着孔の周面には雌ねじが切られており、同雌ねじの山部が前記食い込み突条を構成していることを特徴とする請求項2記載のピン端子。
【請求項4】
前記キャップの前記圧入部の外周には、空気逃がし用の縦溝が全長に亘って形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のピン端子。
【請求項5】
前記キャップが略円錐台状に形成され、このキャップがその最大径よりも大きい径を有する前記端子本体の先端面の中心に装着されるようになっており、かつ、前記端子本体の先端角部には、先端側が前記キャップの最大径よりも小さい径を持った先細りのテーパ面が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のピン端子。
【請求項1】
丸ピン形状をなす金属製の端子本体の先端部に、合成樹脂製のキャップが装着されたピン端子であって、
前記端子本体の先端面には、全周に亘って切れ目のない連続した周壁を有する装着孔が穿設されている一方、前記キャップの後面には、前記装着孔内に圧入される圧入部が突出形成されていることを特徴とするピン端子。
【請求項2】
前記装着孔の周面には食い込み突条が周方向に沿って形成されていることを特徴とする請求項1記載のピン端子。
【請求項3】
前記装着孔の周面には雌ねじが切られており、同雌ねじの山部が前記食い込み突条を構成していることを特徴とする請求項2記載のピン端子。
【請求項4】
前記キャップの前記圧入部の外周には、空気逃がし用の縦溝が全長に亘って形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のピン端子。
【請求項5】
前記キャップが略円錐台状に形成され、このキャップがその最大径よりも大きい径を有する前記端子本体の先端面の中心に装着されるようになっており、かつ、前記端子本体の先端角部には、先端側が前記キャップの最大径よりも小さい径を持った先細りのテーパ面が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のピン端子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−93164(P2013−93164A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233818(P2011−233818)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
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