説明

ファイル

【課題】本発明は、書類や写真等を簡便にファイリングすることのできるファイルであって、正面からはファイルに収納されたものを明瞭に見ることができるが、側方からは明瞭に視認することのできない、いわゆる、視野角の小さいファイルを提供する。
【解決手段】透明又は半透明合成樹脂よりなる表面シートと裏面シートが積層され、その一側端部、一側端部と底部又は両側端部と底部が閉塞されて収納可能に形成されているファイルであって、断面略三角形の多数の凸条が平行に、且つ、隣り合う凸条の底部が接するように形成されているプリズム部が該表面シートの表面の少なくとも一部分に設けられていることを特徴とするファイル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、書類や写真等を簡便にファイリングすることのできるファイルであって、正面からはファイルに収納されたものを明瞭に視認することができるが、側方からは明瞭に視認することのできない、いわゆる、視野角の小さいファイルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、書類や写真等を簡便にファイリングするためにはクリアファイルやクリアバインダーが広く使用されている。これらクリアファイルやクリアバインダーは、透明又は半透明の合成樹脂シートを積層し、一側端部、一側端部と底部又は両側端部と底部を閉塞して書類等を収納可能に形成されており、収納された書類を取り出すことなく外部から容易に視認できるファイルである。又、収納された書類が外部から視認できないように、合成樹脂シートに着色剤を混入して成形して半透明にしたファイル、宣伝や見栄えをよくするために合成樹脂シートの表面に印刷を施したファイル、滑り止めや強度を付与するためにエンボス加工を施したファイル等も提案されている(例えば、特許文献1、2、3参照。)。
【0003】
一方、病院におけるカルテを収納するためのファイルのように、例えば、カルテをファイルから出すことなく容易に患者の名前を視認できるように、ファイル全体又は該当する一部分は透明又は視認できる程度の半透明であることが要求されることがある。この場合、ファイル全体又は該当する一部分を透明又は視認できる程度の半透明の合成樹脂シートで形成すればカルテをファイルから出すことなく容易に患者の名前を視認できる。
【0004】
しかしながら、ファイル全体又は該当する一部分を透明又は視認できる程度の半透明の合成樹脂シートで形成すれば、それを正面から見る医師だけでなく、側方に存在する第三者も見ることができ、プライバシーの問題が発生する。従って、正面からはファイル内のカルテ等を容易に視認できるが、側方からは視認しにくい、即ち、視野角の狭いファイルが要望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−9606号公報
【特許文献2】特開2009−262516号公報
【特許文献3】特開2002−52878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、書類や写真等を簡便にファイリングすることのできるファイルであって、正面からはファイルに収納されたものを明瞭に視認することができるが、側方からは明瞭に視認することのできない、いわゆる、視野角の小さいファイルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明は、
[1]透明又は半透明合成樹脂よりなる表面シートと裏面シートが積層され、その一側端部、一側端部と底部又は両側端部と底部が閉塞されて収納可能に形成されているファイルであって、断面略三角形の多数の凸条が平行に、且つ、隣り合う凸条の底部が接するように形成されているプリズム部が該表面シートの表面の少なくとも一部分に設けられていることを特徴とするファイル、
[2]三角形が、頂角が60〜120度の二等辺三角形であることを特徴とする上記[1]記載のファイル、及び、
[3]合成樹脂が、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂又は塩化ビニル系樹脂であることを特徴とする上記[1]又は[2]記載のファイル
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のファイルの構成は上述の通りであり、書類や写真等を簡便にファイリングすることのできるファイルであって、プリズム部は視野角が小さく、正面からはファイルに収納されたものを明瞭に視認することができるが、側方からは明瞭に視認することができない。従って、プライバシーの保護が必要な病院におけるカルテ等を収納するファイルとして好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のファイルの一例を示す平面図である。
【図2】表面シートの拡大部分断面図である。
【図3】本発明のファイルの異なる例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
請求項1記載のファイルは、透明又は半透明合成樹脂よりなる表面シートと裏面シートが積層され、その一側端部、一側端部と底部又は両側端部と底部が閉塞されて収納可能に形成されているファイルであって、断面略三角形の多数の凸条が平行に、且つ、隣り合う凸条の底部が接するように形成されているプリズム部が該表面シートの表面の少なくとも一部分に設けられていることを特徴とする。
【0011】
次に、本発明のファイルを、図面を参照して説明する。図1は、本発明のファイルの一例を示す平面図であり、図2は表面シートの拡大部分断面図である。図中1は表面シートであり、2は裏面シートである。表面シート1と裏面シート2は透明又は半透明合成樹脂よりなる略矩形のシートが折り目3により折畳まれて形成されている。又、表面シート1と裏面シート2の底部は熱融着され、熱融着部4が形成されており、折り目3及び熱融着部4により表面シート1と裏面シート2はその一側端部と底部が閉塞され、上方及び他側端部が開放されて収納可能に形成されている。尚、5は表面シート1を裏面シート2から剥がしやすくするために、表面シート1に形成された切欠部である。
【0012】
上記合成樹脂としては、シート形成能を有し、そのシートが透明又は半透明である任意の熱可塑性樹脂が使用でき、例えば、高密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂等が挙げられる。
【0013】
表面シート1及び裏面シート2の厚さは、特に限定されず、一般に0.1〜1.0mmであり、クリアファイルの場合は0.2〜0.5mmが好ましい。
【0014】
表面シート1と裏面シート2の表面全体がプリズム部6となされている。プリズム部6には断面略三角形の多数の凸条61、61・・・が縦方向(図1において上下方向)に平行に形成されている。凸条61は、隣り合う側壁63と側壁63が交差して稜線62が形成されて隣り合う二つの側壁63、63により断面略三角形に形成されている。又、隣り合う凸条61と凸条61は、その側壁63、63の底部64同士が接するように形成されている。即ち、凸条61、61・・・はそれぞれが底部64、64・・で接するように且つ稜線62、62・・・は平行に形成されている。
【0015】
凸条61の断面形状は略三角形であるが、その頂角(隣り合う側壁63と側壁63が交差する稜線62における角度)は小さくなると製造が困難になり、大きくなると側方から見やすくなるので30〜150度が好ましく、より好ましくは60〜120度である。又、二等辺三角形であるとどちらの側方からも見にくくなるので好ましい。尚、凸条61の断面形状は略三角形であるが、三角形の頂部が半円状に丸められていてもよいし、切断されて台形になされていてもよい。
【0016】
凸条61の大きさは、小さすぎても大きすぎても製造が困難になり、側方から見やすくなるので、断面略三角形の高さ及び幅は25〜100μmが好ましく、より好ましくは30〜70μmである。
【0017】
上記プリズム部6は表面シート1全面に形成されてもよいし、側方から見えにくくしたい一部分のみに形成されてもよい。凸条は横方向(図1において左右方向)に平行に形成されてもよいし、斜め方向に形成されてもよい。更に、縦方向に多数の凸条が形成されたプリズム部、横方向に多数の凸条が形成されたプリズム部又は斜め方向に多数の凸条が形成されたプリズム部が併設されてもよい。
【0018】
上記ファイルにおいては、表面シート1と裏面シート2はその一側端部と底部が閉塞され、上方及び他側端部が開放されて収納可能に形成されているが、その一側端部のみが閉塞されて(一枚のシートが折畳まれて)書籍状になされて収納可能に形成されていてもよいし、両側端部と底部が閉塞されて袋状になされて収納可能に形成されていてもよい。
【0019】
表面シート1及び裏面シート2には、シートが半透明又は不透明になるように、酸化チタン、炭酸カルシウム等の無機充填剤や着色剤を混入してもよいし、シートの表面又は裏面に着色層を積層したり、装飾デザインや宣伝広告を印刷してもよい。又、表面シート及び裏面シートの表面又は裏面にプリズム部を残して着色層を積層したり、装飾デザインや宣伝広告を印刷して不透明にしてもよい。更に、シートの裏面及び表面のプリズム部以外の面にエンボス加工やマット加工を施してもよい。
【0020】
上記表面シート及び裏面シートの製造方法は、特に限定されず、従来公知の任意の製造方法が採用されてよく、例えば、押出成形、プレス成形等で合成樹脂シートを成形した後、プリズムの形状が賦形されている賦形ロールと鏡面ロールとの間を合成樹脂シートを通してする合成樹脂シートにプリズムを賦形する方法があげられる。
【0021】
図3は、本発明のファイルの異なる例を示す平面図である。図中1は表面シートであり、2は裏面シートである。表面シート1と裏面シート2は透明又は半透明合成樹脂よりなる略矩形のシートが折り目3により折畳まれて形成されている。又、表面シート1と裏面シート2の底部は熱融着され、熱融着部4が形成されており、折り目3及び熱融着部4により表面シート1と裏面シート2はその一側端部と底部が閉塞され、上方及び他側端部が開放されて収納可能に形成されている。
【0022】
又、6は表面シート1の上部付近に略矩形に、多数の断面略三角形の多数の凸条が縦方向(図3において上下方向)に平行に形成されているプリズム部である。表面シート1の裏面全面にエンボス加工が施され、その上に、プリズム部6に対応する部分以外の部分に着色剤層が積層されて不透明になされている。尚、5は表面シート1を裏面シート2から剥がしやすくするために、表面シート1に形成された切欠部である。
従って、上記ファイルにおいては、ファイル内に収納された書類の内容はプリズム部6を通してのみ視認することができるようになされている。
【実施例】
【0023】
次に、本発明の実施例を、図面を参照して説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0024】
(実施例1)
MFR=1.9g/10min、融点約160℃のポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ社製)を、スクリュー径70mmの一軸混練押出機に供給して樹脂温度210℃で溶融混練した後、溶融混練物を押出して幅920mm、厚さ0.2mmのポリプロピレン樹脂シートを得た。得られたポリプロピレン樹脂シートを金属鏡面ロールと75℃の賦形ロールの間に約6.0m/minの速度で供給しプレス成形した後、80℃のアニールロールに接触させてアニールしてプリズムが賦形された賦形シートを得た。
【0025】
賦形ロールには、断面形状が直角二等辺三角形(底辺が約50μm、高さ約25μm)の凸条が流れ方向に連続するように、且つ、隣り合う凸条の底辺が接するように多数形成されていた。
得られた賦形シートの厚さは約0.2mmであり、図2に示したように、表面全面に断面形状が二等辺直角三角形の凸条が多数形成されていた。二等辺直角三角形の底辺は約50μm、高さ約25μmであり、隣り合う凸条の底辺は接していた。
【0026】
得られた賦形シートを650mmの長さに切断し、縦920mm、横650mmの長方形のシートを得た。得られた長方形のシートを打ち抜いて幅440mm、長さ310mmの長方形のプリズムシートを得た。得られたプリズムシートの中央部を凸条の形成されている面が表面になるように折畳んで、図1に示したように、折り目3を介して表面シート1と裏面シート2を形成し、底部を熱融着して熱融着部4を形成して本発明のファイルを得た。
【0027】
得られたファイルには縦方向(図1において上下方向)に凸条が形成されていた。書類を挿入し、凸条が縦方向になるようにして正面(法線方向)から観察したところ、書類に印刷された文字は明確に視認できた。凸条が縦方向になるようにした状態で、観察方向を正面から徐々に斜めにしたところ、書類に印刷された文字は次第に見にくくなり、角度が45度を越えると全く視認できなくなった。
【0028】
(実施例2)
実施例1で使用したポリプロピレン樹脂100重量部にクロロフタロシアナト銅IIと塩素化フタロシアニングリーンとキノ[2,3−b]アクリジン−7,14―ジオン−5,12−ジヒドロ−2,9−ジメチルよりなる青色混合有機顔料0.02重量部を添加した以外は実施例1で行ったと同様にして賦形シートを得、ファイルを得た。
【0029】
得られたファイルには縦方向(図1において上下方向)に凸条が形成されていた。書類を挿入し、凸条が縦方向になるようにして正面(法線方向)から観察したところ、書類に印刷された文字は明確に視認できた。凸条が縦方向になるようにした状態で、観察方向を正面から徐々に斜めにしたところ、書類に印刷された文字は次第に見にくくなり、角度が45度を越えると全く視認できなくなった。
【0030】
(比較例1)
MFR=1.9g/10min、融点約160℃のポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ社製)を、スクリュー径70mmの一軸混練押出機に供給して樹脂温度210℃で溶融混練した後、溶融混練物を押出して幅920mm、厚さ0.2mmのポリプロピレン樹脂シートを得た。得られたポリプロピレン樹脂シートを2つの金属鏡面ロールの間に約6.0m/minの速度で供給しプレス成形した後、80℃のアニールロールに接触させてアニールして両面とも平滑なシートを得た。
【0031】
得られた平滑なシートを使用し、実施例1で行なったと同様にしてファイルを得た。得られたファイルに書類を挿入し、正面(法線方向)から観察したところ、書類に印刷された文字は明確に視認できた。観察方向を正面から徐々に斜めにしたところ、観察方向と書類が殆ど平行になるまで書類に印刷された文字は視認できた。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明のファイルは書類を収納するファイル、特に、第三者から収納された書類に記載されている内容を側方から視認されにくいプライバシーの保護に優れたファイルとして好適に使用できる。
【符号の説明】
【0033】
1 表面シート
2 裏面シート
3 折り目
4 熱融着部
5 切欠部
6 プリズム部
61 凸条
62 稜線
63 側壁
64 底部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明又は半透明合成樹脂よりなる表面シートと裏面シートが積層され、その一側端部、一側端部と底部又は両側端部と底部が閉塞されて収納可能に形成されているファイルであって、断面略三角形の多数の凸条が平行に、且つ、隣り合う凸条の底部が接するように形成されているプリズム部が該表面シートの表面の少なくとも一部分に設けられていることを特徴とするファイル。
【請求項2】
三角形が、頂角が60〜120度の二等辺三角形であることを特徴とする請求項1記載のファイル。
【請求項3】
合成樹脂が、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂又は塩化ビニル系樹脂であることを特徴とする請求項1又は2記載のファイル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−39808(P2013−39808A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179791(P2011−179791)
【出願日】平成23年8月19日(2011.8.19)
【出願人】(000198802)積水成型工業株式会社 (66)
【Fターム(参考)】