説明

フィルタハウジング

【課題】 ベント部をフィルタハウジング上端に複数個設けることにより濾過液体の濾過・脱泡を促進させる。
【解決手段】 筒状のフィルタカートリッジ1と、該筒状フィルタカートリッジ1を立設して収納するスリーブ状のシェル2と、該シェルの一端部に液密に固着しあるいは前記シェルと一体化したカバー5と、前記シェルの他端部に液密に固着した液入口ポート4aと液出口ポート4bを形成したヘッド4と、からなり、濾過液体が前記フィルタカートリッジ1の内腔を上昇して濾過・脱泡されるフィルタハウジングHにおいて、前記カバー5の前記フィルタカートリッジ1の一次側及び二次側に対面した位置にそれぞれベント部11a,11bを設け、及びヘッド4に形成した液出口ポート4bから垂直方向に十分離れた位置に立設したスリーブ状のポスト10の外周にカートリッジシール部6を嵌着し、該カートリッジシール部6上に前記フィルタカートリッジ1を液出口4bから十分離して載置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタハウジング、とくに濾過流体(液体)からの脱泡・濾過を促進させたフィルタハウジングに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のフィルタハウジングは、図4に示すように、立設したフィルタハウジングH′のシェル22内に円筒状またはプリーツ状に成形された濾過体として機能するフィルタカートリッジ21をロッド23を介してカートリッジシール部26上に載置して収納し、シェル22の上下端にナット28とボス31をロッド23に螺着して、その上下端部をカバー25とヘッド24で封止してシェル22内に濾過空間を形成する。ここで、シェル22の上下端にシェルガスケット27a,27bを介して液密にカバー25とヘッド24とを封止する。さらに、シェル22の下端に固着したヘッド24には、液入口ポート24aと液出口ポート24bとが形成され、また、ヘッド24の底部には、ニップル30を経てドレンバルブ29が取付けられドレン系へ連通している。他方、カバー25、フィルタカートリッジ21の二次側のみに、ベントバルブ32が取付けられている。
【0003】
このように構成された従来のフィルタハウジングH′では、濾過すべき流体は、図4に示す、シェル22の下端に固着されたヘッド24の液入口ポート24aから、矢印で示すように、導入され、シェル22の内壁とフィルタカートリッジ21の外周との間に形成された空間を上昇する間に、フィルタカートリッジ21のフィルタエレメントをその半径方向に通過して濾過される。濾過された流体は、フィルタカートリッジ21の円周とロッド23との間に形成された空間に流入し、該空間を矢印で示すように流下して液出口ポート24bから所定の個所に排出されるようになっている。
【0004】
ここで、フィルタカートリッジ21の上端とカバー25との間に貯まった空気等の気体(気泡)は、カバー25に設けたベントバルブ32からフィルタハウジングH′外に排気され、また、必要に応じてシェル22の下端に設けたヘッド24のドレンバルブ29を用いてフィルタハウジングH′外に液体を排水されるようになっている。
【0005】
また、液体(例えば、塗布液)中の気泡を低減する濾過装置も提案されていた(特許文献1)。
【0006】
しかしながら、このような従来のフィルタハウジングH′では、濾過する液体または気体中からの異物除去が主目的であったため、フィルタハウジングH′内で発生した気体の排出口(ベント)25aは、フィルタ一次側(フィルタカートリッジ21の外側)のみに設置されていた。このため、このようなフィルタハウジングH′を液体から気泡を除去するために使用した場合、フィルタカートリッジ21の内側(気泡除去の場合の一次側に相当)に貯まった気体は、その排出口が設けられていないため、フィルタカートリッジ21の二次側に流出し、すでに濾過した液体に混入する問題点があった。また、フィルタカートリッジ21を載置するカートリッジシール部26が液出口ポート24b側に近接して設けられていたため気泡の上昇が阻害されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−49954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする問題点は、液体(例えば、塗布液)の濾過に用いるフィルタハウジングにおいて、液体中からの脱泡効率の低下と、すでに液体中から除去した気泡の濾過済液体への混入である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、筒状のフィルタカートリッジと、該筒状フィルタカートリッジを立設して収納するスリーブ状のシェルと、該シェルの一端部に液密に固着しあるいは前記シェルと一体化したカバーと、前記シェルの他端部に液密に固着した液入口ポートと液出口ポートを有するヘッドと、からなり濾過液体が前記筒状フィルタカートリッジの内腔を上昇して濾過・脱泡されるフィルタハウジングにおいて、前記カバーの前記筒状フィルタカートリッジの一次側及び二次側に対面した位置にそれぞれベント部を設け及び前記ヘッドに形成した液出口ポートから垂直方向に十分離れた位置に立設したスリーブ状のポストの外周にカートリッジシール部を嵌着したことを特徴とするフィルタハウジングに関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のフィルタハウジングは、濾過液体からの脱泡効率の向上と、液体中から除去した気泡の濾過済液体への混入を飛躍的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のフィルタハウジングの縦断面図。
【図2】本発明のフィルタハウジングを感光液の脱泡・濾過に用いた場合の配管図。
【図3】本発明のフィルタハウジングによる液体からの脱泡・濾過の原理を示す概念図。
【図4】従来のフィルタハウジングの縦断面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
フィルタハウジングの構成
添付した図1に示すように、本発明のフィルタハウジングHは立設したスリーブ状のシェル2内に立設して収納された濾過体として機能する筒状の一本あるいは複数本のフィルタカートリッジ1からなる。このフィルタカートリッジ1は、シェル2の下端にシェルガスケット7aを介して液密に固着されたヘッド4に取り付けられたボス13にその下端を螺着したロッド3にカートリッジシール部6を介して取付けられている。具体的には、フィルタカートリッジ1は、気泡がその内側(一次側)から外側(二次側)へ抜ける構造になっている。また、ヘッド4の中央部に立設されたスリーブ状の十分な長さをもつポスト10の外周であって液出口ポート4bから十分離れた部位(例えば、約50mm以上、液体の性状によっては、それ以下でもよい)に嵌入されたカートリッジシール部6が嵌着され、その上にフィルタカートリッジ1が載置され、ロッド3の外周とスリーブ状のポスト10の内周との間には、濾過する液体の流路S1が形成されている。
【0013】
ここで、スリーブ状のポスト10は、フィルタカートリッジ1内に流入した液体がショートカットされて液出口ポート4bへ流出しないようにするため、十分長く構成して液体がフィルタカートリッジ1の上端部まで均等に流れるようにしてある。
【0014】
また、シェル2の上端部には、シェルガスケット7bを介してカバー5が液密に固着され(シェル2と一体化してもよい)、フィルタカートリッジ1の上端部であってフィルタカートリッジ1の内側に対応する位置(シェル2の中心部)に凹状のベント部が設けられ、ベントバルブ11aがカバー5に螺入されたナット8とニップル9を介して接続されている。
【0015】
さらに、フィルタカートリッジ1の上端部であって、その外側に対応するカバー5には、円環状の溝5aが形成され、この溝5aの底部がカバー5の頂面に螺入されたニップル12を介してベントバルブ11bに連通している。
【0016】
したがって、本発明のフィルタハウジングHでは、2個のベントバルブ11a(フィルタカートリッジ1の内側の気泡),11b(フィルタカートリッジの1の外側の気泡)から液体から脱泡された気泡がフィルタハウジングH外に排気されるようになっている。
【0017】
ここでは、フィルタカートリッジ1の円周部とロッド3の外周部との間に濾過する液体の流路S2が、また、フィルタカートリッジ1の外周部とシェル2の内壁との間には濾過した液体の流路S3が形成されている。さらに、カートリッジシール部6に載置されたフィルタカートリッジ1の下端面と液出口ポート4bの流出孔4cとの間に、十分な空間2aが形成されるようになっている。
【0018】
さらに、シェル2の下端部には、シェルガスケット7aを介してヘッド4が液密に固着されあるいは一体化されて形成されていて、このヘッド4には、液入口ポート4aと液出口ポート4bとが同一レベルで水平にあるいは段差をもって形成されている。さらに、液出口ポート4bの入口部に連通するように、ヘッド4に螺入されたニップル15を介してドレンバルブ14が設けられ、必要に応じてドレンバルブ14を開いてシェル2内の液体をシェル2の外に排出できるようにしてある。
【0019】
また、本発明のフィルタハウジングHは、シェル2、ヘッド4、ロッド3、あるいはカバー5が分解できるように構成されているので、それらを分解して洗浄することが容易である。
【0020】
このようにして構成された本発明のフィルタハウジングHを、例えば感光ドラムへ塗布する感光液の濾過、あるいは感光紙へのコーティング液の濾過に用いる場合には、図2に示すように、ライン状あるいは循環状に配置する。すなわち、図2に示すように、上流側から調合タンクT1、本発明のフィルタハウジングH、微粒子除去用フィルタF(使用しない場合もある)及びタンクT2の順に配置し、調合タンクT1で原料を調合して感光液を製造し、本発明のフィルタハウジングHで感光液を濾過・脱泡し、さらに微粒子除去用フィルタFで濾過した後、濾過済液体(感光液)をタンクT2内に貯留する。ここで、フィルタハウジングHから濾過済液体を調合タンクT1に還流してもよい。
【0021】
フィルタハウジングの使用(操作)方法
このような構成を具備する本発明のフィルタハウジングを使用するには、まずフィルタハウジングHを、例えば、濾過液体としての感光液の脱泡に使用する場合、例えば図2に示す管路に配設し、図1に示すフィルタハウジングHの下端部に設けた液入口ポート4aから、濾過液体を矢印で示すように、導入する。導入された濾過液体は、液入口ポート4aに連通するよう立設されたロッド3とポスト10との間に形成された空間S1内をフィルタカートリッジ1の内側から外側に流れるように上昇し、ポスト10に嵌入されたフィルタカートリッジ1とロッド3との間に形成された空間(濾過空間)S2内に流入する。ここで、濾過液体は、この空間S2内を上昇する間に、フィルタカートリッジ1内に、矢印で示すように、それらの半径方向から流入し、濾材を通過する間に濾過液体の濾過・脱泡が行われ二次側に流出する。
【0022】
とくに、液体からの気泡除去の場合、一般的な異物除去とは異なり、フィルタカートリッジ1の一次側と二次側が逆となる。すなわち、フィルタカートリッジ1の内側が一次側となり、液はフィルタカートリッジ1の下部より進入し上昇するとともに、濾材の一次側より二次側へ流れ、フィルタカートリッジ1の外側(二次側)を下降しヘッド4の液出口4bへと向かう。
【0023】
次いで、濾過・脱泡された液体(例えば、感光液)は、フィルタカートリッジ1の外周部とシェル2との間に形成された空間S3内を流下し、空間2aを経て液出口ポート4bからフィルタハウジングH外へ排出される(図2に示す感光液の濾過・脱泡ラインでは、微粒子除去用フィルタFへ送られる)。
【0024】
他方、濾過液体から脱泡された気体は、フィルタカートリッジ1の上端部に対応する位置に設けられたカバー5内の環状あるいは他形状の空間5aとカバー5の中心部に設けられたベント空間8aに貯まり、ベントバルブ11a,11bをそれぞれ開放することにより、フィルタハウジングH外に排気される。
【0025】
とくに、本発明のフィルタハウジングHでは、フィルタカートリッジ1を載置するカートリッジシール部6が、液出口ポート4bの流出孔4cから十分離れた位置に、それらの間に空間2aを形成するように構成されている。フィルタカートリッジ1の二次側より(空間S3と空間2a)浮上しようとする気泡は、液体の流れに運ばれフィルタハウジングHの液出口4b側へ移動しようとする場合がある。このとき、気泡の浮上する速度よりもフィルタカートリッジ1の外側(二次側)での液の流速が高い場合、気泡はフィルタカートリッジ1の下方に向って流れる液体とともに液出口4bより排出されてしまう。
【0026】
ここで、液体の流量を一定とした場合、フィルタカートリッジ1の外側での液体の流速は、ハウジングのシェル2の内径断面積よりフィルタカートリッジ1の外径断面積を差し引いた流路としての断面積により決定される。
【0027】
ここで、例えば、シェル2の内径を85mm、フィルタカートリッジ1の外径を66mmとした場合、当該断面積は、
((85/2)2×3.14)−((66/2)2×3.14)=2250(mm2
となる。
【0028】
これに対し、カートリッジシール部6を液出口4bより十分離した場合(例えば、50mm以上)、フィルタカートリッジ1の下端よりさらに下部の断面積は、シェル2の内径を85mm、ポスト10の外径を27mmとした場合、
((85/2)2×3.14)−((27/2)2×3.14)=5100(mm2
となり、前者の約2.3倍の断面積となる。そして、液体の流速は流路の断面積に比例するため、フィルタカートリッジ1の下部では外側部の44%程度となり、気泡の浮上が容易になるとともに、図1に示す空間2a中の気泡が合体して空間S2中で浮上する時間を稼ぐことができるようになる。
【0029】
また、一般的なフィルタカートリッジは、入り口側(「一次側」)の目開きを粗く、出口側(「二次側」)の目開きを細かいものにし、液体中のある粒子径分布を持った粒子群(除去対象粒子)を大径粒子から小径粒子まで段階的に捕捉することを意図している。
【0030】
図3に示すように、液体からの気泡除去は、フィルタカートリッジの表面での気泡の捕捉および表面で捕捉されなかった微細な気泡を、フィルタカートリッジを構成する繊維(濾材)に衝突・付着させ、その表面張力による合体・成長により大きな気泡塊とし、浮上・分離するという二つの機構により行われる。そしてフィルタカートリッジの一次側の目開きが二次側より小さい場合、フィルタカートリッジの表面での濾材への液体の衝突・付着による気泡の除去率が向上するとともに、濾材内部では、一次側から二次側に向って大きくなる目開きに沿って気泡の合体・成長が効果的に行われ、気泡の除去率が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0031】
とくに、本発明のフィルタハウジングは、例えば感光液、コーティング液等の粘性の高い液体もしくは粘性が低いが界面活性剤等が入っている液体を平滑な面に塗布・コーティングした際に発生する微細な気泡で感光紙等の表面の均一性が損なわれるのを嫌う技術分野に有用である。
【符号の説明】
【0032】
H フィルタハウジング
1 フィルタカートリッジ(濾材)
2 シェル
3 ロッド
4 ヘッド
4a 液入口ポート
4b 液出口ポート
5 カバー
6 カートリッジシール部
7a,7b シェルガスケット
8 ナット
9 ニップル
10 ポスト
11a,11b ベントバルブ
12 ニップル
13 ボス
14 ドレンバルブ
15 ニップル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のフィルタカートリッジと、該筒状フィルタカートリッジを立設して収納するスリーブ状のシェルと、該シェルの一端部に液密に固着しあるいは前記シェルと一体に形成したカバーと、前記シェルの他端部に液密に固着され液入口ポートと液出口ポートを形成したヘッドと、からなり、濾過液体が前記フィルタカートリッジの内腔を上昇して濾過・脱泡されるフィルタハウジングにおいて、前記ヘッドの中央部にスリーブ状のポストを立設し、前記ヘッドに形成した液出口ポートから垂直方向に十分離れた位置に、該スリーブ状のポストの外周に前記フィルタカートリッジを載置し、前記フィルタカートリッジの下端面と前記液出口ポートの流出孔との間に空間を形成したことを特徴とするフィルタハウジング。
【請求項2】
前記スリーブ状のポストの外周にカートリッジシール部を嵌着し、該カートリッジシール部に前記フィルタカートリッジを載置したことを特徴とする請求項1に記載のフィルタハウジング。
【請求項3】
前記フィルタカートリッジの濾材内部の目開きが、一次側から二次側に向って大きくなることを特徴とする請求項1に記載のフィルタハウジング。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−152540(P2011−152540A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85466(P2011−85466)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【分割の表示】特願2005−17749(P2005−17749)の分割
【原出願日】平成17年1月26日(2005.1.26)
【出願人】(592243368)キュノ株式会社 (3)
【Fターム(参考)】