説明

フィラデルフィア染色体陽性白血病を治療するためのPlGFの阻害

本出願は、白血病の分野に関し、さらに詳しくは、どのようにPlGF阻害がフィラデルフィア染色体陽性(Ph+)白血病を治療することができるかということに関する。PlGF阻害剤を投与することによるPh+白血病の治療方法が提供される。また、Ph+白血病の治療におけるPlGF阻害剤の使用またはPh+白血病に対する薬剤の製造のためのPlGF阻害剤の使用が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、癌、詳しくは、白血病の分野に関する。より詳しくは、フィラデルフィア染色体陽性(Ph+)白血病の治療に関する。これは、胎盤増殖因子(PlGF)の阻害によって達成される。したがって、PlGF阻害剤を用いる、具体的には抗PlGF抗体を用いるPh+白血病の治療方法が提供される。この方法で治療されることが予想される白血病の具体的な型は、慢性骨髄性(myelogenous)白血病(CML)、特に、イマチニブなどの従来のBCR/ABL阻害剤が十分な治療効果をもたらすことができない患者における慢性骨髄性白血病である。
【背景技術】
【0002】
フィラデルフィア染色体は、フィラデルフィア転座としても公知であり、慢性骨髄性(myelogenous)白血病(CML)と関連した特異的染色体異常である。これは、9番染色体と22番染色体との間の相互転座の結果であり、特に、t(9;22)(q34;q11)と命名される。この転座の存在は、CML患者の95%がこの異常を有するので、CMLの高感度試験である。CML患者の残りの5%は、典型的に、Gバンド染色体調製物上で不可視の潜在性転座、または9番染色体および22番染色体の長腕とともに別の単数の染色体もしくは複数の染色体を含むバリアント転座のいずれかを有する。しかしながら、成人急性リンパ芽球性(lymphoblastic)白血病(ALL)症例の25〜30%(および小児ALL症例の2〜10%)にも見られるので、フィラデルフィア(Ph)染色体の存在だけでは、CMLを診断するのに十分特異的ではない。
【0003】
それでもなお、これらの疾患は、明らかに異なる。急性リンパ性(lymphoblastic)白血病(ALL)は、悪性で未熟な白血球が継続的に増殖し、骨髄中で過剰産生される、白血病の一形態である。ALLは、骨髄中の正常な細胞を締め出すことおよび他の器官に拡散(転移)ことによって、損傷および死亡を引き起こす。ALLは、小児期および青年期において最も一般的であり、4〜5歳に発生率のピークがあり、別のピークは老齢期にある。全体の治癒率は、小児で85%であり、成人の約50%は長期の無病生存期間を有する。「急性」は、循環リンパ球(「芽細胞」)の未分化で未熟な状態をいい、治療しないまま放置されれば数週間から数ヵ月中に致死し得る、疾患の急速な進行をいう。急性白血病の治療としては、化学療法、ステロイド剤、放射線療法、集中的な併用療法(骨髄移植または幹細胞移植を含む)、および増殖因子を挙げることができる。
【0004】
もう一方の慢性骨髄性(myelogenous)(または骨髄球性(myeloid))白血病(CML)は、主に骨髄中の骨髄系細胞の無秩序な増殖の増加およびこれらの細胞の血液中の蓄積によって特徴付けられる、白血病の一形態であり、したがって、これは骨髄増殖性疾患である。CMLは、成熟した顆粒球(好中球、好酸球および好塩基球)の増殖ならびにそれらの前駆体が主な所見であるクローン性骨髄幹細胞障害である。現在、標的療法も利用可能であり、標準的な治療として用いられているが、歴史的には、これは化学療法、インターフェロンおよび骨髄移植で治療されている。
【0005】
フィラデルフィア染色体中で観察される9番染色体および22番染色体の一部の交換は、BCR−ABL融合遺伝子を生じさせる(メロ(Melo)、1996年))。すなわち、22番染色体由来のBCR(「易切断領域」)遺伝子の一部(q11領域)が、9番染色体上のABL遺伝子の一部(q34領域)と融合する。Ablは、同様のタンパク質を保有する白血病ウイルスの名前である「エーベルソン」を表す。2種類のBCR−ABL転写産物(kDaで表される見かけの分子量にちなんで名付けられたp185およびp210アイソフォームを産生する)が、BCR領域の切断点によって産生される。融合「BCR−ABL」遺伝子は、得られた、より短い22番染色体上に位置する。ABLは、チロシン残基にリン酸基を付加することができるドメイン(チロシンキナーゼ)を保持し、BCR−ABL融合遺伝子産物も、チロシンキナーゼである(フェイダール(Faderl)ら、1999年)。
【0006】
融合BCR−ABLタンパク質は、インターロイキン−3β共通受容体サブユニットと相互作用する。BCR−ABL転写産物は、継続的に活性があり、他の細胞メッセージングタンパク質による活性化を必要としない。そして、BCR−ABLは、細胞周期を制御するタンパク質のカスケードを活性化し、細胞分裂を加速させる。さらに、BCR−ABLタンパク質は、DNA修復を阻害してゲノム不安定性を引き起こし、細胞に、さらなる遺伝子異常をより発生しやすくし、慢性期から治療不能な急性転化へのCMLの進行を強く促進する。BCR−ABLタンパク質のチロシンキナーゼ作用は、慢性骨髄性(myelogenous)白血病の病態生理学的な原因であると考えられている。BCR−ABLタンパク質の活性を特異的に阻害する標的療法が開発されている。これらの最初のものは、イマニチブ(そのメシル酸塩として、グリベック(Glivec)(登録商標)またはグリーベック(Gleevec)(登録商標)の商品名で市販されている)であった。これらのチロシンキナーゼ阻害剤および他のチロシンキナーゼ阻害剤は、CMLにおいて完全寛解を引き起こすことができ、CMLにおけるBCR−ABLの最重要性が確認される(ヒールマン(Hehlmann)ら、2007年)。フィラデルフィア染色体陽性(Ph+)ALLをBCR−ABL阻害剤で治療した場合に、限られた成果も報告されている(ヤマダ(Yamada)およびナオエ(Naoe)、2006年;ピッカルガ(Piccaluga)ら、2006年)。
【0007】
イマチニブおよび第2世代BCR/ABL阻害剤(例えば、ダサチニブ)の導入が、フィラデルフィア染色体陽性(Ph+)白血病の患者の治療に革命をもたらしたにもかかわらず、治療に成功した患者においても白血病細胞が存続し、一部の患者は抵抗性を生じ、最終的には再発することは、公知の課題である(スウォード(Swords)ら、2007年;ブチャート(Buchert)、2007年;リ(Li)およびリ(Li)、2007年;クジャウスキー(Kujawski)およびタルパッツ(Talpaz)、2007年)。これらの欠点の理由は、完全には解決されていない。
【0008】
したがって、フィラデルフィア染色体陽性白血病の患者、特に、BCR−ABL阻害剤での治療に応答しない患者を治療するためのさらなる選択肢を有することは、有利であろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
フィラデルフィア染色体陽性(Ph+)白血病を治療するための新規の治療のアプローチを提供することは、本出願の目的である。具体的には、イマチニブのようなBCR−ABL阻害剤が療法として適合しない(または、もはや適合しない)患者に役立つアプローチを提供することができることも想定される。驚くべきことに、胎盤増殖因子(PlGF)の阻害は、この因子が白血病細胞系中で発現されないにもかかわらず、白血病マウスの有意に長期の生存期間をもたらすことが見出された。さらに、この長期の生存期間は、BCR−ABL阻害剤について見られるものに反して、BCR−ABL変異状態とは無関係である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、第1の側面によれば、フィラデルフィア染色体陽性白血病の治療のための胎盤増殖因子の阻害剤の使用が想定される。また、フィラデルフィア染色体陽性白血病の治療用薬剤の作製のための胎盤増殖因子の阻害剤の使用が想定される。
【0011】
同様に、被験体にPlGFの阻害剤を投与することを含む、それを必要とする被験体におけるフィラデルフィア染色体陽性白血病の治療方法が提供される。もちろん、それによって、それを必要とする被験体において、症状を寛解させるか、または最終的にはPh+白血病を治療することが目標である。
【0012】
具体的な実施形態によれば、本明細書中に記載されている使用および方法において提供される胎盤増殖因子の阻害剤は、胎盤増殖因子の選択的阻害剤である。具体的には、選択的阻害剤は、胎盤増殖因子に特異的に結合する抗体またはその断片である。かかる抗体は、モノクローナルまたはポリクローナル抗体であってもよい。具体的な実施形態によれば、胎盤増殖因子に特異的に結合する抗体またはその断片は、モノクローナル抗体である。さらなる具体的な実施形態によれば、これは、マウスモノクローナル抗体である。なおさらなる具体的な実施形態によれば、マウスモノクローナル抗体は、ヒト化されていてもよく、すなわち、H鎖およびL鎖をコードするマウスおよび/またはヒトのゲノムDNA配列あるいはH鎖およびL鎖をコードするcDNAクローンから開始して、組み換えDNA技術によって作製されたヒト化バージョンのマウスモノクローナル抗体であってもよい。他の実施形態によれば、抗体またはその断片は、ヒト抗体(またはその断片)、具体的にはヒトモノクローナル抗体である。
【0013】
具体的な実施形態によれば、PlGFに特異的に結合する抗体の断片は、Fab断片、F(ab’)2断片または単鎖可変断片(scFv)である。
【0014】
他の具体的な実施形態によれば、選択的阻害剤は、PlGFに対するナノボディである。さらに他の具体的な実施形態によれば、PlGF阻害剤は、選択的阻害剤ではない。その具体的な例は、VEGFR−1抗体またはその断片などの、VEGFR−1阻害剤である。
【0015】
フィラデルフィア染色体陽性(Ph+)白血病の治療のために、PlGF阻害剤の方法および使用が提供される。具体的な実施形態によれば、フィラデルフィア染色体陽性白血病は、慢性骨髄性(myelogenous)白血病(CML)である。他の実施形態によれば、Ph+白血病は、例えば、B−ALL(B細胞が白血病細胞である)またはT−ALL(白血病細胞がT細胞である)などの急性リンパ性(lymphoblastic)白血病(ALL)である。
【0016】
本明細書中に記載された方法および使用が、広範な適用性を有することが想定される。具体的には、PlGF阻害剤は、全てのフィラデルフィア染色体陽性白血病、具体的には、BCR−ABL阻害剤で治療することができないものおよび/またはBCR−ABL阻害剤単独で治療することができないものの治療のために(または治療の方法において)用いられ得ることも想定される。Ph+白血病は、種々の理由により、BCR−ABL阻害剤またはBCR−ABL阻害剤単独で治療可能でないかもしれない。最も一般的な理由は、白血病は(少なくとも部分的には)治療に対して非感受性である(または少なくとも部分的に治療に対して抵抗性/非感受性を生じている)こと、またはBCR−ABL阻害剤が(例えば、アレルギーまたは有害な副作用によって)患者によって許容され得ないことである。PlGF阻害は、Ph+白血病の治療における一般的なアプローチを提供するが、これは特に、例えば、CMLに対する標準的な治療アプローチであるBCR−ABL阻害によって所望の治療効果がもたらされない症例について、有益であり得る。このとき、PlGF阻害剤の使用は、代替的または付加的な手段を提供し得る。特定の実施形態によれば、PlGF阻害剤は、BCR−ABL阻害剤と組み合わせて用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、インビトロでの白血病細胞、造血細胞および一次骨髄間質細胞におけるPlGF発現を示す。A:種々の細胞系および単離された細胞によって分泌されたPlGFタンパク質の量(より詳しくは、実施例1を参照のこと);B:マウスBMDSCの造血画分(CD45+)および非造血画分(CD45-)によるPlGF発現。はp<0,001を示す。BM:骨髄。
【図2】図2において、PlGFおよび他の分子の発現がインビボで示される(詳細については、実施例2を参照のこと)。A、B:マウスにおける白血病疾患進行の異なる時点での末梢血または骨髄中のPlGFタンパク質レベル;C、D:マウスにおける白血病疾患進行の異なる時点での末梢血または骨髄におけるPlGF対sVEGFR−1タンパク質レベルの比;E:健常および白血病マウスにおける骨髄PlGF mRNA発現、はp<0.002を示す;F:骨髄の亜集団におけるPlGF発現の特徴づけ、はp<0.05を示す;G:健常および白血病マウスにおける骨髄VEGF mRNA発現;H、I:末梢血または骨髄におけるPlGFタンパク質レベルは、末期罹患マウスにおける白血病負荷と相関がある。
【図3】図3は、PlGFによる白血病細胞の増殖を示す(詳細については、実施例3を参照のこと)。A、B:異なる白血病細胞系におけるNpn−1およびNpn−2の発現;C:異なる濃度のPlGFによるBV−173細胞系における増殖の誘導;D:K562(左上のパネル)、BV−173(右上のパネル)、KCL−22(左下のパネル)およびBaF3(右下のパネル)細胞系それぞれにおける50ng/ml PlGFによる増殖の誘導;E:抗VEGFR−1抗体によるBV−173細胞系におけるPlGF誘導性増殖の阻害;F:抗PlGF抗体によるBV−173細胞系におけるPlGF誘導性増殖の阻害。BM:骨髄;PlGF:胎盤増殖因子;αVEGFR−1:抗血管内皮増殖因子受容体−1抗体;αPlGF:抗PlGF抗体。
【図4】図4において、インビトロでの白血病細胞とBMDSCとの間のパラクリン相互作用による誘導(A〜D)を、白血病細胞馴化培地(E)とともに示す。A:BDMSC、BV−173細胞系および共培養物(BMDSC+BV)におけるPlGF発現;B:S17細胞、BV−173細胞系および共培養におけるPlGF発現;C:BV−173白血病細胞単独およびBMDSCとの共培養物における増殖ならびに抗PlGF抗体による阻害;D:BMDSC単独およびBV−173白血病細胞との共培養中の増殖、ならびに抗PlGF抗体による阻害;E:白血病細胞(BV−173)馴化培地とのインキュベーションによるS17細胞におけるPlGFアップレギュレーション。BV:BV−173細胞系;αPlGF:抗PlGF抗体。
【図5】図5A:白血病PlGF−/−およびWTマウスの生存率;B:クロスオーバー白血病マウスの生存率(詳細については、実施例5を参照のこと);C:抗PlGF抗体または対照抗体のいずれかで処理された、リンパ性BCR−ABL+BaF3細胞によって誘導された白血病を有するマウスの生存率;D、E:初期(d15)および末期(d28)白血病でのBCR−ABL+細胞のFACS解析ならびに抗PlGF抗体による阻害の効果;F:対照および抗PlGF処理された末期白血病マウスの骨髄組織像;G:抗PlGF抗体または対照抗体のいずれかで処理されたイマチニブ感受性CMLのマウスモデルにおける生存率;H:抗PlGF抗体または対照抗体のいずれかで処理されたイマチニブ抵抗性CMLのマウスモデルにおける生存率。αPlGF:抗PlGF抗体;d:日;T315I:BCR−ABL融合タンパク質のT315I変異。さらなる詳細については、実施例6を参照のこと。
【図6】図6は、抗PlGF処理の際の骨髄血管新生過多および線維症の阻害を示す(実施例7を参照のこと)。A、C:モック移植された末期白血病のマウス、対照抗体処理された末期白血病マウスおよび抗PlGF処理された末期白血病マウスにおける骨髄血管密度(MVD);B、D:モック移植された末期白血病マウス、対照抗体処理された末期白血病マウスおよび抗PlGF処理された末期白血病マウスにおけるレティキュリン線維の長さおよび骨髄線維症。
【図7】図7において、ヒトCMLにおけるPlGF発現に関するデータ(A〜D、実施例8)、ならびにマウス(E)およびヒト(F、実施例9)におけるPlGF発現とイマチニブ処理とを関連付けるデータが示される。A:異なる段階のCML(健常対照群、慢性期および急性転化)における血漿PlGFレベル、はp<0.0001を示す;B:CML患者における骨髄血漿PlGFレベル;ヒトCMLにおける、PlGFレベルとBCR/ABL転写産物数との間の相関;D:健常対照群、CML患者の白血病細胞および間質細胞における、PlGF発現のQRT−PCR;E:非処理白血病マウスならびにイマチニブで処理された健常および白血病マウスの骨髄PlGFレベル;F:健常ヒト被験体およびイマチニブ(IM)に対する異なる応答レベルを有する患者におけるPlGFレベル。詳細については、実施例9を参照のこと。
【発明を実施するための形態】
【0018】
定義
本発明は、具体的な実施形態に関して、特定の図面を参照して記載されるが、本発明はこれらに限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。特許請求の範囲中のいかなる引用符号も、その範囲を限定すると解釈されるべきではない。記載されている図面は、模式的であるだけであり、非限定的である。図面中、いくつかの構成要素のサイズは誇張されており、例示目的の尺度で描かれてない。本明細書および特許請求の範囲中で、用語「含む(comprising)」が用いられる場合、他の要素または工程を排除するものではない。単数の冠詞をいうときに不定冠詞または定冠詞、例えば、「a」または「an」、「the」が用いられる場合、これは、特に他に示されない限りは、複数のその名詞を含む。
【0019】
さらに、明細書中および特許請求の範囲中の用語である第1、第2、第3などは、同様の要素の間を区別するために用いられ、必ずしも順次的または時系列順で記載するためではない。このようにして用いられる用語は、適当な状況下で互換性があり、本明細書中に記載される発明の実施形態は、本明細書中に記載または例示されている他の順序で実施可能であると理解されるべきである。
【0020】
以下の用語または定義は、本発明の理解を助けるためのみに提供される。本明細書中で特に定義されない限りは、本明細書中で用いられる全ての用語は、本発明の当業者に対して有するのと同じ意味を有する。実行者は、当該技術の定義および用語について、具体的には、ザンブルーク(Sambrook)ら、モレキュラークローニング:ア・ラボラトリーマニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)、第2版、コールド・スプリング・ハーバー・プレス(Cold Spring Harbor Press)、プレインズビュー(Plainsview)、ニューヨーク(New York)(1989年);およびアウスベル(Ausubel)ら、カレントプロトコール・イン・モレキュラーバイオロジー(Current Protocols in Molecular Biology)(追補47)、ジョン・ウィリー&サンズ(John Wiley & Sons)、ニューヨーク(New York)(1999年)を対象とする。本明細書中で提供される定義は、当業者によって理解されるよりも狭い範囲を有すると解釈されるべきではない。
【0021】
本明細書中で用いられる「胎盤増殖因子」または「PlGF」は、VEGF(血管内皮増殖因子)サブファミリーのメンバー、具体的には、ヒトPlGF(遺伝子ID5228;RefSeq(ゲノムビルドとは無関係である)NM_002632.4(mRNA)およびNP_002623.2(タンパク質))をいう。他に特定されない限りは、用語「PlGF」は、遺伝子、ならびにPlGF RNA(最も具体的には、PlGF mRNA)およびPlGFタンパク質などの、その産物をいってもよい。PlGFの全てのアイソフォームが、PlGFの定義に含まれるように意図される。
【0022】
用語「フィラデルフィア染色体陽性」または「Ph+」白血病は、本明細書中で用いられる場合、フィラデルフィア転座が存在すると確認されている疾患をいう。フィラデルフィア染色体は、t(9;22)(q34;q11)転座(フィラデルフィア転座)の結果である。フィラデルフィア染色体転座の少なくとも2つの代替的形態が実証されているが、両方の代替的切断点は、9番染色体上に位置するABL遺伝子のエクソンの共通サブセット(OMIM189980)への22番染色体上のBCRの異なるエクソンセット(OMIM151410)の連結を生じる。したがって、融合物は、p210(BCR−ABL)およびp185(BCR−ABL)と称され、本明細書中でまとめて「BCR−ABL」と称される2つの代替的キメラ癌遺伝子産物が生じ得る(OMIM151410および189980に含まれる)。ABLチロシンキナーゼ活性の活性化は、キメラ癌遺伝子の発癌能に必要である。キメラBCR−ABL遺伝子(およびその遺伝子産物)の存在は、Ph+白血病の特質であるので、「Ph+」も、融合遺伝子の存在を示すために、「BCR−ABL陽性」または「BCR−ABL+」白血病という場合もある。したがって、機能性BCR−ABLキメラ遺伝子(すなわち、BCR−ABL+)の生成をもたらす転座または変異も転座の機序にかかわらず、本明細書中で「Ph+」として分類されることに留意されたい。これは、例えば、より複雑な転座の場合にあり得る。
【0023】
本出願において用いられる「胎盤増殖因子の選択的阻害剤」は、他の分子の生理学的機能を妨げることなくPlGFの機能またはシグナル伝達経路を阻害する分子または化合物である。具体的には、選択的PlGF阻害剤は、VEGFの機能を妨げない。したがって、非限定的な例として、PlGFに特異的に向けられた化合物(例えば、抗PlGF抗体)は選択的阻害剤であるが、VEGFも標的とする(VEGFR−1ベースの化合物など)か、またはVEGF/PlGF共有受容体を標的とする(例えば、VEGFR1に対する抗体、またはsVEGFR−1)化合物は、典型的には非選択的阻害剤である。
【0024】
「慢性骨髄性(myelogenous)白血病」、「慢性骨髄球性(myeloid)白血病」または「CML」は、本明細書中で用いられる場合、骨髄性、赤血球系、巨核球性、Bリンパ系およびTリンパ系の細胞を含むが骨髄線維芽細胞を含まない特定の細胞遺伝学的異常(フィラデルフィア染色体)を有する多能性幹細胞のクローン性骨髄増殖性障害をいう(OMIM#608232;シルバー(Silver)、2003年)。
【0025】
「急性リンパ球性(lymphocytic)白血病」、「急性リンパ芽球性(lymphoblastic)白血病」または「ALL」は、本出願において用いられる場合、未熟な白血球細胞が継続的に増加し、骨髄中で過剰産生される、急性形態の白血球をいう。ALLの例示としては、T−ALLおよびB−ALLが挙げられる。また、ALL症例の異種の群の具体的なサブセットは、フィラデルフィア染色体に陽性、すなわち、Ph+またはBCR−ABL+である(レイディッヒ(Radich)、2001年;アルバラード(Alvarado)ら、2007年)。
【0026】
本出願において用いられる「BCR−ABL阻害剤」は、キメラBCR−ABL遺伝子またはその遺伝子産物の発現または機能を阻害する分子または化合物である。注目すべきなのは、BCR−ABL阻害剤は、必ずしもBCR−ABLに特異的であることを要しない。例えば、BCR−ABLチロシンキナーゼのみではなくそれ以上のものを標的とするチロシンキナーゼ阻害剤であってもよい。BCR−ABL阻害剤は、Ph+白血病における標的療法として周知であり、非限定的であるが典型的な例示はイマチニブである。他の例示は、本出願に含まれる。
【0027】
本出願において用いられる「治療する」は、Ph+白血病と関連した1つ以上の臨床症状の有意な寛解を達成することを意味する。状況によって、有意な寛解は、定量的または定性的にスコアリングしてもよい。定性的基準は、例えば、患者の幸福であってもよい。定量的評価の場合、有意な寛解は、典型的には、PlGF阻害剤の投与の前の状況に対して、10%より高いか、20%より高いか、25%より高いか、30%より高いか、40%より高いか、50%より高いか、60%より高いか、70%より高いか、75%より高いか、80%より高いか、90%より高いか、95%より高いか、または100%以上の改善である。もちろん、改善が減少(例えば、患者試料中に存在する悪性細胞の数)として表される場合、改善は、100%を超えることはあり得ない。改善が評価される時間枠は、観察される基準のタイプに依存して、当業者によって決定され得る。
【0028】
フィラデルフィア染色体陽性白血病の治療のための胎盤増殖因子の阻害剤の方法および使用を提供することは、本発明の重要な側面である。また、フィラデルフィア染色体陽性白血病の治療用薬剤の製造のための胎盤増殖因子の阻害剤の使用が教示される。
【0029】
胎盤増殖因子(PlGF)の阻害剤は、具体的には、他の分子を妨げないようなPlGFの選択的阻害剤である。具体的には、選択的PlGF阻害剤は、VEGFの機能を妨げるべきではない。具体的な実施形態によれば、PlGF阻害剤は、VEGF阻害剤ではない。他の具体的な実施形態によれば、PlGF阻害剤は、VEGFR1阻害剤ではない。特定の実施形態によれば、PlGF阻害剤は、VEGFR1に基づいていない。
【0030】
阻害剤は、PlGFの活性を、その合成、翻訳、二量体化、受容体結合および/または受容体結合媒介性シグナル伝達を妨げることによって、中和し得る。PlGFの活性を中和することは、PlGF活性を少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%またはちょうど100%抑制することと理解されるべきである。
【0031】
PlGFの阻害剤、具体的には選択的阻害剤は、当該分野で公知である。具体的な実施形態によれば、選択的阻害剤は、抗体である。用語「抗体」または「抗体(複数)」は、PlGFもしくはその任意の機能性誘導体に特異的に向けられたものとして特徴付けられる抗体もしくはその任意の機能性誘導体またはその抗原結合性断片、具体的にはF(ab’)2、F(ab)もしくは単鎖Fv(scFv)型、またはそれに由来する任意の型の組み換え抗体に関する。PlGFまたはその任意の機能性誘導体に対して作製された特異的ポリクローナル抗血清を含む本明細書中に記載された抗PlGF抗体は、他のタンパク質に対する交差反応性を有しない。具体的な実施形態によれば、抗PlGF抗体は、モノクローナル抗体である。モノクローナル抗体は、例えば、古典的な方法に従って、PlGFまたはその任意の機能性誘導体に対して免疫化された動物、具体的には、マウスまたはラットの脾臓細胞と骨髄腫細胞系の細胞とから形成され、動物の免疫に最初に用いられたPlGFまたはその任意の機能性誘導体を認識するモノクローナル抗体を産生する能力によって選択される傾向がある、任意のハイブリドーマによって産生され得る。
【0032】
具体的な実施形態によれば、ヒトPlGFに対するモノクローナル抗体の作製は、例えば、以下のように行なうことができる:PlGFまたはその断片によってコードされるアミノ酸からなる組み換えヒトPlGF融合タンパク質を、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)に結合させ、大腸菌(Escherichia coli)中で発現させ、固定化されたグルタチオン(アマシャム・バイオサイエンス(Amercham Biosciences))上でのアフィニティークロマトグラフィーによって精製する。また、組み換えヒトPlGFは、アール・アンド・ディー・システムズ・インコーポレーティッド(R&D Systems Inc.)、614 マッキンリー・プレース・エヌ.イー.ミネアポリス(McKinley Place N.E.Minneapolis)、MN 55413、USA.(264−PG−010、264−PG−010/CF、264−PG−050または264−PG−050/CF)、リサーチ・ダイアグノスティック・インコーポレーティッド(Research Diagnostics Inc)、プレザンド・ヒル・ロード(Pleasant Hill Road)、フランダース(Flanders) NJ 07836、USA(組み換えヒトPlGF−1:カタログ番号RDI−300−015およびカタログ番号RDI−300−016ならびにヒトPlGF−2:カタログ番号RDI−300−019)またはアレキシス・コーポレーション(ALEXIS Corporation)、CH−4415 ローザンヌ(Lausanne)、スイス(胎盤増殖因子−2(ヒト)(組み換え)カタログ番号RLT−300−020)から入手可能である。
【0033】
組み換えヒトPLGFを、等量のアジュバントと混合し、次いで、得られた混合物を、Balb/c雄マウス(免疫の開始の際に8週齢)に、マウス1匹あたり100μgのPlGFの量に相当する量で皮下投与する(免疫刺激)。
【0034】
約21日後、上述したのと同様の様式の皮下投与によって、免疫を行なうことができる(追加免疫)。追加免疫の19日または30日後に、ヒトPlGFをPBS(リン酸緩衝生理食塩水)で250μg/mlの濃度を有するように希釈することによって得られた調製物200μlを、尾静脈を介して、マウスに投与することができる(最終免疫)。次いで、最終免疫から約3日後に、脾臓をマウスから切除し、それらを単細胞に分離するべきである。続いて、脾臓細胞を適切な培地、例えば、DMEM培地で洗浄する。一方、対数増殖期に適切なマウス骨髄腫細胞(例えば、Sp2/0−Ag14)を採取し、適切な培地、例えば、DMEM培地で洗浄するべきである。脾臓細胞およびマウス骨髄腫細胞は、10:1の細胞数の比でプラスチックチューブ中で十分に混合し、次いで50%(w/v)ポリエチレングリコール(PEG,例えば、ベーリンガー・マンハイム社(Boehringer Mannheim)のもの、平均分子量:4000)を添加して、37℃で7分間の細胞融合を行なわなければならない。上清溶液の(遠心分離による)除去の後、残渣をHAT培地(ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンが添加された10%ウシ胎仔血清を含むDMEM培地)に添加する。約5×10個の細胞/mlの脾臓細胞の濃度が得られるように、残渣を懸濁するべきである。次いで、この細胞懸濁液を、1つのウェルが約100μlの懸濁液を含むように、96ウェルプラスチックプレートに分配して注ぎ、次いで、5%二酸化炭素中において、37℃で培養することができる。HAT培地は、例えば、2日目および5日目に50μl/ウェルの量で、補充するべきである。その後、半分の体積の培地を、ハイブリドーマの増殖に従って、3日または4日ごとに交換することができる。
【0035】
本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、スクリーニングされるべきである。これは、PlGFが有する生理学的活性に対するモノクローナル抗体の阻害活性を指標として用いることによって行なわれるべきである。
【0036】
次いで、PlGFとの反応性を示すモノクローナル抗体を産生したハイブリドーマを、選択されたクローンから選択しなければならない。次いで、得られたハイブリドーマを、適切な培地、例えば、HAT培地と同じであるがアミノプテリンを含まないHT培地に移し、さらに培養しなければならない。クローニングは、適切なハイブリドーマが入手可能な限界希釈法に従って、2回行なうことができる。
【0037】
次いで、モノクローナル抗体の生産および精製を、以下のように行なってもよい:2.6,10,14−テトラメチルペンタデカン(例えば、シグマ(Sigma)のプリスタン(Pristane)、0.5ml)を、Balb/c雌マウス(生後6〜8週齢)に腹腔内注射することができる。10〜20日後に、クローンの細胞(1×106〜107個の細胞)をPBS中に懸濁し、マウスに腹腔内接種することができる。7〜10日後に、マウスを屠殺し、腹部手術に供し、そこから生成された腹水を採取することができる。腹水を遠心分離して、不溶物を除去することができ、上清を回収し、精製まで−20℃で保存した。結果的に、Hi−Trap Protein−A抗体精製キット(ファルマシア(Pharmacia)、ローゼンダール(Roosendaal)、オランダから入手可能)を用いることによって、上述の腹水上清からIgGを精製することができる。すなわち、腹水(2ml)に、溶液A(1.5Mグリシン、3M NaCl、pH8.9、8ml)を添加し、45lmの孔サイズを有するろ過のためのフィルター(ミリポア(Millipore))でろ過することができる。その後、得られたろ液を、溶液Aで十分平衡化されたProtein Sepharose HP(ファルマシア(Pharmacia)製)を充填したカラム(カラム体積:1ml)にアプライすることができ、カラムを、カラム体積の10倍の量の溶液Aで洗浄する。続いて、IgG画分を、カラム体積の10倍の量の溶液B(0.1Mグリシン、pH2.8)で溶出させることができる。溶出したIgG画分をPBSに対して透析することができる。モノクローナル抗体は、市販のサブクラス決定キット(商標:Mono Ab−ID EIAキットA、Zymed製)によって、前述のもので得られた精製抗体を用いることによって、それらのIgGサブクラスに対して決定することができる。この方法は、ELISA法に基づく。
【0038】
モノクローナル抗体の阻害活性は、VEGFR1受容体へのrPlGFの結合の完全な阻害を試験することができる。これは、例えば、PBS中において、室温で一晩、1g/mlのrmFlt−1/Fcキメラ100μlによって96ウェルプレートがコーティングされる免疫機能性ELISAで測定することができる。PBS中1%BSAでの1時間のブロッキングの後、次いで、10ng/mlの組み換えmPlGF−270μlとともに室温で2時間プレインキュベートされたハイブリドーマ培地70μlの混合物100μlを、プレートにアプライする。20ng/ml〜156pg/mlの範囲のrmPlGF−2の標品が含まれ得る(PBS−Tween中で希釈。BSA−EDTA)。次いで、プレートを37℃で1時間および室温で1時間インキュベートし、PBS−Tweenで5回洗浄し、200ng/mlのビオチン化ヤギ抗マウスPlGF−2 100μlを室温で2時間アプライすることができる。PBS−Tweenで5回洗浄した後、100μlのアビジン−HRPコンジュゲート(Vectastorin ABCキット)を室温で1時間アプライすることができる。PBS−Tweenで5回洗浄した後、プレートをo−フェニレンジアミンを有するクエン酸リン酸緩衝液pH5.0 90μlで30分間展開して、490nmで測定することができる。
【0039】
PlGFに結合することができる抑制抗体リガンドも本明細書中で提供される。より好ましくは、かかるリガンドは、PlGF上に位置する特異的なエピトープを認識することができるべきである。例えば、本発明は、動物における意図的な免疫によって生産されたモノクローナル抗体に由来する上述の型のリガンドに関する。また、本発明は、当該分野で周知の方法を用いて、パパインによる上記モノクローナル抗体のタンパク質分解性消化によって得ることができる抗原結合性Fab断片またはかかる断片のホモログ誘導体を提供する。マウス抗PlGFモノクローナル抗体の免疫原性を減少させるために、また、本発明は、マウス抗体の可変領域をヒト抗体定常領域と選択的に組み合わせる単鎖可変ドメイン、いわゆるヒト化モノクローナル抗体としての、キメラ抗体の構築を含む。
【0040】
動物において産生されるモノクローナル抗体は、例えば、ジョーンズ(Jones)ら(ジョーンズ(Jones)ら、1986年)もしくはリーヒマン(Riechmann)(リーヒマン(Riechmann)ら、1988年)によって開示されているように、または他の方法でハイブリダイスして、非ヒトモノクローナル抗体由来の結合相補性決定領域(「CDR」)をヒトフレームワーク領域、具体的には、ヒト遺伝子の定常C領域と結合させることによって、ヒト化してもよい。
【0041】
これらの実施形態に係るモノクローナル抗体は、H鎖およびL鎖をコードするマウスおよび/またはヒトゲノムDNA配列あるいはH鎖およびL鎖をコードするcDNAクローンから逸脱する組み換えDNA技術によって作製されたマウスモノクローナル抗体のヒト化バージョンであってもよい。
【0042】
あるいは、これらの実施形態に係るモノクローナル抗体は、ヒトモノクローナル抗体であってもよい。かかるヒトモノクローナル抗体は、例えば、PCT/EP99/03605に記載されているように、重症複合免疫不全(SCID)マウスのヒト末梢血リンパ球(PBL)再増殖によって、または米国特許第5,545,806号に記載されているように、ヒト抗体を産生することができるトランスジェニック非ヒト動物を用いることによって作製される。Fab、F(ab’)2およびscFv(「単鎖可変断片」)などのこれらのモノクローナル抗体に由来する断片もそれらが元の結合特性を保持している場合は、本明細書中に開示されているものの一部を形成する。かかる断片は、一般に、例えば、パパイン、ペプシン、または他のプロテアーゼによる抗体の酵素消化によって生じる。具体的な実施形態によれば、PlGFの選択的阻害剤は、抗体の断片であり、この断片は、胎盤増殖因子に特異的に結合する。具体的な実施形態によれば、抗体断片はFab断片、F(ab’)2断片または単鎖可変断片(scFv)である。
【0043】
特定の実施形態によれば、F(ab’)2または一価Fab断片の作製は、例えば、以下の通りである:F(ab’)2断片を作製するために、モノクローナル抗体を、0.1mol/Lのクエン酸緩衝液(pH3.5)に対して一晩透析することができる。次いで、抗体(200部)を、シグマ(Sigma)(セントルイス(Saint−Louis)、ミザーリ(Missouri))から入手可能なペプシン(1部)とともに37℃で1時間のインキュベーションすることによって消化する。その結果、10体積の抗体に1体積の1M Tris HCl緩衝液(pH9)を添加することによって消化が停止される。一価Fab断片は、以下のように、パパイン消化によって作製することができる:1体積の1Mリン酸緩衝液(pH7.3)を10体積のモノクローナル抗体に添加し、次いで、1体積のパパイン(シグマ(Sigma))を、モノクローナル抗体、10mmol/l L−システインHCl(Sigma)および15mmol/lエチレンジアミン四酢酸(以下、EDTAという)を含む25体積のリン酸緩衝液に添加する。37℃で3時間のインキュベーションの後、新たに調製した終濃度30mmol/lのヨードアセトアミド溶液(シグマ(Sigma))を添加することによって消化を停止させ、混合物を室温で暗所で30分間維持する。Protein A Sepharoseを用い、混入しているインタクトなIgGおよびFc断片から、F(ab’)2およびFab断片の両方を、さらに精製することができる。精製された断片は、最終的に、リン酸緩衝生理食塩水(以下、PBSという)に対して透析することができる。断片の純度は、ドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって決定することができ、タンパク質濃度は、ビシンコニン酸Protein Assay Reagent A(ピアス(Pierce)、ロックフォード(Rockford)、イリノイ(Illinois))を用いて決定することができる。
【0044】
(モノクローナル)抗体またはその断片を種々の使用のために改変してもよいことは、当業者に周知である。本発明に関する抗体は、酵素的、蛍光性たは放射性のタイプの適切な標識によって標識することができる。
【0045】
抗PlGF抗体の例示は、当該分野で十分に実証されている。それらとしては、フィッシャー(Fischer)(フィッシャー(Fischer)ら、2007年)によって記載されたもの、またはマウスモノクローナル抗体Mab−PL5D11(WO01/85796;このモノクローナル抗体は、ウェーイーベー・ヴェサリウス・リサーチ・センター(VIB Vesalius Research Center)、ユーゼット・ガストゥイスベルク(UZ Gasthuisberg)、ヘレストラート(Herestraat) 49、B−3000、リューヘン(Leuven)において入手可能である)が挙げられるが、これらに限定されない。16D3抗体などの他の抗体が、例えば、EP1869085に記載されている。国際公開第2004/002524号も抗PlGF抗体の生じ方を記載している。欧州特許出願公開第1869085号公報および国際公開第2004/002524号は、ともに、参照によって本明細書中に援用される。さらに、抗PlGF抗体も、例えば、サンタ・クルズ・バイオテクノロジー・インコーポレーティッド(Santa Cruz Biotechnology Inc)、アブカム(Abcam)、ノバス・バイオロジカルズ(Novus biologicals)、アール・アンド・ディー・システムズ(R&D Systems)、シグマ−アルドリッヒ(Sigma−Aldrich)およびさらに多くの企業から、市販されている。
【0046】
また、上述の方法は他の抗体の生産、例えば、PlGFの非選択的阻害剤である抗VEGFR−1抗体の生産に適用されることが理解されるべきである。
【0047】
PlGFの他の阻害剤、PlGFの具体的な選択的阻害剤としては、上述のような中和効果を有する、ペプチド、四量体ペプチド、タンパク質、有機分子またはその断片もしくは相同体が挙げられるが、これらに限定されない。この限定的なリスト中のさらなる阻害剤は、アンチセンスRNAおよびDNA分子ならびにPlGFの翻訳を阻害するように機能するリボザイム、ペプチドアプタマー(例えば、siRNA(例えば、サンタ・クルズ・バイオテクノロジー・インコーポレーティッド(Santa Cruz Biotechnology Inc))、ヘアピンRNAまたはshRNA(例えば、サンタ・クルズ・バイオテクノロジー・インコーポレーティッド(Santa Cruz Biotechnology Inc))、ナノボディならびに小分子が挙げられるが、これらに限定されない。かかる(選択的ならびに非選択的)阻害剤の多くは、市販されている。可能な阻害剤のいくつかを、本明細書中でさらに説明する。
【0048】
小分子、例えば、有機小分子および他の薬剤候補は、例えば、コンビナトリアルライブラリーおよび天然物ライブラリーから入手することができる。上記の候補/試験分子についてスクリーニングするために、例えば、VEGFR−1を発現する細胞系を用いてもよく、参照によって本明細書中に援用される国際公開第01/85796号に詳細に記載されているように、シグナル伝達をモニタリングする。
【0049】
上記のモニタリングは、標準的な生化学的技術を用いて測定することができる。また、触媒活性の活性化もしくは抑制、他のタンパク質のリン酸化(例えば、受容体の細胞内ドメインのチロシンリン酸化)もしくは脱リン酸化、二次メッセンジャー生成の活性化もしくは調節、細胞イオンレベルの変化、シグナル分子の会合、解離もしくは転位、または特定の遺伝子の転写もしくは翻訳などの他の応答をモニタリングしてもよい。これらのアッセイは、スクリーニングの過程で、これらの目的のために開発された従来の技術を用いて行なってもよい。細胞受容体へのリガンドの結合の阻害は、シグナル伝達経路を介して、種々の細胞プロセスに影響を与え得る。VEGFR−1/PlGFシグナル経路の制御下の細胞プロセスとしては、未制御の細胞増殖、接触阻害の喪失、分化のブロッキングまたは細胞死などの異常または潜在的に有害なプロセスに加えて、通常の細胞機能、増殖、分化、細胞形態の維持および接着が挙げられるが、これらに限定されない。当該分野で公知の技術による、記載された細胞プロセスのいずれかの定性的または定量的観察および測定を、スクリーニングの過程でシグナル伝達のスコアリングの手段として有利に用いてもよい。
【0050】
小分子のスクリーニングの他の方法は、インシリコ設計によるものである。ヒト胎盤増殖因子の結晶構造は、入手可能であり(PDBコード:1FZV)、そのため、これは、さらなる小分子アンタゴニスト選抜のためのプラットフォームとしても働き得る。阻害分子または一連の分子は、PlGFの構造に基づいて設計することができ、その後上述のようなスクリーニングを用いてそれらを確認することができる。
【0051】
固相支持体に付着したアミノ酸の全ての可能な組み合わせからなる本明細書中にさらに記載された四量体ペプチドライブラリーなどのランダムペプチドライブラリーは、所定の受容体のリガンド結合部位またはキナーゼドメインなどの受容体の他の機能ドメインに結合することができるペプチドを同定するために用いてもよい(ラム(Lam)ら、1991年)。ペプチドライブラリーのスクリーニングは、所定の受容体との相互作用を通じて受容体の生物学的活性を阻害するように作用する医薬品の発見において、治療上の価値を有し得る。PlGF(または場合によりVEGFR−1)に結合することができる分子の同定は、組み換えPlGFタンパク質(または可溶性VEGFR−1タンパク質)でペプチドライブラリーをスクリーニングすることによって達成し得る。例えば、VEGFR−1のキナーゼおよび細胞外リガンド結合ドメインを別々に発現させて用いてペプチドライブラリーをスクリーニングしてもよい。可溶性VEGFR−1分子を用いることに加えて、別の実施形態において、インタクトな細胞を用い、細胞表面受容体に結合するペプチドを検出することが可能である。この技術において用いられる細胞は、生きている細胞または固定細胞のいずれでもよい。細胞は、ランダムペプチドライブラリーとともにインキュベートされ、ライブラリー中のあるペプチドと結合し、標的細胞と関連する固相支持体/ペプチドとの間で「ロゼット」を形成する。その後、ロゼットを、分画遠心法によって単離するか、または手術用顕微鏡下で物理的に除去することができる。
【0052】
特定の実施形態において、VEGF受容体のトランスドミナントネガティブ変異体形態(例えば、VEGF−R1のトランスドミナントネガティブ受容体)を用いてPlGFのシグナル伝達を阻害することができる。上記のVEGF受容体のトランスドミナントネガティブ変異体形態の使用は、米国特許第5,851,999号に十分記載されている。さらに、胎盤可溶性fms様チロシンキナーゼ1(sFlt1)、膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを欠いたVEGF受容体Fit1のスプライスバリアントが、強力なPlGFアンタゴニストとして作用することが公知であり(ケンダル(Kendall)ら、1996年;シブヤ(Shibuya)、2001年)、可溶性VEGFR1融合タンパク質(アイエロ(Aiello)ら、1995年)をインビボで用いて、PlGF活性を阻害することができる。しかしながら、それ自体ではうまくいくが、トランスドミナントネガティブ受容体の使用は、PlGFのみの選択的阻害剤ではないという欠点を有し得る。したがって、特定の実施形態によれば、PlGFの阻害剤は、トランスドミナントネガティブ受容体ではない。
【0053】
RNAは、インビボでタンパク質機能を不活性化するためのその使用を考えると、有機小分子に対して明白な利点を有する。RNAコード配列をプロモーターに連結することができ、この人工遺伝子を細胞または生物に導入することができる。含まれる制御配列に依存して、これは、時間および/または組織特異的抑制遺伝子を構築する独特の方法を提供する。かかるRNA発現遺伝子は、通常、タンパク質コード遺伝子よりも小さく、遺伝子治療ベクターに容易に挿入することができる。外来性のタンパク質または変化したタンパク質とは異なり、RNAは、免疫応答を誘発する可能性が低い。アンチセンス分子およびリボザイムが、それらの合理的な薬剤設計および非常に強い特異性を見込んで、遺伝子機能を不活性化する「コードブロッカー」として開発されている(アルトマン(Altman)、1995年;マテウッチ(Matteucci)およびワグナー(Wagner)、1996年)。機構的に、アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(「ODN」)および生物工学的に作られたリボザイムはともに、ワトソン・クリックまたはフーグスティーン塩基配列形成に基づいて標的ヌクレオチド配列とともに安定した二本鎖(またはODNのいくつかの場合においては三重鎖)を形成することによって、それらの作用の最初の段階で特異的結合を達成すると期待される。
【0054】
ある実施形態において、PlGF阻害剤は、アプタマーであってもよい。アプタマーの構築および結合特性の決定の方法は、当該分野で周知である。例えば、かかる技術は、米国特許第5,582,981号、第5,595,877号および第5,637,459号に記載されており、それぞれ参照によって本明細書中に援用される。
【0055】
アプタマーは、合成、組み換えおよび精製方法を含む任意の公知の方法によって作製してもよく、かつ単独でまたは同じ標的に特異的な他のリガンドと組み合わせて用いてもよい。一般に、特異的結合をもたらすためには、最低およそ3ヌクレオチド、好ましくは少なくとも5ヌクレオチドが必要である。10塩基よりも短い配列のアプタマーは、実現可能であり得るが、10、20、30または40ヌクレオチドのアプタマーが好ましいであろう。
【0056】
アプタマーは、結合特異性を与える配列を含む必要があるが、フランキング領域で伸長されてもよく、他の方法で誘導体化されてもよい。具体的な実施形態において、アプタマーのPlGF結合配列は、プライマー結合配列に隣接させて、PCRまたは他の増幅技術によるアプタマーの増幅を容易にしてもよい。さらなる実施形態において、フランキング配列は、ある部分を選択的に認識または結合して基質に対するアプタマーの固定化を促進する、特異的配列を含んでもよい。
【0057】
アプタマーは、従来のDNAまたはRNA分子として、単離、配列決定および/または増幅もしくは合成されてもよい。あるいは、目的のアプタマーは、改変されたオリゴマーを含んでもよい。アプタマー中に元々存在するヒドロキシル基のいずれかを、ホスホン酸基、リン酸基で置換するか、標準的な保護基によって保護するか、もしくは活性化して、他のヌクレオチドへのさらなる結合を作製するか、または固体支持体にコンジュゲートしてもよい。式中RがHまたはアルキル(1〜20C)でありR’がアルキル(1〜20C)である、P(O)S、P(O)NR2、P(O)R、P(O)OR’、COまたはCNR2によって置換されたP(O)Oなど、1つ以上のホスホジエステル結合を代替的結合基によって置換してもよい;また、この基は、OまたはSを介して、隣接するヌクレオチドに付着していてもよい。オリゴマー中の全ての結合が同一である必要はない。
【0058】
特異的結合配列を決定するための開始物質として用いられるアプタマーは、一本鎖または二本鎖のDNAまたはRNAであってもよい。具体的な実施形態において、当該配列は、一本鎖DNAであり、これはRNAよりもヌクレアーゼ分解を受けにくい。具体的な実施形態によれば、出発アプタマーは、約10〜400ヌクレオチド、特に、20〜100ヌクレオチドを一般に含むランダム化配列部分を含むであろう。ランダム化配列は、標的に結合することが分かっているアプタマーの増幅を可能にするプライマー配列に隣接されている。ランダム化領域の合成のために、ランダム化が所望される位置のヌクレオチドの混合物が、合成の際に添加され得る。
【0059】
具体的な目的の標的に結合するアプタマーの作製およびスクリーニングのための方法は周知であり、例えば、米国特許第5,475,096号および米国特許第5,270,163号であり、それぞれ参照によって援用される。当該技術は、一般に、候補アプタマーの混合物からの選択および結合の段階的相互作用、非結合アプタマーからの結合アプタマーの分離ならびに増幅を含む。最も高いアフィニティーのアプタマーに相当する少数の配列のみ(ことによると1分子のアプタマーのみ)が混合物中に存在するので、一般に、混合物中の有意な量のアプタマー(およそ5〜50%)が分離の間に維持されるように、分配基準を設定することが望ましい。各サイクルは、標的への高いアフィニティーを有するアプタマーの濃縮をもたらす。3〜6回の選択および増幅サイクルの繰り返しを用いて、高いアフィニティーおよび特異性でPlGFなどの標的と結合するアプタマーを生成してもよい。
【0060】
具体的な実施形態によれば、アプタマーは、PLGF、または場合によりVEGFR−1(VEGF−R1)もしくはVEGFR−1/PlGFシグナル経路の他の非核酸物質と特異的に相互作用するRNAアプタマーである。これらは、治療用薬剤として用いることができる。RNAアプタマーは、それらが直接タンパク質機能を破壊する能力のために用いられる。インビトロでのアプタマーの選択は、特定のタンパク質に対する高い特異性およびアフィニティーを有する非常に珍しいRNAの迅速な単離を可能にする。例示的なRNAアプタマーは、ゴールド(Gold)らに対する米国特許第5,270,163号、ならびにエリントン(Ellington)およびショスタック(Szostak)、1990年、ならびにタック(Tuerk)およびゴールド(Gold)、1990年による論文に記載されている。標的が一次元格子であるアンチセンス化合物とは異なり、RNAアプタマーは、タンパク質の三次元表面に結合することができる。さらに、RNAアプタマーは、しばしば、タンパク質の異なる機能部位の間を細かく区別することができる(ゴールド(Gold)ら、1995年)。治療用薬剤として、アプタマーは、抗体および低分子量薬剤の複合的利点を有するだけでなく、RNAアプタマーのインビボ生成も遺伝的に制御することができる。高アフィニティーRNAアプタマーの制御された発現によって、タンパク質の特定のドメインを迅速に不活性化する手段が提供され、それによって、それらの機能および作用の機序を評価する。
【0061】
米国特許第5,840,867号におけるトール(Toole)らおよび米国特許第6,207,388号におけるグロスマン(Grossman)らは、アプタマーを生成するための方法および生体分子に結合するアプタマーを開示している。これらのアプタマーを用い、分離ツール、診断用または治療用として、生体分子の正常な生物学的機能を妨げることができる。トール(Toole)らによって記載されているアプタマーは、一本鎖または二本鎖のRNAまたはDNAであり得る。
【0062】
コース(Korth)ら(コース(Korth)ら、1997年)は、シリアンゴールデンハムスタープリオンタンパク質に対する一本鎖RNAアプタマーを適用し、当該アプタマーは、数百の異なるタンパク質の混合物内で、それらの特異的な標的を認識することができた。デービス(Davis)(1994年)は、トロンビンの活性部位に結合してインビボで抗凝固効果を示す一本鎖DNAアプタマーを記載した。
【0063】
ラジェンドラン(Rajendran)、マンジュラ(Manjula)ら(US20020127581)は、DNAが特定の非対称のモル比のヌクレオチドのランダムなインサートを有するDNAプールを合成する工程;DNAプールを増幅する工程;蛍光標識ヌクレオチドを用いて、増幅DNAからRNAプールを転写する工程;蛍光標識RNAプールをアフィニティーカラムにアプライして蛍光標識RNAプールから高アフィニティー蛍光RNA分子を除去する工程;高アフィニティー蛍光RNA分子からcDNAプールを得る工程;蛍光RNA分子に関する増幅および選択工程を繰り返して蛍光RNA分子をクローニングし、シグナル伝達アプタマーを得る工程を含む、シグナル伝達アプタマーのインビトロ選択のための方法を提供している。DNA分子を含むシグナル伝達アプタマーも選択される。
【0064】
リガンドの結合の際のコンフォメーション変化をシグナル伝達アプタマーの蛍光強度の変化に変換するシグナル伝達アプタマーも本明細書中に提供される。
【0065】
このように、アプタマーは、PlGFまたはVEGFR1などの非核酸物質と特異的に相互作用するように設計することができる。アプタマーは、PlGFの高アフィニティー受容体として機能するか、またはPlGF(または場合によりVEGFR1)と密接に相互作用し得る。PLGFまたはVEGFR1の周囲の最初に構造不定な分子のフォールディングおよびPLGFまたはVEGFR1との水素結合ネットワークの形成によって、この中和結合が容易になる。
【0066】
しかしながら、アプタマーも、触媒的であり得る。触媒的なアプタマーは、リボザイムに近いか、またはアプタザイムと考えられる。アプタマーは、同様に、反対方向の核酸配列中の塩基の間でのワトソン・クリック塩基対形成に基づいて単純にそれらを結合するよりもむしろ、核酸物質と特異的に相互作用するように設計することができる。
【0067】
かかるアプタマーは、触媒的である場合、ほとんどアプタザイムと称され得る。かかる特異的作用は、治療目的のために追求され得る。
【0068】
PlGFに対して、53%の配列相同性を有するタンパク質である血管内皮増殖因子の165アミノ酸形態(VEGF165)に対する2’−フルオロピリミジンRNAベースのアプタマーの生成は、ラックマン(Ruckman)ら、1998年およびブリドノウ(Bridonneau)ら、1999年に詳細に記載されている。SELEXプロセス(上述されているゴールド(Gold)らによる米国特許)を用いて、ヒトVEGF165に対する2’−F−ピリミジンRNAオリゴヌクレオチドリガンド(アプタマー)が単離された。また、これらのアプタマーは、VEGF165およびPlGF123のヘテロ二量体に結合し、アイソフォームPlGF152などのようなより大きいアイソフォームに結合する可能性もある。3つの異なる配列ファミリーに由来する代表的なアプタマーが切断されて、VEGFへの高アフィニティー結合が可能な最小配列(23〜29ヌクレオチド)になり、置換が許容された全てのリボプリン位置での2’−OHへの2’−O−メチルの置換によってさらに改変された。中和抗PlGFアプタマーを製造するために、当業者により、このプロトコールが用いられ得る。また、VEGFアプタマー(Macugen(登録商標)、ペガプタニブナトリウム)は、ヒトに投与される第1の治療用アプタマーであり、加齢性黄斑変性の患者のために現在市販されている。
【0069】
VEGFR−1 mRNAまたはPlGF mRNAの翻訳を阻害するように機能するリボザイムなどの触媒的RNA分子を含むオリゴリボヌクレオチド配列も本明細書中に記載されているような阻害剤の範囲内である。
【0070】
多数のRNA分子は、触媒として活性があることが知られており、単に情報を核外に運び出す手段として働くのではない。
【0071】
リボザイムは、RNAの特異的切断を触媒することができる酵素的RNA分子である。リボザイム作用の機序は、相補的標的RNAへのリボザイム分子の配列特異的ハイブリダイゼーション、それに続くエンドヌクレアーゼ的切断を含む。自己切断または他のRNAを切断するリボザイムの活性は、RNAの二次構造に依存すると理解されており、これは塩基配列、および金属配置を含むことなどの要因に依存し得る。リボザイムは、遺伝子発現を人工的に制御することにおいて高い有用性を有する。塩基配列および予測可能なワトソン・クリック塩基対形成に基づいて、核酸の非常に特異的な電荷パターン、それらの塩基およびバックボーンならびにDNAが予測可能な二次構造を形成する能力を利用し得る。核酸の小さい寸法および柔軟性のある性質は、タンパク質などの他の物質における特徴を認識し、かつ特異的に結合することができる複合体の構築によく適合させる。バイオチップ上にマウントされた一本鎖核酸への結合に依存するSELEXを活用したスクリーニング(ゴールド(Gold)らに対する米国特許第5,567,588号)を通して、研究者らは、触媒的に活性が100倍または1000倍も高いリボザイムを発見した。フェルナンデズ(Fernandez)ら(2001年)は、リボザイム中の単一分子のコンフォメーション変化から収集されたデータを報告している。また、フェルナンデズ(Fernandez)らは、かかる本質的に二本鎖の核酸構造は、期待されるであろう対結合による進行性の対ではなく、コンフォメーション中の「全か無か」の離散遷移を経ることを報告している。
【0072】
切断部位で別々のRNA分子を切断する酵素活性を有する環状RNAおよびインビボで内在性リボザイム結合タンパク質を通してRNAに安定性を与えることができるRNA分子が、ビーン(Been)らの米国特許第5,712,128号およびシオウド(Sioud)の米国特許第5,985,620号に記載されている。
【0073】
任意の潜在的RNA標的内の特定のリボザイム切断部位は、以下の配列、GUA、GUUおよびGUCを含むリボザイム切断部位について標的分子をスキャンすることによって、最初に同定される。一旦同定されると、切断部位を含む標的遺伝子の領域に相当する15〜20リボヌクレオチドの間の短いRNA配列を、オリゴヌクレオチド配列を不適当にし得る二次構造などの予測される構造的特性について評価し得る。また、候補標的の適合性は、リボヌクレアーゼプロテクションアッセイを用い、相補的オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションに対するそれらの接触性を試験することによって評価し得る。
【0074】
阻害を提供する別の方法は、被験体、好ましくは哺乳動物、さらにより好ましくはヒトにおけるフィラデルフィア染色体陽性白血病の治療のためのPlGF(または場合によりVEGFR−1)RNA配列のエンドヌクレアーゼ的切断を特異的かつ効率的に触媒する遺伝子操作されたハンマーヘッド型モチーフリボザイム分子の使用である。アンギオザイムなどの抗VEGFR−1リボザイムが、リボザイム・ファーマシューティカルズ・インコーポレーティッド(Ribozyme Pharmaceuticals Inc)、ボルダー(Boulder)、コロラド(Colorado) 80301、USAによって、VEGFR−1 mRNAに対して開発されており、癌治療にすでに用いられている(ウェン(Weng)およびウスマン(Usman)、2001年;パブコ(Pavco)ら、2000年)。いくつかある抗VEGFR−1触媒RNA分子の中でも、このアンギオザイムは、PlGF受容体活性の阻害のために用いることができ、これは主なPlGF受容体であるVEGFR−1のmRNAを特異的に切断することによってPlGF受容体機能をダウンレギュレーションする。抗VEGFR−1リボザイムの臨床治験が、乳癌について現在進行中である。
【0075】
本明細書中で想定される他の阻害剤は、アンチセンスRNAおよびDNA分子ならびにPlGF遺伝子のmRNA配列またはその受容体VEGFR−1 mRNAの一部に相同なsiRNAコンストラクトを含むオリゴリボヌクレオチド配列である。RNA干渉または「RNAi」は、ファイヤ(Fire)および同僚らにより、二本鎖RNA(dsRNA)が遺伝子発現をブロッキングすることができるという観察を述べるために最初に作り出された用語である(ファイヤ(Fire)ら、1998年)。dsRNAは、脊椎動物を含む多くの生物において遺伝子特異的翻訳後サイレンシングを支配し、遺伝子機能を研究するための新たなツールを提供している。RNAiは、mRNA分解を含む。PlGFは、目的の細胞に上記PlGF遺伝子のmRNA配列の一部に相同なsiRNAコンストラクトを導入することを含む目的の細胞におけるPlGFの発現の選択的翻訳後サイレンシング方法によってサイレンシングすることができる。本発明は、細胞におけるRNA干渉(RNAi)PlGF発現および/または細胞におけるRNA干渉(RNAi)VEGFR−1発現を翻訳後遺伝子サイレンシングすることによって被験体におけるPh+白血病を治療する方法を提供する。これは、ヒト患者におけるインビボで、特に重要な方法である。同様に、PlGF RNAiの使用が、Ph+白血病の治療のために想定される。
【0076】
RNAiを開始するために用いられるdsRNAは、天然の供給源から単離してもよく、公知の手段によって生成、例えば、DNAから転写してもよい。例えば、プロモーター(DNA依存性RNAポリメラーゼによって認識される結合部位を含むDNAの任意の二本鎖配列を意味する)へのRNAポリメラーゼの結合は、転写の開始を可能にする。多くの公知のプロモーター配列、例えば、限定されないが、ファージT7、T3またはSP6のRNAポリメラーゼによって認識される配列を用いて、dsRNAを生成することができる。しかしながら、これは、このように同定され、相当するRNAポリメラーゼが入手可能な任意のプロモーター配列を使用できることが当業者に明らかであるので、限定を表すものではない。あるいは、dsRNAを形成するために用いられる二本鎖のDNAは、同じ、またはそれぞれが少なくとも部分的に相補的な配列のDNA鎖とともに形成する2つの異なる二本鎖に属していてもよい。dsRNAがこのようにして生成される場合、転写されるDNA配列は、一方が鎖の一方の転写を制御し、他方が相補鎖を制御する2つのプロモーターに隣接されている。これらの2つのプロモーターは、同一であってもよく、異なっていてもよい。実際、米国特許第5,795,715号に従うと、プロモーター配列とともに各末端に提供されるDNA二本鎖は、定義された長さを有し、対になってdsRNAを結合させることができるRNAを、直接生成することができる。
【0077】
dsRNAは、合成であれ天然由来であれ、種々の動物種、特に、霊長類の血清中に存在するヌクレアーゼによる迅速な分解の対象である。結果的に、dsRNAに関する手順は、一般に、初めから終わりまで、焼成ガラス製品を利用し、全ての緩衝液は、無菌性のために、例えば、ナルゲン(Nalgene) 45ミクロンフィルターを通して、ろ過される。エンドドキシン混入のいかなる可能性も最小限にするために、全ての溶液について、パイロジェンフリー再蒸留水を用いなければならない。
【0078】
dsRNA溶液の濃度は、そのUVスペクトルから決定してもよい。例えば、天然または合成dsRNAのモル濃度は、文献から入手可能な吸光係数または標準的な手順を用いて測定された吸光係数を用いて、260nmでの光学密度(OD)から測定される:OD260の44.7倍=マイクログラムdsRNA/ml
【0079】
適切な場合、操作の容易性のために、dsRNA溶液を、パイロジェンフリー緩衝液で希釈することができる。場合により、得られたdsRNAを支持体;またはアビジンでコートされた支持体に付着させることができるビオチンなどのリガンドに連結させてもよい。これによって、解析用ツールとして利用した場合、直接の定量化が可能になる。
【0080】
具体的な実施形態によれば、本発明のdsRNA組成物は、被験体の治療のため、具体的には、ヒト患者の治療のための医薬組成物として作製される。より具体的には、当該医薬組成物を投与して、ヒト患者におけるフィラデルフィア染色体陽性白血病が治療される。他の実施形態において、当該組成物を用いて、標的遺伝子が欠損しているか、この場合発現が阻害されている、機能的「ノックアウト」モデル生物が作製される。dsRNA医薬組成物は、上記患者に局所領域的に投与することができる。本発明のdsRNA医薬組成物は、好ましくは、化合物または混合物を、例えば、非経口的、静脈内、皮内、筋肉内または皮下、もしくは経皮的に投与可能にするのに適した薬学的に許容され得る担体または賦形剤を含む。有効成分は、任意の従来の薬学的に許容され得る担体または賦形剤とともに混合または配合されてもよい。
【0081】
機能性の可能性の高いVEGFR1遺伝子のサイレンシングおよび90%超のmRNAのノックダウンのための選択されたsiRNAは、ダーマコン・インコーポレーティッド(Dharmacon Inc.)、ラファイエット(Lafayette)、CO80026、USAから入手可能である。SMARTプーリング/SMARTセレクションと称される、全て1つの標的遺伝子に対するいくつかの異なるsiRNA二本鎖の貯蔵は、VEGFR1遺伝子および/またはPlGF遺伝子をサイレンシングするための効率的な技術として用いられる。PlGFに対するsiRNAも市販されている(例えば、サンタ・クルズ・バイオテクノロジー・インコーポレーティッド(Santa Cruz Biotechnology Inc.))。
【0082】
アンチセンスRNAおよびDNA分子は、標的mRNAに結合することおよびタンパク質翻訳を妨げることによって、mRNAの翻訳を直接ブロックするように作用する。アンチセンスDNAに関して、翻訳開始部位に由来するオリゴデオキシリボヌクレオチド、例えば、VEGFR−1またはPlGFヌクレオチド配列の−10〜+10領域が、具体的に想定される。例えば、VEGFR2アンチセンスオリゴヌクレオチドトランスフェクションによって獲得された、別のチロシンキナーゼ受容体であるVEGFR2受容体のダウンレギュレーションは、標準的なアンチセンス技術によって、すでに獲得されている(ベラード(Berard)ら、1997年)。さらに、PlGF受容体VEGFR1に対するアンチセンス(AS)オリゴヌクレオチドが、インビボで、血管新生をブロックすることが実証されている(マーチャンド(Marchand)ら、2002年)。さらに、PlGFタンパク質産生のアンチセンス阻害は、ヨネクラ(Yonekura)ら(1999年)によってすでに実証されている。
【0083】
アンチセンスRNAおよびDNA分子の両方ならびにリボザイムは、RNA(またはDNA)分子を合成する当該分野で公知の任意の方法によって作製してもよい。これらのものとしては、例えば、固相ホスホラミダイト化学合成などの当該分野で周知のオリゴデオキシリボヌクレオチドを化学的に合成するための技術が挙げられる。あるいは、RNA分子は、アンチセンスRNA分子をコードするDNA配列のインビトロおよびインビボ転写によって生成されてもよい。かかるDNA配列は、T7またはSP6ポリメラーゼプロモーターなどの適切なRNAポリメラーゼプロモーターを組み込む広範なベクターに組み込んでもよい。あるいは、用いられるプロモーターに依存して、構成的または誘導的にアンチセンスRNAを合成するアンチセンスcDNAコンストラクトは、細胞系に安定して導入することができる。
【0084】
また、特定の実施形態において、フィラデルフィア染色体陽性白血病の治療のための本発明の治療方法は、Ph+白血病の治療のための当該分野で公知の任意の他の療法と組み合わせて使用できることは明らかである。具体的に想定される療法としては、プロテインチロシンキナーゼ阻害剤、特に、BCR/ABL阻害剤、例えば、イマチニブなどが挙げられる。
【0085】
本出願において用いられる用語「薬剤」は、上記のような疾患を治療するための、前記分子(阻害剤)および薬学的に許容され得る担体または賦形剤(両方の用語は、互換的に用いられ得る)を含む組成物に関する。当業者に公知の適切な担体または賦形剤は、生理食塩水、リンゲル液、ブドウ糖溶液、ハンクス溶液、固定油、オレイン酸エチル、5%ブドウ糖を含む生理食塩水、等張性および化学安定性を高める物質、緩衝液ならびに保存剤である。他の適切な担体としては、タンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマー性アミノ酸およびアミノ酸コポリマーなどの、組成物を施される個体に有害な抗体の産生をそれ自体では誘導しない任意の担体が挙げられる。「薬剤」は、当業者の知識の範囲内の任意の適切な方法によって投与してもよい。好ましい投与の経路は非経口的である。
【0086】
非経口投与において、本発明の薬剤は、上記で定義された薬学的に許容され得る賦形剤に伴って、溶液、懸濁液または乳濁液などの単位投薬注射可能形態で製剤化される。しかしながら、投与量および投与の様式は個体に依存する。一般に、薬剤は、PlGF阻害剤(例えば、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、核酸、化合物または分子)が1μg/kg〜10mg/kg、より具体的には10μg/kg〜5mg/kg、最も具体的には0.1〜2mg/kgの用量で施されるように投与される。好ましくは、これは、ボーラス投与として施される。また、持続注入を用いてもよく、浸透圧ミニポンプを介した持続皮下送達が挙げられる。そうだとしたら、薬剤は、5〜20μg/kg/分、より具体的には7〜15μg/kg/分の用量で注入してもよい。
【0087】
本明細書中で用いられる用語「薬学的に許容され得る担体」としては、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤、吸収遅延剤などが挙げられる。医薬有効成分のためのかかる媒体および薬剤の使用は、当該分野で周知である。任意の従来の媒体または薬剤が本発明の組成物と不適合性である場合を除いて、治療製剤におけるその使用が期待される。補助的な有効成分も製剤処方中に組み込むことができる。
【0088】
従来採用されており、有効成分に関して不活性な任意の投与の様式、ビヒクルまたは担体を、本発明の医薬組成物を作製または投与するために利用してもよいことは、当業者に理解されるであろう。かかる方法、ビヒクルおよび担体の実例は、例えば、レミングストンズ・ファーマシューティカル・サイエンス(Remington’s Pharmaceutical Sciences)、第4版(1970年)に記載されているものであり、その開示は参照によって本明細書中に援用される。本発明の原理に触れた当業者は、適切で適当なビヒクル、賦形剤および担体を決定するのに、またはそれとともに有効成分を配合して本発明の医薬組成物を形成するのに、困難を経験しない。
【0089】
本発明の医薬組成物中に含まれる有効成分の治療上有効量は、その都度、いくつかの要因、例えば、治療される患者のタイプ、大きさおよび状態、意図される投与の様式、意図される剤形を患者が取り込む能力などに依存する。一般に、有効成分の量は、各剤形に、約0.1〜約250mg/kg、具体的には約0.1〜約100mg/kgを与えるように含まれる。本明細書中で用いられる「治療量」または治療上有効な量は、疾患の1つ以上の症状を寛解させる量である。かかる量は、典型的には、阻害剤および疾患の重症度に依存するが、場合により、日常の実験を通じて、当業者によって決定され得る。
【0090】
治療のための投与の別の側面は、前記PlGF遺伝子のアンチセンス遺伝子もしくは機能部分またはPlGF mRNAもしくはその機能部分に対するリボザイムを送達する遺伝子治療の使用である。遺伝子治療は、患者の細胞への治療用核酸の送達による治療を意味する。これは、レバー(Lever)およびグッドフェロー(Goodfellow)、1995年;Br.Med Bull.、51、1〜242;クルバー(Culver)ら、1995年;レッドリー(Ledley)、1995年において広範に概説されている。遺伝子治療を達成するために、患者の細胞に遺伝子を送達する方法および任意の治療用遺伝子の有効な生産を確実にするさらなる方法がなければならない。
【0091】
インビトロで、特にインビボでも、標的細胞における治療用遺伝子産物発現を達成するように意図された遺伝子治療プロトコールが、当該分野で広範に説明されている。これらのものとしては、プラスミドDNA(ネイキッドのものまたはリポソーム中のもの)の筋肉内注射、間質内注射、気道中の注入、内皮への適用、肝実質内、および静脈内または動脈内の投与(例えば、肝動脈内、肝静脈内)が挙げられるが、これらに限定されない。標的細胞に対するDNAの有効性を高めるために、種々の装置が開発されている。単純なアプローチは、標的細胞を、DNAを含むカテーテルまたは埋め込み可能な器具と物理的に接触させることである。別のアプローチは、高圧下で標的組織中に直接液体のカラムを突出する針を用いないジェット注射装置を利用することである。また、これらの送達パラダイムは、ウイルスベクターを送達するために用いられ得る。標的遺伝子送達のための別のアプローチは、分子コンジュゲートの使用であり、これは、細胞への核酸の特異的標的化のために核酸またはDNA結合剤が付着したタンパク質または合成リガンドからなる(クリスティアーノ(Cristiano)ら、1993年)。標的細胞は、典型的には、治療される必要のある症状に依存し、当業者によって選択され得る(例えば、白血病を治療するための骨髄細胞または間質細胞)。
【0092】
遺伝子治療ベクターは、治療量のPlGF阻害剤を発現するべきである。具体的な実施形態によれば、本出願において説明される遺伝子治療ベクターは、長期間にわたって、治療量の遺伝子産物の発現を支配する。実際、治療レベルが達成される限りは、新しい治療は必要ない。典型的には、治療用発現は、少なくとも20日間、少なくとも50日間、少なくとも100日間、少なくとも200日間、およびいくつかの場合においては300日間以上続くことが想定される。コード配列によってコードされる遺伝子産物(例えば、ポリペプチド、RNAiなど)の発現を、抗体ベースのアッセイ、例えば、ウエスタンブロットまたはELISAアッセイによるなどの任意の当該分野において認識されている手段によって測定し、例えば、遺伝子産物の治療上の発現が達成されているかどうかを評価することができる。また、遺伝子産物の発現は、遺伝子産物の酵素的または生物学的活性を検出する生物検定において測定してもよい。
【0093】
遺伝子治療ベクターは、エピソームベクター(すなわち、宿主細胞のゲノムに組み込まれない)であってもよく、または宿主細胞ゲノムに組み込まれるベクターであってもよい。エピソームベクターの例示としては、(染色体外)プラスミド、および発現カセットのみで構成され、細菌性配列がない、いわゆるミニサークルが挙げられ、宿主細胞ゲノムに組み込まれるベクターの例示としては、ウイルスベクターが挙げられる。
【0094】
代表的なプラスミドベクターとしては、pUCベクター、bluescriptベクター(pBS)およびpBR322またはそれらの細菌性配列のない誘導体(ミニサークル)が挙げられる。プラスミドベクターのいくつかは、トランスフェクト細胞中でのエピソームプラスミド持続性を高める要素を組み入れるように適応させ得る。かかる配列としては、転写単位に連結された足場/マトリックス付着領域モジュールに相当するS/MARが挙げられる(ジェンケ(Jenke)ら、2004年;マンツィーニ(Manzini)ら、2006年)。
【0095】
代表的なウイルスベクターとしては、アデノ随伴ウイルス、アデノウイルス、レトロウイルスおよびレンチウイルスに由来するベクターが挙げられる。あるいは、遺伝子送達系を用いて、ナノ粒子またはビロソームなどのウイルス成分および非ウイルス成分を組み合わせることができる(ヤマダ(Yamada)ら、2003年)。
【0096】
レトロウイルスおよびレンチウイルスは、感染後にそれらのゲノムを宿主細胞染色体に挿入する能力を有するRNAウイルスである。ウイルスタンパク質をコードする遺伝子を欠くが、細胞に感染してそれらの遺伝子を標的細胞の染色体に挿入する能力は保持するレトロウイルスベクターおよびレンチウイルスベクターが開発されている(ミラー(Miller)、1990年;ナルディニ(Naldini)ら、1996年)。レンチウイルスベクターと古典的なモロニーマウス白血病ウイルス(MLV)ベースのレトロウイルスベクターとの間の違いは、レンチウイルスベクターが分裂および非分裂細胞の両方を形質導入できるが、MLVベースのレトロウイルスベクターは分裂細胞のみを形質導入できることである。
【0097】
アデノウイルスベクターは、生きている対象に直接投与されるように設計される。レトロウイルスと異なり、アデノウイルスベクターゲノムのほとんどは、宿主細胞の染色体に組み込まれない。その代わり、アデノウイルスベクターを用いて細胞に導入された遺伝子は、長期間にわたって存続する染色体外要素(エピソーム)として核中に維持される。アデノウイルスベクターは、気道上皮細胞、間質細胞、肝細胞および種々の腫瘍などのインビボの多くの異なる組織中で分裂細胞および非分裂細胞を形質導入する(トラップネル(Trapnell)、1993年)。
【0098】
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、疾患を引き起こすことが知られており、その結果非常に温和な免疫応答しか引き起こさず、ヒトおよびいくつかの他の霊長類種に感染する小さいssDNAウイルスである。AAVは、分裂細胞および非分裂細胞の両方に感染することができ、そのゲノムを宿主細胞のゲノムに組み入れることができる。これらの特性は、AAVを、遺伝子治療のためのウイルスベクターを作製するための非常に魅力的な候補とさせるが、ベクターのクローニング能力は比較的限られている。
【0099】
別のウイルスベクターは、大きい二本鎖DNAウイルスであり、単純ヘルペスウイルスに由来する。別のdsDNAウイルスである組み換え型のワクシニアウイルスは、大きいインサートを収容することができ、相同組み換えによって生じる。
【0100】
本明細書中に挙げられた阻害剤は、フィラデルフィア染色体陽性(Ph+またはBCR−ABL+)白血病の治療のために用いてもよく、Ph+(BCR−ABL+)白血病の治療用薬剤の製造のために用いてもよい。Ph+/BCR−ABL+白血病の治療方法は、典型的には、治療を必要とする被験体、最も具体的にはヒト被験体へのかかるPlGF阻害剤の投与を含む。Ph+白血病の具体的なサブセットは、慢性骨髄性(myelogenous)白血病(CML)である。したがって、具体的な実施形態によれば、本出願において説明された使用および方法は、CMLの治療のためである。Ph+白血病の別の重要なカテゴリーは、同様にフィラデルフィア染色体の存在によって特徴付けられる、急性リンパ球性(lymphocytic)白血病(ALL)である。このカテゴリーは、典型的には、Ph+ALL症例において多くの標準的な治療が失敗するように悪い予後を有する。具体的な実施形態によれば、フィラデルフィア染色体(またはBCR−ABL融合タンパク質)が存在するもう一方の白血病も本明細書中に記載されている使用および方法に適するであろう。しかしながら、これらの症例は、CMLまたはALLよりも一般的でない。それでもなお、Ph+AML(急性骨髄球性(myeloid)白血病)のいくつかの症例が報告されており、かかるPh+白血病の症例も本出願において提供される使用および方法から恩恵を得ると想定される。
【0101】
白血病が深刻な疾患であり、しばしば患者にとって悪い予後を伴うことを知ることは、重要である。したがって、1つの治療のアプローチが失敗した場合に、他の治療戦略、または併用法を提供することができることは、重要である。治療の恩恵を、具体的には他の治療計画から恩恵を得られない患者にも提供することは、本出願の目的である。
【0102】
フィラデルフィア染色体陽性白血病、具体的にはCMLの、標準的な治療は、BCR−ABL阻害剤またはチロシンキナーゼ阻害剤の使用である。このタイプの薬剤の最もよく知られている例は、イマチニブであるが、ニロチニブ(AMN107)、ダサチニブ(BMS354825)、AT9283(アステックス・セラピューティクス(Astex therapeutics))、SGX393(イーライ・リリー(Eli Lilly))、INNo−406(イノバイブ・ファーマシューティカルズ(Innovive Pharmaceuticals))、ボスチニブ(SKI606)、およびMK0457(Merck)などの、いくつかの他の例が存在する。
【0103】
しかしながら、いくつかの報告によって、これらの薬剤に対する抵抗性が一般的な問題であることが示されている。実際、白血病細胞は、治療が成功した患者においても生き残っており、患者の一部は抵抗性を生じ、最終的には再発する(スワーズ(Swords)ら、2007年;ブチャート(Buchert)、2007年;リ(Li)およびリ(Li)、2007年;クジャウスキー(Kujawski)およびタルパッツ(Talpaz)、2007年)。具体的な実施形態によれば、PlGF阻害剤は、BCR−ABL阻害剤で治療することができないPh+白血病、および/またはより具体的にはBCR−ABL阻害剤単独で治療することができない症例の治療のために用いられる。フィラデルフィア染色体陽性白血病は、種々の理由のため、BCR−ABL阻害剤(またはBCR−ABL阻害剤単独)で治療することができないことがあり、その2つの最も一般的なものは、BCR−ABL阻害剤に対して悪性細胞が非感受性であることおよび医薬が患者によって許容されないことである。
【0104】
BCR−ABL阻害剤に対する白血病細胞の非感受性は、いくつかの機序により(シャア(Shah)およびソイヤーズ(Sawyers)、2003年)、発症から起こり得る(すなわち、最初の治療で非感受性)か、または(例えば、再発を示す患者において、または例えば、急性転化期のさらに進行した白血病の患者において)抵抗性を獲得し得る。
【0105】
また、BCR−ABL阻害剤は、患者において有害な副作用を引き起こすことが知られており、これは特定の患者にとって薬剤がもはや適さなくなることにつながり得る。患者におけるアレルギー反応も医薬に対する不耐性につながり得る。
【0106】
特定の実施形態によれば、PlGF阻害剤は、BCR−ABL阻害剤での治療に(少なくとも部分的に)抵抗性のあるPh+白血病の治療のために用いられる。BCR−ABL阻害剤に対して(部分的に)抵抗性のある白血病は、BCR−ABL阻害剤に対する応答が減弱した白血病細胞が存在する白血病として定義され得る。応答が減弱した細胞の量は、BCR−ABL阻害剤に対する抵抗性の程度の指標である。典型的には、必ずしもそうではないが、BCR−ABL阻害剤に対する(部分的)抵抗性は、後天的な現象である。さらなる特定の実施形態によれば、PlGF阻害剤は、イマチニブ抵抗性Ph+白血病の治療のために用いられる。かかる白血病の非限定的な例示としては、イマチニブ抵抗性Ph+CML、イマチニブ抵抗性Ph+ALL、例えば、イマチニブ抵抗性Ph+T−ALL、イマチニブ抵抗性Ph+B−ALLが挙げられる。
【0107】
もちろん、全ての奨励においてではないが、時々、BCR−ABL阻害剤に対する抵抗性、特に、マチニブに対する抵抗性は、BCR−ABL遺伝子、特に、チロシンキナーゼドメインにおける変異と関連がある。T315I変異が、その最もよく知られている例である。他の例示としては、E255K、E255V、Y253H、H396P、F317L、M351T、G250E、F311L、M244V、F359V、L387M、H396R、Q252H、Y253F、Q252R、およびE355G変異が挙げられる(シャア(Shah)およびソイヤーズ(Sawyers)、2003年)。コービン(Corbin)らは、特に、G250E、H396P、H396R、E255VおよびT315Iがイマチニブに対する抵抗性を与えるように見えることを報告した(コービン(Corbin)ら、2003年)。具体的な実施形態によれば、PlGF阻害剤は、BCR−ABL遺伝子が少なくとも1つの変異を有するPh+白血病の治療のために用いられる。さらなる具体的な実施形態によれば、PlGF阻害剤は、BCR−ABL阻害剤で治療することができないおよび/またはBCR−ABL阻害剤単独で治療することができない、BCR−ABL遺伝子が少なくとも1つの変異を有するPh+白血病の治療のために用いられる。さらにさらなる具体的な実施形態によれば、Ph+白血病は、イマチニブで治療することができないか、またはイマチニブ単独で治療することができない。さらにより特定の実施形態によれば、BCR−ABL遺伝子中の少なくとも1つの変異は、T315I、E255K、E255V、Y253H、H396P、F317L、M351T、G250E、F311L、M244V、F359V、L387M、H396R、Q252H、Y253F、Q252RおよびE355Gの変異からなる群から選択される。
【0108】
フィラデルフィア染色体陽性白血病の治療のための胎盤増殖因子の阻害剤の使用は、独立型の療法または治療の方法であってもよいことが想定される。しかしながら、具体的な実施形態によれば、Ph+白血病の治療におけるPlGF阻害剤の使用は、併用療法の一部として想定される。したがって、PlGF阻害は、放射線療法、化学療法、生物学的療法(例えば、インターフェロン治療)、幹細胞移植、骨髄移植、外科手術(例えば、脾臓除去)、またはBCR−ABL阻害、Lyn阻害、Hsp90阻害、Src阻害などの標的療法などのPh+白血病を治療するために用いられる他の療法とともに用いられてもよい。もちろん、PlGF阻害は、これらの療法の2以上(例えば、BCR−ABLおよびLyn阻害とともに)を組み合わせて用いてもよい。
【0109】
PlGF阻害は、他の療法と同時に、または他の療法の前もしくは後に行なってもよく、または、それらを、例えば、間欠的に変化させてもよい。当業者は、最適な治療計画に基づいて、場合により日常の実験の後に、決定することができる。
【0110】
具体的な実施形態、特定の構成ならびに材料および/または分子を、本発明による細胞および方法について本明細書中で説明してきたが、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、形態および詳細における種々の変化および改変がなされてもよいことが、理解されるべきである。以下の実施例は、具体的な実施形態をよりよく説明するために提供され、本出願を限定すると見なされるべきでない。本出願は、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例】
【0111】
材料および方法
動物
雌性Balb/cマウス(8週齢)をジャンビエール(Janvier)から得た。飼育および全ての実験動物手順は、ケー.ユー.リューヘン(K.U.Leuven)の動物の取り扱いと動物実験に関する企業内諮問委員会(Institutional Animal Care and Research Advisory Committee)によって承認された。
【0112】
細胞および培養条件
KCL−22およびCRL−1929細胞を、ATCCから得た。Bv−173、K562、BaF3、32DおよびNalm6細胞は、ジェイ・クールズ(J.Cools)(ヴェーイーベー、リューヘン(VIB、Leuven))の厚意により提供された。Bv−173細胞およびK562細胞を、20%FCS(ハイクローン・ラボラトリーズ(Hyclone Laboratories))を含むRPMI培地(ギブコ(Gibco)、インビトロジェン・コーポレーション(Invitrogen Corporation))中で培養し;BaF3、32DおよびKCL−22細胞を、10%FCSを含むRPMI培地中で培養し;Nalm6細胞を、10%FCSを含むDMEM培地(ギブコ(Gibco)、インビトロジェン・コーポレーション(Invitrogen Corporation))中で培養し、CRL−1929細胞を、20%FCSと0.05mM β−メルカプトエタノール(ギブコ(Gibco)、インビトロジェン・コーポレーション(Invitrogen Corporation))とを含むIMDM培地(ギブコ(Gibco)、インビトロジェン・コーポレーション(Invitrogen Corporation))中で培養した。
【0113】
一次マウス骨髄由来間質細胞(BMDSC)の単離
BMDSCの単離のために、大腿骨および脛骨由来の骨髄をフラッシングし、溶解バッファー(150mM NH4Cl(NH4Cl)、0.1mM EDTA、10mM KHCO3(KHCO3)、pH7.4)で赤血球を除去し、続いて細胞を、15%FCSが補われたDMEM培地中で培養した。24時間後に、非接着細胞画分を除去し、接着細胞をさらに培養し、3週間増殖させた。
【0114】
増殖アッセイおよび共培養
MTTアッセイを用いること、または血球計算器を用いた手作業での集計によって、白血病細胞およびBMDSCの増殖を解析した。マウス組み換えPlGFおよび抗VEGFR−1を、アール・アンド・ディー・システムズ(R&D Systems)から得た。抗PlGFおよび対照IgGは、トロンボジェニックス(Thrombogenics)およびバイオインベント(BioInvent)によって製造され、説明されるように特徴付けられる(フィッシャー(Fischer)ら、2007年)。PlGFは、50ng/mlの濃度で用い、抗体は、他に示されない限りは、100倍モル過剰で用いた。共培養実験のために、10個のBMDSCを、4×10個の白血病細胞単独とともに、または血清不含培地中のそれぞれの抗体の存在下で、48時間培養した。続いて、接着BMDSCおよび非接着白血病細胞の数を測定し、PlGFおよびVEGFタンパク質の解析のために上清を回収した。
【0115】
末梢血解析
後眼窩出血によるキャピラリーピペットで血液を採取し、白血球数(WBC)を、自動細胞計数器を用いて測定した(ベックマン・コールター(Beckman Coulter))。
【0116】
ELISA
「Quantikine」マウスPlGFおよびマウスVEGFイムノアッセイ(アール・アンド・ディー・システムズ(R&D Systems))を用い、細胞培養上清、末梢血血漿および骨髄血漿において、PlGFまたはVEGFの濃度を定量した。濃度を、pg/ml/10個の細胞またはpg/mlとして表した。
【0117】
定量的リアルタイムPCR
RT−PCRは、本質的に、以前に記載されているようにプライマーおよびプローブを用いて行なった(フィッシャー(Fischer)ら、2007年)。
【0118】
BCR−ABL+プレB細胞白血病の同系モデル
BCR−ABL+BaF3細胞を上述のように培養し、1×10個の細胞を、尾静脈を通して同系8週齢Balb/Cマウスに注射した。
【0119】
イマチニブ感受性およびイマチニブ抵抗性CMLの移植モデル
CMLの誘導のために、200mg/kg 5−フルオロウラシル(5−FU;シグマ・アルドリッチ(Sigma Aldrich))での処理の4日後にBalb/Cドナー(8週齢)から、大腿骨および脛骨をフラッシングすることによって骨髄細胞を回収し、10ng/ml IL−3、10ng/ml IL−6および50ng/ml SCFを含む培地中においてインビトロで予備刺激した。続いて、前記細胞を、レトロウイルスストックでの1回の共沈降に供した(レトロウイルスコンストラクト:MCSV−GFP、MSCV−BCR−ABL p210 IRES−EGFP、MSCV−BCR−ABL−T315I−IRES−EGFP;ジャン・クールズ(Jan Cools)の厚意により提供された)。レシピエント雌マウスを致死線量照射により準備し、形質導入された骨髄を、動物1匹あたり0.5×106(0.5×106)個の細胞の静脈内注射により移植した。
【0120】
実施例1 インビトロでの白血病細胞および一次骨髄間質細胞におけるPlGF発現の解析
インビトロでの、白血病細胞によるおよび白血病関連間質細胞の異型集団によるPlGFの発現プロファイルを決定するために、一組のBCRABL骨髄系およびリンパ球細胞系(マウス:BaF3、32D;ヒト:K562、Bv−173、KCL−22)においてPlGF発現を解析した。また、ヒトBCR−ABL−リンパ球細胞系Nalm−6を調べた。さらに、骨髄間質細胞の異型集団において、PlGF発現を定量化した。ELISAによって測定すると、調べられた全ての白血病細胞系においてPlGFタンパク質の発現は見出されず、マウス骨髄から単離された健常CD45造血細胞において非常に少量(41±2.3pg/ml)が見出された(図1A)。対照的に、マウス一次骨髄由来間質細胞(BMDSC)および間質細胞系(S17、OP9)は、大量のPlGFタンパク質を発現した(図1A)。
【0121】
骨髄由来間質細胞のFACS解析から、3週間の平均培養期間の後、マウスBMDSCの49.7%±20%が造血系統であることが明らかになった(示さず)。マウスBMDSCの造血画分(CD45)または非造血画分(CD45)がPlGFを発現したかどうかを解明するために、我々は、免疫磁気アプローチによって両方の集団を分離させ(純度>93%、示さず)、続いて、CD45およびCD45BMDSCの上清中のPlGFを測定した。これらの実験によってCD45BMDSCによるPlGFのほとんど独占的な発現が明らかにされた(図1B)(N=3;p<0,001)。さらに、我々は、ヒト(HUVEC)およびマウス(fEND5)内皮細胞におけるPlGF発現を測定し、PlGFタンパク質の大量発現を見出した(HUVEC:279,7±29,9pg/ml;fEND5:125,7±18,8pg/ml;N=3)。要するに、これらの結果は、PlGFが、インビトロで、白血病細胞によってではなく、骨髄間質細胞によって主に発現されるという傾向を示す。
【0122】
実施例2 PlGFは、白血病間質によって発現され、インビボでの白血病進行のバイオマーカーになる。
白血病疾患進行に対するPlGFの潜在的影響を解明し、インビボでのαPlGFの治療可能性を解明するために、BCR/ABL−GFP形質導入骨髄を同系の亜致死的に照射されたマウスに移植することにより、十分に説明されたCML急性転化モデルを用いた。我々は、まず、対照マウスと比較して、異なる時点(d14、d21およびd28)で罹患マウスの血漿中のPlGFタンパク質レベルを解析し、健常マウスまたはモック形質導入された骨髄を移植されたマウスの末梢血中の非常に少量のPlGFタンパク質、およびそれらの骨髄中の少量のPlGFタンパク質を検出した。対照的に、白血病マウスは、それらの循環において、末期に、固形腫瘍を有するマウスに匹敵するレベル(フィッシャー(Fischer)ら、2007年)に達する疾患進行の際のPlGFタンパク質の増加を示した(図2A、B)。PlGF増加の同様の動態が、骨髄血漿中で観察された(図2B)。また、我々は、PlGFの天然の阻害剤であるsVEGFR−1を定量し、sVEGFR−1がPlGFと比較して過剰に存在するが、PlGF/sVEGFR−1比が疾患進行の際に血液中および骨髄中で増加し、PlGFのアップレギュレーションが白血病の経過においてsVEGFR−1よりも顕著であることが示されることが分かった(図2C、D)。
【0123】
インビボでのPlGFの源を解析するために、骨および骨髄のリアルタイムPCR解析を行ない、骨髄中のPlGF mRNAの12.6倍のアップレギュレーションを明らかにした(N=8;P<0.002)(図2E)。骨中のPlGF mRNAレベルは、罹患および健常マウスにおいて同様であり(データ示さず)、白血病マウスの骨髄血漿中で検出された、PlGFの上昇の主な原因は、骨髄を示した。骨髄内のPlGF産生細胞をさらに特定するために、我々は、白血病細胞(GFP)、非白血病造血細胞(GFPCD45)および非白血病非造血間質細胞(GFPCD45)をFACS選別し、続いて、これらの細画分におけるRT−PCRによって、PlGF mRNA発現を測定した。これらの実験は、上述のインビトロでの知見と同様に、PlGFがCD45間質細胞によって主に発現されており、インビボの白血病細胞マウスにおいて白血病細胞または造血細胞によってはほんのわずかしか発現されないことを明らかにした。実際、GFPCD45間質細胞は、白血病細胞より95,6倍多くPlGF mRNAを発現し、造血細胞より32倍多くPlGF mRNAを発現した(N=4;P<0,05);図2F)。白血病マウス由来のCD45骨髄細胞におけるPlGF mRNAレベルを健常マウスの骨髄由来のCD45細胞における中のPlGF mRNAレベルと比較した場合、我々は、白血病を有するマウスの非造血間質細胞区画内で、PlGF発現の強い(25,4倍)アップレギュレーションを見出した(N=4;P<0,05)(図2F)。興味深いことに、VEGF mRNAは、健常マウスと比較した場合、白血病を有するマウスの骨髄において、ほんのわずかしかアップレギュレーションされておらず(N=8;P=0.23)(図2G)、PlGFが、インビボでも、BCR/ABL+白血病において特異的な間質由来病原因子になることを示した。この仮説は、末期罹患マウスの骨髄中のGFP+細胞のFACS解析によって測定すると、白血病マウスの血漿または骨髄血漿中に存在するPlGFタンパク質の量が、骨髄に浸潤する白血病性芽球の数と相関するという観察によってさらに実証される(r=0.81およびr=0.85;p<0.05;図2H、I)。したがって、PlGFは、マウスにおける急性転化CMLの疾患進行のバイオマーカーになる。
【0124】
実施例3 抗PlGFは、白血病細胞のPlGF誘導性増殖を阻害する。
白血病細胞に対するPlGFの潜在的な生物学的効果を測定するために、白血病細胞系における主なPlGF受容体であるVEGFR−1およびその共受容体であるNpn1およびNpn2の発現を調べた。VEGFR−1は、既刊文献(フラゴーゾ(Fragoso)ら、2006年)と一致して、最もよく研究された細胞系によって発現された(データ示さず)。Npn1およびNpn2は、K562、Nalm−6、BV−173およびKCL−22細胞系において、異なるレベルではあるが発現されたが、32D細胞においては発現されなかった(図3A、B)。これらの知見に基づいて、我々は、白血病細胞をPlGFとともにインビトロでインキュベートし、既刊文献にしたがって、5つのBCR/ABL細胞系のうち4つの増殖を用量依存的に誘導した(図3C、D)。その主な受容体であるVEGFR−1に加えて、PlGFも、共受容体であるNpn−1およびNpn−2に結合する。白血病細胞のPlGF誘導性増殖がVEGFR−1を必要とするかどうかを解明するために、細胞外VEGFR−1遮断抗体(αVEGFR−1)の阻害効果を評価した。αVEGFR−1の存在下でのPlGF媒介増殖の阻害が見出された(図3E)。対照的に、白血病細胞のPlGF誘導性増殖は、Npn−1およびNpn−2に対する細胞外の機能遮断抗体の添加の際には阻害されず、PlGFの増殖促進効果がVEGFR−1によって主に媒介されないことを示した(図1G)。次の工程において、抗PlGF(αPlGF)が白血病細胞のPlGF誘導性増殖を阻害し、αPlGFの添加の際のPlGFの増殖促進効果のほぼ完全な抑止が見られるかどうかを調べ、白血病における治療可能性を示した(図3F)。
【0125】
BCR/ABL白血病細胞のABLリン酸化の変化をPlGFが誘導するかどうかを明らかにするために、PlGF存在下および比存在下でインキュベートされたBv−173およびKCL−22細胞のウエスタンブロットを行なった。これらの実験は、PlGFがABLのリン酸化を改変しなかったことを示した(データ示さず)。
【0126】
実施例4 白血病細胞とBMDSCとの間のパラクリン相互作用は、BMDSCによるPlGF分泌を誘導する。
共培養実験を行ない、BMDSCまたはS17細胞のいずれかによるPlGF分泌の増加をもたらすヒト白血病細胞とマウスBMDSCまたはマウス骨髄間質細胞系(S17)との間の潜在的な相互作用を調べ、共培養の際のマウスPlGFの有意なアップレギュレーションが見出された(図4A、B)。この知見は、我々に共培養物の増殖を解析することを促し、白血病細胞およびBMDSCの増殖の有意な誘導を明らかにした(図4C、D)。また、この増殖促進効果は、培養物へのαPlGFの添加の際にほとんど完全に抑制され、PlGFがパラクリン様式で白血病細胞の増殖を誘導し得るが、同時にオートクリンループによって骨髄間質細胞の増殖を媒介し、したがって白血病性クローンおよびその支持的間質を同時に促進することが示された(図4C、D)。興味深いことに、この相互作用は、VEGFが共培養の際にアップレギュレーションされないために、PlGFのアップレギュレーションを特異的にもたらす(データ示さず)。インビボでのBCR−ABL+白血病におけるPlGFの潜在的な役割を試験するために、BCR/ABL+骨髄球性(myeloid)およびリンパ性白血病の3つの異なるマウスモデルを樹立した。
【0127】
PlGFのアップレギュレーションを誘導し得る分子シグナルを解明する目的で、我々は、まず、白血病細胞馴化培地(CM)とのインキュベーションが、白血病細胞との直接共培養と同様の間質細胞(S17)におけるPlGFのアップレギュレーションを誘導するのに十分であるかどうかを解析し、実際に、CMが、S17によるPlGF分泌の誘導に十分であることを見出した(N=3;P=0,008;図4E)。
【0128】
実施例5 白血病細胞でなく宿主間質の遺伝的欠損は、白血病マウスの生存期間を延長させる。
インビボでのBCR/ABL白血病におけるPlGFの役割を決定するために、我々は、PlGFに遺伝的に欠損のあるマウス(PlGF−/−)およびwtマウス(WT)において、白血病を誘導し、両方の群の間で生存期間を比較した。我々は、PlGFを欠損するマウスがWTマウスよりも有意に長く生存し、PlGFがインビボで白血病の発症において重要な役割を果たすことを示唆することを見出した(N=14/15;P=0.003;図5A)。
【0129】
BCR/ABL+白血病においてPlGFが間質由来因子になるという我々の仮説を証明するために、我々は、WTマウスおよびPlGF KOマウス由来の形質導入骨髄細胞をWT宿主に移植することにより、クロスオーバー研究を行ない、異なる群の間で生存期間を比較した(WT→WT、KO→WTおよびWT→KO)。我々は、白血病細胞中にPlGFがないとマウスの生存期間を延長しないが、宿主間質のPlGF欠損によって白血病マウスにおける有意な生存優位性を誘導し、完全なPlGF欠損系における範囲に匹敵する範囲にあることを見出した(上記参照)。したがって、間質由来PlGFは、インビボでBCR/ABL白血病の進行を決定的に促進する(図5B)。
【0130】
実施例6 抗PlGFでの白血病マウスの処理は、白血病マウスの生存期間を有意に延長する。
マウスPh+白血病におけるPlGF阻害の治療可能性を調べるために、BCR−ABL+BaF3細胞の静脈内注射によって誘導された白血病を有するマウスをαPlGFで処理し、対照抗体と比較して18日間という生存期間中央値の有意な延長を見出した(N=9;P=0.015)(図5C)。これらの結果は、我々に、白血球の増加を末梢血中で最初に検出することができた1週間後に罹患マウスの死をもたらす脾腫および骨髄球性(myeloid)白血病細胞の過剰増殖によって特徴付けられる急性転化において、ヒト疾患状態を臨床的に模倣するBCR−ABL形質導入BMの移植によって誘導されたイマチニブ感受性およびイマチニブ抵抗性(T315I変異)CMLのマウスモデルを樹立することを促した。その後、白血病負荷、骨髄組織学およびマウスの生存期間に対するαPlGFの効果を調べた。減少した白血病負荷が観察され(データ示さず)、初期(d15)および末期(d28)白血病のGFP細胞のFACS解析は、BMおよびPMにおけるBCR−ABL細胞の特異的な減少を明らかにした(N=7;P<0,05)(図5D、Eおよび示さず)。さらに、末期の骨髄組織像は、αPlGFでの処理によって誘導された疾患進行の実質的な阻害を示す(図5F)。その後、マウスの生存期間に対するαPlGFの効果を調べた。これらの実験は、イマチニブ感受性および抵抗性白血病を有するマウスの両方において、対照抗体と比較した場合、αPlGFでの処理の際の生存期間の有意な延長を示唆する(図5G、H)。したがって、αPlGFは、BCR/ABL変異状態と無関係に、マウス急性転化白血病の進行を阻害する。
【0131】
実施例7 抗PlGFでの白血病マウスの処理は、骨髄血管新生過多および線維症を阻害する。
骨髄の血管新生は、白血病における重要な病原因子になる。PlGFは、強力な血管新生促進サイトカインであり、腫瘍血管新生を促進することがすでに示された。したがって、末期白血病を有するモック移植された対照抗体処理マウスおよび末期白血病を有するαPlGF処理マウスにおけるCD31染色の形態計測学的解析によって、骨髄血管新生に対するPlGF阻害の効果を解析した。これらの実験は、モック移植された対照と比較して、白血病マウスにおける骨髄の深刻な血管新生過多を示唆した(図6A、C)。この血管新生過多は、αPlGFでの処理の後に、有意に減少した(図6A、C)。
【0132】
骨髄線維症は、CMLにおける周知の有害因子であり、イマチニブに対する抵抗性と関連する。PlGFがBMDSCの増殖を刺激するという本発明者らの観察に基づいて(上記参照)、我々は、αPlGFでの白血病マウスの処理が骨髄線維症を改変するかどうかを調べた。骨髄中のレティキュリン線維の平均長の形態計測学的解析に際して、我々は、PlGFの阻害によって誘導された骨髄線維症の有意な減少が見られた(図6B、D)。したがって、αPlGFは、白血病マウスにおける骨髄の血管新生過多および線維症の両方を減少させる。
【0133】
興味深いことに、初期実験は、イマチニブおよび抗PlGFが、インビボでBCR/ABL+白血病に対して付加的な阻害効果を有することを示している。
【0134】
実施例8 PlGFは、ヒトCMLにおいてアップレギュレーションされる。
ヒトCMLにおける新規の標的分子としてのPlGFの関連性を調べるために、我々は、健常対照群(n=10)、一次診断の際に慢性期(CP)にある非処理患者(n=32)と、異なるチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)での処理下にある急性転化(BC、疾患の末期)の患者(n=9)とにおけるPlGF血漿レベルを測定した。これらの解析は、健常対照群と比較して、CPにある新たに診断された患者において2.1倍のPlGFのアップレギュレーション(p<0.0001)およびBCの患者における3.7倍のPlGFレベルの増加(p<0.0001)を明らかにした(図7A)。続いて、新たに診断されたCMLの患者(n=7)および骨髄の浸潤のないリンパ腫と診断された対照患者(n=5)の骨髄血漿(BMP)におけるPlGFレベルを測定した(図7B)。これらの解析は、対照と比較して、CML患者のBMPにおいてもPlGFのアップレギュレーションを明らかにした。
【0135】
次いで、単一の施設中でQRT−PCRによって測定されたPB PlGFタンパク質とBCR−ABL1転写産物数との間の潜在的関係を調べた(n=43 CP、n=2移行期;異なるTKIでの処理、イマチニブ+インターフェロン、またはホモハリングトニン)。我々は、PlGFレベルとBCR−ABL1転写産物数との間の有意な相関を見出し(r=0.45;p=0.0016)、PlGFがヒトCMLにおける疾患特異的標的になることを示した(図7C)。続いて、我々は、健常ドナーならびにCPおよびBCにあるCMLドナーからCD34細胞を単離し、QRT−PCRによってPlGF発現を測定した。これらの解析は、PlGF発現が、白血病細胞において、健常CD34細胞におけるのと等しく低いことを明らかにした(図7D)。したがって、上昇した循環PlGFは、白血病細胞によって分泌されないが間質細胞によって分泌される可能性が最も高い。この仮説を調べるために、我々は、新たに診断されたCMLの患者から接着BM間質細胞を単離し、PlGF発現レベルを、CD34白血病細胞のものと比較した。我々は、間質細胞が、白血病細胞よりも7倍超多くPlGFを発現し(図7D;p=0.003)、我々の前臨床データを実証し、PlGFがCML患者において間質細胞によって主に産生されるという概念を拡張した。
【0136】
実施例9 イマチニブ下のCML患者において、PlGFレベルは上昇したままである。
薬剤の中止後にほとんどの患者において急速な再発を引き起こす、イマチニブで処理された患者において白血病細胞がなぜ存続するのかは、未だ不明である。BCR/ABL白血病細胞とは無関係に、宿主間質が、潜在的に重要な役割を果たす。イマチニブがBMDSCによってPlGF分泌を誘導し得るかどうかを明らかにするために、我々は、間質細胞を、イマチニブの濃度を増加させつつインキュベートした。これらの実験は、マウスBMDSCにおけるPlGFの用量依存的誘導を明らかにし、イマチニブに対する抵抗性を媒介することにおける間質由来PlGFの潜在的な役割を示唆した。BMDSCにおけるPlGFのこの誘導がインビボでも起こるのかどうかを明らかにするために、我々は、BCR/ABL形質導入骨髄の移植によって誘導されたCMLを有するマウスをイマチニブで処理し、それらの骨髄中のPlGFレベルを非処理白血病マウスおよび健常マウスと比較した。これらの実験は、白血病を有するイマチニブ処理マウスの骨髄浸潤が有意に低かったものの、非処理マウスと比較して、イマチニブ処理した白血病マウスの骨髄におけるPlGFのアップレギュレーションを明らかにした(図7E)。これらの結果は、骨髄におけるイマチニブによる白血病誘導性PlGF発現の促進を示し、これはイマチニブ存在下での白血病細胞性生存および増殖を促進し得ることを示す。
【0137】
これらの発見は、我々に、異なる応答レベル(完全分子寛解CMR;BCR/ABL/ABL比<1;BCR/ABL/ABL比<10)に達するイマチニブで処理された患者のPBにおけるPlGFレベルを測定し、それらを健常個体群および一次診断された非処理CML患者と比較することを促した。興味深いことに、PlGFレベルは、健常被験体および低いBCR/ABL/ABL比<1を有する患者よりも、CMLの患者において有意に高く、非処理の新たに診断されたCML患者において、PlGFは同様のレベルまで上昇した(図7F)。これらのデータは、数桁の白血病負荷の減少にもかかわらず、PlGFが上昇したままであり、イマチニブでの治療下での疾患の持続性に寄与し得ることを示す。
【0138】
結論として、我々のデータは、PlGFが、BCR/ABL変異状態とは無関係に、Ph+白血病の進行を促進する間質由来要素になり、BCR/ABLキナーゼ阻害剤の有用な補助であるか、またはTKI難治性白血病において有用な、白血病間質によって産生される新規の標的になることが示される。
【0139】
考察
イマチニブおよび第2世代BCR−ABL阻害剤の導入によって、フィラデルフィア染色体陽性(Ph+)白血病の患者の治療に革命がもたらされたが、治療が成功した患者においても白血病細胞が存続し、一部の患者は抵抗性を生じ、最終的には再発する。これらの欠点の理由は完全には解決されていないが、BCR−ABLとは無関係に、宿主細胞が潜在的に重要な役割を果たすことが、我々によって推論された。胎盤増殖因子(PlGF)は、VEGFのホモログであり、固形腫瘍中の間質細胞によって大量に分泌されることがすでに証明された。したがって、Ph+リンパ性および骨髄球性(myeloid)白血病におけるPlGFの役割を調べ、我々が固形腫瘍の様々な前臨床モデルにおいて広範な抗腫瘍能力を有すると最近報告した、PlGFに対するモノクローナル抗体であるαPlGFの治療可能性に取り組む価値があると決定した(フィッシャー(Fischer)ら、セル(Cell)、2007年)。
【0140】
第1に、5つの異なるヒトおよびマウスPh+白血病細胞系(Bv−173、BaF3、32D、K562、KCL22)によるPlGFの発現をインビトロで調べ、これらの細胞系の何れも、PlGFタンパク質を分泌することが見出されれないが、それらはその標的受容体であるVEGFR−1を発現した。対照的に、一次マウス接着骨髄間質細胞(BMDSC)は大量のPlGFタンパク質を発現し(10pg/ml/10個の細胞まで)、PlGFの潜在的な間質関連機能を示唆した。
【0141】
第2に、PlGFが増殖を誘導し得るかどうかが解析され、それによって、組み換えPlGFによる増殖の用量依存的誘導が、全ての解析された白血病細胞系において明らかとされた。PlGFのこの効果は、αPlGFおよび細胞外抗VEGFR−1抗体の両方によってほぼ完全に抑止され、したがって、PlGFの増殖促進効果がVEGFR−1によって主に媒介されることが示された。
【0142】
第3に、共培養実験を行なうことによって、BMDSCと白血病細胞との間の潜在的なパラクリン相互作用を調べた。注目すべきことに、白血病細胞とのBMDSCの共培養は、白血病細胞の増殖を有意に誘導した。この増殖の誘導がPlGFによって媒介され得るという仮説を立て、実際に、共培養へのαPlGFの添加の際のこの増殖促進効果のほぼ完全な抑止が見出された。さらに、BDMSCは、白血病細胞の存在下で培養された場合に、PlGF分泌を有意にアップレギュレーションし(2.1倍;N=3;P=0.005)、両方の細胞型の間の実質的なパラクリン相互作用を示した。これらの結果は、我々に、間質由来PlGFがPh+白血病における新規の標的になり得ると結論付けさせた。
【0143】
この仮説をインビボで試験するために、Ph+骨髄球性(myeloid)およびリンパ性白血病の3つの異なるマウスモデルを樹立した。続いて、健常マウスと比較して、罹患マウスの血液中および骨髄中に存在するPlGFタンパク質を解析した。健常マウスの末梢血中にPlGFタンパク質は見出されず、それらの骨髄中に少量のPlGFタンパク質が見出された。対照的に、白血病マウスは、それらの循環中に、固形腫瘍を有するマウスに匹敵するレベルでPlGFタンパク質を示し(76.5±18.4pg/ml血漿;N=7)、興味深いことに、それらの骨髄中に、健常マウスと比較して8.9倍超(N=7;P<0.0001)上昇したPlGFレベルを示し、PlGFがPh+白血病において間質由来の新規の病原因子になることを再度示した。
【0144】
マウスPh+白血病におけるαPlGFの治療可能性を調べるために、続いて、BCR/ABL+BaF3細胞の注射によって誘導された白血病を有するマウスをαPlGFで処理し、対照抗体と比較し、αPlGFによって誘導された18日間の平均生存期間の有意な延長を見出した(N=9;P=0.015)。これらの肯定的な結果に促され、一次骨髄細胞を形質導入し、続いて、致死線量照射されたレシピエントマウスに移植することによってイマチニブ感受性およびイマチニブ抵抗性(T315I変異)CMLのモデルを樹立し、これをαPlGFおよび対照抗体で処理した。興味深いことに、これらの積極的モデルにおいても、我々は、PlGFの遮断によって誘導された罹患マウスの生存期間の有意な延長を見出した(wt BCR−ABL誘導性白血病における生存期間中央値延長5日間;N=11;P=0.002;T315I変異体において4日間;N=12;P=0.039)。骨髄組織像およびFACSによる表現型解析は、白血病細胞を有する脾臓および骨髄の浸潤の減少を明らかにした(骨髄における38%の減少および脾臓における24%の減少)。
【0145】
我々は、本明細書中で、白血病細胞が非造血系骨髄由来間質細胞(BMDSC)に胎盤増殖因子(PlGF)をアップレギュレーションするように指示し、前臨床マウスモデルにおいてBCR−ABL+白血病の進行が決定的に支配されることを解明する。重要なことには、これらの知見は、PlGFがCML患者の血液中および骨髄中でもアップレギュレーションされるので、CMLのヒト試料において確認された。PlGFに対するモノクローナル抗体であるαPlGFによるこの新規の標的分子の阻害は、イマチニブ感受性および抵抗性(T315I変異)白血病を有するマウスの生存を促進する。抗PlGFは、白血病細胞の増殖をブロックすること、ならびに血管新生過多および線維症を減少させることによって異常な白血病性骨髄微小環境を正常化することによって治療効果を示す。興味深いことに、イマチニブは、BMDSCにおいてPlGFをアップレギュレーションすることができ、イマチニブで治療されたCML患者においてPlGFレベルは高いままであり、PlGFが白血病細胞の存続に寄与し得ることを示す。これはさらに、PlGF阻害が、さらなる恩恵を与える療法と組み合わせて用いられ得ることを支持する。要約すると、PlGFの阻害は、併用療法またはTKI難治性CMLにおいて標的とされる新しい候補として働き得る。
【0146】
結論として、これらのデータは、PlGFがBCR−ABL変異状態とは無関係にPh+白血病の進行を促進する間質由来因子になり、BCR−ABLキナーゼ阻害剤への潜在的に有用な補助である白血病間質によって産生される新規の標的になり得る。
【0147】
参考文献
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィラデルフィア染色体陽性白血病の治療に用いるための胎盤増殖因子の阻害剤。
【請求項2】
胎盤増殖因子の選択的阻害剤、特に、胎盤増殖因子に特異的に結合する抗体またはその断片である請求項1に記載の阻害剤。
【請求項3】
胎盤増殖因子の非選択的阻害剤、特に、VEGFR−1に特異的に結合する抗体またはその断片である請求項1に記載の阻害剤。
【請求項4】
該フィラデルフィア染色体陽性白血病が、慢性骨髄性白血病である請求項1〜3のいずれか1項に記載の阻害剤。
【請求項5】
フィラデルフィア染色体陽性白血病が、BCR−ABL阻害剤で治療され得ない、および/またはBCR−ABL阻害剤単独で治療され得ない請求項1〜4のいずれか1項に記載の阻害剤。
【請求項6】
フィラデルフィア染色体陽性白血病の治療用薬剤の製造のための胎盤増殖因子の阻害剤、特に、請求項1〜5のいずれか1項に記載の阻害剤の使用。
【請求項7】
被験体にPlGFの阻害剤を投与することを含む、治療を必要とする被験体におけるフィラデルフィア染色体陽性白血病の治療方法。
【請求項8】
該胎盤増殖因子の阻害剤が、胎盤増殖因子の選択的阻害剤、特に、胎盤増殖因子に特異的に結合する抗体またはその断片である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
該胎盤増殖因子の阻害剤が、胎盤増殖因子の非選択的阻害剤、特に、VEGFR−1に特異的に結合する抗体またはその断片である請求項7に記載の方法。
【請求項10】
該フィラデルフィア染色体陽性白血病が、慢性骨髄性白血病である請求項7〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
該フィラデルフィア染色体陽性白血病が、BCR−ABL阻害剤で治療され得ない、および/またはBCR−ABL阻害剤単独で治療され得ない請求項7〜10のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−504583(P2012−504583A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−529574(P2011−529574)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【国際出願番号】PCT/EP2009/062861
【国際公開番号】WO2010/037864
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(511084980)
【氏名又は名称原語表記】VIB VZW
【住所又は居所原語表記】Rijvisschestraat 120,B−9052 Gent BE
【出願人】(511083880)
【氏名又は名称原語表記】LIFE SCIENCES RESEARCH PARTNERS VZW
【住所又は居所原語表記】Campus Gasthuisberg,Herestraat 49,bus 913,B−3000 Leuven BE
【Fターム(参考)】