説明

ファーストフード、ファーストフード用包装材およびその製造方法

【課題】ファーストフード食品の型くずれを容易に回避することができるファーストフード用包装材を提供する。
【解決手段】ハンバーガーHが第1袋状空間の最深部に突き当たったら、作業者は第3シート片29を引き上げつつハンバーガーHに目一杯に第3シート片29を覆い被せる。その結果、ハンバーガーHの包み込みはさらに補強されることができる。こうして作業者が第3シート片29の第2縁29bを摘み上げ主体シート片12の第2面でハンバーガーHを滑らせるだけで、ハンバーガーHは第1シート片23、第2シート片25および第3シート片29に包み込まれることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えばハンバーガーその他のファーストフード並びにファーストフード食品用の包装材およびその製造方法に関する。なお、以下の明細書および特許請求の範囲を通じて、「シート片」には、紙や樹脂といった素材の種類に関係なく、対象物を包み込むことができる程度の可撓性を有するあらゆる薄膜片が含まれることができる。
【背景技術】
【0002】
例えば多量にソース分を含むハンバーガーの包装にあたって袋型の包装材が用いられる。この包装材は1対の矩形の紙片から構成される。重ね合わせられる紙片同士が3辺で張り合わせられる。こうした袋型の包装材によれば、ソースが外側に漏れ出ることは防止されることができる(特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−241439号公報
【特許文献2】特開平10−193518号公報
【特許文献3】特許第3607750号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、こうした包装材では紙片の1辺同士で開口が縁取られる。収容空間の奥行きは深い。開口から収容空間の奥までハンバーガーを滑らせると、包装材の内面との摩擦でハンバーガーのバンズはずれやすい。ハンバーガーは型くずれしてしまう。こうした型くずれの回避にあたって作業者は気を遣う。その結果、作業効率は悪化してしまう。
【0005】
その他、ある種の包装材では、重ね合わせられる紙片同士が隣接する2辺で張り合わせられる。重なる紙片の縁同士が融着されることから、袋にマチが付けられていない。しかも、角を挟んで隣接する2片同士が融着されることから、袋の底が平らになることができない。したがって、ハンバーガーの側面と袋の底との間に空間が形成されてしまう。ソースが潤滑剤として機能してしまい、飲食者がハンバーガーを噛むたびにバンズ同士の間からその空間に向かって具材が滑り落ちてしまう。
【0006】
本発明のいくつかの態様によれば、ファーストフード食品の型くずれを容易に回避することができるファーストフード用包装材を提供することができる。本発明の他の態様によれば、そういったファーストフード包装材で包装されて提供されるファーストフードおよびファーストフード用包装材の製造方法を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の形態によれば、ファーストフード食品を受け止める受け止め域を一部に区画する主体シート片と、前記主体シート片の縁から谷折りされて、前記受け止め域の一部に重なって第1深さの第1袋状空間を形成する第1シート片と、前記第1袋状空間の開口で前記第1シート片の縁から山折りされて前記第1シート片の外面に重ねられ、その中間位置で谷折りされて前記第1シート片に重なる前記第1深さよりも浅い第2深さの第2袋状空間を形成する第2シート片とを備えるファーストフード用包装材が提供される。
【0008】
こういったファーストフード用包装材(以下「包装材」という)はファーストフード食品(以下「食品」という)の包装にあたって用いられる。包装にあたって食品は第1シート片から外れた位置で受け止め域に置かれる。第2シート片が主体シート片から離れる方向に引き上げられると、第1袋状空間の体積が拡大して食品収容空間を形成する。作業者は食品を滑らせて第1袋状空間による食品収容空間に進入させることができる。このとき、第1袋状空間の深さが食品の大きさに比べて小さく設定されれば、食品は部分的にしか第1袋状空間に進入しない。食品が完全に袋状空間に押し込まれる場合に比べて、食品の型くずれは容易に防止されることができる。さらに、中間位置で折り畳まれた第2シート片が第1シート片から離れる方向に引き上げられると、第2シート片が大きく展開する。その結果、第2袋状空間の第2深さ以上の長さの第2シート片が第1袋状空間の第1深さの第1シート片と連続平面を形成する。そのため、第1および第2シート片が主シート片と対向して形成される空間を食品収容空間とすることができ、食品収容空間のさらなる増大に寄与することから、食品は包装材で十分に包み込まれることができる。
【0009】
食品の飲食時、食品は部分的に少なくとも第1袋状空間内に収まったまま露出することができる。こうして食品は第1袋状空間に保持されることから、例えば重力の働きで食品から流動体が流れ出しても、そうした流動体は第1袋状空間内に保持されることができる。流動体は外側に漏れ出てこない。飲食者は流動体の漏出を気にせずに食品を食すことができる。
【0010】
包装材は、前記第2袋状空間の開口で前記第2シート片の縁から山折りされて前記第2シート片の外面に重ねられる第3シート片をさらに備えてもよい。第3シート片が第2シート片から離れる方向に引き上げられると、第1、第2および第3シート片が主シート片と対向して形成される空間を食品収容空間とすることができ、食品収容空間のさらなる増大に寄与することから、食品の包み込みはさらに補強されることができる。
【0011】
前記第3シート片は前記主体シート片の前記縁よりも外側にはみ出させることができる。第3シート片は主体シート片の外側にはみ出ることから、ファーストフード食品の包装にあたって作業者は簡単に第3シート片の縁を掴み上げることができる。作業効率は高められる。
【0012】
この包装材では、前記第1深さの前記第1袋状空間の形成にあたって前記主体シート片の前記縁から谷折りされて重ねられる前記第1シート片および前記主体シート片を相互に接着する1対の接着部は、前記主体シート片の前記縁で規定される折り返し線から、それぞれ前記主体シート片の両側縁に向かって前記折り返し線に対して所定の傾斜角で分岐する1対の分岐線に沿って延びればよい。
【0013】
こうした構造によれば、主体シート片に対して第1シート片が展開されると、一対の接着部の働きで第1袋状空間は船底形に形作られる。こうして主体シート片および第1シート片は食品の側面でマチを形成する。したがって、包装材は食品の側面に満遍なく接触することができる。食品の側面と包装材との間で空間の形成が防止される。飲食者は包装材の外側から安定した状態で食品を掴むことができる。空間がないことから、食品の位置は安定する。同時に、飲食者が包装材の上から食品を押さえても、食品の側面から具材が滑り落ちることは防止されることができる。
【0014】
包装材では、前記第1袋状空間の形成にあたって前記主体シート片の前記縁から谷折りされて重ねられる前記第1シート片および前記主体シート片を相互に融着する第1融着部と、前記第2袋状空間の形成にあたって前記中間位置で谷折りされて重ねられる前記第2シート片同士を相互に融着する第2融着部とは、主体シート片、第1シート片および第2シート片が順番に重ねられる際に相互に重なり合ってもよい。
【0015】
こうした構成によれば、主体シート片、第1シート片および第2シート片が重ねられた際に1つの加熱治具(例えばホットプレス)で第1融着部および第2融着部は同時に加熱されることができる。したがって、包装材の製造工程は簡素化されることができる。包装材の製造コストは低減されることができる。
【0016】
ファーストフードは、以上のような包装材と、包装材の前記第1袋状空間に受け入れられる食品とを備えればよい。食品は、前記主体シート片、前記第1シート片および前記第2シート片で包み込まれればよい。
【0017】
本発明の第2の形態によれば、非融着面である第1面および裏側の融着面である第2面を有する素材片を第1谷折り線で折り返し、第2面同士を重ね合わせる工程と、前記第1谷折り線で折り返されて形成される折り返し片を第1谷折り線に平行な第1山折り線で折り返し、第1面同士を重ね合わせる工程と、前記第1山折り線で折り返されて形成される折り返し片を前記第1山折り線に平行で前記第1谷折り線よりも前記第1山折り線に近い第2谷折り線で折り返し、第2面同士を重ね合わせる工程と、前記第2谷折り線で折り返されて形成される折り返し片を前記第2谷折り線に平行で前記第1山折り線よりも前記第2谷折り線に近い第2山折り線で折り返し、第1面同士を重ね合わせる工程と、前記第1谷折り線、前記第1山折り線、前記第2谷折り線および前記第2山折り線で折り返されて重ねられた素材片に、それぞれ前記素材片の両側縁に向かって前記第1谷折り線に対して所定の傾斜角で前記第1谷折り線から分岐する1対の分岐線に沿って加熱治具を当て、重ねられた第2面同士の間で融着を確立する工程とを備える包装材の製造方法が提供される。こういった包装材の製造方法によれば、前述のような包装材は製造されることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように本発明によれば、ファーストフード食品の型くずれは容易に回避されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】ファーストフード用包装材(以下「包装材」という)の正面図、平面図、左側面図、右側面図および底面図を示す。
【図2】包装材の背面図を示す。
【図3】包装材の拡大部分斜視図である。
【図4】第1袋状空間を概略的に示す斜視図である。
【図5】主体シート片およびそれに重ねられる第1シート片を示す背面図である。
【図6】第2袋状空間を概略的に示す斜視図である。
【図7】主体シート片およびそれに重ねられる第1シート片および第2シート片を示す背面図である。
【図8】主体シート片、第1シート片、第2シート片および第3シート片の素材の拡大断面図である。
【図9】ハンバーガーを受け止める包装材を示す斜視図である。
【図10】第1袋状空間に部分的にハンバーガーを受け入れた包装材を概略的に示す斜視図である。
【図11】第1シート片、第2シート片および第3シート片でハンバーガーを覆った包装材を概略的に示す斜視図である。
【図12】ハンバーガーの包装にあたって二つ折りされた包装材を概略的に示す斜視図である。
【図13】ハンバーガーの包装にあたって三つ折りされた包装材を概略的に示す斜視図である。
【図14】ハンバーガーの摂取にあたって包装を解いた包装材を概略的に示す斜視図である。
【図15】素材シート片を概略的に示す斜視図である。
【図16】第1谷折り線で折り返された素材シート片を概略的に示す斜視図である。
【図17】第1山折り線で折り返された素材シート片を概略的に示す斜視図である。
【図18】第2谷折り線で折り返された素材シート片を概略的に示す斜視図である。
【図19】第2山折り線で折り返された素材シート片を概略的に示す斜視図である。
【図20】加熱位置を示す素材シート片の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
【0021】
図1はファーストフード用包装材(以下「包装材」という)を概略的に示す。包装材11は1枚の主体シート片12を備える。主体シート片12は例えば薄い可撓性の素材片から形成される。素材片の詳細は後述される。図1には主体シート片12の第1面が示される。主体シート片12の第1面には例えば模様や文字が印刷されてもよい。
【0022】
主体シート片12は矩形に形成される。矩形の第1辺13aは第1直線14で仕切られる。第1辺13aに直交する第2辺13bおよび第3辺13cすなわち両側縁は第1直線14に直交する第2直線15および第3直線16でそれぞれ仕切られる。第1辺13aに向き合う第4辺13dは第1直線14に平行に延びる第4直線17で仕切られる。
【0023】
図2には主体シート片12の第2面が示される。第2面は第1面の裏面に相当する。主体シート片12は受け止め域18を一部に区画する。受け止め域18は、後述されるように、ファーストフード食品を受け止める。受け止め域18の区画にあたって例えば主体シート片12は6等分される。6等分にあたって第1直線14および第4直線17に平行に第5直線19が描かれればよい。第5直線19は第2辺13bおよび第3辺13cをそれぞれ二等分する。同様に、第2直線15および第3直線16に平行に第6直線21および第7直線22が描かれればよい。第6直線21および第7直線22は第1辺13aおよび第4辺13dを三等分する。受け止め域18は第4直線17、第5直線19、第6直線21および第7直線22で仕切られる。ただし、受け止め域18はファーストフード食品の大きさや形状に応じて適宜に調整されればよい。図中、受け止め域18の図示にあたって受け止め域18にはハッチングが施される。このハッチングは図面の表現にあたって用いられるものであって主体シート片12そのものに描かれるわけではない。
【0024】
図3を併せて参照し、主体シート片12の縁すなわち第4辺13dから第1シート片23が折り返される。第1シート片23は例えば主体シート片12に連続すればよい。第1シート片23は主体シート片12の第2面に重ねられる。第1シート片23は第4直線17および第8直線24で仕切られる。第1シート片23の第1縁23aは第4直線17で規定される。第1シート片23の第2縁23bは第8直線24で規定される。第4直線17は、主体シート片12の縁で規定される折り返し線に相当する。第8直線24は第4直線17および第5直線19の間で第4直線17に平行に設定される。第8直線24の位置は例えばファーストフード食品の輪郭や厚みに応じて適宜に調整されればよい。その他、こうした折り返しに代えて、第1シート片23の第1縁23aと主体シート片12の第4辺13dとがそれらの線方向に途切れなく融着されてもよい。
【0025】
第1シート片23の第2縁23bから第2シート片25は折り返される。第2シート片25は例えば第1シート片23に連続すればよい。第2シート片25は第1シート片23の外面に重ねられる。第2シート片25は中間位置で折り返される。こうして第2シート片25同士は重ねられる。第2シート片25は第8直線24および第9直線26で仕切られる。第2シート片25の第1縁25aは第8直線24で規定される。第2シート片25の第2縁25bは第9直線26で規定される。中間位置の折り返し線27は第10直線28で規定される。第10直線28は第8直線24および第4直線17の間で第8直線24に平行に設定される。第9直線26は第8直線24および第10直線28の間で第8直線24に平行に設定される。その他、折り返しに代えて、第2シート片25の第1縁25aと第1シート片23の第2縁23bとはそれらの線方向に途切れなく融着されてもよく、中間位置の折り返しに代えて、当該折り返し位置で分割された第2シート片25が中間位置で相互に融着されてもよい。
【0026】
第2シート片25の第2縁25bから第3シート片29は折り返される。第3シート片29は例えば第2シート片25に連続すればよい。第3シート片29は第2シート片25の外面に重ねられる。第3シート片29は第9直線26および第11直線31で仕切られる。第3シート片29の第1縁29aは第9直線26で規定される。第3シート片29の第2縁29bは第11直線31で規定される。第3シート片29の第2縁29bは主体シート片12の縁よりも外側に広がる。すなわち、第11直線31は主体シート片12の外側に設定される。
【0027】
図4に示されるように、主体シート片12および第1シート片23は2筋の第1接着域32で相互に接着される。接着にあたって融着が用いられる。個々の第1接着域32は主体シート片12の縁(第4辺14d)から分岐して第1シート片23の第2縁23bに至る。こうして2つの第1接着域32が主体シート片12の縁から連続することから、主体シート片12および主体シート片12の縁から折り返される第1シート片23の間に第1深さの第1袋状空間33が形成される。第1袋状空間33の開口は第1シート片23の第2縁23bで縁取られる。図5に示されるように、第1深さD1は第4直線17および第8直線24の距離に相当する。第1袋状空間33は受け止め域18の一部のみに重なる。
【0028】
個々の第1接着域32は、第4直線17および第8直線24に交差する1対の第12直線34に沿って途切れなく形成される。第4直線17から遠ざかるにつれて第12直線34同士の間隔が広がるように、第12直線34は所定の傾斜角αで第4直線17から分岐して主体シート片12の両側縁すなわち第2直線15および第3直線16に向かう。傾斜角αは好ましくは例えば60度に設定されればよい。
【0029】
図6に示されるように、中間位置で折り返されて重ねられる第2シート片25同士は2筋の第2接着域35で相互に接着される。接着にあたって融着が用いられる。個々の第2接着域35は中間位置の折り返し線から分岐して第2シート片25の第2縁25bに至る。こうして2つの第2接着域35が折り返し線27から連続することから、中間位置で折り返される第2シート片25同士の間に第2深さの第2袋状空間36が形成される。第2袋状空間36の開口は第2シート片25の第2縁25bで縁取られる。図7に示されるように、第2深さD2は第9直線26および第10直線28の距離に相当する。第2深さD2は第1深さD1よりも浅く設定される。
【0030】
個々の第2接着域35は第10直線28および第9直線26の間で第12直線34に沿って途切れなく形成される。したがって、第10直線28から遠ざかるにつれて第2接着域35同士の間隔は広がる。しかも、個々の第2接着域35は対応の第1接着域32に重なる。
【0031】
例えば図8に示されるように、主体シート片12、第1シート片23、第2シート片25および第3シート片29は、例えば加工紙37から形成される。加工紙37は紙と熱可塑性樹脂膜との積層体から形成される。ここでは、1対の可撓性の低密度ポリエチレン薄膜38a、38bの間に吸収紙39が挟み込まれる。低密度ポリエチレン薄膜38a、38bの膜厚は例えば10μm程度に設定されればよい。吸収紙39の厚みは例えば15gsm程度に設定されればよい。その上で、低密度ポリエチレン薄膜38bの外面には薄紙41が積層される。薄紙41の厚みは例えば21gsm程度に設定されればよい。薄紙41の外面は主体シート片12の第1面として働く。低密度ポリエチレン薄膜38aの外面は主体シート片12の第2面として働く。こうした加工紙37は水分や油分といった液体の透過を防止することができる。第2面として働く低密度ポリエチレン薄膜38aはポリプロピレン(PP)のスパンボンド不織布といった熱融着可能な素材で置き換えられてもよい。加えて、低密度ポリエチレン薄膜38bに代えてその他の素材が用いられてもよい。その他、こうした加工紙37に代えて耐油紙にポリプロピレンのスパンボンド不織布が張り合わせられたものが用いられてもよい。耐油紙の厚みは例えば20〜80gsm程度に設定されればよい。不織布の膜厚は例えば10〜100gsm程度に設定されればよい。こうした素材によれば、油分の滲みは防止されると同時に、水蒸気の透過は確保されることができる。
【0032】
次に、包装材11の使用方法を簡単に説明する。包装材11は例えばハンバーガーの包装にあたって用いられる。まず、図9に示されるように、調理台や作業台に包装材11が広げられる。主体シート片12の第2面が上向きになるように包装材11は置かれる。作業者は受け止め域18にハンバーガーHを置く。ここでは、ハンバーガーHは、第1シート片23に隣接する位置で受け止め域18に配置されればよい。
【0033】
続いて作業者は第3シート片29の第2縁29bを引き上げる。第3シート片29は主体シート片12の外側にはみ出ることから、作業者は簡単に第3シート片29の第2縁29bを掴み上げることができる。その結果、作業効率は高められる。こうして第2縁29bが引き上げられると、図10に示されるように、第2シート片25は第1シート片23に対して融着されずに第1縁25aで連続することから、第2シート片25および第3シート片29が立ち上がる。
【0034】
さらに第3シート片29が引き上げられると、第1袋状空間33の開口が開く。作業者はハンバーガーHを滑らせて第1袋状空間33内にハンバーガーHを進入させる。作業者は、ハンバーガーHが第1袋状空間33の最深部に突き当たるまで、ハンバーガーHを進入させ続ける。ここでは、図10に示されるように、ハンバーガーHの大きさに比べて第1袋状空間33の第1深さD1は小さく設定されることから、ハンバーガーHは部分的にしか第1袋状空間33に進入しない。ハンバーガーHが開口から完全に袋状空間に押し込まれる場合に比べて、ハンバーガーHの型くずれは簡単に防止されることができる。
【0035】
ハンバーガーHが第1袋状空間33の最深部に突き当たると、折り畳まれた第1シート片23と主体シート片12とは第1縁23aおよび第4辺13dの両側で大きく展開される。同時に、折り畳まれた第2シート片25は折り返し線27の両側で大きく展開される。その一方で、第1接着域32および第2接着域35は主体シート片12および第1シート片23の重なりと折り返される第2シート片25同士の重なりを拘束し続ける。その結果、第1袋状空間33と第2袋状空間36とが1つの空間に連続して空間の奥行きが増大する。収容空間は増大する。ハンバーガーHは第1シート片23および第2シート片25で十分に包み込まれることができる。
【0036】
図11に示されるように、ハンバーガーHが第1袋状空間33の最深部に突き当たったら、作業者は第3シート片29を引き上げつつハンバーガーHに目一杯に第3シート片29を覆い被せる。その結果、ハンバーガーHの包み込みはさらに補強されることができる。こうして作業者が第3シート片29の第2縁29bを摘み上げ主体シート片12の第2面でハンバーガーHを滑らせるだけで、ハンバーガーHは第1シート片23、第2シート片25および第3シート片29に包み込まれることができる。
【0037】
その後、図12に示されるように、主体シート片12は第5直線19に沿って折り畳まれる。続いて、図13に示されるように、主体シート片12は第6直線21および第7直線22で折り畳まれる。こうしてハンバーガーHは包装材11で完全に包み込まれる。ファーストフードFとしての商品が完成する。
【0038】
飲食者は、例えば図14に示されるように、包装材11の包みを解いてハンバーガーHにかじりつくことができる。このとき、第3シート片29は第1縁29a(第2シート片25の第2縁25bに相当)で折り返されればよく、主体シート片12も第1袋状空間33の開口付近で外側に折り返されればよい。ハンバーガーHは部分的に第1袋状空間33内に収まったまま露出する。こうしてハンバーガーHは第1袋状空間33に保持されることから、例えば重力の働きでハンバーガーHからソースその他の流動体が流れ出しても、そうした流動体は第1袋状空間33内に保持されることができる。流動体は外側に漏れ出てこない。飲食者は流動体の漏出を気にせずにハンバーガーHを食すことができる。
【0039】
主体シート片12に対して第1シート片23が展開されると、第1接着域32の働きで第1袋状空間33は船底形に形作られる。こうして主体シート片12および第1シート片23はハンバーガーHの側面でマチを形成する。したがって、包装材11はハンバーガーの側面に満遍なく接触することができる。ハンバーガーHの側面と包装材11との間で空間の形成が防止される。飲食者は包装材11の外側から安定した状態でハンバーガーHを掴むことができる。空間がないことから、ハンバーガーHの位置は安定する。同時に、飲食者が包装材11の上からハンバーガーHを押さえても、ハンバーガーHの側面からミートといった具材が滑り落ちることは防止されることができる。
【0040】
なお、主体シート片12、第1シート片23、第2シート片25および第3シート片29に加工紙37に代えて耐油紙にポリプロピレンのスパンボンド不織布が張り合わせられたものが用いられる場合には、油分は滲まずに水分は蒸発することができる。その結果、例えば電子レンジでハンバーガーHが温め直されても、ハンバーガーHはべたつかず、飲食者は作りたてのおいしさを堪能することができる。
【0041】
次に包装材11の製造方法を簡単に説明する。まず、図15に示されるように、1枚の素材シート片43が用意される。素材シート片43は前述の加工紙37の枚葉紙で形成される。素材シート片43の大きさは包装材11で包み込まれるファーストフード食品の大きさに応じて設定される。加工紙37の薄紙41は素材シート片の第1面となる。加工紙37の低密度ポリエチレン薄膜38aは第1面の裏面すなわち第2面となる。第2面同士は融着することができる。第1面同士は融着しない。第1面には予め文字や模様が印刷される。
【0042】
第2面すなわち薄紙41側の表面が上向きになるように素材シート片43は作業台その他の平坦面上に置かれる。素材シート片43の第1縁44aは主体シート片12の第1辺13aに対応する。第1縁44aは第1直線14で仕切られる。素材シート片43の第2縁44bおよび第3縁44cは第2直線15および第3直線16で仕切られる。第1縁44aに向き合う第4縁44dは第3シート片29の第2縁29bに対応する。
【0043】
素材シート片43は折り畳まれる。まず、図16に示されるように、素材シート片43は第1谷折り線45で折り返される。第1谷折り線45は第4直線17に相当する。第2面同士は重ね合わせられる。こうして主体シート片12の縁すなわち第4辺13dは形成される。素材シート片43の一部は第1谷折り線45で折り返されて折り返し片46を形成する。
【0044】
次に、図17に示されるように、折り返し片46は第1山折り線47で折り返される。第1山折り線47は第1谷折り線45に平行に設定される。第1山折り線47は第8直線24に相当する。第1面同士は重ね合わせられる。こうして第1シート片23の第2縁23bが形成される。折り返し片46の一部は第1山折り線47で折り返されて折り返し片48を形成する。
【0045】
続いて、図18に示されるように、折り返し片48は第2谷折り線49で折り返される。第2谷折り線49は第1山折り線47に平行に設定される。第2谷折り線49は第1谷折り線45よりも第1山折り線47に近い位置に配置される。第2谷折り線49は第10直線28に相当する。第2面同士は重ね合わせられる。こうして第2シート片23の折り返し線27が形成される。折り返し片48の一部は第2谷折り線49で折り返されて折り返し片51を形成する。
【0046】
続いて、図19に示されるように、折り返し片51は第2山折り線52で折り返される。第2山折り線52は第2谷折り線49に平行に設定される。第2山折り線52は第1山折り線47よりも第2谷折り線51に近い位置に配置される。第2山折り線52は第9直線26に相当する。第1面同士は重ね合わせられる。こうして第2シート片25の第2縁25bが形成される。折り返し片51の一部は第2山折り線52で折り返されて折り返し片すなわち第3シート片29を形成する。素材シート片43の第4縁44dは主体シート片12の縁(第1シート片23の第1縁23a)よりも外側にはみ出す。
【0047】
こうして折り畳まれた素材シート片43に加熱治具(例えばホットプレス)が押し当てられる。図20に示されるように、加熱治具は長尺の平坦面54を有する。加熱治具の適用に先立って素材シート片43は裏返される。折り畳まれた素材シート片43は加熱治具の平坦面54と作業台の平坦面との間に挟まれる。加熱治具の平坦面54は、第1谷折り線45から分岐する1対の分岐線55に沿って位置決めされる。分岐線55は第12直線34に相当する。第1谷折り線45から遠ざかるにつれて分岐線55同士の間隔が広がるように、分岐線55は所定の傾斜角αで第1谷折り線45から分岐して素材シート片43の両側縁すなわち第2直線15および第3直線16に向かう。傾斜角αは好ましくは例えば60度に設定されればよい。加熱治具の平坦面54から素材シート片43に熱エネルギーが加えられる。熱エネルギーの付与に応じて第2面同士の間で融着は確立される。こうして第1接着域32および第2接着域35は形成される。包装材11の製造は終了する。
【0048】
なお、以上の説明では、第1直線〜第12直線14〜17、19、21、22、24、26、28、31、34は形状の規定にあたって利用される仮想線に過ぎない。包装材11は、前述のハンバーガーのほか、サンドイッチやおにぎりといったファーストフード食品の包装にあたって利用されることができる。加えて、第1接着域32および第2接着域35の形成にあたって、前述のように加工紙37の熱可塑性樹脂膜の熱溶着が用いられてもよく、接着剤による接着が用いられてもよい。
【符号の説明】
【0049】
11 ファーストフード用包装材、12 主体シート片、13d 主体シート片の縁(第4辺)、18 受け止め域、23 第1シート片、23b 第1シート片の縁(第2縁)、25 第2シート片、25b 第2シート片の縁(第2縁)、29 第3シート片、32 接着部(第1融着部)、33 第1袋状空間、34 分岐線(第12直線)、35 第2融着部、36 第2袋状空間、43 素材片(素材シート片)、45 第1谷折り線、46 折り返し片、47 第1山折り線、48 折り返し片、49 第2谷折り線、51 折り返し片、52 第2山折り線、55 分岐線、54 加熱治具(の平坦面)、D1 第1深さ、D2 第2深さ、F ファーストフード、H ファーストフード食品としてのハンバーガー、α 傾斜角。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファーストフード食品を受け止める受け止め域を一部に区画する主体シート片と、
前記主体シート片の縁から谷折りされて、前記受け止め域の一部に重なって第1深さの第1袋状空間を形成する第1シート片と、
前記第1袋状空間の開口で前記第1シート片の縁から山折りされて前記第1シート片の外面に重ねられ、その中間位置で谷折りされて前記第1シート片に重なる前記第1深さよりも浅い第2深さの第2袋状空間を形成する第2シート片と
を備えることを特徴とするファーストフード用包装材。
【請求項2】
請求項1に記載のファーストフード用包装材において、
前記第2袋状空間の開口で前記第2シート片の縁から山折りされて前記第2シート片の外面に重ねられる第3シート片をさらに備える
ことを特徴とするファーストフード用包装材。
【請求項3】
請求項2に記載のファーストフード用包装材において、
前記第3シート片は前記主体シート片の前記縁よりも外側にはみ出ている
ことを特徴とするファーストフード用包装材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のファーストフード用包装材において、
前記第1袋状空間の形成にあたって前記主体シート片の前記縁から谷折りされて重ねられる前記第1シート片および前記主体シート片を相互に接着する1対の接着部は、前記主体シート片の前記縁で規定される折り返し線から、それぞれ前記主体シート片の両側縁に向かって前記折り返し線に対して所定の傾斜角で分岐する1対の分岐線に沿って延びる
ことを特徴とするファーストフード用包装材。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載のファーストフード用包装材において、
前記第1袋状空間の形成にあたって前記主体シート片の前記縁から谷折りされて重ねられる前記第1シート片および前記主体シート片を相互に融着する第1融着部と、
前記第2袋状空間の形成にあたって前記中間位置で谷折り返されて重ねられる前記第2シート片同士を相互に融着する第2融着部とは、
前記主体シート片、前記第1シート片および前記第2シート片が順番に重ねられる際に相互に重なり合う
ことを特徴とするファーストフード用包装材。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のファーストフード用包装材の前記第1袋状空間にファーストフード食品を受け入れ、前記主体シート片、前記第1シート片および前記第2シート片で前記ファーストフード食品を包み込むことを特徴とするファーストフード。
【請求項7】
非融着面である第1面および裏側の融着面である第2面を有する素材片を第1谷折り線で折り返し、第2面同士を重ね合わせる工程と、
前記第1谷折り線で折り返されて形成される折り返し片を第1谷折り線に平行な第1山折り線で折り返し、第1面同士を重ね合わせる工程と、
前記第1山折り線で折り返されて形成される折り返し片を前記第1山折り線に平行で前記第1谷折り線よりも前記第1山折り線に近い第2谷折り線で折り返し、第2面同士を重ね合わせる工程と、
前記第2谷折り線で折り返されて形成される折り返し片を前記第2谷折り線に平行で前記第1山折り線よりも前記第2谷折り線に近い第2山折り線で折り返し、第1面同士を重ね合わせる工程と、
前記第1谷折り線、前記第1山折り線、前記第2谷折り線および前記第2山折り線で折り返されて重ねられた素材片に、それぞれ前記素材片の両側縁に向かって前記第1谷折り線に対して所定の傾斜角で前記第1谷折り線から分岐する1対の分岐線に沿って加熱治具を当て、重ねられた第2面同士の間で融着を確立する工程と
を備えることを特徴とするファーストフード用包装材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−218764(P2012−218764A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85484(P2011−85484)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(506357712)株式会社カプリ (2)
【Fターム(参考)】