説明

ファイル用綴じ具

【課題】
綴じ足の固定及び開放のいずれの操作においても操作が簡単で且つ安定して綴じ足を固定できるファイル用綴じ具を提供する。
【解決手段】
綴じ足を挿入する挿通孔21が形成された綴じ具本体部2と、端部の回動突起を支点として前記綴じ具本体部2へ回動自在に取り付けられた操作部3と、前記綴じ具本体部2上を摺動する摺動部4とを備え、該摺動部4は、ヒンジ部を介して前記操作部3に連結され、該操作部3の回動動作に連動して綴じ具本体部2上を摺動するファイル用綴じ具1とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファイル用綴じ具に関し、更に詳しくは、綴じ孔が形成された紙葉類を一対の綴じ足で綴じるために用いられるフラットファイル用の綴じ具に関する。
【背景技術】
【0002】
綴じ孔を開けた紙葉類を綴じ込むためのフラットファイルは、一般に、ファイルに固定された綴じ足を紙葉類の綴じ孔に挿通して綴じ具で固定する態様のものである。可撓性を有する綴じ足を紙葉類の綴じ孔に挿通させた後、該綴じ足を綴じ具に挿入し、この綴じ具から突き出した綴じ足を、綴じ具本体に摺動自在に取り付けられているスライド部材を水平方向に移動させることによって、固定及び開放する。
【0003】
この種の綴じ具の開閉操作は、スライド部材を押圧した状態で水平移動させて行うため、ある程度の力を要し、また、紙葉類を綴じる度にこの操作を繰り返さなければならないので面倒となる。そこで、スライド部材を押圧移動せずに軽微な力で操作可能とした綴じ具として綴じ具本体に取り付けた回動部材により綴じ足を固定及び開放する構成とした綴じ具が種々提案されている。このような綴じ具としては、例えば、綴じ足を挿入するための挿通孔を備えた綴じ具本体と、この綴じ具本体に回動可能に枢支された押圧体とで構成され、該押圧体が綴じ足用の挿通孔を開閉して綴じ足を固定及び開放する綴じ具が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、綴じ具本体の軸受部と該軸受部に支持される押圧体の軸とを、該押圧体が開状態のときに面接触する傾斜面として形成し、押圧体を開状態の角度位置に戻す反発力を伴う支持構造を備えた綴じ具が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】実公昭57−55105号公報
【特許文献2】特開2003−11565号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のような綴じ具の機構は押圧体を押圧する操作により綴じ足を容易に固定できるが、綴じ足の固定を維持するために押圧体を綴じ具本体に係止するためのロック機構を備えなければならない。ロック機構としては、綴じ具本体と押圧体に係止部と係止受部を形成する等して対応するが、このロック機構の解除にはある程度の力で操作する必要があったり、その操作が比較的面倒である等の問題がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、綴じ足の固定及び開放のいずれの操作においても操作が簡単で且つ安定して綴じ足を固定できるファイル用綴じ具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るファイル用綴じ具は、綴じ足を挿入する挿通孔が形成された綴じ具本体部と、端部の回動突起を支点として綴じ具本体部へ回動自在に取り付けられた操作部と、綴じ具本体部上を摺動する摺動部とを備え、該摺動部は、ヒンジ部を介して前記操作部に連結され、該操作部の回動動作に連動して綴じ具本体部上を摺動することを特徴とする。
【0007】
本発明において、前記ヒンジ部は、前記操作部と摺動部を連結する主ヒンジ部と、該主ヒンジ部と操作部との間に配設される補助ヒンジ部とで構成し、該補助ヒンジ部は操作部の回動操作時に伸縮可能に構成されている。
【0008】
また、前記操作部の側方枠部には、前記綴じ具本体部よりも外方に突出する挟持部が形成されていることが好ましい。
【0009】
そして、前記操作部の回動突起が前記綴じ具本体部から脱落することを防止するための中間突出部を設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のファイル用綴じ具は、操作部の先端部を押下又は押上げることにより摺動部を綴じ具本体部上を摺動させることができ、該綴じ具本体部の挿通孔に挿入させた綴じ足を容易に固定及び開放することができる。また、ヒンジ部の伸縮を利用して動作を補助するため、より軽快に動作させることができる。
【0011】
更に、操作部の側方枠部には、綴じ具本体部よりも外方に突出する挟持部が形成されているため、該挟持部を指先で摘んで又は下方から押し上げることにより、該綴じ具本体部と略平行に倒伏して綴じ足を固定している操作部を容易に起立させて綴じ足の開放を行うことができる。
【0012】
そして、前記操作部の回動突起が前記綴じ具本体部から脱落することを防止するための中間突出部を設けているので、操作部の回動操作による綴じ具本体部からの脱落を防止することができ、操作の安定性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のファイル用綴じ具は、綴じ足を挿入する挿通孔並びに綴じ足を受容する保持溝が形成された綴じ具本体部と、端部の回動突起を支点として綴じ具本体部へ回動自在に取り付けられた操作部と、綴じ具本体部上を摺動する摺動部とから構成され、該摺動部はヒンジ部を介して操作部に連結されている。
【0014】
そして、前記操作部3の端部の回動突起を回動支点とし、操作部とヒンジ部の連結部近傍を作用点とし、該操作部の先端部を力点として、回動支点、作用点、力点となる位置関係に配置されている。
【実施例1】
【0015】
以下、本発明のファイル用綴じ具の実施形態について図面に基づき、詳細に説明する。尚、本発明は下記実施形態になんら制限されるものではない。
【0016】
本発明に係るファイル用綴じ具1は合成樹脂製であり、図1及び図2に示すように、長手方向に延びる帯状の綴じ具本体部2と、この綴じ具本体部2の両端部に回動自在に取り付けられた一対の操作部3と、綴じ具本体部2上を摺動する一対の摺動部4とで構成され、この一対の摺動部4は各々主ヒンジ部5を介して綴じ具本体部2の両端部に配置された操作部3に連結されている。
【0017】
この綴じ具本体部2は、図1及び図2に示したように、所望肉厚の帯状に形成され、両端部に操作部3を回動自在に取り付けるための取付支持部25が形成されている。該取付支持部25は、綴じ具本体部2の端部上面より上方に突出する2個の突起部25aを備え、各突起部25aの外面側には後述する操作部3の回動突起を枢支するための回動突起受け凹部(図示しない)が形成されている。取付支持部25よりも長手方向の中央側にはそれぞれ、綴じ具本体部2の一方の側部2bから略矩形状に切り欠いてこの側部2b側に開口して綴じ足を挿入可能とする挿通孔21が形成されている。これら挿通孔21は、紙葉類の綴じ孔位置及びファイル用綴じ具1を取り付けるファイルの綴じ込み用フラップの綴じ足挿入開口部と略一致する位置に形成されている。そして、綴じ具本体部2の他方の側部2cは、下端部の幅を広げてファイル用綴じ具1をファイルに安定的に取り付け可能としている。
【0018】
綴じ具本体部2の上面部2aには、両挿通孔21の位置から綴じ具本体部2の中央部近傍まで綴じ足を受容する保持溝22がそれぞれ形成されている。挿通孔21近傍の保持溝22の上面には、複数の係止凸部23が長手方向に並設されており、該係止凸部23は綴じ足に形成された凹部と係合可能とされている。また、挿通孔21の開口縁が設けられた側部2bには、図5に示すように、該開口縁の位置から中央方向と端部方向に向かってそれぞれ所定長さを下端部から上端部近傍まで切り欠いて縦壁27を形成するとともに、上面部2aに沿って線条に延出する線条案内部24が形成されている。同様に、他方の側部2cにも略対向する位置を下端部から上端部近傍まで切り欠いて縦壁及び線条案内部が形成されている。また、綴じ具本体部2の略中央と端部近傍には、ファイル用綴じ具1をファイルに固定するための取付孔26が形成されている。
【0019】
前記綴じ具本体部2に具設される操作部3、摺動部4、及び主ヒンジ部5と補助ヒンジ部54から成るヒンジ部は、図1及び図2に示したように、綴じ具本体部2の略中央部分を中心として相互に対称形状を成している。従って、一方を例にとり各部材を説明する。
【0020】
操作部3は、図3及び図4に示すように、綴じ具本体部2の長手方向に長尺の平面視略矩形状の枠体で、綴じ具本体部2よりも幅広に構成され、中央部には略矩形状の空間部31が形成されている。該操作部3の長手方向の一端を基端部とし、該基端部は、他端である先端部より狭幅に形成されるとともに、側部側に開口する細隙を2箇所に設けて一対の回動基部33とこれら回動基部33の間に位置する中間突出部34とを備えている。各回動基部33の内面側には、該回動基部33と略直交して回動軸を略同一直線上とした回動突起(図示しない)がそれぞれ設けられており、該回動突起は前記取付支持部25に設けられた突起部25aの回動突起受け凹部と係合可能とされている。前記細隙は該突起部25aを嵌め込み可能に形成されており、操作部3は、中間突出部34を突起部25aの間に位置させて、各回動基部33に設けた回動突起を突起部25aの回動突起受け凹部に係合させることにより、回動突起を支点として綴じ具本体部2に回動自在に枢設されている。
【0021】
前記操作部3の空間部31は、短手方向の開口幅を後述する摺動部4及び主ヒンジ部5の幅よりも僅かに大きい幅で形成し、長手方向の開口長さを該摺動部4と主ヒンジ部5を合わせた長さよりも長い長さで形成している。従って、図3に示したように、操作部3を綴じ具本体部2と略平行となるように倒伏させた閉状態のときに、摺動部4と主ヒンジ部5は操作部3の空間部31に嵌め込むことが可能とされている。また、空間部31の基端部側の縁辺部は、略中央部分を略矩形状に切り欠いて、その中央縁辺部を補助ヒンジ部連結部31bとし、切り欠き部の両側方の縁辺部を主ヒンジ部連結肩部31aとしている。該主ヒンジ部連結肩部31aは、図6に示すように、下端縁部が上端縁部よりも延出しており、該下端縁部は主ヒンジ部5と連結する主ヒンジ部連結部31cとされている。
【0022】
また、操作部3の先端部側の側方枠部にはそれぞれ挟持部32が形成されている。該挟持部32は綴じ具本体部2よりも外方に突出する小片で、指先等で摘持しやすくされている。また、操作部3の先端部側の先端枠部上面や、側方枠部の裏面には、補強部材を形成することもできる。
【0023】
摺動部4は、図3乃至図5に示したように、平面視略矩形状の摺動基板41と、該摺動基板41の対向する側部からそれぞれ下方に延びる側板42と、側板42の下端部から摺動基板41と略平行に延出された前側摺動係止部45並びに後側摺動係止部46とで中空部43を形成して構成され、摺動基板41と前側摺動係止部45及び後側摺動係止部46とで綴じ具本体部2の側部2b,2cの線条案内部24を挟持するようにして綴じ具本体部2に摺動可能に具設されている。
【0024】
前記摺動基板41は、綴じ具本体部2の長手方向に長尺の略矩形状薄板で、綴じ具本体部2の中央側に位置する前端縁部は綴じ足8の幅よりも僅かに幅広に切り欠いて綴じ足案内部44を形成している。そして摺動基板41の後端縁部上面には、後述する主ヒンジ部5が谷折り可能に連結されている。
【0025】
前側摺動係止部45は側板42の前端から所定間隔をあけて設けられ、後側摺動係止部46は側板42の後端に設けられている。摺動部4は、綴じ具本体部2の中央側に摺動するとき、前側摺動係止部45が縦壁27に当接して摺動が係止され、このとき、図3に示したように、挿通孔21は摺動部4により塞がれた状態となる。そして、摺動部4が綴じ具本体部2の端部方向に摺動するときは、後側摺動係止部46が縦壁27に当接して摺動が係止され、図4に示したように、挿通孔21は開放された状態となる。
【0026】
ヒンジ部は主ヒンジ部5と補助ヒンジ部54とで構成され、前記操作部3と摺動部4を連結している。主ヒンジ部5は、基端部側が二股に分かれた平面視略Y字形状の薄肉部材であり、基部51の基幹部53から二股に分かれて分岐部52を形成している。この主ヒンジ部5は、基部51の先端部において前記摺動基板41に谷折り可能に連結されている。そして、図6に示したように、分岐部52の先端部は下端縁部が上端縁部よりも延出しており、前記操作部3の主ヒンジ部連結部31cに山折り可能に連結されている。
【0027】
また、補助ヒンジ部54は主ヒンジ部5の基幹部53と操作部3の補助ヒンジ部連結部31bに連結される薄肉部材であり、図6に示したように、基端部側から、操作部3の補助ヒンジ部連結部31b上面に連結する第1ヒンジ片54aと、該第1ヒンジ片54aに山折り可能に連続する第2ヒンジ片54bと、該第2ヒンジ片54bに谷折り可能に連続する第3ヒンジ片54cと、該第3ヒンジ片54cに山折り可能に連続して主ヒンジ部5の基幹部53上面に連結する第4ヒンジ片54dとで側面視略M字形状に形成されている。
【0028】
以上の構成により、操作部3、摺動部4及びヒンジ部は互いに連結されるとともに、操作部3はその基端部において綴じ具本体部2に回動可能に枢支され、摺動部4は綴じ具本体部2上に摺動可能に具設される。尚、操作部3の基端部には中間突出部34が備えられ、回動基部33、突起部25a、及び中間突出部34が空隙なく配置されているため、回動基部33の回動突起が確実に突起部25aの回動突起受け凹部に係合して、操作部3を脱落させることなく回動させることが可能となる。
【0029】
尚、本実施形態において、前記操作部3と摺動部4、並びに主ヒンジ部5と補助ヒンジ部54は一体に形成されている。各部材を一体に形成することで、各部材の連結部の強度を維持している。
【0030】
本実施形態において、操作部3を綴じ具本体部2と略平行となるように倒伏させたとき、摺動部4の前側摺動係止部46が縦壁27に当接し、操作部3を起立させたときは、摺動部4の後側摺動係止部46が縦壁27に当接して、操作部3は外方への回動が不可能となり、操作部3が綴じ具本体部2に対して略直立した状態となるように構成している。従って、操作部3は綴じ具本体部2に対して略90度の角度で回動し、綴じ具本体部2に倒伏された閉状態から綴じ具本体部2に対して略垂直に起立する開状態まで回動可能とされるとともに、該操作部3の回動動作に連動して、摺動部4が綴じ具本体部2に穿設された挿通孔21を開閉可能に該綴じ具本体部2を水平方向に往復移動する。
【0031】
つまり、図3に示したように操作部3を綴じ具本体部2と略平行となるように倒伏させた閉状態のとき、摺動部4は線条案内部24の前端、即ち綴じ具本体部2の最も中央寄りに位置して挿通孔21を塞いだ状態となるとともに、該摺動部4とヒンジ部が操作部3の空間部31に嵌り込み、各部材の上面が略面一(つらいち)となる。そして、操作部3を綴じ具本体部2に対して略垂直に起立させた開状態のときは、図4に示したように、主ヒンジ部5は分岐部52側が操作部3に引かれて起立すると共に、摺動部4が主ヒンジ部5に引かれて綴じ具本体部2の端部側へ摺動し、該摺動部4は挿通孔21よりも端部側に位置して挿通孔21は開かれた状態となる。
【0032】
操作部3が綴じ具本体部2と略平行となる閉状態のときと、操作部3が綴じ具本体部2に対して略垂直に起立する開状態のときにおいて、補助ヒンジ部54は、第1ヒンジ片54aと第2ヒンジ片54bとが連続する山折り部(以下、基端部側山折り部ということもある)と第3ヒンジ片54cと第4ヒンジ片54dとが連続する山折り部(以下、前端部側山折り部ということもある)との間隔が最も短くなる安定状態となっている。操作部3を閉状態から開状態へ、或いは開状態から閉状態へ回動させる回動操作時において、補助ヒンジ部54の各山折り部間の間隔は広がり、山折り部間の間隔が最長位置を超えると、該補助ヒンジ部54は安定状態に戻ろうとするため、該補助ヒンジ部54により操作部3の操作が補助される。
【0033】
本発明においては、図7に示すように、前記操作部3の回動突起を回動支点Aとし、操作部3と補助ヒンジ部54の連結部近傍、即ち補助ヒンジ部54の第1ヒンジ片54aと第2ヒンジ片54bが連続する基端部側山折り部を作用点Bとし、該操作部3の先端部を力点Cとして、回動支点A、作用点B、力点Cとなる位置関係に配置している。力点Cである操作部3の先端部を操作することにより、操作部3の回動操作が容易となる。
【0034】
次に、本実施形態のファイル用綴じ具1の動作について説明する。図7に示したように、操作部3を起立させた状態のとき、摺動部4は綴じ具本体部2の挿通孔21よりも端部側に位置して該挿通孔21が開かれた状態となり、補助ヒンジ部54は、第1ヒンジ片54aと第2ヒンジ片54bとが連続する基端部側山折り部と第3ヒンジ片54cと第4ヒンジ片54dとが連続する前端部側山折り部との間隔が最も短くなる安定状態となっている。
【0035】
綴じ具本体部2の挿通孔21から綴じ足8の先端が突出した状態で操作部3の先端部(力点C)を押下すると、図8に示すように、主ヒンジ部5が傾倒しながら摺動部4を押し出して、該摺動部4は綴じ具本体部2の長手方向中央側へ摺動する。摺動部4の綴じ足案内部44に綴じ足8が当接すると、該綴じ足8は該綴じ足案内部44に押されて保持溝22側へ傾倒する。
【0036】
そのまま操作部3を押下すると摺動部4は中空部43で綴じ足8を抱持しながら摺動し、該綴じ足8は保持溝22の上面に形成された係止凸部23に凹部81を係合させて保持溝22に倒伏する。補助ヒンジ部54が最長に伸長したとき、安定状態に戻ろうとする力が働き、基端部側山折り部と前端部側山折り部との間隔が縮まり、抵抗なく操作部3を押下できる。更に、操作部3の先端側が綴じ具本体部2と接触するまで押下されると、操作部3は綴じ具本体部2と略平行となり、図9に示すように、綴じ足8は綴じ具本体部2の保持溝22に固定され、主ヒンジ部5も綴じ具本体部2と略平行になる。
【0037】
また、この完全閉状態では、摺動部4の前側摺動係止部45が綴じ具本体部2の縦壁27に当接して、主ヒンジ部5が回動突起との間で突っ張った状態となっており、操作部3が安定して綴じ具本体部2と略平行状態に維持される。つまり、図10(a)に示したように、操作部3が完全に倒伏する直前の位置において、摺動部4の前側摺動係止部45が綴じ具本体部2の縦壁27に当接し、摺動部4が係止される。このとき、操作部3は綴じ具本体部2から先端を僅かに離した状態で完全に摺動部4と面一とはなっていない。
【0038】
そして、操作部3の先端が更に押し下げられると、主ヒンジ部連結部31cが主ヒンジ部5と操作部3の基端部から圧迫されて下方移動し、図10(b)に示したように、摺動部4と主ヒンジ部5の連結部と回動支点Aとを結ぶ直線より下方に下がって安定し、連動して操作部3も綴じ具本体部2と略平行となるように倒伏状態となる。これにより、確実に綴じ足8をファイル用綴じ具1に係止することができる。
【0039】
また、綴じ足8を固定した完全閉状態のときは、前述のように、前側摺動係止部45が縦壁27に圧接され、主ヒンジ部5を圧迫状態として、操作部3を倒伏状態に維持して綴じ足8の固定を確実に固定状態としておくことができる。
【0040】
綴じ足8の固定を解除する場合は、上記操作の逆の操作を行い、図9に示したような綴じ具本体部2と略平行に倒伏した操作部3を、該操作部3の先端部に指先等を掛けて押し上げるか操作部3の側部に設けた挟持部32を指で摘んで引き上げるなどすることにより、操作部3を起立させることができる。操作部3が回動突起を中心として回動起立すると、主ヒンジ部5は分岐部52側を起立させながら摺動部4を綴じ具本体部2の端部側へ摺動させる。このとき、補助ヒンジ部54の基端部側山折り部と前端部側山折り部の間隔は徐々に伸び、この間隔が最長に伸長すると補助ヒンジ部54は安定状態に戻ろうとして縮まるため、操作部3の引き上げに際して中間位置で抵抗感を与え、開位置及び閉位置での感触を軽くした軽快な操作を行うことができる。そして、操作部3が綴じ具本体部2に対して略90度の角度で起立したとき、図7に示したように、摺動部4は挿通孔21を開放して綴じ足8が抜き差し可能となる。
【0041】
上記した本実施形態のファイル用綴じ具1は、図11に示すように、ファイル7に固定して使用される。本発明のファイル用綴じ具1を適用するファイル7は、A版、B版など紙葉類の規格に合わせた大きさの矩形形状とした表表紙71と裏表紙72、及び背表紙73と、表表紙71と裏表紙72の綴じ合わせ側の側辺に表紙の上端から下端の長手方向に帯状の長方形片として形成された綴じ込み用フラップ74,75とで構成されている。
【0042】
前記ファイル用綴じ具1は、表表紙71の綴じ込み用フラップ74に、表表紙71に面する側から綴じ込み用フラップ74の綴じ足挿入開口部74aに綴じ具本体部2の挿通孔21が一致するようにして取付孔26を留め具等で固定する。そして、裏表紙72の綴じ込み用フラップ75に綴じ足8を固定し、該綴じ足8を表表紙71の綴じ込み用フラップ74の綴じ足挿入開口部74aに開口側から挿入してファイル用綴じ具1からその先端を突出させて、綴じ具本体部2の操作部3を回動させて綴じ足8を固定するものである。
【0043】
また、他の実施の形態としては、図12に示すように、長手方向に延びる帯状の綴じ具本体部2の中央側に操作部3を取り付けるための取付支持部を形成したファイル用綴じ具101とすることがある。このファイル用綴じ具101では、綴じ具本体部2の略中央に、上面から突出する長手方向に平行の2個の突起部25aを形成している。各突起部25aの外面側には2個の回動突起受け凹部が長手方向に並設され、相対する回動突起受け凹部は、操作部3の回動基部33に設けた回動突起と係合可能としている。また、綴じ具本体部2の取付支持部25よりも長手方向の端部側にはそれぞれ、一方の側部から略矩形状に切り欠いて綴じ足を挿入可能とする挿通孔が形成されている。
【0044】
綴じ具本体部2の上面部には、両挿通孔の位置から綴じ具本体部2の中央部近傍まで綴じ足を受容する保持溝22がそれぞれ形成され、挿通孔21近傍の保持溝22の上面には綴じ足の凹部と係合する係止凸部が長手方向に並設されている。また、挿通孔21の開口縁が設けられた側部には、該開口縁の位置から中央方向と端部方向に向かってそれぞれ所定長さを下端部から上端部近傍まで切り欠いて縦壁を形成するとともに、上面部に沿って線条に延出する線条案内部が形成されている。同様に、他方の側部にも略対向する位置を下端部から上端部近傍まで切り欠いて縦壁及び線条案内部が形成されている。
【0045】
上記構成の綴じ具本体部2に、操作部3を該操作部3の基端部に形成した回動基部33の回動突起を取付支持部の突起部25aに形成した回動突起受け凹部に係合させて枢設し、該操作部3に連結した摺動部4を線条案内部を挟持するようにして綴じ具本体部2に具設している。このファイル用綴じ具101は、操作部3が各々外方へ回動する構成であり、摺動部4は綴じ具本体部2の中央側から端部方向へ向けて移動して挿通孔を塞いだ状態となる。
【0046】
この実施形態におけるファイル用綴じ具101は、図13に示すように、ファイル7の表表紙71の綴じ込み用フラップ74に、表表紙71に面する側から綴じ込み用フラップ74の綴じ足挿入開口部74aに綴じ具本体部2の挿通孔21が一致するようにして取付孔26を留め具等で固定している。このファイル用綴じ具101は、挿通孔をファイルの中央寄りに位置するように構成されているため、一般的な2穴ファイルに好適に適用できるものである。
【0047】
尚、本実施形態では、綴じ具本体部2の挿通孔21を側部2b側に開口した孔として形成したが、該挿通孔21は周囲を囲まれた貫通孔として綴じ具本体部2に形成しても良い。
【0048】
また、補助ヒンジ部54は複数備えることが可能であり、例えば、主ヒンジ部5の分岐部52を基部51よりも幅狭に形成して基幹部53の略中央に備え、この分岐部52の両側方に補助ヒンジ部54を備える構成としても良い。
【0049】
更に、綴じ具本体部2を、挿通孔21が形成された側部2b側に係止片を綴じ具本体部2に対して山折り可能に備え、綴じ具本体部2とこの係止片とで表表紙71の綴じ込み用フラップ74を挟持した状態で互いを係止する構成とすれば、綴じ具本体部2はファイルから着脱自在となり、該綴じ具本体部2の再利用や、分別廃棄が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施形態に係るファイル用綴じ具の全体斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係るファイル用綴じ具の平面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るファイル用綴じ具の要部拡大斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係るファイル用綴じ具の要部拡大斜視図である。
【図5】本発明の実施形態に係るファイル用綴じ具を下方から見た要部拡大斜視図である。
【図6】本発明の実施形態に係るファイル用綴じ具の要部断面図である。
【図7】本発明の実施形態に係るファイル用綴じ具の動作を説明する図である。
【図8】本発明の実施形態に係るファイル用綴じ具の動作を説明する図である。
【図9】本発明の実施形態に係るファイル用綴じ具の動作を説明する図である。
【図10】本発明の実施形態に係るファイル用綴じ具の動作を説明する図である。
【図11】本発明の実施形態に係るファイル用綴じ具を備えたファイルを開いた状態の斜視図である。
【図12】本発明の他の実施形態に係るファイル用綴じ具の平面図である。
【図13】本発明の他の実施形態に係るファイル用綴じ具を備えたファイルを開いた状態の斜視図である。
【符号の説明】
【0051】
1 ファイル用綴じ具 2 綴じ具本体部
2a 上面部 2b,2c 側部
3 操作部 4 摺動部
5 主ヒンジ部
7 ファイル 8 綴じ足
21 挿通孔 22 保持溝
23 係止凸部 24 線条案内部
25 取付支持部 25a 突起部
26 取付孔 27 縦壁
31 空間部
31a 主ヒンジ部連結肩部 31b 補助ヒンジ部連結部
31c 主ヒンジ部連結部
32 挟持部 33 回動基部
34 中間突出部
41 摺動基板 42 側板
43 中空部 44 綴じ足案内部
45 前側摺動係止部 46 後側摺動係止部
51 基部 52 分岐部
53 基幹部 54 補助ヒンジ部
54a 第1ヒンジ片 54b 第2ヒンジ片
54c 第3ヒンジ片 54d 第4ヒンジ片
71 表表紙 71a 背表紙挿入部
72 裏表紙 73 背表紙
74 綴じ込み用フラップ 74a 綴じ足挿入開口部
75 綴じ込み用フラップ 75a 取付孔
81 凹部
101 ファイル用綴じ具
A 回動支点
B 作用点
C 力点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
綴じ足を挿入する挿通孔が形成された綴じ具本体部と、
端部の回動突起を支点として前記綴じ具本体部へ回動自在に取り付けられた操作部と、
前記綴じ具本体部上を摺動する摺動部と
を備え、該摺動部は、ヒンジ部を介して前記操作部に連結され、該操作部の回動動作に連動して綴じ具本体部上を摺動することを特徴とするファイル用綴じ具。
【請求項2】
前記ヒンジ部は、前記操作部と摺動部を連結する主ヒンジ部と、該主ヒンジ部と操作部との間に配設される補助ヒンジ部とで構成され、該補助ヒンジ部は操作部の回動操作時に伸縮可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載のファイル用綴じ具。
【請求項3】
前記操作部の側方枠部には、前記綴じ具本体部よりも外方に突出する挟持部が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のファイル用綴じ具。
【請求項4】
前記操作部の回動突起が前記綴じ具本体部から脱落することを防止するための中間突出部を設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のファイル用綴じ具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−160773(P2009−160773A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−340512(P2007−340512)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(301033282)プラスステーショナリー株式会社 (24)
【Fターム(参考)】