説明

ピーンフォーミングによる金属板の成形装置の投射体

【課題】要板金修理部の補修に時間が掛からない成形装置を提供する。
【解決手段】金属板の主表面を、エアの噴射によるエネルギーコントロールした投射体(ショット)で衝撃し、その主表面側に凸となるようにピーンフォーミングすることにより該金属板を成形するための成形装置において、該投射体(ショット)は比重が2.7〜4.6である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアの噴射を用いたピーンフォーミングによる金属板の成形装置の投射体に関するものである。特に、自動車の板金修理に用いられる。
【背景技術】
【0002】
ピーンフォーミングと呼ばれる技術は、金属板に投射体(ショット)を投射した際、投射面側に凸状となるように金属板が変形する現象を利用した加工方法であり、その投射体(ショット)としては、金属球(比重7.6前後)、ガラスビーズ(比重2.5前後)、プラスチックビーズ(比重1.5前後)があった。言い換えれば、ピーンフォーミングでは、比重が2.7〜4.6の投射体は一切使われていなかった。(例えば特許文献1参照)ショットッピーニングでは、様々な比重の投射体(ショット)が採用されているのは公知である。しかし、ショットピーニングは投射体(ショット)を投射し金属の疲れ寿命を向上させる加工方法であり、一方、ピーンフォーミングは投射面側に凸状となるように金属板を変形させる加工方法であり、ショットピーニングとピーンフォーミングの加工目的は根本的に全く違う。
【0003】
エアの噴射による投射体(ショット)の投射では、工場エアを使うため高圧エアを確保できず、金属球は比較的比重が大きい為、投射スピードが遅くなり、比重は大きいが金属板への衝突エネルギーが小さい。一方、ガラスビーズやプラスチックビーズでは比重は小さくて投射スピードがある程度速いが、比重が小さい為金属板への衝突エネルギーが小さい。従って、比重が大き過ぎても、小さ過ぎても、要板金修理部の補修の時間が相当掛かっていたという欠点があった。また、ガラスビーズは、脆く破損しやすいく、再利用できないという欠点があった。また、板金時には磁石を用いてマスキングを行なうが、鉄製の投射体(ショット)の場合は、鉄製の投射体(ショット)がその磁石に吸着されてしまうとい欠点があった。
【特許文献1】特開2004−154812号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする問題点は、要板金修理部が短時間に補修できない点である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、比重が2.7〜4.6の投射体(ショット)を用いたことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の成形装置は、比重が2.7〜4.6の投射体(ショット)を用いたことで、短時間に要板金修理部を補修できる利点がある。
【実施例1】
【0007】
図1は、成形装置の断面図である。成形装置1のエアガン2を操作することにより、点線で示したエア3がコンプレッサ(図示せず)より流れ、また、点線のエア4が大気より引き込まれる。エア3・4は、通気孔5より点線のエア6になり抜ける。よって、投射体(ショット)7がショット流入管8から投射されて、中空の押圧パッド10を通り抜けて、車両の金属板の外板11の要板金修理部12をピーンフォーミングの原理で補修する。投射体(ショット)7は、容器13の下部に配設されたパイプ14を通って循環する。投射体(ショット)は、比重が2.7〜4.6で、セラミックのアルミナの粒子で、硬度がHV800〜1300で、径が0.3mm〜3.2mmである。実施例はアルミナであるが、比重が2.7〜4.6なら成分は何でも良い。
【0008】
図2は、要板金修理部であり、図2(a)が補修前であり、図2(b)が補修後である。図2(a)の補修前の状態から、投射体(ショット)を要板金修理部に投射することにより、図2(b)の状態に要板金修理部が変形する。アルミナの粒子は投射スピードと重量と径のバランスが良いので、金属球、ガラスビーズ、プラスチックビーズを用いた修理より30%前後の作業効率が上がる。
【産業上の利用可能性】
【0009】
自動車の板金を想定しているが、一般的な金属を成形させる用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】成形装置の部分断面図である。
【図2】要板金修理部の補修前と補修後の断面図である。
【符号の説明】
【0011】
1 成形装置
2 エアガン
3 エア
4 エア
5 通気孔
6 エア
7 投射体(ショット)
8 ショット流入管
9 覗き窓
10 押圧パッド
11 外板
12 要板金修理部
13 容器
14 パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板の主表面を、エアの噴射によるエネルギーコントロールした投射体で衝撃し、その主表面側に凸となるようにピーンフォーミングすることにより該金属板を成形するための成形装置において、該投射体は比重が2.7〜4.6であることを特徴とする金属板の成形装置。
【請求項2】
金属板が凹むことにより成形された要板金修理部を、エアの噴射により所定のエネルギーを有する投射体で凹んだ側から衝撃し、該金属板が凹む前の状態に近づくようにピーンフォーミングすることにより板金修理を行なうための成形装置おいて、該投射体は比重が2.7〜4.6であることを特徴とする金属板の成形装置。
【請求項3】
該投射体は、セラミックの粒子であることを特徴とする請求項1又は2記載の金属板の成形装置。
【請求項4】
該投射体は、アルミナの粒子であることを特徴とする請求項3記載の金属板の成形装置。
【請求項5】
該投射体は、循環機構で循環されることを特徴とする請求項1又は2記載の金属板の成形装置。
【請求項6】
該投射体は、硬度がHV800〜1300であることを特徴とする請求項1又は2記載の金属板の成形装置。
【請求項7】
該投射体は、直径が0.3mm〜3.2mmであることを特徴とする請求項1又は2記載の金属板の成形装置。

【図1】
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【図2】
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