フィルタシート、フィルタ及びフィルタシートの製造方法
【課題】全体の重量を軽減することができるとともに、通気抵抗の低減及び濾過性能の向上を図ることができるフィルタシートを提供する。
【解決手段】フィルタシート21の濾材シート22を波板状に形成する。濾材シート22の端縁には、その波の凹部を埋めるように、メルトブローによって通気性を有する濾過部25,26を形成する。
【解決手段】フィルタシート21の濾材シート22を波板状に形成する。濾材シート22の端縁には、その波の凹部を埋めるように、メルトブローによって通気性を有する濾過部25,26を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エンジンのエアクリーナに装着されるフィルタのためのフィルタシート、そのフィルタシートを用いたフィルタ、及びフィルタシートの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のフィルタシートの製造方法としては、例えば特許文献1に開示されるような方法が提案されている。この従来方法においては、平板状の濾材シートをコルゲート加工して波板状に形成した後、その波板状の濾材シートの端部に、例えばペースト状をなすゴム系,シリコーン系,フェノール樹脂系等の合成樹脂の封止剤を付着させて非通気性の封止部を形成することにより、フィルタシートを製造している。そして、このフィルタシートを用いてハニカム型のフィルタを製造することにより、ハニカムの各セルの端部が封止部により封止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60−187316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、この従来方法により製造されたフィルタシートにおいては、前記のように、前記封止部はペースト等によって形成されているため、フィルタシート全体の重量が増加するという問題があった。また、このフィルタシートを用いてハニカム状のフィルタを製造した場合、各セルの端部が通気性のない封止部により封止されているため、通気抵抗の増加を招いてエンジンの運転効率が低下したり、フィルタとしての濾過性能の低下を招いたりするという問題があった。
【0005】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、全体の重量を軽減することができるとともに、通気抵抗の低減及び濾過性能の向上を図ることができるフィルタシート、及びそのフィルタシートを用いたフィルタを提供することにある。この発明の別の目的は、そのフィルタシートの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、濾材シートの端縁にメルトブローによって形成された濾過部を設けたことを特徴としている。ここで、濾過部とは、濾材シートの表側面あるいは裏側面に沿って流れるエア流が通過して濾過機能が発揮される構成を指す。
【0007】
従って、この発明においては、非通気性の封止部を形成した従来構成に比較して、フィルタシート全体の重量を軽減することができる。また、このフィルタシートを用いてフィルタを形成した場合、メルトブローによって形成された封止部が通気性を有するため、通気抵抗を低減させることができるとともに、濾過性能の向上を図ることができる。
【0008】
また、フィルタシートの製造方法に係る発明では、ノズル孔に対して濾材シートを一方向に走行させながら、前記ノズル孔から濾材シートの端縁に対してメルトブローを行って、濾材シートの端縁に濾過部を形成することを特徴としている。
【0009】
従って、この発明によれば、軽量で高濾過性能のフィルタシートを連続して容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、この発明によれば、フィルタシート全体の重量を軽減することができるとともに、通気抵抗の低減及び濾過性能の向上を図ることができ、しかも製造が容易になるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1実施形態のフィルタシートを示す斜視図。
【図2】図1の2−2線における部分拡大断面図。
【図3】図1の3−3線における部分拡大断面図。
【図4】図1のフィルタシートの製造装置を示す構成図。
【図5】(a)及び(b)は図4の製造装置におけるメルトブロー供給装置の両端部のノズル孔構成を示す要部底面図。
【図6】図1のフィルタシートを用いたフィルタの一構成を示す斜視図。
【図7】図6のフィルタの拡大断面図。
【図8】図1のフィルタシートを用いたフィルタの他の構成を示す斜視図。
【図9】図8の9−9線における拡大断面図。
【図10】第2実施形態のフィルタシートを示す斜視図。
【図11】図10のフィルタシートの製造装置を示す構成図。
【図12】同フィルタシートを用いたフィルタの断面図。
【図13】第3実施形態のフィルタシートを示す斜視図。
【図14】図13の14−14線における部分拡大断面図。
【図15】第4実施形態のフィルタシートを示す斜視図。
【図16】変更例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下に、この発明を具体化した第1実施形態を、図1〜図9に従って説明する。
図1〜図3に示すように、この実施形態のフィルタシート21においては、合成樹脂繊維よりなる紙状の濾材シート22が波板状に形成されている。この合成樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、アクリル等が用いられる。その濾材シート22の表裏両側面には、ほぼ一定厚さで、メルトブローにより形成された合成樹脂繊維によりなる薄膜状の不織布層23,24が表裏両側面全体にわたって形成されている。この不織布層23,24は濾材シート22と同材質である。前記濾材シート22の表裏両側面において互いに反対側の端縁に位置するように、濾材シート22の各波の端部には通気性を有する濾過部25,26がメルトブローされた合成樹脂繊維によって形成されている。これらの濾過部25,26には、濾材シート22と同じ材質のものが用いられる。そして、これらの濾過部25,26により、波板状の濾材シート22の各波の凹部が埋められた状態になっている。
【0013】
次に、前記のようなフィルタシート21を製造するための製造方法について説明する。
さて、このフィルタシート21を製造する場合には、図4及び図5に示すような製造装置が用いられる。その製造装置においては、帯状の濾材シート22が巻き取りリール30から繰り出されて、外周面を凹凸形状にした一対のコルゲートローラ31,32間に供給され、そのコルゲートローラ31,32間でコルゲート加工されて波板状に形成される。そして、この波板状の濾材シート22が、一対の搬送ローラ33a,33b及び搬送ベルト33cからなる第1搬送装置33により、ほぼ水平面に沿って一方向に走行される。
【0014】
この水平搬送状態で、前記第1搬送装置33の上方に配設された第1メルトブロー供給装置34から、濾材シート22の表面側に合成樹脂繊維がメルトブローにより供給される。
【0015】
この場合、図5(a)に示すように、第1メルトブロー供給装置34において、濾材シート22の幅方向の一端縁と対応する部分のノズル孔34aの配列ピッチP1が、他の部分と対応するノズル孔34bの配列ピッチP2よりも小さくなるように構成されている。この構成により、一端縁のノズル孔34aの領域からの繊維の量が、他の部分のノズル孔34bの領域からの繊維の量よりも多くなるように設定されている。その結果、一端縁のノズル孔34aから噴出される繊維により、濾材シート22の表面側の一端縁に濾過部25が濾材シート22の各波の凹部を埋めるように形成される。それと同時に、他の部分のノズル孔34bから噴出される繊維により、濾材シート22の表面側のほぼ全体にわたって薄膜状の不織布層23が形成される。
【0016】
なお、一端縁のノズル孔34aの領域から大量に供給される繊維は、その大部分が濾材シート22の波の凹部に落ち込むが、一部は波の凸部上にも堆積する。しかしながら、後述の説明から明らかになるが、波の凸部上に繊維が堆積しても、その堆積部分は圧潰される。よって、図面においては、波の凸部上の繊維を堆積状態では描いていない。
【0017】
その後、図4に示すように、濾材シート22が第1搬送装置33に沿ってその上面側から下面側に走行されることにより、濾材シート22の表面側と裏面側とが反転される。そして、この反転状態の濾材シート22が、一対の搬送ローラ35a,35b及び搬送ベルト35cからなる第2搬送装置35により、ほぼ水平面に沿って第1搬送装置33から離れる方向に走行される。
【0018】
続いて、前記第2搬送装置35の上方に配設された第2メルトブロー供給装置36から、水平搬送状態の濾材シート22の裏面側に合成樹脂繊維がメルトブローにより供給される。この場合、図5(b)に示すように、第2メルトブロー供給装置36において、濾材シート22の幅方向の他端縁と対応する部分のノズル孔36aの配列ピッチP1が、他の部分と対応するノズル孔36bの配列ピッチP2よりも小さくなるように構成されている。この構成により、他端縁のノズル孔36aの領域からメルトブローされる繊維の量が、他の部分のノズル孔36bの領域からメルトブローされる繊維の量よりも多くなるように設定されている。その結果、他端縁のノズル孔36aからのメルトブローにより、濾材シート22の裏面側の他端縁に前記濾過部25とは別の濾過部26が濾材シート22の各波の凹部を埋めるように形成される。それと同時に、他の部分のノズル孔36bからのメルトブローにより、濾材シート22の裏面側のほぼ全体にわたって薄膜状の不織布層24が形成される。
【0019】
なお、第1,第2メルトブロー供給装置34,36と対応する位置において、製造装置には濾材シート22の両端縁に位置する当て板37,38が設けられている。このため、メルトブローされた繊維はこの当て板37,38により濾材シート22の外方に飛散することが防止され、濾過部25,26や不織布層23,24等の繊維層と濾材シート22の端面とが同一平面上に位置する。
【0020】
次に、前記のような第1実施形態のフィルタシート21を用いたフィルタの構成について説明する。
さて、図6及び図7に示すフィルタ40Aにおいては、前記フィルタシート21に対して平板状で、かつフィルタシート21と同材質で、紙状をなす補助フィルタシート42を共巻きしながら、それらのシート21,42を渦巻き状に巻回して積層することにより、積層材41が形成されている。この場合、フィルタシート21,補助フィルタシート42及びメルトブローされた層が同材質であるため、それらを加熱することにより、両シート21,42を一体化できる。このようにして、全体として円筒状をなすハニカム構造のフィルタ40Aが形成されている。そして、積層材41のフィルタシート21及び補助フィルタシート42間には、多数の断面三角形状のエア通路43が区画形成されている。なお、濾材シート22の波の凸部上に堆積した繊維は、重ねられた補助フィルタシート42及び他の濾材シート22により圧潰される。
【0021】
前記エア通路43のうちで、1つおきの第1エア通路43aについては、フィルタ40Aのエア導入側の端面40aが開口されるとともに、エア導出側の端面40bが前記フィルタシート21の一端縁側の濾過部25により通気可能に閉塞されている。これに対して、残りの第2エア通路43bについては、フィルタ40Aのエア導入側の端面40aがフィルタシート21の他端縁側の濾過部26により通気可能に閉塞されるとともに、エア導出側の端面40bが開口されている。
【0022】
従って、このフィルタ40Aを図示しないエアクリーナのケース内に収容して使用した場合には、図7に示すように、エンジンに吸引されるエアがフィルタ40Aのエア導入側の端面40aにおいて、開口を介して第1エア通路43a内に導入されるとともに、通気性を有する濾過部26から濾過をともないながら第2エア通路43b内に導入される。そして、導入されたエアが積層材41のフィルタシート21及び補助フィルタシート42による濾過をともないながら、第1エア通路43aと第2エア通路43bとの間で移動される。その後、エアがフィルタ40Aのエア導出側の端面40bにおいて、第2エア通路43bから開口を介して導出される。また、第1エア通路43a内からも通気性を有する濾過部25を通して濾過をともないながら導出される。
【0023】
そして、この実施形態においては、以下の効果がある。
(1) この実施形態のフィルタシート21においては、濾過部25,26が合成樹脂繊維のメルトブローによって形成されているため、嵩重量が低くなり、封止部を封止剤により充填状態で形成した従来構成に比較して、フィルタシート21全体の重量を軽減することができる。よって、このフィルタシート21を用いてフィルタを構成した場合、フィルタ全体を軽量化することができる。
【0024】
(2) この実施形態のフィルタシート21においては、濾材シート22とメルトブローされた繊維とが同材質であるため、繊維を濾材シート22に対して接着剤を用いることなく、メルトブローのみで接着させることができる。また、補助フィルタシート42も濾材シート22及びメルトブローされた繊維と同材質であるため、濾材シート22と補助フィルタシート42とを接着を用いることなく、加熱により簡単に接着できる。このため、フィルタシート21の製造が容易である。なお、メルトブローに際して濾材シート22をあらかじめ加熱しておけば、メルトブローされた繊維が濾材シート22に対してより強固に接着される。
【0025】
(3) このフィルタシート21を用いてフィルタを形成した場合には、メルトブローによって形成された濾過部25,26が通気性を有するため、通気抵抗を低下させて、エンジンの運転効率を向上させることができる。
【0026】
(4) 同じく、このフィルタシート21を用いてフィルタを形成した場合には、フィルタシート21や補助フィルタシート42だけではなく、メルトブローによって形成された濾過部25,26も濾過機能を発揮するため、フィルタとしての濾過性能を向上させることができる。
【0027】
(5) フィルタシート21の表裏両側面全体にほぼ一定厚さの不織布層23,24が形成されているため、塵埃等をこの不織布層23,24に保持でき、フィルタシート21の全面において濾材シート22の目詰まりを抑制しながら塵埃等を捕捉できる。このため、前記と同様にフィルタとしての濾過性能を向上させることができる。
【0028】
(6) 不織布層23,24を構成する繊維の材質や、密度を適宜に選択することにより、濾過された塵埃等を不織布層23,24上においてスライド状に移動しやすくすることが可能となる。従って、塵埃等をエア流とともにその下流側に移動させることができて、濾材シート22の目詰まりを抑制し、濾過能力の低下を遅らせることができる。また、このように構成した場合には、フィルタの清掃において、第2エア通路43b内の塵埃等をその開口から容易に脱落あるいは吸引除去させることができる。
【0029】
(7) この実施形態のフィルタシートの製造方法においては、濾材シート22を波板状に形成した後、その濾材シート22を走行させながら、メルトブロー供給装置34,36のノズル孔34a,36aから濾材シート22の端縁に対してメルトブローを行うことにより、濾材シート22の端縁に濾過部25,26を形成している。このため、波板状の濾材シート22における波の凹部内に、濾過部25,26を簡単に形成することができて、軽量で高濾過性能のフィルタシート21を容易に製造することができる。
【0030】
(8) この実施形態のフィルタシートの製造方法においては、濾材シート22の一側面の端縁に濾過部25を形成した後、その濾材シート22を表裏反転させて、他側面の反対側の端縁に別の濾過部26を形成している。このため、濾材シート22の表裏両側面における反対側の端縁に通気性濾過部25,26を設けたフィルタシート21を、濾材シート22を連続的に走行させながら容易に製造することができる。
【0031】
(9) この実施形態のフィルタシートの製造方法においては、メルトブロー供給装置34,36のノズル孔34a,34b,36a,36bからのメルトブローにより、濾材シート22の端縁に対する濾過部25,26の形成と、濾材シート22の表裏両側面全体に対する不織布層23,24の形成とを同時に行うようにしている。このため、製造装置の構成が簡単であるとともに、濾過部25,26及び不織布層23,24の形成を能率よく行うことができる。
【0032】
次に、前記第1実施形態のフィルタシート21を用いたフィルタの別の構成について説明する。
さて、図8及び図9に示すフィルタ40Bにおいては、1枚の平板状(濾材シート22は波板状)のフィルタシート21に対して同じく1枚の平板状の補助フィルタシート42を積層することにより、積層材41が形成されている。そして、この積層材41をフィルタシート21の波の延長方向が同一となるように複数枚重ねることにより、全体として直方体状の輪郭を有するハニカム構造のフィルタ40Bが形成されている。そして、積層材41のフィルタシート21及び補助フィルタシート42間には、多数のエア通路43が区画形成されている。
【0033】
さらに、このフィルタ40Bにおいても、前述したフィルタ40Aと同様に、前記エア通路43のうちで、1つおきの第1エア通路43aについては、フィルタ40Bのエア導入側の端面40aが開口されるとともに、エア導出側の端面40bが前記フィルタシート21の一端縁側の濾過部25により通気可能に閉塞されている。これに対して、残りの第2エア通路43bについては、フィルタ40Bのエア導入側の端面40aがフィルタシート21の他端縁側の濾過部26により通気可能に閉塞されるとともに、エア導出側の端面40bが開口されている。
【0034】
前記フィルタ40Bの両端部には、合成樹脂製の被覆枠44が被覆状態で装着されている。各被覆枠44の内面には、各積層材41におけるフィルタシート21及び補助フィルタシート42の端縁を支持するための複数の区切片44aが突出形成されている。各被覆枠44と積層材41の両端縁との間には非通気性の充填剤45が充填され、この被覆枠44及び充填剤45によって、各積層材41におけるフィルタシート21及び補助フィルタシート42の端縁間の通路が封止されている。
【0035】
このフィルタ40Bをエアクリーナのフィルタとして使用した場合にも、前述したフィルタ40Aの場合と同様に、フィルタシート21及び補助フィルタシート42と濾過部25,26により、エアに含まれる塵埃が効果的に捕捉される。また、濾過部25,26の通気機能によりエンジンの運転効率を高めることができる。
【0036】
(第2実施形態)
次に、この発明を具体化したフィルタシートの第2実施形態を、前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0037】
さて、この第2実施形態のフィルタシート21においては、図10に示すように、波板状をなす濾材シート22の一側面の一端縁に、通気性を有する濾過部25がメルトブローにより形成されている。これに対して、濾材シート22の他側面の他端縁には、通気性のない封止部48が合成樹脂材の充填により形成されている。この封止部48の合成樹脂材はフィルタシート21と同材質である。
【0038】
この第2実施形態のフィルタシート21は、図11に示すような構成の製造装置により製造される。この製造装置においては、図4に示す第1実施形態のフィルタシート21の製造装置における第2メルトブロー供給装置36に代えて、ホットメルト供給装置49が設けられている。そして、前記第1実施形態の製造時と同様に、第1メルトブロー供給装置34により、波板状の濾材シート22の一側面に不織布層23及び濾過部25が形成された後に、濾材シート22が表裏反転された状態で、ホットメルト供給装置49から濾材シート22の他側面に液状の合成樹脂材が供給される。この供給により、濾材シート22の他側面の他端縁に通気性のない封止部48が形成される。なお、ホットメルト供給装置49から供給される合成樹脂液は、流動性があるため、フィルタシート21の波の凹部内に流れ落ちる。
【0039】
この第2実施形態のフィルタシート21を用いて、例えば前記第1実施形態における図6及び図7に示すような渦巻ハニカム構造のフィルタ40Aを形成した場合には、図12に示すように、複数のエア通路43のうちの第2エア通路43bの端部が封止部48により閉塞された状態になる。すなわち、この封止部48がフィルタ40Aのエア導出側の端面40bに配置されるように、フィルタ40Aをエアクリーナ等のケースに収容して使用すれば、エアに含まれる塵埃等が効果的に捕捉される。
【0040】
(第3実施形態)
次に、この発明を具体化したフィルタシートの第3実施形態を、前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0041】
さて、この第3実施形態のフィルタシート21においては、図13及び図14に示すように、波板状の濾材シート22の表裏両側面に、厚肉状の不織布層23,24が濾材シート22の波の凹部を埋めた状態で形成されている。そして、各不織布層23,24の組成密度が、隣接する濾過部25,26の組成密度よりも粗くなるように形成されている。
【0042】
従って、この第3実施形態においては、前記第1実施形態の効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
(10) 塵埃等を各不織布層23,24において浮いた状態で、かつ分散した状態で捕捉できるため、濾材シート22の目詰まりを少なくできて、高い濾過能力を維持できる。
【0043】
(第4実施形態)
次に、この発明を具体化したフィルタシートの第4実施形態を、前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0044】
さて、この第4実施形態のフィルタシート21では、図15に示すように、平板状の濾材シート22の表裏両側面における反対側の端縁に、メルトブローによる濾過部25,26が形成されている。また、濾材シート22の表裏両側面における残りの側面部分には、不織布層23,24が形成されている。そして、このように構成されたフィルタシート21をコルゲートローラ等により波板状に加工して、フィルタに用いるようにしている。
【0045】
従って、この第4実施形態においても、前記第1実施形態とほぼ同様の効果を得ることができる。
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
【0046】
・ 図16に示すように、図15に示すフィルタシート21を波板状に加工することなく、平板状のままで、濾過部25,26がエア流の方向において下流側及び上流側に交互に位置するように積層してフィルタ50とすること。このように構成しても、濾材シート22と濾過部25,26とにより高い濾過機能を確保できる。しかも、このように構成すれば、波板加工が不要になって、製造が簡単になる。なお、このように構成した場合には、隣接するフィルタシート21間の間隔を保持するための保持部材(図示しない)を設ける必要がある。
【0047】
・ 前記実施形態のフィルタシートの製造装置において、メルトブロー供給装置34,36の各ノズル孔34a,34b,36a,36bにおいて、端部のノズル孔34a,36aを複数列設けること。
【0048】
・ 前記実施形態のフィルタシートの製造装置において、濾材シート22に対する不織布層23,24と濾過部25,26との形成を、別々のメルトブロー供給装置を用いて行うように構成すること。
【0049】
・ 前記第2実施形態のフィルタシートを用いたフィルタにおいて、封止部48がフィルタ40Aのエア導入側の端面40aに配置されるように、フィルタ40Aをエアクリーナ等のケースに収容して使用すること。
【0050】
・ 濾材シート22及び補助フィルタシート42の構成繊維をメルトブローされる繊維と異なる材質にするとともに、その構成繊維間にメルトブローされる繊維と同じ材質の繊維を漉き込ませること。従って、濾材シート22及び補助フィルタシート42の漉き込まれた繊維同士、あるいはメルトブローされた繊維と漉き込まれた繊維とが互いに接着される。
【符号の説明】
【0051】
21…フィルタシート、22…濾材シート、23,24…不織布層、25,26…濾過部、31,32…コルゲートローラ、33…第1搬送装置、34…第1メルトブロー供給装置、34a,34b…ノズル孔、35…第2搬送装置、36…第2メルトブロー供給装置、36a,36b…ノズル孔、40A,40B…フィルタ、41…積層材、42…補助フィルタシート、43…エア通路。
【技術分野】
【0001】
この発明は、エンジンのエアクリーナに装着されるフィルタのためのフィルタシート、そのフィルタシートを用いたフィルタ、及びフィルタシートの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のフィルタシートの製造方法としては、例えば特許文献1に開示されるような方法が提案されている。この従来方法においては、平板状の濾材シートをコルゲート加工して波板状に形成した後、その波板状の濾材シートの端部に、例えばペースト状をなすゴム系,シリコーン系,フェノール樹脂系等の合成樹脂の封止剤を付着させて非通気性の封止部を形成することにより、フィルタシートを製造している。そして、このフィルタシートを用いてハニカム型のフィルタを製造することにより、ハニカムの各セルの端部が封止部により封止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60−187316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、この従来方法により製造されたフィルタシートにおいては、前記のように、前記封止部はペースト等によって形成されているため、フィルタシート全体の重量が増加するという問題があった。また、このフィルタシートを用いてハニカム状のフィルタを製造した場合、各セルの端部が通気性のない封止部により封止されているため、通気抵抗の増加を招いてエンジンの運転効率が低下したり、フィルタとしての濾過性能の低下を招いたりするという問題があった。
【0005】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、全体の重量を軽減することができるとともに、通気抵抗の低減及び濾過性能の向上を図ることができるフィルタシート、及びそのフィルタシートを用いたフィルタを提供することにある。この発明の別の目的は、そのフィルタシートの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、濾材シートの端縁にメルトブローによって形成された濾過部を設けたことを特徴としている。ここで、濾過部とは、濾材シートの表側面あるいは裏側面に沿って流れるエア流が通過して濾過機能が発揮される構成を指す。
【0007】
従って、この発明においては、非通気性の封止部を形成した従来構成に比較して、フィルタシート全体の重量を軽減することができる。また、このフィルタシートを用いてフィルタを形成した場合、メルトブローによって形成された封止部が通気性を有するため、通気抵抗を低減させることができるとともに、濾過性能の向上を図ることができる。
【0008】
また、フィルタシートの製造方法に係る発明では、ノズル孔に対して濾材シートを一方向に走行させながら、前記ノズル孔から濾材シートの端縁に対してメルトブローを行って、濾材シートの端縁に濾過部を形成することを特徴としている。
【0009】
従って、この発明によれば、軽量で高濾過性能のフィルタシートを連続して容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、この発明によれば、フィルタシート全体の重量を軽減することができるとともに、通気抵抗の低減及び濾過性能の向上を図ることができ、しかも製造が容易になるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1実施形態のフィルタシートを示す斜視図。
【図2】図1の2−2線における部分拡大断面図。
【図3】図1の3−3線における部分拡大断面図。
【図4】図1のフィルタシートの製造装置を示す構成図。
【図5】(a)及び(b)は図4の製造装置におけるメルトブロー供給装置の両端部のノズル孔構成を示す要部底面図。
【図6】図1のフィルタシートを用いたフィルタの一構成を示す斜視図。
【図7】図6のフィルタの拡大断面図。
【図8】図1のフィルタシートを用いたフィルタの他の構成を示す斜視図。
【図9】図8の9−9線における拡大断面図。
【図10】第2実施形態のフィルタシートを示す斜視図。
【図11】図10のフィルタシートの製造装置を示す構成図。
【図12】同フィルタシートを用いたフィルタの断面図。
【図13】第3実施形態のフィルタシートを示す斜視図。
【図14】図13の14−14線における部分拡大断面図。
【図15】第4実施形態のフィルタシートを示す斜視図。
【図16】変更例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下に、この発明を具体化した第1実施形態を、図1〜図9に従って説明する。
図1〜図3に示すように、この実施形態のフィルタシート21においては、合成樹脂繊維よりなる紙状の濾材シート22が波板状に形成されている。この合成樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、アクリル等が用いられる。その濾材シート22の表裏両側面には、ほぼ一定厚さで、メルトブローにより形成された合成樹脂繊維によりなる薄膜状の不織布層23,24が表裏両側面全体にわたって形成されている。この不織布層23,24は濾材シート22と同材質である。前記濾材シート22の表裏両側面において互いに反対側の端縁に位置するように、濾材シート22の各波の端部には通気性を有する濾過部25,26がメルトブローされた合成樹脂繊維によって形成されている。これらの濾過部25,26には、濾材シート22と同じ材質のものが用いられる。そして、これらの濾過部25,26により、波板状の濾材シート22の各波の凹部が埋められた状態になっている。
【0013】
次に、前記のようなフィルタシート21を製造するための製造方法について説明する。
さて、このフィルタシート21を製造する場合には、図4及び図5に示すような製造装置が用いられる。その製造装置においては、帯状の濾材シート22が巻き取りリール30から繰り出されて、外周面を凹凸形状にした一対のコルゲートローラ31,32間に供給され、そのコルゲートローラ31,32間でコルゲート加工されて波板状に形成される。そして、この波板状の濾材シート22が、一対の搬送ローラ33a,33b及び搬送ベルト33cからなる第1搬送装置33により、ほぼ水平面に沿って一方向に走行される。
【0014】
この水平搬送状態で、前記第1搬送装置33の上方に配設された第1メルトブロー供給装置34から、濾材シート22の表面側に合成樹脂繊維がメルトブローにより供給される。
【0015】
この場合、図5(a)に示すように、第1メルトブロー供給装置34において、濾材シート22の幅方向の一端縁と対応する部分のノズル孔34aの配列ピッチP1が、他の部分と対応するノズル孔34bの配列ピッチP2よりも小さくなるように構成されている。この構成により、一端縁のノズル孔34aの領域からの繊維の量が、他の部分のノズル孔34bの領域からの繊維の量よりも多くなるように設定されている。その結果、一端縁のノズル孔34aから噴出される繊維により、濾材シート22の表面側の一端縁に濾過部25が濾材シート22の各波の凹部を埋めるように形成される。それと同時に、他の部分のノズル孔34bから噴出される繊維により、濾材シート22の表面側のほぼ全体にわたって薄膜状の不織布層23が形成される。
【0016】
なお、一端縁のノズル孔34aの領域から大量に供給される繊維は、その大部分が濾材シート22の波の凹部に落ち込むが、一部は波の凸部上にも堆積する。しかしながら、後述の説明から明らかになるが、波の凸部上に繊維が堆積しても、その堆積部分は圧潰される。よって、図面においては、波の凸部上の繊維を堆積状態では描いていない。
【0017】
その後、図4に示すように、濾材シート22が第1搬送装置33に沿ってその上面側から下面側に走行されることにより、濾材シート22の表面側と裏面側とが反転される。そして、この反転状態の濾材シート22が、一対の搬送ローラ35a,35b及び搬送ベルト35cからなる第2搬送装置35により、ほぼ水平面に沿って第1搬送装置33から離れる方向に走行される。
【0018】
続いて、前記第2搬送装置35の上方に配設された第2メルトブロー供給装置36から、水平搬送状態の濾材シート22の裏面側に合成樹脂繊維がメルトブローにより供給される。この場合、図5(b)に示すように、第2メルトブロー供給装置36において、濾材シート22の幅方向の他端縁と対応する部分のノズル孔36aの配列ピッチP1が、他の部分と対応するノズル孔36bの配列ピッチP2よりも小さくなるように構成されている。この構成により、他端縁のノズル孔36aの領域からメルトブローされる繊維の量が、他の部分のノズル孔36bの領域からメルトブローされる繊維の量よりも多くなるように設定されている。その結果、他端縁のノズル孔36aからのメルトブローにより、濾材シート22の裏面側の他端縁に前記濾過部25とは別の濾過部26が濾材シート22の各波の凹部を埋めるように形成される。それと同時に、他の部分のノズル孔36bからのメルトブローにより、濾材シート22の裏面側のほぼ全体にわたって薄膜状の不織布層24が形成される。
【0019】
なお、第1,第2メルトブロー供給装置34,36と対応する位置において、製造装置には濾材シート22の両端縁に位置する当て板37,38が設けられている。このため、メルトブローされた繊維はこの当て板37,38により濾材シート22の外方に飛散することが防止され、濾過部25,26や不織布層23,24等の繊維層と濾材シート22の端面とが同一平面上に位置する。
【0020】
次に、前記のような第1実施形態のフィルタシート21を用いたフィルタの構成について説明する。
さて、図6及び図7に示すフィルタ40Aにおいては、前記フィルタシート21に対して平板状で、かつフィルタシート21と同材質で、紙状をなす補助フィルタシート42を共巻きしながら、それらのシート21,42を渦巻き状に巻回して積層することにより、積層材41が形成されている。この場合、フィルタシート21,補助フィルタシート42及びメルトブローされた層が同材質であるため、それらを加熱することにより、両シート21,42を一体化できる。このようにして、全体として円筒状をなすハニカム構造のフィルタ40Aが形成されている。そして、積層材41のフィルタシート21及び補助フィルタシート42間には、多数の断面三角形状のエア通路43が区画形成されている。なお、濾材シート22の波の凸部上に堆積した繊維は、重ねられた補助フィルタシート42及び他の濾材シート22により圧潰される。
【0021】
前記エア通路43のうちで、1つおきの第1エア通路43aについては、フィルタ40Aのエア導入側の端面40aが開口されるとともに、エア導出側の端面40bが前記フィルタシート21の一端縁側の濾過部25により通気可能に閉塞されている。これに対して、残りの第2エア通路43bについては、フィルタ40Aのエア導入側の端面40aがフィルタシート21の他端縁側の濾過部26により通気可能に閉塞されるとともに、エア導出側の端面40bが開口されている。
【0022】
従って、このフィルタ40Aを図示しないエアクリーナのケース内に収容して使用した場合には、図7に示すように、エンジンに吸引されるエアがフィルタ40Aのエア導入側の端面40aにおいて、開口を介して第1エア通路43a内に導入されるとともに、通気性を有する濾過部26から濾過をともないながら第2エア通路43b内に導入される。そして、導入されたエアが積層材41のフィルタシート21及び補助フィルタシート42による濾過をともないながら、第1エア通路43aと第2エア通路43bとの間で移動される。その後、エアがフィルタ40Aのエア導出側の端面40bにおいて、第2エア通路43bから開口を介して導出される。また、第1エア通路43a内からも通気性を有する濾過部25を通して濾過をともないながら導出される。
【0023】
そして、この実施形態においては、以下の効果がある。
(1) この実施形態のフィルタシート21においては、濾過部25,26が合成樹脂繊維のメルトブローによって形成されているため、嵩重量が低くなり、封止部を封止剤により充填状態で形成した従来構成に比較して、フィルタシート21全体の重量を軽減することができる。よって、このフィルタシート21を用いてフィルタを構成した場合、フィルタ全体を軽量化することができる。
【0024】
(2) この実施形態のフィルタシート21においては、濾材シート22とメルトブローされた繊維とが同材質であるため、繊維を濾材シート22に対して接着剤を用いることなく、メルトブローのみで接着させることができる。また、補助フィルタシート42も濾材シート22及びメルトブローされた繊維と同材質であるため、濾材シート22と補助フィルタシート42とを接着を用いることなく、加熱により簡単に接着できる。このため、フィルタシート21の製造が容易である。なお、メルトブローに際して濾材シート22をあらかじめ加熱しておけば、メルトブローされた繊維が濾材シート22に対してより強固に接着される。
【0025】
(3) このフィルタシート21を用いてフィルタを形成した場合には、メルトブローによって形成された濾過部25,26が通気性を有するため、通気抵抗を低下させて、エンジンの運転効率を向上させることができる。
【0026】
(4) 同じく、このフィルタシート21を用いてフィルタを形成した場合には、フィルタシート21や補助フィルタシート42だけではなく、メルトブローによって形成された濾過部25,26も濾過機能を発揮するため、フィルタとしての濾過性能を向上させることができる。
【0027】
(5) フィルタシート21の表裏両側面全体にほぼ一定厚さの不織布層23,24が形成されているため、塵埃等をこの不織布層23,24に保持でき、フィルタシート21の全面において濾材シート22の目詰まりを抑制しながら塵埃等を捕捉できる。このため、前記と同様にフィルタとしての濾過性能を向上させることができる。
【0028】
(6) 不織布層23,24を構成する繊維の材質や、密度を適宜に選択することにより、濾過された塵埃等を不織布層23,24上においてスライド状に移動しやすくすることが可能となる。従って、塵埃等をエア流とともにその下流側に移動させることができて、濾材シート22の目詰まりを抑制し、濾過能力の低下を遅らせることができる。また、このように構成した場合には、フィルタの清掃において、第2エア通路43b内の塵埃等をその開口から容易に脱落あるいは吸引除去させることができる。
【0029】
(7) この実施形態のフィルタシートの製造方法においては、濾材シート22を波板状に形成した後、その濾材シート22を走行させながら、メルトブロー供給装置34,36のノズル孔34a,36aから濾材シート22の端縁に対してメルトブローを行うことにより、濾材シート22の端縁に濾過部25,26を形成している。このため、波板状の濾材シート22における波の凹部内に、濾過部25,26を簡単に形成することができて、軽量で高濾過性能のフィルタシート21を容易に製造することができる。
【0030】
(8) この実施形態のフィルタシートの製造方法においては、濾材シート22の一側面の端縁に濾過部25を形成した後、その濾材シート22を表裏反転させて、他側面の反対側の端縁に別の濾過部26を形成している。このため、濾材シート22の表裏両側面における反対側の端縁に通気性濾過部25,26を設けたフィルタシート21を、濾材シート22を連続的に走行させながら容易に製造することができる。
【0031】
(9) この実施形態のフィルタシートの製造方法においては、メルトブロー供給装置34,36のノズル孔34a,34b,36a,36bからのメルトブローにより、濾材シート22の端縁に対する濾過部25,26の形成と、濾材シート22の表裏両側面全体に対する不織布層23,24の形成とを同時に行うようにしている。このため、製造装置の構成が簡単であるとともに、濾過部25,26及び不織布層23,24の形成を能率よく行うことができる。
【0032】
次に、前記第1実施形態のフィルタシート21を用いたフィルタの別の構成について説明する。
さて、図8及び図9に示すフィルタ40Bにおいては、1枚の平板状(濾材シート22は波板状)のフィルタシート21に対して同じく1枚の平板状の補助フィルタシート42を積層することにより、積層材41が形成されている。そして、この積層材41をフィルタシート21の波の延長方向が同一となるように複数枚重ねることにより、全体として直方体状の輪郭を有するハニカム構造のフィルタ40Bが形成されている。そして、積層材41のフィルタシート21及び補助フィルタシート42間には、多数のエア通路43が区画形成されている。
【0033】
さらに、このフィルタ40Bにおいても、前述したフィルタ40Aと同様に、前記エア通路43のうちで、1つおきの第1エア通路43aについては、フィルタ40Bのエア導入側の端面40aが開口されるとともに、エア導出側の端面40bが前記フィルタシート21の一端縁側の濾過部25により通気可能に閉塞されている。これに対して、残りの第2エア通路43bについては、フィルタ40Bのエア導入側の端面40aがフィルタシート21の他端縁側の濾過部26により通気可能に閉塞されるとともに、エア導出側の端面40bが開口されている。
【0034】
前記フィルタ40Bの両端部には、合成樹脂製の被覆枠44が被覆状態で装着されている。各被覆枠44の内面には、各積層材41におけるフィルタシート21及び補助フィルタシート42の端縁を支持するための複数の区切片44aが突出形成されている。各被覆枠44と積層材41の両端縁との間には非通気性の充填剤45が充填され、この被覆枠44及び充填剤45によって、各積層材41におけるフィルタシート21及び補助フィルタシート42の端縁間の通路が封止されている。
【0035】
このフィルタ40Bをエアクリーナのフィルタとして使用した場合にも、前述したフィルタ40Aの場合と同様に、フィルタシート21及び補助フィルタシート42と濾過部25,26により、エアに含まれる塵埃が効果的に捕捉される。また、濾過部25,26の通気機能によりエンジンの運転効率を高めることができる。
【0036】
(第2実施形態)
次に、この発明を具体化したフィルタシートの第2実施形態を、前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0037】
さて、この第2実施形態のフィルタシート21においては、図10に示すように、波板状をなす濾材シート22の一側面の一端縁に、通気性を有する濾過部25がメルトブローにより形成されている。これに対して、濾材シート22の他側面の他端縁には、通気性のない封止部48が合成樹脂材の充填により形成されている。この封止部48の合成樹脂材はフィルタシート21と同材質である。
【0038】
この第2実施形態のフィルタシート21は、図11に示すような構成の製造装置により製造される。この製造装置においては、図4に示す第1実施形態のフィルタシート21の製造装置における第2メルトブロー供給装置36に代えて、ホットメルト供給装置49が設けられている。そして、前記第1実施形態の製造時と同様に、第1メルトブロー供給装置34により、波板状の濾材シート22の一側面に不織布層23及び濾過部25が形成された後に、濾材シート22が表裏反転された状態で、ホットメルト供給装置49から濾材シート22の他側面に液状の合成樹脂材が供給される。この供給により、濾材シート22の他側面の他端縁に通気性のない封止部48が形成される。なお、ホットメルト供給装置49から供給される合成樹脂液は、流動性があるため、フィルタシート21の波の凹部内に流れ落ちる。
【0039】
この第2実施形態のフィルタシート21を用いて、例えば前記第1実施形態における図6及び図7に示すような渦巻ハニカム構造のフィルタ40Aを形成した場合には、図12に示すように、複数のエア通路43のうちの第2エア通路43bの端部が封止部48により閉塞された状態になる。すなわち、この封止部48がフィルタ40Aのエア導出側の端面40bに配置されるように、フィルタ40Aをエアクリーナ等のケースに収容して使用すれば、エアに含まれる塵埃等が効果的に捕捉される。
【0040】
(第3実施形態)
次に、この発明を具体化したフィルタシートの第3実施形態を、前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0041】
さて、この第3実施形態のフィルタシート21においては、図13及び図14に示すように、波板状の濾材シート22の表裏両側面に、厚肉状の不織布層23,24が濾材シート22の波の凹部を埋めた状態で形成されている。そして、各不織布層23,24の組成密度が、隣接する濾過部25,26の組成密度よりも粗くなるように形成されている。
【0042】
従って、この第3実施形態においては、前記第1実施形態の効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
(10) 塵埃等を各不織布層23,24において浮いた状態で、かつ分散した状態で捕捉できるため、濾材シート22の目詰まりを少なくできて、高い濾過能力を維持できる。
【0043】
(第4実施形態)
次に、この発明を具体化したフィルタシートの第4実施形態を、前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0044】
さて、この第4実施形態のフィルタシート21では、図15に示すように、平板状の濾材シート22の表裏両側面における反対側の端縁に、メルトブローによる濾過部25,26が形成されている。また、濾材シート22の表裏両側面における残りの側面部分には、不織布層23,24が形成されている。そして、このように構成されたフィルタシート21をコルゲートローラ等により波板状に加工して、フィルタに用いるようにしている。
【0045】
従って、この第4実施形態においても、前記第1実施形態とほぼ同様の効果を得ることができる。
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
【0046】
・ 図16に示すように、図15に示すフィルタシート21を波板状に加工することなく、平板状のままで、濾過部25,26がエア流の方向において下流側及び上流側に交互に位置するように積層してフィルタ50とすること。このように構成しても、濾材シート22と濾過部25,26とにより高い濾過機能を確保できる。しかも、このように構成すれば、波板加工が不要になって、製造が簡単になる。なお、このように構成した場合には、隣接するフィルタシート21間の間隔を保持するための保持部材(図示しない)を設ける必要がある。
【0047】
・ 前記実施形態のフィルタシートの製造装置において、メルトブロー供給装置34,36の各ノズル孔34a,34b,36a,36bにおいて、端部のノズル孔34a,36aを複数列設けること。
【0048】
・ 前記実施形態のフィルタシートの製造装置において、濾材シート22に対する不織布層23,24と濾過部25,26との形成を、別々のメルトブロー供給装置を用いて行うように構成すること。
【0049】
・ 前記第2実施形態のフィルタシートを用いたフィルタにおいて、封止部48がフィルタ40Aのエア導入側の端面40aに配置されるように、フィルタ40Aをエアクリーナ等のケースに収容して使用すること。
【0050】
・ 濾材シート22及び補助フィルタシート42の構成繊維をメルトブローされる繊維と異なる材質にするとともに、その構成繊維間にメルトブローされる繊維と同じ材質の繊維を漉き込ませること。従って、濾材シート22及び補助フィルタシート42の漉き込まれた繊維同士、あるいはメルトブローされた繊維と漉き込まれた繊維とが互いに接着される。
【符号の説明】
【0051】
21…フィルタシート、22…濾材シート、23,24…不織布層、25,26…濾過部、31,32…コルゲートローラ、33…第1搬送装置、34…第1メルトブロー供給装置、34a,34b…ノズル孔、35…第2搬送装置、36…第2メルトブロー供給装置、36a,36b…ノズル孔、40A,40B…フィルタ、41…積層材、42…補助フィルタシート、43…エア通路。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾材シートの端縁にメルトブローによって形成された濾過部を設けたことを特徴とするフィルタシート。
【請求項2】
前記濾材シートを波板状に形成し、前記濾過部により波の凹部を埋めたことを特徴とする請求項1に記載のフィルタシート。
【請求項3】
前記濾材シートの側面全体に不織布層を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載のフィルタシート。
【請求項4】
請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のフィルタシートを、補助フィルタシートを介在させて積層するとともに、隣接するフィルタシートの濾過部を互いに反対側となるように配置したことを特徴とするフィルタ。
【請求項5】
前記フィルタシートを補助フィルタシートとともに巻回したことを特徴とする請求項4に記載のフィルタ。
【請求項6】
ノズル孔に対して濾材シートを一方向に走行させながら、前記ノズル孔から濾材シートの端縁に対してメルトブローを行って、濾材シートの端縁に繊維よりなる濾過部を形成することを特徴とするフィルタシートの製造方法。
【請求項7】
前記濾材シートの一側面の端縁に濾過部を形成した後、その濾材シートを表裏反転させて、他側面の反対側の端縁に別の濾過部を形成することを特徴とする請求項6に記載のフィルタシートの製造方法。
【請求項1】
濾材シートの端縁にメルトブローによって形成された濾過部を設けたことを特徴とするフィルタシート。
【請求項2】
前記濾材シートを波板状に形成し、前記濾過部により波の凹部を埋めたことを特徴とする請求項1に記載のフィルタシート。
【請求項3】
前記濾材シートの側面全体に不織布層を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載のフィルタシート。
【請求項4】
請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のフィルタシートを、補助フィルタシートを介在させて積層するとともに、隣接するフィルタシートの濾過部を互いに反対側となるように配置したことを特徴とするフィルタ。
【請求項5】
前記フィルタシートを補助フィルタシートとともに巻回したことを特徴とする請求項4に記載のフィルタ。
【請求項6】
ノズル孔に対して濾材シートを一方向に走行させながら、前記ノズル孔から濾材シートの端縁に対してメルトブローを行って、濾材シートの端縁に繊維よりなる濾過部を形成することを特徴とするフィルタシートの製造方法。
【請求項7】
前記濾材シートの一側面の端縁に濾過部を形成した後、その濾材シートを表裏反転させて、他側面の反対側の端縁に別の濾過部を形成することを特徴とする請求項6に記載のフィルタシートの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図10】
【公開番号】特開2010−167336(P2010−167336A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−10209(P2009−10209)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】
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