説明

フィルタエレメント及びフィルタシステム

本発明はジグザグに折畳まれた同心円状のろ過媒体(10)を備えたフィルタエレメントに関する。エンドプレート(11、12)がろ過媒体の両端に設けられる。エンドプレート(12)は、同心円状の開口と、第1の環状ビード(14)および第2の環状ビード(15)と、2つのビードに挟まれたシール溝(16)を備える。補強プレート(17)がろ過媒体と環状ビード(14、15)との間に配置される。環状ビード(14、15)の先端面(18、19)は、フィルタエレメントのハウジングの溝に放射状に設けられたリブ(20、21)によって支持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に内燃機関の吸入空気のためのフィルタエレメント及びフィルタシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(US 4,720,292)に開示されるエアフィルタの特徴は以下の通りである。軸方向に開口する気体出口と、取り外し可能なカバーで開閉され通常は開放されている第2端とを有するフィルタハウジングであって、ハウジング外周には空気吸入口が設けられる。ハウジング内には、内側支持筒と、外側支持筒によって支持されるフィルタと、を備えた略円筒状フィルタエレメントが備えられ、該フィルタエレメントはハウジングと同軸に配置されている。フィルタエレメントをハウジングにシールする作業は、径方向内側に傾斜する略シリンダ状の外周側面部を有する環状エンドプレートをハウジングの出口開口部から内側へと押し込むことによって行われる。
【0003】
エアフィルタのフィルタインサートは一定期間運転した後に交換することは周知である。エアフィルタに詰まるほこりの量によって、フィルタの寿命は数日(建設機械の場合)になったり数ヶ月になったりする。
【0004】
特許文献1に開示されるフィルタインサートは、従来から使用されている他のフィルタインサートと同様に複数の材料を組み合わせて製造され、特に支持筒には鋼板やプラスチックが用いられる。ろ過媒体には紙若しくはプラスチック製の不織布が用いられ、エンドプレートはプラスチック、例えば軟質エラストマーで作られる。
【0005】
特にフィルタエレメントを頻繁に交換する場合には、フィルタエレメントが確実且つ安全な方法でハウジングにシールされることが重要である。シール構造は温度耐性及び振動耐性を備える必要がある。設備や装置に強い振動や衝撃が与えられても、フィルタエレメントが確実にシールされた状態でなければならない。また、フィルタエレメントは熱的接合が問題なく行われるように、可能な限り金属素材を使用すべきではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】US 4,720,292
【発明の概要】
【0007】
よって、本発明の目的は、高いろ過性能を備えるとともに、未ろ過媒体の領域とろ過済み媒体の領域を隔てて確実にシールされるフィルタエレメント及びフィルタシステムを提供することである。この目的は独立請求項の特徴により解決される。
【0008】
本発明の決定的な利点は、2つの環状ビードとその間に挟まれたシール溝によってフィルタエレメントを密封することにより、シール効果が向上すると共にハウジングによるフィルタエレメントの支持作用が強固になる点である。特に、振動荷重が付与される部材をプラスチックによってシールする場合には、激しい温度変動があっても確実にシール作用する構造が求められる。
【0009】
本発明の1実施例によれば、シール部分を支持するエンドプレートはポリウレタンより成る。もちろん、軟質エラストマー製としてもよいし、インモールド射出成型などによって複数の材質でエンドプレートを製造してもよい。複数の材質を用いる場合には、シール構造を為す構成部材にはエラストマーを用い、ろ過媒体との接続部には熱可塑性プラスチックを用いてもよい。接続部に使用する熱可塑性プラスチックはろ過媒体に溶接してもよいし、接着剤で接着してもよい。
【0010】
本発明の別の実施例では、エンドプレート内に配置される補強プレートに穿孔が設けられている。フィルタエレメントの製造時にこの穿孔をポリウレタンが通過することにより、ろ過媒体とシール構造部と補強プレートとが確実に連結固定される。
【0011】
更に別の実施例において、補強プレートにはポリウレタンフォームから突出するように形成される環状側面部、すなわちシリンダ状の環状壁が備えられる。この環状壁はろ過媒体のプリーツに沿って延設され、例えばろ過媒体全長の0〜30%をカバーする長さとする。このような構成により、不適切に扱われた場合や、ほこりを払い落としたり手作業でフィルタエレメントを掃除したりする場合などに、ろ過媒体のプリーツを保護することができる。
【0012】
本発明の別の実施例では、密封用エンドプレートの他端に配置される第2のエンドプレートもまたポリウレタンフォーム製とし、フィルタエレメントの内部空間を密閉するための閉鎖部材は熱可塑性プラスチック製とする。
【0013】
エンドプレートはチキソトロピーを利用した方法で製造してもよい。これは一定量のチキソトロピー材料を用いた方法で、成型を何回も行わずにシール構造ができる。
【0014】
更に、本発明はフィルタエレメントを備えたフィルタシステムに関する。このフィルタシステムは特に内燃機関の吸入空気をろ過するために使用され、フィルタエレメントを収納するためのハウジングとカバーを備える。フィルタシステムには、シール領域においてフィルタエレメントのシール構造と適合する2つのリング溝を設けることが好ましい。
【0015】
更なる実施例によれば、ハウジングの空気吸入口周辺にサイクロン型又はロータリー型のセパレータが設置される。このセパレータはろ過媒体を回転させるようなガイド構造をしている。ろ過媒体が回転するとほこりがハウジング壁に集まり、適当な場所でほこり排出口から排出される。
【0016】
本発明の更なる実施例では、フィルタシステムの内部に補助部材が設けられる。この補助部材の役割は、フィルタエレメントの交換時でもフィルタシステム出口を密閉状態にして、フィルタエレメントの清掃や交換の時にもほこりが進入できないようにすることである。補助部材はネジによってハウジングと連結され、ハウジングにシールされることが好ましい。
【0017】
上記の特徴並びに他の特徴は請求項だけでなく明細書及び図面からも理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】フィルタシステムの断面図である。
【図2】フィルタハウジングにおけるシール領域の詳細図である。
【図3】図1においてXで囲んだ部分の拡大図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に実施例を用いて本発明を更に詳細に説明する。
図1に記載のフィルタシステムは、略同心円状のハウジング26より成り、ハウジングには吸気口28が備えられる。このフィルタシステムは内燃機関の吸入空気をろ過するためのものである。吸気口28から未ろ過空気が矢印38で示すように供給され、供給された空気はサイクロン型のプレセパレータ34を通過して回転流となる。このように空気が回転すると、空気中に含まれるパーティクルはハウジング壁に付着して、適当なバルブによって閉鎖されるほこり排出口35から外部へと排出される。
【実施例】
【0020】
ハウジング26には中間部材37が取り付けられる。この中間部材37はハウジングと同様に同心円状で、40で示す領域において溶接等によりハウジング26に結合させている。そして、中間部材37にはカバー27が取り付けられる。クランプ式の閉鎖部材や他の適当な閉鎖手段によって、カバーと中間部材は着脱可能に連結される。このように、カバー、中間部材、ハウジングによって、被ろ過空気を放出するための気体出口29を備えた密閉システムができる。
【0021】
完成した密閉システムの中にはフィルタエレメント39が設けられる。このフィルタエレメントはジグザグに折畳んだろ過媒体10を備えており、このろ過媒体もまた同心円状である。フィルタエメント39の両端面にはエンドプレート11、12が設けられる。一方のエンドプレート12はフィルタエレメントと同心円の開口13が設けられ、他方のエンドプレート11には閉鎖部材24が設けられる。ハウジングカバー27のソケットで閉鎖されるように同心円の開口部を備えたエンドプレートを更に設けてもよい。被ろ過空気はフィルタエレメント内を矢印41の方向に通過することによって浄化され、出口29から内燃機関(不図示)へと矢印42の方向に移動する。フィルタエレメント右側のエンドプレート12には第1の環状ビード14と第2の環状ビード15が設けられ、その2本のビードの間にシール溝16が形成されている。
【0022】
エンドプレート12の中には穿孔22を有する補強プレート17が設けられる。補強プレートの外周部、即ちシール構造を為す部分の外側には、環状側面部23が設けられている。これによって、組立てやほこりの払い落とし、もしくはその他手作業を行う際に、ろ過媒体やフィルタエレメントを保護することができる。
(ろ過媒体(10)の1端面にエンドプレート(12)が存在する。エンドプレート(12)の中には穿孔(22)を備えた補強プレート(17)が設けられている。補強プレート(17)は外周部、すなわちシール構造を為す部分の外側に、ろ過媒体を保護する円筒状の環状側面(23)を備えている。)
(補強プレート(16)の中で目視できる部分はエンドプレートの外径部の環状側面23だけなので、符号17で示す矢印では「補強プレートが存在する箇所」を示している。)
【0023】
環状ビード14、15をリブ20、21に当接させて、フィルタエレメントのハウジングにおける軸方向位置を規定する。
【0024】
他の実施形態として、環状ビード14、15をリブ20、21ではなくハウジングのリング溝31、32に嵌合させることでフィルタエレメントの位置を規定してもよい。また、その他のポイントを軸方向及び/又は半径方向における位置を固定するために使用してもよい。
【0025】
リブについては図2に詳しく図示されているように、いわゆるダブルリブの構成をとっている。つまり隣り合う2本のリブ20a、20b、20cをリング溝31、32の底に配置している。リブの高さは、例えば3−6mmとする。
【0026】
ハウジングの2つのリング溝に挟まれたシールステー33は、その側面がシール部位となる。ここではエンドプレート12はシール溝16によって密封される。このように、2カ所の側面によるダブルシール構造ができる。シール溝16の深さはシールステー33の高さよりも僅かに長いので、軸方向におけるある程度の誤差は許容される。既に述べたことであるが、エンドプレートの材料はポリウレタンフォームか、必要とされるシール効果が達成でき、且つフィルタエレメントをフィルタハウジングに正確に位置決めできるような硬さの他のエラストマーとする。2側面でのシール作用と、リブ20、21による環状ビード14、15の支持作用のおかげで、フィルタエレメントを交換する時の取り付けや取り外しに必要な力が最小限で済む。
【0027】
他の実施形態として、シールステー33の先端にシール用ビードを設けてもよく、例えばリング形状のビードをシールステー33からハウジング内部へと軸方向に突出させてもよい。このような構成により、フィルタエレメントを挿入する力の強さに関係なく、軸方向に更なるシール部分ができる。このシール用ビードは、例えばシールステー33の高さよりも厚みを持たないようにする。
【0028】
他方のエンドプレート11には支持用突出部43、44が設けられる。この突出部をカバー27で支持することにより、エンドプレート12に向かって軸方向の力が充分に働く。こうして、確実なシール作用が生まれる。エンドプレート11には閉鎖部材24が嵌め込まれる。こうして未ろ過空気室とろ過済み空気室とが隔てられる。フィルタエレメント内には内部空間25を取り囲む補助部材36がある。ろ過された清浄空気は、一般的には不織布カバー45を備える補助部材36を通過することになる。不織布カバーは熱可塑性又は金属製のベース部材46に取り付けられている。補助部材36はネジ47によって出口29のソケットに取り付けられ、取り付けと同時にOリング48によりシールされる。
【0029】
ハウジング26は内壁49を有し、ハウジング内壁49とエンドプレート12の環状側面部23との間には僅かな隙間が設けられる。内壁には図3に示すようにクランプ部材50が取り付けられる。
【0030】
このクランプ部材は、鋼バネを複数箇所で変形させてフィルタエレメントの取り付け空間に向かって突出させたものである。変形させた部位は図3の符号51で示されている。フィルタエレメントを挿入すると変形部位が径方向外側に押されて、フィルタエレメントが中心に配置される。環状側面部23を持たないフィルタエレメントをハウジングに挿入すると、フィルタエレメントを中心に配置できない。また、恐らくフィルタエレメントやろ過媒体が破損してしまう。このようにクランプ部材を設けると、別のフィルタエレメントや欠陥のあるフィルタエレメントが誤って装着されることがない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジグザグに折畳まれた同心円状のろ過媒体(10)と、1端面に設けられる開放型または閉鎖型の第1のエンドプレート(11)と、他端面に設けられる第2のエンドプレート(12)を備え、該第2のエンドプレート(12)は同心円状の開口(13)を備えるとともに前記ろ過媒体のジグザグ部分の上に円形リングの形で構成されている、フィルタエレメントにおいて、
前記第2のエンドプレート(12)には、軸方向外側に突出する第1の環状ビード(14)とシール溝(16)が設けられ、
前記環状ビード(14)の先端面(18、19)は、前記フィルタエレメントを収納するハウジングに放射状に延設されるリブ(20、21)によって支持されることを特徴とするフィルタエレメント。
【請求項2】
前記エンドプレートには、前記第1の環状ビードと同様に軸方向外側に突出する第2の環状ビード(15)が間隔を空けて設けられており、前記シール溝(16)は2つの環状ビード(14、15)で囲まれた溝であることを特徴とする請求項1記載のフィルタエレメント。
【請求項3】
前記エンドプレートにおいて、ろ過媒体と環状ビードの間の領域には補強プレート(17)又は補強リングが設けられることを特徴とする請求項1記載のフィルタエレメント。
【請求項4】
前記エンドプレート(12)はポリウレタンフォーム又はエラストマーより成ることを特徴とする請求項1記載のフィルタエレメント。
【請求項5】
前記補強プレート(17)はエンドプレート内に埋め込まれたものであり、該補強プレートには埋め込み時にポリウレタンフォームを流すための穿孔(22)が設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載のフィルタエレメント。
【請求項6】
前記補強プレートは、フィルタエレメントの外側に軸方向に幅を有して設けられる環状側面部(23)を備えることを特徴とする請求項3記載のフィルタエレメント。
【請求項7】
前記エンドプレート(11)はポリウレタンフォームより成り、このエンドプレートには前記フィルタエレメント(10)の内部空間(25)を密閉するための同心円状の閉鎖部材(24)が設けられることを特徴とする請求項1記載のフィルタエレメント。
【請求項8】
エンドプレートの両方に、2つの環状ビードと溝によるシール構造が設けられることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のフィルタエレメント。
【請求項9】
略同心円状のハウジング(26)と、
該ハウジング(26)の蓋をするための同心円状のカバー(27)と、
ハウジングとカバーの両方又はどちらか一方に設けられる、特に空気などの媒体をフィルタに供給するための吸気口(28)と、
を備えた請求項1乃至8のいずれか1項に記載のフィルタエレメントを備えたフィルタシステムであって、
前記ハウジング(26)には前記被ろ過媒体を放出するための出口(29)が同心円状に設けられ、
前記ハウジングの出口(29)周辺には、前記環状ビード(14、15)およびシール溝(16)と適合するシール構造が設けられることを特徴とするフィルタシステム。
【請求項10】
前記シール構造は同心円状に設けられた2つのリング溝(31、32)とその間のシールステー(33)より成り、前記リング溝の底にはリブ(20、21)が備えられ、
前記シールステー(33)の高さは前記フィルタエレメントのシール溝(16)よりも低いことを特徴とする請求項9記載のフィルタシステム。
【請求項11】
前記吸気口(28)付近にはサイクロン型プレセパレータ(34)が設置され、前記ハウジング(26)又はカバー(27)にはほこり排出口(35)が設けられることを特徴とする請求項9又は10に記載のフィルタシステム。
【請求項12】
前記フィルタエレメント(10)の内部には補助部材(36)が設けられることを特徴とする請求項9記載のフィルタシステム。
【請求項13】
前記補助部材(36)はネジによって前記ハウジング(26)に連結されることを特徴とする請求項9記載のフィルタシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−540234(P2010−540234A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527451(P2010−527451)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際出願番号】PCT/EP2008/063202
【国際公開番号】WO2009/047196
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(505229863)マン ウント フンメル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (86)
【Fターム(参考)】