説明

フィルタパック及びこれを備えた交換型エアフィルタ

【課題】フィルタパックとフィルタ枠のシール性を向上させ、フィルタパック交換時に緩衝材がフィルタ枠の平部との間で擦れて剥がれ、上流側から下流側へのシール性が低下することのないフィルタパックと、これを用いたエアフィルタを提供する。
【解決手段】直方体形状に構成されたろ材1の通風路を挟むそれぞれの面1a〜1dから、前記ろ材の下流側の通風面側にシート状の緩衝材2を折り曲げる2a〜2dことにより、交換時にフィルタ枠の内周面と摺動しても、その下流側においてシール性が確保されたフィルタパック10とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業空調やビル空調等に使用される交換型エアフィルタ及びこれを構成するフィルタパックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、産業空調やビル空調に使用されるエアフィルタは、ろ材をジグザグに折り畳むことによりフィルタパックを構成し、これをフィルタ枠に収納したものが広く知られている。
このようなエアフィルタの中には、フィルタ枠を再利用するためにフィルタパックのみを交換できるように構成されたものがある。その構造は、フィルタ枠の内周面に接着剤によりクッション材を敷設したものにフィルタパックを装着したものである(例えば、特許文献1及び特許文献2)。
しかしながら、従来の構造では、フィルタ枠にフィルタパックを取り付ける際に、フィルタ枠の内周面に設けられたクッション材がフィルタパックに押されながら擦れて剥がれやすくなり、エアフィルタの上流側から下流側へのシール性が低下するという問題があった。
これを防ぐために、フィルタ枠を構成する板材の1枚を取り外すようにしてもよいが、フィルタパック交換作業に時間がかかるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭61−051924号公報(実願昭59−134544号のマイクロフィルム)
【特許文献2】実開昭61−044214(実願昭59−128557号のマイクロフィルム)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような従来のエアフィルタに存在する課題を解決するためになされたものであり、フィルタパックとフィルタ枠のシール性を向上させ、フィルタパック交換時に緩衝材がフィルタ枠の平部との間で擦れて剥がれることのないフィルタパックと、これを用いたエアフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる課題を解決すべく、本発明者等は鋭意検討の結果、以下の構成を見出した。
即ち、請求項1に記載のフィルタパックは、直方体形状に構成されたろ材の通風路を挟む面のそれぞれから、前記ろ材の下流側の通風面側に折り曲げられたシート状の緩衝材を設けたことを特徴とする。
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載のフィルタパックにおいて、前記ろ材を通風路の上下流方向にジグザグ状となるように構成したことを特徴とする。
請求項3に記載の本発明は、請求項1又は2に記載のフィルタパックにおいて、前記シート状の緩衝材は、前記ろ材の角部に沿って折り曲げられていることを特徴とする。
請求項4に記載の本発明は、請求項1乃至3の何れか1項に記載のフィルタパックにおいて、前記シート状の緩衝材を、前記通風路を囲む面の全てに設けたことを特徴とする。
請求項5に記載の本発明は、請求項1乃至4の何れか1項に記載のフィルタパックにおいて、前記シート状の緩衝材の折り曲げ線上にミシン目を設けたことを特徴とする。
請求項6に記載の本発明は、請求項1乃至5の何れか1項に記載のフィルタパックにおいて、前記シート状の緩衝材は、ポリエーテル系ウレタンゴム、ポリエステル系ウレタンゴム、クロロプレンゴム若しくはEPDMからなるゴム、ポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン若しくはポリエチレンからなる不織布、及び、ガラス繊維製の不織布の中の何れかから構成され、厚さ1〜5mmであることを特徴とする。
また、本発明の交換型エアフィルタは、請求項7に記載の通り、通風路の下流側のみに通風面側に延出するフランジを備えたフィルタ枠に、請求項1乃至6の何れか1項に記載のフィルタパックを、前記フィルタ枠の上流側から取り外すことができるように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、フィルタパックとフィルタ枠のシール性を向上させ、フィルタパック交換時にシート状の緩衝材がフィルタ枠の内周面と擦れて剥がれることがない。また、本発明の交換型エアフィルタによれば、フィルタ枠とフィルタパックとのシール性を低減させることなく、交換の作業効率の優れたエアフィルタとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施の形態に係るフィルタパックの概略斜視図
【図2】本発明の一実施の形態の交換型エアフィルタに使用されるフィルタ枠の概略斜視図
【図3】同実施の形態のエアフィルタを備えた交換型エアフィルタの縦断面図
【図4】本発明の他の実施の形態の交換型エアフィルタに使用されるフィルタ取付枠の概略斜視図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明のろ材交換型エアフィルタの好適な実施の形態を説明する。
本発明は、直方体形状に構成されたろ材の通風路を挟む面のそれぞれから、通風路の下流側の面側に折り曲げられた構造のシート状の緩衝材を備えたものである。
シート状の緩衝材が設けられたろ材は、金属や樹脂等から構成されるフィルタ枠と接触すると、柔軟に変形してシート状の緩衝材が剥がれにくくなる。しかも、下流側の通風面において、フィルタ枠内周面とろ材との間のシール性が確保される。
前記折り曲げ部の方向は、通風面と平行となることが好ましい。
ろ材としては、合成繊維や無機質繊維等からなるフェルト、又は、不織布や織布等の繊維体を、直方体(平板)形状に構成したものや、ジグザグに折り畳んでその外形が直方体形状となるものを利用することができる。尚、直方体形状のろ材の寸法は、特に制限するものではないが、例えば、100mm×100mm×30mm〜1500mm×1500mm×300mmの範囲のものを使用することができる。また、フィルタパックのろ過性能は適宜設定できるが、プレフィルタであれば、質量法で30〜99%のろ材を使用することができ、中性能フィルタであれば、光散乱積算法で20〜99%のろ材を使用することができる。
また、シート状の緩衝材の折り曲げ幅は、3mm〜20mmであることが好ましい。3mmより小さい場合は、フィルタパックとの接着面積が小さくなりすぎ、接着強度が低下するおそれがあり、20mmより大きい場合は、パックの有効開口面積が小さくなるため圧力損失が上昇するおそれがある。
【0009】
シート状の緩衝材は、フィルタ枠とフィルタパックとが当接する際の応力を緩衝できるものであれば特に制限するものではなく、例えば、以下(1)〜(3)に含まれる何れか、或いは、これらの組み合わせの中から選択することができる。
(1)ポリエーテル系のウレタンゴム、ポリエステル系のウレタンゴム、クロロプレンゴム又はEPDM
密度は10〜100kg/mとすることが好ましく、20〜50kg/mとすることが更に好ましい。
尚、発泡体の場合には、10kg/mより小さい場合は、発泡体の気泡が多くなりシール性が悪くなるおそれがあり、100kg/mより大きい場合は、硬さが増しすぎシール性が悪くなるおそれがある。
(2)不織布
ポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレン等の繊維を、ケミカルボンド法、サーマルボンド法又はスパンボンド法により得たものを使用することができる。
(3)ガラス繊維
平均繊維径1μm以下の綿状(短繊維)の原材料を乾式で不織布にしたものを使用できるが、密度30〜230g/mのガラス繊維を乾式で不織布にしたものが好ましい。
上記(1)〜(3)の中でも、取り扱い性が良いという観点から(1)のゴム系のシート状の緩衝材を使用することが好ましい。
【0010】
また、シート状の緩衝材の厚さは、1〜10mmであることが好ましい。1mmより薄い場合は、フィルタパックとフィルタ枠の隙間を十分にシールすることが困難であり、10mmより厚い場合は、正方形状の通風面を備えた通常のフィルタ枠に装着するために、ろ材の通風面を狭くする必要があるからである。
シート状の緩衝材は、ろ材に固定される面の全面を覆うようにすることが好ましい。
また、シート状の緩衝材を固定するための接着剤としては、通風時にろ材から剥離しない程度の接着強度を有するものであれば特に制限するものではないが、例えば、アクリル系、ゴム系の接着剤等を使用することができる。
【0011】
次に、具体的に図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1に示されるフィルタパック10は、ろ材1を通風路の上下流方向にジグザグ状に所定の折幅で折り畳んで構成されたものである。ろ材のジグザグが表れる面1a,1b(図示したものでは上下端面)と、両側面1c,1dには、一体形状のシート状の緩衝材2が接着剤により固定されており、シート状の緩衝材2の下流側の端部2a〜2dは、ろ材1の通風面側に折り曲げられている。
従って、ろ材1の通風路を挟む全ての側周面から、下流側の通風面の外周縁部までシート状の緩衝材2aが設けられることになる。
上記の通り、ろ材1の変形しやすいジグザグが表れる側の面1a,1bに、少なくともシート状の緩衝材2を接着剤により固定し、その下流側の端部を通風面側に折り曲げることにより、交換時にフィルタ枠の内周面と摺動しても、その下流側においてシール性が確保されたフィルタパック10とすることができる。
【0012】
尚、図示したものでは、ろ材1の折り畳み間隔を保持するために折り畳み間のろ材の表裏面に設けた向い合うドット状などのエンボス突起(図示省略)同士を接触させているが、間隔を保持するための他の方法として、ろ材1に折り曲げ線に垂直にホットメルトリボンを塗布する方法、金属部材を波形に形成したセパレータを介挿する方法、ろ材の折筋に対して垂直に複数列設けられた支柱や櫛刃状の条片等を設ける方法等がある。また、本明細書において、「ジグザグ状」とは、折り線に沿って折り畳んだもの以外に湾曲させたものも含むものとする。
【0013】
上記フィルタパック10は、図2に示されるフィルタ枠3に収容され、本発明の実施の形態の交換型エアフィルタ20となる。
図2及び図3に示されるフィルタ枠3は、フィルタパック10の通風路を囲むようにして四辺形状に構成されており、下流側の通風面のみに内側に延出するフランジ3aを備えている。
これにより、フィルタパック10の下流側の通風面方向に折り曲げられたシート状の緩衝材2は、このフランジ3aに当接することにより、更なるシール性を確保することができる。また、フィルタパック10は、フランジ3aのないフィルタ枠3の上流側から簡単に取り外すことができるので交換の作業効率が優れたものとなる。
【0014】
上記交換型エアフィルタ20は、図4に示すフィルタ取付枠4に取り付け固定することができる。図4に示されるフィルタ取付枠4は、断面L字状の部材を四辺形状に構成して下流側にフランジ4aを備えたものである。尚、下流側のフランジ4aの四隅には、取付のための取付棒6が立設される。
【0015】
また、シート状の緩衝材2の折り曲げ線には、図1に示すように、ミシン目2Lを設けることが好ましい。ミシン目2Lに沿ってシート状の緩衝材2を折り曲げることにより、シート状の緩衝材2そのものの反発を軽減でき、フィルタ枠3のフランジ3aにより強く当接乃至接着させることができるからである。尚、本明細書におけるミシン目3とは、破線状の孔が一列に並んだもののことであり、孔一つひとつは幅0.1〜2mm、長さ0.5mm〜10mmであることが好ましく、幅0.1〜1mm、長さ1mm〜3mmであることがより好ましい。幅0.1mm未満、長さ0.5mm未満の場合はシート状の緩衝材2の反発が十分に軽減できず、幅2mmより大きく、長さ10mmより大きい場合は孔が大きくなりすぎ、シート状の緩衝材2の折り曲げ部2a〜2dが破断してしまうおそれがある。また、孔の間隔は1mm〜10mmであることが好ましい。間隔が1mm未満の場合はシート状の緩衝材2が破断してしまうおそれがあり、10mmより大きい場合は反発を十分に抑えられないためである。
【実施例】
【0016】
次に、本発明の実施例を従来例、比較例とともに説明する。尚、本発明のエアフィルタは、以下の例に限定して解釈されるものではない。
【0017】
(実施例1)
有機繊維不織布製のろ材をジグザグ状に折り畳み、上流側に折り線100本、590mm×590mm×125mmの直方体形状のフィルタパックを製作した。このフィルタパックに、下流側の通風面側に折り曲げられる折り曲げ代を幅10mm残し、その残りをフィルタパックのジグザグの表れる面の全てを覆うようにしてアクリル系接着剤によりシート状の緩衝材を固定した。そして、折り曲げ代を通風面側に折り曲げて実施例1のフィルタパックとした。
尚、シート状の緩衝材は、590mm×135mm×3mm、密度25kg/mのウレタン製発泡材を、折り曲げ線となる位置に、幅0.2mm、長さ2mm、間隔2mmのミシン目を設けたものを使用した。
【0018】
(実施例2)
シート状の緩衝材にミシン目を設けなかったこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2のフィルタパックとした。
【0019】
(実施例3)
590mm×125mm×3mm、密度25kg/mのウレタン製発泡材をシート状の緩衝材として、実施例1のフィルタパックの通風路を囲む4側面を囲繞して実施例3のフィルタパックとした。尚、フィルタパックの下流側の通風面には、幅10mmの折り曲げ部が形成され、折り曲げ線となる位置に、幅0.2mm、長さ2mm、間隔2mmのミシン目を設けるようにした。
【0020】
(実施例4)
実施例3に対して、ミシン目を設けなかったものを実施例3とした。
【0021】
(従来例1)
シート状の緩衝材に折り曲げ部を設けず、その他は実施例1と同様にして、従来例1のフィルタパックとした。
【0022】
(従来例2)
シート状の緩衝材に折り曲げ部を設けず、その他は実施例3と同様にして、従来例1のフィルタパックとした。
【0023】
(比較例)
実施例1のろ材のみをフィルタパックとした。
【0024】
上記各例のフィルタパックを、厚さ0.6mmの鋼板製の板材を610mm×610mmの枠状に構成したフィルタ枠に装着して、以下の項目についての評価を行い、その結果を表1に示す。尚、フィルタ枠の通風面の下流側には、通風面方向に延出する幅10mmのフランジが設けられている。
【0025】
(1)シール性:流入側からエアフィルタを目視したときに、フィルタパックとフィルタ枠が密着している場合を○、密着していない場合を×とした。
【0026】
(2)剥がれにくさ:フィルタパックをフィルタ枠に挿入する作業を10回繰り返したとき、シート状の緩衝材に全く剥がれが生じなかった場合を○、シート状の緩衝材がフィルタパックの上下端部からは剥がれないものの折り曲げ部が流出側のフィルタパック通風面から剥がれた場合を△、シート状の緩衝材がフィルタパックの上下端部から剥がれた場合を×とした。
【0027】
(3)総合評価:シール性と剥がれにくさの評価において、いずれも○の場合を◎、○あるいは△の場合を○、△と×の場合を△、×のみの場合を×とした。
【0028】
【表1】

【0029】
表1に示すとおり、実施例1及び3では、シール性が良いことに加えて、シート状の緩衝材が剥がれにくいことから、総合評価は◎となった。
実施例2及び4では、シール性が良い一方で、折り曲げ部が流出側のフィルタパック通風面から剥がれたため、総合評価は○となった。
従来例1及び2では、シール性が良い一方で、フィルタパック交換時にシート状の緩衝材の剥がれが生じたため、総合評価は△となった。
従来例3は、フィルタパックとフィルタ枠の間にシート状の緩衝材がないため密着しておらず、シール性が悪いことから、総合評価は×となった。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、産業空調やビル空調等をはじめ、広く産業上利用することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 ろ材
1a〜1d ろ材の通風路を囲む面
1a,1b ろ材のジグザグの表れる面
2 シート状の緩衝材
2a〜2d シート状の緩衝材の折り曲げ部
3 フィルタ枠
3a フランジ部
4 フィルタ取付枠
4a フランジ部
5 セパレータ
6 取付棒
10 フィルタパック
20 交換型エアフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直方体形状に構成されたろ材の通風路を挟む面のそれぞれから、前記ろ材の下流側の通風面側に折り曲げられたシート状の緩衝材を設けたことを特徴とするフィルタパック。
【請求項2】
前記ろ材を通風路の上下流方向にジグザグ状となるように構成したことを特徴とする請求項1に記載のフィルタパック。
【請求項3】
前記シート状の緩衝材は、前記ろ材の角部に沿って折り曲げられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のフィルタパック。
【請求項4】
前記シート状の緩衝材を、前記通風路を囲む面の全てに設けたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のフィルタパック。
【請求項5】
前記シート状の緩衝材の折り曲げ線上にミシン目を設けたことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のフィルタパック。
【請求項6】
前記シート状の緩衝材は、ポリエーテル系ウレタンゴム、ポリエステル系ウレタンゴム、クロロプレンゴム若しくはEPDMからなるゴム、ポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン若しくはポリエチレンからなる不織布、及び、ガラス繊維製の不織布の中の何れかから構成され、厚さ1〜5mmであることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載のフィルタパック。
【請求項7】
通風路の下流側のみに通風面側に延出するフランジを備えたフィルタ枠に、請求項1乃至6の何れか1項に記載のフィルタパックを、前記フィルタ枠の上流側から取り外すことができるように構成したことを特徴とする交換型エアフィルタ。

【図2】
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【図4】
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【図1】
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【図3】
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