説明

ファイロン物品を安定化させるシステムおよび方法

モジュール化製造環境において熱プレス機を利用して生産されるファイロン物品を安定化させるための製造方法を提供する。まず、この方法はファイロン物品を第1のタンク内に収容した流体に浸漬するステップと、前記流体に曝した前記ファイロン物品を引き出すステップとを有する。典型的には、ミッドソールは生産時に熱プレスにより加熱されてから、第1のタンクに配置される。第1のタンク内の浸漬はファイロン物品を冷却することにより、加熱済みファイロンを安定化させる作用を有する。次に、ファイロン物品を第2のタンク内に収容した流体に配置し、この流体に曝したファイロン物品を引き出すことができる。第1のタンク内における流体は、第2のタンク内における流体の温度と同等またはそれ以上の温度で存在させることができる。加熱済みファイロン物品をこれらのタンク内の流体に反復的に曝すことにより物品の体積を段階的に減少させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2008年9月26日に出願した米国仮特許出願第61/194,471号(「SYSTEMS AND METHODS FOR STABILIZATION OF A PHYLON ARTICLE」)の恩典を主張する。この米国仮特許出願の開示内容は参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0002】
本発明は一般に、ファイロン(phylon)物品を安定化させるシステムおよび方法に関するものである。特に、本発明の諸態様は、内部に組み込んだ発泡剤(foaming agent)によって活性化される際に膨張するファイロンミッドソールを安定化させるステップを有する。
【背景技術】
【0003】
履物(フットウェア)の製造および設計分野の当業者なら、靴のミッドソールコンポーネントが主に靴の緩衝(クッショニング)系の中心的役割を果たし得ることを理解するだろう。一般にミッドソールは発泡体から製造され、また全体的に一貫した堅牢性を生ずる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ファイロンで構成したミッドソールは靴の残部に組み込む前にそれ自体の最終的なサイズに「安定化」させなければならない。ファイロンの安定化には、多くの場合ファイロンを、温度が徐々に低下するオーブン内で冷却する必要がある。
【0005】
この概要は、下記の詳細な説明で詳述する概念の要旨を簡略化した形式で紹介するものである。この概要は、添付した特許請求の範囲の各請求項に記載した主題の重要な特徴または不可欠な特徴を特定するものでなく、各請求項の範囲を決定する一助としての利用を意図したものでもない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一般に、本発明の実施形態は、熱プレス機を利用して生産されるファイロン物品を安定化させるための製造方法を実施するように構成したモジュール化製造に関する。まず、この方法は、ファイロン物品を第1のタンク内に収容した流体に浸漬するステップと、該流体に曝したファイロン物品を引き出すステップとを含む。典型的には、ミッドソールは生産時に熱プレスにより加熱されてから、第1のタンクに配置される。第1のタンク内の浸漬はファイロン物品を伝導冷却することにより、加熱済みファイロンを安定化させる作用を有する。いくつかの実施形態では、次に、ファイロン物品を第2のタンク内に収容した流体に配置し、この流体に曝したファイロン物品を引き出すことができる。例示的な一実施形態において、第1のタンク内の流体は、第2のタンク内における流体の温度が存在する温度範囲よりも高い温度範囲で存在する。他の実施形態において、第1のタンク内の流体は、第2のタンク内に存在する流体の温度範囲とほぼ同等の温度範囲で存在する。加熱済みファイロン物品を第1のタンク内の流体および第2のタンク内の流体に反復的に曝すことにより、ファイロン物品は各タンクに漬けられた後に段階的な体積の減少を示し、場合によっては変形するようになる。他の実施形態において、本方法はファイロン物品を第3のタンク内および第4のタンク内に収容した流体に配置するステップを有することができる。典型的には、第2のタンク内の流体は第3のタンク内の流体が存在する温度範囲と同等、またはそれ以上の温度範囲で存在し、第3のタンク内の流体は第4のタンク内の流体が存在する温度範囲と同等またはそれ以上の温度範囲で存在する。
【0007】
以下添付図面につき本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態を実施する際に使用するのに適した例示的なモジュール化製造環境のブロック図である。
【図2】ミッドソール生産分子(midsole production molecule)内の安定化ステーションで実施する、本発明の実施形態による安定化プロセスを示すブロック図である。
【図3】ファイロン物品を安定化させる本発明の実施形態による例示的な装置の線図的説明図である。
【図4】複数の予形成ビスケットを一体化させる本発明の実施形態による方法を全体的に示すフローチャートである。
【図5】ファイロン物品を安定させる本発明の実施形態による例示的な装置の線図的説明図である。
【図6】複数の予形成ビスケットを一体化させる本発明の実施形態による方法を全体的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書では法定要件を満足するために本発明の主題を具体的に記載している。しかしながら、この説明自体が本発明の範囲を限定するものではない。むしろ、本発明者らの意図するところは、各請求項に記載した主題は他の現行技術または将来の技術と共に他の手法で実施することもでき、それにより本明細書に記載したのと異なるステップまたは同様のステップの組み合わせが含まれることになる可能性もある。
【0010】
本発明の実施形態は、基礎的未加工材料から履物(フットウェア)物品を作製するためのモジュール化したモジュール化製造環境の全体にわたる流れで説明することができる。特に、このモジュール化製造環境は直販注文に対応可能であり、各注文の仕様に合致する個々人向けに個性化した履物の生産を可能にする。この環境は、あるタイプの履物の様々なカスタマイゼーションおよび/またはモデル(例えばトラックスタイルランニングシューズ対クロスカントリースタイルランニングシューズ)を可能にする融通性を備えることができ、様々なタイプの履物(例えばランニングシューズ対バスケットボールシューズ)を製造するように構成可能である。
【0011】
一実施形態において、モジュール化製造環境はシングルフローカスタマイゼーション製造プロセスを実行するように構成する。このシングルフロー製造プロセスは、本明細書で分子(molecule)と称するマイクロ製造建屋ブロックを含む生産モデルを利用する。「分子」という概念は限定的に解釈すべきではなく、製造プロセスの一部分を容易にする製造プロセスまたはデバイスの任意の部分を包含することができる。「分子」の意味は狭義にではなく広義に解釈すべきであり、この用語は例えば独立して機能する各加工エリアで実行することができる1つまたは複数の製造作業(例えば製作および組み立て)に加えて、特定の分子に割り当てられた製造作業を実施するデバイスおよび作業員も含む。
【0012】
これら個別の分子はプロセスフローを介して相互連結することができる。一例として、製造プロセスのいくつかの段階を一分子内で部分的に完成した履物物品に対して実行する。これら段階のうち最終段階を実行する際には、部分的に完成した履物物品を、主題とする履物物品用に策定した生産モデルが指示する他の分子に引き渡す。別の例では、ある分子内で実施する製造プロセスの最終段階は、部分的に完成した履物物品を別の分子に合流するマーケットプレイス内に配置するステップを含むことができる。このマーケットプレイスは一時保管エリアを有し、この一時保管エリアは、部分的に完成した複数の履物物品(例えば様々なスタイル、タイプおよびサイズの靴)を保持し、別の分子におけるオペレータが容易にアクセスできるようにする。部分的に完成した履物物品をマーケットプレイスから取り出す際には、この例示的な一時保管エリアは初期分子のオペレータに対して一時保管エリアの特定の空所を埋める製造プロセスを実行するよう指示することができる。すなわち、マーケットプレイスは、それ自体に合流する分子側のアクション(例えばユニットの生産または供給)をトリガする信号発生システムとして機能することができる。
【0013】
したがって、マーケットプレイスはモジュール化製造環境の後続目標を達成する上で効果的なツールである。モジュール化製造環境の後続目標とは、無駄なく最適化した在庫レベルを維持すること、および部分的に完成した新しい履物物品を補充する(すなわち製造および配送する)信号を発生することである。また、分子間の相互作用はプル型の系(システム)を反映し、このプル型の系は供給または生産を直販注文の実際の需要に従って決定する。さらに、様々な分子で実施する製造プロセスを同時に実行し、それによってマーケットプレイスの補充および引き出しを連続的に実施することもできる。
【0014】
諸実施形態では、これら分子を迅速に更新して、特定の履物物品の生産モデルに従って様々な製造プロセスを実行することができる。分子を個別かつ同時に更新することによってより高い柔軟性をモジュール化製造環境が達成することができ、このことは従来の製造システムと異なる。さらに、分子は特定の履物物品の生産モデルに基づいて追加または減少することができる。例えば、複雑な履物物品の場合は、1つまたはそれ以上の分子をモジュール化製造環境に組み込むことができ、典型的には1つまたはそれ以上の既成マーケットプレイスにリンクさせることができる。したがって、このモジュール化製造環境は、部分的に、製造すべき履物物品のタイプおよび/または要求される生産率に基づいて拡縮可能(スケーラブル)である。
【0015】
製造プロセスにおける分子の特別な利用例では、ランニングシューズ製造プロセスを様々な分子に分割し、これらの分子にランニングシューズの製作および組み立てに関連する作業をランニングシューズの生産モデルに従って割り当てるまたは分担することができる。例えば、ある一つの分子が個別に合成皮革の区画を裁断し、また意匠を印刷する役割を持たせるとともに、ランニングシューズの上側(アッパー)部分を組み立てる役割を別の分子と分け合うこともできる。別の例では、ある一つの分子に、ランニングシューズの各部分を原材料中間製品(raw grey goods)、例えばアウトソール用のペレット化ゴムまたはミッドソール用のペレット化ファイロンから製造する役割を持たせることができる。
【0016】
上記では相互にリンクした分子を有するモジュール化製造環境で本発明を実施する様々な実施形態について説明したが、当業者であれば、製造プロセスを実施するのに適した他のタイプの生産設計も使用でき、本発明の実施形態は本明細書に記載した構成に限定されないことを理解できるであろう。さらに、本発明は任意の数の分子を利用して履物物品または他の任意の製品を生産することを考慮しており、靴の生産に限定されるものと解釈すべきではない。
【0017】
モジュール化製造環境における1つの特定モジュールを、ミッドソールを作製するための製造プロセスを実施するモジュールとして割り当てることができる。一般に、ソールは靴の底部を構成する。ソールは、ミッドソールとアウトソールで構成される。アウトソールは地面に直接接触する層であり、材料の単一ピースで構成する、または材料の個別ピースで構成することできる(例えばドレスシューズは革製のアウトソールを有するが、カジュアル用もしくはスポーツ用シューズは天然ゴムもしくは合成ゴムによるアウトソールを有する)。これとは対照的に、ミッドソールは靴の内底をなして、使用者の足の真下に位置する。多くの靴は着脱可能かつ交換可能なミッドソールを有する。さらに、ミッドソールは、しばしば、履き心地または健康上の理由から足の形状を制御するよう、または湿気を排除するよう後付けされることがある。
【0018】
本発明のシステムおよび方法は、熱プレス機を利用してファイロン物品(例えばミッドソール)を生産し、また熱プレス機から取り出したファイロン物品を安定化させる。しかしながら、本発明の技術分野における当業者であれば、ミッドソールの生産に関連する製造プロセスは、図示の特定の手順と異なる様々な段階/ステップに分けて実施することもできることを理解できるであろう。したがって、本発明は2つの離散的な手順だけに限定されるものではなく、ミッドソール製造プロセスを有する多種多様な離散的かつ複合的な手順も包含することを強調しておく。
【0019】
まず、ミッドソールを熱プレス機において「ビスケット」から作製する手順と、これによって得られるミッドソールの実施形態について、添付図面につき説明する。各図面および関連する説明は本発明の実施形態の例示として与えるものであり、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書で言及する「一実施形態」とは、その実施形態に関して説明する特定の機能、構造または特徴が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。さらに、「一実施例において」という表現を本明細書の様々な箇所で使用しているが、これらがすべて同じ実施形態を指すとは限らない。
【0020】
以下では添付図面について全体的に説明する。まず図1から説明すると、モジュール化製造環境100を示し、このモジュール化製造環境100は、本発明の一実施形態によるシングルフローカスタマイゼーションの製造プロセスを実行するように構成する。上述のとおり、モジュール化製造環境100は、任意の数の分子、およびこれら分子に対して相互リンクするマーケットプレイスを有することができる。図示の実施形態では、ファイロンビスケットをミッドソールに膨張させる手順に集中して説明する。したがって、以下ではミッドソール生産分子110を中心に説明を進める。ミッドソール生産分子110は、射出ステーション125、マーケットプレイスI145、1つまたはそれ以上の熱プレス機150、安定化ステーション155、ポスト安定化処理ステーション160およびマーケットプレイスII165を有する。
【0021】
一般に、射出ステーション125は、ファイロンビスケット135をペレット化ファイロン120から作製するよう構成する。ペレット化ファイロン120(例えばエチレンビニルアセテート(EVA)フォームペレット)は、保管ベイのような資材置き場115に保管することができる。資材置き場115はミッドソール生産分子110の境界内に位置させる、またはミッドソール生産分子110から離れているが同じ施設内に位置させる、または遠隔施設に位置させることができる。資材置き場115は、資材置き場115に最も早期に貯蔵したペレット化ファイロン120を、より遅い時期に貯蔵したペレット化ファイロン120よりも先に使用する(すなわち、先入れ先出し(FIFO)方式を利用する)ことができるように編成することができる。ペレット化ファイロン120の資材置き場115からの回収は特定のタイムスケジュールに従って実施することができ、例えばペレット化ファイロン120の有効保存期間または満すべき直販注文に従って実施することができる。
【0022】
資材置き場115から射出ステーション125にペレット化ファイロン120を移送した際、ペレット化ファイロン120を溶融するまで加熱する。ただし、発泡剤が活性化するポイントには達しないよう加熱する。1つの特別な実施例では、溶融ファイロンを加熱する閾値温度を定める(例えば100℃)。この閾値温度は、典型的にはペレット化ファイロン120に組み込んだ発泡剤が活性化する温度を下回る温度に設定する。溶融ファイロンは、ランナーを経て射出成形型における1つまたはそれ以上のプリフォーム(pre-form)または成形キャビティに射出させることができる。この射出プロセスは、溶融ファイロンをプリフォーム内で冷却し、複数個のファイロンビスケット135を作製したときに完了する。ファイロンビスケット135はほぼプリフォームの形状となり、実質的に硬く非可撓性を維持する。したがって、プレフォームは、射出される溶融ファイロンの量、ならびに作製されるファイロンビスケット135のサイズおよび形状を正確に制御する。さらに、射出成形型内のプレフォームのキャビティ構成に基づいて、ファイロンビスケットを様々な形状で作製することができる。例えば、ファイロンビスケット135はほぼマシュマロのような形状、または互いに絡み合ったピース(interlocking pieces)のような複雑な形状に形成することができる。
【0023】
仕上がったファイロンビスケット135は、一時保管のため射出ステーション125からマーケットプレイスI145に移動する。射出成形型のランナー内で捕捉されて冷却した余剰ファイロンは、他のオーバーフローしたファイロンと共にリサイクルステーション140に回送することができる。一般に、リサイクルステーション140はこの余剰ファイロンを粉砕してペレット化ファイロン120にする役割を担い、これによりペレット化したファイロン120を資材置き場115に保管することができ、後で再利用することができる。このような余剰ファイロンの再利用プロセスが可能となる理由は、溶融ファイロンを発泡剤が活性化する閾値温度を超えて加熱しないからである。したがって、溶融ファイロンは膨張すなわち「膨れ上がり(blown)」を生ずることがなく、これによりファイロンの化学的特性がそのまま維持され、ファイロンの再利用が可能となる。このようにして、リサイクルステーション140は、射出ステーション125の射出プロセスと連携してファイロンの無駄を低減し、それに関連するコストも減少させる。
【0024】
ファイロンビスケット135の選別は、ファイロン物品を形成するための出発材料として利用すべきマーケットプレイスI145から抽出することができる。他の実施形態では、ペレット化ファイロン120を資材置き場115から移動させてマーケットプレイスI145内に保持することができる。その後、このペレット化ファイロン120を抽出して、ファイロン物品形成用の出発材料として個別に利用することまたはファイロンビスケット135の選別と併せて利用することができる。例示的な一実施形態では、ファイロンビスケット135および/またはペレット化ファイロン120を熱プレス150に投入し膨張させる前に予加熱プロセスにかける。一般に、予加熱プロセスは、ファイロンビスケット135および/またはペレット化ファイロン120の内部に熱を導入するように作用する。これにより、予加熱したファイロンビスケットを熱プレス機150で加熱したときに一貫性のある膨張が達成される。換言すると、予加熱プロセスは、熱プレス機150によってファイロンビスケットの表面を初期的に加熱するときに、ファイロンビスケット135および/またはペレット化ファイロン120の内側に熱を発生させるものであり、したがって、発泡剤の一貫性のある活性化を利用してファイロンビスケット135および/またはペレット化ファイロン120を均一に溶融させる。さらに、ファイロンビスケット135および/またはペレット化ファイロン120のうちの1つまたは複数を予加熱することにより、ファイロンビスケット135および/またはペレット化ファイロン120を熱プレス機150によって適切に膨張させるのに要する時間を大幅に短縮するという利点が得られる。
【0025】
一例として、マイクロ波装置180をファイロンビスケット135および/またはペレット化ファイロン120の内部に熱を導入するために設ける。マイクロ波装置180は、関連分野の当業者に理解されるように、物体の外側を加熱する前にまたはそれと並行して物体の内部を加熱することができる任意の装置とすることができる。このような装置としては、以下限定しないが、食品用マイクロ波装置(例えば1.2キロワットで動作するMagic Chef(モデル番号:MCB780W)、業務用/商用マイクロ波装置、マイクロ波もしくは他の任意な形態の放射線を物体内に導入できる装置、物体の内側および外側を均一に加熱するオーブン等がある。
【0026】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、ファイロンビスケット135および/またはペレット化ファイロン120がコア位置で閾値温度に達するまでマイクロ波装置180で加熱する。別の実施形態において、予加熱プロセスは、ファイロンビスケット135および/またはペレット化ファイロン120の内部に熱を導入するステップを有する。このステップは時間的スケールに基づいて実行する。単なる例として、ファイロンビスケット135および/またはペレット化ファイロン120は、(個別にまたは任意の組み合わせで)Magic Chefスタイルのマイクロ波装置180の「高(high)」設定で65秒間予加熱することができる。しかしながら、予加熱プロセス中にファイロンビスケットおよび/またはペレット化ファイロン120に導入される熱量を計測する任意の方法を使用することができ、また本発明はこのような方法をすべて想定していることを理解されたい。
【0027】
予加熱プロセスが完了した際、予加熱したファイロンビスケットおよび/またはペレット化ファイロン120をマイクロ波装置180から熱プレス機150のうちの1つまたはそれ以上に移送してそれら熱プレス機の内部に配置する。熱プレス機150は、通常、活性化の際に複数のファイロンビスケット135を一体化させてミッドソールを形成するように構成する。例示的な一実施形態において、一体化は、選別したファイロンビスケット135および/またはペレット化ファイロン120を少なくとも閾値温度より高い温度まで昇温するステップを有する。この熱プレス機150の閾値温度は射出ステーション125における閾値温度よりも高い。一例として、熱プレス機150の閾値温度は、ファイロンビスケット135および/またはペレット化ファイロン120の内部に組み込んだ発泡剤を活性化するのに十分高い温度と定める。単なる例として、ファイロンビスケット135および/またはペレット化ファイロン120を160〜172℃に設定した閾値温度まで8〜13分かけて加熱する。この加熱によって膨張(ブローイング)プロセスを開始し、ファイロンビスケット135および/またはペレット化ファイロン120は受け取り時点のほぼ2倍のサイズに膨張する。別の例では、目標膨張率を160%とすることができる。例示的な実施形態において、ファイロンビスケット135および/またはペレット化ファイロン120は、それらの個々の密度または硬さレベルに関わらず同様の膨張率で膨れ上がる。
【0028】
上述のように、ファイロンビスケット135および/またはペレット化ファイロン120に組み込んだ発泡剤はそれらを膨張させる役割を担う。発泡剤は、ファイロンをペレット形式で受け取るときにファイロン中に成分として組み込む。従来は膨張剤(blowing agent)等いくつかの異なる呼び方も存在するが、熱活性化に基づいて膨張の発生を促進するまたはその役割を担うファイロン中に組み込む成分を本明細書では発泡剤(foaming agent)と称する。
【0029】
発泡剤は、単独でまたは他の物質と共にプラスチックのセル(細胞)構造を生ずることができる任意の物質とすることができる。発泡剤としては、圧力が釈放されたときに膨張する圧縮ガス、浸出したときに気孔を残す可溶性固体、気体に変化したときにセルを発達させる液体、および熱の影響下で分解または反応して気体を形成する化学薬品を挙げることができる。例えば、化学発泡剤はアンモニウムや重炭酸ナトリウムのような単純な塩から複雑な窒素放出剤にまで及ぶ。動作にあたり、熱プレス機150が発泡剤の活性化温度に達した後、ファイロンビスケットのポリマー鎖が分解し始め、その結果ファイロンは柔軟性および可撓性といったエラストマー特性を得る。したがって、ファイロンは冷却すると衝撃吸収特性を示す。
【0030】
さらに、一体化プロセスは、少なくとも、加熱されたファイロンビスケット135を膨張させ、それにより各ファイロンビスケット135を別のファイロンビスケット135に結合させるステップを有する。または、他の実施形態において、一体化プロセスは、加熱済みのファイロンビスケット135およびペレット化ファイロン120を膨張させ、それにより各ファイロンビスケット135をペレット化ファイロン120の個々の粒子に結合させるステップを有する。また、さらに他の実施形態において、一体化プロセスは、加熱済みのペレット化ファイロン120を膨張させ、それによりペレット化ファイロン120の個々の粒子を互いに結合させるステップを有する。したがって、熱プレス機150は、ファイロンビスケット135および/またはペレット化ファイロン120を混合して可撓性の加熱したミッドソール175を形成する。しかしながら、本発明の技術分野の当業者であれば、熱プレス機150は、図示の特定の実施形態と異なる他の可撓性ファイロン物品を作製するように構成することもできることを理解できるであろう。したがって、本発明はミッドソールのみに限定されるわけではなく、特許請求の範囲の精神に含まれる多種多様な構成要素を包含することを強調しておく。
【0031】
例示的な一実施形態において、ファイロンビスケット135および/またはペレット化ファイロン120を溶融して加熱済みのミッドソール175を形成するステップは、ファイロンビスケット135および/またはペレット化ファイロン120を粘性材料(例えば粘着液)になるまで溶融させるステップと、粘性のファイロンビスケット135および/またはペレット化ファイロン120が融合し、また架橋して境界を形成するように、該ファイロンビスケット135および/またはペレット化ファイロン120の温度を維持するステップとを有する。すなわち、粘性のファイロンビスケット135および/またはペレット化ファイロン120を加熱することにより、それらが互いに干渉し合う程度まで、または熱プレス機150の成形キャビティの壁部まで流れるようにする。したがって、ファイロンビスケット135および/またはペレット化ファイロン120が膨張し相互結合して加熱済みのミッドソール175を形成するが、ファイロンビスケット135の明確な区分けまたはペレット化ファイロン120の間仕切り化が残存する。
【0032】
次いで、加熱済みのミッドソール175を安定化するよう安定化ステーション155に引き渡す。以下、熱プレス機から加熱したミッドソールの安定化プロセスについて図1および図2につき説明する。特に、図2は本発明の実施形態によるミッドソール生産分子110内における安定化ステーション155で実施する安定化プロセス900を示すブロック図である。ファイロン物品(ミッドソールを含む)は、例示のために上記で説明したビスケット技術以外の方法および技術を使用して生産することができることを理解されたい。安定化ステーション155は、本発明に従って他のタイプのファイロン物品を安定化するのに使用することもでき、および/または他のプロセスを使用することもできる。
【0033】
まず、加熱済みのミッドソール175を熱プレス機150の成形キャビティから取り出し、安定化ステーション155に引き渡す。安定化ステーション155は、タンクA210、タンクB220、タンクN230のような複数個のタンクを有することができ、これらタンクはそれぞれ流体を特定温度に保持する。安定化ステーション155の他の実施形態では単一のタンク、例えばタンクA210のみを使用する構成とする。タンク210、220および230を、以下に「浴」と称する。浴の個数は様々であり、1個のタンクを有する、または複数個のタンクを有することもできる。例示的な一実施形態では3個または4個の浴を使用する。しかしながら、浴の正確な個数は加熱済みミッドソール175のジオメトリまたは組成によって部分的に決まる。また、各浴は特定の温度に保持する。一例として、順次の一連の浴を設置し、この設置は、加熱済みミッドソール170を反復して浴に配置し、それらの浴が互いに類似の温度に保持されるように行う。別の例では、順次の一連の浴は、加熱済みミッドソール170を最初に最も熱い特定温度の浴(例えばタンクA210)に配置し、最後に最も冷たい特定温度の浴(例えばタンクN230)に配置し、段階的な冷却方法によって安定化したミッドソール185を得るように設置する。ミッドソールを各浴に配置し、そこから引き出すために利用する方法は、手作業的に(例えばグローブをはめた手により)、または自動的に(例えばコンベヤ機構により)行うことができる。単なる例として、安定化ステーション155は、それぞれほぼ75℃、65℃、55℃および45℃に保持される、4個の一連の順次浴を設けることができる。加熱済みミッドソール175を、コンベヤにより75℃の第1浴に浸漬させ、その後の浴温度が高い順に浸漬させ、最終的にほぼ45℃に保持した浴から安定化したミッドソール185を引き出すまで行うことによって安定化させることができる。
【0034】
動作時は、ミッドソールを、段階的により低い浴温度となる各浴に順次配置し、ミッドソールの温度を制御可能に一定の比率で低下させ、これにより履物のタイプおよびサイズの寸法基準を満すミッドソールのサイズに減少させる。一般に、これらの浴には水性流体を使用することができる。有利なことに、水は効果的な熱伝導体として作用する。この点で従来の空気による安定化システムと異なる。すなわち、水は空気の何倍もの伝導率を有する。したがって、水は空気よりもずっと速い速度で加熱済みミッドソール175から熱を奪うことができる。例えば、空気対流冷却プロセスを使用して安定化させるのに45分を要するファイロン物品でも、通水冷却プロセスでは安定化に要する時間が約8分となる。したがって、水浴を使用した安定化は加熱済みミッドソール175から熱を取り除く迅速なプロセスであり、結果的に部品の一貫性が高まり材料の無駄が低減する(すなわち、環境に優しい)。
【0035】
さらに、単なる水以外に、他のタイプの流体を安定化ステーション155で使用することができる。一実施形態において、水性流体としては、特に超音波洗浄装置(図示せず)を安定化ステーション155に組み込んだときに加熱済みミッドソール175の洗浄作業(すなわち、塵およびアレルゲンの除去)を実行する洗浄液を挙げることができる。例えば、この洗浄液は、石鹸または洗剤とすることができる。別の実施形態において、タンク210、220および230のうちの1つまたはそれ以上における水性流体としては、後で接着剤を塗布するための下塗りを加熱済みミッドソール175に施すことができる添加剤を挙げることができる。添加剤としては、UV活性化塩化物塩を挙げることができ、このUV活性化塩化物塩は、例えば加熱済みミッドソール175をタンク210、220および230のうち1つまたはそれ以上に浸漬したときに、流体に添加した下塗り添加剤が、加熱済みミッドソール175の表面に浸入するまたは該表面に付着する。安定化ステーション155の順次の浴通過は加熱済みミッドソール175を自ずと洗浄を行い、また上述したような他の利点ももたらすことができるので、安定化ステーション155から退出した安定化済みのミッドソール185に対して袋詰め手順を実施することができる。この袋詰め手順は、一例として安定化済みミッドソール185を容器(例えばビニール袋)に入れ、該容器を封止して安定化済みミッドソール185の清潔さおよび/またはそれに付着した下塗りを保護する。
【0036】
2つの異なるタイプの添加剤(洗浄液および下塗り添加剤)について説明したが、当業者であれば、他の利点をもたらす他のタイプの適切な添加剤を使用することができ、本発明の実施形態は本明細書に記載した添加剤に限定されないことを理解できるであろう。例えば、浴内の流体の伝導特性を向上させる溶媒を使用することができる。
【0037】
例示的な一実施形態では、3つまたは4つの浴を安定化ステーション155内に設ける。3浴構成では、浴の温度は、90℃〜45℃の範囲とすることができる。例えば、第1浴の温度を90℃またはその前後に保持し、第2浴の温度を75℃またはその前後に保持し、第3浴の温度を45℃またはその前後に保持することができる。4浴構成では、浴の温度を90℃〜45℃の範囲、またはさらに広い範囲とすることができる。これは、浴が多くなるほどより広い温度範囲にわたる段階的な安定化が可能となるからである。例えば、第1浴の温度を90℃またはその前後に保持し、第2浴の温度を75℃またはその前後に保持し、第3浴の温度を60℃またはその前後に保持し、第4浴の温度を45℃またはその前後に保持することができる。安定化ステーション155の2つの異なる浴構成について説明したが、当業者であれば、他のタイプの適切な浴構成(例えばサイズ、流体体積、数)および安定化を促進する他の浴温度を使用することができ、本発明の実施形態は本明細書に記載した構成に限定されないことを理解できるであろう。例えば、浴のうちの1つまたはそれ以上がほぼ同様の温度を有するようにすることができ、また単一の浴内で熱交換要素の位置に基づき温度を変化させることもできる。本発明の範囲から逸脱しない限りどのようなタイプの加熱素子および/または冷却素子でも使用することができる。
【0038】
上記では安定化ステーション155の浴内における流体の水性調合物について説明したが、当業者であれば、加熱済みミッドソールの冷却および安定化をもたらす他のタイプの適切な流体を使用することもでき、本発明の実施形態は本明細書に記載した水性流体に限定されないことを理解するだろう。例えば、油性流体またはアルコールベースの流体を使用することができる。また別の例では、1つまたはそれ以上の浴が1つのタイプの流体を含み、他の浴が1つの他タイプの流体または様々なタイプの流体を含む可能性もある。したがって、安定化ステーション155の浴内で使用する流体のタイプは限定的なものと解釈すべきではない。
【0039】
他の実施形態では、浴内のミッドソール160を安定化させる際に、安定化ステーションは1つまたはそれ以上のファン、ブロワ(例えば、エアナイフ遠心ブロワ)等を含むことができる。これらはミッドソール160の乾燥およびさらなる冷却/安定化をもたらす要素である。一例として、複数のブロワを使用してミッドソール160をさらに安定化させ、各ブロワが特定の温度の空気を吹き付けるように構成することができる。例えば、ブロワによって推進される空気の温度は、ミッドソール160にあたる空気の温度がある温度範囲にわたって第1のブロワから最後のブロワに向かう順に低くなるように設定することができる。空気の温度は調整可能とすることができ、熱交換器、気流制限または通過する空気内に熱を発生させる他の任意の手段によって定めることができる。
【0040】
図3は、安定化ステーション155内の例示的な装置300を示す線図的説明図である。まず、装置300は浴341、342、343および344を含む。各浴に熱交換器340を配設する。熱交換器340は様々な温度に設定することができ、関連技術分野で知られる任意のタイプの熱交換器を含むことができる。他の実施形態では、熱交換器340は、1つまたはそれ以上の加熱素子または冷却デバイスに置き換えることができる。さらに、ブロワシステム310を設け、このブロワシステム310は、加熱空気330を浴IV344から退出するミッドソール323および324に向けて吹き付ける。さらに、コンベヤ320を設け、このコンベヤ320はミッドソール321および322を浴341、342、343および344のそれぞれに自動的に浸漬させ、ミッドソール323および324を加熱空気330下方に搬送する。ミッドソール321、322、323および324の搬送は、コンベヤ320に沿って配送される保持具345(例えばトレイ、箱、クリップ等)によって容易となる。
【0041】
本発明によるシステムの動作にあたり、ミッドソール321をコンベヤ上にある保持具345の各個に装填し、浴I341に搬送し、そして浴I341内の流体に浸漬する。流体は熱交換器340によって加熱することができる。熱交換器340は、浴I341に近接配置する、または浴I341に取り付ける、または浴内で浸水させることができる。次に、ミッドソール322を浴I341から取り出し、浴II342内に投入する。浴II342は別の温度に保持することができる。浴341、342、343、344間に絶縁体315を設けることができる。絶縁体315を用いると各浴を一貫性のある所定温度に維持することが容易となる。一方、スペーサ335を使用してこれら絶縁状態を得るようにすることもできる。次いで、コンベヤはミッドソールを次の浴343および344に移送し、その後ブロワシステム310に移送する。ミッドソール324をさらに乾燥させ加熱空気330によって安定化させたら、保管またはさらなる処理のためにコンベヤ320の保持具345から取り出すことができる。図示のように、装填ゾーンおよび取り出しゾーンは互いに比較的近接する。
【0042】
本発明の技術分野における当業者であれば、装置300が図示の特定の実施形態と異なる様々なデバイスによって実施できることを理解できるであろう。したがって、本発明は発明の実施形態のみに限定されるものではなく、加熱済みファイロンを1つまたはそれ以上の浴および随意的にブロワシステムによって安定化させる多種多様な機構を包含することを強調しておく。
【0043】
ここで図1につき説明すると、安定化済みミッドソール160をポスト安定化ステーション160に引き渡す。ポスト安定化ステーション160では、様々な作業をミッドソール160に対して実行して履物物品のバランス調整用にミッドソールの保管および組み立ての準備を行う。若干の実施形態において、様々な作業としては、紫外線(UV)硬化、二次的洗浄および下塗りのうち少なくとも1つまたはそれ以上がある。次に、これらミッドソールを最終的に他の分子における他のステーションに配送するためのマーケットプレイス165に引き渡す。例示的な一実施形態では、仕上げたミッドソールをマーケットプレイスII165から取り出し、引き続きモジュール化製造環境100の組み立て分子において処理し、履物の対応物品に組み込む。
【0044】
次に、図4は加熱したファイロン物品を安定化させる本発明の実施形態による方法400を全体的に示すフローチャートである。まず、ブロック410に示すように、ファイロン物品(図1および図9の加熱済みミッドソール175に対応)を、流体を収容した第1のタンク内に配置する。流体はほぼ第1の温度に保持し、典型的には水性とする。ブロック420に示すように、第1のタンクの流体に曝したまたは浸漬させたファイロン物品を取り出す。ブロック430および440に示すように、ファイロン物品を、流体を収容する第2のタンク内に配置し、そして該流体に曝したファイロン物品を取り出す。この第2のタンクの流体は、ほぼ、第1のタンクにおける流体の第1の温度よりも冷たい第2の温度に保持する。例示的な一実施形態において、これら温度差は5〜10℃である。ブロック450に示すように、ファイロン物品を、段階的により低い温度の流体を収容する他のタンクに順次に曝す。最後のタンクの流体に曝したファイロン物品を取り出した時点で、ファイロン物品は目標サイズで安定化し、履物の対応ピースとの組み立てが可能となる寸法を有する。
【0045】
図5は安定化ステーション155内の例示的な装置500を示す線図である。まず、装置500は熱交換器(図示せず)を配設した単一の浴580を有する。上述のとおり、熱交換器は様々な温度に設定することができ、関連技術分野で知られる任意のタイプの熱交換器を設けることができる。さらに、コンベヤ320も設ける。コンベヤ320は、ファイロン物品520を浴580に自動的に浸漬し、ファイロン物品520を装置500の出口における装填/取り出しステーション501に搬送する。ファイロン物品520の搬送はバスケット型の容器510によって容易となる。バスケット型の容器510は装填および取り出しが容易であり、かつ浴580内の流体が該容器に収容したファイロン物品520の表面を完全に取り囲むことを許容する。4個の容器510を図示したが、より多くの容器をコンベヤ320に結合することもできる。
【0046】
本システムの動作時は、ファイロン物品520(ミッドソールとして示した)をコンベヤ320における1個の容器510に装填し、浴580へと搬送し、ステージ502で浴580内の流体に浸漬する。流体は熱交換器によって加熱することができ、この熱交換器は流体に近接配置する、または流体に浸漬させる。次に、ファイロン物品520を所定時間にわたって流体中をくぐらせてからステージ503に到達させる。ここでファイロン物品520を流体から引き出す。次いで、ファイロン物品520を装填/取り出しステーション510に搬送しながらさらに乾燥し、また従来のように空気によって安定化させる。この時点でファイロン物品をコンベヤ320から取り出し、袋詰め、保管またはその後の処理に供することができる。
【0047】
次に、図6は加熱済みファイロン物品を安定化させる本発明の実施形態による方法600を全体的に示すフローチャートである。まず、ブロック610に示すように、ファイロン物品を、流体を収容したタンク内に浸漬する。流体はほぼ一定の温度に保持し、典型的には水性とする。ブロック620に示すように、ファイロン物品を所定期間にわたってタンクの流体中をくぐらせる。実施形態において、この期間および流体温度はファイロン物品のジオメトリ、サイズおよび組成に従って定める。ブロック630に示すように、タンクの流体に曝したまたは浸漬させたファイロン物品を引き出す。例示的な一実施形態では、流体の温度が5〜10℃の範囲となるように安定に保持する。ブロック640に示すように、ファイロン物品を引き続き最初のタンク内の流体とほぼ同等の温度の流体を収容する他のタンクに浸漬する。他の最終タンク内の流体に曝したファイロン物品を引き出した時点で、ファイロン物品は目標サイズに安定化され、履物の対応ピースとの組み立てが可能となる寸法を有する。
【0048】
上述のとおり、ファイロン物品は、一般に熱プレス機内におけるファイロン物品の膨張(ブローイング)のような製作プロセスで加熱される。ファイロン物品を流体に浸漬する場合(熱伝導冷却)は、空気に曝す場合(従来の冷却)よりもずっと速い速度でファイロン物品の冷却が促進される。したがって、ファイロン物品を安定化させるプロセスが加速され、それ故製造時間が短縮される。
【0049】
しかしながら、ファイロン物品からの除熱をこのような速い速度で行うことは、ファイロン物品の形状に変形を生じるおそれがある。例えば、ファイロン物品は熱プレスから釈放されたときに第1の形状をとるとともに、安定化が達成されたときに第2の形状をとることができる。したがって、ファイロン物品の第1の形状はモールド内のキャビティの寸法によって制限されるが、固有の変形を考慮に入れた形状設計および作製が可能となる。また、ファイロン物品の化学組成、ジオメトリ、サイズのような他の属性も変形を考慮して調整することができる。さらに、流体の温度および/またはファイロン物品をタンク内の流体に曝す所定時間の期間を操作して変形に対処することもできる。したがって、安定化済みファイロン物品の第2の形状は、対応する構成要素に組み立てる上で許容し得る形状となるように管理することができる。
【0050】
以上、本発明を特定の実施形態に関して説明してきたが、これらの実施形態はあらゆる点で限定的なものではなく例示的なものである。本発明の属する技術分野の当業者には本発明の範囲から逸脱することなく代替的実施形態が可能であることは明らかであろう。
【0051】
上記の説明から、本発明は、上述のすべての目標および目的、ならびに本発明のシステムおよび方法に明白かつ固有の他の利点を達成するように適切に構成できることが分かるだろう。いくつかの特徴およびサブコンビネーションは他の特徴およびサブコンビネーションと独立して有用であり、それぞれ独立して利用することができることも理解されるだろう。添付した特許請求の範囲ではこのことを企図しており、このような特徴はすべて各請求項の範囲に含まれるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱プロセスを利用して生産されるファイロン物品を安定化するための製造方法であり、ファイロン物品を前記熱プロセスに曝した後、該ファイロン物品を第1のタンクに収容した流体内に配置するステップと、前記ファイロン物品を前記第1のタンクから引き出すステップと、前記ファイロン物品を第2のタンクに収容した流体内に配置するステップとを有し、前記第1のタンク内の前記流体は前記第2のタンク内の前記流体が存在する温度よりも高い第1の温度で存在するものとし、前記方法はさらに、前記ファイロン物品を前記第2のタンクから引き出すステップを有し、加熱した前記ファイロン物品を前記第1のタンク内の前記流体、前記第2のタンク内の前記流体に順次移し替えることより、前記ファイロン物品が段階的に体積減少を示すようにすることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であり、さらに、前記ファイロン物品を第3のタンクに収容した流体に配置するステップを有し、前記第2のタンク内における前記流体の温度は前記第3のタンク内の前記流体が存在する温度よりも高いものとすることを特徴とする、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であり、さらに、前記ファイロン物品を第4のタンクに収容した流体に配置するステップを有し、前記第3のタンク内における前記流体の温度は前記第4のタンク内の前記流体が存在する温度よりも高いものとすることを特徴とする、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であり、前記第1のタンク内における前記流体の温度は、前記第2のタンク内における前記流体の温度よりも10℃高いものとすることを特徴とする、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であり、前記第1のタンク内の前記流体は、主に水を含むものとすることを特徴とする、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であり、前記第1のタンクは、前記第1のタンクに収容した前記流体に超音波を発生させるように構成した装置と連結されることを特徴とする、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であり、前記ファイロン物品は、履物物品用のミッドソールとすることを特徴とする、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であり、前記第1のタンク、前記第2のタンク、前記第3のタンク、および前記第4のタンクのうち1つまたはそれ以上は、洗浄液を含むことを特徴とする、方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であり、前記第1のタンク、前記第2のタンク、前記第3のタンク、および前記第4のタンクのうち1つまたはそれ以上は、前記ファイロン物品が接着剤を受け入れる準備を整える下塗り添加剤を含むことを特徴とする、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であり、前記下塗り添加剤はUV活性化塩化物塩を含むことを特徴とする、方法。
【請求項11】
熱プロセスを利用して生産されるファイロン物品を安定化させるための製造方法であり、前記ファイロン物品を熱プロセスに曝した後、該ファイロン物品を第1のタンクに収容した流体内に浸漬するステップと、前記ファイロン物品を所定期間にわたって前記第1のタンク内の前記流体中をくぐらせるステップと、前記第1のタンク内に収容した前記流体に曝した前記ファイロン物品を引き出すステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であり、さらに、前記ファイロン物品を第2のタンクに収容した流体に浸漬するステップを有し、前記第2のタンク内の前記流体は前記第1のタンク内における前記流体の温度と実質的に同等の温度で保持し、前記方法は、さらに、前記第2のタンク内に配設した前記流体に曝した前記ファイロン物品を引き出すステップを有することを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項11に記載の方法であり、前記所定期間を前記ファイロン物品のジオメトリに基づいて調整するステップをさらに有することを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項11に記載の方法であり、前記ファイロン物品は履物物品用のミッドソールとし、前記方法は、さらに、前記所定期間を前記履物物品のサイズに基づいて調整するステップを有することを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項11に記載の方法であり、前記所定期間を、前記ファイロン物品を形成するファイロンの化学組成に基づいて調整するステップをさらに有することを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項11に記載の方法であり、前記ファイロン物品を前記第1のタンク内における前記流体中をくぐらせる前記ステップは、コンベヤを利用して前記流体中の前記ファイロン物品を自動的に搬送するステップを有することを特徴とする、方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であり、前記コンベヤと結合したバスケット型容器を利用して前記ファイロン物品を搬送することを特徴とする、方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であり、前記バスケット型容器は、前記第1のタンク内の前記流体が前記ファイロン物品の表面全体に到達できるように構成したことを特徴とする、方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であり、さらに、前記第1のタンクまたは前記第2のタンク内に収容した前記流体に曝した前記ファイロン物品を引き出したときに、前記ファイロン物品を前記バスケット型容器から取り出すステップと、前記ファイロン物品を封止可能な容器に入れ、前記流体によって得られる前記ファイロン物品の清潔さを保護するステップとを有することを特徴とする方法。
【請求項20】
ファイロン物品を安定化させるためのプロセスを実施することにより第1の形状から第2の形状に変形するファイロン物品であり、前記プロセスは、前記ファイロン物品が熱プロセスから釈放されるときに前記第1の形状をとるような変形を考慮して前記ファイロン物品を製作するステップと、前記ファイロン物品を熱プロセスに曝した後、前記ファイロン物品を第1のタンク内に収容した流体に浸漬するステップと、前記ファイロン物品を所定期間にわたって前記第1のタンク内の前記流体中をくぐらせるステップと、前記第1のタンク内に収容した前記流体に曝した前記ファイロン物品を引き出すステップと、を有し、前記流体からの引き出しに伴い、前記ファイロン物品が安定化した際に前記第2の形状をとり、前記第2の形状は対応する構成要素との組み立てが許容できる形状であることを特徴とする、ファイロン物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−504023(P2012−504023A)
【公表日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−529314(P2011−529314)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【国際出願番号】PCT/US2009/058616
【国際公開番号】WO2010/037026
【国際公開日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(505424859)ナイキ インターナショナル リミテッド (249)
【Fターム(参考)】